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走査型プローブ顕微鏡と圧電応答力顕微鏡への応用

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Academic year: 2021

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走査型プローブ顕微鏡と圧電応答力顕微鏡への応用

その他のタイトル Scanning Probe Microscopy and Application to Piezoresponse Force Microscopy

著者 宝田 隼

雑誌名 理工学と技術 : 関西大学理工学会誌 =

Engineering & technology

25

ページ 11‑15

発行年 2018‑12‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/16473

(2)

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ロ■■

関西大学理工学会誌 理工学と技術 Vol.25(2018)

解説

■I■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

走査型プローブ顕微鏡と圧電応答力顕微鏡への応用

宝田 隼*

ScanningProbeMicroscopyandApplicationtoPiezoresponseForceMicroscopy JunTAKARADA

容易である。しかし、強誘電性を示すが結晶性の低い 圧電高分子の試料を計測しようとすると、検出される 信号が雑音に埋もれてしまう])。

一方で圧電応答力顕微鏡は、一般的に図1に示すよ うな光てこ方式を採用している。プローブは一端が固 定されており、片持ち梁(カンチレバー)構造となっ ている。長さ/,のカンチレバーが物体の圧電変形〃,に

より曲がる。その曲がり角度8,は/,>>",より

9,=tan‑'(F)=¥(,)

となる。その角度の2倍がカンチレバーに当たった レーザ光の反射角度の変化となる。反射した位置から フオトダイオードまでの距離/2を長くとることでフオ トダイオードにあたるレーザ光の位置変化量〃2を大 きくしている。

1 .走査型プローブ顕微鏡

近年、マイクロ/ナノテクノロジーの発達とともに、

微細構造の計測技術が急速に発達している。一般的に 顕微鏡と言えば光学顕微鏡を思い浮かべる方も多いが 走査型プローブ顕微鏡は、鍬のような形をしたプロー ブの先端を物体表面に近づけ、表面凹凸を調べる顕微 鏡である。プローブは数十〃mの大きさで、その先端 は針のようになっている。針先が物体表面に近づくこ とで物体表面との間に力が生じてプローブが曲がる。

曲がった角度を検出することで物体の高さを調べるこ とができる。物体が乗った台を水平に走査することで、

物体表面の凹凸がわかる。針先の曲率半径は数十nm となっているため、高さ及び水平面ともに数十nmの 分解能があり、物質表面の微細な粒子の凹凸やその形 状を計測できる装置である。それに加え、プローブと 物体との相互作用を活かして表面粒子の機械/電気/

磁気/光学物性を計測することができる。そのため無 機/有機物、金属/半導体/誘電体等幅広い材料の物 性計測装置の一つとして使用されている。

その中でも圧電応答力顕微鏡は、表面の粒子形状に 加え、各粒子の圧電応答の強度や配向方向などの計測 ができる。ここで圧電性とは物体に電圧を加えた時に 物体が変形する性質を指す。その変形量が大きければ 応答強度は大きく、加えた電圧の位相に対して同位相 か逆位相かで配向方向がわかる。一般的に圧電応答の 大きさは、結晶性が高くかつ強誘電性を兼ね備えた圧 電セラミックスのような物質において大きく、計測が

"2=281I2 21al2 (2)

圧電

'、ノ 変形量

図1 光てこ方式 原稿受付平成30年9月24日

*システム理工学部電気電子情報工学科助教

II

(3)

ロックインアンプにより抽出する。ここにカンチレ バーの共振周波数の正弦波電圧を印加すると試料の歪 みが駆動源となりカンチレバーが共振する。

ここでカンチレバーを共振させることでどの程度検 出させる信号が大きくなるかについて考える。非共振 時及び共振時のカンチレバーの振動の様子を図3 (a) 及び(b)に示す。この時レーザ光の反射角度の変化 はカンチレバーの曲がり角度に比例する。それぞれの 曲がり角度に着目する。非共振時のたわみ角度はカン チレバーの長さに対する圧電応答の試料変形量の正接 tan8,‑8,となる。これに対して共振時のたわみ角度 はカンチレバー共振時の振動形状に対してレーザを当 てる点での接線と水平線がなす角度82となる。カン チレバーを機械の力学や振動工学などの教科書で出て くるような梁の横振動とみなし、境界条件としてカン チレバーの根元を固定、試料との接触点を支持として、

共振時の振動形状を計算した。その後、 カンチレバー の各場所における傾きを算出し、非共振時に対する共 振時の角度倍率82/β]を算出した。その理論角度比 を図4に示す。これを実験的に証明するため、カンチ レバー共振時における信号強度をカンチレバーにレー ザを当てる場所を変化させて測定した。その後非共振 時に対する信号強度を測定し、その比を算出した。実 測信号比を図4に示す。カンチレバーは日立ハイテク 社製のSI‑DF3Rを使用し、その長さは450"mである。

カンチレバーの根元から400"mでの計算した角度倍 率および実測した信号強度比はそれぞれ約250及び140 倍となり、式(1)及び(2)からもわかるように信号強 度を100倍以上増幅させることを確認した。またその 実測値と計算値の曲線が似ていることから振動形態も 仮定した固定支持条件下の1次共振モードであるとわ かる。

式(2)の形より光てこ方式と呼ばれ、 レーザの当たる 位置が大きくずれるため検出される信号も大きくな る。しかしこの方式を用いてもなお、圧電応答の小さ な高分子の信号は小さく計測は困難である。この問題 点を解決するために、 カンチレバーを共振させる手法 を提案する。接触点の圧電振動を駆動源としてカンチ レバーを共振させる周波数の信号を粒子に印加するこ とでカンチレバーの曲がり角度を大きくする。これに より圧電応答力顕微鏡の感度を向上させる。

しかし、 カンチレバーの共振特性(共振周波数付近 の信号振幅や位相差)は試料の粒子の形状や固さ粘り 気などに左右されるため、針先を置いた場所によって その共振周波数、Q値が異なることが報告されてい る2)。そのため単一の周波数の信号では正確に測定で きない3)。本報告では帯域周波数をもった入力信号に より各場所におけるカンチレバーの共振特性を測定し ている。得られた特性を単振動モデルの特性式を用い てFittingを行うことで、非共振時における振幅、入 力信号と出力信号の位相差、共振周波数、Q値の情報 を抽出した。その振幅及び位相を通常の圧電応答力顕 微鏡で得た振幅及び位相と比較したのでその結果を報 告する。

2.圧電応答力顕微鏡とカンチレバーの共振 圧電応答力顕微鏡の概略を図2に示す。圧電応答力 顕微鏡は、試料とカンチレバーの間に交流電圧を印加 し、その際に生じた試料の歪み(圧電応答量)をフォ

トダイオードで感知する。通常の圧電応答は低周波の 正弦波電圧を印加し、 フォトダイオードが受ける出力 電圧の中で印加した周波数に同期した信号成分のみを

い−'。

図2圧電応答力顕微鏡

0 100 200 300 400 500

カンチレバー根元からの距離(Mm) 図4 角度倍率と信号強度比

図3 (a)非共振時及び(b)共振時との角度

平田言今を可磨トレ

<r Z/

。、. γ則信号比

/、 〆ノ今一→

k

砥 Y幻

(4)

小二乗法により算出してフイッテングを行った。図6 に取得した振1幅と位相の共振特性とフイテイング結果 を示す。二つのプロットデータは異なる場所で測定し た時の共振特性であり、共振周波数及びその鋭さが異 なることがわかる。このため単一周波数での測定では、

試料表面の影響を受けた信号強度となり正確な圧電応 答による信号を検出できない。

次に単振動モデルから計算した共振特性の振幅式 A(の)及び位相式印(uj)をそれぞれ式(3)及び(4)に示 す。

A(to)=AoI豆両扉工呼了

のγ2

(1)

"(")=。0+tan‑'{Q(差̲筈)1 (2}

3.単振動モデルによるフィッテング 共振させた状態で測定を行うことで、信号は増幅す る。しかし、 カンチレバーの共振は試料の表面形状や 粘弾性の影響を強く受けるため、測定場所によってそ の共振周波数やQ値が異なる。 したがって帯域周波 数を持つ信号を試料に印加して測定を行った。入力信 号及びフォトダイオードからの出力信号を図5に示 す。入力信号には2ms間に110〜140kHzまで線形 的に上昇するチャープ波を用いた。出力信号からある 周波数において出力が大きくなっていることが確認で きる。出力信号は図2に示すロックインアンプに入力 するのではなく、そのままの波形を取得し、電気電子 計測の教科書で出てくるような離散フーリエ変換を施 し共振特性を取得した。その後、力学の教科書で出て くるような単振動モデルに当てはめ、実験で得られた 共振特性のデータと合うようにモデルの式の数値を最

ここで、A0,の0,u〃及びQはそれぞれ非共振時の振 幅、非共振時の位相、共振角周波数及びQ値である。

Ao及び妙0は圧電応答量及び配向方向を示し、通常の 圧電応答力顕微鏡で得られる信号と比較できる数値で ある。⑩,及びQは形状や測定場所の粘弾性に関係が ある考えられる数値である。図6のdataとfitted lineを比較するとほぼ一致しており、単振動モデルの 有用性も確認することができる。

5550555●一句

7227

夕︶出齪偲べ ︵己出齪疫彊321000・・・

000 123 000000心●●●

4.共振/非共振法での測定信号の精度比較 カンチレバーの共振/非共振法を圧電応答力顕微鏡 の測定信号比較を行うために厚さ100nmの圧電高分 子P(VDF/TrFE)薄膜試料を用意した。 まずその 測定精度の比較を行った。カンチレバーを試料に接触 させた任意の場所一点において、共振及び非共振法に て圧電応答振幅を100回測定した。測定した圧電電圧 振幅の頻度分布を図7に示す。測定電圧は非共振法に 比べ共振法のばらつきが小さいことがわかる。測定電 圧が正規分布に従っていると仮定したときの標準偏差 は共振及び非共振法においてそれぞれ、 1.5"V及び 14"Vであった。このことから共振法により精密さが

0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5

時間(ms)

入力チャープ波とフォトダイオード出力信号 図5

lU

1ata(35(]

8642︵シ日︶名昌一己日く 00

30 25 20

−一﹃-45−112 05059382

︵︑の己︶のの③二国

\'' 050

I I

‑10 0 10 20 30 40 50

電圧(mV)

図7 共振及び非共振法によって測定される信号 頻度分布

‑270

120 122 124 126 128 130

Frequency(kHz)

共振特性と単振動モデルによる回帰曲線 図6

13

共振

÷非共振

魔、

'VI/、画一、

/ 、八V I

(5)

約10倍向上したことがわかる。

5.共振/非共振法を用いた圧電応答顕微鏡の信号比較

がわかる。さらに圧電位相像(図8(d))に着目する と分極操作を行った二つの領域の位相が反転してお り、分極操作を行った試料の配向方向が確認できる。

また、 2回分極した領域においてはどの場所において も約0。の位相を示すのに対して1回のみ分極した領 域においては約180・を示す場所と0。に近い位相を示 す場所が存在することがわかる。

次にカンチレバー共振法によって図8(a)に示す中 心部から矢印で示した方向1.5"mの圧電応答振幅及 び位相を測定した。測定では110〜140kHzの信号成 分を持った振幅5Vのチャープ波を印加した時の受 信波形から共振特性を算出し、式(1)及び(2)を用い て圧電応答振幅及び位相の場所依存性を測定した。そ の結果を図9に示す。図9のO〜700nm、 700〜1200nm 及び1200〜1500nmの領域の信号はそれぞれ2回、

1回及び0回分極反転処理をした領域の信号を示す。

図9の圧電振幅の場所依存性から共振及び非共振法い ずれも処理をした回数が多い領域ほど圧電振幅が大き くなっていることがわかる。また場所毎に圧電振幅が 異なることが確認できる。しかし、共振法の振幅は非 共振法の振幅に比べ、ばらつきが小さくなっており、

特に1回分極及び未分極の領域における非共振の振幅 はノイズレベルと信号が同等である考えられるが、共 振法の振幅は信号が検出されている。このことは圧電 位相の場所依存性からも確認できる。特に1回のみ分 極処理した700〜1200nmの領域における非共振法の 位相は雑音の影響でばらつきが大きいが、共振法の位 相はばらつきが少なく一定値を保っている。また共振 図8(a)に示す3×3〃mの領域について測定する。

前処理として分極処理を施す。分極処理とは高い電圧 を物体に加え、物体の配向方向を膜厚方向に揃え、圧 電応答を出やすくする処理である。導電性のカンチレ バーを接地し、膜底面に+10Vの直流電圧を印加しな がら2×2umの領域を走査する。その後膜底面に

‑10Vの直流電圧を印加して1×1〃mの領域を走査 することで分極処理を施した。試料の3×3〃mの領 域の表面形状、圧電応答振幅、圧電応答位相を通常の 非共振法で測定した。なお正弦波電圧の振幅及び周波 数はそれぞれ5V及び15kHzとした。その結果像を 図8(b)、 (c)及び(d)に示す。図(b)は通常の捜査プ ローブ顕微鏡でも得ることのできる表面凹凸像であ る。図8(c)及び(d)は圧電応答力顕微鏡により得ら れた振幅及び位相像である。図8から分極処理によっ て配向した領域毎に圧電応答が異なることがわかる。

圧電応答振幅像(図8(c))から分極処理領域では圧電 振幅が大きく未処理領域では小さいことがわかる。さ らに1回のみ分極処理を施した2×2〃mの領域に対 して、 2回分極処理を施した1×1βmの領域の方が 圧電振幅は大きくなっていることがわかる。また分極 領域同士の境目では圧電振幅が小さくなっていること

0.35000 3525150a2仇4a心

含冨︶馨蝋浴鯛eて典沸入侯

0 6 12 18 24

Locationz(nm) 2回1回0回

分極反転処理領域

5 1 0 1500

中心部からの測定躍離(屈睡)

0

Z50

釦諏鋤卵1−1︵留導槻騨垣e鎌鰹侭鐵べ

500,m

一コ=一

0 25 50 75 100‑180 ‑90 0 90 180

Amplimde(ILV) Phase(deg) 分極処理領域と従来の圧電応答力顕微鏡測 定像: (a)分極処理と測定領域,

(b)表面凹凸像(c)圧電振幅像. (d)圧胃(d)圧電

図8 ‑250

5 1 0 1500

中心部からの瀞定距離(nm)

0

位相像

図9 圧電振幅及び位相の場所依存性

〃〆 、聯 …‑.共振

E L1 I #へ 一非共振 VvV 八/ 、

ノ ノ I 懲野』隈 IW AAAAA

灘〃 灘ん"、

−共振

−−−重二冨非共棚

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│ 、 111 A/

談蛎へノゾーン、〆、,、ニハ/ I biV

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I

(6)

法では700nm付近を境に位相が急峻に反転している ことがわかる。これらのことより共振法を用いること で圧電応答力顕微鏡の感度が向上していると考えられ る。

ることがわかった。さらに圧電応答の場所依存性結果 からS/Nの向上により正負反転領域の境目がより鮮 明になり、小さな圧電応答の測定にも適用できる。

今後は形状や表面の粘弾性により変化すると考えら れる共振周波数やQ値との比較を行い、 さらなる共 振法による圧電応答測定の優位性を示す。

6. とめ

圧電性の小さい試料の評価をすることを目的として 圧電応答力顕微鏡の感度を向上させるため、 カンチレ バーの共振を用いた測定法について検討を行った。単 一周波数ではなく帯域周波数を印加し得られた共振特 性を単振動モデルにより回帰解析することで、従来の 非共振法による圧電応答測定のばらつきに比べ提案す る共振法によるそのばらつきは1/10程度に抑えられ

参考文献

[1]S、V・Kalininetal,UltramicroscopylO6, 334 (2006).

[2]H.Okinoetal.,Jpn.J.Appl.Phys.42,6209(2003).

[3]S・Jesseetal.,Nanotechnology,21,405703(2010).

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