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生活科の成立過程とその内容

高 瀬一 男*

1.は じ め に

昭和62年12月24日付けの教育課程審議会の答申を受け,小学校低学年に生活科の新設が決定し,従前 の低学年の理科と社会科は廃止された。そして,平成元年3月15日には,小学校学習指導要領が告示さ れたのである。

この生活科の誕生は,戦後の小学校教育の大改革である。教科の改廃は,小学校教育全体の在り方に 大きくかかわっているものである。ふりかえってみると,例えばわが国の低学年理科が独立教科とし

て設置されたのは,昭和16年のことである。この設置にあたっては,明治・大正・昭和の三代に亘って,       1)

揄ネ教育関係者が低学年理科の重要性を説き, 「低学年理科特設運動」を精力的に展開されたのである。

この成立の経緯は理科教育史上の重要な出来事として忘れてはならないことである。低学年理科成立以 来50年その間幾つかの間題があったにせよ,大きな成果をあげてきたことは確かである。今日に至っ て廃止されることになったのはどのような理由があったのか,その真相を知ることは困難である。

ここで,今更と思うが,生活科にっいて改あて,その成立過程を概観するとともに,教科観などにっ いて触れることにする。

2.生活科誕生への経緯

これまでに,小学校低学年の教科の構成にっいては,従前のままでよいのかという問題がでてきた。

中でも昭和30年代の終り頃から40年代にかけて,低学年の社会科と理科の在り方に注目されるようにな った。例えば,社会科廃止論の要点は,料学的な社会認識は育てられないこと,また,低学年社会科の 指導はむずかしく,多くの教師から敬遠されていたことである。また,理科においてもこの類のことが 問題にされていたといわれている。このような背景の中で,教育課程審議会中央教育審議会,臨時教 育審議会等で検討がなされたという経過をたどっている。その審議の概要等を次に述べてみる。

1.昭和42年7月24日 教育課程審議会初等教育分科審議会中間まとめ2}

本中間まとあは,次のようなことをとりあげている。

「低学年社会科については,具体性に欠け,教師の説明を中心にした学習に流れやすいものの取り扱い について検討を加えるとともに,児童の生活に即した具体的な社会の要請(……)などにっいても十分 考慮して,改善を図り,児童の発達に即した教育課程の構成のしかたにっいて再検討する必要がある。」

と。また,理科にっいては,「低学年においては児童がみずから身近な事物や現象にはたらきかけるこ

*茨城大学教育学部

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とを尊重し,児童が対象と比較したり,関係づけたりすることなどの経験を豊富にするような内容に改 善する。」と述べている。これは,低学年の社会科・理科の学習が表面的な知識の伝達に偏る傾向のあ ることを指摘したと解される。

2.昭和42年10月30日 教育課程審議会答申3)

本答申の中には,上記2}の事項は明文化されていないが,その意味が含まれているのであろう。

3.昭和43年7月11日 小学校学習指導要領改訂告示4}

第一学年の社会科においては,目標に「身のまわりの社会事象を具体的に観察したり」を明示すると ともに,具体性に欠け,教師の説明に流れやすい内容,例えば「自分から進んでくふうし,みんなのた めにすれば,気持ちよく楽しい生活ができる。」などを削除した。

また,理科においては,内容の取扱いについて「遊びなどを通して,親しみやすい自然の事物・現象 に直接にはたらきかける」ようにするなどの改善を行った。

4.昭和46年6月11日 中央教育審議会答申5)

「初等教育の段階における基礎的な能力の育成は重要であって,……とくにその低学年においては,

知性・情操・意志および身体の総合的な教育訓練により生活および学習の基本的な態度・能力を育てる ことが大切であるから,これまでの教科の区分にとらわれず児童の発達段階に即した教育課程の構成 のしかたについて再検討する必要がある。」ことをあげている。

ここでは,国語,算数の重視と,従来の教科区分にとらわれず,総合的な教育課程の編成にっいての 再検討を求められているのである。

5.昭和50年10月18日 教育課程審議会中間まとめ6)

このまとめでは, 「社会科及び理科の内容の中心として,例えば,児童が自分たちをとりまいている 社会的及び自然的環境について学習することを共通のねらいとするような,目標と内容をもった新しい 教科を設けることについて研究してみる必要がある。」ことを指摘した。これは,社会科と理科の内容 を中心とする新教科にっいて検討を求めたものである。

6.昭和51年10月6日 教育課程審議会「審議まとめ」7}

この審議のまとめは, 「現行の教科の編成を変えるかどうかにっいては,そのことによる指導の効果 や学校における教育条件等も十分考慮して決定しなければならず現在,直ちに教科の編成を変えるこ とは,なお研究と試行の積み重ねが必要であるという考え方が強く,むしろ教科の編成は現行どおりと し……合科的な指導を従来以上に推進するような措置をとること。」と指摘された。

7.昭和51年12月18日 教育課程審議会答申8}

この答申は,「低学年においては,児童の具体的かっ総合的な活動を通して知識・技能の習得や態度・

習得の育成を図ることを一層重視するという観点から合科的な指導を従来以上に推進するような措置を

とること。」と示したのである。

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8.昭和52年7月23日 小学校学習指導要領告示9》

この総括では, 「低学年においては,合科的な指導が十分出来るようにすること。」を指摘した。ま た,社会科と理科の, 「指導計画の作成と内容の取り扱い」においては, 「低学年の指導に当たっては,

特に言語,自然,造形などに関する諸活動との関連を図り,指導の効果を高めるよう配慮する必要があ る。」と指摘している。

9.昭和58年11月15日 中央教育審議会教育内容等小委員会審議経過報告且゜》

この経過報告では, 「小学校低学年の教科の構成にっいては,国語・算数を中心としながら既存の教 科の改廃を含む再構成を行う必要があるが,どのような教科構成が望ましいかにっいては,これまでの 研究の成果や幼稚園教育及び小学校中・高学年における教科内容の改善との関連にも配慮しながら,今 後更に検討する必要がある。」と示している。

10、昭和61年4月23日 臨時教育審議会「教育改革に関する第二次答申」11}

この答申では, 「小学校低学年の教科の構成にっいては,読・書・算の基礎の修得を重視するととも に,社会・理科などを中心として,教科の総合化を進め,児童の具体的な活動・体験を通じて総合的に 指導することができるように検討する必要がある。」と,低学年の教科の再構成の方向が示されている。

      、 P1.昭和61年10月20日 教育課程審議会中間まとめ12》

このまとめは, 「……低学年の教育全体の充実を図る観点から低学年に新教科として生活科(仮称)

を設定し,体験的な学習を通して総合的な指導を一層推進するのが適当であると考える。

…… ネお,社会科及び理科はその中に統合することとする。したがって,低学年の各教科は,国譜 算数,生活(仮称),音楽,図画工作及び体育より編成することとする。」と示され,ここにはじめて 生活科の名称が登場したのである。

12.昭和62年12月24日 教育課程審議会答申13)

小学校における各教科の編成等の項において, 「……低学年にっいては,生活科や学習の基礎的な能 力や態度などの育成を重視し,低学年の児童の心身の発達状況に即した学習指導が展開できるようにす る観点から,新教科として生活科を設定し,体験的な学習を通して総合的な指導を一層推進するのが適 当である。生活科は,具体的な活動や体験を通して,自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をも ち,自分自身や自分の生活について考えさせるとともに,その過程において生活上必要な習慣や技能を 身に付けさせ,自立への基礎を養うことをねらいとして構想するのが適当である。なお,これに伴い,

低学年の社会科及び理科は廃止する。したがって,低学年の各教科は,国語,算数生濫音楽図画 工作及び体育により編成することとする。」

さらに,生活科の「教科設定の趣旨とねらい」, 「内容構成の考え方」, 「学習活動の構成にかかわ る留意事項」が述べられている。

13.平成元年3月15日 文部省 小学校学習指導要領告示14)

生活科の目標は, 「具体的な活動や体験を通して,自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をも

ち,自分自身や自分の生活にっいて考えさせるとともに,その過程において生活上必要な習慣や技能を

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身に付けさせ,自立への基礎を養う。」と,明示された。この内容は教育課程審議会答申の文言と全く 同様である。

3.生活科新設の背景

小学校低学年の教科構成の在り方については,前述のような経緯がある。文部省は,この課題にっい て,昭和50年代初頭から,積極的に取り組み,合科的指導や総合学習の研究開発学校を指定して,その 推進を図った。その研究・実践を参照しながら,生活科が構想されてくるのである。

文部省は,昭和59年7月, 「小学校低学年の教育に関する調査研究協力者会議」を発足させ,昭和61 年7月に「審議のまとめ」を公表した。教育課程審議会はそのまとめを検討し,昭和62年12月の「答申」

で生活科の新設が決定したのである。

生活科新設の意味を要約すると次の様である。

1.低学年児童の発達特性に適合した教育活動ができる教科の設定

発達心理学において,この時期の児童は活動と思考が一体であって,未分化がその特徴であるという。

具体的な活動や体験を通しての総合的な活動が要求されるようになったという。

2.幼稚園教育と小学校教育の接続・発展

幼稚園教育では遊び的活動を中心として学習が進められている。 「領域」はあるものの,それらは遊 びの中で総合的に取り扱われ,独立した時間として設定されることはないといってよい。幼稚園では

「遊び即学習」なのであるが,小学校における学習は各教科や特別活動であって遊びが学習とは認めら れていない。すなわち,幼稚園教育と小学校教育をどうつなぐかということである。

3.今日の児童の実態とそれとの対応

今日の児童にみられる特徴は自然離れということである。即ち,自然との触れ合いが極めて少なくな ってきていることである。また,一方では,今日の児童には,日常生活に必要な生活習慣や生活技能が 不足しているということである(昭和59年の文部省全国調査「児童の日常生活に関する調査」から,そ の実態は明らかにされている。)。

4.低学年の社会科及び理科の学習指導の実態に対する反省

これまでの社会科や理科は,ややもすると表面的な知識の伝達に陥るきらいがあったということであ る。また,両教科は,多くの教師にその指導がむずかしいといわれてきたことでもある。

以上のようなことが,低学年の教科の再編成への要因になったとされている。

4.生活科の特色と内容

いわゆる,生活科の目標については,前述(2−13)の通りであり,小学校指導書生活編15}こは当然 のことながらその全貌が示されている。ここでは,生活科の特色と内容をまとめて考察してみる。

1.生活科の5っの特色

11)具体的な活動や体験の重視

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生活科における具体的な活動や体験とは,例えば,見る,調べる,作る,探す,育てる,遊ぶなどの 学習活動のことである。また,以上のような学習での様子や自分の考えを,言葉,絵動作,劇化など で表現する活動である。

生活科は,座学によって頭だけで学ぶのではなく,全身で学ぶところにその特色があるとされている。

したがって,学習の場は,校内は勿論校外まで及ぶことになり,児童の体験の世界を広げ,深めていく ことを目指している。

② 自分と社会や自然とのかかわりに関心をもっ

生活科は,自分と身近な社会や自然とのかかわりを大切にしている。このことは,単に身近な社会や 自然を客観的にとらえることが主たるねらいではなく,それと自分がどのようにかかわっているかを重 視している。例えば,自然とのかかわりでは,飼育・栽培は動植物の成長や変化の様子に気付くことに 主なるねらいがあるのではなく,それらを大切にしたり,愛情をもって育てたりすることが求められて いるのである。つまり,生活者としての自分が,人々や自然とどのようにかかわるか,かかわり方を大 切にするのである。

(3)自分自身

生活科では,自分自身の学習を重視している。それは,自分自身や自分の生活について調べ,考え,

新たな気付きをすることである。つまり,自分をよりよく生かすことを学ぶことである。具体的には,

集団生活の中での自分の在り方や自分の成長(誕生から現在まで)に気付くこと。また,自分でできる ようになったことや得意としていること,すなわち,自分の良さに気付かせ,やる気と自信をもたせる ことである。

(4)生活上必要な習慣や技能を身に付けること

生活科では,児童の学習活動の過程において,基本的な生活習慣や生活技能を身に付けさせることを 目指している。例えば,健康な生活,集団生活におけるきまり,礼儀作法,道具を上手に使うことなど である。

⑤ 自立への基礎

生活科の究極的なねらいは,自立への基礎を養うことである。その要点をあげると次の4点である。

1っは,学級や学校集団または社会の一員として,集団生活ができるようになることである。学校生 活の初期において,仲間意識をもたせ,共に遊び,共に学んで,よりよい生活ができることである。

特に,学習活動の1っとして,遊びを学習として認めたことは,小学校教育の質的転換として重要な 意味がある。

2っは,自分のことは自分でできるようになることである。例えば,日常生活に必要な習慣を身に付 けること,健康や安全,整理・整とんやあいさっができることなどである。

3っは,学習活動や集団生活において自分の考えや意見が,はっきりと述べられること。また,自分 の意思を伝えたり,人の意見を聞くことができることである。

4っは,身近な社会や自然の事柄に関心をもち,生きる主体として環境に積極的に働きかけのできる ことである。

身近な自然環境に働きかけ,自然に学び,また,身近な人々とのかかわりの中で,自立への基礎が育

まれていくとされている。

(6)

5.生活科の内容構成

1.生活科の内容

生活科の特色を前述したが,生活科では「〜とのかかわり」ということにその特徴を見出すことがで きる。そのかかわりに関する基本的かっ具体的視点にっいて次にとりあげてみる。それはいわゆる内容 構成の視点ということである。

文部省初等中等教育局小学校課は,10項目から成る視点を表組に作成している16}。これは生活科の 枠組を考えるのに有用であると思われるので,表一1にそれを示してみる(一部改変)。

;豆墜禦1瓢三難灘議雛li濯

i       ii 日i i(2)家族や友だち洗生などと醐に接することができるii常i

ようにする       (身近な人々との接し方)    1 社会とのかかわり

      ll

i(4)生活に使うものを大切にし,計画的に買物ができるよii 要i

;.…然叢___._…..__.鷹融肖費≧..{iなi

ョ筆膿燕飛鑓搬藍駿裁ii藤

i       ii  : 自 分

自然とのかかわり

i      ii やi

堰i6)野外の自然を観察したり渤植物を食司つたり・育てたii技ii りするなどして,自然との触れ合いを深めることができii(能iiるようにする   (身近な自然との触れ合い)ii基をii         ii本身i与___・_……・……・・…………・…・……・・…・・…・………・…・……・・イi的にil      l      ・i(7)季節の移り変わりによって,生活が変わることに気付iiな付i

奄ュこ鷹よう嚇変イ___簾宝il……………………一…一1i習よii       ll  li⑧遊びや生活などに使うものを作り,楽しく遊ぶことがii慣うiiできるようにする    (物の製作)iiや1こii       ii生すii      ll  :

自分自身

輸 百雰養ぎ器欄認どε琶活褐百雰あ翻i活るi

表一1 生活科の内容構成

(7)

この表をみると,自分を核として,3項目の基本的視点(社会,自然および自分自身)と10項目の具 体的視点が示されているがそれら相互の関係は明確でない。すなわち,3項目は実線で囲ま礼10項

目は点線で線分されている。なお,㈹の基本的な生活習慣や生活技能は表の右側に位置付けられている ことに注目したい。

ここで,3項目の基本的視点と10項目の具体的視点が線で結ばれていないのは複数と結び付くもので あることを意味するからである。それらの関係を強いて結びつけるならば(1)〜(5}および(9)の6項目は,

社会とのかかわりに属し,(6)〜(8)の3項目は,自然とのかかわりの範疇にあると考えられる。qo)の項目,

すなわち, 「生活上必要な習慣や技能」にっいては,生活科の全学習過程で,それらを身に付けさせる ということを意味するものと考えられる。この項は生活科の1っの特色ともいうべきものであろう。

次に内容構成を項目数からみると不均衡の様にみえる。すなわち,社会認識にかかわる内容は項目的 には6項目,自然認識にかかわる内容は3項目である。しかし,表組を改めてみると,線分では,(1)〜

(5》に(9)を加えた部分と,(6)〜(8)とは等しいことに気付くであろう。これは,表面的ではあるが内容的に は両者ともほぼ同様であることを示している。自然とのかかわりでは,内容的には,時間的に長くかか るものや,継続的に行うものもあることを表わしている。従って,学習活動の構成に当っては,時間的 な配慮が必要とされることである。

生活科の内容は,10項目の具体的な視点を背景として構成されたものであるので,それらを説明すべ きと思うが,紙数の都合で1例をあげておく。例えば,㈲の「身近な自然との触れ合い」とは,動植物 を飼ったり,育てたりすること,草花や木の実,土砂などで遊ぶこと,野外の自然を観察し動植物 の変化の様子に気付かせることなどの指導を行うことである。これらの指導は,直接体験を通して行う

ことであり,これは従来の理科でも大切にしてきたことであるが,生活科では一層重視することである。

また,地域によって,素材に違いのでることが予想されるが,それを認めることも大切なことである。

2.各学年の内容17)

第1学年の内容(要点のみ)

(1)学校生活にかかわること

② 家庭生活にかかわること

(3)公共施設,自然や季節の変化

(4)遊ぶものを作り,遊ぶこと

⑤ 動植物を育てること

(6)入学してからの自分 第2学年の内容(要点のみ)

(1)日常生活にかかわること

(2)公共物のはたらきや利用

(3)季節や地域の行事と生活

(4)遊びや生活に使うものを作り,遊ぶこと

(5)自然観察や動植物を育てること

⑥ 誕生から現在までの成長

(8)

6.お わ り に

本稿では,生活科の成立過程にっいてその概要を述べた。生活科は,平成4年から全面実施されるこ とになるが,前述のように本教科は我が国初の小学校における新教科の誕生である。20年近く検討を重 ねた結果という。

新教科生活科が実施されるにあたって危惧される2,3について述べ,まとめとする。

教科の成立は,学問的背景から成るのが一般的な見方である。佐々木18)は,r「生活科」の論理を考 える』の中で,「教科は各学問に至る門だと考えていた。各学問はそれぞれに独自の世界を作っている が,一人ひとりの子どもの中にそれらの世界を作る準備をしてやるのが教科の仕事だと考えていた。教 科の教科たる由縁は,日常生活の世界から別の世界へと導くところにあると考えていた。」と,教科の 意義を述べ,日常生活が教科になってしまったことに当惑しているのである。

教科観からすれば,生活科は特異な背景からの誕生である。したがって,生活科が一っの体系を整え ることが大切である。そのためには,生活科に含まれる理科的,社会的内容をはじめ,生活習慣,態度

・技能などの複合的なものを有機的・相互関連的に統一することである。また,学習の展開の在り方に っいての問題である。前者の統一を図ることも簡単なことではないが,後者の学習の展開において,学 習の深化を図れば,図る程,生活科とは結局何を学習する教科なのか,生活科が生活科という一教科と して成立するためには,どのような内容をもち,どのような学習をするのかという問題にまでっながっ てくるもので,その解決は決して容易ではない。いうなれば,生活科成立の哲学が必要なことなのであ

る。

例えば新学習指導要領によれば19)2°},生活科で取り扱われる理科的,社会的内容についての学習 は,第3学年から始まる理科および社会科の基礎として位置づけられ,それに発展的にっながるものと されている。見方を変えれば,生活科で取り扱われる自然的,社会的内容は,第3学年から始まる理科,

社会科への延長線上に位置されているとも言えるのである。斯様に考えると,生活科の学習は,ややも すると理科の学習,社会科の学習になる可能性が多分にあると思われる。しかし,生活科新設の理念は,

理科でも社会科でもない全く新しい教科であると述べられている。生活科はそれら教科の寄木細工的集 まりの入れものとならないよう注意されなければならない。

また,生活科は,21世紀の我が国小学校教育の基礎をなすものとして設置されたと述べている21)。こ の点からすれば,生活科は低学年の児童にのみ課するのではなく,最低小学校全学年に課することが望 ましいと考えている。例えば,小学校で実践されている全学年に亘る総合学習22)などは,その良き例で あり,今後の研究課題ともなるであろう。

さらに,21世紀の基礎というなら,生活科の配当週時数は,3時間でなく,むしろ4〜5時間として その充実を図るべきであろう。幼小の連携を全面に出していることも考慮すれば一層そのことが重要と

なろう。

現在,生活科の誕生は,教員養成,現職教育,教育現場での試行,移行などにおいて,多くの論議が

なされているところである。生活科が単なる理科や社会科の入れもの的教科とならないようその充実を

図らなければならない。

(9)

1)高瀬一男:小学校低学年理科の変遷 茨城大学教育学部教育研究所紀要 第19号pp.205〜2151986 2)教育課程審議会初等教育分科審議会中間まとめ(昭和42年7月24日)

3)教育課程審議会答申(昭和42年10月30日)

4)文部省小学校学習指導要領改訂告示(昭和43年7月11日)

5)中央教育審議会答申(昭和46年6月10日)

6)教育課程審議会中間まとめ(昭和50年10月18日)

7)教育課程審議会審議まとめ(昭和51年10月6日)

8)教育課程審議会答申(昭和51年12月18日)

9)文部省小学校学習指導要領改訂告示(昭和52年7月23日)

10)中央教育審議会教育内容等小委員会審議経過報告(昭和58年11月15日)

11)臨時教育審議会「教育改革に関する第二次答申」 (昭和61年4月23日)

12)教育課程審議会中間まとめ(昭和61年10月20日)

13)教育課程審議会答申(昭和62年12月24日)

14)文部省小学校学習指導要領改訂告示(平成元年3月15日)

15)文部省:小学校指導書 生活編教育出版 1989

16)文部省:生活科に関する説明資料(パンフレット),初等中等教育局小学校課,1988 17)中野重人:生活科 初等教育資料,Nα526, p.51,1989

18)佐々木俊介:「生活科」の論理を考える 筑波大学教育学系論集,第13巻第1号,pp.27〜35,1988 19)文部省 小学校指導書理科編教育出版1989

20)中野重人,高岡浩二編:改訂小学校学習指導要領の展開 生活科編,明治図書,pp.94〜96,1989 21)前掲書 17)pp.46〜48

22)茨城大学教育学部附属小学校:地域環境を生かした総合学習,明治図書,1986

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