• 検索結果がありません。

ポ リ エ チ レ ン の 高 電 界 電 気 伝 導 と 絶 縁 破 壊 ―電子線照射効果―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ポ リ エ チ レ ン の 高 電 界 電 気 伝 導 と 絶 縁 破 壊 ―電子線照射効果―"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

―電子線照射効果―

1. ま え が

ポ リエチ レンの基本的な絶縁破壊現象に関 しては古 くか ら研究 されてお り,極低温, ガラ ス転移温度以下では電子なだれが(1)(2)(3)(4), また融点近 くの高温では電気‑機械的破壊が(5)(6) 与 していることが示 されている.しか しポ リエチ レンを絶縁材料 として実際に使用す る温度 領域,すなわち室温か ら100oC付近 までの破壊戟掛 こ関 しては,理論的にも実 験的にも不明 な点が多 く,未だ十分解明されていない.

一方 ポ リエチ レンの高電界における電気伝導機構に関 しても,絶縁破壊機構を探 る手掛 り を得る目的か ら,種 々論議 されているが(1)(榊)(9), いづれ も試料の破壊電界 よりもまだ低い電 界領域の実験結果に基づいてお り,実験上の困難 さのため,破壊直前までの電流測定的はほ

とんど行なわれていない現状である.

一般に固体絶縁物の電気伝導は,電界に対 して連続 した関係を有す る現象であるが,絶縁 破壊はある臨界電界に達す ると,突発的に発生 し瞬時に完了す る現象である.従 って高電界 電気伝導か ら絶縁破壊への移行を,連続 した一連の現象としてとらえることが可能か ど うか は,その破壊の発生過程即ち破壊機構 とも関連 した興味ある問題であると考え られ る.

筆者 らは,以上の観点か ら,ポ リエチ レンの絶縁破壊に至るまでの伝導電流を測定 し,破 壊直前の電流 (破壊前駆電流) と絶縁破壊強さとの相関関係に着 日して,絶縁破壊機構を実 験的に検討 してきたW.本報告では,破壊過程における空間電荷の振舞を追求す るため,ポ リエチ レンに電子線を照射 し,Jl'ル ク内に人為的にキ ャリヤ トラップを生成 させた試料を用 いて,未照射ポ リエチ レン (オ リジナルポ リエチ レン)の場合 と同様の実験を,20‑120oC の温度領域にわた って行 った.そして電子線照射効果を検討す ることか ら,空間電荷効果を 考慮 したポ リエチ レンの直流絶縁破壊機構を論 じている.

2.実 験

試料材料 として, 110FLm厚 のオ リジナル低密度ポ リエチ レン (密度0.919,無添加,M. 2.70,宇部興産褒)に線量20Mradの電子線を,空気中で照射 した フイルムを用いた. これ を数10/̀m厚の Recess状に 110oCで加熱成形 した後, 5mm少の電極を構成す るよう金を 真空蒸着 した.その結果,空気中で測定 しても周辺効果は起 こらず,破壊は常 に Recess の部分で発生 した.なお電子線照射後,加熱圧縮 と同一条で熱処理件を施 した フィル■ム状試 辛 ・昭和534月電気学会全国大会において発表

**電気工学科 講師

原稿受付 昭和539月30

(2)

62 長野工業高等専門学校紀要 ・第9

料の赤外吸収 スペ ク トルか ら, 960cm‑1に二重結合を示す吸収が 観琴 等れた. また電子回 折 も行 ったが,照射 と熱処理に よる結畠化度の変化は褒めなれなか った.

測定は空気中で行い, 10kVの直流安定化電源 (川 口電機,Ⅴ‑710)か ら試料に‑定電圧

10分間印加 し,その間の電流を故少電流計 (タケダ理研,TR‑8641)で測定 した後,20 間短絡す るとい う操作を,電圧を 1kV刻みに増加 しつつ, 破壊に至 るまで繰 り返 した.破 壊が生ず ると試料は突発的に短絡 され, リレーお よび放電管が動作 し,測定器 と電源を保護 す る. この保護回路 と,試料をRecess状に成形 した ことか ら,破壊直前の電流測定が可能

となったが,その詳細は既報Wにゆず る.

3. 3‑1高電界伝導電流の電界依存性

電気伝導電流に及ぼす電子線照射効果を図1に示す.図中 †印はこの電界 (EB)で試料が 破壊 した ことを示 し,その時の電流を破壊前駆電流 (IpRE)とみなす.また試料が破壊 した のは,‑定電圧印加後数分以内のものが多か った.この時間を破壊遅れ時間 (tLAG)とす る.

これ らの値は, 後に, 破壊時の電気的注入エネルギーEBIpREtLAGを求める際使用する.

なお前駆電流以外の伝導電流は全て電圧印加後の10分値を採用 した.実線 と黒丸は電子線照 射 の場合,破線は未照照 (オ リジナルポ リエチ レン)の場合の測定例である.破壊付近の高 電界における伝導電流は直線で近似でき (ⅠαsinhCE, Cは温度により変化す る係数),電 界に対す る勾配は温度が低 くなるにつれ緩やか とな り, 20oCでは飽和す ることが認められ る.120oC付近では破壊直前の電流は急増す る様子が観察できる.また同一温度で比較す る と,電子線照射に より,電流値は約1桁減少 し■,電界に対する勾配 も援やかにな っているこ とがわか る.

次に片対数上に示 された図1の照射ポ リエチ レンの測定データを,両対数上にプロットし たのが図2であ り,図中一点鎖線はChild別か ら導かれる勾配を示す.高温側,低温側 とも

DC APPLlED FJtLD EIMV/cm)

1 伝導電流の電界依存性 (LogLE特性) 2 伝導電流の電界依存性 (LogLLogE 特性)

(3)

ある電界 まではChild則が成立 しているが,60oC 以上では より急勾配な電界で破壊が発生 し,室温付近ではChild則あるいはそれ以下の勾配を示す電界において試料は破壊 した.

また伝導電流の温度依存性か ら,照射ポ リユチ レ1/の見掛けの活性化エネルギーを算出す ると,印加電界が3.5MV/cm以上の電界領域ではほぼ0.40eVを示 し, 未照射 ポ リエチ レ フのO●34eVWに比べ増大 した.

3‑2絶縁破壊強さの温度依存性

1で示 した †印の破壊強さを,各温度にわた り測定 したのが図3である.電子線照射に より,破壊強 さは 2MV/cm程度上昇 して

いる.照射に よる架橋のため,融点は高 く な り,未照射ポ リエチ レンでは測定できな か った120oCの絶縁破壊強 さも求め ること ができた.同園か ら絶縁破壊強 さの温度依 存性を3つの温度魯域に分けることができ る.すなわち20oCか ら40oC付近に至 る領 域 (領域Ⅰ)では,破壊強 さは温度に対 し て比較的平担な特性を持つ.次に約100oC

までの領域 (領域Ⅱ)では,温度上昇につ れ,破壊強 さはだ らだ らと減少 し, さらに 120oC付近 までの領域 (領域Ⅲ)では,破 壊強 さは急激な低下を示す.以下 この3 の領域に分けて絶縁破壊敵将を検討する.

4.

4‑1領域

765432

/^MuH9NSUTtrUu1uU凸

20 40 60 80 100 120 TEMPERATURE lC)

3 絶縁破壊強さの温度依存性 この40oC 以下の室温代近では,図2よ

り破壊付近 の伝導電流はChild則あるいはそれ より小 さい勾配の電界依存性を示す こと,普 た絶縁破壊強 さの温度依存性が少い ことか ら,破壊直前には空間電荷制限電流が流れてお り, 破壊機構 としては電子なだれが関与 してい るものと考え られ,インパルス絶縁破壊における 他の報告(2)と一致す るが,本論文で取扱 う破壊遅れ時間は非常に長い.

電子なだれ破壊では,絶縁破壊の発生に必要な初期電子数は桂めて少 くて よい と考え られ るので,破壊強 さと破壊前駆電流の間には直接 の相関関係は存在 しない ものと予想できる.

次に電圧上昇法に よる交流 (60Hz)と直流の絶縁破壊強さを比較 した表1の測定例凹にお

1交流,直流絶縁破壊強さの比較

ポリエチレソl試料温度 直流破壊強さ 交流破壊強さ 交流破壊強さ/直流破壊強さ オt)ジナル試料

電子線照射試料

15.0.C 5.87MV/cm 4.00MV/cm 0.68 16.5oC 6.30MV/cm 4.56MV/cm 0.72 荏) 電圧上昇速度500Ⅴ/S,交流破壊強さは波高値

(4)

64 長野工業高等専門学校紀要 ・第9

いて, 16oC付近 の交流破壊強 さが直流疲壊強さよりも低い こと, また両者 の比が,室温に おけ るポ リエチ レンの極性反転破壊電圧/直流破壊電圧 の0.67,架橋 ポ リエチ レンの0.7‑

0.75の値的 とよく一致す ることか らも,ホモ空間電荷が破壊値を上昇 してい ることを裏付け ることがで きる.

4‑2領域

40oCか ら100oC付近 に至 る温度領域において,破壊近 くの高電界伝導電流は,空 間電荷 制限電流(1), Shottky放出電流, Poole‑Frenkel電流(9)な どの伝導硫構か らでは,未照射 ポ リエチ レンの場合 と同様OD,十分に説 明できない. 例 えば図1のデータを もとに,ポ 1)エチ レンの比誘電率 Sr‑2.3で 算 出 し た

20

0(Y)

uUN

SIQdM(M∈UnW1‑Ugrq^9uNu

I‑ORIGINAL

= EU:CTRONBEAM

′ー′′

一一′●

..′I+

0 20 40 60 80' )00 I20

TEMPERATURE lC) 4 ジャンプディスタンスの温度依性

0 20 40 60 80 100 120

TEMPERATURE(̀C)

5 絶縁破壊時の注入エネルギー

Poole‑Frenkel定数は60oC7.3×10‑5

ev・Ⅴ‑i・cm与,100oCでは1.07×1014 ev・ヰ ・cm与 とな り, 異常 に小 さな 値 を示す.図1お よび図2で示 した ように, 伝導電流 の電界依存性はChild別 には従 わず, sinhCEで現 され ることか ら, ト

ラップに描養 された電子の輸送過程 とし て,熱的励起に よるHopping伝 導を考 えることができる.図1か ら求めたジャ ンプデ ィスタンスを図4に示すが Hop・

ping伝導 として不合理な値ではな く, また温度依存性 も妥当な ものと思はれ る.

次に絶縁破壊強 さは,温度が上 昇す る につれ単調に低下す るが,電子線照射に よ り,破壊前駆電流 IpREは減少 し,紘 縁破壊強 さは増加 した. しか し絶縁破壊 時に 注入 した 電気エネルギー EBJpRE‑

tLAGJoule/cma(ただ しJpRE IpRE か ら求めた電流密度, tLAGは破壊遅れ 時間)は,同一温度において比較すると, 5に示す よ うに未照射 ポ リエチ レンと はぼ同程度の値を示す. この絶縁破壊強 さと破壊前駆電流 の問に相関関係が成立 す るとい う実験事実か ら,破壊機構 とし てほ ジュール熱に基づ く純熟破壊が関与

しているもの と考えることができる.

従来 この領域で生 じる破壊は,領域 と合わせて Fr6chlich氏の電子熟破壊か ら説 明され ることが多か った(1)(8). 図3のデータを 用いて,電子熱破壊理論に従 って 浅い トラップ準位分布の幅 Ⅴ を求めた結果,』Ⅴ‑006 4eV とな り,他の報告の0.062eV(7)(8)とよく一致 し, この理論で説明できる可能性もあ り,

(5)

電子熱破壊,純熱破壊のいずれが支配的であるかを判定す ることは難 しい.

しか し,本実験では,前述の電気注入エネルギーがほぼ‑定借になると破壊が発生す る事 実, さ らに破壊遅れ時間が大 きい (数分程度) こと,また破壊直前の伝導電流 の電界依存性 な どを考慮 した結果, この領域での破壊機構は領域 Ⅰとは異 り,Hopping伝導か ら純熱破 壊‑ と進行す る破壊過程 の方が電子熱破壊 より支配的であ ると推論す る.

なお, 50oC以上で電気一機械的破壊 の可能性を示唆 してい る報告 もあるが,図1に示す ように, この温度領域では破壊直前の電流の急増が認め られない ことか ら,領域 Ⅱではまだ 電気一枚枕的破壊は さほ ど関与 していない ものと考 える.

4‑3領域

この100oC以上120oC付近 までの領域では,ポ リエチ レンの融点に近 く,図4で示 した ジ ャンプデ ィスタンスが100oCを こえると急増す ることか らも推定で きるよ うに,試料は軟化 し,可塑的流れをお こしやす くな ってい る.照射 ポ リエチ レンの破壊強 さは,温度上昇につ れ急激に低下 している. また図5か ら,電気的注入エネルギーが領域 Ⅱよりも小 さ くて破壊 が生 じてい る. これ らの実験結果か ら,既に報告されてい るよ うに(5)(6)(7), この領域では電気 一機枕的破壊が生 じてい ると考 え られ る. この破壊機構Vt‑よると, 破壊が近づ くに つ れ, Maxwell応 力に より試料の膜厚が薄 くな り, 内部電界は次第 に上昇す る. 図1に示 した よ うに,破壊直前において120oCの電流が急増す る事実は, この考えを裏付けてい る.なお電 気一機械的破壊には較枕的な力が関与 しているため,破壊前駆電流 と破壊強 さの間には直接 的な相関関係は存在 しない もの と考え られ る.

5. と が

ポ リエチ レンに電子線を照射す ると,架橋 と二重結合が生 じ,未照射ポ リエチ レンよ りも 深い所 に新たな トラ ップ準位が出現 した.絶縁破壊に至 るまでの伝導電流を測定 し,その電 界依存性,お よび破壊強 さの温度依存性を中心に,電子線照射効果を検討 した.その結果, 20‑120oCにおけるポ リエチ レンの絶縁破壊琉坊を3つの温度領域に分けて考察 した.

20‑40oCの領域では, 電子なだれ破壊が関与 してい るもの と考えられ,ホモ空間電荷が 絶縁破壊過程を大 き く支配 していることが解 った.40‑100oC付近 までの領域では,純 熟破 壊の可能性が高 く, Hopping伝導の延長上に破壊が発生す ると推論 した.約100oC以上 の 領域では,電気一機械的破壊が生 じてい ることを確認 した.

絶縁破壊直前の電流か ら破壊機構を実験的に解明 しようとす る試みは, まだ始 まったばか りであ るが,破壊機構に関す る有力な情報を獲得で きることを,本論文では示 した.

謝辞 本研究 の共同研究者であ り,常に御指導頂いている信州大学工学部宮入圭一助教授 に厚 くお礼申し上げ る. また実験に協力された本校卒業生,池 田淳一氏 (現在 長野沖工業 株式会社) と日野英俊氏 (現在 中部電力株式会社)に, さらに膜厚測定に関 して便宜を与

え られた信州大学工学部太田善規講師に感謝致 します.

(1)天川 ・森内 ・青田 ・犬石 :電学誌 84,12935(39づ). (2)木谷 ・有井 :電学誌 94A,2516(496).

(6)

66 長野工業高等専門学校紀要 ・第9

(3)宮入 ・山内 ・沢 ・家田 一:電学誌 91,19628(46‑10). (4)長尾 ・沢 ・家田 :電学誌 96‑A,605ll(5112).

(5) K.H.Stark&C.G.Carton:Nature176,1225J (1955). (6) a.A.Fava:Proc.ZEE.112,81923 (1965).

(7) W.G.Lawson:Brit.J.Appl.Phys16,1805‑12(1965). (8)宮内 ・矢作 :電学誌 92‑A,3645(47‑1).

(9)田中 ・犬石 :電学誌 89,67382(444).

的 C.G.Carton&N.Parkmann:Proc.IEE 123,27116 (1976).

宮入 ・山田 :絶縁材料研究会資料EIM‑77iB(524),Japan.J.Appl.Phys16,1449JO(1977).

山田 ・宮入 :昭和53年電気関係学会東海支部大会, No.124 山田 :電学誌 95,432(505).

参照

関連したドキュメント

電所の事故により当該原子力発電所から放出された放射性物質をいう。以下同じ。

漏洩電流とB種接地 1)漏洩電流とはなにか

1200V 第三世代 SiC MOSFET と一般的な IGBT に対し、印可する V DS を変えながら大気中を模したスペクトルの中性子を照射 した試験の結果を Figure

直流電圧に重畳した交流電圧では、交流電圧のみの実効値を測定する ACV-Ach ファンクショ

・カメラには、日付 / 時刻などの設定を保持するためのリチ ウム充電池が内蔵されています。カメラにバッテリーを入

最近の電装工事における作業環境は、電気機器及び電線布設量の増加により複雑化して

なお、関連して、電源電池の待機時間については、開発品に使用した電源 電池(4.4.3 に記載)で

なお,今回の申請対象は D/G に接続する電気盤に対する HEAF 対策であるが,本資料では前回 の HEAF 対策(外部電源の給電時における非常用所内電源系統の電気盤に対する