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(1)

日本のビジネススクールの概要

著者 金 雅美

雑誌名 和光経済

巻 47

号 1

ページ 1‑8

発行年 2014‑08

URL http://id.nii.ac.jp/1073/00003584/

(2)

1. は じ め に

 日本の MBA ホルダーをめぐる社会環境は厳し い。日本企業と MBA ホルダーの間には,対立関 係が存在する。

 例えば,日本・アメリカ・ドイツにおける MBA ホルダーの管理職の数を比較することに よって,この関係がよく理解できる。小池,猪 木(2003)の調査2)によると(表1参照),日本 の大学卒の管理職は 84.3%,アメリカが 32.7%,

ドイツは 39.9%である。そして,日本の大学院 卒の管理職が 1.9%であるのに対し,アメリカ は 60.9%,ドイツは 29.9%であった。なかでも,

MBA ホルダーの管理職の比率は,アメリカで は 37.0%,ドイツが 11.3%であるのに対し,日 本はたった 0.7%である。アメリカやドイツでは,

MBA 学位は他の大学院の学位の上に取得される ことが多いという。

 一方,日本における MBA ホルダーの管理職の 比率 0.7%は,もともと大学院卒の管理職の比率 が大学卒の管理職の 84.3% と比較して,1.9% と

日本のビジネススクールの概要

1)

Trends in Business Schools in Japan

金   雅 美 Ahmi Kim

【Abstract】

The number of Japanese Managers with MBA degrees in companies is much fewer than  that of American Managers with MBA degrees in companies, which means Japanese society  is not easy for utilizing MBA holdersʼ ability comparing with American society. However,  Japanese business schools are educating MBA holders in such an unfavorable environment. 

The purpose of this paper is to analyze the data about business schools in Japan.

【キーワード】

ビジネススクール,MBAホルダー,日本企業

著しく低いことも特徴であるが,アメリカやドイ ツの MBA ホルダーの管理職の比率と比較になら ないほど低い。

 日本は海外よりも,大学院や MBA ホルダーの 管理職に対して厳しい状況にある。そのように 厳しい社会や企業の環境の中で活躍している日本 の MBA ホルダーを育成しているのがビジネスス クールである。しかし,新聞や雑誌,ビジネスス クールからの表面的な情報発信ばかりが目につく

表 1 大学卒・大学院卒・MBA ホルダーの管理職の比較 大学卒

の管理職

84.3%

32.7%

39.9%

1.9%

60.9%

29.9%

0.7%

37.0%

11.3%

大学院卒 の管理職

MBA ホルダー の管理職

(注)小池・猪木(2003)������������������������������

����������,日本労働研究機構,p. 43 から筆者作

成。

日 

(3)

『和光経済』第 47 巻第 1 号 2

ため,その実像がなかなか見えてこない。

 本稿の目的は,日本のビジネススクールの実態 を,データを中心に明らかにすることである。ビ ジネススクールの実像を探るためには,まずデー タを収集・分析することが必要である。

 本稿で使用しているデータは,日経 HR 編(2009,

2010,2012)に掲載されている各ビジネススクー ルの情報をもとに,独自に計算したものが中心で ある。データの分析内容は,①歴史と創立年,② 学校数と種類,③入試倍率と開講日,④学生の種 類と留学生,である。

2. ビジネススクールの歴史と創立年

2.1. 歴   史

 日本の大学院制度は,「大学院」と「専門職大 学院」という 2 種類の大学院から構成されている。

ヨーロッパの大学をモデルに成立してきた日本の 戦前期の大学から,第二次世界大戦後,新しい大 学制度へとアメリカをモデルに変化したが,日本 政府は国立大学における専門職教育に特化した大 学院の設置には賛成してこなかった。財政・組織 的に大学院は学部に依存してきたという問題があ り,施設や教員が学部と一体であることが,大学 院の設置を阻んでいたからである(天野,2004)。

 学部と切り離された専任教員を持つ,学部から 独立した大学院が創立されるのは,1970 年以降 のことだ。この頃から,大学院を学部から独立さ せた専門職大学院と,学部の上に設置されていた 博士課程を持つ大学院との二極化が始まった。海 外の大学における大学院の発展に後れを取ってい た日本は,大学院のあり方に対応を迫られていた。

 その構想は,社会人にその門戸を開放するこ とを目的とした,2000 年の「専門大学院」制度,

続いて 2003 年の「専門職大学院」制度が制定さ れたことが始まりである。2003 年以前の学校教 育法では,第 65 条において「大学院は学術の理 論及び応用を教授研究し,その深奥をきわめて,

文化の進展に寄与することを目的とする」と定め られていた。改正後は,第 99 条において,「大学 院は,学術の理論及び応用を教授研究し,その深

奥をきわめ,又は高度の専門性が求められる職 業を担うための深い学識及び卓越した能力を培 い,文化の進展に寄与すること目的とする」とさ れ,さらに第 2 項として,「大学院のうち,学術 の理論及び応用を教授研究し,高度の専門性が求 められる職業を担うための深い学識及び卓越した 能力を培うことを目的とするものは,専門職大学 院とする」という規定が加えられた。

 それと同時に,「専門職大学院設置基準」が 制定され,専門職学位課程では第 2 条において,

「専門職学位課程は,高度の専門性が求められる 職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培 うことを目的とする」とされた。

 これ以降,日本の大学院は「大学院」と「専門 職大学院」という 2 種類に区分されるようになっ た。しかし日本では,「専門職」の概念が曖昧な ことが,社会的な混乱を引き起こしている(天野,

2004:山田,1998)。専門職(プロフェッショナル)

の意味が,日本とアメリカでは異なって使われて いるからである。

 アメリカにおけるプロフェッショナル集団は,

医師,法律家,聖職者という職業の成立ととも に,彼らの市場が形成されており,その市場価値 を高めるためにも,知識の独占的支配への意欲を 強めてきた。プロフェッショナルの生命ともいう べき知識の独占的支配は,高等教育によって助長 されている。プロになるための高度な知識・技術 は,長年にわたって学ばなくてはならないもので ある。さらに,各プロフェッショナル・スクール の提供する訓練の質によって,プロとしての能力 がはっきりつくのが,アメリカの高等教育制度の 特徴である(山田,2008)。

 しかし日本では,大学院レベルの職業専門教育 は一般の大学の中で,それも医師や法律家のよう な確立された専門職業人の養成が進められてきた。

そのため,一般の大学院の枠内での専門職業教育 との間に混乱が予測される(天野,2004)。さら に日本では,アメリカのようなプロフェッショナ ル協会と専門職大学院との結びつきが弱く,医者 や法律家以外のプロフェッショナルの市場が確立 していないことや,専門職大学院で得た学位のラ

(4)

イセンス化の問題などもある。

 アメリカではビジネスエリートになるための登 竜門であるとされている,プロフェッショナル・

スクールの代表とも言えるのがビジネススクール であるが(山田,2008),日本にはまだそのよう な社会的構造や労働市場はできていない。企業や 社会のビジネススクールに対する受け止め方も 様々であり,企業と MBA ホルダーが対立関係に あると考えるデータの一つは,表1で示した通り である。

 日本では,多くの大学院が事実上,専任の教員 も独立の建物も,独自の予算も持たず,学部の 付属施設として運営されてきたというのが実態で あった(天野,2004)。そのため,多くの課題を 抱えながらも,専門職大学院が制度化されたのは,

大学院制度の進展のための大きな一歩であると言 える。

 夜間大学院の制度が高度専門職業人の養成に特 化した大学院として進化すると,その大学院を 強化すべく,「科学技術の進展や社会・経済のグ ローバル化に伴う,社会的・国際的に活躍できる 高度専門職業人養成へのニーズの高まりに対応す るため,高度専門職業人の養成に目的を特化した 課程として創立」(文部科学省 HP)されたのが,

専門職大学院である。

 学部を持たない独立大学院型のビジネススクー ルの創立の歴史は,現在まで大きく 3 期に区分で きる。第 1 期は,日本のビジネススクールが創立 された創立初期である。1978 年に「和製 MBA」

を目指した慶應義塾大学大学院経営管理研究科を 始め,1988 年に英語指導を特色とする国際大学 大学院国際経営研究科が開設され,1989 年には 社会人向けに,筑波大学と神戸大学が夜間大学院 を開校した。

 第 2 期の創立後期として,2000 年の「専門大 学院」制度の制定を受けて,2000 年に経営分野 の専門大学院として一橋大学大学院国際企業戦略 研究科が開設され,名古屋商科大学が 1 年制大学 院を創立し,2001 年に青山学院大学大学院国際 マネジメント研究科の創立と,ビジネススクール の多様化が進む。

 「専門職大学院」制度が 2003 年度に制定された 第 3 期に入ると,ビジネススクールの創立ラッ シュが起こる。すなわち,「ビジネススクール・

ブーム」と呼ばれる時期である。2003 年には 専門職大学院で 6 専攻が開講され,2004 年から 2006 年までには,各年 7 学科が開講された。合 計で 2012 年の時点で 33 学科(31 校)あるうち の 27 学科がこの時期に開講されている。しかし,

2007 年には 3 学科,2009 年と 2012 年には各 1 学 科しか開講されていない(文部科学省 HP)。

2.2. 創 立 年

 大学院と専門職大学院を含めたビジネススクー ルの創立年に関するデータを分析してみよう。

データは,日経 HR 編(2009,2010,2012)に掲 載されている各ビジネススクールの創立年度をも とに計算したものである。

 日経 HR 編が行った調査に回答があった MBA  78 学 科 の 場 合( 外 国 大 学 日 本 校 7 校 を 含 む ),

1970 年 代 の 創 立 が 1 学 科,1980 年 代 が 5 学 科,

1990 年代が 14 学科である。その後,2000 年に 3 学科,2001 年に 2 学科,2002 年に 3 学科,2003 年 に 9 学 科,2004 年 に 10 学 科,2005 年 に 9 学 科,2006 年に 9 学科,2007 年に 2 学科,2008 年 に 4 学 科,2009 年 に 1 学 科,2010 年 に 4 学 科,

2012 年に 2 学科が創立されている。特徴的なのは,

2000 年の「専門大学院」制度が制定される前の 1990 年代,続いて 2003 年の「専門職大学院」制 度が制定された年と,その後 3 年間の創立が最も 多いことである。

 同じく,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た MOT 14 学科の場合,2003 年の創立が 3 学科,

2004 年が 1 学科,2005 年が 5 学科,2006 年が 3 学科,2008 年が 1 学科,2010 年が 1 学科である。

2005 年から 2006 年の間に半数の学科の創立が行 われている。

 続いて,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た会計 20 学科の場合は,1950 年代の創立が 1 学 科,その後,2002 年の創立が 1 学科,2005 年の 創立が 8 学科,2006 年の創立が 6 学科,2007 年 の創立が 3 学科,2009 年の創立が 1 学科である。

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『和光経済』第 47 巻第 1 号 4

やはり,2005 年から 2006 年の間に,半数以上の 14 学科の創立が行われている。

 上述した MBA 学科と MOT 学科を合計した 92 学科の場合,1990 年代に 14 学科,2003 年に 12 学 科,2004 年 に 11 学 科,2005 年 に 14 学 科,

2006 年に 12 学科と,2003 年から 2006 年の間に 49 学科が創立されており,全体の半数以上を占 めている。

 これらを,国公立と私立に分類して考察して みよう。日経 HR 編が行った調査に回答があっ た国公立の MBA 16 学科の場合,最も多い創立 が 2003 年の 4 校と,2004 年の 3 校である。しか し,日経 HR 編が行った調査に回答があった国公 立の MOT 8 学科の場合,2003 年の創立が 2 学科,

2005 年の創立が 3 学科,2006 年が 2 学科,2008 年が1学科と,数年間にわたり創立されている。

日経 HR 編が行った調査に回答があった会計 3 学 科の場合,2005 年に 2 学科と,2007 年に 1 学科 が創立されている。

 同じく,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た私立の MBA 55 学科の場合,創立の時期は,

1990 年代に 11 学科と最も多く,その後,2004 年 に 7 学科,2005 年と 2006 年に各 8 学科と減少し ている。日経 HR 編が行った調査に回答があった 私立の MOT の 6 学科の場合,その創立時期は,

2003 年から 2010 年の間に拡散している。

 日経 HR 編が行った調査に回答があった私立の 会計 17 学科の場合,2005 年と 2006 年に各 6 学 科と,その 2 年の間に約半数が創立されている。

 また,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た外国大学日本校の MBA 7 学科の場合,1980 年代に 1 校,1990 年代に 2 校,2000 年代に 1 校,

2001 年に 1 校,2003 年に 1 校,2012 年に 1 校と,

その創立年度は様々である。

 これらの分析からは,ビジネススクールの創立 には,2000 年の「専門大学院」制度と 2003 年の

「専門職大学院」制度が制定されたことが,大き な影響を与えていることがわかる。例えば,上述 した MBA,MOT,会計を合計した 112 学科の 場合,2000 年の「専門大学院」制度以前(1990 年代まで)には,すでに 21 学科が創立されて

いたが,2003 年の「専門職大学院」制度の制定 以降は 83 学科と,7 割以上の学科が創立されて いる。特に,私立の会計が 1950 年度に 1 学科 と,2002 年に 1 学科が創立されたことを除くと,

MOT 14 学科と,私立 2 校以外の会計 18 学科は,

2003 年以降に創立されている。

 2003 年の「専門職大学院」制度の制定が大き な影響を与えているのは,「大学院」と「専門職 大学院」,私立と国立,MBA,MOT,会計のす べてに言えることである。ただし,外国大学日本 校にはこの傾向は当てはまらない。

 日本のビジネススクールの創立は,すでにピー クを過ぎたと言ってよい。近年数年間の創立状況 を見てみると,2011 年の創立はなく,2012 年に は私立と外国大学日本校が各 1 学科創立されただ けである。

3. ビジネススクールの学校数と種類

3.1. 学 校 数

 日本にはどのくらいのビジネススクールが あるか,同じデータ(日経 HR 編,2009,2010,

2012)から考察してみよう。

 日経 HR 編が行った調査に回答があった MBA に関しては,81 大学 98 学科が存在する。そのう ちわけは,国公立が 15 大学で 19 学科,私立が 60 大学で 72 学科,外国大学日本校が 6 大学で 7 学科である。

 同じく,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た MOT に関しては,14 大学 14 学科である。そ のうちわけは,国公立が 8 学科,私立が 6 学科,

そして外国大学日本校に MOT はない。

 続いて,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た会計に関しては,19 大学 20 学科である。その うちわけは,国公立が 3 大学 3 学科,私立が 16 大学 17 学科,そして外国大学日本校に会計はな い。

  上 述 し た MBA,MOT, 会 計 を 合 計 す る と,

114 大学 132 学科になる。MBA と MOT だけでは,

95 大学 112 学科である。そして,MOT と MBA を合計した専門職大学院数は,31 大学(33 学科)

(6)

存在する3)

3.2. 種   類

 日本で MBA 学位を取得する方法には,大別し て,①日本の大学大学院(専門職大学院,大学院,

株式会社大学院),②外国大学日本校(海外大学 日本校),③オンライン教育(ウェブを通して授 業を受ける方式)がある。株式会社大学院には,

グロービス経営大学大学院とビジネス・ブレーク スルー大学大学院などがある。両者とも専門職大 学院の認可を受けている。

 外国大学日本校とは,アメリカやヨーロッパの ビジネススクールが日本に開設したプログラムの ことである。1982 年にアメリカに本部を持つテ ンプル大学が日本キャンパスを設置したのが最初 で,その後,カナダのマギル大学(2001 年),ボ ンド大学(2001 年),イギリスのウェールズ大学

(2002 年)が開講した。ウェールズ大学は日本語 のプログラムであるが,その他の大学はすべて英 語で講師も外国人である。

 オンライン教育には,日本事務局があるものと ないものがある。日本事務局があるものには,イ ギリスのオープン・ユニバーシティー,オースト ラリアのボンド大学,アメリカのマサチューセッ ツ大学ローウェルなどがある。日本事務局では,

日本語での大学とのやり取りや授業支援などを受 けることができる。ボンド大学では,オンライン と海外ワークショップにより英語と日本語の半々 の授業を受けられる。日本事務局がないものに関 しては,海外の MBA コースに直接入学すること になる。

 なお,アメリカではそのビジネススクールが AACSB(The Association to Advance Collegiate  Schools of Business)の認証を受けているかどう かが重要であるとされている。AACSB は 1916 年に創立され,世界 30 カ国以上,500 以上の教 育機関をメンバーとし,世界各国の MBA 教育機 関を独自に評価し認定している。日本では,慶應 義塾大学ビジネススクールと名古屋商科大学大学 院ビジネススクールの 2 校が認定されている。

 アメリカの認証機関である AACSB に対抗し

て,日本の専門職大学院(MBA)の質の認定機 関である ABEST 21(The Alliance on Business  Education and Scholarship or Tomorrow, a 21st  century organization)が 2008 年度に発足した。

しかし日本の場合,基本的にビジネススクールの 質の維持は大学ごとにまかされている。

4. ビジネススクールの入試倍率 と開講日

4.1. 入 試 倍 率

 2012 年度の入試倍率(実質倍率4))に関して,

同じデータ(日経 HR 編,2009,2010,2012)か ら考察してみよう。

 日経 HR 編が行った調査に回答があった中で,

入試倍率がわからない外国大学日本校を除いた MBA について,入試倍率がわかっているのは 49 学科である。そのうち,1 倍が 6 学科,1.1 倍が 9学科,1.2 倍が 7 学科,1.3 倍が 5 学科,1.4 倍 が 3 学 科,1.5 倍 が 2 学 科,1.7 倍 が 1 学 科,1.8 倍が 3 学科,1.9 倍が 4 学科,2.0 倍が 2 学科,2.1 倍が 1 学科,2.2 倍が 2 学科,2.6 倍が 1 学科,2.9 倍が 1 学科,3.5 倍が 1 学科,4.0 倍が 1 学科である。

 なお,日経 HR 編が計算した 61 学科の入学定 員数の平均は 47.7 人で,平均入試倍率は 1.5 倍で ある。

 日経 HR 編が行った調査に回答があった MOT の 14 学科の場合,入試倍率がわかっているのは 11 学科である。そのうち,1 倍が 3 学科,1.1 倍 が 4 学 科,1.2 倍 が 1 学 科,1.4 倍 が 1 学 科,1.6 倍が1学科,1.7 倍が 1 学科である。

 なお,日経 HR 編が計算した 14 学科の入学定 員数の平均は 32.6 人で,平均の入試倍率は 1.2 倍 である。

 日経 HR 編が行った調査に回答があった会計の 19 学科の場合,入試倍率がわかっているのは 17 学科である。そのうち,1 倍が 1 学科,1.1 倍が 5 学科,1.2 倍が 2 学科,1.3 倍が 1 学科,1.4 倍が 3 学 科,1.5 倍 が 2 学 科,1.8 倍 が 1 学 科,2.2 倍 が 1 学科,2.5 倍が 1 学科である。

 なお,日経 HR 編が計算した 18 学科の入学定

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『和光経済』第 47 巻第 1 号 6

員数の平均は 58.6 人で,入試倍率は 1.4 倍である。

 MBA と MOT の合計に関しても,同じデータ

(日経 HR 編,2009,2010,2012)から考察して みよう。MBA と MOT の場合,日経 HR 編が行っ た調査に回答があった 2009 年度の 51 学科の入試 倍率の平均は 1.5 倍,2010 年度の 67 学科の入試 倍率の平均は 1.5 倍,2012 年度の 61 学科の入試 倍率の平均は 1.5 倍である。

 MBAとMOTで国立の場合,日経HR編が行っ た調査に回答があった 2009 年度の 16 学科の入試 倍率の平均は 1.9 倍,2010 年度の 22 学科の入試 倍率の平均は 1.9 倍,2012 年度の 21 学科の入試 倍率の平均は 1.8 倍である。

 また,日経 HR 編が行った調査に回答があった MBA と MOT で私立の場合,2009 年度の 32 学 科の入試倍率の平均は 1.3 倍,2010 年度の 45 学 科の入試倍率の平均は 1.3 倍,2012 年度の 40 学 科の入試倍率の平均は 1.3 倍である。

 さらに,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た MBA と MOT で専門職大学院の場合,2009 年度の 24 学科の入試倍率の平均は 1.6 倍,2010 年度の 27 学科の入試倍率の平均は 1.3 倍,2012 年度の 26 学科の入試倍率の平均は 1.4 倍である。

 入試倍率に関しては,MBA と MOT の場合,

2009 年度から 2012 年度までは,一定の入試倍率

(1.5 倍程度)を保持しているが,2012 年度の場 合,国立の方が 1.8 倍と,私立の 1.3 倍よりも高 い。国立の倍率は専門職大学院の倍率よりも高く,

創立数が多い私立の学科においては,定員すれす れの状態が続いている。

  し か し,MOT や 会 計 よ り も 開 講 数 が 多 い MBA は,日経 HR 編が行った調査に回答があっ た 98 学科が存在しているが,入試倍率を公表し ているのは 49 学科(2012 年度)だけである。約 半数の MBA しか入試倍率が公表されていない。

しかも,公表されているのはほとんどが 1 倍以上 の倍率のビジネススクールである5)

4.2. 開 講 日

 2012 年度の授業の開講日に関しても,同じ データ(日経 HR 編,2009,2010,2012)から考

察してみよう。

 外国大学日本校を除いた,MBA,MOT,会 計の 106 学科のうち,平日夜間,土曜が 38 学科,

平日昼間,平日夜間,土曜が 25 学科,土曜,日 曜,平日夜間が 14 学科,平日昼間が 16 学科,平 日昼間,平日夜間,土曜,日曜が 5 学科,土曜,

日曜が 2 学科,平日夜間が 3 学科,平日昼間,土 曜が 1 学科,平日夜間,平日昼間が 1 学科であっ た。また,あるビジネススクールは,平日昼間と 土曜だけ行う学科に分かれている。

 以上のように,多様な形態のビジネススクール が存在していることがわかる。平日の昼間だけ に開講するという 16 学科は,完全にフルタイム のビジネススクールである。平日の昼間の開講を 含んでいるビジネススクールは,合計で 48 学科 存在する。少なくとも約半数のビジネススクール は昼間にも授業を行っている。日本のビジネスス クールには,フルタイムとパートタイムの両方を 開講しているところが少なくないからだろう。

 しかし,残り半数のビジネススクールは,土日 や夜間に開講しているパートタイムである。完全 なフルタイムだけのビジネススクールよりも,よ り柔軟な形態であるパートタイムのビジネスス クールの方が主流である。

5. ビジネススクールの学生の種類 と留学生

5.1. 学生の種類

 以下では,ビジネススクールにおける,①社会 人学生の内容,②学生の平均年齢,③女性の比率,

④語学試験,⑤専任教員に占める実務経験者,⑥ 学生の学費,に関して考察してみよう。

 2010 年度のビジネススクール全体に対する調 査では,学生の「実務経験が必要」が 64.6%,「必 要なし」が 35.4%である。実務経験は1年以上が 5.3%,2 年以上が 23.9%,3 年以上が 31.9%,5 年以上が 3.5%である(日経 HR 編,2010)。そ して,2009 年度の専門職大学院(MBA・MOT)

に対する調査では,学部新卒(8.3%),社会人

(72.8%),留学生(11.5%),60 歳以上(0.9%)と,

(8)

社会人が圧倒的に多い(文部科学省 HP)。

 これらの社会人は,なにも会社で働くビジネス パーソンばかりではない。医療関係者,税理士 や会計士,学校職員や公務員などが,ビジネスス クールで初めて経営学を学ぶケースは少なくな い。企業で一般に働くビジネスパーソン以外の社 会人がビジネススクールに入学する理由としては,

①経営学を学ぶ初心者向きの講座として適切,② 社会人が学びやすいスケジュール管理(夜間と 土曜日に開校など),③社会の認知度の高い学位

(MBA)を取得,などが考えられる。

 2012 年 度 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル 全 体(MBA,

MOT,会計)に対する調査では,有効回答数 72 学科における学生の平均年齢は 33.0 歳であり,

有効回答数 71 学科の女性の占める比率は平均で 26.1%であった(日経 HR 編,2011)。学部の新 卒者を入学の対象としているところは別として,

実務経験年数を長く要求しているビジネススクー ルほど,学生の年齢が上がるのは当然だろう。

 さらに,語学試験を必要としないところが 79.7%,必要とするのが 20.3%と,語学力を必要 としないところが多い(日経 HR 編,2010)。語 学が苦手な人にも入学しやすいという利点が大き い。

 社会人が多いという学生の特徴や,専門職大学 院の認可のための対応として,専任教員に占める 実務経験者(5 年以上の実務経験者)の比率に関 しては,全 65 学科の平均は 54.8%と高い。その うち,上位 5 位のビジネススクールでは 100%が 実務経験者であり,6 位から 10 位までも 90%以 上が実務経験者である(日経 HR 編,2012)。

 学生の学費に関しては,国公立の場合は初年度 の納入金が 80 万円程度,私立の 1 年制の場合は 100 万から 300 万円程度までと幅が大きい。

5.2. 留 学 生

 以下では,①外国人学生の比率,②英語だけで 授業を行う学科,③専任教員に占める外国人比率,

に関して考察してみよう。

 ビジネススクール全体の調査では,回答のあっ た 71 学科の外国人学生の比率は 29.1% である(日

経 HR 編,2010)。2009 年度の専門職大学院に対 する調査では,MBA と MOT における留学生の 比率は 11.5%である。専門職大学院の場合,そ のほとんどが中国人であるという(文部科学省 HP)。

 英語だけで授業を行っているのは,日経 HR 編が行った調査に回答があった 79 学科(MBA,

MOT,会計)のうち,10 学科程度である。英語 だけの MBA では,留学生がほとんどだろう。

 なお,日経 HR 編が計算した 71 学科(MBA,

MOT,会計)における専任教員に占める外国人 比率は 13.9% である(日経 HR 編,2012)。この 比率には,外国大学日本校や英語だけで教える MBA における外国人教員の比率が高いことが関 係している。

6. 終 わ り に

 本稿では,以下のような 5 つの発見があった。

 第 1 に,日本では従来,多くの大学院が事実上,

専任の教員も独立の建物も独自の予算も持たず,

学部の付属施設として運営されてきたが,2000 年の「専門大学院」制度,続いて 2003 年の「専 門職大学院」制度が制定されたことは,日本のビ ジネススクールの創立に大きく貢献した。しかし,

日本のビジネススクールでは「専門職」の概念も 曖昧なまま,「大学院」と「専門職大学院」が混 在しているなど,多くの課題が表面化している。

 第2に,ビジネススクールは2003年前後をピー クとして,現在は学校数,受験者数,卒業生数は 増えていない。すでにピークアウトしたきらいが ある。

 第 3 に,日本の MBA,MOT,会計の数を合 計すると,114 大学で 132 学科存在する。MBA と MOT だけでは,95 大学 112 学科である。ビ ジネススクールは少なくとも,100 校程度は存在 すると言える。

  第 4 に,MOT や 会 計 よ り も 開 講 数 が 多 い MBA は,少なくとも 98 学科存在しているが,

入試倍率を公表しているのは 49 学科(2012 年度)

だけである。それも公表しているのは,定員割れ

(9)

『和光経済』第 47 巻第 1 号 8

ではないビジネススクールがほとんどである。約 半数の MBA しか入試倍率が公表されていない。

入試倍率の平均は 1.5 倍程度であるが,倍率を公 表していないビジネススクールを考慮すると,半 数近くは定員割れの可能性がある。

 第 5 に,授業の開講日に関しては,多様な形 態のビジネススクールが存在しているが,平日夜 間・週末にクラスが開講されるパートタイムが主 流である。

 これら多様なビジネススクールの形態は,企業 や学生に合わせて,長い歴史を持つ一般の大学 院から派生したものである。しかし,ビジネスス クールの創立はすでにピークアウトしたきらいが ある。100 校程度のビジネススクールの定員倍率 の平均は 1.5 倍程度であるが,倍率を公表してい ないビジネススクールは,今後どうなっていくの か。継続して存在していけるのか。それとも淘汰 されるのか。これらの疑問が残る。さらなる経過 の観察が必要だろう。

 なお,これらのデータ分析からは,ビジネス スクールの全体的な傾向を大まかに理解するこ とはできたが,実際のビジネススクール間の格差 や,個々のビジネススクールが多様化している現 状に関しては,何もわからない。必要なのは,各 ビジネススクールに対する詳細な実態調査である。

個々のビジネススクールの現状を知ることによっ て,本稿のデータから得た情報も含めて,日本の ビジネススクールの実像が見えてくるだろう。

カで 752 人,ドイツで 674 人が参加している(小池・猪木,

2003,p. 43)。

3) これらのデータでは見落としているビジネススクールもあ るため,大学と学科の数は,もう少し多くなるだろう。

4) 実質倍率とは,合格者数 / 応募者数のことである。

5) 残り半数のビジネススクールの入試倍率が,この全体の入 試倍率を大きく左右するだろう。

【参考文献】

天野郁夫(2004)「専門職業教育と大学院政策」大学財務経営研 究,第 1 号,pp. 3‑49

金雅美・吉原英樹(2011)「ビジネススクールの虚像と実像」

Nanzan  University,  Center  for  Management  Studies,  Working Paper Series (No. 1103), pp. 1‑18

小池和夫・猪木武徳(2003)College Graduates in Japanese Industries 日本労働研究機構

日経 HR 編(2009)『日経キャリアマガジン特別編集 MBA,会計,

MOT パーフェクトブック 2010 年度版』日本経済新聞出版

日経 HR 編(2010)『日経キャリアマガジン特別編集 MBA,会計,

MOT パーフェクトブック 2011 年度版』日本経済新聞出版

日経 HR 編(2012)『社会人大学院ランキング 2013』日本経済 新聞出版社

山田正喜子(2008)『山田正喜子著作選集』日本経営史研究所 山田礼子(1998)『アメリカの専門職養成 プロフェッショナル・

スクール』玉川大学出版部

Yoshihara, H., Okabe, Y., Kim, A. (2011) “MBA and Japanese  Style  Management”,  Nanzan  University,  Center  for  Management Studies, Working Paper Series (No. 1104),  pp. 1‑17

Yoshihara,  H.,  Kim,  A. (2013) “Japanese  Business  Schools: 

Adaptation to Unfavorable Environment”, Association of  Japanese Business Studies (AJBS), The Annual Conference Proceedings, pp. 1‑16(CD‑ROM)

吉原英樹・金雅美「逆境のなかの日本ビジネスクール:米国ビ ジネススクールと比較して」2014 年 6 月 2 日国際ビジネス 研究学会第 37 回関西部会発表(配布レジュメ),2014 年 7 月 5 日第 7 回多国籍企業学会全国大会発表(http://www.

mne-jp.org/sub5.html:アクセス日 2014 年 6 月 15 日)

(2014 年 1 月 11 日 受稿

2014 年 6 月 14 日 受理

【注】

1) 本研究は,吉原英樹(神戸大学名誉教授)との共同研究の 一部である(研究成果の一部は,参考文献を参照されたい)。

2) この調査は管理職レベルにおける人事,営業,経営部門で 働く人々を対象としたもので,日本では 1,567 人,アメリ

参照

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