別紙様式1(修 士申請者用)
修 士 学 位 論 文
旅 行経験 が在 宅脳 卒 中片麻痺者 に 与 える心理 と行 動 の変化
(西暦)2018年7月5日 提 出
首都 大 学東 京 大 学 院
人 間健 康 科 学研 究 科 博 士 前 期 課 程 人 間健 康 科 学 専 攻 作 業 療 法 科 学 域 学 修番 号:16896605
氏 名:梁 原 優 希
(西 暦)2018年 度
別 紙 様 式3(修 士 申請 者 用)
博士前期課程 学位 論文要 旨
旅 行経験が在宅脳卒 中片麻痺者 に与 える心理 と行動 の変化
学位 の種類:修 士(作 業療法学) 首都大学東京大学院
人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻 作業療法科学域 学修番号16896605
氏 名:梁 原 優希
(指導教員名:大 嶋 伸雄 教授)
注:1ペ ー ジ あ た り1,000字 程 度(英 語 の 場 合300ワ ー ド程 度)で 、 本 様 式1〜2ペ ー ジ (A4版)程 度 とす る 。
1.は じめ に
様 々 な 喪 失 体 験 を した 脳 卒 中 片 麻 痺 者 は 自尊 感 情 と ボ デ ィ イ メー ジ に 変 化 が 生 じ,行 動 の 生 起 が 困 難 とな る,外 出 や 社 会 参 加 の な い 片 麻 痺 者 の 行 動 は 消 極 的 で 自信 低 下 に よ る諦 め が 生 じ,満 足 度 の 固 定 化 や 興 味 の 狭 小 化 な ど 悪 循 環 と な る こ とが 報 告 され て い る.一 方, 旅 行 は 一 般 的 に 自 己効 力感 を 高 め,自 己 実 現 の 機 会 に な る と い わ れ,片 麻 痺 者 に も効 果 が 期 待 され る が,脳 卒 中 片 麻 痺 者 に お け る 旅 行 経 験 が,心 理 と行 動 変 容 に 与 え る 影 響 を 分 析 した 研 究 報 告 は 少 な く,本 研 究 に て 質 的 研 究 法 を 用 い て 明 らか に す る こ と を 目的 と した.
皿.研 究 方 法
研 究 は 質 的 研 究 に よ り実 施 さ れ た.半 構 造 化 面 接 を 用 い た イ ン タ ビ ュー に よ りデ ー タ 収 集 を 行 い,KJ法 に 準 じた 分 析 を行 った.
デ イ ケ ア 利 用 中 の 脳 卒 中 片 麻 痺 者 男 性3名,女 性4名,回 数 は 一 人3回,時 間 は 約60 分 と した.分 析 はKJ法 の 研 修 に て 指 導 を 受 け た 研 究 協 力 者1名 の 指 導 の 下,計5名 と で 検 討 を 重 ね,確 実 性 の 確 保 に 努 め た.
皿.結 果
KJ法 に 準 じて デ ー タ を統 合 し,10個 の 概 念 が 抽 出 され た.旅 行 前 は 【障 害 へ の 負 の 感 情 と 旅 行 環 境 へ の 過 重 配 慮 】 や 【介 助 者 に 対 す る ジ レン マ 】 が 旅 行 に 対 す る ネ ガ テ ィ ブ な 想 い に な って い た.し か し,そ れ に 反 し 【旅 行 の 動 機 とな る 他 者 か らの 働 き か け と環 境 へ の 安 心 感 】 を得 て ,旅 行 に行 くき っか け とな って い た.旅 行 中は 【家族 との 絆 を再 び認 識 出 来 た 喜 び 】 とな り,そ れ らに 支 え られ 【成 功 体 験 か ら育 ま れ る 自信 と心 の ゆ と り】 を 得 た.ま た 【旅 行 で 向 き合 う 自分 ら し さ 】 を 感 じ,【 心 揺 さぶ る体 験 か ら 育 まれ る感 受 性
と好 奇 心 】が 育 まれ た.旅 行 後 は 【旅 行 で 気 づ い た 自 分 の 現 実 の 課 題 と 目標 】 を 得 て,【 自 分 の 旅 行 経 験 を他 者 に 伝 え た い 承 認 欲 求 】 が 生 じた.ま た,【 死 生 観 へ の 気 づ き 】 も生 じ
て い た.
Iv考 察
各 段 階 に お け る 変 化 の 特 徴 に つ い て 考 察 す る.
1.旅 行 前
ネ ガ テ ィ ブ な 感 情 が 抽 出 さ れ た.こ れ は 日 常 の 活 動 範 囲 が 少 な い こ とや 介 助 を 受 け る経 験 が 多 い こ とか ら,片 麻 痺 者 自身 が ど の 程 度 の 行 動 が 可 能 か を 正 確 に 把 握 出 来 ず 生 じた 不 安 と考 え る.大 嶋 は 障 害 を 持 ち 生 活 す る こ と は,長 期 間 で 自 己効 力 感 が 極 度 に ダ メ ー ジ を 受 け る た め の 条 件 が 揃 っ て い る.と 述 べ,自 己 を肯 定 的 に 捉 え る た め の 気 づ き が 日常 で は 少 な い こ とが 考 え られ る.人 の 行 動 の 生 起 は 自 己 効 力 感 に よ り左 右 され る こ とか ら家 族 や 専 門 家 の 存 在 が 安 心 感 と して 生 理 的 冗 情 緒 体 験 と言 語 的 説 得 と い う 自己 効 力 感 を高 め る 要
2.旅 行 中
旅 行 だ か ら こそ 片 麻 痺 者 は 普 段 の 生 活 で は 体 験 で き な い 困 難 に 挑 戦 す る こ と が 出 来 る.
そ して 成 功 ・失 敗 体 験 を 経 て 現 実 課 題 を 知 り,自 己 の 身 体 能 力 へ の 気 づ き を 得 る.Bruce らは 自分 の 身 体 的 能 力 を ポ ジ テ ィ ブ に 評 価 す る 人 々 は,高 い 自尊 感 情 を 持 つ 傾 向 に あ る と 述 べ,旅 行 で 自分 の 能 力 を 適 切 に 評 価 す る こ と で 自 尊 感 情 を 高 め た と考 え る.
ま た,健 常 時 と異 な り,現 在 は 旅 行 に 必 ず 家 族 の 協 力 を 要 した.こ の 点 に 自 分 が 障 害 に な っ た 意 味 を 見 出 し,家 族 が 集 ま る役 に 立 て た と い う感 覚 を 生 ん だ.Baumeisterに よ る と 自 尊 感 情 とは,自 分 を価 値 あ る 存 在 と して 捉 え る感 覚 で あ る.家 族 との 旅 行 で 障 害 を肯 定 的 に捉 え られ た こ とが,自 尊 感 情 を 高 め た と考 え られ る.
そ して,片 麻 痺 者 は 活 動 範 囲 の 低 下 に よ り興 味 の 狭 小 化 が 生 じや す い.Hideら に よ る と物 事 へ の 興 味 は 出 来 事 の 変 化,真 新 しさ,神 秘 的 な体 験 をす る と き に 生 じる.情 動 や 興 味 が 刺 激 され て 新 た な 活 動 へ の 意 欲 と な る 点 に お い て も旅 行 は 効 果 的 で あ る と 考 え る.
Csikszentmihalyiに よ る と フ ロー と は 活 動 時 に 力 強 い 注 意 の 感 情 状 態 に 没 頭 して い る 心 的 状 態 を さ し,旅 行 に 夢 中 に な る こ と は この 状 態 と近 く,障 害 者 で あ る 意 識 か ら一 時 解 放
され 自分 ら し さ と 向 き 合 う機 会 に な る 可 能 性 が あ る.
3.旅 行 後
Banduraは 自 己 効 力 感 の 源 泉 と して,達 成 体 験 が 最 も 強 力 と して い る.障 害 を 抱 え て 旅 行 に 挑 戦 す る 事 は 明 確 に達 成 感 を 味 わ え,次 の 目標 を 持 ち 行 動 を起 こ す 上 で 必 要 な 源 泉 と な っ た と考 え る.
旅 行 経 験 を 他 者 に伝 え た い 欲 求 が 生 じた.Maslowに よ る と人 間 に は 自 我 欲 求 が あ る.後 遺 症 を持 ち 自尊 心 が 低 下 して い る 片 麻 痺 者 は そ れ ら を 満 た す 場 面 が 少 な い と 思 わ れ る.旅 行 で の 成 功 体 験 を 語 る こ と で さ らに 承 認 欲 求 や 自尊 心 を 満 た す 可 能 性 が あ る.
さ らに,死 生 観 に も影 響 を 与 え た.病 気 に な り生 き 方 の 変 更 を 余 儀 な く され た か ら こ そ 得 られ た 概 念 と考 え る.Rogersに よれ ば 自 己 実 現 欲 求 と は 継 続 的 な 自 己 の 啓 発 な ど成 長 を 求 め る欲 求 で あ る.身 体 が 動 く間 に 旅 行 に 行 き,新 た な 出 会 いや 知 見 を増 や した い な ど の 想 い は こ の欲 求 の 発 現 と考 え られ る.
片 麻 痺 者 に お い て,旅 行 と は 単 純 な 内 的 構 造 に よ る活 動 で は な く,複 数 の 気 づ き や 行 動 変 容 な ど を 生 じさせ る複 合 的 な 活 動 の 総 称 と示 され た.
要 旨
旅 行 経 験 が 在 宅 脳 卒 中 片 麻 痺 者 に も た らす 心 理 的 要 因 と行 動 の 変 化 を 明 らか に す る こ と を 目 的 に 男 性3名,女 性4名 の 片 麻 痺 者 を 対 象 と した イ ン タ ビ ュ ー を 実 施 した.半 構 造 化 面 接 に よ る イ ン タ ビ ュー 内 容 をKJ法 に 準 じて デ ー タ 化 し,最 終 的 に10個 の 統 合 概 念 が 抽 出 され た.旅 行 前 に は 「障 害 へ の 負 の 感 情 と旅 行 環 境 へ の 過 重 配 慮 」 「介 助 者 に 対 す る ジ レ ン マ 」 「旅 行 の 動 機 と な る 他 者 か らの 働 き か け と環 境 へ の 安 心 感 」 が,旅 行 中 で は 「家 族 と の 絆 を 再 び 認 識 出 来 た 喜 び 」「成 功 体 験 か ら育 まれ る 自信 と心 の ゆ と り」「旅 行 で 向 き 合 う 自 分 ら しさ 」 「心 揺 さぶ る体 験 か ら育 まれ る 感 受 性 と好 奇 心 」 が,旅 行 後 は 「死 生 観 へ の 気 づ き 」「旅 行 で 気 づ い た 自 分 の 現 実 課 題 と 目標 」「自分 の 旅 行 経 験 を 他 者 に 伝 え た い 承 認 欲 求 」 が 抽 出 され た.片 麻 痺 者 に お い て,旅 行 と は 単 純 な 内 的 構 造 に よ る活 動 で は な く,複 数 の 気
づ き や 行 動 変 容 な ど を 生 じさ せ る 複 合 的 な 活 動 で あ る こ とが 示 され た.
キ ー ワ ー ド:旅 行,脳 卒 中,片 麻 痺 者,心 理,行 動 変 容
1.は じめ に
厚 生 労 働 省 が 提 唱 す る 「今 後 の 介 護 予 防 に お け る指 針 」で は,リ ハ ビ リテ ー シ ョ ン は 運 動 機 能 や 栄 養 状 態 と い っ た 心 身 機 能 の 改 善 だ け を 目 指 す も の だ け で は な く,日 常 生 活 の 活 動 を 高 め,家 庭 や 社 会 へ の 参 加 を 促 し,そ れ に よ って 一 人 ひ と りの 生 きが い や 自 己 実 現 の た め の 取 組 を 支 援 す る こ と で,QOLの 向 上 を 目 指 す もの で あ る,と 定 義 して い る1).要 介 護 状 態 に な っ て も,生 き が い ・役 割 を持 っ て 住 み 慣 れ た 地 域 で 生 活 で き る こ と を 目 指 し,「 自 己実 現 や 生 き が い の 重 要 性 」 を得 る こ と を 推 奨 して い る.
一 方 で ,対 象 者 の 日常生 活活 動 を高 め,社 会 参加 を 目指 した行動 を起 こ させ るため には, 個 人 の 自 己 効 力感 が 重 要 と な る.一 般 に 人 の 自 己 効 力 感 を高 め る た め に は,そ れ ぞ れ の 達 成 体 験 を積 む こ と が 最 も効 果 的2)で あ る と言 わ れ て い る.し か し,身 体 面,活 動 面,社 会 面 な ど で,様 々 な 喪 失 体 験 を も つ 脳 卒 中 片 麻 痺 者 で は,自 尊 感 情3)や ボ デ ィ イ メ ー ジ4)な ど に 変 化 が 生 じ,自 ら主 体 的 な 行 動 を 起 こす こ と が 困 難 で あ る と い わ れ て い る5).主 体 的 な外 出 機 会 や 社 会 参 加 の 少 な い 脳 卒 中 者 の 生 活 に お い て は 活 動 に 対 して 消 極 的 で あ り,特 に 自 己 効 力 感 の 低 下 に よ る 諦 め が 慢 性 的 に 生 じ,満 足 度 の 固 定 化 や 興 味 の 狭 小 化 な ど悪 循 環 と な る こ と6)が 報 告 され て い る.
一 方 で ,外 出機 会 の最 大の イ ベ ン ト,と もい える もの に旅行 が あ る.観 光研 究 では,一 般 的 に 人 は 旅 行 を す る こ とで 自 己 効 力 感 が 高 ま り,怒 りや 疲 労 感,緊 張 感 が 解 け,活 気 が わ く 7〜9)こと な どが 期 待 され て い る .さ らに高 齢者 に とっての 旅行 とは,単 に非 日常 を楽 しむ と い う意 味 以 上 に 重 要 な 位 置 づ け に あ る.人 生 に お け る意 味 あ る 作 業 と深 く関 連 し,旅 行 を 通 して 過 去 の 経 験,人 生 を 回 想 で き る 効 果 が 生 じる と言 わ れ て い る10).ま た,作 業 療 法 の 事 例 報 告 で は,脳 卒 中 片 麻 痺 者 が 旅 行 の 経 験 を通 し,自 分 自身 の 価 値 と 配 偶 者 の 支 え を再 認 識 す る こ とが で き,障 害 と年 齢 を 踏 ま え た 今 の 自 分 を 受 け 入 れ る き っ か け と な っ た1り.と い う報 告 もみ られ た.
以 上 か ら,脳 卒 中 片 麻 痺 者 に お け る 旅 行 と は,自 己 効 力 感 を 高 め た り,自 分 自身 の 価 値 感 に 気 づ い た り,あ る い は 同 伴 した 家 族 との 絆 を意 識 した りす る事 が 期 待 され る 活 動 で あ る.
過 去 の 人 生 を 回 想 し,自 己 実 現 の 機 会 を 体 験 す る こ とで,生 き が い に も繋 が る 活 動 と な る 事 か ら,厚 生 労 働 省 の リハ ビ リテ ー シ ョン の 理 念 に 合 致 す る が,文 献 検 索 の 結 果,こ れ ま で に 脳 卒 中 片 麻 痺 者 に お け る旅 行 経 験 が,心 理 と行 動 変 容 に 与 え る 影 響 を 分 析 した 研 究 報 告 は 少 な い.
本 研 究 で は そ の 点 に着 目 し,対 象 者 の 語 りか ら旅 行 経 験 が 脳 卒 中 片 麻 痺 者 に 与 え る 心 理 的 影 響 と行 動 の 変 化 に つ い て,質 的 研 究 法 を 用 い て 明 らか に す る こ と を 目 的 と した.
皿.研 究 方 法 1.対 象 者
対 象 者 は 千 葉 県 内 の 通 所 リハ ビ リテ ー シ ョ ン施 設 に 通 う脳 卒 中 片 麻 痺 者 で,4年 以 上 の 在 宅 生 活 を 経 験 し,FrenchayActivitiesIndexの 旅 行 項 目が1点 以 上 の 者 を 対 象 と した.さ
ら に 除 外 基 準 と して,著 明 な 認 知 機 能 の 低 下 や 失 語 症 を 認 め る者(MMSE21点 以 下),重 度 障 害 で 医 師 に よ り外 出 等 を 制 限 さ れ て い る 者,経 済 的 に 貧 困 状 況 に あ る 者,そ の 他 イ ンタ ビ ュ ー に 回 答 困 難 な 者,と した.以 上 の 条 件 か ら,最 終 的 に 研 究 協 力 の 同 意 を得 られ た7名 を 対 象 と した.
2.本 研 究 に お け る 用 語 の 定 義 1)旅 行
宿 泊 ・日帰 りな ど 滞 在 時 間 の 違 い は 問 わ ず,日 常 の 生 活 圏 を 離 れ,普 段 と異 な る環 境 に 身 を 置 く こ と で 対 象 者 本 人 が 気 分 転 換,達 成 感,幸 福 感 な ど い わ ゆ る転 地 効 果 を 得 た と 主 観 的 に 感 じる こ とが 出 来 る活 動.
3.研 究 デ ザ イ ン
研 究 は 質 的 研 究 に よ り実 施 され た 、 半 構 造 化 面 接 を 用 い た イ ン タ ビ ュー に よ りデ ー タ 収 集 を行 い,KJ法12〜14)に 準 じた 分 析 を 行 った.KJ法 は 混 沌 と した 素 材 か ら,新 し い秩 序 を発 見 した り,築 き上 げ る 際 に使 用 され る.デ ー タ 収 集 に お い て は 合 計3回 面 接 を行 い,得
られ た デ ー タ の 妥 当 性 の 向 上 に努 め た.分 析 はKJ法 の 研 修15)に て 指 導 を 受 け た 研 究 協 力 者1名 と共 同 で 行 った.研 究 者 とKJ法 の 専 門 家,お よ び 他 の 質 的 研 究 の 経 験 が あ る,研 究 協 力 者3名,計5名 で 検 討 を 重 ね,信 頼 性 と妥 当性 の 確 保 に 努 め た.
4.研 究 の 手1頂
(1)デ ー タ 収 集:面 接 は 個 室 に て1対1で 行 い,面 接 回 数 は 対 象 者 一 名 に つ き3回,面 接 時 間 は 約40〜60分,半 構 造 化 面 接 に て 実 施 し た.イ ン タ ビ ュ ー ガ イ ドは 個 人 の 心 理 的 特 徴 に 対 応 し 自 然 に 行 動 変 容 を 捉 え 理 解 で き る 理 論 「i6〜19)であ る(TranstheoreticalModel)
を 参 考 に 作 成 し た.(表1)イ ン タ ビ ュ ー は ガ イ ドの 枠 に と ら わ れ な い 様 に 無 知 の 姿 勢 を 心 が け,な る べ く 自 由 な 語 り を 尊 重20)し て 行 っ た.本 質 に 迫 れ る よ う な 語 り を 引 き 出 す 為, 3回 に わ た っ て 面 接 を 行 っ た.
2
表1イ ン タ ピ ュー ガ イ ド
〈病 前 の旅 行 経験 に関 す る質 問 〉
・最 も楽 しか った経 験
・最 も大 変だ った経 験
・最 も挑戦 的 だ った経験
・最 も重要 だ った経 験
・旅 行 に 関 して 重要 な 人物
・病 気 に な る前 の旅 行 の概 念
〈病後 の旅 行 経験 に 関す る質 問 〉
・退院 した ばか りの 頃の 生 活
・旅行 に行 った き っか け
・旅行 に行 く準備
・楽 しか った経験
・大変 だ った経験
・挑戦 的 だ った 経験
・重要 だ った経験
・旅行 に関す る重要 な人 物
・旅行 後 の気 持 ちの 変化
・旅行 後 の生 活 の変 化
・病前 と病後 の 旅行 の概 念 の 比較
2)逐 語 録 の 作 成=ICレ コー ダー に録 音 され た 音 声 デ ー タ を 記 述 デ ー タ に 変 換 した.
3)デ ー タ の 切 片 化=記 述 デ ー タ の う ち,旅 行 に 関 す る感 情 が 含 ま れ る 文 脈 を 一 単 位 と して ラ ベ ル 化 した.
4)多 段 ピ ック ア ッ プ=全 て の デ ー タ を 活 用 す る た め に 良 質 の ラ ベ ル を 拾 い あ げ る 手 法 で あ る.多 量 の ラ ベ ル の 全 体 感 に 留 意 しな が ら,段 階 的 に ピ ッ ク ア ッ プ を 重 ね,デ ー タ 全 体 の 代 表 と な る ラ ベ ル を 採 用 した.
5)グ ル ー プ 編 成:狭 義 のKJ法 に 基 づ き グ ル ー プ編 成 を行 い,内 容 を 表 す 一 文 を 表 札 と し て 名 付 け た.以 降 この 作 業 を 繰 り返 し,最 終 的 に 統 合 され た グ ル ー プが10束 以 下 に な り次 第 終 了 と した.
6)図 解 化:最 終 的 に統 合 され た 表 札 を 端 的 に 表 現 す る シ ン ボ ル マ ー ク を 名 付 け た.そ れ ら を 用 い て 論 理 的 に 安 定 す る空 間 配 置 を 行 った.
7)文 章 化=完 成 した 図 解 を 吟 味 し,具 体 的 な 例 を 元 ラ ベ ル 及 び 各 段 階 で 名 付 け た 表 札 を 引 用 しな が ら 明 可 能 な 文 章 を作 成 した.
5調 査 期 間
調 査 は2017年11月 か ら2018年4月 に か け て 実 施 した.
6.倫 理 的 配 慮
本 研 究 は 平 成29年 度 首 都 大 学 東 京 荒 川 キ ャ ンパ ス 研 究 安 全 倫 理 委 員 会 の 承 認(承 認 番 号17017)お よ び 東 京 湾 岸 リハ ビ リテ ー シ ョ ン病 院 倫 理 審 査 委 員会 の 承 認(承 認 番 号1
85)を 得 て 実 施 した.研 究 の 途 中 に 負 担 を 感 じた 場 合 は い つ で も 中 断 が 可 能 で あ る こ と, 参 加 を 中 断 して も 不 利 益 が な い こ と,個 人 情 報 が 厳 重 に 守 られ る こ と を 口 頭 と 文 章 で 十 分
に 説 明 を 行 い,同 意 が 得 られ,研 究 同 意 書 に署 名 され た 者 を 研 究 対 象 者 と した.
皿.結 果
1.対 象 者 の 概 要
対 象 者 の 概 要 を 表1に 示 す.対 象 者7名 の 内訳 は 男 性3名,女 性4名 で あ り,年 齢 構 成 は 50歳 台 が 最 も 多 くを 占 め て い た.FIMは104〜121点,全 対 象 者 に 同 居 家 族 が 存 在
した.(表2)
表2 対 象 者 プ ロ フ ァ イ ル
診断名 障害名 発症 日 通所
開始日 性別 年齢 同居家族 S1AS→ 醒 Brs.
stage 表在覚 深部覚 畦■SE F隅 F州 FAl 旅 行
A 脳出血 左片麻痺 H24.6 H25.11 M 59 妻 2.1《/4,44 膨/E/V 中等度鈍麻 中等度鈍麻 30 117 25 2
B 脳出血 左片麻輝 H22.8 H23.3 F 59 夫 4.1C/4.4,3 w/童/w 中等度鈍麻 軽度鈍麿 29 121 32 1
C 脳出血 右片庶揮 H19.6 H20.2 F 70 夫 3,1q/44.3 V/1V/V 軽度鈍麻 軽度鈍麻 26 108 24 1
D 脳出血 右片麻揮 H23.4 H23.10 F 58 夫,娘 3,wa銭3 皿/皿加 中等度鈍麻 中等度鈍癖 25 104 10 1
罎脳幹梗塞 右片麻揮 H23.4 H23.8 M 66 養 4,2/4,4.3 V/W/W 軽度鈍庶 正常 30 114 24 1
F 脳出血 右片麻揮 H24.3 H24.9 M 66 妻 2.0/3.3,1 W/皿/V 正常 正常 30 120 26 2 G 脳出血 右片麻痺 H24.5 H24.10 F 51 夫,娘 1.W4,4」 五ノ1/π 璽度鈍麻 重度鈍麻 29 118 21 1
2.イ ン タ ビ ュ ー 結 果
面 接 で 得 られ た 記 述 デ ー タ か ら255枚 の ラ ベ ル を 作 成 した.多 段 ピ ッ ク ア ッ プ 技 法 を 用 い て,よ り強 く想 い が 反 映 され て い る87枚 の ラ ベ ル を採 用 した.多 段 ピ ッ ク ア ッ プ技 法 は3ラ ウ ン ド要 した.採 用 した こ の87枚 の 元 ラ ベ ル か ら狭 義 のKJ法 に 準 じて グ ル ー プ 編 成 を 行 い,各 段 階 で 表 札 を 付 け た.3段 階 目の 統 合 に て10グ ル ー プ と な り終 了 した.
(表3)
表3旅 行 経 験 が 在 宅 脳 卒 中 片 麻 痺 者 に 与 え る心 理 と行 動 の 変 化(n=7)
〈憂贅甕範 〉 〈蟹1豪"〉 〈1絶「ラベ ル 〉
【虞鈎鉢臓から禽家れる 麟艦とoの ゆとリコ 撫行の醜功体敬の謄積から得た磨燧は 愛噛的から槽摂的になる戴拘ちを青む
受け身証つた気緯ちが少しずつ麟向きになつた 自分 か らは 焦行 に は行 け ない け ど.錺 って くれれ ば ま た今 渡行 二 うか な とい う気袴 ち にな った か な 融的壊までの蟻酷な遵Φりを歩いたζとが禽憶に繋がる こん む身 体 な ら蒼 遜の 這で も箪 呼 ぶ け ど一切 月k球ず砂 麹澱 も 参い た,お か硬 で寝 た き りに な らなか った 段階を逡 って糠行で出楽ることが虞がる 遇院して生活して魯年趨分の9体 や勧きが分かって 「私はああいう駈に魏けるわ」って気づくようにな齢 惣 行 に行 ってみ た ら慧 外 と出 楽 て窃 伽;なr含 た 由懲 も隈 鮮 も分 か つて いて 戴初 は 行 け蓼 い と艦 っ たが,そ う じゃ なか っ たん だ な って思 え た 制鍛がある中で榮しむ為に気矯ちをポジ予イフに切リ穏える 障 が いが あ る申 で ど うす る,て い う綴に 考え 方 が変 わ った.行 動 あ りき か ら考 える 搬に 蜜 わっ た
【鍮行¢髄篠となる億癒からo 働きかけと翼 壌への安o感 】 人や瑚墳薦の蜜心感が整うことで撫将
を叢しむゆとりが生じる
麓轍でき蚤算門家の存往が焦の安心態をもたらす 」τ8のあ る人 に索 に頼 冶,緯 癬 やバ リア ツ リー の宿.斬 斡 謙 の トイ レに 逡 い鷹 な ど全 て短 っ てい て幌 頼 出楽 ゐ 規妹に合った竈綴の鍵禦が膏中を押す 家 嫉 が禽 分 の喚 き が分か って乗 て 「こん な勝 行 った 方 がい い ん じ ゃな い?」 って.ア ドバ イス くれ た 傘の身体の賦況に適 した癩漉純蹴の辮報がt簾⑳一歩を驚み墨させる ホ テ ルに バ リア ツ リール ー ム とい う もの があ る の綜 飼 らな か った
箪 購 も言 め て該 行 とい う イベ ン トを 楽 しむ マ ジ ック テ ー プの様 なの 鋤 を つけ て 盗鍵 紡止 な ど、侵判 な 爾晶 を探 す こ なが 薦 自い
【族行で気づ いた 麟身の 饗婁の擦 瓢と鵬撤コ 隷先で薩衝した謙題が臼々の鋼緯に意
瞭と圃撫を檸え益
撫総謝練に爲的を見出せないし目的が熟いと噸張れない 隷行 に8っ で気 づ いた,デ イケ アの 中 だ けで は肉 体 的な 撫 緯で しかな い.織 擁 も 織い が 緬挿 的に も 霞 く したい 慧先で霞繭した縁題の解決に敏り鞘む 隷行に行くと濠法忠にこういう澱題が毘来ないんだけどどう』た らいい?と か潮 く事が崖楽る
迷慈かけられないから自分である穫渡出渠る麟を選び毅協してしまう,それでもやりたいから次鐡に繋がる 1寒族 とo鐸 を磯び
灘臓畿築た書び】
衆族の箏助サが必隻だからこそ瞭譲の 絆が強くなゐ
鍔 気 を きっか けに 療 纏 みん な で旅 行 に行 く よ うにな う た 私 に と づては 獅 気に な った 箏は 喪 くない 箏だ け どあ る9瞭 で は羨 か った畢 な の かな と 思え る こと もあ る 癩 気に 喀 り皆 で 維行 に行 く楽 しみ が でき た幕 は象 族 に と って偉 鼠 か った.儀 簾な 璃 は憧 で繊 行 な ど行 かな か った 脚 人 では 謄 しい こと も象 譲 の箏 軌 け で可 能に な る
縞局六湛壌に行けたのは嫁が麗たから.甥燃じゃないと入れないから 1介勘 萄に射す るジレンマコ
違慮して1疇えない介納雪への不満やも どかしさがあ蚤
介 幼煮 へ の遼 慮が あ り.轟 う事 を 爵え ない も どか し さカ̀ある 主 人は 「鷺か あ つた ら どう す る、鍵 が 衡劉 見 る」 心配 して爵 うが,そ れ では 先 に進 讃 な1いと 思 って し嶺 う 病覧 麟 は 第鯖.軸 が禽 離 やoて 叢人 捻 粛分 の婁 だ け や うてい た のに 今眩 軌 の 醍盤 も や る.出 楽る のか な
1禽分の臓行縫験 を鮎轡に 伝 えたい激鶴徹窯】
大切鳶撫行の縫験 だから像存し.人に 伝 えて溝気を与えたい
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緯 寳 書に な っ て思 う纂 か も しれ ない,携 行場 に行 くと 霞分 が 麟輿 に空 を 飛べ 惹み たい で喬 鋤す る
【撒書への負ω馨鏡と 鍮行澗境へ¢過覚配 慮】
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ζの身体でも過ごしやすいかどうか捉選びに慎重になる 瓢 は 繁張 す る と身 体が 観 くな る.飛 呂に 入 る鋳が 悔 い.ま ずホ 予 ルに 行 く鱒 は識 呂 渥君ナは 中心 に遣 ぶ 購 麟 と 遷 う身 体で諏1テに いけ 魯 か不 糞が あ る 琢 子 がハ ワ イ で結 媛式 を攣 げ も事 に な る,こ の妖 溌 で 飛行 搬 に巣 れる か不 安 だ っ た
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幽曲になり面分らしくいられる
鰐気をしていない頃は人の視隷とか気に していた鮭分が沢山あった様な気がする
撫 行 は人 の 鰹餓 を 気に せ ずあ りの ま ま1で楽 しめ る.必 死 で 人の 事 構 って られ な い、こ うし て生 き 愚事 が私 ら しい
表 札 は 端 的 に表 現 す る概 念 を記 載.元 ラ ベ ル は代 表 的 な デ ー タ のみ 抜 粋 し,第2表 札 は 割 愛 した.
4
統 合 され た10グ ル ー プの 最 終 表 札 に は 端 的 に 表 現 す る シ ン ボ ル マ ー ク を 付 け 図 解 化 を 行 った.そ して グ ル ー プ 間 の 関 係 を構 造 化 し検 討 を行 っ た 結 果,旅 行 前,旅 行 中,旅 行 後 の
3つ の 各 段 階 別 で 成 り立 っ て い た.
(元 ラベ ル に は 「」,下 位 統 合 の 表 札 は 〈 〉,最 終 表 札 は 《 》,最 終 表 札 を 端 的 に表 現 す る シ ン ボ ル マ ー ク を 【】 で 表 す.)
旅 行 前 は 【障 害 へ の 負 の 感 情 と旅 行 環 境 へ の 過 重 配 慮 】や 【介 助 者 に 対 す る ジ レ ンマ 】が 旅 行 に 対 す る ネ ガ テ ィ ブ な 想 い に な っ て い た.し か し,そ れ に 反 し 【旅 行 の 動 機 と な る他 者 か らの 働 き か け と環 境 へ の 安 心 感 】を 得 て,旅 行 に 行 く き っか け とな っ て い た 、旅 行 中 は 【家 族 との 絆 を 再 び 認 識 出 来 た 喜 び 】 と な り,そ れ らに 支 え られ 【成 功 体 験 か ら育 ま れ る 自信 と 心 の ゆ と り】 を 得 て い た.ま た 【旅 行 で 向 き 合 う 自 分 ら しさ 】 が あ り,【 心 揺 さ ぶ る体 験 か ら育 ま れ る 感 受 性 と好 奇 心 】が 生 じて い た.旅 行 を終 え た 後 も 【旅 行 で 気 づ い た 自分 の 現 実 の 課 題 と 目標 】を 得 て,【 自 分 の 旅 行 経 験 を 他 者 に 伝 え た い承 認 欲 求 】が 生 じて い た.ま た,
【死 生 観 へ の 気 づ き】 も生 じて い た.(図1)以 下,最 終 統 合 グ ル ー プ の 内 容 を 各 段 階 の 表 札 や ラ ベ ル を 引 用 しな が ら記 述 す る.
障害 へ の負の感情 と 旅行 環境 への過重 配慮
旅行 の動機 となる 他者 か らの働 きか け
と環 境へ の安心 感
介 助者 に対 する ジ レンマ
匝
心揺 さぶ る体験 か ら 育 まれ る感 受性 と好奇心
旅 行 で向 き合 う 自分 らしさ
成功体 験か ら育 まれ る 自信 と心 のゆ と り
望
家族 との絆 を再 び 認識 出来 た喜び
亙
死 生観 への 気づ き
自分 の旅行 経験 を 他者 に伝 えた い
承 認欲 求
旅 行で 気づ いた 自身 の現実 の
課題 と目標
■ ■■ゆ:因 果 関 係 ・順 序
【関 係 線 の 凡 例 】
<■■■ゆ ・相互関 係 》■一 《:対 立関係 閏〜 ぞ 支 える 図1旅 行経験が在宅脳卒中片麻痺者に与える心理 と行動の変化の構造
1)【 障 害 へ の 負 の 感 情 と旅 行 環 境 へ の 過 重 配 慮 】
旅 行 に 行 く前 は 「私 は 緊 張 す る と 身 体 が 固 く な る.風 呂 に 入 る 時 が 怖 い 」 「この 状 況 で 飛 行 機 に 乗 れ る か 不 安 だ っ た 」 な ど く病 前 と違 う身 体 で あ る と い う不 安 な 気 持 ち は 宿 選 び を 慎 重 に さ せ る 〉想 いが あ っ た.ま た,あ る者 は 「玉 砂 利 の 所 は 手 す りな ん て 絶 対 つ け な いか ら怖 い.障 害 者 に は 別 に 来 て も らわ な くて も 構 わ な い よ と い う感 覚 」と差 別 を 感 じ る こ と も あ り,《 辛 い 体 験 を しな い で 済 む 様 に 環 境 を配 慮 す る 必 要 が あ る 》 とい う概 念 が 得 られ た.
2)【 介 助 者 に 対 す る ジ レン マ 】
旅 行 に 行 く前 は 「主 人 に(何 か あ った ら ど うす る,誰 が 面 倒 見 る と思 う)と 心 配 だ か ら言 っ て くれ る の だ け ど,そ れ じ ゃ先 に 進 ま な い な と思 っ て しま う 」 「今 ま で の 旅 行,私 が 全 部 や って い た か ら.主 人 は 自分 の 事 だ け や って い れ ば 良 か っ た.今 度 は 私 の 世 話 も主 人 が や る.
出 来 る の か な と 思 っ て 」 「主 人 と喧 嘩 しそ うで 不 安 」 な ど 《遠 慮 して 言 え な い 介 助 者 へ の 不 満 や も どか しさ が あ る 》 な ど の 想 い が 存 在 した.
3)【 旅 行 の 動 機 と な る 他 者 か らの 働 き か け と環 境 へ の 安 心 感 】
旅 行 に 行 く前 に は ネ ガ テ ィ ブ な 想 い も あ った が,「 自分 の 動 き を 理 解 す る家 族 が こん な 所 に 行 っ て み た ら?と ア ドバ イ ス を くれ た 」 な ど く 現 状 に 合 っ た 家 族 の 提 案 が 背 中 を 押 す 〉 こ と や,「JTBの あ る 人 に 常 に頼 む.障 害 者 の こ と,バ リア フ リー の 旅 館,新 幹 線 の トイ レ に 近 い席 な ど全 て 知 っ て い る か ら信 頼 して い る 」 な ど く 信 頼 で き る 専 門 家 の 存 在 が 旅 の 安 心 感 を も た らす 〉 こ とが 動 機 と な り 《 人 や 環 境 面 の 安 心 感 が 整 う こ とで 旅 行 を 楽 しむ ゆ と
りが 生 じる 》経 験 が 存 在 した.
4)【 成 功 体 験 か ら育 ま れ る 自 信 と心 の ゆ と り】
実 現 した 旅 行 で は 「最 初 は 行 け な い と思 っ た が そ う じ ゃ な か った 」と い うく 旅 行 に 行 っ て み た ら意 外 と 出 来 て 自信 に な っ た 〉経 験 や 「自分 か らは 旅 行 に は 行 け な い け ど,誘 っ て くれ れ ば ま た 今 度 行 こ うか な と い う気 持 ち に な った か な 」 と い う く 受 け 身 だ っ た 気 持 ち が 少 し ず つ 前 向 き に な っ た 〉経 験 が あ り,自 信 や 心 の ゆ と りが 育 まれ て い た.さ らに 旅 行 で の 成 功 体 験 が 蓄 積 され る こ と で 「自分 の 身体 や 動 き が 分 か っ て(私 は あ あ い う所 に 行 け る わ)っ て 気 づ くよ うに な る」 と く 段 階 を追 っ て 旅 行 で 出 来 る こ とが 広 が る 〉 経 験 が あ り,「 こ ん な 身 体 な ら普 通 の 道 で も 車 呼 ぶ け ど一 切 呼 ば ず 砂 利 道 も 歩 い た 」 な ど く 困 難 に 挑 み 乗 り越 え た 経 験 の 積 み 重 ね が 自 信 を 育 む 〉想 いが 生 じて い た.ま た 「障 が い が あ る 中 で ど うす る って い う風 に考 え方 が 変 わ っ た.行 動 あ り きか ら考 え る様 に 変 わ っ た 」と く 制 限 が あ る 中 で 楽 しむ 為 に 気 持 ち を ポ ジ テ ィ ブ に 切 り替 え る 〉 と い っ た 思 考 の 変 化 を もた ら して い た.
5)【 家 族 との 絆 を 再 び 認 識 出 来 た 喜 び 】
旅 行 に は 《 家 族 の 手 助 けが 必 要 だ か ら こそ 家 族 の 絆 が 強 く な る 》要 素 が 存 在 した.「 結 局 大 浴 場 に 行 け た の は 妹 が 居 た か ら.同 性 じゃ な い と 入 れ な い か ら」 「重 要 な 人 物 は や っ ぱ り 妻.同 一 行 動 しか と れ な いの で 荷 物 とか も 持 っ て も ら う」な ど<一 人 で は 難 しい こ と も 家 族 の 手 助 け で 可 能 に な る 〉経 験 が 存 在 した.ま た,「 私 に と っ て は 病 気 に な った 事 は 良 くな い 事 だ け ど あ る 意 味 で は 良 か っ た 事 な の か な と思 え る こ と も あ る」 「ど こか へ 行 く とな る と私 を 中 心 に して 色 々 考 え て くれ る け ど,皆 で 旅 行 に 行 く楽 しみ が で き た 事 は 家 族 に と っ て も 良 か った と思 う.元 々 健 康 だ った ら家 族 皆 で 旅 行 な ど行 か な か った 」とく 病 気 を き っか け に 家 族 皆 で 旅 行 に 行 〈よ うに な っ た 〉 と く 旅 行 が 家 族 の つ な が り を深 め る機 会 と な る 〉 概 念 が 存 在 した.
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6)【 旅 行 で 向 き 合 う 自分 ら し さ 】
「何 も病 気 を して い な い 頃 は 人 の 視 線 とか 気 に して い た 部 分 が 沢 山 あ っ た 様 な 気 が す る.
こ う い う病 気 に な る 前 は 人 の 事 気 に して い た 」 「旅 行 は 人 の 目線 とか 気 に しな い で あ りの ま ま で 楽 しめ る.旅 行 中 必 死 な の で 人 の 事 に 構 って い られ な い.こ うや っ て 生 き る事 が 私 ら し い 」 な ど 《 旅 行 に 夢 中 に な る 事 で 他 人 の 視 線 か ら 自 由 に な り 自分 ら し く い られ る 》 と い う 要 素 が 旅 行 に は 存 在 した.
7)【 心 揺 さぶ る体 験 か ら育 ま れ る 感 受 性 と 好 奇 心 】
「ベ トナ ム で 小 さ い ボ ー トに 乗 る 際 手 す りも 何 も 無 い.泥 の 川 に落 ち そ うで 今 ま で で1番 怖 か っ た 」な ど く 旅 行 な らで は の 感 情 を揺 さぶ られ る 体 験 が あ る 〉 こ とや 「旅 行 で 会 っ た ポ
リオ の お じい さ ん 達 み た い に 自 分 の や りた い 様 に 気 持 ち を 直 ぐに 表 現 す る こ と は 中 々 出 来 な い 」 な ど く 自 分 に は 出 来 な い 積 極 性 を 持 つ 障 害 者 と の 出 会 い に 衝 撃 を 受 け る 〉 経 験 が あ っ た.ま た,「海 外 で は 障 害 者 に 対 す る 日本 人 の 感 覚 と は 間 違 い な く違 う.一 人 二 人 で な く, 皆 が 親 切 に 案 内 して くれ た 」 「この 身 体 だ か ら ツ ア ー で 同 一 行 動 を 取 る 必 要 性 が 出 て き て, それ な ら色 々 な 人 と関 わ り,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン を積 極 的 に計 りた い.情 報 収 集 しな が ら楽 しみ も 増 や す 」 「健 常 の 時 は ツ ア ー に行 っ て も他 人 は 関 係 な か った.今 は 人 と の 繋 が りで 楽 し い 旅 行 を 目指 して い る 気 が す る 」 な ど く 旅 行 特 有 の 感 情 を 揺 さぶ られ た 出 会 い や 経 験 は 新 た な 感 性 や 好 奇 心 を 生 む 〉 経 験 を得 て い た.
8)【 旅 行 で 気 づ い た 自 身 の 現 実 の 課 題 と 目標 】
旅 行 後 は 《旅 先 で 直 面 した 課 題 が 日 々 の 訓 練 に意 味 と 目標 を 与 え る 》 変 化 を 与 え て い た.
「旅 行 に 行 って 気 づ い た が,デ イ ケ ア の 中 だ け で は 肉 体 的 な 訓 練 で しか な い 気 が す る.維 持 も 良 い け ど も っ と精 神 的 に 良 く して い か な い と 」 と く 機 能 訓 練 に 目 的 を 見 出 せ な い し 目 的 が 無 い と頑 張 れ な い 〉 こ と に 気 づ い た.そ して 「階 段 の 幅 が 狭 い神 社 だ と靴 が は み 出 る.つ ま 先 の 力 だ け で 上 が ら な けれ ば な らな い の か.そ うい う訓 練 しな い と い け な いの か な 」 「旅 行 に 行 く と療 法 士 に こ う い う課 題 が 出 来 な い の だ け ど ど う した らい い?と 聞 く事 が 出 来 る 」 な ど く旅 先 で 直 面 した 課 題 の 解 決 に 取 り組 む 〉 変 化 が 見 られ て い た.
9)【 自分 の 旅 行 経 験 を他 者 に 伝 え た い承 認 欲 求 】
「パ ン フ レ ッ トを 残 して い る の で 将 来 旅 行 に 行 った 時 の こ と を 書 い て 想 い起 こ して み た い 」 な ど く 旅 行 の 経 験 や 想 い を1つ1つ 言 葉 に 残 して 時 に は想 い返 した い 〉 気 持 ち や 「旅 行 記 を 作 って,デ イ ケ ア で 皆 さん に 見 て 貰 お うか な と 思 っ て い る」 「旅 行 は ど こ に行 き た い と い う 目標 を決 め られ る し,共 通 の 話 題 を色 々 な 人 に 提 供 出 来 る 」な ど く 旅 行 が 出 来 た 経 験 を 他 者 と 共 有 した い 〉 想 い も 生 じて い た.「 旅 行 経 験 か らデ イ ケ ア の 人 に ア ドバ イ ス 出 来 る 」 等,《 大 切 な 旅 行 の 経 験 だ か ら保 存 し,人 に 伝 え て 勇 気 を 与 え た い 》 と い う気 持 ち を 育 ん で
い た.
10)【 死 生 観 へ の 気 づ き 】
「デ イ ケ ア に 来 て い る 方 の 年 齢 を見 る と70を 越 え る と ア ク テ ィ ブな 旅 行 を して い る 方 は あ ま り い な い と 思 っ た.そ れ ま で に 色 々 な 経 験 を した い 」 「病 気 に な る前 は 移 動 の 手 段 と して 旅 行 が あ った.今 は 老 い先 長 くな い と 思 うか ら,そ の 間 に 行 け る 所 は 行 き,目 に 焼 き 付 け て お き た い 」な ど く 病 気 を 契 機 に 人 生 の 残 り時 間 に 気 づ き,濃 厚 な 旅 行 経 験 で 満 た した くな る
〉 想 い が 生 ま れ て い た.そ して 「倒 れ る前 は ア ク テ ィ ブな 事 を全 く して い な か っ た.倒 れ て か ら半 端 じゃ な くア ク テ ィ ブ な事 は して い る 」 「多 分 倒 れ て な か っ た ら こ う い う気 持 ち は 無 くて 会 社 を 退 職 して 第2の 職 場 で の ん び りや っ て い る 気 が す る 」 な ど死 生 観 へ の 気 づ き が 生 ま れ て い た.
1v.考 察
本研究の結果か ら旅行経験 が在宅脳卒中片麻痺者 に与える心理 と行動の変化 について考 察する,
1.旅 行 前 の 特 徴
旅 行 前 の 脳 卒 中 片 麻 痺 者 の 特 徴 と して,【 障 害 へ の 負 の 感 情 と旅 行 環 境 へ の 過 重 配 慮 】,
【介 助 者 に 対 す る ジ レ ン マ 】な どの ネ ガ テ ィ ブ な感 情 が 多 く見 られ て い た.こ れ らの 感 情 は 日常 場 面 に お い て,自 由 に 活 動 で き る 範 囲 が 少 な い こ とや 日頃 介 助 を受 け る 経 験 が 多 く,実 際 に 自 分 が ど の 程 度 の 行 動 が 出 来 る の か,自 分 の 能 力 が ど の 程 度 な の か と い う こ と を 正 確 に 把 握 して い な い 為 に 生 ず る不 安 感 で あ る と考 え る.大 嶋 は 障 害 を 持 っ て 生 活 す る こ とは, 一 時 的 な 宣 告 よ り も ,長 期間 で 自己効 力感 が極 度 に ダ メー ジ を受 け るた めの 条件 が 揃 って い る2).と 述 べ て お り,自 身 を 肯 定 的 に 捉 え るた め の 気 づ き を 得 る 機 会 が 日常 場 面 に お い て 少 な い こ と が 考 え られ る.そ の 様 な 自 己 効 力感 の 低 下 して い る 脳 卒 中 片 麻 痺 者 が 旅 行 に 行 く為 に は 【旅 行 の 動 機 と な る他 者 か らの 働 きか け と環 境 へ の 安 心 感 】が 必 要 で あ っ た.人 の 行 動 の 生 起 は 自 己効 力 感 に よ り左 右 され る と言 わ れ て お り,家 族 や 旅 行 専 門 家 の 存 在 や 情 報 の 安 心 感 は,生 理 的 冗 情 緒 体 験 と 言 語 的 説 得 に よ る 一 時 的 に 自 己 効 力 感 を 高 め る 要 素 と な っ て い た の だ と考 え る.そ れ らの 要 素 が 自信 は ま だ あ ま りな い が 旅 行 に 行 っ て み よ う と い う 心 理 の 変 化 と行 動 の 発 現 に 繋 が った と考 え る.
した が っ て 旅 行 前 は 不 安 な 感 情 の 時 期 か ら他 者 よ り安 心 感 を得 て わ ず か に 気 持 ち が 揺 れ 動 い た 段 階 と考 え る.
2.旅 行 中 の 特 徴
旅 行 中 に は 【成 功 体 験 か ら育 ま れ る 自 信 と 心 の ゆ と り】,【家 族 との 絆 を 再 び 認 識 出 来 た 喜 び 】,【旅 行 で 向 き合 う 自分 ら し さ】,【心 揺 さ ぶ る 体 験 か ら育 ま れ る 感 受 性 と好 奇 心 】 と い う
4つ の 概 念 が 抽 出 され た.
脳 卒 中 片 麻 痺 者 は健 常 な 頃 と比 べ,日 常 生 活 で の 活 動 範 囲 が 限 られ る.そ の 為 旅 行 は健 常 者 に と って も 非 日常 的 な体 験 だ が,脳 卒 中 片 麻 痺 者 に と っ て は よ り希 少 な 機 会 とな る.普 段 の 生 活 圏 で は遭 遇 す る 事 の な い 段 差 や 砂 利 道,温 泉 の 様 な 困 難 な 行 程 は 旅 行 だ か ら こ そ 挑 戦 す る事 が 出 来 る.そ れ らの 目標 遂 行 に 向 け方 法 を 試 行 錯 誤 し,最 大 限 に 努 力 した 結 果,成 功 体 験 を 積 み,あ る い は 失 敗 体 験 を経 て 今 後 の 現 実 課 題 を 知 る事 が 出 来 る.こ れ らは 旅 行 を
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通 し 自 己 と 向 き 合 い,自 己 の 身 体 能 力 へ の 気 づ き を 促 して い る と 思 わ れ る.Bruceら は 自 分 の 身 体 的 能 力 を ポ ジ テ ィ ブ に 評 価 して い る 人 々 は,高 い 自尊 感 情 を持 つ 傾 向 に あ る2')と 述 べ て お り,旅 行 経 験 で 自 己 の 身 体 能 力 を 適 切 に 自己 評 価 で き る こ と は 障 害 に よ っ て 低 下 し た 自尊 感 情 を高 め る 効 果 が あ る こ とが 示 唆 され る.
ま た,旅 行 を 通 じて 家 族 との 繋 が り を再 び認 識 出 来 た 背 景 に は 障 害 を 持 ち 一 人 で 旅 行 に 行 く事 が 難 し くな り,家 族 の 助 け が 必 要 とな った こ と が 影 響 して い る と思 わ れ る.し か し, 家 族 と共 に 旅 行 に 行 く こ と は 非 日 常 的 な 旅 行 の 中 に 日 常 感 を 感 じさ せ,病 気 に な る 以 前 の 自 分 との 比 較 を す る き っ か け に な っ て い た と の だ と考 え る.健 常 な 時 は 自分 一 人 で 旅 行 に 行 け た の で 必 ず し も 家 族 と 同 一 行 動 を と る必 要 性 は 無 か った が,現 在 は 自分 を 中 心 に 必 ず 家 族 が 集 ま る機 会 と な っ た.こ の こ とに 自分 が 障 害 に な った 意 味 を見 出 し,障 害 を 肯 定 的 に 捉 え られ る よ う に な る き っ か け と な った の だ と 思 わ れ る.そ して 自分 が 家 族 の 役 に 立 て て い る と い う感 覚 が 自尊 感 情 を 高 め た の だ と考 え る.Baumeisterに よ る と 自尊 感 情 と は,自 分 自 身 に 対 す る 肯 定 的 な 感 情,自 分 を価 値 あ る存 在 と して 捉 え る 感 覚 で あ り,自 尊 感 情 の 高
さ は 幸 福 感 や 人 生 に 対 す る満 足 度 と 正 の 相 関 が 認 め られ る2り と言 わ れ て い る.家 族 と共 に 行 く旅 行 に は 障 害 を 肯 定 的 に 捉 え て 自尊 感 情 を高 め る 意 味 が 存 在 した の だ と 考 え る.
そ して,旅 行 は 日常 の 生 活 環 境 か ら離 れ て,日 頃 関 わ りの あ る 人 間 関 係 や 環 境 か ら離 れ て 気 分 転 換 に な る機 会 と な る.日 常 の 中 で は 障 害 を 持 つ 自 己 を意 識 した 生 活 を 余 儀 な く さ れ て お り,旅 行 中 は そ の 様 な意 識 か ら解 放 され て 旅 行 中 の 課 題 に 没 頭 出 来 る の だ と考 え る.
Csikszentmihalyiに よ る と フ ロー と は 活 動 を して い る 人 が 力 強 い注 意 の 感 情 状 態 に 没 頭 し, そ の 活 動 に 十 全 に 活 動 の プ ロ セ ス に 成 功 して い る 心 的 状 態2り を さす.そ して そ れ は 次 の 要 素 か ら成 り立 つ ① 目標 が 明 確 で あ る こ と,② 注 意 の 限 定 的 な 領 域 へ の 高 い 集 中,③ 自己 意 識 の 感 覚 の 欠 如,④ 時 間 の 主 観 的 な 経 験 が 日常 か らか け 離 れ る,⑤ 活 動 の 中 で の 成 功 や 失 敗 が 明 ら か で あ る,⑥ 活 動 へ の コ ン トロー ル が 出 来 る感 覚,⑦ 活 動 そ れ 自体 が 報 酬 と な る,⑧ 身 体 機 能 低 下 の 意 識 の 欠 如,⑨ 活 動 に 夢 中 に な り行 為 意 識 が 融 合 す る21)な どで あ る.こ れ ら の 要 素 は 旅 行 に 夢 中 に な る こ とで 障 害 を 抱 え な が ら 日 常 を 生 き る こ と か ら意 識 が か け 離 れ
る こ と と類 似 して い る と 思 わ れ,フ ロー の 状 態 に 近 い と言 え る.旅 行 は 障 害 者 で あ る 自 分 か ら一 時 解 放 さ れ 本 来 の 自 分 を 向 き 合 う機 会 に な る 可 能 性 が あ る と考 え る.
ま た,脳 卒 中 片 麻 痺 者 は 活 動 範 囲 の 低 下 か ら満 足 度 の 固 定 化 や 興 味 の 狭 小 化 が 生 じ る と 言 わ れ て い る 、 本 来 旅 行 は 健 常 者 で あ っ て も ス トレス 低 減 効 果 や 活 気 が 沸 く な ど の 転 地 効 果 が 期 待 で き る が,脳 卒 中 片 麻 痺 者 は 健 常 者 に 比 べ 旅 行 に行 く機 会 が 少 な く,よ り貴 重 な 機 会 だ か ら こ そ 旅 行 中 の 様 々 な 体 験 か ら得 られ る 満 足 度 や 興 味 は 強 く刺 激 さ れ や す い の だ と 思 わ れ る.Hideら に よ る と物 事 へ の 興 味 は 出 来 事 の 変 化,真 新 しさ,何 か が で き る の で は な い か と い う 可 能 性 の 感 覚,そ して 神 秘 的 な 体 験 を す る と き に 生 じ る2り と され て い る.ま た,行 動 の 持 続 性 と 生 の 感 情 は,興 味 的 な 活 動 と 強 い 関 係 が あ る と い わ れ,満 足 度 や 興 味 が 刺 激 され る こ とで 新 た な 活 動 へ の 意 欲 と な る 面 に お い て も 旅 行 経 験 は 効 果 的 で あ る と考 え る.
した が っ て 旅 行 中 に お け る脳 卒 中 片 麻 痺 者 の 変 化 と は 非 日常 的 な 経 験 の 中 で 自 身 の 能 力 や 家 族 と の 絆,自 己,新 た な 感 受 性 な ど に 気 づ き を 得 て 自信 を 育 ま れ て い く段 階 と考 え る.
3.旅 行 後 の 特 徴
旅 行 後 は,【 旅 行 で 気 づ い た 自 身 の 現 実 の 課 題 と 目標 】,【自分 の 旅 行 経 験 を 他 者 に 伝 え た い 承 認 欲 求 】,【死 生 観 へ の 気 づ き 】 と い う3つ の 概 念 が 抽 出 され た.
旅 行 中 の 成 功 体 験 か ら 自身 の 能 力 へ の 気 づ き が 促 され て い た.Banduraは 自 己効 力 感 の 源 泉 と して,自 分 で 実 際 に や り遂 げ られ た と い う経 験 が 最 も 強 力 な も の2)と して い る.障 害 を 持 ち 旅 行 に 挑 戦 す る事 は 明 確 に 達 成 感 を味 わ う機 会 と な っ て い る と 思 わ れ る.こ れ が,次 回 の 課 題 や 目標 を持 つ と い う行 動 変 容 に な っ た の だ と 考 え る.ま た,旅 行 中 に 出 来 な か った こ と に 対 して も気 づ きが あ り,現 実 的 な 課 題 を 見 つ け る こ と が 出 来 た こ と も 自身 の 能 力 が 明 確 化 され た 効 果 だ と い え る.
ま た,自 身 の 旅 行 経 験 を 同 じ境 遇 の 人 に 伝 え た い と い う と い う 行 動 変 容 も 生 起 さ れ た.
Maslowに よ る と人 間 の 欲 求 は 階 層 構 造 を形 成 して お り,下 位 の も の が 充 足 さ れ る ご とに よ り上 位 の 欲 求 を 満 た そ う と す る と 主 張 して い る.そ の4段 階 目 に 自我 欲 求 が あ る.自 我 欲 求 と は 承 認 や 評 価 な どの 他 人 か らの 尊 敬 へ の 欲 求 や,誇 り,自 身,独 立 な ど の 自 尊 心 へ の 欲 求 が あ る2り と され る.片 麻 痺 と い う後 遺 症 を持 ち 自尊 心 が 低 下 して い る 脳 卒 中 片 麻 痺 者 は そ れ らの 欲 求 が 満 た さ れ る 場 面 が 少 な い と 思 わ れ る.し か し,旅 行 経 験 に よ り得 た 成 功 体 験 や
自信 は そ の 経 験 を 語 る こ と で さ ら な る 承 認 欲 求 や 自尊 心 を 満 た す 可 能 性 が あ る と考 え る.
そ して,旅 行 に て 感 情 を 揺 さ ぶ れ られ る よ う な 体 験 を経 て,そ の 後 の 価 値 観 や 生 き 方 な ど 死 生 観 へ も影 響 を 与 え て い た.健 常 者 で あれ ば 旅 行 経 験 に て あ る程 度 の 感 動 は 受 け て も,死
を意 識 して そ の 後 の 生 き 方 を 考 え る程 の 感 受 性 は 持 ち 合 わ せ る者 は 少 な い と思 わ れ る.脳 卒 中 に な り生 死 を さ ま よ い,片 麻 痺 と い う障 害 が 残 存 し,生 き方 を変 え る こ と を余 儀 な く さ れ た か ら こ そ 得 られ た 気 づ き で あ っ た と の だ と思 わ れ る.Rogersに よれ ば 自 己 実 現 欲 求 と は 潜 在 的 な 能 力 の 発 揮,継 続 的 な 自 己 の 啓 発,創 造 性 の 発 揮 な どの 成 長 を 求 め る欲 求2り で あ る.ま た,MasIowに よ る と 自 己 実 現 欲 求 は,欲 求 が 満 た され る ほ ど さ ら に 欲 求 が 高 ま る た め に 成 長 同 期 と も呼 ば れ る と い う.本 研 究 の 結 果 か ら,身 体 が 動 く間 に 行 け る と こ ろ に 行 き 目 に 焼 き 付 け た い,人 と の 出 会 い や 新 しい 知 見 を 増 や して お き た い な ど の 想 い が 生 ま れ て い た こ とは 自 己 実 現 欲 求 で あ る と考 え られ る.
した が って 旅 行 後 は 旅 行 中 に 得 た 気 づ き や 自信 か ら,現 実 課 題 を 見 つ け,他 者 に 伝 え て 承 認 欲 求 を 満 た し,死 生 観 を 得 て,生 活 が 変 化 す る な ど,行 動 が 変 容 して い く段 階 で あ る と考 え る.
本 研 究 の 結 果 よ り,旅 行 体 験 が 在 宅 脳 卒 中 片 麻 痺 者 に 与 え た 上 記10個 の エ ッセ ンス が 抽 出 され た.す な わ ち 脳 卒 中 片 麻 痺 者 に お い て,旅 行 と は 単 純 な 内 的 構 造 に よ る活 動 で は な く, 複 数 の 気 づ き や 行 動 変 容 な ど を 生 じ させ る複 合 的 な 活 動 で あ る こ とが 示 され た.
V.本 研 究 の 限 界 と今 後 の 課 題
本 研 究 は 対 象 に 認 知 機 能 の 低 下 して い る者 を 除 外 して い る こ とや,経 済 的 に 貧 困 な 状 況 で は な い こ と,同 居 家 族 が い た 者 が 対 象 で あ っ た こ とや,施 設 を 限 定 して い る こ とか ら一 般 化 す る こ と は 出 来 な い.ま た,実 際 に 旅 行 に 行 く こ とが 出 来 た 者 を 対 象 と した 為 旅 行 に 行
く こ と が 出 来 て い な い 者 の 結 果 を 反 映 す る こ とが 出 来 て い な い.
そ の 為,今 後 は 社 会 背 景 の 異 な る 対 象 者 や 調 査 地 域 を広 げ る こ と,旅 行 に 行 く こ と が 出 来 て い な い 対 象 者 に つ い て も調 査 す る必 要 が あ る.
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