氏 名 坪
ツ ボ尚
タ カ義
ヨ シ所 属 理工学研究科 生命科学専攻 学 位 の 種 類 博士(理学)
学 位 記 番 号 理工博 第
298号 学位授与の日付 平成
31年
3月
25日 課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当
学 位 論 文 題 名
Verification of dielectric-applied axon equivalent circuit for high-speed conduction of action potential in the myelinated fiber有髄神経線維の活動電位の高速伝導に関する軸索液の誘電率を適用 した等価回路の検証(英文)
論 文 審 査 委 員 主査 准教授 黒川 信 委員 准教授 安藤 香奈絵
委員 教 授 清水 敏久(電気電子工学専攻)
委員
客員教授 久永 眞市
委員客員教授 山本 直樹
(
都立多摩総合医療センター精神神経科部長)
【論文の内容の要旨】
動物が獲物を獲得し、また捕食者から素早く逃げる為には、感覚器官から脳への感覚信 号そして脳から筋肉への運動信号が共に高速に伝導しなければならない。これ等の信号は、
活動電位として神経線維(軸索)を通過する。神経線維には髄鞘の有無により有髄神経線 維と無髄神経線維がある。無髄神経線維は軸索直径が約
500μmの巨大神経線維においても 伝導速度が約
25m/秒程度である。しかし、有髄神経線維では軸索直径が
20μmで
120m/秒という高速な伝導速度が報告されている。有髄神経線維は長く均一な髄鞘とそれに比較 して非常に短いランビエ絞輪の繰り返しパターンを特徴とし、田崎一二
(1938)はランビエ絞 輪からランビエ絞輪へと活動電位が跳躍伝導する現象を発見した。これと前後して
Hodgkin
、
Huxleyを始め多くの生理学者が軸索に於ける活動電位の発生や伝導について研
究してきた。しかし、現在まで有髄神経線維に於いて最大
60m/秒の伝導速度は説明がなさ れているが、
120m/秒の様な実際の伝導速度の高速性を実現するメカニズムについて論理的 に示されていない。この説明がなされない原因として、電気回路的な観点からみて、従来 の軸索等価回路が軸索膜容量に対しては変位電流による漏れ電流を考慮しているものの、
軸索の長軸方向に存在する高い誘電率を持つ軸索液に基づく容量成分から生じる変位電流
による長軸方向の伝播電流の増強を考慮していないことが考えられた。そこで本研究では、
これを実証するために理論的な解析および検証実験を行った。
解析の為に高い誘電率を持つ軸索液の容量成分を適用した新たな軸索等価回路を設定し た。まず、この新等価回路に取り入れた高い誘電率を持つ軸索液による長軸方向の容量が 軸索膜の漏洩電流による活動電位の減衰を補完し、且つ長軸方向の信号減衰量の減少と信 号到達距離の増加が起こすことを示した。直径
20μmの軸索に対し、活動電位の立ち上が り時間に対応する周波数を
2000Hzとしたときの活動電位の電気緊張的な伝播速度は、従 来型等価回路では
81m/秒と算出されたのに対し、新等価回路では
1769m/秒と著しく速い 値が算出された。この伝播速度と信号の中継時間に相当する活動電位の立ち上がり時間か ら結果的に実測値に相当する
120m/秒の伝導速度が算出できることを示した。また、各直 径の軸索に対してこの新等価回路を適用して計算したところ伝導速度が実測値と一致する 事を確認した。これにより長軸方向の誘電率の高い軸索液に対する容量の定義に於いてラ ンビエ絞輪の断面を電極の面積とした事及び新等価回路の設定が正しい事を示した。次に 新等価回路で算出した活動電位の減衰特性から、一度発生した活動電位が軸索の直径に関 わらず常に先にある
5個のランビエ絞輪を発火させること、即ち安全数(
Safety factor)が 常に
5である事を示した。更に、軸索液に類似させた
0.1Mの
KClイオン溶液を誘電媒体 として
2枚の電極板で構成した容量を用いて誘電率を測定した結果は、上記の新等価回路 で得られた軸索液の長軸方向の誘電率とほぼ一致した。これにより、軸索液の誘電率によ る長軸方向の容量が軸索膜の漏洩電流による活動電位の減衰を補完し、且つ長軸方向の信 号減衰量の減少と信号到達距離の増加及び電気緊張的な伝播速度の高速化を起こさせ直径
20μ