44 函医誌 第27巻 第1号(2003)
は じ め に
クリニカルパス(以下,パス)の手法は,患者の満足 度向上・医療の標準化・在院日数短縮等を目的としてす でに各所で導入されている。
当院心臓血管外科においてもペースメーカー電池交換 術(以下,PME)のパスを作成し,パス導入前後にお けるその有用性について比較検討したのでここに報告し たい。
方 法
当科におけるPMEに対するパスは2000年12月に導入 された。
使用したパス用紙は済生会熊本病院のCP Manager を参照し,医療者用(表1)・患者用(表2)を作成した。1)
パス日数は入院日から退院日までの13日間とした。
医療者用パス用紙には検査・処置内容,観察項目,ADL の範囲等が記載され,下段にバリアンスの有無と各勤務 帯でのサインを記載する欄を設けた。
患者用パス用紙は専門用語を使わず,絵を入れてわか りやすい内容にした。
患者へのパスの適用は外来受診時に決定され,入院が 決定した時点で外来看護師がパスの説明をし患者用パス
用紙を患者に渡した。また,入院当日に医師が医療者用 パス用紙を用いて看護師へ指示することとした。
看護記録については当科従来の重症看護記録用紙を使 用し,観察項目はフリー欄に記載,勤務帯毎に+・−で 記録できるようにした。
結 果
対象は当院でPMEを施行したパス導入前58例(2000 年10月1日〜2001年11月30日)と導入後31例(2001年12 月1日〜2002年10月31日)の計89例を比較検討した。
その結果平均在院日数については,パス導入前は主治 医により安静度・術後検査の日程が異なるなど入院期間 にばらつきも多く,平均在院日数は20. 7日であったが,
パス導入後は一定化され,その平均在院日数は13. 3日と 約7日間の短縮を得た(表3)。
パス導入後の31例中バリアンスが発生したのは6例で あった。うち3例が正のバリアンス,3例が負のバリア ンスであった(表4)。
それらのバリアンスを検討すると,正のバリアンスを 示した3例とも患者の希望により退院日がパスの予定よ り1日早まったものであり,一方負のバリアンスの3例 は患者の希望により入院期間を延長した例,誤嚥による 発熱の例,ワーファリンの内服コントロールがついてい ないために退院予定日に退院できなかった例であった。
ペースメーカー電池交換術に対する クリニカルパスの導入効果
―主として平均在院日数を中心に―
鈴木 英恵* 進藤三枝子* 光島 隆二**
泉山 修** 長谷川 正**
The Effect of Therapeutic Regimen Using Clinical Pathway in the Case of Pace-maker Exchange.
Hanae SUZUKI,Mieko SINDOU,Ryuji KOUSIMA,
Osamu IZUMIYAMA,Tadashi HASEGAWA
Key words: Clinical pathway ―― Hospital days ―― Therapeutic standardization 看 護
*市立函館病院 4階北病棟 **市立函館病院 心臓血管外科
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表1 医療者用パスより抜粋
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ペースメーカー交換術を受けられる方へ
※この経過表は入院から退院までの標準的な経過を示したものです 状況に応じて予定が変更になる場合があります
ご不明な点がありましたらお尋ねください 又、説明については日程が多少ずれる場合もあります
市立函館病院 4北病棟 日程
検査
安静
清潔
排泄
食事
点滴・注射
内服
指導・説明 治療・処置
入院当日
( / )
入院前日
( / )
手術前
( / )
手術後
( / )
胸の写真を 撮って帰ります
病室で 心電図をとります
1時間ベッド上安静 その後トイレ・洗面可
手術前に寝巻きに 着替えてください
手術前に排泄を 済ませてください
1時間ベッド上排泄 その後トイレ・洗面可
昼食は食べないで ください 夕から常食ができます
普通食です
夕食より普通どおり 食事ができます 午前中に入浴を
済ませてください
抗生剤テスト
(豆注射です)
手術前に点滴開始→
抗生剤をします
点滴は続行します→
抗生剤をします
飲める薬と飲めない 薬があります 中止している薬
( )
心電図モニターを 装着します
主治医より手術内容の 説明があります 入院後の生活について
説明します
主治医より手術の 説明と同意
看護師より 手術準備の説明 飲める薬と飲めない
薬があります 中止している薬
( )
昼の薬は 飲まないでください
様
表2 患者用パスより抜粋
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考 察
クリニカルパスは1950年代に工程短縮・コストの最小 化を目指し産業界で用いられた手法であったが,1980年 代に入り医療界においても在院日数の短縮化や医療費の 縮減を目指し応用されるに至った2)。
さらに近年,平均在院日数やパスの導入が保険診療報 酬の評価基準となるに至って,パス導入は急性期病院に おけるケース・マネジメントの必須のツールとなった2)。 今回,パスによる平均在院日数の短縮効果について検 討したが,一方,チーム医療としての効果及び患者の満 足度についてスタッフや患者からアンケート調査等をす るまでには至らなかった。しかし,医療者用パス用紙は 常にカルテにはさんであり,採血日・検査日のオーダー が漏れることなくPCに入力されることで主治医による 治療が標準化され,看護面においてはパスを利用しての 説明やスタッフ間の連絡など,時間短縮や看護の標準化 が図られた。さらに,パス使用により患者に対してもス ケジュールを前もって把握できるのでわかりやすく,退 院後の生活設計が容易になる,など患者の満足度向上が 得られた3)。
当科のパスにおける今後の改善点としては,結果でも 述べたように平均在院日数を約7日間短縮し13. 3日に することができたが,正のバリアンスとして早期退院が 3例出たことで入院期間をさらに短縮できるか検討して いく必要がある。
術前検査を外来で済ませることができればPME前日 もしくは当日に入院することが可能となる。また,現在 のPMEの縫合方法が埋没縫合に変わったことで抜糸の 必要がなくなるため,術後経過として感染の予防・創部 の状態を確認した上で問題がなければ術後7日目を退院 とし在院日数8日の更に短縮したパスの作成を検討中で ある。
また,パス内容の検討としては現在のパスには段階ご とのアウトカムを明示しておらず,観察項目の程度やバ
リアンスの判定にも基準がなく看護師の主観に委ねるこ とも多く,より客観的なインディケーターを現在考慮中 である。
クリニカルパス作成と導入の目的の一つに治療ケアの 質と効率性の向上がある2)。さらにパスを実際に臨床で 活用し,その成果を評価することが重要である。
今後は電子カルテの導入と応用に向けて標準看護との整 合性も含め,記録の面でも検討していきたい。
ま と め
PMEに対するパスの有用性について主として平均在 院日数の面で検討した。
その結果平均在院日数の大幅な短縮が得られた。同時 にチーム医療の標準化や患者の満足度向上の面において も有用であったがその詳細については今後も検討してい きたい。
文 献
1)CP Manager,Clinical Path Management System
〔CD‐ROM〕.済生会熊本病院監修.Version 1. 02. 大阪,武田薬品工業㈱;
2)武藤正樹,都 直人,坂本すが 他:クリティカル パスの基本的知識の理解,武藤正樹,基礎からわかる クリティカルパス作成・活用ガイド,第2版,日総研,
名古屋,1998,p6-18.
3)曽ヶ端克哉,水島康博,川本雅樹 他:腹腔鏡下胆 ˆ摘出術におけるクリニカルパスの検討,北海道外科 雑誌,2002;47:35-41.
表3
平均在院日数 症例数
期 間
20. 7日 58例
H 12.10〜H 13.11 パス導入前
13. 3日 31例
H 13.12〜
パス導入後
表4
症例数 内 容
バリアンス
3 患者様希望により退院予定より1日早く退院 正のバリアンス
1 患者様希望により退院を1日延期
負のバリアンス 誤嚥による発熱 1
1 ワーファリンコントロールのため