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九州地方における春の強風について

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とを指摘した。稲村ほか (2009) はシミュレーション解 析によって,南東からの地衡風のもと,地峡風とおろし 風の効果が働いた結果,「まっぼり風」が吹くという裏 づけ研究を行った。 このように九州地方における強風に関する研究は行わ れているが,それらは総観スケールあるいは局地スケー ルの解析であり,九州の風系を発生要因のパターンに分 け,局地的な現象を総観場に主な視座を置いて解析して いくという切り口からの研究はほとんどなされていな い。そのことは,風に係わる事柄がほぼ網羅された真木 ほか (2011) を参照することによっても理解できよう。 北海道内の局地風については,河合ほか (2008) や佐 川 (2009) によって,発生要因のメカニズムを含む検討 がなされており,水平スケール数10km~数100kmの局 地的な強風という観点から比較参照することができる。 また,山川 (1988a) は日本各地の局地風の特性を,風 向・風速の発現状況を中心として比較検討しており,局 地風の地域性を把握するという点で,本研究の遂行に関 連している。 1  はじめに 日本では一般に冬・春季,台風期の晩夏・秋季に強風 が多い。特に九州は古来,災害につながる強風が発生し ており,その特徴を研究することは防災の観点から大変 重要である。 河村 (1977) は全国の地上風分布図のなかで,傾度風 別の風系特性を明示した。藤部 (1997) は日本を北・ 東・西・南西に分け,風の地域特性や季節的特性を明ら かにした。局地風観測グループ (1986) は大分市で海陸 風の立体観測を行ない,海風層の厚さが600mを超えな い比較的小規模のものであるが,地形効果で強風となる 場合もあることを解明した。 九州の局地風のなかで最も著名な「まつぼり風」は阿 蘇山カルデラから外輪山の切れ目を通して冷気が流出す る特性をもっている (小野寺,1975)。黒瀬ほか (2002) は,春に850hPa高度付近で10m/s以上の東南東~南南 東の風が吹くと阿蘇山で山越え気流が形成され「まつぼ り風」が発生し,その風下の地域に農業被害を及ぼすこ

尾花 麻美・田畑 弾・山川 修治

In this research, the strong winds in the Kyushu district in spring are analyzed to clarify the mechanism of its genera-tion factor in the classified three regions. The strong winds over the whole Kyushu blow before or after passing a long cold front accompanied with developing low pressure system. The strong winds in the region which is represented by Hirado and Fukuoka chiefly blow from south such as the warm comber belt before passing a cold front. In the region rep-resented by Oita and Nobeoka, they mainly blow as leeside downward wind after the passage of a cold front. In the region represented by Kumamoto and Kagoshima, they especially blow along the southern coast of Honshu under the pressure pattern of east-high, west-low. The high frequent period of strong winds in spring changed from in the 16th in 1950-1965 to 13th pentad in 2001-2007.

Keywords: Kyushu, spring, strong wind, depression track, Oroshi, warm comber belt

九州地方における春の強風について

The Spring Strong Winds in the Kyushu District

Mami OBANA

, Dan TABATA

and Shuji YAMAKAWA

(Received October 31, 2011)

Department of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University: 3-25-40 Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan 日本大学文理学部地球システム科学科

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本研究ではそれらの先行研究を参考にしつつ,九州地 方で春季に発生する強風を対象として,風系分布パター ンに主眼を置いて地域に分け,その地域ごとに発生要因 のメカニズムについて,その地形的要因の特徴を含めて 明らかにし,災害の防止や軽減に貢献することを目的と する。 2 使用データおよび解析方法 2.1 使用データおよび対象地域 地域バランスを考慮して,九州6 県における気象庁の 気象台・測候所から,平戸・福岡・大分・延岡・熊本・ 鹿 児 島 の6 地点を選択し (図 1),それらの風向風速 データを使用した。事例当日の気圧配置や上層の大気の 状態をみるために,気象庁刊行のアジア地上解析天気 図,高層天気図 (700, 850hPa) を使用した。前線面の判 断や移動性高・低気圧の鉛直構造を調べるために,気象 庁刊行の高層気象観測年報から平戸・大分・延岡・熊本 におけるウインドプロファイラデータを利用した。対象 期間は2001~2007年である。 2.2 解析方法 気象庁データから,平戸・福岡・大分・延岡・熊本・ 鹿児島の6 地点を選択する。10分間平均の最大風速で はなく,1 分間平均の最大瞬間風速データを用い,15m/s, 20m/s,25m/s以上の観測日を抽出する。最大瞬間風速 データを使用したのは災害に直接影響を及ぼす可能性が 高いものをみるためである。また6 地点の暴風警報基準 値が平均風速20m/sであることを考慮して,各地同一 基準の風速で抽出する。上記の抽出日について,半旬で 出現グラフと風向グラフを作成する。九州全域に強風を 及ぼすものをみるため,全6 地点で15m/s以上かつ 2 地点以上20m/s以上の日を抽出する。九州をパターン 分類するため,2 地点が15m/s以上かつ 1 地点以上が 20m/s以上の日を抽出する。 各事例の地上天気図,高層天気図,ウインドプロファイ ラ・データに基づいて解析し,強風吹走時のAMeDAS による風系図を作成するとともに,高・低気圧の経路に ついての合成図(本稿では図略)も作成する。それらに 基づいて総合的見地から,強風地域のタイプ別に概念図 をまとめる。 3 結果 3.1 強風発現頻度の変動 強風の発現の季節内変動をみるために,九州の6 地点 における半旬別の頻度状況を示した (図 2)。その結 果,全地点において13半旬目 (3/2~3/6) に強風が増加 し,強風の特異半旬を示していること,ならびに,20半 旬 (4/6~4/10) と27半旬 (5/11~5/15) は前後の半旬に 比べて強風日が少ないことが判明した。冬型気圧配置の 頻度が減少する頃の3 月上旬に強風が発生しやすいこと に関する要因解析結果については後述する。また,平戸 は強風の発現頻度が高く,それに比べて熊本は少ない。 これは沿岸に位置している平戸では強風が吹きやすく, 一方,周囲の大部分が山地の熊本においては強風が吹き にくいというような,それぞれの周辺の地形環境が効い ていると考えられる。 ここで,関連する先行研究の結果と比較しておこう。 山川 (1998b) によれば,春の気圧の谷の出現ピークは16 半旬 (3/17~21) にあり,本研究のピーク13半旬 (3/2~ 6)とずれが認められる。それは中央日本に主眼を置き つつも日本付近全域を対象とする総観気候学的研究であ り,九州もその対象領域に含まれ,両研究の対象地域差 に関しては問題なく,ピークのずれは統計期間の相違に よるものと考えられる。つまり,山川 (1998b) に示され た低気圧活動のピークが1950年代~1960年代前半に明 瞭だったのに対して,本研究の2001~2007年において は強風の発現ピークが半月ほど早まった理由は,1980年 代後半から明瞭化した地球温暖化傾向に連動するもので あり,春季の発達低気圧通過のピークが半月ほど早まっ たことによると解釈される。 図1  対象地域と調査地点 赤丸は使用した気象台・測候所の地点を示す。

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り,その谷に沿って強風が吹き降りる「まつぼり風」が 関係している可能性が十分にある。一方,鹿児島は3・ 4月に西~北西の強風が多い。 4 解析 4.1 九州全域の強風事例解析 九州全域で強風が観測された16事例 (表 1) のうち, 代表例は2004年 3月6日であった。発現時刻を含めて, ここに再録する。 3.2 風向の地域性 九州の6 地点における風向発現頻度グラフを作成した (図3)。平戸は 3月に北西~北と南より,4・5月は南・ 北よりの強風が多い。福岡は平戸と特徴が類似してい る。大分は3月に西~北西の強風が多い。延岡は 3・4 月に西よりの強風が多い。熊本は全体的に強風が少な く,風向はほぼ西よりである。また,熊本の5月下旬に 東よりの風が確認できる。熊本は阿蘇山の西側に位置 し,阿蘇カルデラの切れ目から西方に谷筋が伸びてお (a) (c) (e) (b) (d) (f ) 図2  (a)平戸(b)福岡(c)大分(d)延岡(e)熊本(f)鹿児島における半旬別最大瞬間風速の出現頻度 25m/s    20m/s    15m/s

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地で西ないし北西からの強風が吹走したわけである。 これは 「 春一番 」 や 「 メイストーム 」 をもたらす低気圧 通過後の地上天気図 (宮沢,1982) と類似している。低気 圧の中心の通過経路は,日本海,太平洋沿岸,日本海と 太平洋沿岸の2 か所に中心をもつ二つ玉低気圧と事例に より異なるが,強風発現時における総観場はいずれも類 似している (図 6)。 代表例の気象衛星の画像 (図 7) から明らかなように, ・平戸12 : 59 NW 21.3m/s,福岡06 : 03 WNW 20.5m/s ・大分12 : 59 WNW 19.1m/s,延岡13 : 10 W 20.0m/s ・熊本16 : 31 NW 17.3m/s,鹿児島03 : 39 NW 20.9m/s 天気図から日本海と南岸を東北東に進む低気圧・寒冷 前線の通過後 (図 4)に,北西よりの強風が卓越したこ とがわかる (図 5)。つまり,寒冷前線通過後,西高東 低の気圧配置に変化し,低気圧の発達と西からの高気圧 の張り出しによって気圧傾度が強まるとともに,九州各 (a) (c) (e) (b) (d) (f ) 図3  (a)平戸(b)福岡(c)大分(d)延岡(e)熊本(f)鹿児島における風向発現頻度 25m/s    20m/s    15m/s

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表1  対象強風事例の年月日および発現地点別にみた日最大風速時の風向・風速 (太字:代表的事例) 九州全域の 強風事例日 平戸(m/s) 福岡(m/s) 大分(m/s) 延岡(m/s) 熊本(m/s) 鹿児島(m/s) 2001年 3 月 4 日 NW 26.1 WNW 21.4 W 19.1 W 24.8 WNW 23.4 WSW 23.6 2001年 3 月 8 日 NW 22.9 NNW 22.9 W 17.9 W 23.5 W 21.2 W 25.2 2001年 3 月29日 NW 18.3 NW 17.1 NW 20.6 WNW 20.9 NW 17.2 NW 20.5 2002年 3 月 6 日 WNW 20.5 W 18.4 WSW 16.9 WNW 21.7 WNW 17.0 N 20.9 2002年 3 月23日 NW 20.6 WNW 18.2 NW 20.1 W 18.0 WNW 15.8 NW 16.9 2004年 3 月 5 日 WSW 23.5 WNW 25.2 SSW 15.8 S 15.5 SW 23.0 WNW 18.9 2004年 3 月 6 日 NW 21.3 WNW 20.5 WNW 19.1 W 20.0 NW 17.3 NW 20.9 2004年 4 月 2 日 W 19.2 WNW 20.5 W 16.1 WNW 20.9 W 18.8 WSW 19.9 2005年 3 月24日 NW 23.1 W 22.0 W 20.6 W 23.6 WNW 20.2 NW 24.4 2006年 3 月16日 NW 20.5 W 18.6 W 20.0 WNW 24.9 WNW 20.4 W 22.0 2006年 3 月28日 NW 21.2 WNW 18.3 W 15.4 WSW 24.3 W 19.2 WNW 20.8 2006年 4 月 2 日 W 17.7 W 18.7 WNW 23.2 W 24.5 W 17.7 NW 19.8 2006年 4 月20日 W 20.7 WNW 21.7 W 23.1 W 26.7 W 19.0 WNW 23.7 2007年 3 月 5 日 WNW 17.6 S 22.1 W 15.0 WNW 20.4 WSW 15.9 WNW 17.1 2007年 4 月 4 日 NW 18.9 NNW 20.3 WNW 19.9 WNW 20.0 W 18.0 W 20.2 2007年 4 月16日 NW 19.4 NNW 22.0 NNW 17.8 WSW 16.2 WSW 19.3 WSW 22.0 平戸・福岡の 強風事例日  平戸(m/s) 福岡(m/s) 2001年 3 月 3 日 WNW 21.7 WNW 18.6 2002年 3 月21日 SW 23.2 SSE 24.3 大分・延岡の 強風事例日  大分(m/s) 延岡(m/s) 2002年 4 月 6 日 S 20.7 SSE 18.7 2002年 4 月16日 S 22.7 SE 17.0 2001年 3 月31日 NW 16.1 W 21.2 2003年 4 月29日 SSW 20.3 SSE 20.5 2003年 4 月 8 日 SW 22.1 W 24.2 2004年4月26日 S 24.1 SSE 21.6 2004年 4 月19日 W 21.2 SSW 21.3 2005年 4 月10日 SSE 25.2 SE 20.9 2006年 4 月21日 SSW 24.1 W 27.2 2005年 4 月20日 S 23.4 SSE 21.3 2007年 5 月17日 W 17.8 W 20.4 2005年 5 月18日 S 22.9 S 25.6 熊本・鹿児島の 強風事例日   熊本(m/s) 鹿児島(m/s) 2006年 4 月10日 SSE 25.2 SE 20.9 2006年 5 月19日 S 20.7 SSE 16.5 2003年 5 月28日 E 20.6 E 18.0 2007年 3 月 4 日 S 25.9 SSE 22.2 2003年 5 月29日 E 21.1 E 20.0 2007年 3 月29日 S 20.5 S 16.8 2006年4月4日 W 20.6 SW 17.7 2007年 3 月31日 S 21.2 S20.3 2007年 3 月15日 NE 18. N 23.7

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図4  九州全域で強風発現がみられた時の地上天気図(2004年3月6日09 JST) 図5  九州全域強風事例の風系 風速の矢羽根:線分1m/s,旗 5m/s 図6  九州全域強風事例の概念図 ピンクの矢印:該当する強風

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図7  気象衛星GOES赤外画像(2004年3月6日13 JST) 前線・高低気圧:雲系等から解析,⇒:卓越風。

図8  平戸・福岡で強風発現がみられた際の地上天気図(2004年4月26日21 JST)

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寒冷前線南東縁部の南風は,Browning (1990) が「湿 暖コンベアベルト」と名付けた暖気移流域(湿舌)であ 発達過程の低気圧の中心から南西に伸びる活発な寒冷前 線の存在が特徴的であり,その長大な寒冷前線が通過す る前後において,南西風ないし北西風が卓越し,九州の 急峻な地形の影響を受けつつ強化して吹走したことを理 解できる。 4.2 平戸・福岡の強風事例解析 平戸・福岡の強風事例は14例挙げられる (表 1)。そ のなかで代表例は2004年 4月26日であり,その最大瞬 間風速発現時のデータを記す。 ・平戸21 : 05 S 24.1m/s,福岡21 : 38 SSE 21.6m/s 低気圧が西から発達しながら九州北部付近に到来し, 温暖前線の通過後,寒冷前線が通過する前に強風が発現 している。850hPa高層天気図 (図 9) では九州に湿域が かかっており,低気圧の暖域における反時計回りの収束 を伴う渦が明瞭である。平戸のウインドプロファイラ データ(図10) でも26日14時頃から濃い青色領域(降 水域)が見られ,低気圧の中心が接近して通過したこと がわかる。地形効果も加わり地域差が現れるが,風向は 一般に南よりである (図11)。地点ごとの風系をみる と,冬型の気圧配置時になってから西風・北風で強風が 吹く場合もある。しかし,代表例に関する限り,低気 圧・前線系が通過する直前の南風で最強の強風を記録し た。 図10 平戸のウインドプロファイラ(2004年4月26日; 上00~12 JST,下12~24 JST) 図11 平戸・福岡強風事例の風系 風速の矢羽根:線分1m/s,旗 5m/s

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・大分11 : 17 SW 22.1m/s,延岡14 : 21 W 24.2m/s 低気圧が発達しながら九州北方を通過した (図13)。 これは九州全域に強風を及ぼす日の気圧配置に類似する が,発達度は当事例の方が勝っている。寒冷前線通過 後,西からの高気圧の張り出しも強く,気圧傾度が急激 になった。延岡のウインドプロファイラ (図14)には, 気圧の谷の通過の状況が克明に記録されている。赤の破 線で示した寒冷前線面の通過後,九州各地で風向は一般 に西よりになった (図15)。このタイプは地形が大きく 関与している。延岡の西側には九州山地があり,大分の 西側には九重連山が存在する。ウインドプロファイラ・ データの推移から,延岡では10:10頃に寒冷前線が通過 し,その後,下降流が断続的に発生していることを確認 できる。その波状的な下降流が強い地上風につながった 可能性が高い。寒冷前線通過後,西~北西の風が吹走す るようになり,それが連山・山地を越えて大分や延岡に 強風が吹き降りた(図16)。つまり,関東地方の冬季の 空っ風に類似した「おろし」(吉野,1986;荒川,2001; 大和田,2003)の効果が顕在化したためであったと考え られる。また,「十勝風」 (河合ほか,2008) とも類似し た構造をなしていたとも推論できる。ダウンバースト (小元,1987) ほどの強風ではないが,ウインドプロファ イラ・データや500hPa鉛直P速度図 (図略) から読み取 れるように,対流圏中層の空気塊が風下で地表まで下降 して来たものと解釈される。 り,テーパリング雲を伴うスコールラインを形成してい ることが多い (小倉,2000)。九州北部では,地形効果も 加わって,風害の恐れが高まる (図12)。 4.3 大分・延岡の強風事例解析 大分・延岡の強風事例は5 例挙げられる (表 1)。そ のなかで代表例は2003年 4月8日であり,その最大瞬間 風速発現時のデータを記す。 図12 平戸・福岡強風事例の概念図 ピンクの矢印:該当する強風 図13 大分・延岡で強風発現がみられた際の地上天気図(2003年4月8日15 JST)

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図14 延岡のウインドプロファイラ(2003年4月8日:上00 JST~1 2JST,下12 JST~24 JST) 図15 大分・延岡強風事例の風系 風速の矢羽根:線分1m/s,旗 5m/s 図16 大分・延岡強風事例の概念図 ピンクの矢印:該当する強風

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強風時の天気図 (図17) をみると,九州南方の海上に 低気圧を伴う停滞前線が存在していることを確認でき る。ウインドプロファイラ・データ (図18) をみると, 下層で長時間にわたり強風が吹走していたことがわか る。日本東方の高気圧から停滞前線上の低気圧に向かう 4.4 熊本・鹿児島の強風事例解析 熊本・鹿児島の強風事例は4 例挙げられる (表 1)。そ のなかで代表例は2007年 3月15日であり,その最大瞬 間風速発現時のデータを記す。 ・ 熊本 18 : 20 NE 18.9m/s,鹿児島 17 : 17 N 23.7m/s 図17 熊本・延岡で強風発現がみられた際の地上天気図(2007年3月15日15 JST) 図18 熊本のウインドプロファイラ(2007年3月15日; 上00~12 JST,下12~24 JST)

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回してきた風が強風となって熊本へ到達した (図19) と みられる。鹿児島付近は,地峡風となり,風が収束し強 まったものと推測できる。いずれにしても,本州南岸か ら九州に進入する強風が地形効果でさらに風速を増すも のと捉えられる (図20)。 5 まとめ 強風発生の発現頻度は,全6 地点の13半旬目 (3/2~ 6)に強風が増加し,強風の特異半旬を示している。20 半旬 (4/6~4/10) と27半旬 (5/11~5/15) は前後の半旬 に比べて強風日が少ないことが判明した。全体的に啓蟄 前後の3月上旬に強風が発生しやすい要因があることが 示されており,また,平戸は強風頻度がいずれも多く, それに比べて熊本は少ない。これは沿岸に位置している 平戸,周囲が山地の熊本という地形的な要因が関係して いるものと考えられる。 山川 (1988b) によれば,春の気圧の谷の出現ピークは 16半 旬 (3/17~21) に あ り, 本 研 究 の ピ ー ク13半 旬 (3/2~6)とずれが認められる。これは春季の低気圧活 動が年代とともに推移し,1950年代~1960年代前半に は3月20日前後の彼岸の頃に最も多かった「春の嵐」 が,近年は半月ほど前倒し的に早くなり,3月上旬に出 現する傾向に変わってきたものと解釈され,防災上,留 意しなければならない現象といえる。 強風発生の要因は冬型気圧配置時を除けば,いずれも 低気圧に伴う前線によるものであった。低気圧が九州付 近にやってきて寒冷前線の通過前後に,気圧傾度 (勾配) が急激になったり,風のシアが非常に大きくなって強風 が発現したと考えられる。 九州全域に強風を及ぼす日を基にして3 つの領域に分 けることができた。まず,全域で強風が記録されたの は,低気圧が発達しながら通過する場合で,衛星画像 (図7)にみられるように,顕著な閉塞構造と寒冷前線 の低気圧システムが特徴的で,長大な寒冷前線の通過前 後に強風が観測される。 平戸・福岡で強風が観測されたのは,九州の日本海沿 岸を低気圧が通過する場合である。寒冷前線通過前に南 よりの強風「温暖コンベアベルト (WCV)」が卓越する なかで,南西風を受けて地形的な要因も加わって南風が 強化されることが判明した。 次に,大分・延岡で強風が記録されたのは,寒冷前線 通過後に西寄りの強風が特に強まる場合であることがわ かった。これはそれぞれの西側に存在する九州山地や九 重山から吹き降りてくる「おろし」の特性をもっている と考えられる。 強い東よりの風である。 熊本へは,本州・四国の南岸に沿う東風が風速を増し, 大分県鶴御崎付近から風が入り込み,阿蘇山の周辺を迂 図19 熊本・鹿児島強風事例の風系 風速の矢羽根:線分1m/s,旗 5m/s 図20 熊本・延岡強風事例の概念図 ピンクの矢印:該当する強風

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を多事例で解析して比較すること,本稿で示した年代的 な強風発現時期のシフトが,より長期的にどのように推 移しているのかということ,が挙げられる。 気象災害が,従来の規模を超えて発生する傾向が強ま るなか,この種の研究の重要性が高まりつつあることを 書き留めておきたい。 謝辞 日本大学文理学部・元非常勤講師の田平耕治先生,非常勤 講師の佐野清文先生には要所で建設的なご指導を賜りまし た。本研究は筆頭著者の2010年度地球システム科学科卒業 論文に基礎を置いて構成したもので,折に触れてご助言をい ただいた先生方・先輩諸氏・同級生に心から感謝致します。 最後に,熊本・鹿児島で強風が観測されたのは,太平 洋沿岸に存在する停滞前線 (梅雨前線) の影響を受け, 東高西低の気圧傾度が増大して強風が発生する場合であ ることがわかった。これはそれぞれ鶴御崎と都井岬から コーナー効果を受けつつ進入した強風が,地峡風として の効果も加わってさらに強化されたものと考えられる。 結論的には,九州に強風をもたらす三大要因として, ① 特有の気圧配置,②気圧傾度の増大,③急峻な地形 の効果による増幅が挙げられる。その結果,地域性の明 瞭な強風が発現するものと理解される。 今後の課題としては,九州地方における春季以外の強 風の発現状況も検討し,ウインドプロファイラ・データ 荒川正一(2001):局地風のいろいろ.成山堂書店,149p. Browning,K.A. (1990) : Organization of clouds and precipita- (1990) : Organization of clouds and precipita-1990) : Organization of clouds and

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表 1  対象強風事例の年月日および発現地点別にみた日最大風速時の風向・風速  (太字:代表的事例) 九州全域の 強風事例日 平戸(m/s) 福岡(m/s) 大分(m/s) 延岡(m/s) 熊本(m/s) 鹿児島(m/s) 2001年 3 月 4 日 NW 26.1 WNW 21.4 W 19.1 W 24.8 WNW 23.4 WSW 23.6 2001年 3 月 8 日 NW 22.9 NNW 22.9 W 17.9 W 23.5  W 21.2 W 25.2 2001年 3 月29日 NW 18.3
図 4  九州全域で強風発現がみられた時の地上天気図(2004年3月6日09 JST) 図 5  九州全域強風事例の風系 風速の矢羽根:線分 1m/s,旗 5m/s 図 6  九州全域強風事例の概念図ピンクの矢印:該当する強風’040306 13 : 00
図 7  気象衛星 GOES赤外画像(2004年3月6日13 JST) 前線・高低気圧:雲系等から解析,⇒:卓越風。

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