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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 湊    大 輔

学 位 論 文 題 名

セメント硬化過程で形成されるカルシウムシリケート 水和物の組成及び空隙構造形成に関する研究

学位論文内容の要旨

  1824年にポルト ランドセメントが発明されて 以来、セメント系材料の代 表であるコンクリート は主に建設用部材 として世界中で広く用いられ てきた。最近では、その用途は益々多様化し、放射 性廃棄物地下処分 施設の最終バリアとしての利 用が計画されている。最終バリアには構造部材とし ての強度だけでを く、放射性同位体に対する遮 断性も期待されている。そのためセメント系材料に は、従来のようを 耐カや止水・遮水性といった 物理的教性能の長期安定性よりも、セメント硬化体 中で の 核種 の収 着性 能や 拡 散係 数の 低減 と いった、いわゆ る化学的安定性が求められ ている。

セメ ン ト系 材料 は数 十cmサ イズ の骨 材か ら 数nmサイズのカ ルシウムシリケート水和物 やゲル孔 から構成されるマ ルチスケール没複合材料であ る。したがって、その物性はこれらの構成要素間の 相互作用を含めた 様々教スケールでの現象の総 和として発現するため非常に複雑歡挙動を示す。し かし、放射性同位 体の吸着や拡散性能にはセメ ント系材料のナノサイズの微細空隙およびその細孔 壁を構成する水和 物の物性が主に影響を及ばす 要因と顔る。セメントがほぼ完全に水和反応した場 合に 、 硬化 セメ ント ベー ス ト体 積の 約6割は 数nmサイ ズ の基 本粒 子や ゲル孔、毛細空 隙から誼 るカルシウムシリ ケート水和物ゲル(以後C‑S‑Hゲルと記す)で占有される。したがって、コンク リートの核種の収 着性能や拡散はC‑SーHに大き く左右されるといっても過言では教い。そのため、

核種の収着性能や 拡散を定量的評価の高度化の 観点から、C‑S‑Hゲルの構造同定、特に環境に対す る構造安定性が大 きを関心事と教っている。

  本研究ではC―S‑Hゲル構造のより高精度教解 析を行うために、29Si MAS NMR,トリメチルシリ ル化 法 (以 降TMSと 記す )、XRDを用 いてC‑SCHゲルを構成 する基本粒子(以後C−S−H粒子と記 す )の 構造 を、 低 温型 示差 走査 熱 量計 (以 後低 温DSCと 記す ) と2H NMRによ ってC‑S‑Hゲ ル 中 の 細 孔 構 造 と 細 孔 中 に 含 ま れ る 水 分 子 の 運 動 性 に つ い て 同 定 し た も の で あ る 。   本論文はこれら の研究成果をまとめたもので あり、6章から汝る。

  第1章は序論であ り,本研究の背景および目 的について述べるとともに既往の研究を概観し,本 論文の構成につい て述べた。

  第2章 で は 、C‑S−Hの キ ャラ ク タリ ゼー ショ ンの た めに 本研 究で 用い た2H NMR、29Si MAS NMR、TMS、XRD、 低 温DSC、 水 蒸気 吸着 法( 以 後BETと 記す )を どの 測定 方 法お よび 解析 手 法 について述べてい る。

  第3章 ではC‑S―H粒子の構造 について、時間軸上での変化 も含めて白色セメントの硬 化ベース ト中 を 用い て検 討を 行っ て いる 。C‑S‑H粒子 の構造は、1.4nmトバモライトの基本構造 と同様に Ca‑0層とSi04四面 体の重合鎖(以後シリケート アニオンと記す)との層状 構造を有していると考     ー799−

(2)

え、29Si MASーNMRおよびTMSを用いてシリケートアニオンの変化からみたC‑S‑Hの構造およ びその経時的変化について同定した。また、C‑SーHを生成するセメントの主要鉱物であるC3Sと C2Sの溶出 量をXRD・リー トベルト 法を用いて定量化し、29Si MAS‑NMRやTMSや算出される シリケートアニオンの鎖長分布の時間的変化と比較することにより、シリケートアニオンの進展に ついても考察を行った。その結果、シリケートアニオンの全てがただちに重合反応を起こしDimer 以上の多量体を形成するのでは顔く、溶出したままのmonomerとして存在し、かつ長期材齢まで 存在していることから、C―S‑Hの構造も長期材齢でも熱力学的誼安定相に移行しておらず、それが ト バ モ ラ イ ト と 異 趣 る 構 造 を 有 す る ー 因 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   第4章では、白色セメントの硬化ペースト中のC‑S‑Hゲルに含まれる水分子の動的存在状態に ついて、低温DSCと2H NMRを用いて検討を行った。その結果、非常に小さい細孔に存在し、水 分子で2〜3層の厚さに相当する水分子は、細孔壁面との強く相互作用が作用するため‑50℃にお いても相転移を生じ教いことが判明した。てれに対し、2H NMRはセメント硬化体試料中の重水 は、運動性の高い自由を重水と水和生成物中の‑02H基に相当する運動の拘束された重水という2 種類に分離でき、かつ微細誼細孔中の全ての重水を定量することができた。また、試料周囲の相対 湿度RHを変化させC―S−H中の細孔水の運動性に与える保有細孔壁との相互作用との関係を重水 素の回転相関時間の解析により詳細に検討した結果、自由を重水素はさらに細孔壁表面との相互作 用が強い吸着水と比較的弱い準表面吸着水に分離され、かつその存在状態比率を求めるてとができ た。をお、2H NMRで測定した各相対湿度におけるC−S‑H中の水分量は、BETをどによる既往の 研究成果と比較すると、か橡り多い結果と次った。その一方で構造が安定した試料では2H NMR の結果はBETとほば一致しており、CーS‑Hの細孔は低湿度域においても水分を物理的に保持する インクポトル構造をとることを示すものと考察された。教お、本章での微細空隙の測定において、

低温DSCから得られた結果と多孔体の空隙構造評価で一般的に用いられている水銀圧入法による 結果とを比較した結果、試験体の構造が脆弱である場合には水銀圧入法は組織を破壊することが判 明 し、本研 究で用 いている 低温DSCによる 細孔構造 測定の 優位性を 示すこ とができ た。

  第5章では、環境条件の変化に対するCーS‑Hの構造の変化について検討した。基本粒子である C,S‑H粒子の集合体であるC‑S‑Hゲル中には様々を径の水で満たされた細孔が存在し、前章の結 果から、それらの水分子の物性は細孔の大きさによって大きく異顔ることが予想される。このた め、本章では低温DSCを用いて、乾湿繰り返し、凍結作用および放射線照射教どの環境条件が C‑SーHゲルの構造に影響を及ばすかについて検討した。トバモライトはこのようを環境条件化で も構造的に安定化しているのに対し、C‑S‑Hの構造は養生環境によって大きく変化することが判明 した。これはCーS‑Hゲルの構造が長期に亘って変化していることに起因すると考えられえ、長期 的毅核種の収着性能の向上や拡散の抑制を獲得するためには、トバモライトのよう叔安定相まで C‑S‑Hゲルの構造を変化させる必要があると判断された。

  第6章ではこの論文の総括を行い、これからの展望を述べた。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    名和 豊春 副査    教 授    米田 哲朗 副査    教 授    廣吉 直樹 副査    准教授   平沖敏文

学 位 論 文 題 名

セメント硬化過程で形成されるカルシウムシリケート 水和物の組成及び空隙構造形成に関する研究

  最近の環境問題から原子 力発電の見直しが教されつっあるが、高レベル放射性廃棄物の地中・地 層処分に関しては、いまだ 技術的顔課題が残っており、鋭意研究されている。このよう改状況の下 で、セメント系材料は、耐 カや止水・遮水性といった物理的誼性能の長期安定性以外に、核種の収 着、物理化学作用による核 種の拡散の低減を可能とするため、核種閉じ込め機能を担う人工バリア とし て期 待さ れて い る。 この セメ ン ト系 材料 は数cmの粗骨材から、 数nmのカルシウムシリケー ト水和物ゲル(以後C−S‑Hゲルと記す)まで様々顔スケールの構成要素からをる複合材料であり、

その物性は構成要素間の相 互作用を含めた様々誼スケールでの現象の総和として発現するため非常 に複雑教挙動を示す。しか し、放射性同位体の吸着や拡散性能においてはナノサイズの微細空隙お よびその細孔壁を構成する 水和物の物性が主に影響を及ばす要因と教る。そのため、核種の収着性 能や拡散を定量的に評価す る観点から、C‑S‑Hゲルの組 成や構造について定量化することが大き改 関心事となっている。

  本博士論文は、C―S‑Hゲ ルの基本的顔結晶構造について各種の分析手法を用いて同定すると同時 に、ゲル中に存在する空隙 構造とその空隙中に存在する水分子の運動性について同定したものであ る。 また 、環 境がC‑S‑Hゲルの構造に対 する影響として、湿度変化に 焦点を当て検討を加えてい る。主たる成果は以下に列 挙される。

  第一の成果として、核種 の収着性能に大き顔影響を及 ばすC‑S‑Hゲルの結晶構造について、Si02 四面体の重合反応を精度よ く測定し、実測データに基づ ぃて定量的教評価を行った 点が挙げられ る。 近年 、XRDリ ート ベル ト 解析 や29 Si MAS  NMR抵 どの 各種 分 析技 術の向上がみられ、試製 したCa3 SiOsの水和反応に おけるC−SーHゲルの生成過 程に関する精度の高いヂータが得られるよ うに 社っ てき た。 本 研究ではそれらの実 験手法に加え、トリメチル シリル化(TMS)法を用いるこ とに より 、Ca2Si04お よびCa3Al206が共 存する白色ポルトランドセメ ントでも、Ca3 SiOsから溶 解し たSi042が、 溶解 後に 直 ちに 重合 しDimer以上の多量体を形成す るのでは没く、溶出したま まのMonomerとし て長 期材齢まで存在し ていることを見出すことに成 功している。さらに、29Si MAS‑NMRの測 定デ ー タか らAlの結 合を 考 慮し たSi‑Alの平 均重 合度 を 算出 する 方法 を 提案 し、

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白色 ポル トラ ン ドセメン トの水和で生成したC‑S‑Hゲ ル中のシリケートイオンの 重合度は初期材 齢と長期材齢でほとんど変 化顔く、約4〜5の範囲にあ ることを示した。この値は、CーS‑Hの結晶 構造の基本と考えられてい たTobermoriteの重合度の値9とは大きく異教り、ポルト ランドセメン トの水和で生成したC−S‑Hゲルのシリケートイオン存 在状態の特異性を明らかにし ている。さら に、 この 原因 に ついて解 析を進め、先に述べたMonomerのシリケ亠トイオンの存 在が深く関連し ていることを示した点は高 く評価される。

  第 二の 成果 は 、核種の 拡散の定量的評価の高度化 に必要教C‑S‑Hゲル中の空隙 構造について低 温DSCに よる サー モポロ シメトリー法を用いてヾ試料 調整条件の影響を受けをい 状態で観測した 点である。従来の微細空隙 の測定方法である窒素吸着法や水銀圧入法では、測定試料を乾燥させを ければ教らをらず、これに よって試料中の微細構造が変化することが危惧された。本研究で用いた 方法は、このようを欠点が をく、乾燥に伴うセメント 硬化体の微細構造の変化を捉 えることに成 功し てい る。 ま た、 低温DSCの結 果か ら、 乾 燥に よっ てC‑S‑Hゲル 中の 微 細教 孔が 閉塞 する 一 方で 、粗 大教 空 隙が 増大 する こと を 明ら かに した 。さ ら に、29Si MAS‑NMRによ るC‑S‑Hゲル中 のシリケートイオンの形態 変化との対比から、乾燥に よる脱水がシリケートイオン の重合および Ca‑0層との結合を促進した 結果として上記の空隙構造 の変化が生じたてとを明らか にし、環境条 件がC‑S‑Hゲ ルの 結晶構 造と空隙構造に影響を及ばす ことを結晶構造的に明らか にした点に高い 価値が認められる。

  第 三の 成果 は 、核 種の 拡散 の定 量 的評 価の 高度 化に 必 要顔 微細 孔内 の 水分 子の 運動 性を2H NMRを 用 いて 定量 化し たこ と であ る。2H̲NMRの測 定結 果よ り、 白 色ポルトラン ドセメント硬化 体中の水は、自由教水分子 と水和生成物の‑02H基に相当する運動が拘束された水分子に大別され、

さらに自由顔水分子は細孔 壁との相互作用が強い吸着水と比較的弱い準表面吸着水に分離されるこ とを示した。核種の拡散と の対比は未だであるが、これらの水分子の運動性を考慮することによっ て核種の拡散を予測できる 技術が実現されることが期 待される。

  これを要するに、著者は核種閉じ込め機能を担う人工′ヾリアとしてのセメント系材料の設計・安 全評価において重要改役割 を担うカルシウムシリケー ト水和物の組成および空隙構 造を定量化し たものであり、資源材料工 学およびセメント化学に貢献するところ大数るものがある。よって著者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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