密集市街地の防災性改善を目的とした 隅切り整備による
消防車両の接近性向上効果に関する研究
2008 年 3 月
都 市 科 学 研 究 科 都 市 科 学 専 攻
覺 知 昇 一
博 士 ( 都 市 科 学 ) 学 位 論 文
■論文要旨
■目次
論文題名
密集市街地の防災性改善を目的とした 隅切り整備による
消防車両の接近性向上効果に関する研究
Study on Evaluation of Improving Accessibility of Fire Engines by Corner Cut
of Narrow Alleys in Crowded Wooden Houses Districts for Fire Damage Mitigation
論文要旨
消防車両の通行障害によって出火現場への到達が遅延する場合,消防活動が遅延し,延焼の 拡大や救助活動の遅れなどによる人的・物的被害の拡大を助長するおそれがある.密集市街地 の災害脆弱性が以前より指摘される要因のひとつに,この道路の狭隘にともなう通行障害の問 題がある.
その改善策には,道路拡幅や隅切り整備などの市街地整備対策及び,小型規格の消防車両の 開発・導入対策がある.基本的にはすべての道路拡幅によって密集市街地の防災性能の向上を 図ることが望ましいが,現状では道路拡幅を基本とした密集市街地整備は容易に進捗しない状 況が継続している.そこで,本研究では,実現性が高い消防車両の小型化とともに隅切り整備 に着目し,それらの効果を組み合わせて定量的に評価するとともに,小型消防車両に代表され る技術の進展等を踏まえた現行の消防活動体制に関して,消防活動の円滑性確保の観点から,
密集市街地の防災性改善のための計画手法を開発した.
本論文は,以下の全8章から成る.
第1章では,本研究の背景と目的,関連する既往研究を整理し,本論の位置付け及び構成を 明確にした.密集市街地の改善に関連する防災性能評価手法等を整理した結果,多様な観点か つ広範なスケールで多数の研究が行われ,実際の計画にも活用されているものの,近年導入さ れている小型消防車両を前提とした現行の消防活動の運用体制を考慮した知見はまだないこ と,交差点部における車両の旋回まで考慮した消防車両の到達可能性(アクセシビリティ)に ついては解明されていない状況が明らかとなり,本研究の目的を,その評価手法の構築まで 含めた密集市街地の防災性能の向上を計量的に明示する手法の開発とした検討を行うことと した.
第2章では,本研究で着目する消防活動の円滑性確保の重要性を明らかにした.まず,これ
まで用いられてきた「消防活動の困難性」に関する知見を整理し,本研究における「消防活動 の円滑性」に関する概念的考察を行った.続いて,消防活動の円滑性が損なわれた事例から,
実際の活動現場における円滑性の阻害要因の抽出を行った.さらに,平常時火災を対象とした 消防活動の時系列データと,火災発生場所付近の道路状況から,道路率の低さや道路幅員の狭 さと消防活動に要する時間の最大値が比例関係にあること等を指摘した.
第3章では,本研究における仮説の検証を行う上で基礎となる消防車両の旋回判定手法の構 築を行った.まず,手法構築に先立ち,道路と車両に関する既往の知見を整理することで,本 研究への適用可能な考え方や手法の存在を確認した.その結果,建築計画の分野での駐車場に おける平面計画の手法が適用しやすいことが確認されたが,隅切りは考慮されていないもので あった.そこで,この駐車場計画における知見に隅切りを加えた場合を想定し,車両が旋回可 能となる状況を設定することとした.
第4章では,第3章で構築した旋回判定手法を用いて隅切り整備と小型消防車両の導入に より,どの程度小さい交差点を旋回できるか,すなわち交差点の最小規模に関する考察を行っ た.理論的な比較考察のため,交差点で接続する2つの道路の幅員,道路の接続する角度のみ を用いて交差点状況を表すものとし,旋回が可能となる2つの道路の幅員の平均を最小化した ものを幅員和最小平均として定義することによって,隅切り底辺長及び車両寸法を変化させた 場合の旋回可能性の改善を明らかにすることができた.
第5章では,実際の密集市街地を対象として旋回判定手法を適用し,隅切り整備及び小型消 防車両導入の効果に関する考察を行った.対象地域を世田谷区太子堂及び墨田区京島とし,市 街地のGISデータから道路や交差点の状況に関する情報を取得した.また,旋回判定を行う 際には消防活動を行うためのクリアランスや既設の隅切り整備を考慮するものとして,シミュ レーションを行った.この結果から,隅切り整備及び小型消防車両導入による旋回可能性の改 善効果を定量的に示した.
第6章では,消防活動の円滑性を確保する上で重要となる,消防車両の建物に対する接近可 能性に関する考察を行った.まず,到達可能な道路から地域内の各建物への移動距離を測定す る方法を示すとともに,その移動距離を建物到達距離と定義し,隅切り整備による地区全体で の建物到達距離の減少を概観した.さらに,隅切りの整備効果を相対評価する手法を開発する ことを目的として,地区をブロック分割するとともに,建物到達距離や建物と道路の位置関係 からいくつかの指標を設定し,ブロック単位ごとのミクロな接近可能性を評価した.その上 で,個別の隅切り整備効果に関する総合順位付けや隅切りの位置同定を試みることで,計画的 な隅切り整備に向けた知見を得た.
第7章では,小型消防車両を前提とした隅切り整備を,現在の密集市街地整備に関する諸制 度の中で活用するための考察を行った.まず,細街路拡幅事業等の名称で各自治体が運用する
隅切り整備に対する奨励制度の実態を確認した.その結果,道路拡幅を伴わない,単独で行う 隅切り整備は奨励制度の対象となることが困難であることが明らかとなり,道路拡幅整備を前 提とした隅切り整備方法の提案を行った.こうした個別の隅切り整備に関する考察を行った上 で,計画的で積極的な働きかけを行うため,世田谷区地先道路整備方針を事例として住民の意 向を反映しながら隅切り整備を推進する仕組みを考察した.
第8章は結論である.本研究で論考した成果は,
1 今後の防災都市づくりを進めるにあたり,高齢化の進展を踏まえると,延焼抑制性能の
みならず,円滑な人命救助活動を可能とする空間整備が望まれ,将来的な市街地の安全需要を 適確に把握する必要があること,2 その安全需要に対応するための改善手法のひとつとして,
科学的根拠に基づく細街路の隅切り整備による市街地の防災性能向上の定量的な評価を可能と したこと,3 小型消防車両の導入と隅切り整備により,建物に対する消防車両の接近性向上,
すなわち消防活動の円滑性確保が可能な市街地空間がより効果的に整備できること,4 時間 的かつ財政的な制約を抱える自治体において,限定的な隅切り整備によって最大の効果を実現 するための隅切り位置検討手法を開発したこと,5 この手法を用いることによって,その安 全を享受するだけでなく,自ら安全な環境を作る主体となっている住民にとっても,隅切り整 備の効果を明示でき,合意の形成に資すること,に集約できる.その上で,狭隘道路の全面拡 幅を基本的対策としてきたが,容易に進捗しない密集市街地において,消防車両の小型化と隅 切り整備による今後の密集市街地における現実的かつ緊急的な防災性改善に関する提言を論考 した.
目次
1 序 論 1
1.1 研 究 の 背 景. . . . 1
1.1.1 密 集 市 街 地 の 災 害 脆 弱 性 . . . . 1
1.1.2 切 迫 す る 首 都 直 下 地 震 の 発 生 . . . . 1
1.1.3 進 展 す る 高 齢 化. . . . 2
1.1.4 密 集 市 街 地 に 対 す る 改 善 策 の 状 況 . . . . 4
1.2 仮 説 の 設 定 と 本 研 究 の 目 的. . . . 6
1.3 既 往 研 究 の 整 理 と 本 研 究 の 位 置 付 け . . . . 8
1.3.1 市 街 地 の 防 災 性 能 評 価 の 視 点 か ら . . . . 8
1.3.2 狭 隘 道 路 整 備 の 視 点 か ら . . . . 18
1.4 論 文 の 構 成. . . . 23
1.5 第1章 の ま と め . . . . 24
2 消 防 活 動 の 円 滑 性・困 難 性 29 2.1 さ ま ざ ま な 消 防 活 動 モ デ ル と 本 研 究 の 主 題 . . . . 29
2.1.1 消 防 活 動 の 困 難 性 の 種 類 . . . . 29
2.1.2 消 防 活 動 の 困 難 性 の 表 現 方 法 . . . . 30
2.1.3 消 防 活 動 の 円 滑 性 . . . . 33
2.2 平 常 時 火 災 の 事 例 か ら み た 消 防 活 動 の 困 難 性 . . . . 38
2.2.1 災 害 事 例 . . . . 38
2.3 平 常 時 火 災 に お け る 消 防 活 動 時 間 に 関 す る 考 察 . . . . 42
2.3.1 消 防 活 動 に 関 す る 時 間 デ ー タ . . . . 43
2.3.2 空 間 デ ー タ . . . . 44
2.3.3 消 防 活 動 時 間 デ ー タ と 空 間 デ ー タ の 重 ね 合 わ せ. . . . 45
2.3.4 デ ー タ の 重 ね 合 わ せ と 考 察 . . . . 49
2.4 第2章 の ま と め . . . . 51
3 旋 回 判 定 手 法 の 構 築 55 3.1 道 路 と 車 両 に 関 連 す る 既 往 研 究 の 整 理. . . . 55
3.1.1 道 路 工 学 . . . . 55
3.1.2 ロ ボ ッ ト 工 学 . . . . 58
3.1.3 建 築 計 画 . . . . 62
3.2 隅 切 り 整 備 の 基 準 . . . . 63
3.2.1 最 低 基 準 で な い 理 由 . . . . 64
3.2.2 隅 切 り 規 定 の 経 緯 に つ い て . . . . 65
3.3 小 型 消 防 車 両 の 現 況 . . . . 66
3.3.1 寸 法 と 旋 回 性 能 か ら 見 た 小 型 消 防 車 両 . . . . 66
3.3.2 小 型 消 防 車 両 の 消 防 性 能 . . . . 68
3.3.3 運 用 の 現 況 . . . . 69
3.3.4 今 後 の 車 両 開 発 の 動 向 . . . . 69
3.4 旋 回 判 定 手 法 の 構 築 . . . . 71
3.4.1 旋 回 の 定 義 . . . . 71
3.4.2 旋 回 に 必 要 な 領 域 の 定 式 化 . . . . 71
3.4.3 最 大 方 向 角 の 算 出 . . . . 72
3.4.4 旋 回 が 可 能 と な る 条 件 . . . . 74
3.5 第3章 の ま と め . . . . 76
4 旋 回 を 考 慮 し た 交 差 点 の 最 小 規 模 79 4.1 空 間 の 規 模. . . . 79
4.1.1 本 章 の 目 的 と 意 義 . . . . 79
4.1.2 「 空 間 の 規 模 」に 関 す る 知 見 の 整 理 . . . . 80
4.1.3 交 差 点 の 最 小 規 模 把 握 に 関 す る 方 針 . . . . 87
4.2 交 差 点 の 最 小 規 模 の 把 握 . . . . 89
4.2.1 交 差 点 の 最 小 規 模 の 把 握 方 法 . . . . 89
4.2.2 幅 員 和 平 均 の 推 移 . . . . 89
4.3 幅 員 和 最 小 平 均 の 導 出. . . . 93
4.3.1 1階 微 分 の 導 出 . . . . 93
4.3.2 2階 微 分 の 導 出 . . . . 93
4.4 隅 切 り 底 辺 長 と 方 向 角 に 関 す る 確 認 . . . . 96
4.5 幅 員 和 最 小 平 均 に よ る 交 差 点 の 最 小 規 模 の 比 較 . . . . 97
4.5.1 幅 員 和 最 小 平 均 の 導 出 . . . . 97
4.5.2 幅 員 和 最 小 平 均 に よ る 交 差 点 規 模 の 比 較 . . . . 98
4.6 第4章 の ま と め . . . 101
5 実 存 密 集 市 街 地 に お け る 旋 回 可 能 性 の 向 上 103 5.1 本 章 の 進 め 方 . . . 103
5.2 道 路 デ ー タ の 抽 出 方 法 と 抽 出 結 果 . . . 103
5.3 対 象 地 区( 太 子 堂・京 島 )の 概 要 . . . 105
5.3.1 両 地 区 の 道 路 状 況 の 概 要 . . . 105
5.3.2 デ ー タ 抽 出 作 業. . . 105
5.3.3 デ ー タ 抽 出 結 果. . . 106
5.3.4 旋 回 判 定 の 設 定. . . 107
5.4 旋 回 判 定 結 果 の 考 察 . . . 110
5.4.1 隅 切 り 整 備 な し で の 小 型 消 防 車 両 導 入 に よ る 改 善 効 果 . . . 111
5.4.2 隅 切 り 整 備 を 行 っ た 場 合 の 改 善 効 果 . . . 112
5.4.3 旋 回 を 可 能 に す る 隅 切 り の 整 備 実 現 性 . . . 113
5.4.4 既 設 隅 切 り の 評 価 . . . 113
5.5 幅 員 和 最 小 平 均 の 簡 便 指 標 と し て の 妥 当 性 . . . 115
5.5.1 幅 員 和 最 小 平 均 に よ る 旋 回 判 定. . . 115
5.5.2 旋 回 判 定 の 差 異. . . 116
5.6 第5章 の ま と め . . . 117
6 建 物 に 対 す る 接 近 可 能 性 の 向 上 119 6.1 旋 回 判 定 結 果 を 用 い た 到 達 可 能 な 道 路 ネ ッ ト ワ ー ク の 構 築 . . . 120
6.1.1 ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 方 法 . . . 120
6.1.2 到 達 可 能 道 路 な 道 路 長 に 関 す る 考 察 . . . 120
6.1.3 接 近 可 能 性 の 把 握 に 向 け た 準 備. . . 121
6.2 接 近 可 能 性 の 把 握 手 法 と 地 区 全 体 で の 分 析 . . . 122
6.2.1 接 近 可 能 性 を 把 握 す る 手 法 . . . 122
6.2.2 建 物 到 達 距 離 の 測 定 方 法( 図6-5,図6-6) . . . 123
6.2.3 地 区 全 体 で の 建 物 到 達 距 離 の 減 少 . . . 125
6.3 接 近 可 能 性 の 指 標 別・ブ ロ ッ ク 単 位 で の 分 析. . . 128
6.3.1 建 物 到 達 距 離 に 関 す る 指 標 . . . 128
6.3.2 指 標【1】:建 物 到 達 距 離 減 少 の 総 和 . . . 130
6.3.3 指 標【2】:建 物 到 達 距 離 減 少 の 平 均 . . . 131
6.3.4 指 標【3】:一 定 距 離 以 遠 と な る 建 物 数 . . . 131
6.3.5 指 標【4】:消 防 車 両 が 到 達 可 能 な 道 路 に 面 す る 建 物 数 . . . 133
6.4 個 別 の 隅 切 り 整 備 に よ る 効 果 . . . 135
6.4.1 各 指 標 に お け る 効 果 の 高 い 整 備 位 置 . . . 135
6.4.2 隅 切 り 整 備 位 置 の 総 合 評 価 の 試 み . . . 136
6.5 第6章 の ま と め . . . 137
7 隅 切 り 整 備 の 制 度 的 検 討 141 7.1 本 章 の 目 的 と 流 れ . . . 141
7.2 隅 切 り 整 備 に 対 す る 助 成 金. . . 141
7.3 道 路 拡 幅 を 前 提 と し た 隅 切 り 整 備 . . . 143
7.4 隅 切 り 整 備 計 画 の 推 進. . . 145
7.5 角 地 地 権 者 へ の 配 慮 . . . 145
7.6 第7章 の ま と め . . . 146
8 結 論 149 8.1 本 論 文 の 要 旨 . . . 149
8.2 仮 説 の 検 証 と 提 言 . . . 151
8.2.1 本 研 究 で 設 定 し た 仮 説 . . . 151
8.2.2 仮 説 の 検 証 . . . 151
8.2.3 密 集 市 街 地 の 防 災 性 改 善 を 目 的 と し た 提 言 . . . 152
8.3 提 言 の 実 現 に 向 け て . . . 152
8.3.1 防 災 都 市 づ く り の 第 一 段 階—目 指 す「 安 全 」そ の も の を 考 え る . 153 8.3.2 防 災 都 市 づ く り の 第 二 段 階—「 安 全 」の 実 現 方 法 と 実 現 性 . . . . 153
8.3.3 こ れ か ら の 密 集 市 街 地 の ま ち づ く り . . . 155
8.4 今 後 の 課 題 と 展 望 . . . 156
8.4.1 研 究 上 の 課 題 . . . 156
8.4.2 政 策 立 案 上 の 課 題 . . . 158
図目次
1-1 カ ー ラ ー に よ る 救 命 曲 線 . . . . 41-2 本 研 究 の 背 景・仮 説・目 的 の 関 係 . . . . 6
1-3 本 論 文 の 構 成 . . . . 23
2-1 こ れ ま で の 消 防 活 動 困 難 性 の モ デ ル . . . . 32
2-2 延 焼 火 災 を 対 象 と し た 消 防 活 動 の 流 れ . . . . 33
2-3 密 集 市 街 地 を 対 象 と し た 平 時 消 防 活 動 の 流 れ . . . . 34
2-4 消 防 力 の 整 備 指 針 に お け る ペ ア 運 用 モ デ ル . . . . 36
2-5 事 例1 . . . . 39
2-6 事 例2 . . . . 40
2-7 事 例3 . . . . 41
2-8 事 例4 . . . . 41
2-9 震 災 時 通 行 可 能 道 路 率 の 考 え 方 . . . . 47
2-10 周 辺 道 路 率 の 考 え 方 . . . . 48
2-11 最 近 隣 道 路 幅 員 の 設 定 . . . . 49
2-12 震 災 時 有 効 道 路 率 と 準 備 時 間 . . . . 50
2-13 道 路 率 と 準 備 時 間. . . . 50
2-14 最 近 隣 道 路 幅 員 と 準 備 時 間 . . . . 51
3-1 曲 線 部 の 拡 幅 量 . . . . 56
3-2 緩 和 切 線 に よ る 拡 幅 擦 り つ け . . . . 57
3-3 障 害 物 を 回 避 す る ロ ボ ッ ト を 対 象 と し た 例 . . . . 59
3-4 車 両 の 旋 回 に 関 す る 運 動 学 的 記 述. . . . 60
3-5 車 両 の 状 態 の ツ リ ー 表 記 . . . . 61
3-6 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 の 実 例 . . . . 61
3-7 車 路 幅 の 算 出1 . . . . 62
3-8 車 路 幅 の 算 出2 . . . . 63
3-9 駐 車 に 必 要 な 各 寸 法 . . . . 63
3-10 各 種 車 両 の 寸 法 等. . . . 67
3-11 マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 工 科 大 学 開 発 の『City Car』. . . . 71
3-12 旋 回 の 定 義 . . . . 72
3-13 旋 回 領 域 の 定 式 化. . . . 73
3-14 最 大 方 向 角 の 算 出. . . . 74
3-15 通 行 可 能 な 条 件 の 一 般 的 記 述 . . . . 75
3-16 旋 回 が 可 能 と な る 条 件 . . . . 75
4-1 消 防 車 両 と ホ ー ス カ ー( 電 動 ホ ー ス カ ー ) . . . . 84
4-2 道 路 幅 員4mの 消 防 活 動 に よ る 解 釈 . . . . 84
4-3 救 急 車 の 旋 回 . . . . 87
4-4 は し ご 車 の 旋 回 . . . . 88
4-5 旋 回 判 定 と 幅 員 和 平 均 . . . . 90
4-6 幅 員 和 平 均 の 推 移(2変 数 ) . . . . 90
4-7 幅 員 和 平 均 の 推 移(1変 数 ) . . . . 91
4-8 幅 員 和 平 均(ϕ= 60[deg]) . . . . 91
4-9 幅 員 和 平 均(ϕ= 90[deg]) . . . . 92
4-10 幅 員 和 平 均(ϕ= 120[deg]) . . . . 92
4-11 1階 微 分 の 符 号 . . . . 98
4-12 2階 微 分 の 符 号 . . . . 99
4-13 幅 員 和 最 小 平 均 の 推 移 . . . 100
5-1 道 路・交 差 点 の 情 報 抽 出 方 法 . . . 104
5-2 対 象 地 域 の 概 要 . . . 105
5-3 太 子 堂 地 区 に お け る 道 路・交 差 点 情 報 の 抽 出 作 業 . . . 106
5-4 幅 員 組 合 せ( 太 子 堂 ) . . . 107
5-5 幅 員 組 合 せ( 京 島 ) . . . 107
5-6 幅 員 平 均 と 角 度 の 組 合 せ( 太 子 堂 ) . . . 108
5-7 幅 員 平 均 と 角 度 の 組 合 せ( 京 島 ) . . . 108
5-8 ク リ ア ラ ン ス を 考 慮 し た 旋 回 判 定. . . 109
5-9 旋 回 判 定 に お け る 既 設 隅 切 り の 扱 い . . . 110
5-10 旋 回 を 可 能 に す る 隅 切 り のGIS上 で の 作 図 . . . 114
6-1 本 章 に お け る 研 究 の 進 め 方 . . . 119
6-2 到 達 可 能 な 道 路( 普 通 ポ ン プ 車 ) . . . 120
6-3 到 達 可 能 な 道 路( 小 型 ポ ン プ 車 ) . . . 121
6-4 到 達 可 能 な 道 路 と 隅 切 り 整 備 位 置. . . 122
6-5 建 物 到 達 距 離 の 測 定 方 法 . . . 124
6-6 建 物 到 達 距 離 の 測 定 例 . . . 124
6-7 地 区 全 体 で の 隅 切 り 整 備 に よ る 建 物 到 達 距 離 減 少. . . 127
6-8 建 物 到 達 距 離 減 少 の 統 計 的 把 握—全 建 物. . . 128
6-9 建 物 到 達 距 離 減 少 の 統 計 的 把 握—減 少 し た 建 物 . . . 128
6-10 建 物 到 達 距 離 減 少 の 統 計 的 把 握—減 少 分. . . 129
6-11 建 物 到 達 距 離 減 少 の 統 計 的 把 握—整 備 前 距 離 と 整 備 後 減 少 分 . . . 129
6-12 接 近 可 能 性 の 指 標. . . 130
6-13 地 区 全 体 の ブ ロ ッ ク へ の 分 割 . . . 131
6-14 効 果 が 高 い 隅 切 り 整 備 位 置 . . . 136
7-1 拡 幅 整 備 を 前 提 と し た 隅 切 り 整 備 方 法 . . . 144
7-2 世 田 谷 区 地 域 地 先 道 路 整 備 計 画 の 策 定 の 流 れ . . . 146
表目次
1-1 改 善 策 の 状 況 等 . . . . 52-1 こ れ ま で の 消 防 活 動 の 困 難 性 表 現. . . . 31
2-2 消 防 活 動 時 間 デ ー タ の 火 災 種 別 内 訳 . . . . 43
2-3 建 物 構 造 別 の 消 防 活 動 に 要 す る 時 間 等 . . . . 44
3-1 小 型 ポ ン プ 車 の 配 置 状 況( 東 京 消 防 庁2006年4月1日 ) . . . . 70
3-2 車 両 の 仕 様 . . . . 73
4-1 狭 隘 道 路 の 幅 員 規 定 関 連 年 表 . . . . 81
4-2 隅 切 り 長 と 幅 員 和 最 小 平 均 . . . 100
5-1 旋 回 不 能 数 の 変 化( 太 子 堂 ). . . 111
5-2 旋 回 不 能 数 の 変 化( 京 島 ) . . . 111
5-3 隅 切 り 底 辺 長 と 整 備 可 能 数( 太 子 堂 ) . . . 113
5-4 隅 切 り 底 辺 長 と 整 備 可 能 数( 京 島 ) . . . 113
5-5 既 設 隅 切 り の 旋 回 不 能 数( 太 子 堂 ) . . . 114
5-6 既 設 隅 切 り の 旋 回 不 能 数( 京 島 ) . . . 115
5-7 旋 回 判 定 の 差 異 . . . 116
6-1 建 物 到 達 距 離 の 減 少( 総 和・平 均 ) . . . 132
6-2 表6-1内 の 記 号. . . 132
6-3 建 物 到 達 距 離 が 一 定 以 遠 と な る 建 物 数 . . . 133
6-4 表6-3内 の 記 号. . . 133
6-5 消 防 車 両 が 到 達 可 能 な 道 路 に 面 す る 建 物 数 . . . 134
6-6 表6-5内 の 記 号. . . 134
6-7 各 指 標 で 効 果 が 高 い 隅 切 り 整 備 位 置 と 各 指 標 で の 順 位 . . . 135
6-8 個 別 隅 切 り の 順 位 総 和 . . . 137
7-1 東 京23区 に お け る 隅 切 り 整 備 に 対 す る 助 成・奨 励 制 度 . . . 142
■第1章 序論
1.1 研究の背景
1.2 仮説の設定と本研究の目的
1.3 既往研究の整理と本研究の位置付け
1.4 論文の構成
1.5 第 1 章のまとめ
1
序論
1.1
研究の背景
1.1.1 密集市街地の災害脆弱性
我 が 国 の 多 種 多 様 な 都 市 空 間 に お い て ,防 災 ,生 活 環 境 ,文 化 や 伝 統 な ど 多 く の 観 点 か ら 永 年 に わ た っ て 論 じ ら れ て き た 対 象 の ひ と つ に 密 集 市 街 地 が あ る . そ の 成 り 立 ち に は い く つ か の 経 緯 が あ る が ,結 果 と し て 道 路 な ど の 基 盤 整 備 が 行 わ れ な い ま ま ,高 密 度 に 建 築 物 が 立 ち 並 ぶ 構 造 を 持 つ こ と と な っ た 密 集 市 街 地 は 災 害 に 対 す る 脆 弱 性 が 継 続 し て 指 摘 さ れ て き た .そ し て ,そ の 災 害 脆 弱 性 を 克 服 し ,防 災 性 向 上 を 目 指 し た 幾 多 の 取 組 み が あ っ た に も か か わ ら ず ,わ が 国 の 都 市 部 を は じ め と し て 多 く の 密 集 市 街 地 が 残 っ た ま ま 今 日 に 至 っ て い る . 密 集 市 街 地 が 災 害 時 の 脆 弱 性 を 指 摘 さ れ て き た 要 因 の ひ と つ と し て ,地 域 内 の 道 路 の 多 く が 狭 隘 で あ る た め ,消 防 車 両 な ど の 各 種 緊 急 車 両 の 通 行 障 害 が 発 生 す る こ と が あ げ ら れ る .こ の 消 防 車 両 の 通 行 障 害 は ,火 災 な ど の 災 害 発 生 の 際 に 消 防 車 両 が 到 達 す べ き 災 害 発 生 場 所 に 接 近 す る こ と が 困 難 と な る 状 況 を 生 む .災 害 発 生 場 所 へ の 消 防 車 両 の 接 近 が 困 難 な 場 合 ,消 防 車 両 が 到 達 可 能 な 位 置 か ら の 消 防 用 ホ ー ス の 延 長 や 資 器 材 の 搬 送 な ど に 要 す る 距 離 が 長 く な る な ど ,移 動 距 離 に 応 じ た 時 間 的 損 失 が 生 じ る .而 し て ,こ の 時 間 的 損 失 は 放 水 活 動 や 人 命 救 助 活 動 の 遅 れ を 招 き ,人 的・物 的 被 害 の 拡 大 に つ な が る こ と と な る . す な わ ち ,密 集 市 街 地 の 災 害 脆 弱 性 を 緩 和 す る た め に は ,災 害 発 生 場 所 に 対 す る 消 防 車 両 の 接 近 可 能 性 を 高 め る こ と が 重 要 と い え る .
1.1.2 切迫する首都直下地震の発生
1995年1月17日 に 発 生 し た 阪 神 淡 路 大 震 災 は 消 防 車 両 の 通 行 障 害 が 大 き な 被 害 に 結 び つ く こ と が 露 と な っ た 災 害 で あ り ,密 集 市 街 地 の 災 害 脆 弱 性 を 改 め て 認 識 さ せ た .激 し い 揺 れ の 後 に 発 生 し た 火 災 に よ り ,多 く の 建 築 物 が 焼 損 し た .焼 損 し た 地 域 の 多 く は ,老 朽 化 し た 木 造 建 築 物 が 密 集 し ,道 路 あ る い は 公 園 と い っ た 都 市 基 盤 整 備 が な さ れ て い な い 密 集 市 街 地 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た .
こ の 震 災 時 の 火 災 に よ る 被 害 が 大 き く な っ た 原 因 と し て 次 の こ と が 指 摘 さ れ
て い る .第 一 に ,地 震 動 に よ り 発 生 し た 火 災 は 同 時 多 発 的 で あ り ,そ れ ら の 火 災 に 対 応 す る だ け の 消 防 力 が 絶 対 的 に 不 足 し た こ と で あ る .第 二 に ,倒 壊 し た 家 屋 に よ り 道 路 閉 塞 が 発 生 し ,各 種 緊 急 車 両 の 通 行 可 能 な 道 路 が 限 定 さ れ ,か つ 地 震 動 に よ り 多 く の 水 利 が 損 壊 し ,使 用 可 能 な 水 利 が 限 定 さ れ た こ と で 消 防 活 動 に 時 間 的 な 大 き な 遅 れ が 生 じ た こ と で あ る .
こ の 震 災 の 教 訓 を 基 に「 密 集 市 街 地 に お け る 防 災 街 区 の 整 備 の 促 進 に 関 す る 法 律 」( 以 下 ,密 集 法 と い う .)の 制 定 な ど ,密 集 市 街 地 の 整 備 に 向 け た 取 り 組 み の 推 進 に あ た り ,具 体 的 な 目 標 を 掲 げ た 国 家 的 政 策 が 展 開 さ れ た .し か し , 冒 頭 に 述 べ た と お り 現 在 も 密 集 市 街 地 は 多 く 残 っ て お り ,そ の 改 善 が 大 き く 進 ん で い る と は 言 え な い 状 況 に あ る .実 際 ,密 集 市 街 地 整 備 に 関 す る 進 捗 の 遅 れ を 認 識 し た 上 で ,平 成19年3月 に は 密 集 法 の 一 部 改 正 が 行 わ れ て い る .
こ う し た 状 況 の 中 ,2004年8月 に は 文 部 科 学 省 地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 の 地 震 調 査 委 員 会 は 首 都 圏 を 含 む 南 関 東 でM7ク ラ ス の 地 震 が 発 生 す る 確 率 を 一 定 期 間 ご と に 算 出 し ,30年 以 内 にM7ク ラ ス の 地 震 が 発 生 す る 確 率 を70% と 公 表 し た .す な わ ち ,発 生 し た 際 の 甚 大 な 被 害 が 予 想 さ れ る 首 都 直 下 地 震 の 発 生 の 切 迫 性 が 具 体 的 に 示 さ れ た .
具 体 的 な 数 値 が 示 さ れ た こ と に よ り 日 を 追 う ご と に 増 す 切 迫 性 に 対 し ,自 然 な 建 物 更 新 や 道 路 拡 幅 に 伴 う 密 集 市 街 地 整 備 の 速 度 は 緩 慢 と 言 え る .こ う し た 大 規 模 災 害 発 生 の 切 迫 性 に あ る 中 ,現 在 進 め て い る 密 集 市 街 地 等 に 多 く 存 す る 1981年 の 新 耐 震 基 準 適 用 以 前 の 建 築 物 に 対 す る 個 別 耐 震 化 は ,倒 壊 に よ る 住 宅 内 で の 圧 死 を 防 ぐ の み な ら ず 道 路 閉 塞 発 生 の 減 少 を 目 指 す も の で あ り ,震 災 発 生 時 の 被 害 軽 減 の 取 組 み と し て 震 災 時 の 道 路 閉 塞 を 考 慮 せ ず と も ,平 時 か ら 災 害 発 生 場 所 に 対 し て 消 防 車 両 が 接 近 す る た め の 改 善 が 緊 急 性 を 伴 っ て 望 ま れ る 状 況 に あ る .
1.1.3 進展する高齢化
消 防 車 両 の 通 行 障 害 が 発 生 す る の は 前 述 の 震 災 時 に 限 っ た 話 で は な い .事 実 ,狭 隘 な 道 路 を 多 数 有 す る 密 集 市 街 地 内 で は ,平 時 の 災 害 対 応 に お い て も 災 害 発 生 場 所 に 消 防 車 両 等 が 接 近 で き な い 状 況 が あ り ,今 後 の 更 な る 高 齢 化 を 視 野 に 入 れ る と ,次 の 二 つ の 課 題 が 考 え ら れ る .
総 務 省 消 防 庁 の 消 防 統 計(2006年 )に よ れ ば ,過 去10年 間 の 平 時 火 災 に お け る 死 者 の う ち ,65歳 以 上 高 齢 者 が 継 続 し て 半 数 以 上 を 占 め て お り ,そ の 主 た る 原 因 が 逃 げ 遅 れ で あ る .つ ま り ,平 時 火 災 で は 身 体 機 能 の 低 下 に よ り 避 難 が 困 難 と な り や す い 高 齢 者 に 被 害 が 集 中 し て い る と い え る .こ れ に 対 し ,2006年 の 消 防 法 改 正 で は 一 般 住 宅 居 室 内 に 対 す る 火 災 警 報 器( 住 宅 用 火 災 警 報 器 )の 設 置 の 義 務 化 を は か っ た .し か し ,そ の 普 及 は 一 朝 一 夕 に は 進 ま な い も の と 思 わ れ る .現 時 点 で の 日 本 国 内 に お け る 住 宅 用 火 災 警 報 器 の 普 及 率 は 公 表 さ れ て い な い が ,米 国 で は2002年 の 時 点 で の 普 及 率 が94%で あ り ,1978年 時 点 で の32%
か ら24年 ,英 国 で は2001年 の 時 点 で の 普 及 率 が82%で あ り ,1988年 時 点 で の 8%か ら13年 の 期 間 を 要 し て い る こ と か ら ,日 本 で も 相 当 の 歳 月 が 必 要 と な る こ と が 予 想 さ れ る .
同 資 料 に よ れ ば ,救 急 件 数 及 び 搬 送 人 員 数 は 近 年 増 加 の 一 途 を 辿 っ て お り , 急 病 で 搬 送 さ れ た 人 員 の50.3%(1,479,978人/2,943,831人 )が65歳 以 上 の 高 齢 者 で あ る .年 々 増 加 す る 救 急 需 要 に 対 し て 東 京 消 防 庁 で は ,消 防 隊 と 救 急 隊 が 連 携 し て 活 動 す るPA(Pumper–Ambulance)連 携 を2000年 か ら 運 用 し て い る .こ の PA連 携 は ,傷 病 者 が 発 生 し た 地 点 に 最 も 近 い 消 防 署 の 救 急 隊 が 不 在 の 場 合 ,他 の 消 防 署 等 か ら の 救 急 隊 が 到 着 す る ま で の 間 ,消 防 隊 が 傷 病 者 の 心 肺 蘇 生 処 置 等 の 応 急 的 な 処 置 を 行 い ,救 急 隊 到 着 後 は 傷 病 者 の 搬 送 支 援 等 を 行 う も の で あ り ,消 防 隊 の 早 期 到 着 を 前 提 と し た も の で あ る .
カ ー ラ ー の 救 命 曲 線( 図1-1)で は ,「 心 臓 停 止 後3分 で 死 亡 率 約50%,呼 吸 停 止 後10分 で 死 亡 率 約50%」と 説 明 さ れ る 一 方 で ,救 急 隊 が 現 場 に 到 着 す る ま で の 時 間 は 全 国 平 均 で6.5分(2005年 中 の 数 値 で 同 資 料 に よ る も の )で あ る .な お ,心 臓 停 止 に 陥 っ た 者 の 近 く に い た 家 族 等( バ イ ス タ ン ダ ー )に よ る 応 急 処 置 を 行 っ た 割 合 は 救 急 隊 が 搬 送 し た 心 肺 停 止 傷 病 者 の 約3割(2005年 中 の 数 値 で 同 資 料 に よ る も の )で あ り ,残 る7割 の 傷 病 者 は 救 急 隊 に よ る 心 肺 蘇 生 処 置 を 待 っ て い た こ と に な る .
他 方 ,本 研 究 で 対 象 と す る 密 集 市 街 地 で は 高 齢 者 率 の 高 さ が 指 摘 さ れ て い る .三 船 ら(2001)に よ れ ば ,東 京 都 区 部 の 高 齢 者 率(65歳 以 上 の 人 口 の 割 合 ) は ,平 成12年1月1日 時 点 で15.51%で あ る の に 対 し ,墨 田 区 京 島 地 区:20.39%, 世 田 谷 区 太 子 堂:15.72%,豊 島 区 東 池 袋 地 区:16.81%( す べ て 同 時 点 で の 住 民
図1-1 カーラーによる救命曲線
基 本 台 帳 に よ る も の )と な っ て い る .そ の 理 由 と し て ,住 宅 お よ び 敷 地 規 模 の 狭 小 さ が も た ら す 増 改 築 の 困 難 さ に 起 因 す る 親 世 帯 と 子 世 帯 の 同 居 の 少 な さ な ど が あ り ,密 集 市 街 地 特 有 の 物 理 的 空 間 の 余 裕 の 少 な さ が 高 齢 者 率 の 高 さ を 導 く こ と を 示 し て い る .
以 上 の こ と か ら ,近 い 将 来 三 人 に 一 人 が 高 齢 者 と な る と 言 わ れ る 超 高 齢 社 会 の 到 来 を 前 に ,平 時 火 災 に お い て さ ら に 増 加 す る と 思 わ れ る 高 齢 者 の 逃 げ 遅 れ の 早 期 救 出 やPA連 携 で 増 加 す る こ と が 予 想 さ れ る 心 肺 停 止 傷 病 者 に 対 す る 早 期 の 処 置 開 始 を 考 慮 す る と ,高 齢 者 率 の 高 い 密 集 市 街 地 内 の 建 物 に 対 し て 消 防 車 両 が 接 近 す る た め の 対 応 が 重 要 と な っ て い る 状 況 に あ る .
1.1.4 密集市街地に対する改善策の状況
上 記 ,三 つ の 背 景 で は 緊 急 的 な 密 集 市 街 地 に 対 す る 改 善 の 必 要 性 を 述 べ た . 一 方 で ,近 い 将 来 に お け る 緊 急 的 対 応 の 必 要 性 を 改 め て 述 べ て い る も の の ,密 集 市 街 地 の 災 害 時 の 脆 弱 性 の 改 善 の た め に こ れ ま で に も 多 く の 取 組 み が な さ れ て き た が ,そ の 進 捗 が 進 ん で い る と は い え な い 現 状 で あ る こ と も 冒 頭 に 述 べ た と お り で あ る .
こ れ ま で の 取 組 み の う ち ,特 に 消 防 車 両 等 の 緊 急 車 両 の 通 行 に 関 す る も の は
「 道 路 を 広 く し ,車 両 を 小 さ く す る 」と い う 空 間 と 物 体 の 大 小 関 係 に つ い て の 相 対 的 改 善 と し て 行 う こ と が 目 標 と さ れ て き た と 言 え よ う .こ の 相 対 的 改 善 と
は ,空 間 側 の 改 善 策 と し て ,「 道 路 の 拡 幅 」と 交 差 点 角 地 に 行 わ れ る「 隅 切 り 整 備 」が あ り ,物 体 側 の 改 善 策 に は「 小 型 消 防 車 両 の 開 発 と 導 入 」が あ る .
こ う し た 改 善 策 を 組 合 せ る こ と で 密 集 市 街 地 に お け る 消 防 車 両 等 の 通 行 障 害 の 発 生 を 少 な く し ,防 災 性 の 向 上 を は か る こ と が 必 要 と さ れ て き て お り ,そ の 状 況 等 は 表1-1の と お り で あ る .
改善策 道路拡幅 隅切り整備 小型消防車両
状況 基本 拡幅に付随的 導入・運用中
基準・根拠 幅員4m 底辺2mの二等辺三角形 放水能力の維持 実現性 低い(沿道地権者が多い) 高い(角地のみを対象) 運用中(今後も技術進展)
効果 断面で直進のみ把握 不明 不明
表1-1 改善策の状況等
ま ず ,道 路 拡 幅 で あ る .そ の 根 拠 法 と な っ て い る 建 築 基 準 法 制 定 か ら56年 を 経 て も な お ,2項 道 路( 同 法 第42条 第2項 に 該 当 す る 道 路 )と 呼 ば れ る 幅 員4m 未 満 の 道 路 は ,制 定 当 時 の 状 況 の 証 言 を 必 要 と す る な ど ,道 路 の 判 定 方 法 自 体 が 困 難 で あ る こ と ,そ し て ,そ も そ も の 敷 地 規 模 の 狭 小 さ が 建 替 え 時 に お け る 現 行 基 準 へ の 移 行 を 難 し く す る な ど ,複 数 の 状 況 が 相 乗 し あ う こ と で ,建 物 の 更 新 と 同 時 に2項 道 路 の 解 消 も 大 き く 進 む こ と な く ,多 く の 密 集 市 街 地 が 残 存 す る 結 果 と な っ た .
一 方 で ,隅 切 り 整 備 は 道 路 拡 幅 と 同 時 に 行 う べ き 整 備 と い う 制 度 上 の 枠 組 み で 行 わ れ る こ と と な っ て お り ,自 治 体 ご と に そ の 整 備 の 基 準 が 定 め ら れ て い る .道 路 拡 幅 と 一 体 的 に 行 う こ と が 前 提 と な っ て い る た め ,認 識 さ れ に く い が , 角 地 部 分 の み を 対 象 と す る 整 備 で あ る こ と か ら ,拡 幅 の 対 象 と な る 道 路 沿 道 の 地 権 者 等 の 関 係 者 に 対 す る 調 整 を 必 要 と す る 道 路 拡 幅 整 備 に 比 べ て ,相 対 的 で は あ る が ,実 現 性 が 高 い 手 法 と 思 わ れ る .
他 方 ,小 型 消 防 車 両 の 開 発 経 緯 に つ い て の 整 理 さ れ た 資 料 は 存 在 し な い も の の ,技 術 の 進 展 に 伴 い ,1970年 代 か ら 登 場 し て お り ,阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 ,機 動 性 向 上 の 観 点 か ら 各 自 治 体 で の 導 入 が 行 わ れ て い る 状 態 に あ る .ま た ,円 滑 な 消 防 活 動 を 目 指 し た 取 組 み と し て ,消 防 車 両2台 の 連 携 し た 活 動 に よ る 消 防 戦 術 が 採 用 さ れ て い る .し か し ,そ れ ら の 運 用 に よ る 効 果 ,た と え ば ,「 消 防 車 両 が 到 達 可 能 な 範 囲 が 増 加 し た 」あ る い は「 連 携 活 動 に よ り こ れ だ け 円 滑 性 が 向 上 し た 」と い っ た 知 見 は 得 ら れ て い な い 状 況 に あ る .
背景 課題の抽出 1 密集市街地の災害脆弱性 消防活動と災害脆弱性の関係
密集市街地の防災性改善を 達成するために,消防活動の
円滑性の確保が必要 緊急的な対応が必要
実現性を具備した手法が必要
2 首都直下地震発生の切迫性 震災以前に行ける道路も重要 3 高齢社会の更なる進展 火災救急対応の迅速性が重要 4 密集市街地に対する改善策 道路拡幅の進捗が遅い現実
密集市街地 → 道路狭隘 :措定 道路狭隘 → 消防車両の接近性低下:仮説 1 消防車両の接近性低下 → 消防活動の円滑性低下:仮説 2 消防活動の円滑性低下 → 時間的損失の発生 :仮説 3 時間的損失の発生 → 被害・損害の拡大 :仮説 3
密集市街地の防災性
= 被害・損害の大きさ ∝-1 消防活動の円滑性の高さ
「密集市街地の防災性」⇔「消防活動の円滑性」の関係
道路拡幅整備 基本
断面状での把握
道は広く
空間→大 物体→小車は小さく
状況
効果 改善策
改善方針 空間の改善 物体の改善
隅切り整備 拡幅に附随的
不明
小型消防車両 導入・運用中
不明 低い(沿道地
権者数の多さ)
実現性 高い(対象が
角地のみ) 運用中(今後 は技術進展)
幅員 4m
基準・根拠 底辺 2m の
二等辺三角形 放水能力の維持 密集市街地に対する改善策の整理
仮説 5:小型消防車両を用いた消防活動体制を 前提とした隅切り整備による緊急措置は,
密集市街地で消防活動円滑性を確保可能 仮説 4:隅切り整備は,道路拡幅整備に比べて 実現性が高い(緊急措置となりうる)
対応策(推論)
本研究の目的 ・各仮説の検証
⇒密集市街地の防災性向上に向けた提案 背景と課題の抽出
図1-2 本研究の背景・仮説・目的の関係
こ う い っ た 状 況 の 中 ,緊 急 的 な 密 集 市 街 地 の 改 善 に あ た っ て は 実 現 性 の 高 い 整 備 方 法 が 求 め ら れ て い る .ま た ,効 果 的 に 整 備 を 行 う 際 に は そ の 効 果 を ,小 型 消 防 車 両 の 運 用 を 考 慮 し な が ら 明 確 に す る 必 要 が あ る .
1.2
仮説の設定と本研究の目的
前 節 で は ,密 集 市 街 地 の 防 災 性 に 関 わ る 課 題 の 抽 出 を 行 い ,そ の 課 題 に 対 し て 必 要 と 思 わ れ る 対 応 策 を 述 べ た .し か し ,そ れ ら は い ず れ も 経 験 上 ,性 質 と し て 正 し い と 思 わ れ る も の の 現 段 階 で は 推 論 に 留 ま っ て い る .そ こ で ,ま ず そ れ ら の 推 論 を 整 理 し ,仮 説 の 構 築 を 経 て ,本 研 究 の 目 的 を 示 す も の と す る .こ れ ら の 推 論 ,仮 説 ,目 的 の 関 係 は 図1-2に 示 す と お り で あ る .
ま ず ,密 集 市 街 地 の 防 災 性 の 向 上 の た め の 方 策 と し て ,第 一 の 背 景 ― 密 集 市 街 地 の 災 害 脆 弱 性 緩 和 ,第 二 の 背 景 ― 首 都 直 下 地 震 発 生 の 切 迫 性 ,第 三 の 背 景
― 高 齢 化 の 進 展 ,の3つ の 観 点 か ら ,消 防 活 動 の 円 滑 性 確 保 が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し た .い ず れ の 観 点 に お い て も ,「 密 集 市 街 地 に は 狭 隘 な 道 路 が 多 い こ
と 」を 自 明 で あ る こ と と し て 措 定 し た 後 に ,そ の「 狭 隘 な 道 路 に 起 因 す る 消 防 車 両 等 の ア ク セ シ ビ リ テ ィ の 低 下 」を「 消 防 活 動 の 円 滑 性 の 低 下 」に 置 き 換 え ,
「 消 防 活 動 の 円 滑 性 の 低 下 」を「 火 災 等 の 災 害 時 の 被 害 拡 大 」に 結 び 付 け て お り ,最 終 的 に そ の「 被 害 軽 減 」を「 密 集 市 街 地 の 防 災 性 の 向 上 」と す る 一 連 の 推 論 が 存 在 す る .こ れ ら の 推 論 で 連 続 す る2項 間 の 推 移 い ず れ も 現 段 階 で は 立 証 さ れ て い な い .こ れ ら の 立 証 に あ た り ,次 の 仮 説 を 得 る も の と す る .
仮 説1 密 集 市 街 地 に お け る 狭 隘 な 道 路 は ,消 防 車 両 の ア ク セ シ ビ リ テ ィ を 低 下 さ せ る
仮 説2 消 防 車 両 の ア ク セ シ ビ リ テ ィ の 低 下 は ,消 防 活 動 の 円 滑 性 を 低 下 さ せ る
仮 説3 消 防 活 動 の 円 滑 性 の 低 下 は ,火 災 等 の 災 害 に よ る 被 害 を 拡 大 さ せ る
次 に ,緊 急 的 に 消 防 活 動 円 滑 性 の 確 保 を 行 う た め の 方 策 に 関 し て ,第 一 か ら 第 三 の 背 景 で は ,密 集 市 街 地 整 備 に 緊 急 性 が 求 め ら れ る こ と を 指 摘 し ,第 四 の 背 景 ― 密 集 市 街 地 整 備 の 手 法 で は ,実 現 性 が 高 く ,か つ そ の 効 果 が 明 確 な 改 善 方 策 の 必 要 性 を 指 摘 し た .そ こ で は ,そ の 方 策 の 具 体 案 は 示 す に は 至 っ て い な い が ,整 備 対 象 と な る 敷 地 数 の 観 点 か ら 道 路 拡 幅 に 比 べ て 隅 切 り 整 備 が 実 現 性 の 点 で 優 れ て い る こ と ,機 動 性 向 上 の た め ,既 に 運 用 さ れ て い る 小 型 消 防 車 両 や 円 滑 な 消 防 活 動 を 可 能 と す る 消 防 戦 術 に よ る 効 果 が 不 明 で あ る こ と の2つ を 述 べ て い る .し た が っ て ,こ れ ら の 改 善 策 を 同 時 に 考 慮 す る こ と で 密 集 市 街 地 の 防 災 性 向 上 に 結 び つ く 緊 急 措 置 に 関 し て 次 の 仮 説 を 得 る も の と す る .
仮 説4 隅 切 り 整 備 は ,道 路 拡 幅 整 備 に 比 べ て そ の 実 現 性 が 高 い( 緊 急 措 置 と な り う る )
仮 説5 小 型 消 防 車 両 を 用 い た 消 防 活 動 体 制 を 前 提 と し た 隅 切 り 整 備 に よ る 緊 急 措 置 は ,密 集 市 街 地 に お け る 消 防 活 動 の 円 滑 性 を 確 保 で き る
そ こ で ,そ れ ぞ れ の 仮 説 に つ い て 検 証 し ,最 終 的 に 仮 説 全 体 の 成 立 を 検 証 す る こ と に よ り ,防 災 性 改 善 の た め の 密 集 市 街 地 整 備 手 法 に 関 す る 提 案 及 び 今 後 の 密 集 市 街 地 の 防 災 性 改 善 の た め の 知 見 を 得 る こ と を 本 論 の 目 的 と す る .
1.3
既往研究の整理と本研究の位置付け
背 景 で は 本 研 究 の 必 要 性 を 述 べ ,続 い て そ の 必 要 性 に 応 じ た 仮 説 を 述 べ る と と も に そ れ を 検 証 す る こ と を 本 研 究 の 目 的 と し て 位 置 づ け た .そ の 検 証 を 行 う に あ た り ,本 論 の 起 点 を 築 く た め に 次 の2点 か ら 既 往 研 究 等 を 整 理 す る .第 一 に 市 街 地 の 防 災 性 能 に 関 す る 評 価 と い う 視 点 で あ り ,第 二 に 狭 隘 道 路 の 整 備 に 関 す る 視 点 で あ る .
1.3.1 市街地の防災性能評価の視点から
1.3.1.1 戦前から戦後の状況
地 震 ,風 水 害 な ど 様 々 な 自 然 災 害 に よ る 脅 威 と 常 に 隣 り 合 わ せ の 生 活 を 送 っ て き た わ が 国 の 先 人 た ち は ,そ う し た 常 に 受 身 と な っ て き た 経 験 を も と に し て ,明 治 以 降 の 歴 史 の 中 で 災 害 に 対 す る 危 険 性 を 科 学 的 ,客 観 的 な 方 法 を 用 い て 示 し て い る .
ま ず ,今 日 で は 主 流 と な っ て い る 被 害 想 定 の 源 流 と な っ た 今 村(1913)に よ る も の が あ る .東 京 帝 国 大 学 の 地 震 学 者 で あ っ た 今 村 は 過 去 の 地 震 発 生 周 期 や 被 害 な ど の 資 料 を も と に 予 想 震 度 図 を 作 成 し て い る .社 会 問 題 と な り な が ら も , こ の 科 学 的 根 拠 に 基 づ く 被 害 想 定 は そ の 後 に 発 生 し た 関 東 大 震 災 に よ り ,現 実 の も の と な り 単 な る 空 論 で な い こ と が 実 証 さ れ た .一 方 ,地 震 被 害 と は 別 に 戦 時 下 の 防 空 体 制 の 観 点 か ら 昭 和 初 期 に は ,木 造 家 屋 の 火 災 性 状 に 関 す る 知 見 を 得 る た め の 実 験 等 が 行 わ れ る な ど ,本 格 的 な 解 明 が 進 め ら れ て い る .内 田 祥 三 , 内 田 祥 文 を 中 心 と し た 研 究 者 は ,東 京 帝 国 大 学 に お け る 火 災 実 験(1933年 )や 火 災 に お け る 延 焼 速 度 の 算 定(1942年 )な ど を 行 っ て い る .
こ う し た 火 災 研 究 が 行 わ れ な が ら 終 戦 を 迎 え た わ が 国 の 防 災 に 関 す る 研 究 は ,都 市 大 火 が 頻 発 す る 状 況 の 中 ,消 防 力 整 備 や 保 険 料 率 算 定 の た め 必 要 と さ れ る 市 街 地 火 災 の 危 険 度 や 都 市 等 級 化 と い っ た 研 究 に 発 展 を み る こ と と な る .
1.3.1.2 戦後から阪神淡路大震災以前
わ が 国 の 都 市 に お け る 火 災 被 害 の 軽 減 に 向 け た 取 り 組 み は ,災 害 が 起 き た 際 の 延 焼 の 状 況 を 科 学 的 な 方 法 か ら 把 握 す る こ と に 多 大 な 努 力 が 払 わ れ ,過 去 の
大 火 の 資 料 を 基 礎 と し た 調 査 結 果 を 用 い て 様 々 な 知 見 が 得 ら れ る 結 果 と な っ た .特 に 市 街 地 の 火 災 危 険 度 を 予 測 さ れ る 延 焼 状 況 か ら 表 す た め の 方 法 と し て 必 要 と な る 延 焼 速 度 に 関 す る 研 究 は ,継 続 し て 重 要 な テ ー マ と な っ て い る .
こ の 延 焼 状 況 を 表 す た め の 試 み は 多 数 行 わ れ て お り ,特 に 消 防 活 動 に よ る 延 焼 抑 止 効 果 ま で 含 め た 検 討 を 行 っ た も の の う ち ,戦 後 か ら1997年 の 阪 神 淡 路 大 震 災 ま で に は ,菱 田(1950),小 林(1984a,b)保 野(1991),三 船 ら(1991)が あ る .
菱 田(1950)は ,火 災 要 素 と し て「 燃 え 」と「 消 し 」を 掲 げ て お り ,双 方 の 進 み 方 を 科 学 的 に 解 明 す る こ と を 目 的 と し た 研 究 を 行 っ た .前 者 の「 燃 え 」に 関 す る も の と し て ,建 物 の 構 造 ,階 数 ,大 き さ ,型 式 ,建 蔽 率 及 び 道 路 を 主 た る も の と し て い る .ま た ,後 者 の「 消 し 」の 要 素 で は ,消 防 の 駈 付 時 間 を 重 要 な 要 素 と し ,次 い で 水 利 と 機 械 力 と し て い る .さ ら に ,気 象 の 条 件 ,特 に 風 速 が 重 要 で あ る こ と も 指 摘 し て い る .「 燃 え 」の 進 み の 分 析 で は ,上 記 の 要 素 か ら 出 火 か ら の 経 過 時 間 に 応 じ た 火 面 長 の 算 出 方 法 を 濱 田 に よ る 式 を 参 考 に 提 案 し て い る .
「 消 し 」の 進 み で は ,放 水 量 の 確 保 の 重 要 性 を 述 べ る と と も に ,消 防 隊 が 現 場 に 到 着 す る ま で の 時 間 ,す な わ ち 駈 付 時 間 に よ る 火 災 制 圧 へ の 強 い 影 響 力 を 指 摘 し て い る .こ の 駈 付 時 間 を 決 定 す る 要 素 を 当 時 の 状 況 か ら 抽 出 し ,次 の よ う に 整 理 し て お り ,本 研 究 で 着 目 し て い る ポ ン プ 車 種 別 や 道 路 幅 員 な ど が 含 ま れ て い る が ,こ れ ら に よ る「 消 し 」の 時 間 的 な 進 み へ の 影 響 は 具 体 的 に 述 べ ら れ て い な い .
• 街 柄 ,建 蔽 率—人 の 多 い と こ ろ は 発 見 が 早 い
• 一 般 電 話—普 及 度 ,共 通 制 度 の 有 無 ,並 び に 前 記 の 事 情 が 影 響 を 及 ぼ す
• 火 災 報 知 機—設 備 規 格 が 問 題 と な る
• 警 察 電 話—交 番 の 配 置 ,通 信 の 設 備
• 望 楼—配 置 間 隔 ,視 野 の 広 さ 及 び 勤 務 制 度
• 消 防 署 ,詰 め 所—配 置 間 隔 及 び 勤 務 制 度
• ポ ン プ 車—自 動 車 ,手 挽 き 車 の 別 な ど
• 道 路—幅 員 な ど
保 野(1991)は ,建 築 技 術 の 進 展 や 関 係 法 令 の 整 備 を 背 景 と し て ,建 物 が 燃 え に く く な っ て い る 反 面 ,消 火 し に く く ,消 火 時 間 が 多 く 必 要 と な っ て き て い る
原 因 と し て ,出 動 車 両 の 放 水 率 が 小 さ い と さ れ る 問 題 が あ る こ と ,耐 火 建 造 物 火 災 に お け る 水 損 程 度 が 不 明 確 と な っ て い る こ と を 指 摘 し た .そ し て ,こ れ ら の 問 題 解 明 に 向 け 建 物 火 災 に お け る 消 火 に 関 す る 研 究 を 行 っ て い る .そ の 研 究 資 料 は ,神 戸 市 の 火 災 資 料( 昭 和49年 か ら 昭 和63年 ま で )に お け る 建 物 火 災 1818件 で あ っ た .こ れ ら 多 く の 実 火 災 資 料 が こ の 研 究 に お け る 考 察 を 既 往 研 究 と の ち が い と し て 位 置 づ け て い る .火 災 資 料 を 整 理 し た 結 果 ,消 防 隊 の 現 場 到 着 に 関 す る 時 間 的 な 状 況 に つ い て 次 の こ と が 明 ら か と な っ て い る .
• 潜 伏 時 間( 出 火–発 見 )—5.10分
• 通 報 所 要 時 間—2.29分
• 駆 け つ け 時 間—4.71分
• 放 水 準 備 時 間—1.89分
さ ら に ,火 災 現 場 到 着 の 遅 れ に つ い て ,「 と こ ろ で ,神 戸 市 に お け る 出 動 計 画 に よ る と ,第1出 動 の 出 動 車 両 は4–5台 で あ り ,ほ ぼ 同 時 刻 に 火 災 現 場 に 到 着 し な け れ ば な ら な い が ,現 状 は か な り 遅 れ て 到 着 し て い る よ う で あ る .」と の 指 摘 も 行 っ て い る .
こ の 研 究 は 焼 損 面 積 あ る い は 鎮 圧 ま で に 要 し た 時 間 と い う 観 点 か ら 多 数 の 知 見 が 得 ら れ て い る が ,本 研 究 で 対 象 と す る 駆 け つ け 時 間 は 上 記 の と お り 整 理 さ れ て い る も の の ,被 害 と 結 び つ け た 考 察 は 行 わ れ て い な い .
小 林(1984a)は ,公 設 消 防 に よ る 延 焼 抑 止 効 果 で は な く ,市 民 に よ る 消 火 活 動 に つ い て 論 考 し た .関 東 大 震 災 の 資 料 を も と に し た 出 火 予 測 を 試 み て お り , 倒 壊 率 と 出 火 率 の 関 係 か ら 過 去 の 延 焼 速 度 式 の 評 価 を 行 っ て い る .ま た 出 火 状 況 の 分 析 を 行 い ,市 民 消 火 率 に つ い て 述 べ て い る .一 般 火 災 と 薬 品 火 災 と に 分 類 し た 上 で ,そ れ ぞ れ の 平 均 市 民 消 火 率 を33.3%,66.7%と し て 算 出 し て い る . ま た ,一 般 火 災 に お け る 木 造 全 壊 率 と 市 民 消 火 率 の 関 係 の 回 帰 式 を 作 成 し ,そ れ ら が 負 の 相 関(r=-0.827)と な る こ と を 示 し た .続 く 小 林(1984b)で は ,関 東 大 震 災 以 降 の 地 震 ,福 井 地 震 ,新 潟 地 震 ,十 勝 沖 地 震 ,宮 城 県 沖 地 震 を 対 象 と し た 出 火 状 況 に 関 す る 分 析 を 行 っ て い る .市 民 消 火 率 に つ い て 関 東 大 震 災 の 資 料 か ら 第1報 と は 異 な っ た 観 点 か ら 考 察 を 加 え て い る .第1報 で は 区 別 の 市 民 消 火 率 を 用 い て い た が ,火 元 建 物 倒 壊 の 有 無 と 市 民 消 火 の 成 功・不 成 功 の 関 係 を 調
べ て い る .そ の 結 果 ,「 建 物 の 倒 壊 と 即 時 消 火 は 独 立 で あ る 」と い う 帰 無 仮 説 に 対 し て ,カ イ 二 乗 検 定 を 行 っ た 結 果 ,帰 無 仮 説 が 採 択 さ れ ,一 般 火 災 の 火 元 建 物 の 倒 壊 の 有 無 は 市 民 消 火 の 成 否 に 影 響 を 与 え て い る と は い え な い こ と が 明 ら か と な っ て い る .
三 船 ら(1991)は ,従 来 か ら の 消 防 活 動 困 難 区 域 の 考 え 方 に 対 す る 問 題 提 起 を 加 え ,新 た な 消 防 力 に 関 す る 基 準 の 作 成 を 試 み て い る .消 防 活 動 困 難 区 域 に つ い て の 再 評 価 を 行 っ た も の で あ る .手 順 と し て ,当 時 の 平 常 時 に お け る 消 防 活 動 困 難 区 域 の 基 準 で ,消 防 水 利 が 設 置 さ れ る 既 設 の 配 水 管 の 経 路 及 び 消 防 活 動 困 難 区 域 の 評 価 を 加 え ,次 い で 新 た な 基 準 を 設 定 し ,そ れ に よ り 既 設 の 配 水 管 経 路 の 評 価 及 び 消 防 水 利 に よ る 消 防 活 動 困 難 区 域 を 検 討 し て い る .こ れ ら の 検 討 結 果 か ら 計 画 最 小 単 位 標 準 モ デ ル の 安 全 性 を 示 し た .ま ず ,墨 田 区 向 島 消 防 署 に よ る 水 利 や 道 路 状 況 に 関 す る デ ー タ を 用 い て 消 防 力 の 基 準 に よ る 消 防 活 動 困 難 区 域 を 示 し ,ほ と ん ど が 解 消 し て い る こ と を 指 摘 し て い る .一 方 で ,そ の 消 防 力 の 基 準 で は 市 街 地 の 基 準 が ,平 均 建 蔽 率 が10%を 境 界 と し た 全 国 一 律 的 な 基 準 で あ り ,密 集 市 街 地 へ の 適 用 が 難 し い こ と を 示 し ,問 題 点 と 新 た な 基 準 の 作 成 を 次 の と お り 示 し た .
• 問 題 点:ホ ー ス カ ー を 使 い ,延 長200mの ホ ー ス を 前 提 と し て 作 成 さ れ た 当 時 の 基 準 に 対 す る 疑 問
• 新 た な 基 準:消 防 ポ ン プ 車 に 装 備 さ れ て い る 延 長 60mの ホ ー ス に よ る 新 た な 基 準 の 作 成
新 た な 基 準 で は ホ ー ス 有 効 延 長 距 離 を ホ ー ス 延 長60mに 吸 管 の 長 さ(9m,12m) を 加 え た 上 で√
2で 除 し た 値 で あ る50mと し ,墨 田 区 京 島 に お け る ケ ー ス ス タ デ ィ を 行 っ て い る .こ の 際 ,水 利 の 新 設 や 道 路 拡 幅 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 消 防 活 動 困 難 区 域 を 示 し た .
こ れ は ,本 研 究 の 仮 説 に あ る 消 防 活 動 の 円 滑 性 の 考 え 方 に 類 似 し て お り ,そ の 詳 細 は 第2章 に お い て 述 べ る も の と す る .