• 検索結果がありません。

看護師におけるバーンアウト傾向と対人葛藤との関連

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "看護師におけるバーンアウト傾向と対人葛藤との関連"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

宮城大学看護学部紀要 第6巻 第1号 2003

看護師におけるバーンアウト傾向と対人葛藤との関連

       一ユニット間の比較を通して一

山崎登志子、伊藤幹佳、長谷川博亮

宮城大学看護学部

キーワード 看護師、バーンアウト傾向、対人葛藤、ユニット

要  旨

 ある病院の看護師515名を対象に、1.看護単位(以下ユニット)ごとのバーンアウト傾向を比較検討す る、2.ユニットによって対人葛藤とバーンアウト傾向との関連にどのような相違があるか検討を行う、と いう2点を目的とし質問紙調査を行った。その結果、内科病棟、外科病棟、周産母子センターでは外来に比 べ情緒的消耗感が有意に高く、内科病棟、ICU、精神科病棟では、外来に比べ個人的達成感が有意に減少し ていたことより、個人的達成感、情緒的消耗感においてユニットによる相違がみられることが考えられた。

さらに、内科病棟、外科病棟、ICU、外来、精神科病棟で対人葛藤と脱人格化、情緒的消耗感との間に有意 な相関関係がみられ、ユニットによって対人葛藤とバーンアウト傾向との関連に相違が生じる可能性が考え

られた。

The Relationship among Nurses

      Tendency and lnterpersonal

 By Comparison between Nursing

between Burnout

Conflict

Depal†ments

Toshiko Yamazaki, Mikika Ito, Hiroaki Hasegawa Miyagi University School of Nursing

Key Words:nurses, burnout, interpersonal con且ict, nursing departments

Abstract

The purpose of this research is:(1)to compare the tendencies toward burnout between nursing

departments, and(2)to determine how, within nursing departlnents, burnout tendency relates to interpersonal conflict. The results, based on sample of 515 nurses working in a single hospita1,

revealed that in the internal medicine ward, the surgery ward, and the mother−and・child center

emotional exhaustion was significant higher than in the visitor unit。 Additionally, in the internal

medicine ward, ICU, and the psychiatry ward, personal accomplishment was significantly lower than in the visitor unit. There五)re, a diffbrence in persollal accomplishment and emotional

exhaustion between the departments was delnonstrated. Furthermore, there was a significant

correlation between both depersonalization and emotional exhaustion and interpersonal con且ict in

the internal medicine ward, the surgery ward, ICU, the visitor unit, and the psychiatry ward. We

believe that these differences probably arise from the relation between interpersonal con且ict and

burnout tendency in each department.

(2)

1 はじめに

  日本では1980年代より看護師の精神的健康が注 目されはじめ、以後看護師はバーンアウトしやす い職業であるといわれている。バーンアウトとは 一 般的に「長期間にわたり人に援助する過程で、

心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果、

過度の心身の疲労と感情の枯渇を主とする症候群 であり、卑下、仕事嫌悪、思いやりの喪失である」

と定義されており )、ヒューマン・サービス従事 者にみられる慢性的なストレス状態を指す。

 病院に勤務する看護師のバーンアウトに関連す

る職場環境要因として、交替制勤務や多忙2)3)4)、

役割ストレス )6)7)、対人関係8)9)1°)U)などが現在

あげられている。また、バーンアウト状態の者が 多い看護単位(nursing unit:以下ユニットと

する)として精神科病棟12)13)14)15)やICUI6)が指摘さ

れており、外来より病棟に勤務する看護師はバー ンアウトに至る率が高い1服)との指摘もある。さ らに、一般病棟では外科病棟に比べ内科病棟の方 がバーンアウト傾向は強いとされる17)。これらの 文献はユニットの特徴によって精神的健康の様相 が違ってくることを示唆するものと考えられる。

 では、このような相違が生じる原因として何が 考えられるであろうか。一般看護中心、介護中心 といった看護形態によって患者や医療スタッフと の軋蝶に相違が生じる18)という報告もあり、看護 形態によって対人関係をストレスと感じる程度が 変化してくる可能性が考えられる。また、ICUで

は救急事態の可能性や無意味な延命19)、専門知識・

技術・能力の不足2°)が、精神科病棟では看護介入

の困難さや患者の感情への巻き込まれといったス

トレス21勘がバーンアウトに関連するとされる。

これらのことから、ユニットの特徴によって対人 関係とバーンアウト傾向との関連に相違が生じる 可能性が考えられるが、この点に関しては明らか

になっていない。

 そこで、本研究では第1に対象となる病院のユ ニットごとのバーンアウト傾向を比較し、次にユ ニットによる対人葛藤とバーンアウト傾向との関 連にどのような相違があるか検討することを目的

とする。病院は様々な構成単位を持っているが、

独立した看護要員を持つ看護の機能を果たす構成

単位としてユニットが成立している23)。しかし、

治療の特殊性に基づいて診療のしやすさを考慮し た診療単位をそのまま引き継いでいることが多く、

必ずしも看護師の精神的健康を考えた構成単位に なっているわけではない。本研究はケアを提供す る側の精神的健康をユニット単位で考えていく基 礎的資料になり得ると考える。

 病院全体の結果についてはすでに山崎24)で検討 しており、今回はさらに立ち入ってユニット間の 比較に焦点をあて評価を行うこととする。

II 方  法 1.対象者

 病院のユニットが比較的細かく分類されている  A病院の看護師(准看護師を含む)全員648名に 質問紙を配布した。526名から回答が得られた中 で(回収率81.2%)、有効回答が得られた515名

 (有効回答率98.7%)を調査対象とした。

2.調査内容  1)対人葛藤

   田尾25)26)27)28)を参考に、患者やその家族、医師、

 上司、同僚、他の医療従事者との関係でいらだ  つことや不快な思いをしたことがどれだけある  かについて、「全くない」から「毎日のように  ある」の5段階評定とした。さらに、これら5  種の相手との葛藤得点を合計したものをユニッ

  ト内葛藤と総称した。

 2)バーンアウト

   日本語版MBI 9)を使用した。この尺度は情緒  的消耗感(emotional exhaustion:EE)5項   目、脱人格化(depersonalization:DP)6項  目、個人的達成感 (personal accomplishment   :PA)の減少6項目、の17項目から成り立つ。

 最近6ヶ月の間にどの程度経験したかを、「な  い」から「いつもある」の5段階評定で質問し、

  1点から5点までで下位尺度毎に合計する。な  お、この尺度は診断を目的としたものではない  ため、得点が高いほどバーンアウト傾向が強い  という表現をしていく。

  情緒的消耗感とは仕事によって心身ともに疲

 れ果てたという感情を、脱人格化とはサービス

 を受ける人たちに対する無情な人間性を欠くよ

(3)

宮城大学看護学部紀要 第6巻 第1号 2003

  うな感情や行動を、個人的達成感とはするべき   ことを成し遂げたという達成の充実感に浸る気  分を示している。

3 手続き

 看護部長に了解を得、各ユニット毎に質問紙を 配布、回収した。留め置き法で行い、質問紙には 無記名で回答するよう、また、回答者個人が密封 するよう依頼した。調査期間は平成9年6月23日 から6月30日までの1週間である。

  ユニットは内科病棟、外科病棟、外来、ICU、

周産母子センター、精神科、手術部の7つに分類  し、ユニット毎にデータの分析を行った。

  データの解析には統計解析パッケージSPSSを

使用した。

皿 結  果 1 対人葛藤の相違

  一元配置分散分析を用い葛藤の相手ごとに対人  葛藤の多さをユニット間で比較したところ、患者

 (F=17.9,d仁6/497, p<.001)同僚(F=2.3, df≒

 6/498,p<.05)、上司(F=4.0, df≒6/498, p<.Ol)、

 医師(F=6.0,df=6/497, p<.001)との葛藤で有

 意差がみられた(表1)。多重比較(tukeyHSD)

 では、患者との葛藤は内科病棟、外科病棟、精神  科病棟で外来、ICU、周産母子センター、手術  部に比べ有意に多く (図1)、外来、ICU、周産  母子センターは手術部に比べ患者との葛藤が有意

 に多かった(p<.05)。上司との葛藤は周産母子セ

 ンターが内科病棟、外来、精神科病棟に比べ有意  に多く、医師との葛藤は内科・外科病棟、手術部  が外来に比べ有意に多かった(p<.05)。同僚との  葛藤はユニットによる有意な差はみられなかった。

2 バーンアウト傾向の相違

  一元配置分散分析を用いバーンアウト得点にお  けるユニット間の比較を行った(図2)。その結

 果、情緒的消耗感(F=4.6,df=6/476, p<.001)、

 個人的達成感の減少得点(F=3.9,df=6/476,

 p<.01)において有意差が見られ、脱人格化にお  いては有意な差はみられなかった。多重比較  (tukeyHSD)では、内科病棟・外科病棟、周産  母子センターは外来に比べ有意に情緒的消耗感の  得点が高く、内科病棟、ICU、精神科病棟は外来

 に比べ有意に個人的達成感の得点が低かった

 (P<.05)。

3 対人葛藤とバーンアウト傾向との関連

 1)ユニット内葛藤とバーンアウト傾向との関連    ユニット内葛藤と脱人格化、情緒的消耗感、

 個人的達成感の減少それぞれの得点との間の関   連についてSpearmanの順位相関を求めたとこ   ろ、ユニット内葛藤と脱人格化、情緒的消耗感

  との間には全体として有意な相関がみられるが、

  対人葛藤と個人的達成感の減少との関連性はど   のユニットでもみられなかった。ユニット内葛   藤と脱人格化で有意な関連がみられたのは内科

  病棟(r=.39,p<.001)、外科病棟(r=.40, p<.

  001)、外来(r=.54,p<,001)、 ICU(r=.49, p   <.01)、精神科病棟(rニ.65,p<.01)であり、

表1 葛藤のユニット間の比較

       *** 患者との葛藤    内科    167

   外科    176    外来    52     1CU   33    周母    22    精神科   23     術。   31    △き     504

0︶87R∨5QV7

0000α00

Q∨94332︵D 2222231

9 0 7 2 同僚との葛藤

   内科    167    外科    176    外来    53    1CU   33    周母    22    精神科   23     術立    31    合計    505

09Q︶−R︶00

卍001011

780︶2762

2223223

0

8

1 2

上司との葛藤

   内科    167    外科    176    外来    53     iCU   33    周母    22    精神科   23     術0    31    △≡     505

QVQ∨800︼QV− 軌001001

807054Q∨ 2323322

0 9 1 2

**

医師との葛藤

   内科    166    外科    176    外来    53     1CU   33    周母    22    精神科   23     術立    3{

   △≡     504

QU︵U70∨818

αLぱ001α

13CO2176 3323323

9

2

0 3

***

他の医療者との葛藤    内科    165    外科    175    外来    53     1CU   32    周母    22    精神科   23     術8   31    合計    501

﹁︶4R︶︵∠34R︶ 2222222

4

2

Ω0775∧08︵U α000001

0 7

元配置分散分析 ***pく.001  **p< 01  *p〈,05

(4)

54丁321

 5

4.5

4

3.5

3

2.5 2

5 4.5

4

3.5

3

2.5

2

「一*一一一一T−一一「一一丁一一一一一一]

「*一一「一一「一一「一一]

   「一一一一一一一一一一一「一ボー「一ボー一|

内科   外科   外来   ICU   周母   精神科  手術部

      患者との葛藤     *P〈 05

内科 外科 外来  1CU 周母 精神科手術都      上司のと葛藤      *pぐ05

内科  外科  外来  ICU  周母 精神科 手術部        *P<.05

      医師との葛藤

図1 ユニット間の葛藤の多さの比較 ユニット内葛藤と情緒的消耗感との間に有意な 相関がみられたのは内科病棟(r=.40,p<.001)、

外科病棟(r=.43,p<.001)、 ICU(r=.58, p<

.001)、精神科病棟(r=.43,p<.05)であった

(表2)。

20 18 16 14 12 10

29 27 25 23 21 19

20 18

{6

14 12 10 8

内科  外科  外来  ICU  周母

情緒的消耗感

精神科手術部

   ***Pく.001

内科  外科  外来  ICU  周母 精神科手術部    個人的違成感の滅少    **P〈 01

  内科 外科 外来 ICU 周母 精神科手術部

       脱人格化

図2 ユニット間のバーンアウト傾向の比較 2)対人葛藤の相手とバーンアウト傾向との関連   バーンアウト傾向に対人葛藤がどれほど寄与  しているかについて、各対人葛藤相手との葛藤 得点を独立変数に、脱人格化、情緒的消耗感、

個人的達成感の減少得点をそれぞれ従属変数と

表2 ユニット内葛藤とバーンアウト傾向との相関

内科 外科 外来

1CU

周母 精神科 手術部

DP×

ユニツト内葛藤 0.39

***

0.40

***

0.54

***

0.49

**

0.40 0.65

**

0.21

PA×

ユニツト内葛藤 0.09 0.07 0.13 0.19 0.27 0.26

〇.13

EE×

ユニツト内葛藤 0、40

***

0.43

***

0.27 0.58

***

0.30 0.43

0.29

DP:脱人格化 PA:個人的達成感の減少 EE:情緒的消耗感

   Spearmanの順位相関 ***Pく.001 **pく.01 *pく.05

(5)

宮城大学看護学部紀要 第6巻 第1号 2003

表3 対人葛藤相手とバーンアウト傾向との関連

脱人格化と対人葛藤相手との関連       内科病棟

対人葛藤    β     r

  患者  031***  0   同僚  NS   O

    上司    0 22 **     0

  医師 NS   O 他の医療者  NS   O1

外科病棟       外来 β    r    β      r

O 34 ***   0 40       0 5 ***     0 50

0 23 **    0 32      N S        O 31 N S     O 16     N S       O 28 N S      O 28      N S       O 40 N.S     O 15     N S      O.28

 lCU β

NS

O,51**

NS NS NS

    周母        精神科

r    β    r    β      r

O.17    N S    O 35     N S      O.24 0 51     N S    −0 01      N S       O 42 0 27     N S     O.28      N S       O 54 0 48     G 50 *    0 50       N S        O 52 0 06     N S     O OO     O 55 ‡*     0 55

手術部

β     r

NS   O.21 N.S  −043

NS  OO6 NS  O33

NS  −0,71

R O41***

R2 017

046**

021

05***

025

0,51‡‡

026 050‡ 025

055*‡

0,30

NS

N,S

構緒的消耗感と対人葛藤相手との関連

⊇,内轍,

   患者  NS   O    同僚  NS   O

     _ヒ司    0 31 **零    0

   医師 023*‡  0  他の医療者  NS    O

   外科病棟        外来    β    r    β      r

3       0 33 ***   0 42     0 33 *      0 33 2       N S     O 21      N S       O 27

    NS    O26    NS     −003

    0 23 ホ‡   0 36      N S       O O3      N S      O 14      N S       〔} 28

 lCU β

NS

O60***

NS NS NS

    周母

r    β    r

O 32     N S     O O6 0 60      N S     −0 05 0 04     0 58 ‡‡   0.58 0 02     N.S     O 32 0 46     N S    −0 30

  精神科       手術部 β      r     β     r

N S       O 35        N S     O O6 N S       G O8       N S    −0.91 N S      G 35       N.S    O 15 N S       O 30       N S     O.了2 0 46 *      0 46        N S     −0.34

R O43***

R2 018

047*‡*

022 033* 0モ1

OCU C︶3

00

058**

G33

0,46*

021

NS NS

重回帰分析(ステップブイズ法,除去時p≧10) β 標準偏回帰係数  r 相関係数 R  重相関係数    R2寄与率

***P< OG1 ‡‡pく 01 享p<.05

した重回帰分析(ステップワイズ法、除去時p

≧.10)を用い、ユニットごとに検討した(表

3)。

 その結果、脱人格化には内科病棟で患者(β=

.31,p<.001)と上司(β=.22, p<.01)が、外 科病棟で患者(β=.34,p<.Ol)と同僚(β=.23,

p<.Ol)が、外来では患者(β=.50, p<.001)、

ICUでは同僚(β=.51, p<.Ol)、周産母子セン ターでは医師(β=.50,p<.05)、精神科病棟で

は他の医療従事者(β=.55,p<.Ol)が有意な

規定因になっていた。個人的達成感にはどのユ ニットでも有意な規定因となるユニット内葛藤 は見出せなかった。情緒的消耗感には、内科病 棟では上司(β=.31,p<.001)と医師(β=.23,

p<.01)が、外科病棟では患者 (β=.33,

p<.001)と医師(β=.23,p<.01)が、外来で

は患者(β=.33,p<.05)が、周産母子センター

では上司(β=.58,p<.Ol)が、精神科病棟で は他の医療従事者(β=.46,p<.05)が有意な 規定因になっていた。

Iv 考  察

1 ユニットごとのバーンアウト傾向について   今回の結果では、外来は他のユニットより個人  的達成感が強く、情緒的消耗感も弱い傾向が見い  だされ、外来のバーンアウト発生率が他のユニッ

トより低いという先行研究1°) 2)と類似した特徴が みられた。外来では入院患者がいないため、交代 制勤務は手術部と共に病棟勤務者に比べ少ない。

交代制勤務による疲労29)や生活リズムの乱れ3)と

バーンアウト傾向との関連が指摘されており、交 代制勤務の少なさが情緒的消耗感が弱い理由の1 つと考えられる。また、個人的達成感は援助対象 者とのサービス関係から喚起される感情であると

される3°)。外来患者は入院患者に比べ健康度が高

いと考えられ、このような重症感の少ない外来患 者と多くの接触を持つことで達成感を得ることが

できると考えられる。

 内科病棟は情緒的消耗感が強く、個人的達成感 は弱い傾向にあり、外科病棟、周産母子センター は特に情緒的消耗感が強い傾向があった。ICUは 個人的達成感が弱くなっており、精神科病棟では 情緒的消耗感は弱いが個人的達成感も弱い傾向が みられた。先行研究では精神科病棟12)13)14)15)やICU

勤務者16)にバーンアウト状態の者が多いとされる。

今回はこれらのユニット間に有意差はみられなかっ たものの、個人的達成感の減少得点や情緒的消耗 感にそれぞれのユニットの特徴が感じられた。

2 対人葛藤とバーンアウト傾向との関連について

 ユニット内葛藤は、周産母子センター、手術部

以外において脱人格化、情緒的消耗感との間に有

意な相関がみられた。つまり内科病棟、外科病棟、

(6)

ICU、精神科病棟、外来では対人葛藤がバーンア ウト傾向に関連しているが、周産母子センター、

手術部では対人葛藤はバーンアウト傾向にあまり 関連していないと考えられ、ここにユニットごと に特徴があることが示唆された。以下ユニットご

とにその特徴を考察していく。

1)内科病棟

  内科病棟は情緒的消耗が強く、個人的達成感  は弱い傾向にあった。また有意差はないが脱人  格化の得点も他のユニットと比べ高い傾向にあ  り、全体的にバーンアウト傾向が強いユニット  と考えられる。患者との関わりが特に情緒的消  耗感に関連する6)とされるが、内科病棟では患  者との葛藤は脱人格化と関連していると考えら  れた。内科病棟では患者との葛藤得点そのもの  も高い。すなわち常に葛藤を抱えながら患者と  接している状態ととらえることができるであろ  う。特定の患者との長期的で濃密な関わりが情  緒的消耗感に関連するとされる6)。看護師は患  者個人と昼夜を通じて関わっていく必要性があ  り、そこに何らかの葛藤が加わると消耗感を通  り越して脱人格化、すなわち患者と距離をおこ  うとする態度に変容している可能性も考えられ

 る。

  また上司との葛藤が脱人格化、情緒的消耗感  に、医師との葛藤が情緒的消耗感に関連すると

考えられた。内科病棟では医師との葛藤も多い  傾向にある。医師との接触頻度が多いと上司と  の葛藤が多くなるとされ28)、医師や上司との葛  藤が情緒的消耗感や脱人格化と関連する可能性

が考えられる。

2)外科病棟

  外科病棟では、患者、同僚との葛藤が脱人格 化の、患者、医師との葛藤が情緒的消耗感の有 意な規定因であった。外科病棟でも患者との葛 藤は内科病棟と同様多い傾向にある。従って、

患者との葛藤が脱人格化、情緒的消耗感に関連  している理由は内科病棟と同様患者との長期的

で密接な関わりが関連していると思われる。

  また内科病棟と同様、医師との葛藤も多い傾  向にあり、医師との葛藤が情緒的消耗感に関連  していると考えられた。内科病棟と違うのは同

 僚との葛藤が脱人格化に関連していると考えら  れる点である。外科病棟では手術前後の患者が  多く、患者の回復過程は比較的早く、判断の迅  速性が求められる。経験の違いは技術面に反映  しやすいが、時間的余裕がない場合同僚との技  術力の違いに苛つくことも多く、同僚と距離を  置こうとする態度に反映されることが考えられ

 る。

3)外来

  外来では患者との葛藤は他の所属より少ない  にもかかわらず、脱人格化、情緒的消耗感の有  意な規定因になっていた。外来では多くの患者  との短時間の接触が多いと思われる。しかし、

 長期通院患者との接触時間は1回が短時間であ  れ病棟より長期的に関わることになり、特定の  患者との長期的な関わりが情緒的消耗感に関連 する6)という結果にあてはまる。さらに、患者  への応対に神経を使うことで疲労感が蓄積して  いき、それが患者と距離を保とうとする気持ち  につながっていくと思われる。

  外来は対人葛藤もバーンアウト傾向も全体的  に他のユニットより低い。しかし、患者との葛 藤が少ないにもかかわらずバーンアウト傾向に  関連することは、外来に勤務する看護師の精神 的健康を考える際の重要な視点になってくると 考えられる。

4)ICU

  ICUでは、脱人格化、情緒的消耗感共に同僚  との葛藤が有意な規定因になっており、寄与率  も比較的高いと考えられる。ICUのストレッサー  として知識と技術の不足2°)や救急事態の可能 性19)があげられている。緊急性を要するICUに おいては、外科病棟以上に個人の技術面での能  力が問われる可能性がある。能力差が同僚との

葛藤を外科病棟以上に強め、脱人格化、情緒的  消耗感両方に関連すると考えられる。

 ICUでは内科病棟、精神科病棟とともに個人

的達成感が弱い傾向がある。個人的達成感の減

少得点には対人葛藤との関連は見あたらなかっ

た。従って、別の要因が関連している可能性が

あり、この点は今後別の視点で検討していく必

要がある。

(7)

宮城大学看護学部紀要 第6巻 第1号 2003

5)周産母子センター

  周産母子センターでは、手術部と同様対人葛 藤とバーンアウト傾向との関連がみられなかっ

た。しかし、葛藤相手別では上司との葛藤が他 のユニットに比べ有意に多くなっており、情緒 的消耗感の有意な規定因にもなっていた。さら  に医師との葛藤は脱人格化の規定因になってい た。すなわち、対人葛藤全体ではバーンアウト  傾向に関連しないが医師、上司との葛藤はバー  ンアウト傾向に関連していると考えられる。田  尾28)は上司より自分が優れていると思っている 看護師は上司との葛藤が多くなることを示し、

 プロフェッショナリズムと職場の対人葛藤との  関連について指摘している。周産母子センター  の看護師の多くは助産師の資格を有しており、

 他のユニットの看護師に比べ正常分娩では医師  と同等の責任を持ち介入できるという専門性へ  の自負が強いため、上司との葛藤が増加し、ひ  いては情緒的消耗感に関連していく可能性が考  えられる。

  周産母子センターとは周産期の母子を主に対  象としたユニットであり、多くは出産前後の母  親と生後7日までの新生児が対象である。従っ  て入院期間は他のユニットに比べ短期間である  ことが、患者との葛藤が少なく、バーンアウト  傾向にも関連していなかった一因と思われる。

6)精神科病棟

  精神科病棟では他の医療者との葛藤が脱人格  化と情緒的消耗感の有意な規定因になっていた。

 精神科病棟勤務者のモチベーションには精神障  害者に対する偏見が関連しているとされる。精  神科病棟のストレッサーとして他の医療者から  感じる障害者への偏見が対人葛藤を生じさせ、

 バーンアウト傾向に関連している可能性が考え  られる。

  また、精神科病棟では患者との葛藤が多いに  もかかわらず、バーンアウト傾向に関連してい  なかった。精神科病棟では患者の言動による暴  力体験など精神科特有のストレスがあるとされ  るが2D22)、患者との接触が葛藤とは異なる内容  のストレッサーとしてバーンアウトに関連して  いる可能性が考えられる。

7)手術部

 対人葛藤がバーンアウト傾向に関連しなかっ  た手術部では対人葛藤全体だけではなく、葛藤 相手でもバーンアウトの有意な規定因となって いるものは見あたらず、対人葛藤以外の要因が バーンアウトにより関連していると考えられる。

 手術部は医師との葛藤は多いものの患者との葛 藤は他のユニットより有意に少ない。特定の患 者との長期的な関わりが情緒的消耗感に関連す  る6)ことから、手術中は患者との直接的な対応  より、患者の安全への配慮といった役割が中心  になっていることがこの原因と思われる。

Vまとめ

1.内科病棟、外科病棟、周産母子センターでは外  来に比べ情緒的消耗感の得点が有意に高く、内科  病棟、ICU、精神科病棟では、外来に比べ個人的  達成感の減少得点が有意に高かった。このことよ  り、バーンアウト傾向として情緒的消耗感、個人  的達成感においてユニットによる相違が認められ

 た。

2.内科病棟、外科病棟、ICU、外来、精神科病棟  で対人葛藤と脱人格化、情緒的消耗感との間に有  意な相関関係がみられ、ユニットによって対人葛  藤とバーンアウト傾向との関連に相違が生じる可  能性が考えられた。また、手術部以外の内科病棟、

 外科病棟、ICU、外来、周産母子センター、精神  科病棟において葛藤相手が脱人格化、情緒的消耗  感の有意な規定因になっており、対人葛藤が脱人  格化、情緒的消耗感に関連する様相はユニットに  よって違っていると考えられ、その違いはユニッ  トの特徴からくる可能性が提示された。

文  献

1)Maslach, C.,Jackson, S. E:The  measurement of experienced burnout.

 Journal of occupational behavior, 2、 99−ll3,

 1981

2)Miller, L,Reesor, K,McCarrey, M,et a1:

 Nursing Burnout. Employee Assistance

 Quarterly,10(4),29−52,1995

3)Iskra, G.1.,Folkard S.,Marek, T,et al

(8)

  : Health, we11−being and burnout of ICU

 nurses on l 2−and 8−hshifts. Work and  Stress,10(3),251−256,1996

4)宮崎和子:看護職のバーンアウト症候群は職業

 病か.看護管理,7(11),859−865,1997

5)渡辺直澄:組織ストレス,若林 満・松原敏浩  (編)「組織心理学」.pp.181−202,福村出版,1988

6)田尾雅夫:バーンアウトーヒューマン・サービ  ス従事者における組織ストレスー.社会心理学研

 究,4(2),91・97,1989

7)小牧一裕:職務ストレスとメンタルヘルスへの  ソーシャル・サポートの効果.健康心理学研究,

 7(2), 2−10, 1994

8)土居健郎,宗像恒次,高橋徹,他:治療者及び  看護者の精神衛生に関する研究.文部省科学研究  実績報告書,(M59570251),129−153,1985

9)田尾雅夫:ヒューマン・サービスにおけるバー  ンアウトの理論と測定.京都府立大学学術報告

 「人文」,39,99−ll2,1987

10)久保真人,田尾雅夫:看護婦におけるバーンア  ウトーストレスとバーンアウトとの関係一.実験  社会心理学研究,34(1),33−43,1994

11)新名理恵,荻野佳代子,音山若穂:国立病院看  護者員のストレスに関する研究(1)一看護者員  用ストレッサー・スケールの開発一.日本心理学  会発表論集,62,946,1998

12)稲岡文昭,川野雅資,宗像恒次:看護者の  BURN OUTと社会的環境及び行動特性との関連  についての研究一一般医,精神科医との比較を通

 して一.日本看護科学会誌,6(3),50〜60,1986

13)稲岡文昭,松野かほる,宮里和子:看護婦にみ  られるBurn Outとその要因に関する研究看護,

 36(4), 81−104, 1984

14)藤田和夫:20代看護婦の心身健康に影響を及ぼ  すリスクファクターの検討(1)一意欲の減退と  燃え尽き症状一.日本看護学会集録(看護管理),

 19, 227−229, 1988

15)田嶋長子,古崎すみえ:看護婦の精神保健に関

 する研究(1)一精神科看護者の燃え尽き症候群一.

 福井県立短期大学部論集,1,75−86,1994

16)池田美千代,嶋田晴美,西村亜紀子,他:ICU・

 CCU混合病津尾で働く看護婦のストレスの実態

 について.日本看護学会集録(看護管理),23,

  199−201, 1992

17)Ogus,]臥 D:Burnout and coping strategies

  :A comparative study of ward nurses,

 Occupational stress:Ahandbook. pp.249−

 261,Taylor&Francis, Philadelphia,1995 18)荻野佳代子,新名理恵,音山若穂:国立病院看  護者員のストレスに関する研究(H)一個人属性・

 組織特性との関連一.日本心理学会発表論集,62,

  947, 1998

19)Susan, M. S:五ving with stress and

 promoting well−being Karen, E。 C.&June,

 T.B. with Hans Selye, Mosby Company,

 Saint Louis:伊藤幸子,伊藤育子,遠藤和枝,

 他訳:ストレスの知覚一1800人のナースは語る,

ナースとストレス.pp.51−78,医学書院,1985 20)斉藤千里,稲岡文昭:ICUの職場環境と看護婦  の健康状態の関連についての検討.日本看護学会

 集録(看護管理),16,20−21,1985

21)佐藤洋子,大森蔚子,阿部トミ子,他:精神科  看護者が受けるストレスー意識調査から解決法を  模索する一.日本看護学会集録(看護管理),19,

 240−242, 1988

22)山崎登志子,岩田真澄,齋 二美子:精神科病  棟に勤務する看護職者のストレッサーとバーンア  ウト傾向との関連について(2).日本精神保健看

 護学会集録集,38−39,2001

23)エンサイクロペディア看護辞典編集委員会:エ ンサイクロペディア看護辞典.pp.218−219,廣  川書店,1984

24)山崎登志子,石田真知子,柏倉栄子:看護者の  バーンアウト傾向とソーシャル・サポートとの関  連 一2病院における看護者の構成比較から一、

 東北大学医療技術短期大学部紀要,8(2),161−170,

 1999

25)田尾雅夫:対人葛藤の概念的枠組み一連載講座  看護婦におけるヒューマン・リレーションズー.

 看護展望,9(D,55−60,1987a

26)田尾雅夫:対人葛藤の概念的枠組み一連載講座  看護婦におけるヒューマン・リレーションズー.

 看護展望,9(2),49−58,1987b

27)田尾雅夫:対人葛藤の概念的枠組み一連載講座

(9)

宮城大学看護学部紀要 第6巻 第1号 2003

 看護婦におけるヒューマン・リレーションズー.

 看護展望,9(3),60−67,1987c

28)田尾雅夫:対人葛藤の概念的枠組み一連載講座  看護婦におけるヒューマン・リレーションズー.

 看護展望,9(4),55−62,1987d

29)佐藤秀紀,中嶋和夫:精神薄弱者更正施設職員  におけるバーンアウト.民族衛生,62(2),34&

 358, 1996

30)田尾雅夫・久保真人:バーンアウトの理論研究,

 バーンアウトの理論と実際 一心理学的アプロー

 チー.誠信書房,pp.29−41,1997

参照

関連したドキュメント

まずフォンノイマン環は,普通とは異なる「長さ」を持っています. (知っている人に向け て書けば, B

当社は、お客様が本サイトを通じて取得された個人情報(個人情報とは、個人に関する情報

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

の総体と言える。事例の客観的な情報とは、事例に関わる人の感性によって多様な色付けが行われ

はい、あります。 ほとんど (ESL 以外) の授業は、カナダ人の生徒と一緒に受けることになりま

■はじめに

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

中国人の中には、反日感情を持っていて、侵略の痛みという『感情の記憶』は癒えない人もき