詩跡( 歌枕) 研究による中国文学史論再構築
‑詩跡の概念 ・機能 ・形成に関する研究‑
研究課題番号
17320053
平成1 7
年度 〜平成1 9
年度 科学研究費補助金(基盤研究 (
B))
研究成果報告書平成 2 0 年 3
月研究代表者 植 木 久 行
弘前大学人文学部教授
詩跡( 歌枕) 研究による中国文学史論再構築
一詩跡の概念 ・機能 ・形成に関する研究‑
研究課題番号
17320053
平成1 7
年度 〜平成1 9
年度 科学研究費補助金(基盤研究 (
B))
研究成果報告書平成 2 0 年 3月
研究代表者 植 木 久 行
弘前大学人文学部教授
は しがき
本書 は、平成
1 7
年度 〜平成1 9
年度科学研究費補助金 ・基盤研究(B)
「詩跡 (歌枕) 研究 による中国文学史論再構築一詩跡の概念 ・機能 ・形成 に関す る研究‑」の研究成果に関する報告書である。
本研究の 目的は、詩跡の概念 ・機能 ・形成 を詳 しく探求 し、詩跡 がひろ く中国文学全 体 のなかで、 どの ような役割 を果 た して きたかを考察することである。 詩跡 とは、単 な る地名ではな く、歴代 の詩人 たちが詠みかさね、刻みつ けて きた詩心 の伝統 を深 々 とた たえる、古典詩語 と化 した地名 を指 し、特定の豊 かな詩情 と長 い風雅 の伝統 を瞬時に喚 び起 こす機能 を備 えている。 それはまた、 当地 を訪れた詩人 たちの詩情 に点火 し、新 し い創造への源泉 にもなった。
こうした中国の詩跡研究 は 日本独 自の発想であ り、中国の学界では全 く見 られ ない研 究領域 として、 日本文学 の歌枕 ・俳枕研 究の手法 と成果 を参照 してい る。 詩跡 の多 く は、 当地 を実際 に訪れた詩人 たちの創造 にも とづ くとい う点では、 「現実 の見聞の上 に 立 ち、俳譜 の 目か らとらえ直 された
」
(尾形伐「
『俳枕』考」)俳枕 に近いが、辺境 の地では、「居 なが らにして詠 む」歌枕 に近い場合 もある。 詩跡 に刻 まれた詩心の特色 を探 る試み は、
将来、歌枕 ・俳枕研究 にも示唆 を与 えることになるだろう。
本研究の課題 を多角的に論究す るために、毎年
1
回、研究会 を開いた。平成1 7
年度 は、植木 「第
1
次 中国詩跡調査 の 目的地 とその意義」、李 「文化景観 としての詩跡一風景論 もろこしの立場 に基 づいて
‑
」、伊藤 「平安朝物語 に見 る異境 としての唐土」、松尾「
『詩跡』 の 発見」、許山 「杜牧 と揚州」のほか、俳枕 の研究者 として早稲 田大学名誉教授 ・堀切実、詩跡 の研究者 として愛知淑徳大学教授 ・寺尾剛の
2
氏 を招 いて、それ ぞれ 「俳枕考」、「地 図 に記載で きない地名 を どう扱 うか ? 一架空詩跡の問題 を中心 として‑」
を発表 して いただいた。続 く平成
1 8
年度 は、植木 「竹 内実編著 『岩波 漢詩紀行辞典』 に対 す る論評一将来 の詩跡辞典作成構想 と関連 させつつ‑
」、松尾 「南宋時期 の書物 に見 られ る詩跡 的観点 について」、許山 「長安 と詩人杜牧一 長安 出身 の詩人 と比較 して‑ 」 のほか、今 回は俳 枕方面の研究者 として東京学芸大学教授 ・嶋中道則、歌枕方面 の研究者 として群馬大学 教授 ・藤本宗利 の2
氏 を招いて、それ ぞれ 「俳枕 の諸相」
「歌枕 の変遷一信太 の森 をめ ぐっ て‑」 を発表 していただいた。各 自の発表 に対 しては、招待 の研究者 を交 えて活発 に議 論 し、詩跡 ・歌枕 ・俳枕 の概念 ・機能 ・形成 に対す る知見 を深 めた。そ して最後 の平成
1 9
年度 は、植木 「中国歴代の地理総志 に見 る詩跡 の著録 とその展開 一安徽省宣城市 区・池州市、お よび山東省済南市 区を通 して‑」、許山「
『療』字考」、李 「景 観形成 における詩跡の位相一 中国での詩跡調査 を踏 まえて‑」、伊藤「
『浜松 中納言物語』にお ける唐土造形 の方法」、松尾 「実地調査 を踏 まえた詩跡 のあ り方 についての一考察
‑ 111 ‑
一池州 を例 として
‑」
であ り、報告書の作成 に向けて も議論 を重ねた。他方、初 めの
2
年間は、風土 が持つ本質 的情感や現状 を見聞 ・体験 す る実地踏査 が重 要不可欠である、 とい う認識 の下 に、年 に1
度、1
人 (日本文学研究者) を除 く4
人 で、中国の詩跡 の実地調査 と資料 ・情報 の収集 を行 うことに した。本研究 は、多様 な文献 ・ 資料 にもとづ く分析 に加 え、現地調査 を重視 した点 にも特徴 があるため、関連資料 の収 集 と詩跡 の写真撮影 につ とめた。特 に刻 々 と変化す る現状 を映 し出す詩跡 の写真 には貴 重 なもの も含 まれてい るので、 これ を報告書中 に 【附編】 として、調査行程記録 ととも
に一部掲載す ることにした。
本報告書のなかには、○詩跡 を著録 す る文献研究一 両宋期 の 『輿地紀勝』 『方輿勝覧』
等 の価値 を解 明 しつつ、詩跡 の全体像 と詩跡認識 の広 が りを考察 した もの、 ○実地調 査 した安徽省 の、個性 的 な詩跡研究 の具体例、 ○一種 の詩跡辞典 とも見 な しうる竹 内 実編著 『岩波 漢詩紀行辞典
』
(岩波書店、 2 0 0 6
年)が抱 える諸種 の問題点 を論 じたもの、(以上、植木) ○詩跡概念 が明確化 す る宋代、特 に南宋期 の地方志 を調査 して詩跡 的戟 点の形成 と普及 の様相 を論 じた もの、 ○実地調査 した池州市 (安徽省)の
2
つの詩跡形 成 (斉山と杏花村)を通 してみた、作 品の継承性 と現実 の詩跡 の様相 との比較、(以上、松尾)O
「療」
字 の用法 を通 して見 た、中国古典詩人 にお ける南方意識 の変遷 を論 じたもの、(許山) ○文化景観形成 にお ける詩跡 の位相 を論 じた もの、 (李) ○平安 時代 の物語世 界 の造形 と詩跡 ・歌枕 の利用 を考察 したもの、 (伊藤)の諸論考 を含 む。
以上 の論考 は、
3
年間 にわたる研究活動 の主要 な成果であるが、今後 に残 された課題 も少 な くない。忌博 のない ご批判 と懇切 な ご教示 を切望す る。(植木 久行)
平成17年度〜平成19年度科学研究費補助金 ・基盤研究 (B)
「詩跡 (歌枕)研究による中国文学史論再構築一詩跡の概念 ・機能 ・形成に関する研究‑」
研究組織
研究代表者 研究分担者 研究分担者 研究分担者 研究分担者
行梁幸忠樹久守幸秀
木藤尾山植李伊松許
(弘前大学人文学部教授) (弘前大学人文学部准教授)
(学習院女子大学国際文化交流学部教授) (岐阜大学地域科学部准教授)
(静岡大学情報学部准教授)
‑ 1V ‑
交付決定額 (配分額 )
平成
1 7
年度 平成1 8
年 度 平成1 9
年度直接経費 間接経 費 合 計
3, 0 00
千 円 0円3, 000
千 円2
,400
千 円0
円2
,400
千 円1 , 900
千 円57 0
千 円2
,47 0
千 円総 計
研究発表
(1) 学会誌等
7, 300
千 円57 0
千 円7, 870
千 円○植 木 久行 「正確 な読解 と綿 密 な調査 の 「基本 」 を求 む一 竹 内実編 著 『岩 波 漢 詩紀行辞典』論評
‑」
『中国詩文論叢』第
25
集、2 006
年1 2
月○植 木 久行 「中国詩跡考
1
(安徽省) 」
『人 文 社 会 論 叢 (人文 科 学 篇 )
』
(弘前大 学 人 文 学部 ) 第1 7
号、2007
年2
月28
日○植 木 久行 「中国歴代 の地理総 志 に見 る詩 跡 の著録 とその展 開一 安徽省 宣城 市 区 ・池州市、 お よび山東省済南市 区 を通 して
‑」
『中国詩文論叢』第
26
集、2007
年1 2
月○松尾 幸忠 「南宋 の地方志 に見 られ る詩跡 的観 点 につ いて」
『中国文学研究』第
32
期2 006
年1 2
月○松尾 幸忠 「池 州 にお ける二 つ の詩跡一 斉 山 と杏花村」
『中国詩文論叢』第
25
集、2 006
年1 2
月○許 山 秀樹 「中国古典詩人 にお ける南方意識‑ 「痔」 の字 を手 がか りに
‑」
『中国詩文論叢』第
26
集、2007
年1 2
月( 2)
口頭発表○植 木 久行 「中国歴 代 の地理総 志 に見 る詩跡 の著録 とその展 開一 両 (安徽省 池 州市) と北 (山東省済 南市 区) の実例 を通 して‑ 」
早稲 田大学 中国文 学会 第
32
回秋季大会2 007
年1 2
月8
日、早稲 田大学文学部 第1
会議塞( 33‑2
号館 )‑ Ⅴ ‑
目 次
は じめに
[研究報告篇]
中国歴代 の地理総意 に見 る詩跡 の著録 とその展 開 植 木 久 行 1
‑安徽省宣城市 区 ・池州市、お よび山東省済南市 区を通 して‑
中国語跡考 一安徽省‑
正確 な読解 と綿密 な調査 の 「基本
」
を求む 一竹 内実編著 『岩波 漢詩紀行辞典』論評」
[附]竹 内実編著 『岩波 漢詩紀行辞典
』
札記 南宋 の地方志 に見 られ る詩跡的観点 について池州 にお ける二つの詩跡 一斉 山 と杏花村‑
中国古典詩人 にお ける南方意識
‑
「樟」の字 を手 がか りに‑景観形成 にお ける詩跡 の位相 一 中国江南の古城鎮江 の場合‑
『浜松 中納言物語』 に描 かれた和漢混清的世界
一物語世界 の造形 と詩跡 ・歌枕 の利用 をめ ぐって‑
[附 編]
詩跡の調査行程記録 と詩跡関連写真
‑補遺
1・2
の文 を含 む‑‑ Vl ‑
植 木 久 行
33
植 木 久 行
51
植 木 久 行
61
松 尾 幸 思 111
松 尾 幸 忠
11 9
許 山 秀 樹
1 31
李 梁
1 45
伊 藤 守 幸
1 57
説明‑植 木 久 行