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創作(物語)に関する学習指導法の研究−演劇的ア プローチ−

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(1)

創作(物語)に関する学習指導法の研究−演劇的ア プローチ−

著者 山野 寛朗

雑誌名 奈良教育大学教職大学院研究紀要「学校教育実践研

究」

巻 8

ページ 77‑86

発行年 2016‑03‑31

その他のタイトル A Study on Teaching Method of Creative Writing

‑ Dramatic Approach ‑

URL http://hdl.handle.net/10105/10417

(2)

−演劇的アプローチ−

山野寛朗

奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻

A Study on Teaching Method of Creative Writing

- Dramatic Approach -

Hiroaki Yamano

School of Professional Development in Education, Nara University of Education

<あらまし> 本研究では、創作(物語)と演劇の創作過程の類似性に着目し、創作(物語)

と演劇的アプローチの先行研究や実践の状況から現状と課題を明らかにした。そして、演劇 的アプローチによる授業構想をし、授業実践を行い、創作(物語)における演劇的アプロー チの有効性を明らかにしようとした。その結果、演劇的アプローチにより児童の創作(物語)

作品において、情景描写・心情描写、両方に変容が見られた。児童の創作(物語)作品に同 化・異化の視点が反映され、創作(物語)作品がより読み手に伝わるものになることが分かっ た。

<キーワード> 創作(物語) 演劇的アプローチ 視点

1.  はじめに

本稿では、「物語」を児童が「創作」する学習のこ とを「創作(物語)」と規定した。

1. 1.  研究動機

創作(物語)は、自らが作り出した世界である と言える。虚構の形を借りて自己を表したものであ り、自らが自らの手で完成させなければ価値が薄れ る。しかし、創作(物語)は独りよがりなものでは 意味をなさない。何かを参考にしながら、何かを観 察しながら、誰かからの助言をもらいながら、創作 はなされていく。大切なのは、自分で考え、取捨選 択し、つむぎ出していくこと、学習活動を通してそ のための目を養っていくことである。

西郷竹彦(

1967

)は、「内の目」を文芸の世界が、

その世界のなかに登場する人物の目をかりて、内が わから描いているとき、「外の目」を文芸の世界を その外がわから、つまり、その作品の登場しない人 物の目からとらえ描いてあるときと定義した。そし

て、「同化」「異化」「共体験」と結び付け「視点論」

を展開した。特定の人物の目と心を通って、文学世 界を見る視点<内の目>と、話者の目と心を通って、

文学世界を見る視点<外の目>の両方の視点から文 学世界を見る視点である共体験についての重要性に 目を向けた。創作(物語)においてもこれらの視点 を養うことが大切であると考える。

社会的背景からも視点を養うことの重要性がうか がえる。

2015

年8月

26

日付けの文部科学省教育課 程企画特別部会における論点整理について(報告)

の補足資料(3)「全ての生徒に育むべき資質・能 力と、高等学校各教科の必履修科目の関係等<仮 案・調整中>」によると、高校ではあるが、国語科 の資質・能力の育成のために重視すべき学習過程等 の例において、「読むこと」に「みること」が加わり、

「読むこと・みること」と示されている。このことか ら、読むことと同時に視点を養うこと、様々な学習 活動を通して、「みる」目を鍛えることが必要なこと がわかる。また、「みる」とひらがなで表記されてい

(3)

ることから、例えば、絵を見て、他の人を観察して、

観劇して、というような学習の機会が増えることも 考えられる。

学習活動を通して、他者と関わりながら、豊かな 創作(物語)を行うために、今回は演劇的アプロー チという方法を採る。創作(物語)という完成され た作品だけではなく、他者との関わり、創作過程も 含めた行為が、演劇をつくりあげる過程に似ている のではないかと筆者は着目したからだ。演劇的アプ ローチにより、創作が豊かになると考え、演劇的ア プローチを用いた創作(物語)に関する学習指導を 研究する。そして、演劇的アプローチにより、児童が 豊かに創作(物語)できるような授業を実践し、検 証する。

1. 2.  研究目的

児童が豊かに書くことを目指し、演劇的アプロー チを用いた創作(物語)学習を構想する。構想に基 づいた授業実践を振り返り、仮説の検証ならびに得 られた成果と課題を整理する。

1. 3.  研究の方法

①創作(物語)における演劇的アプローチがどの ように行われているのか明らかにするとともに先行 研究で生じた課題を把握する。

②学校実践Ⅳにおいて、創作(物語)における演 劇的アプローチによる授業実践を行う。

③学校実践Ⅳの授業実践を分析・考察し、創作

(物語)における演劇的アプローチの有効性を検証 する。

2.  文献による研究

2. 1.  創作(物語)の現状と課題

過去の創作(物語)の理論と実践を管見すると、西 尾実(

1953

)が「文学教育の基本問題」の中で、創作 活動と鑑賞活動をいとなませることが文学経験にな るとし創作活動について触れ、倉澤栄吉(

1966

)は、

相手意識や目的意識について述べながら、創作を活 用することに言及している。また、林四郎(

1969

は、古典にヒントを得ながらその書き換えによって 創作(物語)までつなげる力を育てていこうとした。

1970

年代には、ジャンニ・ロダーリ(

1978

)が作 家の立場から創作(物語)についての論を発展させ、

池田操

&

58

の会」

1988

のファンタジー作文 事例集へとつながることになる。そして、青木幹勇

1996

)は表現と理解の一体化を図った虚構作文の 学習を提唱した。このように創作(物語)は国語教 育の中で理論と実践が行われ、その有用性が認めら れてきた。

だが、位藤紀美子(

2006

)は、創作(物語)に関

する研究が、幼児期を対象にした内田伸子のもの以 外では、十分認められ解明された状態ではないこと を指摘し、実践を重ね、学習実態をとらえる必要性 を述べた。

また、三藤恭弘(

2013

)が小学校教員を対象に 行った意識調査によると、物語創作の有用性に関し て肯定的な意見を持っている小学校教員が約9割、

疑問を持っている小学校教員が約1割という結果を 示した。指導に関する悩みの有無に関しては、約9 割の小学校教員は悩みがあると報告している。

意識調査からは、創作(物語)に関して、学校現 場では有用性を感じているものの、指導について多 くの悩みを抱えていることがわかる。

つまり、現状では、①創作(物語)の効果的な指 導方法、②創作(物語)学習の実践の積み重ねの二 点が求められている。

2. 2.  日本における演劇教育の歴史

日本における演劇教育の歴史を概観すると、日本 で初めてアメリカの演劇教育を紹介したのは坪内逍 遥である。

1923

年、坪内は『児童教育と演劇』にお いて、ニューヨークのイタリア系移民地域で演劇制 作活動を行っていたアリス・ミニー・ハーツを取り 上げ、演劇制作活動による子どもの変容から演劇活 動を高く評価している。

他方、

1919

年小原國芳が広島高等師範学校なら びに成城小学校で開始した学校劇がある。その後、

小原は、

1923

年に『学校劇論』で「学校劇」を提唱 した。小原(

1923

)は、学校で行われていたそれま での劇活動を学校劇と名付けることで、他の劇活動 と区別した。芸術教育運動の高まりと学校劇活動の 高まりが重なり合い、学校劇は全国に広まることに なった。

しかし、

1924

年岡田文部大臣による通称「学校 劇禁止令」により、急速に学校劇は衰退していった。

一時自粛された学校劇は、

1927

年から教科書に掲 載された内容の劇化の形で復興し始め、学校劇が学 芸的行事の一環としても行われるようになる。

戦後に始まった「初期社会科」においては、演劇 的な手法を取り入れた学習と言える「ごっこ活動」

による経験的学びが展開された。その後も、演劇活 動やドラマ活動とは名付けられていないが、教科教 育において、動作化や劇化やロールプレイなど演劇 的活動は行われてきた。

戦後

1970

年代から海外の演劇教育が紹介され 始めるようになる。玉川大学の岡田陽翻訳による、

ジェラルディン・ブレイン・シックス(

1973

『子 供のための創造教育』、ジェラルディン・ブレイ ン・シックス(

1978

『子供のための劇教育』、ブラ イアン・ウェイ(

1977

『ドラマによる表現教育』

78

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Bఱଐઇ୘পઇ૙৩প৾੹౶ਏਸ਼ಀমધ

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(4)

などドラマ教育の本が相次いで出版された。岡田陽 は前述の小原國芳を師事し、児童演劇を研究してき た人物である。また、戦後の演劇教育の普及に冨田 博之らが取り組んできた。

戦後の学校演劇教育の普及に取り組んできた冨田 博之(

1958

1998

)が指摘しているように、それ ぞれの論者や時代によって演劇教育についての考え 方は違いがある。それぞれが、独自の方法論で演劇 教育、児童演劇教育、学校演劇教育などの名前をつ けて演劇教育を行っている。例えば、冨田(

1958

は、演劇教育を演劇教育と演劇的教育に区別して論 じている。筆者も、演劇、後に触れる海外のドラマ は、「演劇」として区別せず、本稿においても演劇 とドラマを「演劇」としている。管見すると、日本 独自の演劇教育は、冨田(

1998

『日本演劇教育史』

や増田(

2004

『演劇的学習の建設』において、そ れまでの日本における演劇教育の実践が年表的に紹 介されているが、実践は行われているものの、児童 演劇を主としていて、冨田(

1998

)と増田(

2004

以降には新たな目立った動きはない。

1990

年代になり、小林(

1995

1996

)による、

アメリカの演劇教育クリエイティブ ・ ドラマの創始 者である、ウィニフレッド・フォードの理論と方法 論の研究やイギリスのドロシー・ヘスカットのドラ マ活動を考察した研究など、欧米の理論と方法論が 紹介された。

現在の流れでは、渡辺(

2006

2008

)から、演 劇又はドラマ教育が、国語科で比較的多く実践され ていることがわかる。特に文学作品の「読むこと」

の領域において行われていて、「読む」授業では主 な学習目標として、「登場人物の心情や情景の理解 とその深まり」が多く、その学習方法として「動作 化」や「劇化」などで行われていることがわかる。

話すこと・聞くことの領域においては、若木

2011

)から、台本や劇などが話し方、聞き方といっ た技術の訓練のための手本として用いられたり、学 習者の音声言語活動を対象化し振り返るための活動 として用いられたりしていることがわかる。

国語科での実践例が比較的多いが、他教科におけ る実践に目を向けてみると、石原(

2005

)が社会 科で、青柳ら(

2011

)が情報モラル教育で行ってい る。また、川野・廣本(

2014

2015

)は、演劇的 活動を「国語」だけではなく、「総合的な学習の時 間」「道徳」「社会」において短時間ではあるが、実 践を行っている。教科外でも、ワークショップとし て演劇的アプローチを実践しているものとして、青 柳ら(

2014

)によるものがある。その中ではコミュ ニケーション能力の育成の観点から開催されたワー クショップの実践が報告されている。

日本における演劇教育の歴史を概観すると、日本

独自に発展していったものは、歴史的に児童演劇教 育という上演を目的としたもので、児童劇・学校演 劇が中心であることがわかる。そして、

1990

年代以 降の現在は欧米の手法を取り入れながら新たな学習 活動を形成しようとしている時期であることがわか る。そして、現在の演劇教育又はドラマ教育として 行われているものの先行研究の外観から。以下の3 点がわかる。

①国語科における「読むこと」「話すこと・聞く こと」の領域で実践されていることが多い。つまり、

「書くこと」に焦点を当てた演劇的アプローチは少 ないと言える。

②単元の一部分だけ又は、一時間だけ動作化や劇 化などの演劇的アプローチを行う事例も見られるこ と。学習活動全体を通して行われているものよりも、

部分的に演劇的アプローチを行っている実践例が多 いことがわかる。

③コミュニケーション能力の育成を主とした研究 目的にしているものが多い。便宜的、機能的な側面 に着目した演劇的手法が用いられている。

上記3点が現在の日本における欧米の理論・方法 論と取り入れた演劇教育・ドラマ教育であることが わかる。

2. 3.  演劇的アプローチについて

創作(物語)における効果的な指導方法を探し、創 作(物語)活動と演劇活動の過程の類似性に着目し た。日本の演劇教育は、学校劇・児童演劇を中心に 据えた論を展開している場合が多い。

1980

年代か ら取り入れられた英米の演劇教育の方法論は、「コ ミュニケーション」「異文化理解」というキーワー ドのもと、アクティビティやゲーム性を重視した活 動が散見される。河竹登志男(

1978

)が「演劇はそ の起源において、単なる娯楽でも営利興行でもなく、

よりよく生きるために必要不可欠な営みであった」

と述べているように、単なるハウツーではなく、多 元的・複合的で学習活動を豊かにするものだと考え る。そこで、原点に立ち返る必要があると考え、ア メリカの古典的演劇教育である「クリエイティブ ・ ドラマ」を体系的に示したジェラルディン・ブレイ ン・シックス(

1977

)に着目した。

シックス(

1977

)は、「ドラマで使われている創造 の体験は教育における学習体験と同じである。」と 考え、創造的過程に着目し、プロセスを重要視した 演劇教育を体系化した。シックス(

1977

)は、「ド ラマの要素は演技者、作者、観客のそれぞれの役割 に内在している本質的なものである。」とし、3つの 役割とそれに伴う基本的要素を示した(図1)

(5)

また、シックス(

1977

)は、ドラマの経験過程を

(1)知覚、(2)反応、(3)想像、(4)創造又 は形作ること、(5)伝達、(6)評価である。ドラ マではこれらの体験はそれぞれ依存しあっている。 とし、これらの六つは、個々に分断されているので はなく、相互に関係し合っていること示した(図2)

図2 概念図(経験過程)(Siks、1977、p41)

シックス(

1997

)の概念図を創作(物語)で考え ると、創作過程は、想像する前に、「知覚」「反応」 を経験してから、「想像」、をし、テーマ設定を経た 後に、また想像しながら「創造(形作る)、いわゆ る創作へと向かっていく。そして、「伝達」「評価」

という自己の評価や他の人の意見や助言を得て、創 作(物語)を深めていく創作(物語)との基本的な 流れとほぼ同じであることがわかる。また、「演技

者」「観客」「作者」のそれぞれの役割が子供中心に あることであることで、多様な視点を学ぶ機会が増 え、より創作(物語)に幅がでる。そして、創作(物 語)を豊かにするととらえることができた。

しかし、シックス(

1977

)は、教師の役割につ いて明確には規定していない。図1、図2で示され た概念図がうまく機能するためには、児童同士の相 互作用だけでなく、教師の支援が大きな要因となる。

また、要素に関しては、シックス(

1977

)の考えと は共通している部分もあるが、少し違う部分があり、

創作(物語)においては、違った要素が必要だと考 えた。

そこで、現行の学習指導要領、小学校国語科「

B

書くこと」での構成、①課題設定や取材 ②構成 

③記述 ④推敲 ⑤交流の5つの分類を参考にした。

そして、演劇において作品を鑑賞したり、演劇に向 かうまでにその全体をデザインしたりすることが必 要であるように、「準備」を追加した。

6つの過程とシックス(

1977

)の理論を援用し、

演劇的アプローチを「演劇的な要素に着目した創作

(物語)指導の手立て」と定義することにした。そし て、演劇的アプローチを表1に作成した。なお、各 表現過程内は必ずしも時系列ではない。

表1 創作(物語)における演劇的アプローチ 表現過程 演劇的アプローチ(児童が〜する。)

準備

A-

.

鑑賞する

G-

.

振り 返る

G-

.

交流 する

G-

.

評価 する

.

デザインする

テーマ設 定・取材

B-

.

想像する

.

書く 構成

C-

.

知る

.

想像する

.

書く 記述

D-

.

想像する

.

書く

.

読む・みる

.

演じる 推敲

E-

.

想像する

.

書く

.

読む・みる

.

演じる

交流

F-

.

読む・みる・演じる

.

鑑賞する

3.  研究仮説

仮説を「創作(物語)における演劇的アプローチ により創作(物語)活動を行えば、児童は視点が反 映された創作(物語)を書くことができるだろう。 とした。

図1 概念図(構成要素と概念)(Siks、1977、

p40)

80

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(6)

4.  授業実践 4. 1.  実践概要

奈良県内の小学校第六学年

27

名、授業実践実施 期間は

2015

10

14

日(水)〜

10

29

日(木)

10

時間で『新しい国語 六』東京書籍 「物語を つくろう」の授業を行った。各時間の学習活動につ いては表2の通りである。

表2 各時間の学習活動(第1〜5・7 ・ 8・

10 時は 45 分授業、6 ・ 9は 15 分授業)

学習活動

1 ・教師の例を鑑賞する。

・ゴールを決め、学習をデザインする。

・一枚の写真から連想マップを作成する。

2 ・物語の型を理解し、構成にいかす。

3 ・物語の場面設定をする。

・物語の構成を考える。

4 ・物語の構成を考え、あらすじを書く。

5 ・あらすじに沿って創作(物語)を書く。

・書き出しの一文を工夫する。

6 ・読み合って表現の工夫を探す。

7 ・読み合って山場を工夫する。

8 ・読み・演じて表現を工夫する。

・タイトルを決める。

9 ・表紙を作る。

10

・お互いに読み合って、鑑賞しあう。

4. 2.  児童について

ここでは、

4.3.

以降で述べる授業実践・考察の対 象児童(授業実践「物語をつくろう」の授業を受け た2人の児童)について述べる。

児童

A

(女)・・・授業中に教師に指名されると答 えられないことが多い。発言の際、声が小さい ことを指摘されると、黙り込んでしまうことが ある。小さな友達グループで会話するときには、

明るく話をする。「桜の木」の写真を選択。

児童

B

(男)・・・授業を静かにまじめに聞く。授業 自体に意欲が見られないわけではないが、授業 についていけない場合が多い。友達が多く授業 中の発言は少ないが、休み時間になると活発に 友達と遊ぶ。「カブトムシ」の写真を選択。

4. 3.  指導の実際 4. 3. 1.  第1時の授業

教師の創作(物語)を演じるように読んだ後、ど のような過程で作品を創作したのかを1枚の表にし て示した。そして、活動全体の最終目標を決めた。次 に、用意した写真の中から児童が写真を選び、連想 マップを作成させた。観点を示したが児童の反応が 鈍かったので、即興的な物語創作に切り替え、順番

に言葉をつなげていく活動を行った。そこでは、「二 人は、手を繋いで、儀式をして、すると、大魔王が、

降臨し、破壊する、しかし、大きな木は生き残る」

と物語の骨組みと呼べるものなどができた。その後、

各自で連想マップを書いた。

A

の連想マップは「春」という「時(季節)「学 校」という「場所」「先生」「子供」「桜」「鳥」とい う「人物」「鳥の声 歌っている」「鳥の声 聞いて いると楽しい 音楽」「花見 楽しむ 盛り上がる」

「満開 散ってゆく」から「出来事」と授業で示した 観点が書けていた。想像と言葉がつながったことが わかる。(図3)

図3 児童

Aの連想マップ

B

は、「時」は「夏」「場所」が「森」「人物」が

「人間」「カブトムシ」「クワガタ」「出来事」が「戦 う 死ぬ」と観点は一応満たしているが、全体的に 連想できた単語が少なかった。(図4)

B

には「他に でてくる登場人物はいる?」「何で戦うの?」「人間 は何してるの?」と声を掛けることを手立てとして 行った。

図4 児童

B

の連想マップ

4. 3. 2.  第2時の授業

昔話『桃太郎』を使ったワークシートで授業を 行った。(図5)ワークシートには、創作(物語)を 構成する要素を「いつ」「どこで」「だれが」「出来 事や事件」と起(はじまり)、承(事件・出来事)、転

(7)

(山場)、結(結び)として示した。

A

B

ともに起 承転結に振り分けられていた。

図5 第2時ワークシート

4. 3. 3.  第3時の授業

前時に学んだ創作(物語)の構成要素をいかすた め、構成要素に振り分けられるように場面設定と大 まかなあらすじ、「始まり」→「事件・出来事」→

「山場」→「結び」の型になるように作成したワーク シートを用いた。

例として、モニター画面に連想マップのワーク シートを写し、連想マップからどのようにワーク シートに記入していったかを説明した。

A

は、振り返りカードで、「難しいのかなあと思っ たけど、連想した言葉を使うととても簡単でくわし く書けるかなあと思う。」と書いていて、想像から言 葉、言葉から想像の往還が読み取れた。演劇的アプ ローチをうまく連動させていたことがわかる。また、

A

が楽しそうに創作(物語)をおこなっている姿が みられた。

B

の振り返りカードには、「写真一枚から物語を書 くのは、むずかしい、どうやったら話がすすむのか 分からない。」とあり、全く何を書いたらいいのか、

単語は思いつくけれども、話がすすんでいかない思 いが綴られていた。

B

には、「友達は誰なの?」「人 間は何で出てくるの?」と質問し、設定とあらすじ に注目して、何が想像できるかを聞く手立てをした。

4. 3. 4.  第4時の授業

児童の振り返りカード「友達に聞いたら書き方が わかった。「視点を考えたら物語が書けた。「最 初が書けたらスラスラと書けた。」という意見を取 り上げ、全体で工夫について考えた。ワークシート に書く児童とワークシートから原稿用紙に書く児童 の二手に分かれた。

A

のワークシート(図6)には、「桜になって…」

と書かれてあり、視点を自分で決めて、想像し、話 を組み立てたことがわかる。連想マップで連想した

言葉で、ワークシートには書かれていない言葉「ス イーツ」「ケーキ」「ピンク」などがあり、視点を明 確にして想像した後、取捨選択したことがうかがえ る。

A

の振り返りカードの「ジッと見ていたらスラ スラ書けた」という記述から、演劇的アプローチに よって「視点化→想像」「想像→視点化」をしたこ とがわかる。自分なりの方略を見つけ出したことが

「言葉がゴチャゴチャになっても一回書きたいこと をまとめると文が思いついた。」のコメントからわ かった。

図6 児童

A

ワークシート

B

は、ワークシートに設定を書けていたが、創作

(物語)の途中から話が続いていかないことがみら れ、振り返りカードには「どんどん話をいっぱい考 える。」と書いているが、話が思い浮かんでいないこ とがわかる。

B

には、「だれがみてるの?」「いきな りつかまるの?」「なんでつかまるの?」と質問し、

どの点で想像できないのかを確認する手立てをした。

図7 児童

B

のワークシート

4. 3. 5.  第5時の授業

ワークシートに書く活動は、ほぼ全ての児童が でき、原稿用紙に書く活動へと移行した。第4時の

82

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(8)

振り返りカードから「書き出しの言葉が見当たらな い。」という意見をもとに書き出しの一文を工夫す ることにした。児童が書き出しの一文を読み上げ、

工夫を板書し、意見を交流した。

児童が書き出しの一文を工夫しようと創作(物 語)の世界をじっくり考える姿がみられた。また、普 段よりも静かな雰囲気がそこにはあった。児童が他 の児童の一文読み上げを静かに聞き、しっかりと一 文からその創作(物語)の世界がどのようなものな のか想像しながら聞く姿があった。笑ったり、声を 出したりと一文を読み上げた後に反応があった。

「季節」「場所」など最初はこちらが分類して板書 していたが、次第に児童の方から「今のは場所、登 場人物」と声が挙がるようになった。創作(物語)

の要素を児童が読み・みる姿がそこにはあった。

A

の振り返りカードには、「主人公の気持ちとな る」とあり同化、「読み返すとおかしい文があって」

とあり異化、共体験しながら書いていることがわ かった。

B

の振り返りカードには、「なかなか想像がうかば ない」とあり、ここまでの演劇的アプローチが周辺 的なものである可能性がそこから読み取れた。

4. 3. 6.  第6時の授業

第5時の振り返りカードで「転」の「山場」で特に 悩んでいる児童のコメントが多かったことから、お 互いが読み合いながら書く時間にした。読み合うと いう活動を通して、お互いの進度がわかり、悩みを 共有することが安心感につながっていることが観察 からみられた。

第6時終了時点の児童の作品からは、

①フィクション(虚構)の世界が物語られている。

②情景や心情の描写、ストーリーというものが描か れている。

③話者が一人称や三人称などの視点から語っていく 形式となっている。

④「設定」+「事件」+「展開」+「山場」+「結 末」を構成要素としている。

を満たした作品が出来上がっていた。

4. 3. 7.  第7時の授業

今回から 「推敲」に入った。グループ分けをして 読み合いを行った。タブレット端末を使って読んで いるところを撮影し、それを自分でみるという活動 も取り入れた。自分の創作(物語)のどこが「山場」

なのかを探し、お互いに意見しあいながら活動して いる場面が見られた。作品の余白に、感想を書かせ て授業を終えた。

A

は、「みんないろいろな感想をもつことがわ かった。」と推敲段階の原稿用紙に感想を書いた。自

分とは違う他者の視点を実感したのだと考えられる。

B

は主人公である「ぼく(カブトムシ)」を冒頭で 登場させているが、地の文で「カブトムシ」と記し ていた。他の児童が「ここは、カブトムシじゃなく て、ぼくやで。」と助言した。児童

B

は最初、「え?」

という表情をしていたが、もう一度「だから、ここ とこことここのかぶとは、「ぼくはって最初に」と 他の児童が指摘すると、児童

C

は「あぁ」と気づき

「カブトムシ」または「カブト」と書いてあった箇 所を「ぼく」に変更した。

B

はその時に、ぼく=カ ブトムシであるに気づくことができた。また、指摘 した児童は作品を「読む」という学習へもつながっ たことも明らかになった。演劇的アプローチにより、

読みと書きの連動が明らかになったといえる。

4. 3. 8.  第8時の授業

創作(物語)作品を声に出して読むところからは じめた。一人で何度も読んでみてから、ペアで読み あった。声に出して演じながら読む際に、物語の登 場人物に同化して読み、読み終わった後に異化しな がら読むように促した。その後タイトルの重要性を 様々な作品を例示することで説明した。そして、児 童が作品をもう一度読んで、創作(物語)のタイト ルを考えた。

A

は振り返りカードで、「主人公の気持ちになっ て声に出して読めた。」と書き、主人公の気持ちに なって読めただけではなく、主人公はこんな気持ち だろうな、こんな声だろうなと演じながら読めたこ とがわかる。

A

の原稿用紙の記述を考察すると、「うずくまっ て」と動作を伴う表現が書き加えられた。これは所 作をともなったり、演じて読んだりしなければ中々 出てこない言葉である。「泣いている。」と「うずく まって泣いている。」は、「桜」の視点に立って、物 語の作者になっての両方からの視点でみて、少女が どのような状態であるかを描写している記述で、映 像として読み手に伝わる記述になっている。(図8)

視点を狭めたり、広めたりしながら創作(物語)を つくりあげていることがわかる。また、「ぼくはもう すぐ桜ではなくなるんだよ。」から「なくなっちゃ うんだよ。」という推敲は、演劇的アプローチによっ てただ読むだけではなく、声にだして演じながら読 むことによって出てきた表現である。この語感は桜 になりきって演じて読んだことにより、桜の視点に 立って声に出し、作者として客観的にその声が想像 と合わなかったからこそ、この推敲がされたと考え る。桜をうらぎりやむことはない。」と情景描写が加 わるなど、創作(物語)の世界が読み手に伝わるよう に変容した。創作(物語)における演劇的アプロー チによって、想像でき、演じること、そして、声・

(9)

動きにより、創作(物語)が豊かになり、創作(物 語)として完成されたことがわかる。

図8 児童

A

の作品その1

図9 児童

A

の作品その2

B

はコメントカードで、「カブトムシの演じ方がむ ずかしかった。」と演じることの難しさに気付き、何 度も演じることで、「演じていたらどんどん分かっ た。」になったことがコメントから明らかになった。

次に、

B

の原稿用紙の記述を考察すると、会話文

「ここはおれのじんちだ。」と「仲よくしようよ。」に ついて考察する。この会話文が書き加えられたこと で、「ヘラクレス」が「ぼく(カブトムシ)」と「ク ワガタ」よりも強いということがわかり、これより 前に書かれている「(ぼくが)ふるえながら」の意味 が読み手に伝わる。そして、「ずっと話し合いがつ づいた。」の内容がわかることで、読み手に伝わる効 果がある。また、声に出して読んでみるとよくわか るが、「ここはおれのじんちだ。」と「仲よくしよう よ。」が入ることで、創作(物語)の内容だけではな く、リズムもよくなる。児童

B

の推敲では、想像が 促され創作(物語)の世界がより読み手にわかる作 品に変容したことから、創作(物語)に有効に働い たと考える。振り返りカードから「何度も」とある ように、演劇的アプローチが有効に働いたと考える。

そして、同化と異化を繰り返し、共体験することで 視点が反映された作品に変容したことがわかる。

4. 3. 9.  第9時の授業

完成した児童は「表紙作り」を行い、未完成の児 童は、次回提出という指示をし、授業を終えた。表紙 を描くことで児童は創作(物語)の世界を自分の世 界との整合性などを考え、全体をじっくり読み、想 像している姿があった。また、絵をみながら、書き ながら、それが自分の想像と一致しているのか、確 認しながら表紙をつくりあげる姿があった。

図 11 児童の表紙作品

4. 3. 10.  第10時の授業

授業の導入で表紙が出来上がっていた児童に対し て、一人ずつ表紙を見せながら紹介した。表紙だけ でも児童の表現が凝縮されていて、そこに児童の努 力が垣間見られた。クラス全体で作品を読み合いし、

感想をカードに書く活動を行った。振り返りカード には、普段全く授業で発言しない児童が「いろいろ 考えて書いたんだなぁと思いました。」と相手の創 作(物語)に対して、創作過程にまで想像してコメ ントしていた。これまで一度も活動などを通しても 話しているところを見たことがない者同士が作品を 読み合っている姿があった。そこに演劇的アプロー チによる創作(物語)学習の価値があると考えられ る。  

「視点」「場面」などのキーワードが感想カードに 図 10 児童

B

の作品

84

LSCQCP6].0+.7].55+.64]N_ncp]W_k_lm]AQ3,glbb62 0./4-.1-03/48./

Bఱଐઇ୘পઇ૙৩প৾੹౶ਏਸ਼ಀমધ

&73

(10)

書かれていることから、創作(物語)で養った視点 を創作(物語)を読むときにも生かしていることが 明らかになった。(図

12

図 12 児童の感想カード

5.  研究のまとめ

5. 1.  本研究の成果と課題

分析・考察の対象とて、創作(物語)における演 劇的アプローチにおける推敲過程をその典型として とりあげた。児童

A

、児童

B

を例に選び創作(物語)

に、視点が反映されているかを確認した。

A

の創作(物語)は三人称視点で書かれている。

「うずくまっている」は「桜」の視点、創作(物語)

の作者の両方からの視点でみて、少女がどのような 状態であるかを描写している。また、「ぼくはもう すぐ桜ではなくなるんだよ。」を「なくなっちゃうん だよ。」への変更は、語感を意識したもので、桜に なって演じて読んだことにより、桜の視点に立って 声に出し、作者として客観的にその声が想像と合わ なかったからこそ表現された言葉だと判断した。

桜と少女の両方の視点に立って創作(物語)を重 ね、客観的に演じて語感を記述にいかしていること、

作者である自分の視点と創作(物語)の視点の両方 から創作(物語)していることからも判断できる。

B

の創作(物語)は一人称視点で書かれている。会 話文「ここはおれのじんちだ。」と「仲よくしよう よ。」は、「ヘラクレス」が「ぼく(カブトムシ)」と

「クワガタ」よりも強いことがわかり、これより前に 書かれている「ふるえながら」の意味が読み手に伝 わる効果を生んだ。心情描写では、登場人物の視点 になりきって書かれていることから判断できる。一 人称視点ゆえの語り手の見た世界を描くことができ ている。

以上の考察から、創作(物語)に視点が反映さ れていることが明らかになった。したがって、仮説

『創作(物語)における演劇的アプローチにより創作

(物語)活動を行えば、児童は視点が反映された創作

(物語)を書くことができるだろう。』は本授業実践 において有効であると認められる。

授業実践の結果、次のようなことが成果として得 られた。

①創作(物語)において演劇的アプローチで授業 実践を行い、児童の作品に視点を反映させることが できた。同化・異化を繰り返しながら共体験するこ とで、児童の創作(物語)に登場人物からの視点、作 者からの客観的な視点の両方が反映され、創作(物 語)が読み手により伝わるものになった。

②創作(物語)における演劇的アプローチは、経 験となって、その後の活動を豊かにすることができ た。創作過程を通して、創作(物語)における演劇 的アプローチで児童が得た視点はその後の創作(物 語)でも反映されていることが児童の作品から明ら かになった。

③創作(物語)における演劇的アプローチは、読 みにもつなげることができた。児童が観点を持って 読み、その後作者である他の児童にアドバイスする 姿が多く見られた。

課題は、「はずかしさ」と「むずかしさ」をどう克 服するのかである。演じる活動を行った際、児童が

「はずかしい」「むずかしい」と振り返りカードに書 いた。ただ、「むずかしい」と感じたが、演じてみる と演じられ、そこから作品の変容につながった児童 がいた。「はずかしい」と「むずかしい」を乗り越 えることで、創作(物語)がより豊かになることが 明らかになった。今後、「はずかしい」と「むずかし い」を克服できるような演劇的アプローチが必要だ と考えている。

5. 2.  おわりに

創作(物語)における演劇的アプローチは、想像 通りに体が動かない、言葉が出てこないなどの体験 をする、また、演劇的アプローチを通して、想像を心 と身体を通して一致させていくことを意味する。そ れは、自制につながる。また、五感・身体をつかっ て創作(物語)活動をすることは、五感・身体を通 して自己を解放することにつながる。

創作(物語)における演劇的アプローチにより、児 童は五感・身体を通して想像し、創作(物語)活動 を行う。活動を通して出来上がった児童の作品には、

虚構を借りた児童そのものが描かれていた。五感か ら語感へと演劇的アプローチを通して、児童の心の 声を創作(物語)に反映することができた。

演じることは、創作への洞察力を養う。五感から 語感へ洗練されていく。音とリズムだけだった記号 が温度・質感を伴った言葉へと変わる。様々な要素 が深化し、本物の創作に近づいていく。これらをさ らに深め、今後も演劇的アプローチの方法を吟味し、

さらなる継続研究を進めたい。

6.  謝辞

本研究にあたり、奈良教育大学教職大学院の松川

(11)

利広先生をはじめ先生方には丁寧なご指導をしてい ただいたことに心より感謝申し上げます。また、実 践研究をさせていただきました実践協力校の校長先 生をはじめ教職員の皆さま、児童のみなさんのお陰 と感謝しております。

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参照

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