芝浦工業大学工学部建築工学科
2013年度卒業論文・卒業設計梗概研究指導:赤堀忍 教授、青島啓太 特任助教 Tae KOBAYASHI
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Promenade
- 歴史を辿る百貨街 -
Keywords
百貨店 購買 都市 K10046-8 小林 多恵
パサージュ 遊歩 展延
1.はじめに
現在の日本は購買のシーンが選べる時代である。百貨店、
スーパー、ショッピングセンター、オンラインショップ…
インターネットの普及により購買の形態が多様化した。しか し、都市と購買の関係性が薄れてきている。「多くの物の中 から、お気に入りの一つを探し出し、購入する」これが購買 の一連の行為である。その行為が行われている場所が建物の 内部やパソコンの画面上に隠れ、都市から姿を消しつつある。
2.研究背景 2.1 購買の現状
[百貨店]
バブル経済であった 1991 年の最盛期を境に百貨店の売上は 低迷している ( 表1 ) 。衣料品のみの売上を見てみると、約半分 の売上にまで下がっている。その原因として、低価格思考が 広まり、ディスカウントショップやショッピングセンターの 展開に伴い若い世代をはじめとした「百貨店離れ」が生じ始 めたことがあげられる。
表1.百貨店全体の売上
売上高
(百万円)減少額
(百万円) 91年=100(%)1991年 9,713,094
—
1002011年 6,134,680 3,578,414 63.2
(出典:百貨店調査年鑑)
[ショッピングセンター]
ショッピングセンターは全国に3069件存在し、現在も増え 続けている。しかし年間で新規に建設される店舗数は減少し てきている。
売上は百貨店同様伸び悩んでいる。また、テナントの入れ 替え時期が早く新規テナントの開発が追いつかず、成熟して いかないことが問題とされている。
[商店街]
現在、商店街は全国に約13000存在している。その中の約 7割の商店街が来街者の減少傾向にある。その原因として
「郊外の大型店の影響」「魅力のある店舗の減少」「業種・
業態の不足」あげられる。空き店舗を放置している商店街が 59%を占め、来街者のニーズや商店街のビジョンについて約 64%が把握していないのが現状である。
反対に、来街者が増加した要因として「集客イベントの実施」
「魅力のある店舗の増加」が挙げられている。
2.2 百貨店とショッピングセンターの違い
ショッピングセンターは不動産管理賃貸業、百貨店は小売 業と経営体制が異なる業種である。両者とも、積層させた建 築の内部に道をつくっているため、都市への広がりを留めて しまっている。また、小売業である百貨店は同一コンセプト のもと、選出されたものが集まる。一方、不動産業であるシ ョッピングセンターは建物に収まった商店街にすぎない。つ まり百貨店の方が一つの建物としての一体感が強い。
2.3 消費者の動向
近年、「信頼」「安心・安全」「愛着」というような項目 が「低価格」であることに対抗してきている (図1)。「低価格 志向」と言われてきた消費者の動向が変化しつつある。
(出典:経済産業省ホームページ)
図1.商品、サービスを選ぶ際のこだわりポイント
3 .研究目的
一つの企業によりトータルコーディネイトされた百貨店の仕 組みを利用し、一連の建物の中で多様な購買のシーンを形成す る。そして、近年薄れている都市と購買の関係性を再構築し、
購買の在り方を豊かにすることを目的とする。また通路として の機能しかもたなかった空間にコミュニケーション空間やメデ ィア空間を作り出す。
4 .敷地
全体として購買に対する低価格思考の割合は減少している が、年代別で見ると若者の割合の方が顕著である。
敷地を東京都渋谷区神宮前5丁目と設定する(図2)。表参道 には高級ブランド店が多く、通称キャトストリートと呼ばれ る旧渋谷川遊歩道にも流行の最先端が集まっている。魅力的 な景観を持ち訪れる人も少なくないが、多くの人は「出来た 商品を選び、購入する」といった至って普通の購買を行って いる。購買のシーンを多様化することで、多くの人により豊 かな購買を体験できる場所を形成する。
60.4 53.6 53.5 50.2 40.8 38.1
0 20 40 60 80 100
芝浦工業大学工学部建築工学科
2013年度卒業論文・卒業設計梗概2
図2.敷地
5.プログラム
百貨店としての単なる展示に留まらない、購買が行われる
「ギャラリー」、イベントを行うことが出来る「ホール、ア トリウム」、商店街としてのコミュニケーションやメディア の空間をもつ「パサージュ」、信頼や安全、愛着を獲得する ための、作り手と買い手がface to faceで購買を行うことが出 来る「アーティスト・イン・レジデンス、アトリエ」を設け る。これらのプログラムが交わることで、通りや購買の在り 方を豊かにする。
6.設計主旨
元々存在する都市の道の一部をパサージュ化することで、一 連のつながりや賑わいをつくりだす。道の展延性を利用し、
賑わいと共に購買を都市に広める。
商店街であるパサージュに百貨店の機能を埋め込み「百貨 街」としての建築を提案する。同一のコンセプトを持つ百貨 街は都市の景観を作り出すパーツとなる。
7.設計手法 7.1 迂回路
通称キャットストリートと呼ばれる通りの下には、渋谷川 が流れている。その現在暗渠となって流れている川は整備さ れ緩やかなカーブを描いているが、江戸から昭和初期の渋谷 川はもっと蛇行していた(図3)。その整備される前の蛇行して いた川の跡が現在の道に残ってる。その川の軌跡を元にキャ ットストリートに迂回路を形成する。
図3.渋谷川の暗渠部分(左)、昭和初期までの渋谷川(右)
7.2 街路計画
既存の道に基づき新たに計画するパサージュの導線を決め る。昔の川の軌跡が残る道と一連のつながりを生みそうな既 存の道をピックアップする。そのピックアップした道に基づ き、一連の導線を決める(図4)。そうして生まれた導線のなか にプログラムを配置していく。
図4.導線計画プロセス(左上→右上→左下→右下)
8.おわりに
失われた、かつての購買方法を再構築することで、消費者 の購買に対する考え方が豊かになる。そしてそれを都市の中 に展開することで、賑わいを展延させることが出来る。購買 は人々の生活に欠かせない存在であると共に、また都市の発 展にも欠かせない存在である。購買を豊かにすることで都市 の中で人が集まったり、遊歩したり、都市と人の関係性もよ り豊かなものとなる。
参考文献
1)
「消費者の購買に関するニーズの動向調査」の結果発表について~リー マンショック以降の日本の消費者の実像~(METI/経済産業省)
http://www.meti.go.jp/press/20100421002/20100421002.html 2)
百貨店調査年鑑
2012:ストアーズ社 2012年09月30日出版
3)
「わが国の百貨店の歴史的経緯とその評価」木綿良行(成城大学教 授) : 成城大學經濟研究
2003年4)
「パサージュ 遊歩の商業空間」新井洋一
2000年2月出版5)「『春の小川』はなぜ消えたのか—渋谷川にみる都市河川の歴史—」田原
光泰
2011年5月出版6)「日常的実践のポイエティーク(第7章
都市を歩く)」ミシェル・
ド・セルトー
1987年5月出版7)「商店街の現状と課題」中小企業商業課資料より
http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/shogyo/2008/download/
4GenjoKadai.pdf
8)「SC白書2013