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子どもの再生におよぼす再生手がかりの具体性の効 果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

子どもの再生におよぼす再生手がかりの具体性の効

著者 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 28

号 1

ページ 225‑232

発行年 1979‑11‑15

その他のタイトル The Effects of Concreteness of Retrieval Cue on Recall in Children

URL http://hdl.handle.net/10105/2480

(2)

奈良教育大学紀要 第28巻 第1号(人文・社会)昭和54年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.28, No.1 (cult. &soc.), 1979

子どもの再生におよぼす再生手がかりの具体性の効果

藤  田     正 (心理学教室) (昭和54年5月1日受押)

幾つかのカテゴリーに属する項目から成るリストの再生は、記銘時あるいは再生時にカテゴリ ーを手がかりとして利用することにより促進されることが考えられている。ところが、年少児の 場合、記銘時に項目をカテゴリーごとにまとめて記銘できない(Cole, Frankel, &Sharp, 1971;

菊野, 1975)とか、再生時にカテゴリー名を再生手がかりとして用いることができない(Eysen‑

ck & Baron, 1974; Kobasigawa, 1974)といわれている Kobasigawa (1977)は、従来の発達 的な研究を詳細に分析し、年少児の場合、特に再生過程に問題のあることを示唆している。

これに関連して、再生時に強制的にカテゴリー名を用いて再生させる制限再生という方法がと られ、それによって再生が促進されることが兄い出されてきた(菊野, 1977; Kobasigawa, 1974;

Scribner & Cole, 1972)。しかしながら、この種の研究では子どもの概念発達の水準が十分には 考慮されていないように思われる Klausmeier (1976)によれば、子どもの概念発達には項目を カテゴリーごとに分類でき、しかもカテゴリ‑名を言える段階(形式的水準の概念)と、それに 至る前の、カテゴリ‑ごとに分類はできるが、カテゴリ‑名を言えない段階(分類的水準の概 念)が存在する。また、 Saltz, Soller, & Sigel (1972)や園原・芋地井(1957)は、自由分類に おける理由づけを分析して、項目をカテゴリー釦こよって抽象できる前に機能的、具体的内容の 叙述などによる理由づけがなされていることを明らかにしている。

このような概念発達を考慮した場合、再生手がかりとして与えられるカテゴリー名が、低年齢 の被験者にとって最適な手がかりとして効果をもつかどうか問題が残る。この点について、 Nei‑

mark (1974)は、小学2年生や成人ではHfood, clothing"のようなカテゴリー名を与えて分類 させた場合と、それを̀̀things to eat, things to wear"のような形で与えて分類をさせた場合 とでは差がないことを兄い出している。しかし、上述の概念発達の姿からみて、年少幼児ではカ テゴリー名そのものよりも、むしろカテゴリーを貝体的な形で叙述した手がかりの方が、より効 果的ではないかと考えられる。現在のところ、筆者の知る限りでは、再生手がかりの具体性を変 化させて再生におよぽす効果を発達的な観点から組織的に検討した研究はない。

そこで、本研究では保育園児、幼稚園児、小学2年生を用いて、カテゴリー名手がかりとカテ ゴリーを具体的に叙述した手がかりが、再生におよぽす効果を発達的に比較検討することを目的 とした。本研究では、概念発達が十分でない年少児ほど具体的手がかりがカテゴリー名手がかり よりも効果的であり、年長になるにつれて具体的手がかりとカテゴリー名手がかりの効果の差は なくなることが予想される。

方   法

実験計画 実験計画は3×3の要因計画であった′‑,第1の要因は再生条件で、貝体的手がか

225

(3)

226

藤 Hl jl:.

り条件、カテゴリー名手がかり条件、 l'仙再生条件であ‑'た 第2の要関は年齢で、 4歳リ上 5 歳児、 8歳児であった,‑、

被験者  被験者は保育園児42名、幼稚園児42名、および小学2年生42名の合計126名で、そ れぞれの平均年齢は保育園児4歳2か月(範囲3歳8か月から4歳7か月)、幼稚間児5歳7か月 (範囲5歳2か月から6歳4か月)、小学2年生8歳0か月(範囲7歳6か月から8歳5か月) であった。各年齢の被験者は再生条件ごとに14名ずつ等しく割りあてられた。

材 料  記銘材料として杉村・市川(1975)の幼児の概念カテゴリー規準表から選んだ16項 目が用いられた。これらは、 4つ足動物、野菜、楽器、乗物の各カテゴリーから4項目ずつ選ん だものである(Table 1),項目は40mmX35mmの大きさの白色厚紙に1枚に1項目ずつ黒の サインペンで描かれた線画カードであった。リストの項目は動物、野菜、楽器、乗物の順にカテ ゴリーごとにブロック配列されているo また、これらのリストとは別に練習課題用リストを用意 した。それらは"ニワトリ、カサ、キンギョ、イス、ヒマワリ、ケーキ、トンボ、バナチ"の8 項目から成る無関連語リストであった,‑、項目は木課題用のものと同様な条件で作成された線画カ ードであったo

Table 1 Items used in this experiment

AN IMALS VEGETABLES INSTRUMENTS VEHICLES

elephan t cabbage piano truck lion carrot tambounn streetcar gi raffe onion organ

tiger radish drum bus

手続き  実験は個別に実施された.。被験者が所定の位置につくと、名前、クラス名などが尋 ねられたあと、 "いまから何枚かの絵を見せます。あとでどんな絵があったか尋ねますので、よ く覚えて下さい。"という教示でもって練習課題が行なわれた,J実験者は約3秒に1項目の速さ で、項目名を読みあげながら提示していった,すべての項目を提示し終えたあと、項目は隠され

1分間の自由再生が行なわれたo これに続いて本課題が行なわれたoすべての条件において項目 は、実験者が1枚ずつ項目名を読みあげながら、 3秒に1項目の速さでカテゴリ‑ごとに1枚ず つ提示され、 409mm X270mmの大きさの白色厚紙で作られた4列4行のマトリックス用紙上に カテゴリーごとにブロック配列されたっ なお、項目は動物、野菜、楽器、乗物のカテゴリーの脹 序で呈示された。すべての項目が呈示された直後、項目が隠され再生が行なわれた。再生の仕方

はそれぞれの再生条件で次のように異なっていた,/.

貝体的手がかり条件‑動物カテゴリ‑について、 "いま見た絵のrIJで動物園にいるものには どんなものがありましたかcH という教示が与えられ、再生が求められたO アンダーラインの部 分が野菜については=畑でとれるもの"、楽器については"音楽や歌をうたう時に使うもの日、乗 物については"人や荷物を乗せて運ぶもの"と言い換えられ、つぎつぎと4つのカテゴリーにつ

いて再生が求められた。提示されるカテゴリーの順序は被験者ごとにランダムに変えられた。

カテゴリー名手がかり条件‑=いま見た絵の中で動物(以下、野菜、楽器、乗物)にはどん なものがありましたか。''のような教示か与えられ、再生が求められたo このような手続きによ

り、つぎつぎと4つのカテゴリーについてw¥二が求められた′つなお、手がかりを与える順序は被 験者ごとにランダムに変えられた。

(4)

子どもの再生におよぽす再生手がかりの具体性の効果

227

自由再生条件‑再生のための手がかりは何も与えられず、 "いま見た絵の中にどんなものが ありましたか。どんな順序でもいいから思いつくままに言いまさい。"といった標準的な自由再 生の教示が与えられた。

口頭によって再生させ、全体につき2分間の再生時間が与えられた。具体的手がかり条件とカ テゴ))‑名手がかり条件では1つのカテゴリーあたりの再生時間は30秒であり、全体に要した再 生時間は同じく2分間になるようにした。

結   果

練習課題での再生数の平均値について3 (再生条件) ×3 (年齢)の分散分析を行なったとこ ろ、年齢の主効果のみが有意で、その他の主効果、交互作用はいずれも有意でなかったo したが って、それぞれの年齢での再生条件はすべて等質であるといえる。

全体再生数  Fig. 1は、本課題における再生条件ごとの正再生数の平均を年齢別に図示した ものである。平均値に基づいて3 (再生条件) ×3 (年齢)の分散分析を行なった。その結果、

再生条件(F‑15.79,rf/‑2と117, P<.01)、年齢(F‑44.05, df‑2と117, P<.01)の主効果が それぞれ有意になった。また、再生条件×年齢(F‑5.21, rf/‑4と117, P<.01)の交互作用も 有意になった。

再jt条件について主効果の検定を行なったところ、具体的手がかり条件とカテゴリ‑名手がか り条件が自由再生条件よりもそれぞれ有意に再/生がよかった(/‑3.21. df‑117, P<.01 ; t‑

1.89, df‑117,.10>P>.05)。しかし、具体的手がかり条件とカテゴリー名手がかり条件の間 には有意差はみられなかった。年齢の主効果については、 5歳児が4歳児よりも再生がよかった (i‑3.19, df‑一二117, P<01).また、 8歳児は5歳児よりも再生がよかった(」‑2.18. rf/‑117,

P<05),

吻勿‑‑‥ Concrete cue

!̲ 1 Category cue r:;v:.‑:;v^.i Free recall

5

p a i T B o a a   s u i a 一 T   U B 9 W

4‑yr.‑oIds       5‑yr. ‑oIds       8‑yr. ‑olds

Fig. 1 Mean number of items correctly recalled

(5)

228 !S m

交互作J‑Tはi有意になったので、それぞれの年齢ごとに分散分析を行ない、再生条件問の単純効果 の検定を行なった。その結果、 4歳児では再/上条件間に有意な差はみられなかった(F<1, M.S.),。

5歳児では、再生条件問(F‑34.81, df‑2と39,P<.01)に有意差がみられたoすなわち、具体 的手がかりとカテゴリー名手がかり条件がそれぞれ自由再生条件(f‑8.29, df‑39, P<.001 ;

*‑4.26, df‑39, P<.001)よりも有意に再生がよかったo さらに、具体的手がかり条件はカテ ゴリー名手がかり条件(*‑4.03. df‑39, Pく001)よりも有意に再生量が大きかった。 8歳児 でも、再生条件問(F‑7.04, df‑2と39, P<.01)に有意差がみられた。すなわち、具体的手が かり条件(f‑3.30, d/‑39. P<.01)とカテゴリ‑名手がかり条件(t‑3.21, df‑39, P<.01) は自由再生条件よりも有意に再生量が多かった。しかし、具体的手がかりとカテゴリー名手がか り条件の間には有意差はみられなかった。

カテゴリーことの再生数  再生手がかりの効果が主としてどのカテゴリーで生じたものかを 検討するために、カテゴリーごとに再生条件問の比較を行なった Table 2に示したように、 4 歳児では、当然のことながらどのカテゴリーにおいても再生条件問の差は見られなかった0 5歳 児では、野菜のカテゴリ‑で具体的手がかり条件(*‑4.97, d/‑26, P<.001)とカテゴリ‑名手 がかり条件 a‑2.38, d/‑26, P<.05)がそれぞれ自由再生条件よりも再生数が多かった。また、

乗物のカテゴリーでも具体的手かかり条件(i‑4.97, df‑26, P<.05)とカテゴリ‑名手がかり 条件(ォ‑4.97, df‑26. P<.05)がそれぞれ自由再生条件よりも再生数が多かったoまた、楽器 のカテゴリーでは具体的手がかり条件が自由再生条件(f‑5.17, #‑26, P<.001)と、カテゴ リー名手がかり条件(/‑4.29, #‑26, P<.001)よりもそれぞれ有意に再生数が多かった。 8 歳児では、野菜のカテゴリ‑で具体的手かかり条件(f‑2.10. df‑26, P<.05)とカテゴリー名 手がかり条件(f‑2.60, rf/‑26, P<.05)がそれぞれ自由再生条件よりも再生数が多かった。ま た、楽器のカテゴリ‑でも具体的手がかり条件(f‑2.69, rf/‑26, P<.05)とカテゴリ‑名手が かり条件(f‑2.51, d/‑26. P<.05)が自由再生条件よりもそれぞれ再生数が多かった。

Table 2 Mean items recalled in each category AN IMALS VEGETABLES

Concrete cue     2. 43      1. 00 4‑yr.‑olds Category cue     2. 14      0. 50 Free recall      2. 29       0. 64 Concrete cue

5‑yr. olds Category cue Free recall Concrete cue 8‑yr. olds Category cue Free recall

C O   o   N n   n   n   C O   o i   C O

2. 50 1.96 0.86

2.96 2.71 1.64

MUSIC

INSTRUMENTS VEHICLES

0. 79       1. 43 0.50       1. 71 0.71       1.89

2. 40        2. 30 0.90        2.30 0.90        0.90

2.50        2. 14 2.57        2.64 1.29       1. 93

カテゴリー再生数  カテゴリー再生数は少なくとも1項目以上再生されたカテゴリーの数で もって算.刺された。したがって、再生された項目が全部のカテゴリーにわたる場合の倍は4であ る Table 3は、年齢ごとの再生条件別のカテゴリー再生.数の平均値を示したものである。 3(再 生条件) × 3 (年齢)の分散分析を行なった結果、再生条件(F‑16.89, df‑2と117.P<.01)、

(6)

子どもの再生におよはす再生手がかりの具体性の効果

229

年齢(F‑8.40, df‑2と117, P<.01)の主効果、および再生条件×年齢(F‑4.74 d/‑4と117, P<.01)の交互作用がそれぞれ有意になったO

再生条件の主効果に関しては、具体的手がかり条件とカテゴリー名条件がそれぞれ自由再生条 件(/‑4.65, df‑117, P<.001 ; f‑3.35, df‑117, P<.01)よりも有意にカテゴリ‑再生数が 大きかったO しかし、具体的手かかり条件とカテゴリー名手かかり条件の問には有意差はみられ なかった。年齢の主効果に関しては、 5歳児と8歳児がそれぞれ4歳児(i‑2.10, df‑117,P<

.05 ; *‑3.30, df‑117,P<.01)よりも有意にカテゴリー再生数が大きかった。しかし、 5歳 児と8歳児の間には有意な差はみられなかったっ

再生条件×年齢の交互作用が有意になったので、年齢ごとに再生条件問の検定を行なった。 4 歳児では、いずれの再生条件間にも有意差はみられなかった,。 5歳児では、具体的手かかり条件 とカテゴリ‑名手がかり条件がそれぞれ自由再生条件(*‑6.45, df‑117, P<.001 ; f‑3.25, df

‑117, P<.01)よりも、また具体的手がかり条件はカテゴリー名手がかり条件(f‑3.20, df‑

117, P<.01)よりも有意にカテゴリ一再4:.数が大きかった0 8歳児では、具体的手かかり条件と カテゴリー名手かかり条件がそれぞれ自由再生条件(i‑ニ5.00, df‑117, Pく.001 ; *‑4.30, df

‑117, P<.001)よりも有意にカテゴリー再生数が大きかった。しかし、具体的手がかり条件と カテゴリー名手がかり条件の間には有意差はみられなかった。以上の結果は、全体再生数の結果 と対応するものであった。

Table 3 Mean numbers of category recalled

4‑yr.‑olds  5‑yr. ‑olds  8‑yr.‑olds Mean

Concrete cue    2. 50      3. 93      3. 93      3. 45 Category cue   2. 57    3. 29    3. 79    3. 22 Free recall     2. 79      2. 64      2. 93      2. 79

Mean      2. 62      3. 29      3. 55

考   察

木研究では、 =概念発達の十分でない年少児ほど再生時の具体的手がかりがカテゴI) 〜名手か かりよりも効果的であり、年長になるにつれて具体的手がかりとカテゴリー名手かかりとの効果 の差がなくなる。"という仮説を検討した。その結果、次のことが明らかになった。

4歳児では、 3つの再生条件問に差はみられなかった。これは、再生手がかりとして具体的手 がかりを提示した場合でも、カテゴリー名手がかりを提示した場合でも、それを効果的に利用し て1年tf.できない年齢段階にあることを示している。しかしながら、この結果は4歳児の知識の中 に概念カテゴリー的な枠組が存在しないことを意味するのではない。たとえば、 Rossi & Witt‑

rock (1971)は、 MA 4歳で概念関係にある単語対(例、 peach‑apple)の再生が統語的関 係にある単語対(例、 dogs‑bark)や押韻的関係にある単語対(例、 sun‑fun)の再生よ りもすぐれていることを兄いH.Iしている.。 なお、森・宮崎・加来(1976)やWilliams & Go‑

ulet (1975)は4歳児についてカテゴリー名を手がかりとして与えた場合にも促進効果を兄い出 しているが、結果の不一一一一致に聞しては実験条件の違いもあり、厳密な比較はできない.1

(7)

230 藤 山   止

次に5歳児では、具体的な手かかりもカテゴリー名もともに再生を促進したが、具体的手がか りが提示された場合の方が効果的であった。カテゴリー名手がかり提示による促進効果は、 5歳 児を用いた従来の結果と一致するものであった(Eysenck & Baron, 1974 ;菊野, 1977 ;森・

宮崎・加来, 1976), ところで、具体的手がかりの効果はカテゴリー別の再生数の分析で明ら かにされたように、「野菜」と「楽器」のカテゴリーでみられた。このことは、この年齢ではす べてのカテゴリ‑に対して一様にカテゴリー名を利用できる段階に達していないことを示してい る。それ故、これらのカテゴリーの項目に対しては、カテゴリー名よりも具体的手がかり条件で より拙著な促進効果がみられたといえる。このように、手かかり具体性の効果はカテゴリー名の 熟知度(Hunt, 1976)と関係しているように思われる。すなわち、 「動物」と「乗物」は「野菜」

と「楽器」に比べて幼児にとってなじみがあるので、カテゴリ一名を与えただけでも再生手がか りとして利用できるが、 「野菜」や「楽器」の場合には具体的な叙述にして与えないと再生手が かりとして利用できないということである。

最後に、 8歳児ではカテゴリ‑名手がかりの場合と具体的手がかりの場合には差はみられなか った。ところで、 Neimark (1974)は8歳児と大学生を用いて、項目を分類させる際に Hfood : clothing"のようなカ'テゴリー名を与える場合と、それを‑things to eat : things to wear"の ような形で与える場合の2種類の教示により分類を行なわせ、その効果を比較している。結果は

8歳児でも大学生の場合と同様に教示による違いはみられなかった。したがって、本研究でも再 /11手がかりに差がみられなかったことは、この年齢ではすでに概念発達がより進んだ段階にある ので、カテゴリー名手がかりでも具体的手がかりでも同じように機能したのであろう。

以上の結果から、カテゴリー化されたリストの再生では、具体的手かかりも、カテゴリー名手 がかりもともに効果的に利用できない年齢、具体的手がかりの方がカテゴリー名手がかりよりも 有効に利用できる年齢、そして両方の手かかりを同じように利用できる年齢へと手がかり利用に おける発達的な変化が明確に示された。

要   約

本研究の目的は、保育園児、幼稚園児、小学2年生を用いて、カテゴリー名手がかりとカテゴ リーを具体的に叙述した手がかりが再生におよぼす効果を発達的に比較検討することであった。

木研究では、概念発達が十/jlでない年少児ほど具体的手がかりがカテゴリー名手がかりよりも効 果的であり、年長になるにつれて具体的手がかりとカテゴリー名手がかりの効果の差はなくなる ことが予想される。

3×3の要因計画が用いられた。第1の要因は再生条件で、具体的手かかり条件、カテゴリー 名手がかり条件、自由再生条件であった。第2の要因は年齢で、 4歳児、 5歳児、 8歳児であっ た。被験者は平均年齢4歳2か月の保育園児42名、平均年齢5歳7か月の幼稚園児42名、平均年 齢8歳0か月の小学2年生42名の合計126名であった。各年齢の被験者は3つの再生条件のうち の1つに割りあてられた。記銘リストはTablelに示されるように、 ‖動物、野菜、楽器乗物"

の4つの概念カテゴリーに属す16項目の線画カードであった。実験は個別に行なわれた。項目は 1つずつカテゴリーごとにブロック呈示されたOすべての項F]が提示されたあと再生が行なわれ たO具体的手がかり条件では、被験者は"いま見た絵の中で動物間にいるものにはどんなものが ありましたか。"のような教示か与えられILl招:jJミ求められた。カテゴリー名手かかり条件では被

(8)

子どもの再生におよばす再生手がかりの具体性の効果

231

験者は"いま見た絵の中で動物にはどんなものがありましたか。"のような教示が与えられ再生 が求められた。自由再生条件では、被験者は標準的なiifa一再/11の教示が与えられ再生が求められ た。

主な結果は、 Fig.1に示されるように、 a 4歳児では、  酔上手かかりによる効果はみられなか った、〕 (b)5歳児では、具体的な手かかりもカテゴリー手かかりもともに再生を促進したが、具体 的手かかりが提示された場合の方が効果的であった。 (c)8歳児では、具体的手がかりもカテゴリ ー名手がかりもともに再生を促進したが、両手がかり条件の問には差はみられなかった。

結果は我々の仮説をほぼ支持するものであり、再生手がかりの効果は子どもの概念発達の水準 に依存すると解釈された。これらの結果は、以前の研究と関連させて議論された。

引 用 文 献

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ental Psychology, 10, 665‑666.

Hunt, K. 1976 Category‑name meaningfulness (ml) and category‑name mediation in free recall. Psycho‑

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Williams, K.G., & Goulet, L. R. 1975 The effects of cueing and constraint instructions on children's free recall performance. Journal of Experimental Child psychology, 19, 464‑475.

〔付 記〕本論文をまとめるにあたりご指導下さいました杉村健教授、データーの蒐集と分析に際しこ協力下 さいました生駒郡平群東小学校村岡英二氏に厚く感謝致します。また、実験を行なうにあたりご協力下さ いました保育園、幼稚園、小学校の諸先生方、園児、児童の皆様に厚く徹礼申し上げます。

(9)

232

The Effects of Concreteness of Retrieval Cue on Recall in Chi一dren

′radashi Fujita

Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan (Received May 1, 1979)

The purpose of this experiment was to investigate the effects of concreteness of retnevr1 cue upon recall in children as a function of age. The hypothesis was that the facilitative effects of concreteness of retrieval cue upon recall were greater in younger children than in older children.

A 3 × 3 factorial design was used, which incorporated the retrieval cue conditions (concrete cue, category‑name cue, and free recユ11 without cue) and age levels (4 yr., 5

yr., and 8 yr. of age). The subjects were 42 nursery school children with a mean age of

4 : 2, 42 kindergarten children with a mean age of 5 : 7, and 42 2nd grade children with a mean age of 8 : 0‑ Children in each age level were assigned to either one of the three retrieval cue conditions. The list was composed of 16 items of 4 conceptual catego‑

ries (animal, vegetable, music instrument, and vehicle) as is shown in the Table 1. Tnese items were familiar to young children and each of them was presented as black and wllite line drawing.

The experiment was conducted individually. The item was presented one at a time in block order of categories. During recall, the subjects assigned to the category‑name cue condition were given four category names (e. g., animal) one after another as a cue for retrieval, those assigned to the concrete cue condition were given concrete descriptions of category‑related contents (e. g., somethings which are in the zoo) as the cue for re‑

trieval, and those assigned to the free recall condition were not any retrieval cues.

Main results were as follows (see Fig. 1). (a) In 4‑yr.‑olds, recall was not facilitated

by concrete or category‑name cues, (b) In 5‑yr.‑olds, recall was facilitated by the two retrieval cues but such facilitating effect was greater under the concrete cue than under the category‑name cue condition, (c) In 8‑yr. ‑olds, recall was also facilitated by two retne‑

val cues and both conditions facilitated recall about the same rate.

These results supported our hypothesis and were interpreted to show that the effects of retrieval cue on recall depended upon levels of conceptual development in children.

′Fhese results were discussed with reference to previous related studies.

参照

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