平成28年度修士論文
都市街路空間における水景施設による局所的な温熱環境緩和効果
首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 建築学域
15886420 千種晃平
指導教員 一ノ瀬雅之
目次
第1章 研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 1-1 研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1-2 既往文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 1-3 研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 1-4 研究の構成と概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2章 実験条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2-1 COSMOにおける実験条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 2-1-1 実験の趣旨と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 2-1-2 実験対象敷地(COSMO)概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 2-2 COSMOにおける実験手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2-2-1 スケジュール ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2-2-2 測定機器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 2-2-3 測定機器設置状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 2-2-4 測定装置作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 2-2-5 基礎実験における水体と測定点のレイアウト ・・・・・・・・・・・ 16 2-2-6 配置検討実験における水体と測定点のレイアウト ・・・・・・・・・ 17 2-2-7 池作成方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2-2-8 水温管理システム設置概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 3章 実験結果・考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
3-1-1 気象データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 3-1-2 測定点の日変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 3-1-3 気温低減効果と絶対湿度差の日変動 ・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3-1-4 気温低減効果と絶対湿度差の水平分布 ・・・・・・・・・・・・・・ 27 3-1-5 気温低減効果の鉛直面分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 3-1-6 放射熱による温熱環境緩和効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 3-1-6-1 放射温度の日変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 3-1-6-2 放射温度差の日変動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 3-1-6-3 放射温度の水平面分布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 3-1-7 日中と夜間における温熱環境緩和効果の違い ・・・・・・・・・・・ 40 3-1-7-1 気温と絶対湿度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 3-1-7-2 グローブ温度とMRT ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 3-2 水面の大きさによる比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 3-2-1 気温 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 3-2-2 絶対湿度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 3-2-3 気温低減効果と絶対湿度の相関性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 3-2-4 気温低減効果と蒸発速度の相関性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 3-3 配置計画による比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51
3-3-1 気象データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 3-2-2 COSMOキャニオン内とキャニオン上空の気象の違い ・・・・・・・・ 52 3-3-3 日変化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
3-3-5 水温による影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58 3-4 低水温管理による効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 3-3-3 日変化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 3-3-4 日中と夜間における温熱環境緩和効果の違い ・・・・・・・・・・・ 60 3-3-5 水温による影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 4章 CFD数値解析における計算条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63 4-1 CFD解析概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 4-1-1 既存のCFD解析プログラム概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64 4-1-2 計算フロー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65 4-2 既存のCFD解析プログラムの計算手順 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 4-2-1 動作環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 4-2-2 ファイル構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66 4-2-3 メッシュデータの作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 4-2-2-1 計算対象モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 4-2-2-2 建物モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71 4-2-2-3 メッシュデータ作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74 4-2-2-4 形態係数の計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 4-2-4 表面温度計算 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 4-2-4-1 地表面素材の設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76 4-2-4-2 表面温度計算の実行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 4-2-4-3 表面温度計算結果の描写 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
4-2-5-1 境界条件の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 4-2-5-2 流体計算の実行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80 4-2-5-3 流体計算結果の描写 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 81 4-3 計算モデル概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 4-3-1 境界条件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 83 4-3-2 建物モデルとメッシュデータ詳細 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 4-3-3 計算ケース ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84 4-3-4 入力気象データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85 5章 CFD解析結果・考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87 5-1 解析準備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 5-1-1 CFD計算結果抽出方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88 5-1-2 テキストエディタの使用方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89 5-2 解析結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 5-2-1 CFD解析の基本的傾向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91 5-2-2 CFD解析結果と実測結果の比較考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 93 5-3-3 ケーススタディ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94 6章 総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101 梗概
1章 研究の背景 目的
1-1 研究背景
気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)
によると、地球全体の平均温度は、21世紀の終わりまでに1.8℃から4℃上昇すると予 測されており、気候変動の影響は気候パターンの変化や異常気象として現れる可能性 があると主張している。一方で、都市部における微気候の変動はさらに動的であり、
この100年の間に東京都の平均気温は約3℃も上昇しており、地球温暖化による気温 上昇と比べ、上昇率が高いと言われている。さらに建物が高密化している都市部で は、人間は表面温度の高い地表面や建物表面に暴露されており、それらから受ける放 射熱により温熱快適感はさらに劣悪となる。都市部の温熱環境緩和効果の対策とし て、都市植栽の充実や、地表面・建物表面の緑化または水面化などの対策があり、こ れらの対策は表面温度の低下だけでなく、蒸発冷却による周辺気温低下の効果も確認 されている。水の冷却効果に関する研究の多くは、池や川、湖、海などの自然に存在 する規模の大きい水体が対象となっており、人により設計された建築規模の水体、水 景施設に関しての研究は数少ない。
水景施設は都市部でも多く見つけることができるが、それらの多くは美観や子供の 遊び場として設計されており、水景施設の持つ周辺温熱環境調整機能としての環境価 値はほとんど考慮されていない。もし、水景施設の持つ冷却ポテンシャルを周囲の微 気候や土地特性、建物形態などを考慮して予測することができれば、水景施設の環境 的価値が一般に普及し、都市ひいては、建築の設計においても一つの設計要素として 考慮されるだろうと考えられる。
図1-1-1 東京における温度上昇
1-2 既往研究
ヒートアイランド現象自体は100年以上前に発見されているが、当初発見されたヒ ートアイランド現象とは冬季の早朝に顕著に表れる現象であった。夏季における都市 環境下のヒートアイランド現象が注目を浴びるようになったのは1990年以降になって からであり、地球環境問題に加え、エネルギー問題や都市部における健康被害などが 深刻化したことなどが、注目を浴びるようになった主な原因である。近年のヒートア イランド現象に関する研究の大きな目的の一つとして、夏季のヒートアイランド現象 による影響を、熱負荷や大気汚染、屋外大気温度さらには健康被害といった観点から 評価することである。また、夏季ヒートアイランド現象への対策として地表面素材に よる影響や環境共生型建築材料である保水性舗装や高反射塗料に関する研究も近年増 えてきている。[1]
日本においても、環境省ではヒートアイランド現象対策推進会議を開き、問題の現 状を把握するとともに対応策を考案している。ヒートアイランド対策大綱を平成16年 に公布し、平成25年に改定版を公布している。[2]ヒートアイランド対策大綱では、
基本方針として①人工排熱の低減、②地表面被覆の改善、③都市形態の改善、④ライ フスタイルの改善を柱として進められてきたが、改訂版において⑤適応策が推進の一 つの柱として加えられた。都市部における水の冷却効果に関する項目として、②にお ける地表面被覆の水面化や保水性舗装技術の活用、⑤においてはミストや打ち水など の局所的な環境改善対策などが挙げられる。また、建築物に起因するヒートアイラン ド緩和方策の効果を定量的に評価するという観念の下、ヒートアイランド現象緩和に 関する建築物総合環境性能評価システム、CASBEE-HI(Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency on Heat Island Relaxation)が開発されてい る。このツールは対象の建築一つに対して、敷地内の屋外暑熱環境の向上と、敷地外 へのヒートアイランド負荷を数値化することにより、ヒートアイランド現象緩和の効 果を詳細に評価することを目的としている。[3]
地表面被覆によるヒートアイランド現象への影響に関する研究として、梅干野らは 街区規模のモデルを対象とした熱収支シミュレーションを解くことにより、空間形態 や建築や地表面の構成材料が直接的に都市熱環境に与える影響を定量的に評価してい る[4]。大岡らは、建物表面の緑化による屋外環境緩和効果をCFD(Computational
Fluid Dynamics) 技術を用いて対流・放射の連成解析により検討しており、人の温熱
感を評価の一つとして考察している[5]。
1-3 研究の目的
本研究は、都市街路空間における水景施設による局所的な温熱環境緩和効果を実験 と数値計算により検証し、周辺環境を考慮した温熱環境緩和効果を定量的に評価するこ とを目的とする。
1-4 研究の構成と概要
本研究5章から構成される。1章で既往研究調査から本研究の立ち位置を明確にした 上で、研究の背景・目的を述べた。
2章では、スケールモデルで行われた実験の手法と概要について述べた。
3章では、実験結果を示し、考察を行った
4章では、既存のCFD数値解析の概要と、その計算手順について述べた。
5章では、CFD解析の計算結果を示した。
2 章 COSMO における実験条件
2-1 COSMO における実験概要
2-2-1
実験の趣旨と目的
屋 外 型 大 規 模 都 市 模 型(Comprehensive Outdoor Scale Model Experiment for Urban Climate; COSMO)において水面の大きさや方位、水温など基礎的な水面のパラメーター に着目して水景施設の温熱環境緩和効果を実験により検証した。COSMOと設置した池 の外観を図2-1に示す。
実験は2015年及び2016年の夏期に行った。2015年は基礎的な実験として水面によ る周辺気温と絶対湿度へ与える影響及びグローブ温度低減効果を確認した。水面の大き さの異なる水面を設置し、同時に測定することで大きさによる温熱環境緩和効果への影 響を比較した。2016 年は水面の個数と方位が異なるケースを比較し、水面の配置と周 辺の微気候や空間形態との関係を分析した。また水温を一定に制御する装置を用いて水 景施設を低水温管理することによる温熱環境緩和効果も測定した。
図2-1 COSMO実測状況
2-1-2
実験対象敷地概要
都市空間は非常に多様性に富んだ地表面である。人の活動や植栽、空間形態、構成材 料等の熱環境的要素は互いに密接に影響するため、個別のヒートアイランド現象対策技 術の影響を現地の実験調査により明らかにすることは非常に困難である。COSMOでは 人間活動のない均質な条件下において、建物が立ち並ぶことによる影響のみを反映した 状態を作り出すことができ、実際の都市空間に近い条件下で、物理メカニズムに踏み入 って検討することができる。COSMO における都市の熱収支 5)や乱流 6)の状況等は 既往研究により明らかにされている。
実測地COSMOの概要を図2-2に示す。COSMOは2006年に日本工業大学の敷地内
に設置され、敷地の夏季主風向が南西方向であることから南北軸から45°ずれている。
COSMOには厚さ 0.1m、縦横高さがそれぞれ1.5mのコンクリートブロックが合計 516
個設置されており、空間密度をそのままに5分の一のスケールで均一な都市空間を再現 している。本研究の実験では、COSMOを用いて都市空間の熱収支や複雑な乱流状況を 再現した条件下で水景施設単体による温熱環境緩和効果を測定した。
図2-2 COSMO概要
2-2 COSMO における実験手法
2-2-1
実験スケジュール
実験は2015年と2016年の夏期に行われた。実測スケジュールを表2-1に示す。2015 年の実測では、2つの池を設置し、水体による基本的な温熱環境緩和効果を確認し、そ の水平面分布を分析した。また大きさによる比較をし、大きさの違いによる温熱環境緩 和効果への影響を明らかにした。また、2015年9月に、非常に強い勢力の台風が関東地 方に上陸し、実測地である埼玉工業大学付近の川が氾濫し、実測地も地上 50㎝ほど浸 水した。浸水によりすべての実測機器で用いていた計測機器が水没し、実験を継続する ことが不可能になった。当時、実験を担当していた学生(千種、NEDYOMUKTI)は海 外の研究発表シンポジウムに参加しており、問題に対応することができなかった。
2016 年の実測では、2015 年に確認した実測で得られた知見をもとに限られたスペー スに水景施設を設計する際にどのように配置をすればいいかをという知見を得るため に、水体の配置を一つのキャニオン内に限定し、その中で水体の面積と方位を変えたケ ースを検討した。さらに、限られた大きさの水景施設による温熱環境緩和効果を増幅す る方法の一つとして水景施設の低水温管理ケースを設置した。
表2-1 実験スケジュール 年
月 9月
作業工
程 夏期実測
基本的な水平分 布 大きさによる比
較
配置計画による比較
水温による比 較 ケ
ー ス ス タ デ ィ 内 容
台 風 に よ り 中 止
8月 9月 10月 2016年
実験準備 夏期実測 実験 準備 2015年
5月 6月 7月 8月 4月 5月 6月 7月
2-2-2
実験機器
実験で用いた計測機器を以下に示す。
表2-2 測定機器一覧
写真 測定項目 機器構成 測定機器名 精度
センサー
製造:OMEGA社 品名:COCO-001 φ0.025
0.1[K]
ケーブル
製造:林電工株式会社 品名:TC-T-F
φ0.2
センサー
製造:林電工株式会社 品名:TC-T-F
φ0.2
0.1[K]
グローブ球 ピンポン玉 灰色スプレー センサー 製造:TDK
品名:CHS-UPS ±3%RH
ケーブル
製造:江藤電機 品名:MR-60
検査証に 表示
製造:江藤電機 品名:CADAC-3
センサー 製造:VISALA
品名:WXT530 ±3%
ロガー 製造:江藤電機 品名:デジタル百葉箱
全天日射量 センサー 製造:英弘精機株式会社
品名:ML-01 ±2%
測定点ロガー 長短波放射
代表気象(気 温、湿度、大 気圧、風速、
風向、雨量)
グローブ温度 気温
湿度センサー
2-2-3
実験機器設置方法
実測機器の設置状況を図2-3に示す。
図2-3 測定機器設置状況
気象センサーと全天日射計はCOSMOブロックのキャノピー層の上に設置してあり、
代表気象データの気象センサーは十分安定している大気の状態を計測した。2016 年の 実測では、キャノピー内の気象を把握るために同様の気象センサーを高さ 30㎝の地点 にも設置した。全天日射計は気象センサーの影が当たらないように、隣のブロックの上 部に設置した。
2-2-4
測定装置作成概要
測定点における詳細な説明を図2-4に示す。
図2-4.測定点におけるセンサー設置状況
測定点は、2015 年実測では鉛直方向の気温分布をみるために、それぞれ地上から 10
㎝、30cm、40㎝の地点に気温測定用の熱電対を設置した(図2-4)。グローブ温度、湿度 センサーはそれぞれ高さ30㎝の地点のみに設置した。2016年の実測では、高さ方向の 分布は考慮しないため、高さ30㎝の地点にのみに気温、湿度、グローブ温度のセンサ ーを測定点に設置した。
2-2-4 2015
年基礎実験における池と測定点のレイアウト
2015年の実験において作成した池と設置した測定点の状況を図2-5に示す。2015年 は水景施設による温熱環境緩和効果の基礎的な値と、それの分布範囲を分析するために 水体の上に風下側からそれぞれ3つの測定点を設置した。さらにすべての測定点に高さ 100、300、400㎜の地点に気温のセンサーを付け、鉛直面分布を解析することを試みた。
図2-5 2015年実験状況
2-2-5 2016
年基礎実験における池と測定点のレイアウト
2016年の実験において作成した池と設置した測定点の状況を図2-6に示す。2016年 は2015年の実測を踏まえ、水景施設の配置計画が温熱環境緩和効果に及ぼす影響を検 討した。2016 年は同時にいくつものケースを設置せず、reference と各測定ケースの一 つを同時に計測し、referenceと水体レイアウトケースの差をとり、各ケースを比較する。
図2-6.2016年実験状況
2-2-6 池作成方法
2015年実測で作成した池の作成図を図2-7に示す。2015年は、コンクリートブロッ クで形作った窪みに防水シートをかけて池を作成した。防水シートの表面は黒色だった
ため、COSMOのブロックと同じ色合いの塗料で着色しなおした。また池を作成するの
に使用したブロックも同様の塗料で着色した。
図2-7.2015年実験の池作成図
2016年実験で作成した池の作成図を図2-8に示す。2016年は、同面積の池の方位を変 えて設置する必要があるため、木板で池を作成し後から移動できるようにした。池の木 板は市販の防水ベニヤ板(一畳分、厚さ10 ㎜程度)に塗料用の浸水材を塗り、その上 から灰色のスプレーで板を着色した。木工用ボンドを塗ってから木板同士を釘でくみ上 げることにより隙間をなくし、水漏れがなくなるようにした。木板の接着面の内側に防 水シリコンを上から塗ることで、さらに水漏れがなくなるようにした。
コンクリートブロック
コンクリートブロック コンクリート
ブロック 防水シート
(断面詳細図)
(断面図)
(平面図)
(断面詳細図)
(断面図)
(平面図)
木版
木版
防水シリ コン 木板
釘+接着剤
2-2-7.水温管理システム設置方法
2016 年実測では、水体の水温を低温に管理したケースを設置した。低水温管理シス テムの概要を図2-8に示す。冷水クーラーと実験ケーススタディの敷地はクーラーの排 気の影響が出ないように20mの距離を置き、3mの排気ダクトから排気するようにした。
またクーラーは、直射日光が当たらないように断熱材で囲った。
また、水温管理システムに用いた機器と部材を表2-3に示す。
図2-8.水温管理システム概要
¥
表2-2-3 水温管理システムの必要部材
名称 冷水クーラー ポンプ 冷水管
型番 ゼンスイ ZRW400
エーハイム 水陸両用ポンプ 1048
塩ビパイプ φ26
写真
冷水クーラー ポンプ
排気ダクト
実験ケーススタディ
20m
夏季主風向
冷水管(往)
冷水管(還)
名称 冷水管用断熱材 ホース 冷水管ケース
型番
エーハイム 断熱クン 40A 、2m
カインズ φ32、10m
木材 自作
写真
3 章 実験結果・考察
3-1 水景施設による基礎的な温熱環境緩和効果の傾向と特徴
3-1-1 気象データ
水景施設の温熱環境緩和効果の基礎的な日変動、水平分布を確認するために2015 年8月5日のデータを参照する。2015年8月5日の気温、池の水温、相対湿度を図2-
2-1、日射量、風速を図2-2-2に示す。この日は一日を通して晴天であり、最高気温は
35℃を計測した。
図3-1-1 2015年8月5日の気温、水温、相対湿度
図3-1-2 2015年8月5日の全天日射量、風速
3-1-2 日変動
2015年8月5日におけるcase 0-sとreferenceの気温と絶対湿度の日変動グラフを図 2-2-3、図2-2-4に示す。
図3-1-3気温の日変動 図3-1-4絶対湿度の日変動 気温グラフより、case 0-sの各測定点とreferenceとの気温差は0.5Kほどであること が見て取れる。また夜間において各測定点とreferenceとの差は安定しているが、各測 定点における差はほとんど見られない。これは、夜間に気温差が安定しているのは、
夜間は風速が低くなり、水面からの気温低減効果が安定していることが示唆される。
絶対湿度グラフより、湿度グラフではpoint 2において、絶対湿度が顕著に高くなっ ている。気温と同様に夜間に各測定点とreferenceとの差が大きくなっている。また各 測定点における差も小さくなっていることがわかる。
2015年8月5日におけるcase 0-bとreferenceの気温と絶対湿度の日変動グラフを図 2-2-3、図2-2-4に示す。
図3-1-5 気温の日変動 図3-1-6 絶対湿度の日変動 気温グラフより、case 0-sの各測定点とreferenceとの気温差は0.5Kほどであること が見て取れる。また夜間において各測定点とreferenceとの差は安定しているが、各測 定点における差はほとんど見られない。これは、夜間に気温差が安定しているのは、
夜間は風速が低くなり、水面からの気温低減効果が安定していることが示唆される。
絶対湿度グラフより、湿度グラフではpoint 2において、絶対湿度が顕著に高くなっ ている。気温と同様に夜間に各測定点とreferenceとの差が大きくなっている。また各 測定点における差も小さくなっていることがわかる。また、日中にpoint 1とpoint 4が 高くなっていることが分かる。
3-1-3 気温差と絶対湿度差の日変動
refereceの気温からcase 0-s各測定点の気温を引いた値の一分平均した日変化を図2-
2-5に示す。同様にreferenceの絶対湿度からcase 0-s各測定点の絶対湿度を引いた値の 一分平均した日変化を図2-2-6に示す。またrefereceの気温からcase 0-b各測定点の気 温を引いた値の一分平均した日変化を図2-2-5に示す。同様にreferenceの絶対湿度か
らcase 0-b各測定点の絶対湿度を引いた値の一分平均した日変化を図2-2-6に示す。
図3-1-7 case 0-sにおける水体による気温低減効果の日変化
図3-1-8 case 0-s水体からの蒸発による湿度上昇効果の日変動
図3-1-9 case 0-bにおける水体による気温低減効果の日変化
図3-1-10 case 0-bにおける水体からの蒸発による湿度上昇効果の日変動
気温低減効果のグラフでは、referenceより各測定点の気温が低いとき、つまり気温 差がプラス側に大きくなれば、気温低減効果は大きいとみなすことができる。グラフ より、夜間の気温差は概ね0~1K程度に収まっていることが分かる。日中はばらつき が大きくなり、気温差がマイナス側になることもあることが分かる。これは、図2-2-1 より、日中に水温が気温より高くなっている時間帯と同時間帯に起きていることが示 唆される。つまりこの時間帯は水面表面の顕熱交換ではマイナス側に、蒸発潜熱によ りプラス側に作用する二つの効果があり、そのバランスによりばらつきが大きくなっ ていることが示唆される。
絶対湿度差のグラフでは、概ね0~2g/㎏(DA)の絶対湿度の上昇がみられる。特に
point 2において、日中の水温が気温より高くなっている時間帯に高くなっていること
が分かる。
3-1-4 気温低減効果と絶対湿度の水平分布
refereceの気温からcase 0-s各測定点の気温を引いた値の四分位範囲を図2-2-7に示
す。同様にreferenceの絶対湿度からcase 0-s各測定点の絶対湿度を引いた値の四分位
を図2-2-8に示す。refereceの気温からcase 0-b各測定点の気温を引いた値の四分位範
囲を図2-2-7に示す。同様にreferenceの絶対湿度からcase 0-b各測定点の絶対湿度を
引いた値の四分位を図2-2-8に示す。
また、使用したデータはばらつきの大きかった午前6時から午後6時までを対象に 抽出した。
図3-1-11 温度差の水平分布 図3-1-12絶対湿度差の水平分布
図3-1-13 温度差の水平分布 図3-1-14 絶対湿度差の水
気温差の水平分布のグラフより、風がpoint 1からpoint 4の方向に吹いたとき、
point 2から気温低減効果が風下方向へ分布している状況が確認できる。また、風下方
向のpoint 4においても中央値として0.5K程度の気温低減効果が表れていることが分
かる。しかし、これはcase 0-bの十分大きい池がある場合であり、水景施設の規模が
小さいcase 0-sの場合ではこのような現象は十分に確認されなかった。
絶対湿度のグラフより、気温の水平分布と同様に、風がpoint 1からpoint 4の方向 に吹いたとき、point 2で水面からの蒸発による絶対湿度の上昇が見られ、それが風下 方向へ分布していることがみてとれる。
3-1-5 鉛直面分布
case 0-sにおける測定高さ100㎜、300㎜、400㎜各測定点における気温低減効果の
傾向を考察する。計測高さ 100㎜における reference の気温から各測定点の気温を引い た値の1日の時間変化を図3-1-15に示す。計測高さ300㎜におけるreferenceの気温か ら各測定点の気温を引いた値の1 日の時間変化を図3-1-15 に示す。計測高さ400 ㎜に
おけるreferenceの気温から各測定点の気温を引いた値の1日の時間変化を図3-1-15に
示す。
図3-1-15 case 0-sにおける水体による気温低減効果の日変化(高さ100㎜)
図3-1-16 case 0-sにおける水体による気温低減効果の日変化(高さ300㎜)
図3-1-17 case 0-sにおける水体による気温低減効果の日変化(高さ400㎜)
case 0-bにおける測定高さ100㎜、300㎜、400㎜各測定点における気温低減効果の 傾向を考察する。計測高さ 100㎜における reference の気温から各測定点の気温を引い た値の1日の時間変化を図3-1-18に示す。計測高さ300㎜におけるreferenceの気温か ら各測定点の気温を引いた値の1 日の時間変化を図3-1-19 に示す。計測高さ400 ㎜に
おけるreferenceの気温から各測定点の気温を引いた値の1日の時間変化を図3-1-20に
示す。
図3-1-18 case 0-bにおける水体による気温低減効果の日変化(高さ100㎜)
図3-1-19 case 0-bにおける水体による気温低減効果の日変化(高さ300㎜)
case 0-sにおける測定高さ100㎜、300㎜、400㎜における各測定点における気温低減 効果の四分位範囲を図3-1-21に示す。case 0-sにおける測定高さ100㎜、300㎜、400
㎜における各測定点における気温低減効果の四分位範囲を図3-1-22に示す。
図3-1-21 case0-sにおける気温低減効果の鉛直面分布
図3-1-22 case0-bにおける気温低減効果の鉛直面分布
case 0-sの日変化のグラフより、高さ100㎜においてはpoint 1とpoint 3が池を形づ くるためのグロックの近傍に設置されているため、気温が非常に高くなっている時間 帯がある。point 2は一日を通して安定して気温低減効果があり、その値は平均して1K 程度である。これは高さ300㎜の値よりも高い。高さ400㎜においては日中にかけて 気温低減効果が高くなっており、その値は高さ300㎜の値よりも高い。これは周辺気 流の状態が角乱流である場合、水面からの上昇気流が高さ400㎜の付近で滞留してい たためであると考えられる。point 4は高さ300㎜の値よりも大きく変化しており、こ れは風下側へ気温低減効果が流れていくときに、水面から流されて、風下側へは拡散 されて登っていくことが理由だと考えられる。
case 0-bでは、高さ100㎜の地点でpoint 1において、ブロックの影響によるエラー
値が検出されていることが分かる。case 0-sと同様に、高さ400㎜の地点で、日中によ り安定した気温低減効果が得られていることが分かる。
3-1-6 放射熱による温熱環境緩和効果 3-1-6-1 日変動
2015年8月5日におけるcase 0-sとreferenceのグローブ温度とMRTの日変動グラ フを図2-2-3、図2-2-4に示す。
図3-1-23 case 0-sにおける気温の日変動 図3-1-24 case 0-sにおける気温の日 変動
グラフより、水体によるグローブ温度低減効果は概ね2K程度であることがわか る。午前6時から午前10時までの間では、referenceと各測定点との差はほとんどな く、ほぼ同程度である。コスモのキャニオン内に日射が入射してくる午前10時から
referenceと各測定点における値の差が見られる。正午が最も各測定点に差が大きくな
ることが分かり最大2.5K程度のグローブ温度低減効果があることが分かる。また午後 5時に、point 3とreferenceにおいてグローブ温度が一度上昇する時間帯があるが、こ れは夕方の西日がコスモのキャニオン内に入射したからであると考えられる。
MRTのグラフより、MRTの日変動は概ねグローブ温度と同じ挙動を示している が、水体の各測定点において日中は値が高くなっていることが分かる。MRTの算定式 より、気温とグローブ温度の気温差が大きくなると、MRTは高くなるため、水面から の蒸発冷却効果がグローブ温度と気温差を大きくし、その結果referenceよりもMRT が大きくなったのだと考えられる。
2015年8月5日におけるcase 0-bとreferenceのグローブ温度とMRTの日変動グラ フを図2-2-3、図2-2-4に示す。
図3-1-25 case 0-bにおける気温の日変動 図3-1-26 case 0-bにおける気温の日変 動
グローブ温度の日変化グラフより、case 0-sと比較して値の差が大きくなっている ことわかる。また各測定点でreference よりも低い値である。point 2において非常に顕 著なグローブ温度低減効果がある。point 1とpoint 3のグロー日温度がほぼ同じ傾向を 示している。またreferenceとpoint 4の組みとpoint 1 とpoint3の組み、point 2をそれ ぞれ比較すると、計測点からの形態係数が倍になるごとに3K程度のグローブ温度低 減効果があることが分かる。
MRTのグラフより、case 0-sと同様に、MRTの日変動は概ねグローブ温度と同じ挙 動を示しているが、水体の各測定点において日中は値が高くなっていることが分か る。MRTの算定式より、気温とグローブ温度の気温差が大きくなると、MRTは高く なるため、水面からの蒸発冷却効果がグローブ温度と気温差を大きくし、その結果
referenceよりもMRTが大きくなったのだと考えられる。
3-1-6-2 放射温度差と MRT 差の日変動
refereceのグローブ温度からcase 0-bの各測定点のグローブ温度を引いた値の一分平均
した日変化を図2-2-11に示す。同様にreferenceのMRTからcase 0-b各測定点のMRT を引いた値の一分平均した日変化を図2-2-12に示す。
図3-1-27 case 0-sにおけるグローブ温度差の日変動
図3-1-28 case 0-sにおけるMRT温度差の日変動
refereceのグローブ温度からcase 0-bの各測定点のグローブ温度を引いた値の一分平 均した日変化を図2-2-11に示す。同様にreferenceのMRTからcase 0-b各測定点の MRTを引いた値の一分平均した日変化を図2-2-12に示す。
図3-1-29 case 0-bにおけるグローブ温度差の日変動
図3-1-30 case 0-bにおけるMRT温度差の日変動
グローブ温度とMRTの温度差のグラフでは、水体周辺の各測定点の温度が、
referenceよりも低いとき、気温差はプラス側になる。気温差のグラフを見るとcase 0-b
ではpoint 2においてグローブ温度で日中に6K程度の低減効果が表れていることが分
かる。これはコンクリートの地表面に比べ、水表面の温度は低く尚且つ。case 0-bでは
point 2における水面の形態係数が非常に大きいからであると考えられる。
MRTを見ると、グローブ温度よりも、温度低減効果はpoint 2において大きくなっ ていることが分かる。しかしほかの測定点では、温度低減効果はグローブ温度よりも 小さい、若しくは、point 4においては日中マイナス側に分布している。これは気温差 とグローブ温度の差の影響であると考えられる。
3-1-6-3 グローブ温度と MRT 温度の水平分布
refereceのグローブ温度からcase 0-b各測定点のグローブ温度を引いた値の四分位範
囲を図2-2-7に示す。同様にreferenceのMRTからcase 0-b各測定点のMRTを引いた 値の四分位を図2-2-8に示す。また、使用したデータはばらつきの大きかった午前6 時から午後6時までを対象に抽出した。
図3-1-31 グローブ温度差の水平分布 図3-1-32. MRT差の水平分布
図3-1-33 グローブ温度差の水平分布 図3-1-34. MRT差の水平分布
グローブ温度差の水平面分布のグラフより、グローブ温度は各測定点でプラス側に あることから、グローブ温度の低減効果が見られる。しかし、気温低減効果と比較す ると各測定点の差は大きく、特にpoint 2において中央値として3K程度のグローブ温 度低減効果があるが、point 4では0.5K程度になっていることがわかる。
MRT温度差の水平面グラフより、MRT温度差は中央値としてプラス側になってい ることが分かる。しかし、point 4においては四分位範囲の下半分はマイナス側になっ ており、これは気温差に比べグローブ温度差が小さい場合に起きたものだと考えられ る。
二つのグラフより、水体による放射環境緩和効果は水上直上では非常に大きいもの の、衰退周辺に与える影響はごくわずかであることが分かる。
3-1-7 日中と夜間における温熱環境緩和効果の違い 3-1-7-1 気温と湿度
case 0-sとcase 0-bの夜間(午前0時~午前6時、午後6時~午後12時)のreferenceと 各測定点の気温差の四分位範囲を図3-1-35に示す。case 0-sとcase 0-bの夜間(午前0
時~午前6時、午後6時~午後12時)のreferenceと各測定点の絶対湿度差の四分位範
囲を図3-1-36に示す
図3-1-35 夜間における気温差の水平面分布(右:case 0-s,、左:case 0-b)
図3-1-36 夜間における絶対湿度差の水平面分布(右:case 0-s,、左:case 0-b)
3-1-7-1 グローブ音と MRT
case 0-sとcase 0-bの夜間(午前0時~午前6時、午後6時~午後12時)のreferenceと 各測定点のグローブの四分位範囲を図3-1-37に示す。case 0-sとcase 0-bの夜間(午前
0時~午前6時、午後6時~午後12時)のreferenceと各測定点のMRT温度差の四分位
範囲を図3-1-36に示す
図3-1-37 夜間における気温差の水平面分布(右:case 0-s,、左:case 0-b)
図3-1-38 夜間における気温差の水平面分布(右:case 0-s,、左:case 0-b)
気温差と絶対湿度差のグラフより、夜間では、昼間に比べ気温低減効果は低いもの の、ばらつきが少なく安定していることが分かる。また、絶対湿度も同様の傾向を示 していることが分かる。またそれぞれの空間分布も概ね同様の傾向を示していること がわかる。また、case 0-sのpoint 1とpoint 4、case 0-bのpoint 4は3点ともほぼ同程 度の気温低減効果と絶対湿度差を示していることが分かる。これは水面下の影響では なく、これらの測定点がCOSMOの通路の交差点にあるからであると考えられる
グローブ温度とMRT差のグラフより、夜間では、昼間に比べグローブ温度低減効 果は低いものの、ばらつきが少なく安定していることが分かる。また、MRTも同様の 傾向を示していることが分かる。またそれぞれの空間分布も概ね同様の傾向を示して いることがわかる。また、case 0-sのpoint 1とpoint 4、case 0-bのpoint 4は3点とも ほぼ同程度のグローブ温度低減効果とMRT差を示していることが分かる。これは水面 下の影響ではなく、これらの測定点がCOSMOの通路の交差点にあるからであると考 えられる
。
3-2 大きさによる比較
3-2-1 気温
case 0-sにおける気温低減効果の発生頻度を図3-2-1に示す。case 0-bにおける気温
低減効果の発生頻度を図3-2-2に示す。
図3-2-1 case 0-sにおける気温差の発生頻度
図3-2-2 case 0-bにおける気温差の発生頻度
case 0-sにおける気温低減効果の累積頻度数を図3-2-3に示す。case 0-bにおける気 温低減効果の累積頻度数を図3-2-に示す。
図3-2-3 case 0-sにおける気温差の累積頻度数
図3-2-4 case 0-bにおける気温差の累積頻度数
気温差の累積頻度より、どちらのケースでも 90%の割合で冷却効果が表れているが、
case 0-bではpoint 1よりも風下の測定点がより顕著に表れている。絶対湿度差の累積頻
度より、case 0-sよりcase 0-bで絶対湿度がマイナス側になるデータが80%以上あり水 面が大きいほど蒸発量が多いことがわかる。このことから、case 0-bでは水面からの蒸 発冷却効果が風下へ移動していると推察される。
3-2-2 絶対湿度
case 0-sにおける絶対湿度増加分の発生頻度を図3-2-5に示す。case 0-bにおける絶
対湿度増加分の発生頻度を図3-2-6に示す。
図3-2-5 case 0-sにおける絶対湿度差の発生頻度
図3-2-6 case 0-bにおける気温差の発生頻度
case 0-sにおける気温低減効果の累積頻度数を図3-2-7に示す。case 0-bにおける気 温低減効果の累積頻度数を図3-2-8に示す。
図3-2-7 case 0-sにおけ絶対湿度の累積頻度数
図3-2-8 case 0-bにおけ絶対湿度の累積頻度数
気温差の累積頻度より、どちらのケースでも 90%の割合で冷却効果が表れているが、
case 0-bではpoint 1よりも風下の測定点がより顕著に表れている。絶対湿度差の累積頻
度より、case 0-sよりcase 0-bで絶対湿度がマイナス側になるデータが80%以上あり水 面が大きいほど蒸発量が多いことがわかる。このことから、case 0-bでは水面からの蒸
3-2-3 気温低減効果と絶対湿度の相関性
case 0-sにおける絶対湿度と気温低減効果の相関を図3-2-9に示す。case 0-bにおける
絶対湿度と気温低減効果の相関を図3-2-10に示す
図3-2-9 case 0-sにおけ絶対湿度と気温低減効果の相関性
実験で観測された気温低減効果が水面からの蒸発冷却に起因するかを確認するため に、気温差と絶対湿度差及び蒸発速度との関係性を考察する。case 0-sとcase 0-bにお ける1時間平均した絶対湿度と気温差の相関図をFig. 14に示す。case 0-s では測定点ご との気温差と絶対湿度の相関性は強くないが、case 0-bに着目するとpoint 2とpoint 3の 点はほぼすべて第2限に分布しており、絶対湿度が reference よりも高い場合に気温差 も大きくなることがわかる。
3-2-4 気温低減効果と蒸発速度の相関性
蒸発速度ω [g/(m^2∙s)]は乱流を考慮した以下の式(2)8)を用いて算出した。
ω=0.0018 K/νv(e_s-e) (2)
ここで、K は拡散係数[cm2/s]、νは動粘度[m2/s]、v は風速[m/s]、e_s は水面におけ る水蒸気圧[hPa]、eは水面上の大気の水蒸気圧[hPa]である。
point 2における1時間平均した気温差と蒸発速度との相関図を図3-2-11に示す。
図3-2-11 case 0-sにおけ蒸発速度と気温低減効果の相関性
図3-2-12 case 0-sにおけ蒸発速度と気温低減効果の相関性
case 0-bはcase 0-sより強い相関性が見られたことから、より大きな水面の方が安定 して蒸発し、そのことが水面上の気温を低減させていることがわかる。
3-3 配置計画による比較
3-3-1 気象データ
3 章の以降の分析は 2016 年の夏期に行われた実測結果をもとに考察を行う。対象日 の気象データの気温と湿度を図3-3-1、風速と全天日射量を図3-3-2に示す。
図3-3-1 気温と相対湿度
図3-3-2 風速と全天日射量
3-3-2 COSMO キャニオン内と上空の違い
2016年は高さ4.5mの地点に設置した代表気象とは別に、COSMOキャニオン内の気象 状態を把握するために高さ30㎝の地点に気象センサーを設置した。高さ4.5mにある気 象センサーをac、キャノピー内にある気象センサーをbcとする。対象日の気象センサ ーacとbcの気温の変動の違いを図3-3-3、相対湿度の違いを図3-3-4に示す
図3-3-3 気温と比較
図3-3-4 相対湿度の比較
対象日の気象センサーacとbcの風速の変動の違いを図3-3-5に示す
図3-3-4 相対湿度の比較
気温のグラフより、bcはacと比較して気温が高い傾向にあることが分かる。絶対湿 度のグラフより、acはbcより気温が暑い日には低いことが分かる、特に非常に扱った 8月5日は非常日低いことが分かる。
風速のグラフでは、ほぼすべての日でbcの方が低くなっている。acが2m/sのときに
bcでは0.5m/sであることが分かる。
3-3-3 日変化
2016年のcase 1~case 0の実験において、referenceの気温から測定点の気温を引いた
値の日変化を図3-3-5に示す。2016年のcase 1~case 0の実験において、referenceの絶対 湿度から測定点の絶対湿度を引いた値の日変化を図3-3-5に示す。
図3-3-5 気温低減効果の日変化
図3-3-6 絶対湿度の日変化
2016年のcase 1~case 0の実験において、referenceのMRTから測定点のMRTを引いた 値の日変化を図3-3-7に示す。
図3-3-7 MRTの日変化
3-3-4 日照による違い
2016年のcase 1~case 0の実験において、日中のreferenceの気温から測定点の気温を
引いた値の四分位範囲を図3-3-8、夜間ののreferenceの気温から測定点の気温を引いた 値の四分位範囲を図3-3-9に示す。
2016年のcase 1~case 0の実験において、日中のreferenceの絶対湿度から測定点の絶
対湿度を引いた値の四分位範囲を図 3-3-10、夜間の reference の絶対湿度から測定点の 絶対湿度を引いた値の四分位範囲を図3-3-11に示す。
図3-3-8 昼光あり 図3-3-9 夜間
2016年のcase 1~case 0の実験において、日中のreferenceのMRTから測定点のMRT を引いた値の四分位範囲を図3-3-10、夜間のreferenceのMRTから測定点のMRTを引 いた値の四分位範囲を図3-3-11に示す。
図3-3-12 昼光あり 図3-3-13 夜間
3-3-5 水温による影響
2016年のcase 1~case 0の実験において,各ケースの気温から水温を引いた値と気温低
減効果の相関関係を図3-3-14に示す。
図3-3-14 水温と気温低減効果の相関関係
3-4 低水温管理による比較
3-4-1 日変化
2016年のcase 1~case 0の実験において、referenceの気温から測定点の気温を引いた
値の日変化を図3-3-5に示す。2016年のcase 1~case 0の実験において、referenceのMRT から測定点のMRTを引いた値の日変化を図3-3-5に示す。
図3-3-5 気温低減効果の日変化
3-4-3 日射による影響
2016年のcase 1~case 0の実験において、日中のreferenceの気温から測定点の気温を
引いた値の四分位範囲を図3-3-8、夜間ののreferenceの気温から測定点の気温を引いた 値の四分位範囲を図3-3-9に示す。
2016年のcase 1~case 0の実験において、日中のreferenceのMRTから測定点のMRT を引いた値の四分位範囲を図3-3-10、夜間のreferenceのMRTから測定点のMRTを引 いた値の四分位範囲を図3-3-11に示す。
3-4-3 水温との関係
2016年のcase 1~case 0の実験において,各ケースの気温から水温を引いた値と気温低減
効果の相関関係を図3-3-14に示す
図3-3-15 水温とMRTの相関関係
4 章 CFD 数値計算による温熱環境緩和効果の評価方法
4-1 CFD 解析概要
4-1-1 既存の CFD プログラム概要
3章の実験より、水景施設による局所的な温熱環境緩和効果が確認されたが、実際 の都市街路空間における効果を予測するためには数値解析が有効である。そこで、3章 では 3 章の測定結果をもとに既存の数値解析プログラムを用いて都市街路空間におけ る水体の気温冷却効果を予測し、精度検証を行う。精度検証は2015 年の基準ケースに 加え、2016年の水温管理した水体のケースを用いる
国土交通省国土技術政策総合研究所により開発された『都市の熱環境対策評価ツー ル ~CFD on Excel~』の開発元となったプログラむ(以下、UHIツールを)用いてCFD 解析を行なった。この都市の熱環境対策評価ツールは、国 総 研 の 総 合 技 術 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト「 都 市 空 間 の 熱 環 境 評 価・対 策 技 術 の 開 発 」( 平 成 16~18 年 度 ) に お い て 開 発 し た 、ス パ コ ン に よ る ヒ ー ト ア イ ラ ン ド 解 析 技 術 を 基 に 、パ ソ コ ン で 簡 易 に 予 測 で き る ツ ー ル と し て 、国 土 交 通 省 都 市 局 と 共 同 で 開 発 さ れ た も の で あ る 。 こ れ ま で 、CFD( 数 値 流 体 力 学 )の 分 析 作 業 に は デ ー タ 入 力 や プ ロ グ ラ ム の 操 作 に 多 大 な 手 間 を 必 要 と し ま し た が 、こ の 計 算 ツ ー ル で は 建 物 や 土 地 利 用 の 配 置 を 、エ ク セ ル 画 面 で 確 認 し な が ら 簡 便 な 操 作 で 入 力 作 業 を 行 う こ と が で き る 。
様 々 な ヒ ー ト ア イ ラ ン ド 対 策( 緑 化 や 空 調 機 器 の 省 エ ネ 化 、保 水 性 舗 装 、地 域 冷 暖 房 、水 と 緑 の ネ ッ ト ワ ー ク 化 や「 風 の 道 」へ の 配 慮 な ど )の 効 果 を 総 合 的 に 予 測 で き る の で 、 ヒ ー ト ア イ ラ ン ド 対 策 の 立 案 を は じ め 、 環 境 教 育 等 へ の 活 用 も 期 待 さ れ て い る 。
4-1-2 計算方法
CFD解析の流れを図4-1-2に示す。
図4-1-2 CFD解析の流れ
建物や地表面のメッシュデータを作成し、気温と全天日射量から24時間の表面温 度を計算する。表面温度の計算時の水体の表面温度は、1時間毎の値を入力する。24 時間分の表面温度と全ての気象データから境界条件を作成し任意の時間を選択して CFDの周期定常計算を行う。計算結果は表面温度分布、気温分布、絶対湿度分布、3 次元風速分布が算出される。
4-2 CFD 解析プログラムの計算手順
4-2-1 動作環境
本研究では、都市の熱環境対策評価ツール~CFD on Excel~」の元となったプログ ラム(UHIツール)を用いてCFD解析を行った。UHIツールのプログラムは
Fortran90で書かれており、CFD計算を行うにはファイルをコンパイル、実行する必要
がある。UHIツールを用いて、CFD計算を行うために用いたソフトウェアを以下に示 す。
① Visual Studio 2015
② Intel parallel studio XE 2016 Professional Edition for Fortran Windows (Academic License)
③ Tecplot 2016 (Single Academic license)
プログラムの編集は、テキストエディタで行い②でコンパイルし実行ファイルを作 成する。①は②をインストールする前にインストールをする必要がある。③は表面温 度計算結果およびCFD計算結果を描写するために用いる。
4-2-1 ファイル構成
本プログラムは、メッシュデータの作成を行い、表面温度計算をし、CFD計算を 行う、という手順になっている。各工程で出力されたファイルは必要な所定のフォル ダに複製などしながら計算を進めて行く。
今回計算で用いたファイルとそのフォルダ構成を表4-2-1に示す。
表4-2-1 CFD解析プログラムのファイル構成
第1類 第2類 第3類 編集するファイル名 概要
MkDat メッシュデータを作成するフォルダ
dat_cosmo 建物モデルを作成するフォルダ
main_cosmo.f90 建物モデルを作成する.fort ファイル
このファイルをテキストエディタで編集し て、建物モデルを作成する。
main_cosmo.exe 上のファイルをコンパイルすることで作成
シュデータの元となるfort.11からfort.14 までのファイルが出力される。
fort.11 land に名前の変更
fort.12 porous に名前の変更
fort.13 grid に名前の変更
fort.14 z_gird に名前の変更
land 作成したら、exe_cosmoのフォルダに複
製する。
porous
gird
z_gird
src ソースコードのファイルがある
main.f90 メッシュサイズを変更した際に編集
module_data.f90 モデルを変更した際に編集
tsrf_dirsun_year.f 方位を変更した場合に編集
bin バイナリファイルがあるフォルダ
make.bat コマンドプロンプトで実行することでメッ
シュデータを作成する実行ファイルa.exe が出力される
a.exe メッシュデータを作成する
exe_cosmo メッシュデータを作成する。計算結果が表
示される。
go.bat a.exeを実行し、メッシュデータを作成す
る。
log 計算可否を確認するファイル。計算が正常 に行われていれば
normaly terminated エラーがあれば abnormaly terminated と表示される。
building 各建物の属性情報を示す。
Patch 各メッシュの属性情報を示す。
PatchIndex メッシュの属性情報の属性情報
View Factor 形態係数
MN01~12 各月の太陽高度を示すSunファイルがあ る。
sun 各月の太陽高度を示す.
st 表面温度計算を行う。
Surftemp 表面温度計算に必要なファイルがある。
MkDatで作成した以下のファイルはこの
フォルダに複製しておく。
grid land Patch PatchIndex porous ViewFactor MN8/building
MateEleProp 設定する地表面の物性値を入力するファイ
ル。
Weather_070810 表面温度計算用の気象データ
MN8 補足フォルダ
roomht 建物の熱負荷
SurfProp 設定する地表面の物性値を入力するファイ
ル。
watertemp 水面が指定されているメッシュの24時間
の水温を設定する。
Exe_st 表面温度計算を行う。
control 表面温度の計算設定を行う
file_name 表面温度に使う計算データを示す。
go.bat st.exeを実行する
log 計算過程を示す。
lp 計算可否を確認するファイル。計算が正常 に行われていれば
normaly terminated エラーがあれば abnormaly terminated と表示される。
Surftemp_ 表面温度計算結果
Surftempに名前を変更しst/surftempの フォルダに複製しておく。
tecst go.bat 表面温度計算結果描写ファイルを作成する
make.bat bin/a.exeを作成する。
PatchSrurfTemp_.plt 計算結果描写ファイル
bin バイナリファイルがあるフォルダ src ソースコードがあるフォルダ cfd cfd計算を行うフォルダ
Surftemp これまでに作成した表面温度計算結果まで
の必要なファイルを置いておく。
Mkbnd 境界条件を作成する。
go.bat 境界条件を作成する。
log 計算結果可否を表示する。
InpurData 入力ファイルを置く
Weather_070810 cfd計算用の気象データ
TRANS00~
TRANS24
各時刻の境界条件がある
bnd 境界条件
exe_cfd cfd計算を実行するフォルダ
cfd.exe cfd計算を行う
control cfd温度の計算設定を行う
filename cfd温度に使う計算データを示す。
go.bat st.exeを実行する
log 計算過程を示す。
lp 計算可否を確認するファイル。計算が正常 に行われていれば
normaly terminated エラーがあれば abnormaly terminated と表示される。
out1_ cfd計算結果
tecCFD go.bat CFD計算結果描写ファイルを作成する
make.bat bin/a.exeを作成する。
CPL_bld_3D_00.plt~
CPL_bld_3D_14.plt
計算結果
なお、末尾の2桁の数字は時刻ではなく、
定常周期計算を行った回数である