• 検索結果がありません。

給与住宅団地居住者の住環境評価と住み替えの意向

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "給与住宅団地居住者の住環境評価と住み替えの意向"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

給与住宅団地居住者の住環境評価と住み替えの意向

− 東海村の事例について −

乾 康代 *

(2009年 11月30日 受理)

The Evaluation of Residential Environment and the Moving Intention of Residents of a Company Housing Development

— A Study on the Case of Tokai Vill. —

Yasuyo I NUI *

(Received November 30, 2009)

1. はじめに

給与住宅は,企業の人材確保策のひとつとして位置づけられ,人材獲得競争が激化した1980年代 後半からのバブル好況期には,給与住宅の新設着工戸数がそれまでの漸減から増加へと転じ,1990 年ごろには給与住宅を保有する企業は7割に達した。この時期に供給された給与住宅のなかには,

図書室やAV室,共用ラウンジ,大浴場などの共用室・施設を整備し,寮生による自主運営を取り入 れてコミュニティ形成を図った独身寮の例などがある

1)

。しかし,バブルが崩壊して景気後退期に 入ると,供給増加の流れは止まり,給与住宅を保有する企業は一挙に36.3%へ減少した。バブル期 の半分である。さらに,社宅保有企業の58.5%が2000年以降,統合・廃止を実施しており,3割の 企業が今後,減少・廃止を予定しているという

2)

。近年の給与住宅供給はこのように,景気動向に よる影響が大きかった。統計によれば現在では,給与住宅は,全住宅の3%程度を占めるにすぎな い。

給与住宅は企業の福利厚生施設ではあるが,持家中心の日本の社会にあって,企業もまた持家化 政策を支持し,給与住宅の居住水準を向上させることにはほとんど無関心であったといえる。民営 賃貸住宅とともに給与住宅は,公的支援も及ばない領域として取り残され,老朽化ストックの更 新,入居者のライフスタイルやニーズへの適切な対応といった課題に対し,ほとんど応えられるこ とのないまま現在にいたっている。その結果,多くの給与住宅で入居率が大きく減少し,上にみた ように廃止の方向に進みつつある

3)

本研究は,給与住宅ストックの減少・廃止,入居者の減少,給与住宅団地のコミュニティの衰 退,環境の悪化といった悪循環が進行するなか,給与住宅の居住世帯が給与住宅をどう評価してい

* 茨城大学教育学部住居学研究室(〒 310-8512  水戸市文京 2-1-1 ; Laboratory of Housing Science,

College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512, Japan )

(2)

るのか,給与住宅からの退去といった将来の選択も含めて居住の計画をどのように立てているのか について把握するのが目的である。居住者のこれらの評価と意向を把握したうえで,今後の給与住 宅のあり方と地域における団地のあり方についても考察をすることとする。

2.給与住宅団地居住の現状

本論では,東海村に多数立地する原子力関連事業所の給与住宅団地を取り上げた。東海村では,

1956年に日本原子力研究所,1957年に日本原子力発電株式会社(以下,原電)の建設が決定された 頃は,耕地率67.8%(農業統計,1956年),農業人口比率75.1%(対村人口,1955年),市街地はみ られない純農村であった。都市的な施設がない状況の中,従業者の居住施設を整備する必要から,

上記事業所の建設に合わせ給与住宅団地が村内に建設されていった。日本原子力研究所(当時)の 荒谷台住宅はそのもっとも早い例で1958年,東海駅から南東約1kmの畑,約4haを用地として建設 され,長堀住宅は1959年,東海駅南側に隣接する山林,約17haが買収され,建設された。

東海村の13原子力関連事業所の勤労者数は現在約3000人,その家族も含めると,全人口36,868人

(2009年8月)の約1/3に達する規模となる。これら事業所のうち日本原子力研究開発機構には太 田,箕輪,百塚,荒谷台,長堀の5給与住宅団地があり,原電に滝坂社宅がある。戸数規模では,

東海村の全戸数の10.4%を占め,茨城県平均5.2%に対し2倍に達する数であるが,図1に示すよう に,居住世帯数でみると,1975年にピークに達した後は減少をつづけており,2005年現在,全世帯 の7.2%となっている。

給与住宅団地における居住者構成を確認する。国勢調査(2005年)で集計されている,「箕輪」

「滝坂」「荒谷台」「長堀」の4地区は給与住宅団地と対応しており, これら4地区の人口ピラ ミッドを図2に描いた。なお,各団地の入居開始時期は,箕輪,滝坂,荒谷台1区,長堀1区が昭 和30年代,荒谷台2区が昭和40年代,荒谷台2区が昭和50年代である。

まず,村全体の人口構成をみる。大きなピークが,団塊ジュニアの「30〜34歳」,つづいて団塊 世代の「60〜64歳」の2箇所に表れており,これらに比べると小さいものの,団塊ジュニアの子ど も世代になる「0〜4歳」と「5〜9歳」に第三のピークがみられる。他方,日本全体の人口ピラ ミッドでは,団塊世代と団塊ジュニアの2箇所に大きなピークがあるものの,団塊世代のピークの

図1. 東海村における給与住宅居住世帯数の推移

!"#$

%&" %'(

!!!(

!'("

!'($

&!

%""

"

'""

)""

$""

&""

!"""

!'""

!)""

!%** !%$* !%(* !%&* !%%" !%%* '""" '""*

単位:世帯数

(3)

方が団塊ジュニアより高く,かつ「0〜4歳」「5〜9歳」あたりに人口のピークはまったく現れ ずむしろ急速にしぼんでいる。急速な少子化現象である。以上より,東海村の人口構成の特徴を日 本全体と比較してみると,団塊ジュニアとその子どもで構成される核家族世帯がとくに多いことに あるといえる。

次に,給与住宅団地の人口構成を確認する。「60〜64歳」をほぼ上限とした構成になっている。

65歳以上がほとんどなく,親との同居とみられる世帯はごくわずかである。それぞれの人口規模が 小さいため,夫婦間の年齢差とみられる人口構成のズレを示して,男性では30代から40代,女性で は30代前半にピークのある団地が多い。加えて,「10〜14歳」までの子どもにも大きなピークがあ る。団地ごとにみると,荒谷台では「0〜4歳」がとくに多く,若い核家族世帯が多いことがわか る。他方,箕輪では,男性人口のピークが40代後半から50代前半へ大きくずれ,子ども人口のピー クも他の3団地と比べると小さい。4団地の中でもとくに,世帯構成が高年齢へ傾いていることが わかる。長堀と滝坂はこれら2団地の中間にあるといえる。

以上のように,団地によって人口構成に特徴はみられるものの,村全体の人口構成と比較する と,高齢者が不在で,かつ低年齢の子どものピークが大きい。この特徴は,給与住宅団地における 入居資格と退去条件によって,若い夫婦や子育て期の核家族の入居と一定期間後の退去が繰り返さ れることによる。次章にみるように,給与住宅団地での居住年数は比較的短く,居住者構成の特異 性と合わせて,周辺市街地とは異質のいわば島状のコミュニティを形成しているといえる。

0 500 1,000 1,500 2,000 0~4

10~14 20~24 30~34 40~44 50~54 60~64 70~74 80~84 90~94 100~

0 500 1,000 1,500 2,000

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

全体

0 5 10 15 20 25 0~4

10~14 20~24 30~34 40~44 50~54 60~64 70~74 80~84 90~94 100~

0 5 10 15 20 25

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

箕輪

0 5 10 15 20 25 30 35 0~4

10~14 20~24 30~34 40~44 50~54 60~64 70~74 80~84 90~94 100~

0 5 10 15 20 25 30 35

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

滝坂

0 5 10 15 20 25

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

0 5 10 15 20 25 0~4

5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

荒谷台

0 20 40 60

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

0 20 40 60

0~4 5~9 10~14 15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~74 75~79 80~84 85~89 90~94 95~99 100~

長堀

図2. 東海村および給与住宅団地の人口ピラミッド

国勢調査(2005年)より作成

(4)

3.給与住宅居住者世帯の住居と生活環境評価

本章では,給与住宅に居住する世帯が,給与住宅団地や地域の生活環境をどのように捉えている のかをみる。

今回,団地数と管理戸数では圧倒的多数を占める事業所では,給与住宅に関して今後の方針転換 の可能性もあるとして調査が実現できなかった。そこで,調査協力を得られたA社の給与住宅団地

(仮にB社宅とする)の居住者世帯を対象に,2009年6月にアンケート調査を実施した。

B社宅は,東海村が原子力産業都市として開発が始まるごく初期に建設された団地として,立地条 件に恵まれ,約5haの広い敷地にゆとりある中層の住棟の配置と豊かな緑などを特徴としている。

団地内には,世帯向け住棟4棟,住戸数96,のほか,独身寮2棟,駐車場,公園,テニスコートな どがある。表1に世帯向け住棟の基本データを示した。表中E,F,G棟は,団地建設当初の住棟 A,B棟を撤去して建て替えられたものである。団地管理は管理会社に委託されている。なお,B社 宅の入居資格は,A社東海事務所に勤務する,世帯主である社員とその家族で,社内規定により退 去年齢(詳細不明)が定められている。

世帯向け住棟の典型的な間取り3例を図3に示した。いずれも階段室型で,C棟の平面は,ダイニ ングキッチン(以下,DK)と6畳2室,4.5畳1室,G棟は,台所,居間・食堂,6畳2室,洋室

(6畳)1室の3LDKである。70年代の建設であるC,D棟に対し,90年代の建て替え住棟である E,F,G棟では,DKを廃して,食堂居間を広くとり,洋室を増やし,全体として床面積を大幅に拡 大している。

2009年6月現在,これら5住棟に居住しているのは38世帯,入居率39.6%である。入居率の低さ

C棟       E, F棟       G棟 図3. 世帯向け住棟の典型間取り

台所 食堂

台所 台所

食堂 居間 食堂

居間

洋間 洋間

洋間

表1.  対象団地の基本データ

住棟名 建設年 住戸数 間取り

C 1972 24 3DK

D 1974 24 3DK

E 1992 16 3LDK

F 1993 16 3LDK

G 1993 16 3LDK

(5)

についてA社担当者は,給与住宅供給時に比べ需要が大幅に減少していること,共同住宅は必ずし も好まれないこと,賃貸住宅居住者に対する住宅手当を選択する世帯が多いことなどを指摘してい る。

調査は,B社宅に居住する社員38人に社内メールによりアンケート調査票を配布,回答は,世帯 主によること,もしくは世帯主の立場でなされること,本調査の回答の有無や内容に会社はいっさ い関知しないことを説明のうえ,会社総務へ持参ないしはメールによる返信という方法で回収され た。19票が回収された(回収率50.0%)。調査内容は,居住歴,現住居や団地環境の評価,今後の 住み替え予定などである。回収数が少ないため,住み替え意向などについては世帯の個別条件に沿 いつつ分析するものとする。

分析対象世帯の概要を示す。世帯主はいずれも男性で,30代がもっとも多く,出身地別では,東 海村内1人,茨城県内(東海村外)6人,茨城県外が12人と,村外出身者が多数を占める(表 2)。世帯主には全員に配偶者がおり,配偶者19人の出身も世帯主と同様の傾向である。東海村に 転入してきた世帯主の東海村での居住年数は,「6〜10年」がもっとも多く(8世帯),以下,「5 年以下」「11〜15年」となる(表3)。B社宅での居住年数をみると,6年未満の世帯が12世帯 で,全体の63.2%を占める。全体として居住のサイクルは長くないとみられる。世帯類型は,「夫婦

表5.  現住居を選んだ理由

住居費が安い 18

勤務先に近い 13

勤め先企業の管理ということで安心 8

住宅が広い 4

買い物・通学などに便利 1

建物などがよく管理されきれい 1

住宅が新しい 0

住宅設備がよい 0

団地共用施設が整っている 0

団地が広い 0

緑が豊か 0

その他 1

(世帯数,複数回答)

表2.  世帯主と配偶者の概要

出身地 世帯主 配偶者

29歳以下

1

東海村内

1 2

30代 12

茨城県内

6 7

40代 4

茨城県外

12 10

50代 2

(人)

60代以上

0 世帯主の年齢

表3.  東海村での居住年数

5年以下 6

6~10年 8

11~15年 3

16~20年 0

21~25年 0

26~30年 1

31~35年 1

36年以上 0

(世帯数)

表4.  未成年の第一子

就学前 7

小学生 2

中学生 1

高校生以上 3

子どもなし 4

(世帯数。不明分省略)

(6)

と子のみ」13世帯,「夫婦のみ」5世帯(1世帯不明),世帯員の年齢構成では,「17歳以下の子ども がいる」世帯は14,第一子の年齢は就学前がもっとも多い(表4)。

給与住宅を選んだ理由は,「住居費が安い」(19世帯)と「勤務先に近い」(14世帯)が多く,「勤 め先企業の管理ということで安心」(8世帯)がこれに続いている。「住宅設備がよい」「団地共 用施設が整っている」「緑が豊か」はいずれの世帯でも理由にはならなかった(表5)。

現住居と団地環境に対する評価をみると,「勤務先の近さ」と「住居費の安さ」は,「評価でき る」の割合が高く,「まあ評価できる」を合わせてみてみると,圧倒的多数が評価している(図 4)。他方,「住宅設備の良さ」「団地管理の良さ」の評価が少ない。すなわち,対象世帯におけ る給与住宅の主な選択理由と評価項目は,勤務先に近いという住宅の立地性と,住居費が安いとい う経済性の2点に集約される。

居住世帯の給与住宅に対する評価を,「安定した居住の保障」「質のよい賃貸住宅の提供」「質 のよい住環境の提供」の3項目にしぼり,「評価できる」から「評価できない」までの4段階で回 答してもらいその平均値をみた。「安定した居住の保障」が3.1,「質のよい住環境の提供」2.7,

「質のよい賃貸住宅の提供」2.5であった。住宅の質に対する評価がとくに低い結果となった。この 回答は,居住経験のあるB社宅および県外のA社給与住宅を念頭にされたものとみられるが,先にみ た現住居と団地環境に対する評価をより端的に示したものといえる。

つづいて,地域の生活環境への評価をみる。ここでは,先に村が実施した「まちづくりアンケー ト調査」

4)

結果との比較をとおして,B社宅居住者の居住ニーズがどのような特質をもつのかを明ら かにする。調査項目は,図5に示す10項目である。各項目に対し,「満足」から「不満」まで5段 階評価で回答してもらい,その平均値により満足度を示した。

全体をとおしてみると,村平均,B社宅居住世帯ともに満足度が高いのが,「ゴミや下水が衛生 的に処理できる」である。これに対し,満足度がとくに低いのが「子どもや高齢者が道路を安全に 利用できる」「通勤や買い物のための公共交通の便がよい」「村の行政に住民の要望が充分に取り 入れられる」であった。

村平均に比べて,B社宅居住世帯の満足度が大きいのが「原子力防災がしっかりしている」で,

図4. 住宅および住環境に対する評価

5.3 10.5 10.5 15.8

21.1 21.1

31.6 57.9

63.2

57.9 57.9

63.2 68.4

63.2 47.4

31.6 31.6

26.3 15.8

21.1 5.3

10.5 10.5 15.8

10.5 5.3

10.5 15.8

5.3 10.5

5.3 5.3 5.3 0 0

63.2

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

住宅設備の良さ 団地管理 団地共用施設の整備 団地環境の広さ 団地環境の緑の豊かさ 買い物・通学の利便性 住宅の広さ 住居費の安さ 勤務先の近さ

評価できる まあ評価できる あまり評価できない 評価できない

(7)

村平均と0.83ポイントの差がある。対象世帯は原子力関連企業従業員の世帯であるが,防災対策に はとくに大きな信頼をおいていることがわかる。つづいて,「安心して子どもを生み育てられる」

(0.54ポイント差),「教養を高めるための学習・文化施設が近くにある」(0.42ポイント差)が高 い。「学習・文化施設が近くにある」に対する満足度の高さは,東海村全体に比べ,対象世帯の,

教養を高めるための施設へのニーズの高さが前提にあると思われるが,B社宅が,市街地内にあっ て,村の主要都市計画道路沿いに立地し,いずれの公共施設にもアクセスが容易であるという立地 条件が高い満足度につながったとみられる。

満足度が低く,かつ村全体と比べても低い項目は,「子どもや高齢者が道路を安全に利用でき る」(0.28ポイント差),「乳幼児・学童保育が整備され,だれもが安心して子どもを預けられ る」(0.18ポイント差)である。乳幼児・学童保育は,そのニーズに対する量的整備の点では問題 がないという現状からすると,広く子育て環境における安全性向上への要望が多いと読み取ること ができる。

以上をまとめると,入居者が給与住宅に求める要素は,勤務先に近く,住居費が安いことであ る。住宅の質に対しては評価が低く,給与住宅の選択理由にもならなかった。その一方で,居住過 程で立地のよさについては評価され,日常生活の利便性や原子力防災対策への信頼感などによっ て,村全体に比べても生活環境各要素への満足感は高い。ただし,安全,安心な子育て環境という 点で満足感は低いといえる。

4.住み替えと居住地選択

給与住宅居住者が給与住宅からの退去という選択も含めて,居住の計画をどう立てているのかを 事例に沿ってみていく。

図5. 生活環境の現状と村の施策に対する満足度

2.81 2.77 2.85

3.24 3.18

3.43 3.32

3.41 3.77 3.22

2.53 2.84

3.00 3.06

3.22 3.68

3.74 3.95 3.95 4.05

0 1 2 3 4 5

子どもや高齢者が道路を安全に利用できる 通勤・通学や買い物のための公共交通の便が良い 村の行政に住民の要望が充分に取り入れられる 乳幼児・学童保育が整備され,誰もが安心して子どもを 預けられる 要介護者・ひとり親の家庭や障がい児・者家族などのた めに福祉サービス充実している 公園や運動施設・グラウンドなどが利用しやすい 教養を高めるための学習・文化施設が近くにある 安心して子どもを生み育てられる ゴミや下水が衛生的に処理できる 原子力防災に関する対策がしっかりしている

東海村全体 給与住宅居住者

(8)

世帯形成時から現居住地に住んでいる世帯が7,茨城県外で居住した後,現居住地へ転居した世 帯が7で,この2つのパタンが多い(表6)。これら世帯の職種は,研究・技術職をはじめ事務 職,現業職と多様であるが,居住地歴が世帯形成時の居住地も含め,3回以上と多くなると,いず れも研究・技術職となる。現給与住宅での居住年数は,6年までが12世帯,7年以上7世帯,11年 以上が3世帯あった(表7)。

住み替え意向をもつ世帯は19世帯中13世帯,「できるだけ給与住宅に住みたい」という意向をも つ世帯が3例である。「とくに考えていない」世帯は2あった。住み替えを予定している13世帯の 住み替え理由は,持家取得(9世帯),退去条件の到来(5世帯)が多い(複数回答)。 居住地を 選ぶ際に重視する要素は,「実家に近い」4世帯,「現住居と同じ学区」「勤務先が近い」各3世 帯であった。「地価が安い」「緑が豊か」はごくわずかだった。次に住む住宅のタイプは,戸建て 持家が11世帯で圧倒的多数となり,このほかは分譲マンション1世帯,賃貸アパート1世帯であっ

表8.住み替え予定のある世帯

世帯主 妻

1 30代 村内 県外 夫婦と子1 就学前 2回,給与→給与,県外→村

内 50~60 ○退去条件到来,持家取

得,住宅が狭い 村内農村地域 ○実家に近い,生まれ 育ったところ 2 40代 県内 村内 夫婦と子2 高校生以上 4回,村内→県外→村内 60~70 ○退去条件到来,持家取

得 村内市街地 ○同じ学区,勤務先に近

い,教育・福祉などが充 実

3 50代 県外 村内 夫婦と子3 〃 2回,給与→給与,村内→村

内 70~80 ○退去条件到来,持家取

得 村内郊外 ○親族のすすめ,住み慣

れている 4 30代 県内 県内 夫婦と子2 小学生 2回,給与→給与,村内→村

内 40~50 持家取得,親との同居 ひたちなか市 郊外

実家に近い,勤務先に近 い

5 40代 県内 県外 夫婦と子1 就学前 2回,給与→給与,県外→村

内 50~60

○退去条件到来,持家取 得,買い物・通学などが 不便

ひたちなか市 市街地

○村内の土地は条件付き が多い,買い物や通学な どに便利,不動産屋やハ ウスメーカーなどの紹介 6 40代 県内 県外 夫婦と子2 中学生 3回,県外→村内 70~80 退去条件到来,持家取得 ひたちなか市 実家に近い,生まれ育っ たところ,勤務先が近い 7 20代 県外 県内 夫婦と子1 就学前 1回 40~50 住宅が狭い,古い,間取

りが使いにくい 県外郊外 教育や福祉などが充実 8 30代 県外 県内 夫婦のみ ― 1回 不明 ○持家取得,住宅が古

い,転勤・転職 未定 不明

9 30代 県外 県内 夫婦のみ ― 3回,給与→給与→給与,村

内→県外→村内 40~50 持家取得 ひたちなか市

郊外 地価が安い,緑が豊か 10 40代 県外 県内 夫婦のみ ― 2回,その他→給与 不明 ○退去条件到来 東海村農村地

地域住民とのしがらみを 断つ,同じ学区,住み慣 れている

11 30代 県外 県外 夫婦と子2 就学前 2回,給与→給与,村内→村

内 不明 ○持家取得 未定 不明

12 30代 県外 県外 夫婦と子1 17歳以下 1回 不明 不明 市街地 不明

13 50代 県外 県外 夫婦と子3 高校生以上 4回,県外→村内 70~80 ○退去条件到来 村内市街地予

定 買い物や通学などに便利

「世帯形成後の居住歴」の回数は,形成直後の住居を1回と数えた。○:複数回答のうち第一順位 住み替え理由・目的 居住地の選択 選択の理由 No. 世帯 出身

年齢 世帯構成 第一子の 世帯形成後の転居歴 成長段階

床面積 (㎡) 表6.  世帯形成後の居住地歴

世帯形成時 → 転居1回目 → 転居2回目 → 転居3回目 世帯数

東海村 7

茨城県外 → 東海村 7

東海村 → 東海村 1

近隣市町 → 東海村 1

東海村 → 茨城県外 → 東海村 1

茨城県外 → 茨城県内 → 東海村 1

東海村 → 茨城県外 → 茨城県外 → 東海村 1

合計 19

(世帯数)

表7. 現住宅の居住年数

3年未満 5

3~4年 4

5~6年 3

7~8年 2

9~10年 2

11年以上 3

(世帯数)

(9)

た。以下では,住み替えを予定している世帯について,主に世帯主の出身地別に,住み替え予定の 居住地やその選択理由などとの関連について検討する(表8)。

世帯主と配偶者のいずれかが村内出身の世帯,No.1,2,3はいずれも,子どもをもつ核家族世 帯で,住み替え先の居住地はいずれも村内を予定している。これら3世帯は,先にみた図3の生活 環境の満足度調査では,不満項目はまったくないか,ほとんどないという点で共通しており,住み 慣れた地域で,実家や縁者とのつながりを維持して住み続けるという選択である。

世帯主が県内出身の世帯,No.4〜6は,妻の出身地も村外である。この3世帯には村内での住み 替え予定例はない。いずれも,東海村の南に隣接するひたちなか市で持家取得を予定している。う ちNo.4と6は,世帯主がひたちなか市出身で,上記のNo.1〜3と同様,実家とのつながりを重視し て居住地を選択している。No.5は,先の生活環境満足度調査で買い物・通学の利便性の満足度が低 い。市街地の分譲マンション取得を予定していることも考え合わせると,より都市的なライフスタ イルを指向する世帯とみられる。

世帯主が県外出身の7世帯,No.7〜13では,上記2グループのように,実家などの,村内で居住 地を選択する誘因はなく,東海村に居住地を選択することを明確にしているのはNo.10と13の2例で ある。うちNo.10は,現住居に11年以上と居住歴が長く,No.13は,B社宅と県外の給与住宅を行き来 している,世帯主年齢が50代の世帯である。長く住み慣れた結果,東海村を選択しているとみられ る。現住居に入居して3年未満と,居住歴が短いNo.8とNo.11は,将来の住み替えは予定している が,住み替え先の居住地イメージも選択理由も明確ではない。

「できるだけ現住居に住みたい」という意向をもつ3世帯と,住み替えを「とくに考えていな い」2世帯では(表9),世帯主はいずれも村外出身者である。前者のうちNo.14,16では,現住居 を「仕事に対応しやすい」や「勤務先に近い」を住み続けの理由にあげており,住居の立地性を重 視している。後者のNo.15,18が「とくに考えていない」とする理由は不明であるが,いずれも世帯 主30代と若く,退去の予定は立てにくいということであろう。

以上をまとめると,①夫婦いずれかが村内出身の世帯は,村内の実家や縁者とのつながりを求め て実家近くに持家取得を予定している。②夫婦ともに村外出身だが世帯主が県内出身の世帯では,

世帯主の出身地が通勤可能な地域であれば,出身地の実家近くに居住地を選択する。③夫婦とも県

表9. 現給与住宅に住み続け意向の世帯

世帯主 妻

14 30代 県内 県内 夫婦と子2 就学前 2回,賃貸マンション→

給与,近隣市町→村内 50~60 仕事に対応しやすい,子 どもの学校関係

15 30代 県内 県外 夫婦と子2 小学生 3回,給与→給与→給

与,県外→県内→村内 40~50 不明

16 30代 県外 県内 夫婦と子2 就学前 3回,村内 70~80 勤務先に近い,家賃が安 い

17 30代 県外 県外 夫婦のみ ― 1回 50~60 いずれ転勤がある 18 30代 県外 県外 夫婦と子2 就学前 2回,給与→給与,県外

→村内 70~80 不明

「世帯形成後の居住歴」の回数は,形成直後の住居を1回と数えた。○:複数回答のうち第一順位

第一子の

成長段階 世帯形成後の転居歴 床面積

(㎡) 住み続けの理由 No. 世帯主

年齢

出身 世帯構成

(10)

外出身の世帯では,選択はしぼられず多様だが,村内での居住歴が長くなると村内での定住を選択 される例がでてくる。④多くはないが,できるだけ住み続けたいという意向をもつ世帯もあった。

5.まとめ

給与住宅の居住世帯が給与住宅と住環境をどう評価し,今後の住み替えについてどのような意向 をもつのかについて,東海村の団地に居住する世帯を対象に分析した。以下にまとめる。

1)給与住宅団地は東海村全体と比べると,子育て期の核家族世帯に特化され,周辺市街地とは 大きく異なる居住者構成をなしている。

2)入居者が給与住宅に求める要素は職住近接と安価な住居費であり,高く評価されている。給 与住宅はこの2点において,入居勤労者の居住と勤務の基本的要望に応えてきたといえる。しか し,住宅の質への評価は低く,これを給与住宅の選択理由にする例は皆無であった。その一方で,

居住過程で住宅立地のよさが評価されており,日常生活の利便性や原子力防災対策への信頼感など 多くの生活環境要素でみても,村全体に比べて満足度は高い。他方で,安全,安心な子育て環境の 整備という点では満足度は低かった。

3)退去後は戸建て持家を取得しようとする世帯が多数で,東海村およびその周辺地域で定住す るものとみられる。居住地は市街地と郊外のほか農村地域も選択肢に入っている。また,多くはな いが,できるだけ長く住み続けたいという意向をもつ世帯もあった。

今日,企業福祉は大きく縮小しており,古い給与住宅ストックは老朽化と空き家の増加ととも に,廃止もすすんでいる。このような状況がつづくと,周辺環境の荒廃とともにコミュニティの荒 廃もすすむことにもなろう。こうした不安定な状況が,地域社会へもたらす影響もみのがせない。

建物更新とともに地域社会のなかで給与住宅団地ストックをどうつなげ活性化するかが検討される 必要があろう。

引用文献および注

1)高田淳彦 . 2008. 「コミュニティ空間のある企業独身寮」『都市住宅学』 62 , pp. 34-37.

2)財団法人労務行政研究所 . 2008. 「社宅・独身寮の最新動向」『労務時報』 3724. 74-76, pp. 115-116.

3)小山雄資・不破正仁・中野茂夫・吉田友彦 . 2006. 「茨城県日立市における日立製作所社宅の建築概要 と立地上の特徴」『日本建築学会学術講演梗概集』(関東) , pp. 1077-1078. この文献によると,茨城県 日立市・日立製作所の給与住宅8団地では,入居率は 30.5 %から 96.9 %,平均して 59.2 %である . 96.9 % の団地は 1991 年と 1997 年に建て替えられたもの .  

4)東海村によって実施されたアンケート調査. 2008年12月から2009年1月,20歳以上の村民1,500人

を無作為抽出のうえ郵送で送付,留め置き自記法により実施された . 回収数 598 票,回収率 39.9 % .

参照

関連したドキュメント

居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について 介護保険における居宅介護住宅改修費及び居宅支援住宅改修費の支給に関しては、介護保険法

確保元 確保日 バッテリー仕様 個数 構内企業バスから取り外し 3月11日 12V(車両用) 2 構内企業から収集 3月11日 6V(通信・制御用)

地区住民の健康増進のための運動施設 地区の集会施設 高齢者による生きがい活動のための施設 防災避難施設

台地 洪積層、赤土が厚く堆積、一 戸建て住宅と住宅団地が多 く公園緑地にも恵まれている 低地

This questionnaire targeted 1,000 mothers who were bringing up a child, and the Internet was used.. However, in the decision making of the removal, convenience("Shop"

東京都北区大規模建築物の 廃棄物保管場所等の設置基準 38ページ51ページ38ページ 北区居住環境整備指導要綱 第15条.. 北区居住環境整備指導要綱 第15条 37ページ37ページ

話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学

フロント リテイ リング、ジェネックス、親和建設、 SCREEN