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障害児の観察学習に関する研究1) 一弁別学習課題を中心として一

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(1)

障害児の観察学習に関する研究1)

一弁別学習課題を中心として一

       ***       **     *

シ村多美恵・今橋 親子 ・塔ケ崎芳子

(1982年9月30日受理)

AStudy on the Observational Learning in the Handicapped:

in the Discrimination Learning Task

Tamie MへTsuMuRA, Chikako IMAHAsHI and Yoshiko ToGAsAKI

(Received September 30,1982)

は  じ  め  に

Flanders(1968)は以下のように模倣について定義している。「観察者がモデルの行動やその 表出を観察した結果,観察者のその後の行動がモデルのものに類似したとき,観察者はモデルを 模倣したという。」さらにBandura(1971)は,人間の学習には外的な直接強化がなくても他 人の行動を観察するだけで学習が成立する点を重視し,それをモデリングという用語であらわし,

社会的学習理論によってモデリングの現象を説明している。日常の実際生活における学習の多く は社会的場面で行なわれており,子どもは自分自身でものごとを試みたり他の人の指導に従った りして学習する以上に,他の人を観察することによっていろいろな学習をしていると思われる。

こうした学習は,観察学習(observational learning),模倣学習(imitative learning),同一視

(identification),あるいはモデリングともいわれており,これに関する研究はわが国において も多くなされ,特に原野他(1975)や春木・都築(1970)は観察学習に関する国内外の研 究結果を概観しており,春木(1982)も観察学習に関する諸事実を整理し観察学習に働く主要 因を分析している。

しかし,特殊教育において観察学習の研究がなされるようになったのは最近のことである。観 察学習は特殊教育において重要な意味を有していると思われる。すなわち,特殊教育においては 早期から障害児と健常児とができるだけ一緒に教育される,いわゆる統合教育が推奨されている が,こうした統合教育において障害児は健常児と交わることにより,健常児をモデルとして種々

1)本論文は今橋親子および塔ケ崎芳子の卒業論文を松村の理論的見解の下に松村が修正,加筆し,まとめた.

* 茨城大学教育学部障害児教育学科

**北茨城市立精華小学校

***土浦市立土浦小学校

(2)

の行動を模倣することの可能性が考えられる。しかし,これが本当に生じるのか,どの程度生じ るのか,あるいはこうした学習を促進する条件は何か,といったことについての研究はまだ少ない。そう いった意味においても障害児における観察学習の研究は現在大いに必要とされているといえよう。

障害児の観察学習に関する従来の研究は,ほとんど精神薄弱児を対象としたものである。それ も1970年代になって集中的に行なわれたものである。そうした研究結果を概観してみると観察 学習の効果が認められた行動領域として,基本的生活習慣,社会的行動および動作・運動,職業 的技能,および言語が挙げられる。しかし,そのような領域の研究に比べ,抽象的な認知反応パ ターンを習得して課題を解決するといった領域における観察学習の効果を検討した研究はまだ十 分ではない。さらに前述のように精神薄弱児以外の障害児における観察学習の効果を検討した研 究はほとんどみられない。そこで,本研究では抽象的な能力に障害があるとされている精神薄弱 児と聴覚障害児を対象として,弁別学習課題における観察学習の効果を検討する。

精神薄弱児は,過去において自分の知力に頼って問題を解決した時にはしばしば失敗し,その 反対に他の人に合わせた反応をした時には報酬を受けるといった経験が多く,そのため何かの行 動をする際には,適切な反応に対する手がかりをその場にいる他の人から得ようとするといった 外的指向性(outerdirectedness)を有していると言われている(Achenbach and Zigler 1968,

Green and Zigler 1962, Turnure and Zigler 1964)。この外的指向性は,そのまま模倣性(imi一 tativeness)につながるものと思われる。このことから精神薄弱児においても観察学習の効果が 認められることが予想される。

聴覚障害児においては言語能力の障害が思考の発達を防げていることが多くの研究において指 摘されている(中野1969,住1967,吉野1974)。こうした聴覚障害児の学習においては,日常,

言語的教示よりもむしろ視覚的,触覚的な具体的経験を通した指導がなされており,聴覚障害児 は視覚的,触覚的刺激に慣れていると思われる。その点から考えれば,聴覚障害児においても観 察学習の効果は十分認められると思われる。

以下,実験1においては精神薄弱児を対象とし,実験皿においては聴覚障害児を対象として観 察学習の効果を検討する訳であるが,その前に1つ断わっておきたい。観察学習とは元来,Ban一

dura(1971)が主張するように,観察者に強化を与えなくてもモデルの反応強化のみで模倣が 成立することを指すのであるが,前述の精神薄弱児の観察学習に関する研究のほとんどは観察者 にも強化を与えており,Altman and Talkington(1971)や原野他(1975)も指摘しているよう に,精神薄弱児では,観察者への強化の併用が有効であることが実証されているので,本研究で は,実験1,実験Hともに観察者に対しても強化を与える。

実 験 1

方 法

被験者:被験者は茨城県内の精神薄弱児養護学校と特殊学級に在籍する精神薄弱児63名(男 子32名,女子31名)と,水戸市内の幼稚園および保育所の幼児39名(男子18名,女子21名)

である。両被験者群ともMA(精神年齢)は4才台から6才台である(幼児においては生活年齢)。

(3)

上記の102名の被験者  Table L CA, MA and IQ of the subjects に対し偏好次元を調べ

N CA

MA

IQ

たところ形優位者は60 Mean Range Mean Range Mean Range

名であった。弁別課題      Mental Retarded

は形優位者のみに行な  Experimental group 12 12:3 9:6−15:2 5:4 4:0−6:6 44 30−65 ったが,この60名中7   control group 14 12:0 9:10−12:7 5:3 4:3_6:11 44 30−73 名は明らかに適切な実

Normal

験状況で行なわれなか   Expedmental group 14 5:5 4:4−6:6 ったと判断されたため   Cont正ol gloup 13 5:5 4:5−6:6 分析より徐いた。精神

薄弱児,健常児ともに統制群と実験群にランダムに分けられた。Table 1は各群の内訳を示して

いる。

実験材料:偏好次元を決定するために用いられる刺激材料は色(赤と青)と形(丸と四角)の 異なる4種類の図形カードである。弁別課題の刺激材料は色(赤と青)と形(円柱と三角柱)の 異なる4種類の同じ高さの立体であり,2次元2価の弁別学習課題となる。大きさは,直径また は一辺の長さが4cmである。三角柱(正刺激)の中には振れば音がするように,ビーズが入れら れている。また,課題で用いられる立体とは色,形,高さとも異なる立体(白色で高さは4cm,

形は4分の1の円柱)1つにビーズを入れたものを教示用に用意する。なお,各試行の準備用に 16×22cmのつい立て(被験者から見えないようにするため)を用意する。

実験手続き:被験者は「ゲームをしよう」といって連れてこられ,個別的に実験が行なわれる。

被験者は実験者と机をはさんですわり,ラポートがとられた後,偏好次元が調べられる。被験者 の前に色と形の異なる図形カードを2枚提示する。その後,それらの2枚の図形カードと色か形 のいずれかの次元が等しいカードを1枚提示して「これは,これとこれのどちらに似ていますか。」

と尋ねる。そして形が等しい方を選択するか,色が等しい方を選択するかをみる。同様の手続き で4試行行ない,3試行以上で反応した被験者は形優位者,3試行以上色で反応した被験者は色 優位者,それ以外は混合反応者とする。これまでの研究結果(浜重1974,松村1p81)において,

課題の適切次元と偏好次元が一致する場合と一致しない場合では成績が有意に異なること,さら にMA 4〜7才の被験者においては形優位者が色優位者よりかなり多いことが明らかにされてい るので,本実験では形優位者のみを弁別課題の被験者とし,偏好次元と適切次元を一致させる。

弁別課題は統制群と実験群に分けて行なう。統制群では「今度は積木のゲームをしましょう。い つもこれからは2つづつ積木を出します。そのうちでどちらか1つ振ると音がする積木です。こ んな音がします(実際に教示用積木を振り聞かせる)。音がする方があたりです。音がする積木 は決まっていますから,よく見ているとだんだんわかってきます。なるべく早く音がする方の積 木を当てて下さい。」と教示する。実験群ではその教示に加えて「あなたにやってもらう前に私 がやってみます。あとであなたにもやってもらいますからよく見ていて下さい。」と教示され,

実験者をモデルとした観察試行4試行を受ける(予備実験において4試行で解決方法が獲得され ることが明らかとなったため観察試行を4試行とした)。この4試行で示される図形カードの対 は, 「赤い円柱(右)対青い三角柱(左)」, 「青い円柱対赤い三角柱」, 「青い三角柱対赤い

(4)

円柱」,および「赤い三角柱対青い円柱」の4通りであり,この対の提示順序は同じ対のくり返し や同じ立体のくり返しがないこと,正反応の位置が4試行以上同じ側に続くことがないことを条 件として,被験者毎にランダムに配置される。また,モデルの反応は第1試行と第3試行で正反 応,第2試行と第4試行で誤反応を示す。統制群はすぐにテスト試行に入り,実験群は観察試行 の後,テスト試行に入る。課題は三角柱を選ぶことを正反応とする。正反応に対しては「ビーズ の音」による強化と「あたり」の言語強化が与えられ,誤反応には「はずれ」の言語強化が与え られる。学習基準は10試行中9回正反応とする。なお刺激対は,各試行で被験者が選択反応した 後にも約4秒間提示しておく。対をならべかえる試行間の時間は約5秒である。

結 果

本実験の被験者と予備実験の被験者をあわせて,その次元偏好性の結果を示したものがT創ble 2である。精神薄弱児においては形優位者(46.0%)と色優位者(41.3%)の割合は大体等し いのに対して,健常児においては形優位者(78.7%)が色優位者(13.5%)より多くなってい る(CR=6.405,P<.01)。形優位者の割合については,精神薄弱児は健常児に比べて有意に低 い(κ2=17.496,v=1,P<.01)。次に,偏好次元の発達的推移をみたのがTable 3である。

この結果から精神薄弱児ではMAの違いによる差がほとんどみられず,各MA段階とも形優位 者と色優位者がほぼ同数である。

これに対して健常児では各MA   Table 2. Choices for form and color

段階とも形優位者が色優位者よ

Folm ColOI Mix

り多く(MA4才:CR=1.600,       Melltal Retarded

46.0%(29!63) 41.3%(26!63) 12.7%(8!63)

P<.05,MA 5才:CR=4.230,

       Nolmal

o<.OLMA6才:CR=9.6ユ0, 78.7%(70!89) 13.5%(12/89) 7.8%(7!89)

P〈.01),さらに,MAが高く

なるにつれてその割合も増加し   Table 3・ Choices for form oエcolor

ていることがわかる。Table 4 Form Coloτ Mix は,精神薄弱児における通学児   Mental Ret訂ded

と寄宿児の違いによる形優位者   臨 50,0%(ll!22)

S7,4%(9119)

40.9%(9122)

R6.8%(7!19)

9.1%(2122)

P5.8%(3!19)

と色優位者の割合を示したもの      MA 6 40.9%(9/22) 45.5%(10122) 13.6%(3122)

である。この結果から,通学児   Normal

と縮児においては偏好次元の   鵜

70.0%(7/10)

V1.7%(38/53)

20.o%(2110)

P7.0%(9/53)

lo.o%(1110)

P1.3%(6153)

割合に明らかに違いがあること      MA 6 96。2%(25126) 3.8%(1!26) 0.0%(0!26)

が認められる。すなわち,通学 児では形優位者の割合が色優位

者より多く(CR=1.964,P<   Table 4. Choices fodbrm or color(Menta1 Retarded)

05),寄宿児では形優位者の割

Form Color Mb(

合と色優位者の割合に差がない。       Dormitory

35.o%(14/40) 50.0%(20140) 15.0%(6140)

さらに通学児の方が寄宿児より

       Home

̀優位者の割合が有意に多い 65.2%(15123) 26.1%(6123) 8・7%(2/23)

(5)

(X2=4.767, v=1,P<.05)。

誤反応なしで学習基準に達した被験者の割合を示したものが,Table 5である。これについて角 変換値により2(精神薄弱児対健常児)×2(統制群対実験群)の分析を行なった結果,条件 の主効果に1%水準で有意な差が認められた(X2=11.433,v=1)。すなわち,実験群の方が 誤反応なしで学習基準に達した被験者の人数が多かった。この条件による違いは,精神薄弱児 群(π2=4.338,v=1,P〈.05)においても健常児群(X2=5.787,v=1,P<.05)において も認められた。Table 6は,各群の学習基準に達するまでに要した平均試行数を示したものであ る。これについてγπ変換値により2×2の分散分析を行なつた結果,やはり条件の主効果に5

%水準で有意な差が認められた(F=5.313,df=1,49)。すなわち,実験群の方が学習基準に達 するまでの平均試行数が少なかった。しかし,下位検定の結果,この差は健常児群においてのみ 有意であった。 (t=2.136,df=25,P〈.05)。次に,学習基準に達するまでの誤反応数を各群 毎に示したのカ㍉Table 7である。誤反応数についても1/天変換値により2×2の分散分析を行 なった結果,条件の主効果に1%水準で有意な差が認められた(F=9.709,df=1,49)。しかし,

下位検定の結果,この差も健常児群にのみ有意であった(t=2.725,df=25)。Table 8は,第1 試行目の正反応率を各群毎に示したものである。角変換値により2×2の分散分析を行なった結 果,条件の主効果(X2=39.222,v=1,P〈.01),および被験者群と条件の交互作用(X2=

21.036,v=1,P〈.01)に有意差が認められた。下位検定の結果,条件差による違いは健常児 群のみに有意であった(X2=8.975,v=1,P<.01)。

Table 5. Peτcentage of su切ects who reached     Table 6. Means and standard deviations of the criterion without errors, by gloup and       number of trials to criterio馬by group and treatment condition      t正eatment condition

Mental Retarded Normal Mental Retarded Normal

Expeゴmental group 41・7%(5112) 50.0%(7114) SD SD

Control group 7.1%(1114) 7。7%(1113) Expeτimental gloup 15.8 10.4 13.7 7.1 Control group 225 17.2 22.3 12.8

Table 7. Mealls alld standar(1 deviations of

errors, by group an(1 treatment condition Table 8. Rate of correct responses hl the

∬1st tria1 Mental Retaτded Normal

SD SD Mental Retarded Norma1

Experimental gτoup 3.4 4.8 2.6 4の       Experimental group       引 66.7%(8112) 92.9%(13114)

Contro1910up 5.9 6.3 7.2 74      control group     57.1%(8114) 38.5%(5113)

次に精神薄弱児群を高MA群(MA 6才台)と低MA群(MA 4才台)に分けて,各群の成績 を検討してみる。高MA群と低MA群の被験者の内訳は, Table 9に示されている。 Table 10,

Table 11, Table 12,およびTable 13は,誤反応なしで学習基準に達した被験者の割合,学習基 準に達するまでに要した平均試行数,学習基準までの平均誤反応数,および第1試行目の正反応 率を各群毎に示したものである。誤反応なしで学習基準に達した被験者の割合について検討する

と,精神薄弱児においても健常児においても高MA群にのみ,実験群と統制群の間に差が認めら れた(精神薄弱児高MA群:X2=6忽1, v=1,P<.01,健常児高MA群:X2=3.899,v

(6)

=1,P<.05)。さらに精神薄弱児高MA群においては,平均試行数と平均誤反応数の両方に おいて実験群の方が統制群より成績が有意によかった(平均試行数:Ul=7, nl=7, n2=6,

P<.05),平均誤反応数:U1=3.5, nl=7, n2=6, P<.05)。これに対し,精神薄弱児 低MA群では,平均試行数においても平均誤反応数においても実験群と統制群の間に有意な差

Table 9. CA and MA of the groups of su切ects Table l O. Percentage of subjects who reached the criterion without errors, by group Mental Retarded Nolmal         and tleatmellt condition

N CA

MA

N CA Mental Retarded Normal

High MA

Experimental group 6 11:7 6:1 7 6:0    High MA

@       Experimental gmup 66.7%(4/6) 71.4%(517)

Control group 7 11:7 6:0 6 6:0

@     Control group 0%(017) 16.7%(1/6)

Low MA

Experimental group 6 12:11 4:7

       Low MA7 4:10

@       Experimental group 16,7%(1!6) 28。6%(2/7)

Control group 7 12:5 4:6 7 4:11

Control group 14.3%(1!7) 0%(0!7)

Tal)le 11. Means and standard deviations of

number of trials to criterion, by group and    Table 12・ Means and standard deviations of treatment condition errors, by group and treatment condition

Mental Retarded Normal Mental Retalded Norma1

X SD X SD SD SD

High MA High MA

Experimental group 9.8 1.5 12.6 6・g     Experimental group 05 0.8 1.6 3.1

Control group 22.1 18.0 19.2 12.5      Control group 5.6 6.0 5.3 5.6

Low MA 正ow MA

Experimental gloup 21.9 12.0 14.9 7・O  E・p・・im・nt・19・・up 6.3 5.3 3.6 45

Control gτoup 22.9 16.3 25.0 124      Control gloup 6.3 6.6 8.7 5.7

Table 13. Rate of correct Iesponses i血 the Table l 4. Effects of modeling f吐st tria1

Mental Retarded Nolmal Trial and error Modeling

High MA

dxperimental group 100.0%(6!6) 100.0%(7/7)

Subjects MA IQ No. of狽窒奄≠撃r No. of?窒窒盾窒

No. of

狽窒奄≠PS

No. of

?閧盾窒

Contml group 57,1%(4/7) 50.0%(3/6)

AB 4:4 S:7

38 S7

19 T9

621 12

P0

21

Low MA

Experimental group 33.3%(2!6)        CW5,7%(6/7) 5:1 41 29 7 10 1

D 5:3 43 63 19 12 2

Control group 57.1%(4/7) 28.6%(2/7漉 E 5:7 48 31 9 13 2

は認められなかった。また, 健常児においては,低MA群において実験群の方が統制群より成 績が有意によかった(平均試行数:U1=10, n1=7, n2=7, P〈.01,平均誤反応数:Ul

=10,nl=7, n2=7, P<.01)。第1試行目の正反応率については,精神薄弱児では高M A群において実験群の方が統制群より高い傾向が認められ(X2=3.343,v=1,P<.10),健 常児については,高MA群も低MA群も実験群の方が統制群より高かった (高MA群:x2=

4.55,v;1,P〈.05,低MA群:X2=4.67, v=1,P<.05)。

(7)

追実験

実験1において統制群に属し,弁別課題の成績がおもわしくなかった精神薄弱児5名(男子4 名,女子1名)を被験者とし,実験1から17〜78日経過した後,観察試行させ,再度弁別学習 課題を課したところ,Table 14で示されるように,観察学習の効果が認められた。

実 験 皿

方 法

被験者:被験者は茨城県内のろう学校に在籍する聴覚障害児46名と,水戸市内の小学校に在籍 する3年生の児童37名である。聴覚障害児の聴力損失の程度は,40dBから100dB以上のもの である。Table 15は,被験者の内訳を示している。

実験材料:偏向次元を決定するために用いられた刺激材  Table 15. CA of the groups of 料は,浜重(1975)で用いられたものに準じる。訓練用 s呵ects

刺激図形は,白ボール紙(8×10cm)に黒のサインペンで Deaf Healing       Mean

̀いた「猫」と「魚」である。「魚」の絵のカードの裏に正 10:1 9:6 刺激を示す金シールが貼付されている。2次元2価弁別学  Range 7:0−12:8 9:0−9:11 習課題の刺激材料は,色(赤と青)と形(丸と三角)の異  N 46 37

なる4種類の刺激カード(8x10cm)である。各図形の面

積は約25m2である。正刺激カードの裏には金シールが貼付されている。その他,各試行の準備 用に30×40cmのついたて,および以下の質問補助カードを用意する。質問補助カード①(偏好 次元決定用)一「これは,これとこれのどちらににていますか。」質問補助カード②(訓練用)

「どちらにシールがはってありますか。」質問補助カード③④(弁別課題用) 「まえと同じ ことをします。どちらにシールがはってありますか。」「先生がやることをよくみていてください。

次にあなたにやってもらいます。」(質問補助カードを用いたのは,聴覚障害児か正しく教示を理 解して,コミュニケーションが確実になるために有効に働くと思われたからである。)

実験手続き:手続きはほぼ実験1と同じである。ただし,以下の6点が実験1と異なる。①実 験1より多くの種類の刺激カードを用いて偏好次元を決定する。②聴覚障害児に対しては,教示 内容を口答ではっきり言うとともに,質問補助カードを提示する。③弁別課題に入る前に,訓練 用の刺激カードを用いて「2枚の絵のうちどちらかが正しく,正しい方には金シールが貼ってあ

り,シールの貼ってある絵を選んだ場合,先生がrあたり』と言い,OKのサインをすること」

を理解させる。④実験1では,偏好次元を適切としたが,実験Hでは聴覚障害児と健常児が対象 であり,実験1よりMAが高い(実験1では4才0カ月〜6才10カ月,実験∬では,平均9才台)

被験者であるため,偏好次元を不適切次元とする。 (実験1と同じように偏好次元を適切次元と した場合,この被験者達においては課題が易しすぎ,天井効果が働いてモデルの示範効果につい ての検討ができなくなると思われたため,このような手続きとした)。⑤刺激材料はカード(実 験1では立体)であり,正反応に対しては金シールによる強化と「あたり」の言語強化およびOK サインが与えられ,誤反応に対しては,「はずれ」の言語強化と×(バッ)のサインが与えられ

(8)

る。⑥弁別学習を達成した被験者には,移行学習(逆転移行と非逆転移行)を行なう。学習基準 は10試行中9回正反応とし,50試行行なっても学習を達成できない場合は実験打ち切りとする。

結果

被験者の偏好次元について,形優位者,色優位者,および混合反応者の人数と割合を示したの がTable 16である。 Table 16によると,聴覚障害児においても健常児においても形優位者が色優 位者より多い。しかし,有意差が認められたのは健常児においてのみだった(CR=4.333,P〈.

01)。形優位者の割合は,健常児に比べて聴覚障害児が有意に低かった(X2=6.376, v=1,

P<.05)。聴覚障害児の通学児と寄宿児の違いによる偏好次元の割合を比較したものが,Table 17である・通学児においては形優位者の方が多く(CR=1.961, P〈.05),寄宿児では形優位者と 色優位者に差が認められなかった。形優位者については通学児と寄宿児で差が認められなかった。

Table 16. Choices for form or color    Table l 7. Choices for form or color(Deaf)

Form Color Form Color Mix

Deaf 60.9%(28146) 39.1%(18146)    Dormitory 50.0%(10/20) 50.0%(lo/20) 0.0%(0!20)

Healing 83.8%(31137) 13.5%(5137)    Home 69.2%(18!26) 30.8%(8!26) 0.0%(0〆26)

Table 18は,誤反応なしで学習基準に達した被験者の割合を各群毎に示したものである。これ について角変換値により2(被験者群)×2(条件)の分散分析を行なった結果,被験者群と条 件の主効果に1%水準で有意な差が認められた(X2=10.175,v=1,Z2=43.478, v=1)。し かし,被験者の違いによる差は統制群には認められず,実験群においてのみ聴覚障害児の方が健 聴児より人数が多かった。また,条件差は聴覚障害児(κ2=23.894,v=1)においても健聴児

(Z2=8.690,v=1)においても認められ

た。すなわち,聴覚障害児においても健   Table 18. percentage of suhlects who leached the 聴児においても実験群の方が統制群より     clite「ion without eno「s・by 9「ouP and tτeaレ

ment condition

誤反応なしで学習基準に達した被験者の

割合が多く,示範の効果が認められた。 Deaf Hearing

Table 19とTable 20は,弁別課題の学習 Experimental group 78.3%(18!23) 39.o%(7118)

基準に達するまでに要した平均試行数と

Control group 8。7%(2/23) 0%(0118)

平均誤反応数を示したものである。 これ

Table 19. Means and standard deviations of   Tal)le 20. Means and standard deviations of number of trials to criterion・by group and      errors, by group and treatment condition treatment condition

Deaf Hearing Deaf Hearing

Experimenta19roup 13.0(9.2) 14.3(4。8)   Experimental group 1.7(4.2) 2.7(2.6)

Control group 22.9(12。3) 17.6(10,0)    Control group 8.4(4.9) 5.6(55)

(9)

らについてゾ文変換値により2×2の分散分析を行なった結果,やはり条件の主効果に1%水 準で有意な差が認められた(試行数:F=12.940,df=1,78)。この差は,聴覚障害児においても

(試行数:F =5.280,df=1,78, P〈.05,誤反応数:F =4.767,df=1,78,P<.05)健聴児 においても(試行数:F =5.530,df=1,78,P<.05,誤反応数:F =4.616,df=1,78,P〈.

05)認められ,実験群の方が統制群より成績がよく,示範効果が認められた。第1試行目の正反 応率を条件毎に示したものが,Table 21である。角変換値により2×2の分散分析を行なった結 果,条件の主効果にユ%水準で有意な差が認められた(X2=22.868, v=1)。下位検定の結果 条件差による違いは,聴覚障害児においても(Z2=15.769, v=1,P<,01)健聴児において

も(κ2=6.555,v=1,P<.05)認められ,ここでも示範効果があったことが確認された。

次に,聴覚障害児を高MA群(MA 13才台)と低MA群(MA 10才台)に分けて,その成績 を検討する。各群の被験者の内訳は,Table 22に示されている。 Table 23,Table 24,Table25,

およびTable 26は,各々,誤反応なしで学習基準に達した被験者の割合,学習基準に達するまで      /

の平均試行数,平均誤反応数および第1試行目の正反応率を各群毎に示したものである。誤反応 なしで学習基準に達した被験者の割合においては,実験群の方がはるかに多く,示範効果が高MA 群においても低MA群においても認められる。平均試行数と平均誤反応数についても,高MA群,

Table 21. Rate of colrect Iesponses in the   Table 22. CA and MA of the groups of suレ first trial       jects(Deaf)

Deaf Hearing N 砿 砿

Experimental gloup 91.3%(21/23) 83.3%(15/18)   High MA

Experimental group 7 10:4 13:6 Contlol group 34.8%(8123) 44.4%(8/18)

7 10:4 13:6

Control group

1ρwMA

Experimental gloup 7 9:5 10:8 Table 23. Percentage of subj ects who reached Contlol group 7 10:0 10:1

the cfiterion without errors, by gloup and treatment condition(Deaf)

Table 24. Means and standaτd deviations of High MA Low MA numbef of trials to criterion by group and Experimental group 100%σ!7) 71.4%(517) treatment condition(Deaf)

Control gloup 0%(0!7) 0 %(0!7) High MA Low MA

Experimental group 10.0(0.0) 11.2(2.8)

Control group 21.9(9.0) 23.9(13.7)

Table 25. Means and stalldard deviations of error亀by group and treatment condition

(Deaf) Table 26. Rate of correct responses in the

High MA Low MA       first trial(Deaf)

X SD X SD High MA Low MA

Experimental group 0 0 0.9 3.3   Experimental group 100%(7/7) 714%(5!7)

Contlol gloup 7.3 4.3 9.2 8.2    Control group 42.9%(317) 14.3%(117)

(10)

低MA群とも統制群より実験群の方が有意に成績がよかった(高MA群試行数:U=49,n1=

7,n2=7,P<.01,高MA群誤反応数:U=49,n1=7,n2=7,P〈.0ユ,低MA群試行数

:U=45,n1=7,n2=7,P<.01,低MA群誤反応数:U=45,nl=7,n2=7,P〈.01)。

第1試行目の正反応率についても,高MA群,低MA群ともに統制群の方が有意に高かった(高 MA群:X25.600, v=1,P<.05,低MA群:X2=4.667,v=1,P<.05)。

Table 27およびTable 28は,弁別移行学習課題の学習基準に達するまでに要した平均試行数 と平均誤反応数を示したものである。平均試行数をゾ反変換して2(被験者群)×2(条件)X 2(移行の種類)の分散分析を行なった結果,移行の種類の主効果(F=10,600,df=1,7αP〈.

01),および移行の種類と条件の交互作用(F=3.990,df=1,70, P<.05)に有意差が認めら れた。下位検定の結果,聴覚障害児の統制群と実験群両方において逆転移行と非逆転移行の間に 有意差が認められ(統制群:F =4.554,df=1,70, P<.05,実験群:F =9」75,df=1,70,

P〈.01),逆転移行の方が成績がよかった。さらに,健聴児においては統制群においてのみ逆転 移行と非逆転移行の間に有意差が認められた(F =5.794,df=1,70, P<.05)。また,聴覚障害 児の逆転移行においては統制群より実験群の方が成績がよかった(F ニ8.306,df=1,70,P<.01)

が,非逆転移行においては統制群と実験群の問に有意な差は認められなかった。健聴児では,逆転 移行においても非逆転移行においても統制群と実験群の間に有意差は認められなかった。平均誤反 応数をγ5ξ変換して2×2x2の分散分析を行なった結果条件(F=5.305, df=1,70,P〈.05)

と移行の種類(F=11.165,df=1,70, P<.0ユ)の主効果が有意であった。下位検定の結果,聴 覚障害児の統制群と実験群の両方において逆転移行と非逆転移行の間に有意差が認められた(統 制群:F =4.559,df=1,70, P<.05,実験群:F=3.985,df=1,70, P<.05)。さらに,健

Table 27. Means and standard deviations of

number of trials to criterio鞠by group   Table 28. Means and deviations of error馬by and treatment condition      group and treatment condition

Deaf Hearing Deaf Hearing

X SD X SD X SD X SD

Revelsal shift Reversal shift

Experimental group 10.9 15 13.6 44    Experimental group L8 1.2 3.6 3.0

Control group 17.7 12.7 12.4 3.g    Control group 5.7 7.7 3.1 3.3

Non−reversal shift Non−reversal shift

Experimental group 17.3 4.7 15.3 4.g   Experimental group 5.0 2.3 4.0 34

Contlol group 23.0 11.3 20.4 11.7    Control group 8.9 7.8 7.8 7.4

聴児においては統制群においてのみ逆転移行と非逆転移行の間に有意差が認められ(F =5.86α df=1,70, P<.05),逆転移行の方が成績がよかった。また,聴覚障害児の逆転移行においては 統制群より実験群の方が成績がよかった(F =3.984,df=1,70, P<.05)が,非逆転移行にお いては統制群と実験群の間に有意差は認められなかった。健聴児では,逆転移行においても非逆 転移行においても統制群と実験群の間に有意差は認められなかった。

(11)

考     察

実験1の結果より,MA 4才〜6才の精神薄弱児においては形優位者と色優位者の割合がほぼ 同じであった。それに対し,同一MAの健常児においては形優位者が色優位者より圧倒的に多 い。次元偏好性については健常児を中心に従来多くの研究が行われている(松村1979)が,精神薄 弱児における次元偏好性を検討したものは少ない。松村(1981)は,MA 4,5,6,7,8才の各 段階の精神薄弱児における形と色に関する次元偏好性を健常児と比較している。実験1の結果を 松村(1981)の結果と比較すると,精神薄弱児においても健常児においても松村(1981)の結果 より形優位者が多くなっているが,全体の傾向としては,松村(1981)の結果と一致していた。

さらに,健常児の大部分が形優位者である点については,Sugimura and Shimotani(1969)の結 果と一致する。精神薄弱児が健常児より形優位者が少ない点については,年齢が増加するにつれ て偏好次元が色から形へ変わっていくという定説から考えて,他の認知的特徴と同様,MAで統 制されてもなお,健常児より発達的に遅れていることを示唆する。精神薄弱児において通学児に 形優位者の割合が多く,寄宿児においては形優位者と色優位者の割合に差がなかった点について は,通学児は多くの刺激情報に触れる可能性が大きいのに対し,寄宿児ではそれがある程度制限 されると考えられ,それが色から形への偏好次元の移行の早さに関係してくるためと思われる。

実験Hの結果では,健聴児(CA 9才台)の形優位者は実験1の健常児(CA 4才〜6才)よりさら に多くなっており,形次元に対する偏好が安定してきていることを示唆している。聴覚障害児(CA

7才〜12才)について,被験者を各年齢に分けて偏好次元を検討してみたが,各年齢の人数が少 ないため発達的傾向は認められなかった。しかし,全体として形優位者と色優位者がほぼ同数で あり,聴覚障害児においても色から形への偏好次元の移行が遅れていることが認められる。また,

実験1と同様,通学児において形優位者が多くなっている。吉野(1974)は,聴覚障害児は5,

6才では色選択(色に着目した分類)が優位(69.4%)であり,7才で色,形選択が漸近し,8 才で形選択が優位(61.1%)となるのに対し,健聴児は6才ですでに形優位が優ることを報告し ており,聴覚障害児は健聴児に比べ,発達的に色選択傾向に長くとどまっていることを示唆して いるが,この傾向は本実験の結果と一致している。

本研究の第1の目的は,精神薄弱児における観察学習の効果を検討することであった。本研究 の結果より,観察試行を行なった実験群の方が,観察試行を行なわず直接学習に入った統制群よ

り成績がよく,観察学習の効果が認められた。しかし,詳細に分析してみるとこの効果は精神薄 弱児においては高MA群(MA 6才)のみに認められ,低MA群(MA 4才)では認められなか

った。これに対し,健常児群では高MA群,低MA群ともに実験群の方が統制群より成績がよ く,観察学習の効果が認められた。従来の弁別学習課題における観察学習の効果を実証した研究 によると,精神薄弱児ではMA 7才(Achenbach and Zigler 1968,山田・斎藤1979)を対象と したものが被験者の年齢としては最低であり,健常児では5,6才(佐藤・佐藤1979,祐宗他 1971,祐宗他1975,利島1977,利島・祐宗1973)が最低である。 したがって,本研究の結 果より,精神薄弱児ではMA 6才,健常児では4才においても観察学習の効果が認められること が実証されたわけである。

ところで,精神薄弱児低MA群において観察学習の効果が認められなかったのはなぜであろ

(12)

うか。この点を検証するために,Bandura(197Dが提唱する4つの下位過程と各下位過程に おける精神薄弱児の特徴について分析してみよう。第1の過程は注意過程である。観察学習はそ の名のとおり,まずモデルを「見る」ことが重要である。「いかに見るか」にモデリングの成否が かかっている,といってもよいだろう。いくらモデルとなり得る人や現象が目の前に存在してい ても,これを認知しなければモデリングはおこりえない。外界の情報をいかに正確にとらえられ るか,刺激のもつ特性のうち何が重要な特性か,逆に何は無視してもよいか,適切な手がかりを いかに発見するか,といった学習者の認知情報処理の巧みさがモデリング成立の第1の決め手と なる。次は,保持過程である。モデリングが成立するためには,モデルが行動を観察し,ある時 間経た後にその行動を再現する必要がある。したがって,観察により得た情報をモデルがもはや いなくなった後まで,ある期間表象の形で保持しておく機能を果たすものが学習者の中に存在し ていなければ,その行動を再現することは不可能である。この媒介過程には,イメージ媒介(モ デルの反応を感覚的レベルで処理する)と言語媒介(モデルの反応を言語的に符号化し認知する)

が考えられる。第3の運動再生過程では,保持過程での示範事象の表象を利用して運動系による 再生が行なわれる。その際,観察学習の速度とレベルはその行動に必要な成分反応がどの程度実 行可能であるかによって左右される。最後は,強化と動機づけの過程である。モデリングの示範 に注目し,その示範を表象として保持し,その示範のすべての反応要素を実行できるとしても,

その時の動機づけの条件が模倣を勇気づけるものでなかったら,観察学習は生じない。

こうした観察学習の4つの下位過程の各々において,精神薄弱児は健常児と比較してハンディ を持っていると考えられる。まず精神薄弱児は第1の過程に関して注意的障害を有している(Ull一

man 1974, Zeaman and House工963)。すなわち,多くの次元が複合する刺激の中から課題解決 に対し適切な次元に注目することが困難であるといわれている。また,第2の過程に関しても,

Ellis(1963,1970)が指摘するように,精神薄弱児は短期記憶に障害があるといわれている。

特に,情報を記憶する際に上述の表象系を自発的に用いて適切にコード化することが難かしい(浜 重1977)。さらに,第3の過程に関しても,複雑な行動の場合実行が不可能なことも多く,第4 の過程である動機づけにおいても,Zigler(1966,1973)の指摘するような健常児と異なった 環境や失敗経験のため,動機づけが課題解決に適切ではないといった弱点を有している。

このように精神薄弱児は,観察学習の4つのすべての下位過程でハンディを有しているわけで あり,低MA児の場合こうしたハンディをのりこえて観察学習の効果を上げることができなかっ たといえよう。では,そのような被験者に対して観察学習の効果を上げるためにはどのような手 続きが考えられるであろうか。まず注意過程に関しては,モデルが自分の反応を言語化しながら 示範したり,あるいは学習者がモデルの反応を言語化しながら観察することにより,学習者の注 意は模倣されるべき反応に向きやすくなると考えられる。その他,観察以前にもモデルと学習者 の親愛関係を深めたり,あるいは多くのモデルの示範を示すといったことも効果があるであろう。

保持過程に関しては,「モデルの行動を言語化して記憶するように」という教示も有効かもしれ ない。運動再生過程に関しては,複雑な行動はオペラント条件づけのように単純な反応から徐々 に複雑な反応のモデリングへと進めていくことが必要であろう。最後の動機づけに関しては,精 神薄弱児の課題解決への動機づけの弱さを考慮し,適切な強化物や教示等の工夫が必要と思われ る。以上のような手続きについてその有効性の検討はほとんどなされておらず,今後の研究にお

(13)

いてそうした検討が是非必要であると思われる。

聴覚障害児においても実験皿の結果より示範効果が認められた。この効果は高MA群(MA 13才台)においても低MA群(MA 10才台)においても認められ, MAの高低による観察学 習の影響の違いは認められなかった。これは,両群ともにMAが高かったためとも考えられ(聴 覚障害児の場合,教示や課題内容を充分理解できるようMAの高い被験者を対象とした),本研 究の被験者より低いMAの聴覚障害児においても観察学習の効果を検討する必要があると思われ

る。

実験皿において,聴覚障害児群は同じ年齢の被験者を多数集めることが困難だったため,広範 囲の年齢にわたった被験者達であり,その平均年齢と合わせて被験者をとった健聴児群と直接比 較することには無理があるとは思われるが,一応聴覚障害児と健聴児の成績を比較してみる。ま ず,統制群では差が認められず,実験群において聴覚障害児の方が誤反応なしで学習基準に達し た被験者の人数が多かった。このことから,観察学習の効果が健聴児と比較して大きいことがわ かる。これは,情報の受容において,聴覚障害児が視覚に強く依存し,その効率もよいためと考 えられる。実際の実験場面においても,聴覚障害児は,健聴児より反応時間が長く,刺激をよく 見ている姿勢が感じられた。

移行学習において,聴覚障害児も健聴児も逆転移行が非逆転移行よりも学習が速かった。これ は,両被験者群がKendler and Kendler(1962)の媒介型の学習をしているということができる だろう。このことは,言語経験が貧弱な聴覚障害児においても言語媒介が可能であることを不唆

し,Furth(1966)の見解とも一致するように思える。しかし,被験者の年齢の範囲が広いため,

このことについてさらに発達的変化を検討すべきであろう。また,観察学習をした被験者の方が 移行学習達成が速く,観察学習が移行学習にまで促進効果を与えていることが示唆された。

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Table 19とTable 20は,弁別課題の学習 Experimental group 78.3%(18!23) 39.o%(7118)

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