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Ⅰ 研究の概要

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Academic year: 2021

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Ⅰ 研 究 の 概 要

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研究主題 自発的活動としての遊びを中心とした保育

1 主題設定の理由

本園は「心豊かで創造的な子どもの育成」を教育目標とし,目指す子ども像を「自ら行動し,自 ら考える子ども」「豊かな感性で自己表現する子ども」「認め合い,共に育ち合う子ども」と捉えて 一人一人にとって幼児期にふさわしい生活が実現されるような保育を目指している。そのために,

子どもの主体的な活動を促し,保育者が子どもと共に生活を重ね,生活をつくっていくことを重視 して,遊びを中心とする保育実践を重ねてきた。

幼稚園教育要領等の改訂・実施を前に,平成 27〜29 年度には「3年保育の教育課程の再考」を 主題として実践研究に取り組んだ。保育の方向性や保育の課題を再確認し,子どもの主体性が発揮 されるような生活を具現化していくために,幼稚園生活における3年間の子どもの育ちの姿を教育 課程として再編成することが必要であると考えたからである。

この取組においては,平成 23 年度に編成した本園の教育課程を基に,3〜5歳の子どもの発達 の姿を日々の保育実践の中で具体的に捉え,カンファレンス・研究保育等を通して検討し,幼稚園 生活の中で3~5歳児の育ちのプロセスを捉えなおそうと考えた。それをもとに各年齢,各期にお ける「ねらい」と「内容」を改めて整理することで教育課程編成のための足がかりとした。

平成 30 年度から実施された幼稚園教育要領を踏まえた実践に取り組むにあたっては,次の点に ついて確認した。第一にこのたび示された「幼児教育において育みたい資質・能力」「幼児期の終 わりまでに育ってほしい姿」については,到達目標ではなく,方向目標として考えることの大切さ を理解し,保育の目標やねらいについても同様の理解をしていくこと,第二に子どもの生活は生活 場面と遊びの場面というように分けて考えることができず,総合的に指導することが大切であるこ とを理解し,その結果として表れる子どもの姿から丁寧に子どもの経験を読み取り,育ちを捉えて いくことを実践の重点とすることである。そのためには,子どもが主体性を発揮して展開する自発 的活動としての遊びを十分に保障することが大切であること,子どもにとって生活の中心が遊びで あることなど,本園の保育の基本を再確認し,教育課程を編成した。

この再編成した教育課程に基づいた保育を実践していくにあたり,子どもが主体的に遊ぶ中で,

発達に必要な経験を重ねていくことができるように,保育者が子どもと共に豊かな生活を織りなし ていきたいと考えると同時に,その実現が本園の追求し続けていくべき課題であるとも考えた。

研究を進めるに当たって,保育者間で確認したのは,子ども一人一人の思いや願い,興味関心に 基づく遊び,すなわち自発的活動としての遊びの充実

が子ども一人一人の育ちにつながること,その一人一 人の育ちが集団としての育ちにつながる保育の実現 を目指すことである。自発的活動としての遊びを通し て満足感や充実感,達成感,葛藤,挫折などの様々な 感情を味わうことを積み重ねることが子どもの育ち

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に結びつくものと考える。本園では,子どもたち一人一人が自らの思いを表して向かう自分の好き な遊び,友達や保育者と共につくりだす好きな遊びを保育の中心に据え実践してきたが,改めて自 発的活動としての遊びについてその意味や実情を捉え直したいと考えた。これらのことを踏まえて,

幼稚園教育要領では「幼稚園教育の基本」とされ,本園がこれまで保育の中心としてきた「自発的 活動としての遊び」について今一度目の前の子どもの姿から考え,そのよりよい実現に向けて実践 していきたいという思いから研究主題を設定した。

また,平成 30 年度からは平成 29 年度に改訂・告示された幼稚園教育要領が実施となった。今回 の幼稚園教育要領では保育所保育指針,幼保連携型認定こども園教育・保育要領の3〜5歳児との,

保育内容のより一層の共通化が図られている。

それらにおいては,「幼稚園教育において育みたい資質・能力の明確化」「幼児期の終わりまでに 育ってほしい姿」「カリキュラムマネジメント」などが改訂の基本方針として示されており,小学 校とそれらを共有することも求められている。これまで以上に,幼稚園の保育や幼児期の育ちにつ いての理解とその発信が求められていると言える。

幼稚園教育要領では「環境を通して行う教育」を基本として,子どもの自発的な活動としての遊 びを中心とした生活を通して,子ども一人一人に応じた総合的な指導を行っていくという従来から の方針に変わりはない。そのため,これまで幼稚園教育が大切にしてきた「環境を通して行う教育」

「自発的活動としての遊び」を新しい幼稚園教育要領に即して,より一層充実させていくことが必 要であるとも考えた。

2 研究主題について

本園ではこれまでも自発的活動としての遊びを中心として保育を実践してきたが,保育を実践す る上での難しさも感じてきた。それは自発的活動としての遊びの捉え方や,それを充実させるため の保育の在り方についてである。

第一に子どもが自ら展開している遊びの全てにおいてそれが自発的活動としての遊びと言える のかということである。つまり,幼稚園教育で求められている,子どもが主体性を発揮する生活の 中で,子どもは自ら進んで遊び,充実感を得ているのかということである。

第二には,子どもが自分で遊びを進めていることをよしとして,保育者の援助が見守るだけにな っていないかということである。子どもと一緒に遊ぶ中で,子どもと保育者の思いの違いについて どう考えて援助をしていけばよいのだろうかなど,自発的活動としての遊びを中心とする保育の実 践上の悩みや課題はこれまでもたくさん語り合ってきた。そして,活動・行動レベルだけではない 内面も含めた子ども理解が基本であると考えてきた。また,それぞ れの保育者の子ども理解を職員間で共有することで多面的に子ど もを捉え,子ども理解を深めていくことの大切さも実感してきた。

これまでに取り組んできた保育の計画や記録においても,こうした ことの理解を基本として考えてきたことであり,これからもより理 解を深められるようにすることが課題として捉えられた。

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第三として,上記二つの課題を含めて,子どもの生活,遊びを豊かにするための環境の再考が必 要であると考えた。子どもたちの遊びを充実させていくためにどのような環境が必要なのか,それ らの環境をどのように構成したらよいのかなど,これまでも本園の実践を進めていく上で話し合っ てきた。そうした話し合いから自発的活動としての遊びを豊かにするために,環境としての保育者 の在り方を含めて子ども主体の生活における環境を考え保育を実践していくことと,子どもと共に どのような園の環境を考え構成していくかが本園の課題であると捉えた。さらに,現代社会におい て子どもの自発的活動,つまり自ら環境にかかわって展開する遊びが保障される貴重な場である幼 稚園という環境について,家庭・保護者への理解を促すためにも,保育者自身の理解と保育の発信 の仕方もまた実践の課題として考えられる。

3 研究計画

自発的活動としての遊びを中心とした保育をすすめている本園において,私たちは自発的活動と しての遊びの意味を改めて考える必要があることを確認した。子どもに遊びを通して園生活を主体 的に過ごしてほしいという願いをもって実践を重ねてきてはいるが,前記の課題等,自発的活動と しての遊びを中心とする保育の実践には改めて確認すべきことや再考すべきことも少なくない。そ こで,本研究では自発的活動としての遊びを中心とする保育の中で子ども主体の生活を実現するた めに次の3つのキーワードを中心に検討していくこととし,3年計画各年次のサブテーマとした。

1)2018年度サブテーマ「子ども主体の生活を考える」について

子どもの自発的活動としての遊びに向かう具体的な姿から,子どもの思いや育ちを読み取り,子 ども主体の生活とはどのような生活なのかを考え,幼児期にふさわしい生活が展開されるような保 育実践を目指した。

子どもの遊びが主体的かどうかは行動レベルの観察のみでは判断できないため,子どもたちの言 動,表情,環境との関係など様々な点から総合的に子どもの姿を捉え,子どもの姿を内面から理解 するように努めてきた。そうした子ども理解を基に,子どもが主体的に活動する姿を願い,援助や 環境の構成等を計画しながら保育の実践を重ねていくことが,より主体的な子どもの活動や自発的 活動としての遊びの充実につながることを職員間で再確認した。

また,園行事を初めとした様々な園内での活動についても職員間で考えることができた。当然な がら,3歳児,4歳児,5歳児の育ちやそれぞれの園生活の経験の差によって,園行事等に抱くイ メージや思いは大きく異なる。子どもたち一人一人にとっての園行事等の意味を考え,子どもの側 からもこれらを見直していくことが子ども主体の生活へつながることを確認することができた。

2)2019年度サブテーマ「子ども主体の生活と保育者」について(今年度)

自発的活動としての遊びを中心とした保育を実践していく中で,保育者として様々な悩みを感じ てきた。例えば,「保育者は保育室のカラー積み木での電車ごっこから実際に園内を走る遊びに展 開していきたいと考えたが,子どもたちは,カラー積み木の遊びで満足そうにしている」といった

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子どもの思いと保育者の願いのずれや「樋を使って水遊びをしているが,樋の組み方が逆になって いるな…今教えていいかな?教えなくても自分たちで気付くかな?」といった保育の場面における 援助の有無・程度・タイミングなどについて迷いを感じることは,いわば保育の日常でもあると言 える。自発的活動としての遊びを中心とした保育であるからといってすべてを子ども任せにした活 動だけで,子ども主体の生活になるわけではない。子ども主体の生活を実現するための保育者の在 り方を具体的な子どもとの生活から再考した。

3)2020年度サブテーマ「子ども主体の生活と環境」について

幼稚園教育の基本である「環境を通した教育」に着目し,保育者も含めた環境の在り方を見直す ことで,子ども主体の生活の実現を目指していきたい。

4 今年度の研究について 1)研究の目的

自発的活動としての遊びを中心とした保育における保育者の存在意義や遊びへの援助の在り方,

保育の計画性について考え,子ども主体の生活が展開されるような保育実践を目指した。

2)研究の内容

これまでも子ども主体の生活の展開を目指して,具体的な子どもの姿から子ども理解や子どもの 育ちの実情の理解を進めてきた。そして保育や園生活そのものを見直していくことで自発的活動と しての遊びを中心とした保育における子ども主体の生活について考察してきた。特に今年度は「子 ども主体の生活と保育者」というサブテーマのもと,以下の 3 点を観点として捉え,自発的活動と しての遊びを中心とした保育の実践を積み重ねた。

一つ目は,これまでも保育の基本として大切に考えてきた子ども理解である。子どもと保育者と の信頼関係を築く上でも,活動・行動レベルだけではない内面も含めた子ども理解を深めてきた。

その際,子どもと一緒に遊ぶ中で子どもの思いを受け止め一緒に遊びを進めていくといった,子ど もへの共感,共鳴するものとしての保育者の在り方とはどのようなものなのかを考えながら実践を 重ねてきた。

二つ目として,子ども主体の遊びへの援助の在り方についてである。保育者が子どもの園生活の 安定の拠りどころであることは言うまでもない。そしてその安定したかかわりは,子どもの主体的 な生活の中で,子ども自身が自発的活動としての遊びに没頭し,

充実感を味わうための基盤となる。直接的・具体的な遊びへの 援助において,幼児の主体性と保育者の意図との関係は,日々 の保育で常に保育者の迷いや戸惑いにもつながることとも言え る。そうした日々の保育で保育者が感じる具体的な悩みや課題 について,丁寧に考え深めてきた。

三つ目には,自発的活動としての遊びを生み出すための保育

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者の役割である。幼稚園教育は環境を通して行う教育といわれ,保育者はその環境の大切な一部で ある。環境としての保育者,そしてその周辺の状況も子どもにとっての自発的活動としての遊びを 生み出し,充実させるために大切なことと言える。また,自発的な遊びをより豊かで充実したもの とするための保育者の役割として,遊びの文化を子どもと共につくり出す役割や継承する役割をも つ大人として,そして子どもの主体性が生かされる遊びの創造を支える大人として,子どもの遊び にどのようにかかわり,援助していくのかについても考えてきた。これについては,次年度のサブ テーマである「子ども主体の生活と環境」を考えることにつなげたい。

また,これら3つの観点から考えていく中で,子どもの主体性や偶発的な遊びの展開などを大切 にしながら,自発的活動としての遊びを中心とした保育をどのように計画し実践していけばよいの かといった保育の計画の重要性についても話し合ってきた。

3)研究の方法

本園がこれまで実践を積み重ねてきた,次の6つを具体的な方法として研究を進めてきた。

①週日案

前週からの遊びの流れや予想される遊びの状況とその遊びに対する援助,子ども一人一人への 援助等を記載した,1 日および週の保育計画。

②ファイル「エピソードメモ」

幼児のつぶやきや遊びの様子,保育者とのやり取りについて,周囲との関係も含めて簡単に記 録していく取組。

③エピソード記録

保育者の心に残ったこと,問題意識をもって考えたこと,悩みなどについて,幼児の言動など の現象面だけではなく,これまでの遊びやかかわりの様子,その時の保育者の思いや事後に考え たことなども記録していく取組。

④遊びを語る会

特定学級の担任のエピソード記録を全員で見ながら職員が自由に話し合い,子ども理解や保育 についての考えを深めたり共有したりする保育カンファレンス。

⑤研究保育

特定学級の保育を全員で参観し,写真や参観者のエピソードメモを基に,子ども理解や保育に ついての考えを深めたり共有したりする保育カンファレンス。

⑥保育研修会

毎回テーマを変えながら定期的に行っている園内研修会や各研修会等への参加を通して,子ど も理解や保育の基本について考え,職員間で共通理解を図っている。

●保育の記録と計画

前週からの遊びの流れから予想される遊びの状況を週日案に記入し,日々保育にあたってきた。

週日案は保育の計画であると同時に,子どもが展開する遊びの状況や子どもの興味と関心の記録で

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もある。前の週の子どもの生活・遊びの具体的な状況から,その週の遊びの予測やそれに応じた援 助について計画してきた。また,週初めの子どもの遊びの状況も捉えたうえで,加筆修正しながら 週の生活を送ることができるようにしてきた。そのため,週の初めに週日案の形式を整えて完成さ せようとするのではなく,日々,書き加えたり修正したりしながら,1週間を通して子どもたちの 遊びの流れをつかんだり,遊びが途切れている場合などにはその課題を把握したりすることができ た。何日間か続けて遊びを見ていくことで,子どもが経験していることや子どもの心の動きを見取 り,これからの遊びの展開などを予想しながら保育に向かうこともできた。

週日案には,一人一人の子どもに対する理解を深め,より丁寧に援助していくために,一人一人 に対する援助を記入する欄を設けている。一人一人の子どもについて,その子らしさやその子なり に主体的に生活する姿を丁寧に捉えてきた。

子どもの姿を捉えるためには,日々の子どもの言葉や行動などの具体的な姿を基に考えていくこ とを研究の基本と考えた。そして,研究の方法としては,エピソード記録を基にした考察を実践研 究の要と位置付けてきた。しかし,保育の日常の中で,日々丁寧なエピソード記録を書いていくこ とは容易ではない。そこでエピソード記録としてまとめることを急がず,まずは日々の保育の中で 心に残った場面や気になることなどをエピソードメモとして簡単に記録し書き溜めてきた。このエ ピソードメモは担任だけではなく,副担任や養護教諭など全職員で取り組み,時には付箋なども活 用して記してきた。そのため日常の保育の記録情報が増え,担任以外の記録も活用しながら日常的 にそれを共有することにつながっている。このエピソードメモを基に,節目にはエピソード記録と して記述し直し,記録者である担任が再考察したり,カンファレンス等を通して複数の職員で多様 な視点で捉えたりした。

●記録をもとにした省察

子どもの具体的な姿の日々の記録,保育者の援助の記録を積み重ねていくことによって,幼稚園 生活における子どもの育ちのプロセスを捉えてきた。こうした記録をもとに,「遊びを語る会」(カ ンファレンス)や,研究保育などを計画的に設定し,職員全員で話し合ってきた。また週1度の定 期的な職員打ち合わせの後にも,短時間ではあるが各学級の状況等について情報交換し,共有する ための時間を設けてきた。これらの機会には,個々の子どもの生活の様子だけでなく,行事の在り 方などの見直しも心がけて行った。

上記の研究保育では,これまで本園の保育の中心である子どもの遊びの場面の参観とその後の検 討を中心に行ってきたが,昼食時から降園までの過ごし方についての話し合いなど,保育の中で当 たり前のこととして行われている場面を取り上げることもしてきた。全体を通して,子どもが主体 的に生活する園生活について考察することが,子どもの自発的活動としての遊びの充実につながる ものであると考えたからである。

●保育者としての研修

前記のようないわば日常的な取組のほかに,自らの実践と少し距離を置いて子どもや保育につい

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て考える機会も保育者として必要なことと捉え,研修を計画的に実施してきた。定期的な人事異動 がある本園にとって,着任して間もない職員が子ども理解や保育の基本を考えることのできる取組 として,実際に子どもが遊んでいる環境の中で,保育者自らが様々な遊びを実際に体験する研修も 行った。また,より具体的な子どもの姿をもとにして考える機会としてのビデオカンファレンスも 行った。

5 2年次の実践のまとめ

今年度は,子ども主体の生活を実現するための保育者の在り方等について再考することを課題と した。そして,子どもにとって保育者がどんな存在であるかや,自発的活動としての遊びにおける 保育者の役割について,職員間で実際の子どもの姿を通して話し合いを重ね,共通理解を図ってき た。

例えば,事例3(はな組・3歳児Ⅲ期 以下,事例については実践報告を参照)をはじめとする 各事例において,子どもと保育者とのやり取りから子どもにとって保育者がどのような存在である のかを話し合った。子どもたちは,園生活の中で安心してかかわることのできる存在である保育者 と一緒に遊びたい,かかわりたいという思いが心の根底にあるように感じる。このような安心感が 基盤となって,事例7(ほし組・4歳児Ⅱ期)や事例8(ほし組・4歳児Ⅲ期)の子どもたちのよ うに自ら友達や周囲の環境にかかわってみようとする姿につながっていくのだろう。こうした姿を 支えるために,子どもの姿から内面を推し量り,保育を考えていくことが大切なのだと改めて感じ た。そういった保育者の姿勢やかかわり方が子どもの主体的な姿を引き出したり,興味関心を広げ たりと,より主体的な姿につながるための基盤となるのではないだろうか。

事例11(そら組・5歳児Ⅲ期)の,遊びの中での戸惑いや不安を保育者に受け止めてもらうこ とで,自分なりに気持ちを整えて,再び遊びに向かう子どもの姿が見てとれる。その姿からは,年 長になり,友達とのかかわりが増えてきても,どこかで保育者を必要とし,求めるのだということ が再確認できた。友達と夢中になって遊んでいるからと言って保育者が必要ないわけではなく,発 達の姿や子どもの求めに応じて保育者のかかわり方や援助の方針を考え,実践していくことが大切 である。

事例5(もり組・3歳児Ⅱ期)からは,子どもと保育者の遊びへの思いにずれがあることを再認 識した。子どもたちがこうしたいという思いと,子どもたちにこうなってほしいという保育者の願 いにずれが生じることは言わば必然である。むしろこの思いと願いのずれに気付くことこそこそ,

子ども理解をさらに深める機会であり,保育改善を進めていく手がかりになるのではないだろうか。

ただ単に目先の子どもの思いを叶えようとするのではなく,目の前 の子どもの姿から子どもにこうなってほしいという願いをもつこと。

保育をしながら,あるいは保育を振り返ったときに子どもの遊びへ の思いとのずれに気付くこと。そして,ずれそのものを無くそうと するのではなく,そのずれから何を考えて,保育に生かしていくか を考えていくこと。以上のことをこれからも大切にしていきたい。

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上記のようなエピソードのカンファレンスや,園内研究会,保育についての話し合いなどから,

子ども主体の生活の実現に向けて「保育者」を視点として保育について考えてきた。言うまでもな く,園生活をしていく上で,保育者は子どもにとって良き理解者でなくてはならない。保育の基本 は保育者のかかわりであり,保育者が子ども一人一人の思いに寄り添ったり共感したりしながら,

共に生活していくことで子どもたちは安心して園生活を送ることができるのであろう。

今年度は,保育者が子どもの思いに寄り添うことや共感することについても職員間で話し合って きた。一口に「共感する」「思いに寄り添う」と言うが,実際は簡単なものではない。子どもの感 じていることや思いは端から見ていただけでは理解することは難しい。子どもと一緒に遊ぶ中で,

この子はこんなことを感じているのではないだろうか,と子どもの思いを推し量りながらかかわっ ていくからこそ,ようやく,しかもなんとなく子どもの思いが分かってくる。また,保育者が子ど もの思いを分かろうと一緒に遊びながら過ごすことで,子どもの側も,先生は僕の気持ちを分かっ てくれている,と感じるのではないだろうか。このような保育者のかかわりを通して,一人一人の 子どもとの関係を築いていくことで,子どもたちは安心感をもって過ごすことができるのだろう。

繰り返しになるが,そうした安心感が基盤となって子どもたちはより主体的に遊びに向かっていく ことができると考える。そのためにも,本園がこれまでも大切にしてきた子ども一人一人に対する 理解を深めていくことを追求し,保育実践を重ねていきたい。

何度も述べてきたことだが.子ども主体の生活を目指していく上で,子ども理解から子どもの実 態に沿った援助を考えていくことは保育の基本である。だからといってすべてを子ども任せにする ことで子ども主体の生活が実現するわけではない。子どもたちは生まれてわずか数年の経験をもと に生活していることを考えれば,子どもの発想だけでは思いつかないこと,経験できないであろう ことは山ほどある。だからこそ子どもたちの自発的活動としての遊びの中で,共に生活する大人と して様々なことを提案したり,時に集団として経験してほしい活動を計画したりすることも必要に なってくる。こういった保育者の提案などを子どもたちが自ら取捨選択し,遊びを展開していくこ とも子どもの育ちにつながる大切な経験であり,必要な経験であると考える。保育者主導で保育者 の思いを一方的に押しつけるのではなく,こうした経験を子ども理解と発達の過程の理解から意図 的に計画し,目の前の子どもたちに合わせて柔軟に変更,改善をしながら実践していくことが自発 的活動としての遊びを中心とした保育の計画とその実践であると考える。今後も本園の課題として 目の前の子どもの姿から自分たちの保育を考えていきたい。

次年度は「子ども主体の生活と環境」をサブテーマとして,保育実践を進めていく。子どもにと って一番身近な環境である保育者をはじめ,遊具,友達,行事など園生活において子どもの周りに あるすべてのものが環境である。それらの環境が子どもにとってどのような意味をもつのか,それ らをどのように計画し,保育を実践していくのかを考えることを通して,さらに子ども主体の園生 活の実現を目指していきたい。

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