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本学教員出版物の紹介

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Academic year: 2021

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『エネルギー社会経済論の視点』

大澤 正治 (経済学部教授)

 はからずも、出版助成をいただく幸運に恵まれた。 何気なく使っている エネルギーに関して、色々と視点を変えて考えてみた。

 そもそも、エネルギーとは何か。 エネルギーは姿も形も見えないが、何か を介してはっきりとわかる。 そして、エネルギーがなければ生活できない という。

 学生に、日頃、使っているエネルギーは何かと聞くと、蛍光灯という答 えが返ってくる。 すると、私は、蛍光灯を介して、エネルギーのしごとの 恩恵を受けている、と説明する。 私たちは、電力会社に電気料金も支払うが、蛍光灯も買わな ければ、エネルギーの恩恵を授からない。 このように考えると、エネルギーのために私たちが 支払うのは光熱費だけではない当たり前のことが理解できるはずである。

 話しを変えて、学生に暖房方法の選択を迫るのも愉快である。 電気ストーブとガスストーブ の比較もけっこう難しい。 ある時、賢明な学生がいた。 彼は、暖房が不必要となる夏、ストー ブが役立つかを考えるという。 その点では、電気炬燵が良いという。 テーブルとして通年、使 える。 ストーブでは保管コストがかかると彼は指摘する。

 このような話しは、経済学としてオーソドックスに考えることができる易しい応用であるが、

どうも、世の中で考えているエネルギーの視野からは排除されている。

 だれもが同意する現代的なエネルギーの常識は、化石エネルギーに代替するエネルギーをだれ もが待ち望んでいるということである。 確かに正しい考え方であるが、問題は、世界のエネル ギー消費の9割も占める化石エネルギーからどのように撤退するかである。 経済学としては、そ のコストを考える。 スクラップは、ビルドよりも大変なことである。 スクラップしないでビル ドするともっと大変なことになる。

 色々と言っておきたいこと、世の中に問いてみたいことが多かったが、出版してから思い出し たこと、思いついたこともたくさんある。 さあ、次の機会のためにエネルギーのストックを始 めよう。 次回の題はもう決めている。『エネルギー社会経済論の失点』である。(著者)

 エネルギーフォーラム 2005年3月 237頁 定価(本体1800円+税)。

『アルベルトゥス・マグヌス 鉱物論』

沓掛 俊夫 (経済学部教授)

 西欧ラテン世界において、盛期スコラ学の時代といわれる13世紀に、

自然学の広範な分野についてアリストテレスのラテン語訳された著作の註 釈やそれに基づく著述を行ったドミニコ会士のアルベルトゥス・マグヌス

(Albertus Magnus; 1193?‒1280)がいる。 彼はトマス・アクィナスの師 でもあり、アリストテレス主義スコラ哲学の創始者でもあるが、鉱物界に も関心が深く、『鉱物論  』全5巻を著した。 今回翻訳したラテ

本学教員出版物の紹介

愛知大学出版助成図書

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ン語の原典は、Borgnetの編集したアルベルトゥス・マグヌスの全集( , 38 vols.,  Paris, 1890‒1899)の中の第V巻に収められたものである。

 アルベルトゥスは鉱物界を石・金属・中間物の3つに分類している。 それらの産地、産状やさ まざまな性質を記載し、その成因や護符や医薬としての効能などを論じている。 石については、

古代ギリシア以来の四元素(火、気、水、土)説で、質料(構成物質)や性質を説明しているが、

金属についてはアラビア錬金術の硫黄―水銀説に基づいてそれらを解釈している。 全部で約150 種の鉱物(岩石・鉱物・鉱石・金属など)が記載されている。 したがって、この書物は、古典 古代(ギリシア・ローマ)時代とアラビアの鉱物に関する知識を集大成したものとも言えるが、

アルベルトゥスが鉱山で観察したことや自身で行った錬金術の実験の結果をも加味して書かれて いるので、鉱物界について彼が独自に築き上げた体系でもある。

 近代語とは違って、古典語の文献を翻訳することは相当の困難が伴うが、特に自然科学の分野 の文献では、現在と当時とでは概念や用語が大きく異っており、適当な訳語を選ぶ(または造る)

のに苦労した。 ラテン語はカエサル(シーザー)の「来た、見た、勝った」ではないが、極めて 簡潔に書かれているために、字面だけを訳してもほとんど意味が通じず、その背景をも汲み取っ て訳さなければならない。 そのため、関連した事項についての幅広い知識が必要とされる。 さ らに、アリストテレスの質料と形相、可能態と現実態の哲学に基づいて解釈されているので、そ の方面の知識も必要とされた。(著者)

 朝倉書店「科学史ライブラリー」の一冊 2004年12月 vii+188頁 定価(本体3600円+税)。

『茅盾研究 ― 「新文学」 の批評・メディア空間―』

桑島 由美子 (経済学部助教授)

 「メディア」という言葉から今日イメージされるのはマス・カルチャー 研究であったり表象文化論であったりするが、本稿は大衆文化・通俗文 学とは対立概念である「新文学」(知識エリートの文学)と近代メディア との連繋についての一試論であり、十年来の研究テーマである茅盾につ いての専著でもある。20世紀を代表するリアリズム作家・茅盾は90年代 の文化批評において欧化・モダニティ・メディアなど様々な視点から議 論される対象となって来ている。 それは茅盾が、出版メディアとの関わ りから「新文学」制度化の象徴的存在であり、国民国家統一を背景にして進められた『中国新文 学大系』編纂をはじめ、創作理論・作家論・メディア批評においても時代の先蹤と位置付けられ るためである。 茅盾の伝記資料や近代出版関係の資料が出揃った今日、五四期に文化価値の転 換をもたらし、20年代から40年代において「公共圏」を半ば独占した「新文学」と近代メディ アとの連携について考察がなされても良い時期ではないだろうか。

 以下各章の内容について触れると、第一章では商務印書館編訳所の文化史的背景と文学研究会 同人の文学論・初期の評論、第二章では国民革命期のメディア(『民国日報』を中心として)、第 三章では30年代の文芸誌・文化期刊と初期小説・『子夜』における物語コミュニケーションの多 次元性、第四章では抗日戦期文化界と出版メディア(「生活書店」を中心として)をテーマとし て取り上げている。未公開資料や現地調査の成果も併せ、同時代の文学研究多元化を受けての「重 写文学史」や経典作家の再評価を取り込みつつ、90年代における茅盾研究の総括と新しい視点 を提示した。

 拙著の刊行は平成16年度愛知大学学術出版助成を受けてなされたものであり、心から感謝を 申し上げたい。(著者)

 汲古書院 2005年2月 viii+328頁 定価(本体7500円+税)。

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