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全文

(1)

川崎 医 療 短 期 大 学 紀 要 第4号 53 

参 議 院 議 員 選 挙 比 例 代 表 に つ い て

—昭和 58 年参院選における一考察ー―-

川 崎

医 療 短 期 大 学 一 般 教 蓑

平 田 翼

(昭和59年8

30日受理)

The E l e c t i o n   o f  t h e  House o f  C o u n c i l l o r s ,  1 9 8 3 .  

‑ The P r o p o r t i o n a l  R e p r e s e n t a t i o n   S y s t e n  i n  J a p a n ,   I l   ‑ S h i n i c h i   HIRATA 

D i v i s i o n  o f  G e n e r a l  E d u c a t i o n ,  K a w a s a k i  C o l l e g e   o f  A l l i e d  H e a l t h  P r o f e s s i o n s   K u r a s h i k i ,  

701‑01, 

J a p a n  

( R e c e i v e d  o n   A u g .  

30, 1984) 

Key words:  選挙制度

,比例代表制, 二院制

概 要

昭和

57

年の公職選挙法の改正は

,わが国の選挙制度の歴史のなかで,大きな改正である。選挙制度は代表

制を支えるものであり

制度の変換は代表制に対し大きな影臨となる。わが国の選挙制度は,戦後の改正以 来,定数改正以外大きな改正は行われてはいないが,この

ことは

現行制度に対して異議がないというこ

で はあるまい。改正論における議論を十分に百うために,今回の改正案を提起として議論することは今後の役 に立つものである

本論文は

改正後の選挙後における諸問題を提示することによって,問頼解決の糸口をさぐるものである。

§ 

はじめに

(I) 

本論文は

,前回の拙稿「

参議院議員選挙全国区改正案について」 の続篇であり,前論文の なかで指摘した,いくつかの論点について実際の選挙における展開を考察するものである。

前 論 文 は 昭 和5

7

9

月に公職選挙法の改正直後に

,当時と しての予測を加えて書いたもので

あるが

,翌 年6

月に実際選挙が行われ,その結果をさらに分析することによって,当時の予測

に対する問題点を明らかにすることができれば,よりいっそう研究を進めることができると考 ぇ,今回の論文を作成することとなった。も

っとも

,選 挙 後すぐに作成できなかったことは作

(2)

成者の怠慢である。

今回の論文において前論文から引き継い

だ問題をまずまとめてみることとする

。参議院選挙 における議論は

,衆議院選挙とは異なり,ある程度の問題設定を行う必要があると考える。い

ささか論点からは離れるけれども

,次の二点が根本的な問題の出発点である。

(1

) 二院制とは

選挙において常に問題の中心となるものは代表制である。代表制を論ずる場合

,主として下

院の選挙を議論することが多く

今回のような上院となる議会を議論することは少ない。ここ で問題となることは,二院制のなかで,上院の目的は何であるかを把握し,理解した上で議論 しなければならないことである。

わが国の二院制制度は,憲法上両院の区別が明確なものではなく,任期や法案議決の優越等 を定めている

だけであ

る。にもかかわらず

,参議院を「

良識の府」と呼ぶ

ことは,衆議院を主

たる議会とし,ある一定のワクの内ではこれにまかせ,行きすぎとなる場合には,良識を持っ てこれを監視する立場を示すものである。

また歴史的に見ると

,参議院は旧憲法下の貴族院から始まるものもあるが,現在の憲法下での

制度はそれとは異なり

,選挙によって選出される

議会である。

(2) 

拘束名簿式比例代表制

今回の選挙で用いられた比例代表制は

,正式には

「単記拘束名簿式比例代表制」であり

,改

正案に対して,非拘束の名簿式も検討されたけれども,結局この方式が採用されることとなっ た 。

この制度の特徴は,政党の提出した名簿に拘束力があることから,選挙結果に対して政党が あらかじめ強い影孵力を持つことができる。

逆に言うと,非拘束の名簿の場合,主たる方式は,有権者が,候補者もしくは候補者と政党 に投票するため,名簿登載者の順位が,得票数によって明確につけられるのである。つまり,

政党に対する得票による議席配分に対

して,その配分数だけ,上位の得票者を順に割り当てる

ことができる。これによって投票者は代表者を選出したという意識が強まるため,選挙の効果

(2) 

を高めることができるとされている。

しかしながら,現行の制度では政党が順位を付けるために,投票者は単に政党名だけの投票 となった。

これに伴う諸問題も生じている。政党が名簿を作成して提出するために一見合理的に見える

けれども,政党内のさまざまな集団の利害関係が生じることともなった。その問題が自由

民主党内で起きたことは皮肉と言えよう。

(3)

参議院議員選挙比例代表について

55 

§ 

今回の選 挙

昭和

58

6

月に行われた参議院選挙は,公職選挙法の改革後初めて行われる注目される選挙

であったけれども,投票率で見る限り,結果は低調であった。この年は春に統一地方選挙,秋

には衆議院総選挙と

2

つの選挙に挟まれた

ためもあろうが,旧全国区を比例代表に改 表 1 参院選選挙区最終投票率

(自治省調べ)

正した大きな改革後にしては,今一歩の反 応であった。

選挙の分析にあたって,第ーに,国民の 比例代表制に対する反応,第二に第二院に 対する反応の

2

点にしぼって考えてみたい。

第一の問題は以前から議論されてきたも のであるが

,投票に際して,個人名と政党

名の記入に

差異

があるかどうか,また政党

名に対して, 「なじみ」があるかどうか,

等の問題が考えら

れている。

第二の問題に対

しては,明臼な答えは求

(3) 

めにくいものであるが,第二院の存在意義,

表制に対する考

え方,

等の

問題が考えら れている。

以上の問題を考察するために,いくつか の問題点を討議してみよう。

(1) 

選挙民の関心と投票率

今回の選挙に対する選挙民(voter)

の関 心は投票率を見る限りでは裔くはない(表

1参照

しかし,選挙 における政党(確認団体)

の増加,地方区における選挙戦等の立候補 者の側から見た選挙,およびマス・コミュ

ニケーション

等に

よる選挙報道では ,多く

の関心を得ていたようである。

今回の投票率の低さは,昭和

34

年の参院 選(全国区

58.74

彩,地方区

58.75彩)を

下回るもので,衆院選を含めて国政選挙で は最低記録となってしまった。

8の6 区国全

区方地

1 5 8 2 5 5 9 9 6 1 8 1 6 7 4 2 5 4 7 9 6 8 3 8 8 8 5 9 2 6 3 5 6 6 7 1 0 5 7 6 9 8 0 4 1 1 2 9 8 1 1   0 9 4 3 8 8 4 8 0 0 4 4 7 2 67 3 7 6 9 0 0 3 1 0 1 8 1 0 7 46 1 0 5 2 2 4 8 0 2 7 1 9 8 6 8 8 8 8

5 7

5 4

5 8

5 4

6 4

6 6

6 8

5 2

5 7

6 7

5 1

4 9

5 1

5 2

6 5

6 0

5 5

6 2

6 7

6 5

5 9

6 0

5 4

6 1

6 4

5 2

5 5

5 5

5 5

5 7

7 4

7 5

5 5

5 3

5 7

5 0

5 5

5 6

5 9

5 6

5 9

5 6

6 3

6 9

5 8

6 9

7 2

5 6

5 6

男 ク

2 9

8 8

0

邸 四 邸

6 9

7 1

3 1

6 6

6 0

1 9

3 5

1 2

2 4

5 2

6 4

0 8

1 6

0 1

1 1

7 7

1 4

3 0

2

0 4

0 1

7 9

3 7

0 6

5 3

0 5

7 5

2 7 8 2

1 3

"

7 8

0 0

0 0

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回%ー 言 冷 紅

5 3 5 7 5 3 6 3 6 5 6 8 5 0 5 5 6 7 5 0 4 9 5 1 5 3 6 3 5 8 5 4 6 1 6 8 6 3 5 8 6 1 5 4

63 52 56 55 55 58

7 4 7 5

5 5

58 49 55 57 61 56 59 56 64 70 59

7 45 7

紅l前

道 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 川 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 山 取 根 山 島 口 島

媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 島 縄

表 均 海 奈 歌 児 配

⑮ 北 青 岩 宮 秋 山 福 茨 栃 群 埼 千 東 神 新 富 石 福 山 長 岐 静 愛 三 滋 京 大 兵 奈 和 烏 島 岡 広 山 徳 香 愛 高 福 佐 長 熊 大 宮 鹿 沖 平 比 平

8 0 8 3 6 1 5 6 8 7 5 3 7 5 3 2 7 9 2 2 9 6 9 4 3 6 8 3 8 7 6 9 1 4 1 5 7 2 3 6 0 6 1 9 0 3 8 4   9 3 2 4 7 8 9 8 8 2 4 4 9 7 3 3 3 5 0 2 7 9 4 8 8 3 6 1 4 8 5 0 9 7 0 7 6 8 4 0 6 1 1 4 8 1 5   年 彩

2

7 6

7 3

7 5

7 5

8 0

8 2

8 0

7 2

7 3

8 0

7 0

6 9

6 7

6 9

8 3

8 2

7 8

8 5

8 4

8 0

8 0

7 9

7 2

7 9

7 6

6 7

6 7

7 1

7 4

7 4

8 4

8 7

7 8

7 5

7 7

7 7

7 8

7 7

7 2

7 5

8 5

7 8

8 0

8 6

8 1

7 7

7 9

7 4

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....

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.. . . .

. . .

. 

8 5 6 5 2 3 1 7 4 9 2 7 7 5 2 9 0 1 0 5 8 0 0 7 4 3 5 0 1 2 1 6 5 0 3 6 7 7 9 1 5 9 9 0 2 1 8 1   3 5 2 9 7 1 5 3 6 8 7 6 4 0 7 3 4 0 8 6 1 8 2 3 7 2 7 3 4 3 1 5 0 5 7 4 0 8 1 3 1 0 0 0 5 6 7 1  

5 6

5 3

5 7

5 2

6 2

6 4

6 8

4 9

5 3

6 7

4 9

4 8

5 2

5 4

6 0

5 6

5 3

6 0

6 8

6 2

5 8

6 1

5 4

6 0

6 2

5 1

5 8

5 6

5 4

5 8

7 5

7 5

5 5

5 3

5 8

4 9

5 6

5 8

6 3

5 7

6 0

5 6

6 4

7 1

5 9

7 1

7 6

女 彩

. .  

52年 彩 73.67  66.14  71.89  71.36  77.42  79.93  75.21  62.52  70.16  73.83  63.53  60.91  64.02  60.74  69.43  76.40  69.86  82.03  79.66  77.33  70.15  73.77  65.50  72.86  74.57  6 1. 7 6  62.56  65.56  65.25  68.87  83.37  85.16  67.84  69.89  71.48  63.41  75.68  69.50  70.90  67.47  77.23  72.55  78.36  78.95  73.02  75.64  76.02  68.49 

票率。

『山陽新聞」 1983年6月28日

(4)

投票率の低い原因として考えられることは,①比例代表制に対するもの,②地方区での無風 区の増加,③統一地方選挙後の影諧,などである。このなかで,比例代表制に対する何らかの 感情が原因のなかで大とするならば,選挙法の影蓉は大きいと言えよう。また,単なる制度へ のなじみが原因とするならば,原因は他にあると言えよう。

(2) 

小政党の乱立

今回の選挙の特徴の一つは,公職選挙法改正案の中で,一つ意味を持っていた,いわゆる泡 沫候補の排除であった。これは参議院選挙に限ったものではないが,旧全国区では選挙公営の 割合が増加することによって,全国区立候補は日本全国へ電波(マス・コミュニケ

ーション)

によって流れることとなり,多くの泡沫候補が立候補していた。その後,対策として供託金の 増額手段がとられたが,今回の改正ほどの効果はないものであった。

(4) 

ところが,実際選挙公示後の動きはこれに反するものであった。議会に代表者を送り込んで いる政治団体を政党と呼ぶならば,今回の比例代表選挙には

9

つの政党になろうとする政治団 体が名乗りを上げたのである。結果から言えば政党に成り得たのはこの内サラリーマン新党だ

けであるが,公示直後は,あまりの多さに鷲かされたものである

とりあえずこれらの政治団体をミニ政党と呼ぶとするが,この泡沫的ミニ政党が示唆するも のは,選挙法がいかに改正されようと,改正された法に対抗する手段はいくらでもあるという

ことである。

政治的な考え方からすれば,当選の可能性のないミニ政党は存在価値は少ないかもしれない が,選挙の効果を当選以外に向けるならば,かなりの価値を

含む

言え

よう

。ただ,今回のミ ニ政党の内には,立候補の意味がよくわからないものもあり,さらには,他の既存の政党とま

ぎらわしい名称を名のるものもあった

この 9ミニ政党のなかで以前の全国区時代から立候補を続けたものは,雑民党,世直党など とくわずかであった。

( 3 )   得票配分方法

拘束名簿式比例代表制において,必ず問題となるのは得票の配分方法である。くわしくは前 論文で述べてあるのでここでは今回の改正法案で論議された, ドント式と修正サン・ラグ式と

(5) 

を比較するのみとする。

両方式の違いは若干のものであるが,比例配分をするなかで,前者より後者の方が小政党に やや有利となっている。これはその名のとおり,公平に分配するよう,修正された方式である ためであり,

ドント式のようにただ整数で割るだけの方式ではないからである。

しかし,議会における議席配分において,両者の違いを考えてみると,小政党をも均等に分

配するのと,大政党を中心に分配し,弱小政党を排除するのととは議論の分かれる所である

。 実際今回の比例代表の選挙結果を二つの方式で計算してみるとわかるように,両者間の違い

(5)

参議院議員選挙比例代表について 57 

はとくわずかである

。ただ,第一党に

は若干の

差が出るけれども,全体として大きな差はない。

このことから比例代表制における問題点はこの旧全国区に用いたことに関しては,配分方式 には問題は生じていないと考えられる(表

2,

表2 昭和58年参議院議員選挙 比例代表 858,6,26 

(千票)

16,441  8,220  7,590  7,314  5,480  4,163  4,110  3,888  3,795  3,657  3,288  2,740  2,530  2,438  2,348  2,081  2,055  1,999  1,944  1,897  1,828  1,826  1,644  1,577  1,518  1,494  1,462  1,387  1,370  1,296  1,265  1,264  1,239  1,219  1,174  1,142  1,096  1,084  1,044  1,040  1,027  999  972  967  948  914  913  865  843  832 

 

党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党

︑ 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 連 党 党 ク 党 党 党 党 党 雇 党 党 党 党 党 党 党 党 民 民 会 明 民 産 民 社 会 明 民 民 会 明 民 産 民 了 社 会 明 民 民 祉 会 民 明 産 民 社 会 民 ク 明 民 院 民 会 明 産 民 一 社 民 会 明 民 民 会 産 自 自 社 公 自 共 自 民 社 公 自 自 社 公 自 共 自 サ 民 社 公 自 自 福 社 自 公 共 自 民 社 自 自 公 自 二 自 社 公 共 自 サ 民 自 社 公 自 自 社 共 12 34 56 78 91 01 11 21 31 41 51 61 71 81 92 02 12 22 32 42 52 62 72 82 93 03 13 23 33 43 53 63 73 83 94 04 14 24 34 44 54 64 74 84 95 0 

3参照)。

3

昭和58年参議院議員選挙 比 例 代 表 修 正 サ ン ・ラグ式

(千票)

11,743  5,480  5,421  5,224  3,288  2,974  2,777  2,530  2,438  2,348  1,826  1,518  1,494  1,462  1,428  1,387  1,296  1,264  1,126  1,096  1,084  1,044  967  885  865  843  832  815  812  782  777  714  690  666  664  657  608  594  583  566  562  555  530  525  506  498  487  469  462  446  12

34 56 78 91 01 11 21 31 41 51 61 71 81 92 02 12 22 32 42 52 62 72 82 93 03 13 23 33 43 53 63 73 83 94 04 14 24 34 44 54 64 74 84 95 0 

 

党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党

︑ 党 党 党 党 党 党 党 党 連 党 党 党 ク 党 党 党 党 党 噺 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 党 民 民 会 明 民 産 社 会 明 民 民 会 民 明

︱ 産 社 民 祉 民 会 明 民 ク 民 会 産 院 明 民 社 民 会 一 明 民 民 産 会 民 明 社 民 祉 会 民 明 民 産 会 自 自 社 公 自 共 民 社 公 自 自 社 自 公 サ 共 民 自 福 自 社 公 自 自 自 社 共

公 自 民 自 社 サ 公 自 自 共 社 自 公 民 自 福 社 自 公 自 共 社

(6)

(4) 

供託金と確認団体

今回の選挙において新たに問題となったのが,供託金の増額である。改正案では比例代表は 旧全国区の

200

万円から

400

万円へと

2

倍の増加でしかないが,比例代表候補となる名簿を提 出するための確認団体となる

要件が他に定められているために,比例代表の

ために多額の供託

(6)  金を

必要とする。

特にミニ政党と呼ばれる小政党にとっては,今回の選挙は大きなハードルであった。立候補 の制限は憲法上行われないはずであるが,いわゆる泡沫候補を切り捨てるため,供託金の増加 が行われてきた。今回は特にその成果として,小政党までが対象となった。ここで言う小政党 とは,新党を呼ぶだけではなく,既存の政党をも含むものである。例えば,共産党は,比例代 表候補として

25

名の名簿を提出しているが,当選者は

5

名でしかない。名簿の拘束力は次回選

挙ま

で有効であり,

5

位以下の候補が補欠と して繰り上がり

当選があると

しても,

全員に回る

ことはまずない。共産党が比例代表に用いた供託金は

(400

万円

X25 = )  1

億円であり,当選

(7) 

者数から返金される額は

4

千万円でしかない。今回は特別としても,小政党は名簿を提出する ことで大きな出費を負うこととなる。

(5) 

名簿作成

名簿を提出することは,各政党内部の問題として,選挙とは切り離されているが,実際には,

ほとんどの政党が名簿作成の問題をかかえている。今回の選挙でも,名簿発表が選挙公示直前 になった政党や,様々な理由から,必要以上の名簿登載者数となった政党もあった。また ミニ政党のなかには,

10

名の候補者にこだわり,法律の読み違いか, もしくは戦術としてか,

(8) 

比例代表

10

名の名簿を提出した所も少なくない。

§ 

今後

の動向

これまで述べて来たように,

今回の選挙はまだまだ多くの問題をかかえているけれども

,公 職選挙法がさらに改正されない限り,これらの問題は続くものと考えられる。しかし,ただ単 に問題が存在する訳ではなく,対応も進むと考えなければなら

ない。

今後の対応として次のことが考えられる。

(1) 

名簿作成の問題対策

(2) 

小政党対策

(3) 

選挙戦術

(1) 

名簿作成の問題

名簿作成に関しては,本来政党内部の問題であるけれども,今回選挙の関心の低さとして名 簿作成方法にも原因が考えられるため,まだまだ大きな問題として存在している。

例えば,自由民主党は前回の名簿作成時における諸問題が依然として解決しておらず,大枠

(7)

参議院議員選挙比例代表について

(9) 

が検討されているにすぎない。

59 

ほとんどの政党に共通の問題であるが,名簿作成には様々な難問題が存在している。逆に言 えば,わが国の政党と西欧の政党との差異がこの点に存在するものかもしれない。いずれにし

(10) 

ても,比例代表制を消化しなければならないのは,選挙人よりも政党であると言えよう。

( 2 )   小政党の問題

今回の改正案では政党の概念が狭義のものとなり,憲法上の自由に対する侵害も考えられる。

選挙の機能は本来

,多数(多数旅ではない)のものの代表を選出するものであって,絶対的な

少数派,即ち,絶対選挙で当選できない少数派は排除されるものである。しかし,選挙におけ る表現の自由

,即ち

集会・結社の自由を制限することは,別の意味でも

問題はあろう

。西独等 の政党法に見られる絶対的な少数派の排除には理由付けもあるけれども,必ずしも賛成できる

ものではない。

これまでの法律改正に見られる供託金の増額による小政党の排除は,被選挙権に対する制限 であり,多様化する選挙民の要求に対しては不本意なものであろう。この制度よりは,結果に 対する制限,即ち

,得票総数の3 5

%以上の獲得により政党と認める政党法の方が,規制の 弱いものと言えよう。

( 3 )   選挙戦術

選挙戦術の変化には二通りの考え方がある。第一は,多くの選挙区に候補者を立てることに よって,比例代表の得票を増加させようというものであり,全国的に組織を持つ政党が用いる であろう戦術である。この場合

,地方区の候補者は,当選する可能性が少なくとも,収票機能

を果たせばよいのである。

第二は,人口の集中する都市部にのみ候補者を立て,地方は完全に分離する方法である。全 国的な収票は行えないけれども,人口密集地で能率的な収票活動 を行うことができる。都市型 の政党,とりわけ規模の小さい政党の用いるであろう戦術である。

このように比例代表制は,現在のように,全国単位で行われ,各県それぞれの選挙区とセッ トで存在する限り,都市と地方という二面性を持つものと考えられる。

§ 

おわりに

これまで述べてきたように,参議院における比例代表制には,やや困難な点が多い。比例代

表が強くなればなるほど,議会内勢力が下院と同等になるからである。代表制とは矛盾

した

え方であるが,二院制を維持する上では,両院間の差をつける必要があると考える。いずれに

しても,比例代表制に対するテストケースとしては,わが国では初めてのものだけに,研究の

ためには有益である

(8)

(注)

(1)  拙稿「参議院議員選挙全国区改正案について」(『川崎医学会誌』一般教養篇,第8号, 1982.PP. 85‑

95.) 

(2)  E. Lakeman, "How Democracies Vote," 4th ed.  London, Faber & Faber, 1974, pp. 92‑ llO. 

(3)  拙稿,前掲書 p.88 

(4)  公職選挙法改正過程について,くわしくは次の本を参照されたい。

中野・竹下編著『日本の政策過程』,千葉,梓出版, 1984, PP. 200‑243.  (5)  拙稿,前掲書 P. 90. 

(6) 公 職 選 挙 法 第86条の2

比例代表候補として名簿を提出できる政党等は,

①  5名以上の国会議員の所属

②  直近の衆議院又は参議院選挙における4彩以上の得票

③  当該参議院議員選挙に10名以上の候補者のあること のいずれかを満たさなければならない。

(7) 公 職 選 挙 法 第94条1項1号

当該名簿届出政党等に係る当選人の数に二を乗じて得た数の供託金は返還される。

(8) 公 職 選 挙 法 第149条, 150条

名簿登載者の数により選挙公営が定められる。

(9)  『日本経済新聞』 1984年7月258

参議院自由民主党執行部会による昭和61年度比例代表候補名簿作成基準の決定によると,①現職優先,

②70オ定年,③100万人党員獲得等で,順位づけにはいたっていない。

(10)  政党内部の問題について,くわしくは,内田満『政党政治の論理』,東京,三嶺書房, 1983,PP. 35‑53  を参照されたい。

参照

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