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政府部門における研究開発 と監査

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(1)

政府部門における研究開発 と監査

山 本 清

1.は じめに

我が国 は,第二次大戦後高度成長を遂げ,世界第

2

位の経済力を有す るよう になった。 この背景には均質な教育水準 に裏付け られた技術力の向上 によると ころが大 きい といわれ る。

TQC

やカ ンパ ン方式で代表 され る生産技術の絶え ざる改良 と政府 ・通産省

(MITI

)の産業政策及び国民の高 い質の要求 とがあ いまって今 日の 「 ‑イテク国家」が生 まれた といってよい。そ して現在では, 研究開発費の対国民所得比が先進国で最高の水準

(1989

年度 で3.43%)に達 している。 しか しなが ら, こうした高い研究開発支出 も大半が応用 ・開発研究 にかか るものであ り,欧米先進国の水準 にキ ャッチア ップせ ざる得なか った と いう明治以降の実状を割 り引いて も,他国の基礎研究,発明に 「ただ乗 り」 し ているとい う批判が経済成長 とともに強まって きた。最近にな り技術貿易の収 支 は黒字 に転換 してきたが,依然 として我が国の基礎研究は,質,量両面で世 界最高水準 とは言えない状況 にある。特 に,基礎研究 は直接的に企業収益 に結 びっかないところか ら,政府部門が中心 にな って担わねばな らないが,政府部 門の研究開発費の対国民所得比 は約

0.5% (1989

年度) と先進国中で最低の水 準 とな っている。

こうしたことか ら,政府部門における研究開発, とりわけ基礎研究の充実 は 大 きな政策課題 となってお り,最近制定 された 「 新経済

5

か年計画」で も科学 技術の振興,基礎研究の強化等が述べ られている。 とりわけ,最近の基礎研究 は巨大設備 ・装置を必要 とす る事か ら 1国で資金を調達す ることが困難になっ

265

(2)

266

43

3 ・4

てお り,「 経済大国」にふ さわ しい分担が国際貢献の見地か ら要請 されている。

ところで,科学技術の振興 は単 に投資額を増大すれば達成 されるものでな く, 研究開発体制,環境及び適切な評価等が整備 され る必要がある。だが,研究開 発を担当す る科学技術者 は,財源を政府などの外部に依存す るものの外部か ら の干渉 を受 けず 自主 的な運営 を確保 しよ うとす る性 向が ある

特 に我が国で は,評価 という行為を統制的側面か らのみ把握す る傾向が強 く,国立研究所等 で行われていた応用 ・開発研究プロジェク トに対す る管理,評価 も,内部者あ るいは審議会による準内部評価で評価基準 も明確でない ものが少な くなった。

基礎研究 については総体 としての評価がようや く最近 「 科学技術指標」 として 科学技術庁によ り作成 され始めた ( 平成

3

年度科学技術 白書)にす ぎない。 こ うした評価に対す る消極的スタンスは,科学技術分野 に限定 された ものではな く,諸外国で はかな り以前か ら為 されて いた

ODA

の事業評価,大学の 自己 評価の必要性 も近年にな り認識 され,実行 されよ うとしている状況であ り,我 が国の政治,行政 に共通 してみ られるもの といえる。

しか しなが ら,政府部門の活動 は研究開発を含めて,その資金 は原則 と して 全て国民か ら調達 され るものであるため,拠 出者である国民 に対 して政府 は会 計責任を負 うことにな る。 したが って,会計責任の観点か ら政府 はその結果 に つ き説明 し,報告する義務があるわけであ り,その過程において評価が必要 と され る。現実には既述 したとお り政府内部において適正な評価がなされている とはいえず,我が国では外部監査機関である会計検査院による会計検査のみが 事後評価 として存在 していると考えて もよい。 これが,本稿で政府部門におけ

る研究評価 として監査を取 り上げる理 由である。

本稿 は以下の構成 となっている。すなわち,次の第 2節で は,政府部門にお

ける研究開発の評価を考察す るフレームワークを構築す る。代議制民主主義国

家における政府活動の非 自律性を踏まえたアカウンタ ビリティ過程で政府の研

究開発部門及び監査人を位置づける。そ して,研究開発主体 とその活動局面を

明確に区分す るため投入 ・産出モデルを導入 し,投入 ・産出過程に影響を与え

る政治的環境を本モデルに組み込む ことによ りアカウンタビリティ ・モデル と

(3)

政府部 門 にお け る研究 開発 と監 査 267

の連結を図 ることとす る

3

節では,政府監査 と研究開発のかかわ りを上記 モデルを周いて説明す る。特 に,我が国の会計検査が財政監督制度のなかでア カウンタ ビリティの検証か ら情報提供 とその機能を拡大 しつつあ り,統制 プラ ス評価機能を有す るようになってきている状況が触れ られ る。ついで,第

4

節 で は,業績監査 の一環 と してなされ る研究開発の会計検査 と政策評価, プ ロ

ジェク ト・プログラム評価 としてな され る研究開発評価 の異 同点が述べ られ る

統制的色彩が薄まっているものの監査,監督機関のなす 「 事後評価」 と研 究開発の意思決定,管理の手段 としてなされる研究開発評価のアプローチの違 いを考察 し,近年の研究開発関連の検査報告を分析 しその差異が実証 される。

5

節では,研究開発 プロジェク トの実施 について政府監査が どのよ うな機能 な り役割を果た したか,果た し得 るかを原子力船の研究開発を例に して検討が なされる

ここでは,会計責任の検証 とい う伝統的スタンスでな く,評価に近 い議会等 に対す る情報提供機能が監査の中立性の制約 との調和解 として選択 さ れたこと,アウ トカムの直接評価が政策価値に踏み込む ことになることか ら回 避 され,オペ レイションによる代理評価がなされた ことが述べ られる。また, 中立機関の情報が結果的に政治的イ ンパ ク トを与え,その後の研究開発計画縮 小を もた らした ことも示 される。第

6

節では,第

5

節 までの検討を受 け,政府 監査の政策評価,プログラム評価‑の近接 に伴 う監査の 「 評価」化,アウ トプ ロッ ト,アウ トカムにかかる有効性検査の拡充傾向が,政府部門の研究開発にど のようなイ ンパ ク トを与えるかが考察 され る。特 に,基礎研究分野 はその高度 の専門性,巨大な設備投資を伴 うこと等か ら,研究活動 の自律性 とアカウンタ

ビリティの確保 との問に トレイ ドオ フを生 じる可能性があ り,政府監査の拡大 における留意事項及び課題が検討 される。最後の第 7節では結論が述べ られる。

2.

分析 の フ レーム ワーク ーハ イ ブ リッ ド ・アプ ローチ ー ( 1 ) 投入 ・産出モデル

研究開発活動 は,情報を含めた 資源が研究開発工程に投入 され,新 しい知見,

(4)

268 第43巻 第 3 ・4

特許等の情報や研究開発の成果を用いた試作 ・実験品を産出す る過程 として理 解で きる

すなわち,生産活動の一種 として,投入 (Ⅰ) ・産出 (0)モデル

ー0‑ f(Ⅰ, E)

,

E :

環境 ‑で記述 され る

ただ,研究開発 に固有の性格 として環境要素で代表 される不確実性のほか,工程 自体に リスク要素 ( 内部 リ スク)があることに留意す る必要がある。環境要素が投入 と産出の因果関係 に 乱れを与える工程の外部 リスクとみなされるものであるのに対 し,研究開発 に は生産関数 自体 に不確実性があるのである。一般に予見不可能性 といわれ るも のであ り, 定式化すれば生産関数がユニ‑ クに決定 されずに くじL‑[

plf

l,

p2f2

,・ ・ ・

,pmfm](pi:

生産関数 f iの生起す る確率,

m

:生起す る関数の 数,

∑pi‑ 1)の選択 とみなされ ることである。本稿で も基本的にはこの生産

関数的アプローチによることとす るが,政府部門の研究開発を考察す る場合 に は, このモデルを修正す る必要がある

なぜな らば,研究開発の実施には資源 投入を必要 とす るが,政府部門ではこの決定が政治的プロセスにおいて集団的 意思決定 によ り議会でなされ るため,政治的要素を組み込まねばな らない。 ま た,新 しい原理 とか事実 はそれが発見 されると,原則 としてその後の発見 は価 値を失 い

(

「 国際公共財

」)

,情報,試作等の産 出が当初の 目標,計画の とお り 生 じて も研究成果があが ったといえない特性 ( 1 ) か ら,投入 ・産出の

2

段階で工 程を分析す るのは不十分 となる。 したが って,産出を情報,試作品などの 「ア ウ トプ ット」とそのアウ トプッ トの社会的,技術的有用性 ( 価値)にかかる 「ア ウ トカム」( 基礎研究な ら人類への知的貢献,応用 ・開発研究な ら産業振興, 生活水準の向上,特許料収入等)に分離することが評価上重要である。 さらに, 政治的プロセスと関連す るが,研究活動主体を特定化 して評価の レベルに対応

させないと,主体の関与 ・努力水準 と産出,環境 との関係が特定化で きず,過 切な評価がで きない。特 に,アカウンタビリティに着 目す る政府監査を検討す る場合,研究開発主体がアカウンタブルか否かの評価を行 う必要があるが, こ

1

)例えば,新粒子 「ウイークボソン」の発見を目指 して

1980

年代に

CERN

とブルッ

クヘブン研究所のイザベル計画が競い

,CERN

が先に発見 した結果,イザベル計

画は中断された。

(5)

政 府 部 門 にお け る研 究 開発 と監 査

れには主体で制御で きない環境要因を考慮 しなければな らないか らである。

以上の項 目を修正す ると,投入 ・産 出モデルは下図のよ うにな る

269

荏 :ENVIRONMENTの要素

(1) political :relatinoshipbetweenparliamentandgovernmentpow‑

erofinterestgroup (2) technical :processtechniques

inputprice inputquality

(3)competitive:internationaltrend domestictrend (4) social :resourcecinstraints

(inclu.dingresearchers)

servicedemand,needs complementarymethods

(2)

アカウンタ ビリティモデル

政府部門における研究開発の特質 は,上記資源投入 に対 して政治的意思決定

を要す ることであるが,政治的決定を行 う議会 は投票を通 じて選出された議員

か ら構成 されている。それゆえ,政府 ・研究開発部局 は議会を介在 して活動原

資の拠 出者である国・ 民に対 して会計責任を負 うことになる。 この会計責任 は資

源の受託者が委託者 に対 して負 う責任であ り,民間部門,政府部門を問わない

概念であるが,拠出資本に関す る責任の性格 において基本的な違 いがある。す

なわち,民間部門における研究開発 は,基本的に生産関数を シフ トさせ企業の

(6)

27 0

第43巻 第 3 ・4号

成長率向上 に寄与す る効果を有す るため,企業活動の最初の原資 として調達 さ れ る資本 と研究開発投資 との関係 は直接的でな く,企業成長を通 じて生み出さ れた内部留保によって研究開発投資が行われる場合 も少な くない。一方,政府 部門における研究開発 は社会的共通基盤技術を形成す るものの,政府活動に固 有の消費経済 ( 拡大再生産を行わない)の性格か ら常に国民か ら資源の提供 ( 財 源調達)を受けないとその活動断続できない。 したが って,会計責任 と資金調 達が直接 リンクし,一体 となっている。政府部門の活動を分析する場合,会計 責任概念が重要なのは正にこの国民か ら議会,政府に及ぶ連鎖なのであり,戟 が国のように政府監査人が議会,政府か ら独立 している制度的メリッ トもこの 連鎖の外側か ら監視できるところにある

そ して,会計責任の連鎖で無視でき ない要素は研究開発の担当者である科学技術者 自身が利益集団を構成す ること である。メガサイエ ンスでは研究者がその必要性を議会,政府 に説得 し予算化 を働 きかけない と成立 しない

(

2 )とい ってよい。以上を整理 してアカウンタ ビ

リティ ・モデルを示す と下図のようになる。

:アカウンタ ビリティ

:情報 (統制)

2)よ く知 られた例 は,アーネス ト・ロー レンスが ノーベル物理学賞授賞を機 に医学的 応用の重要性 を説 いて ロックフェラー財団か らサイ クロ トロンの建設費を獲得 した ことが挙げ られ る。わが国で も,芋苗開発 プロジェク トに関 し,研究者か ら政府, 自民党議員 に対す る働 きかけが行われた ことを斉藤 (1992)は述懐 している。

(7)

政府 部 門 にお け る研 究 開発 と監査 (3)

‑イブ リッ ド・モデル

271

政府部門の研究開発を記述す るモデル として,一般的な投入 ・産 出モデル と アカウンタ ビリティ ・モデルを検討 したが,いずれのモデル も単独では研究開 発 と政府活動の特性を充分 に説明す ることは困難である。 したが って,両者を 結合 した‑イブ リッ ドモデルを ここで考案す ることにす る

すなわち,あるエ ンティティ ( 会計主体)のおかれている政治的環境を把握す るモデル としてア カウンタビリティ ・モデルを用い,一方,当該会計主体の行 う研究開発活動を 記述す るモデル として投入 ・産出モデルを用い,両者 は会計主体 と環境を媒介 として連接 され ると考える訳である。 ここでは,投入 ・産出モデル及びアカウ ンタ ビリティ ・モデルは‑イブ リッ ド・モデルのサブ ・モデルを構成す る。従 来の分析モデルでは両者の関係を明示的に扱 うものが ほとんど無 く,アカウン

タビリティ ・モデルは主体の関係 に焦点を当てた政治 システムに, また,投入

・産出モデルは生産過程に焦点を当てた経済 システムにそれぞれ適合 していた のに留 まっていた欠点を補 うものといえる ( 下図参照) 。

く‑ イブ リッ ド・モデル〉

守 \ レ

NPUT 1」lentity loUTPUT

′ 卜

politicalsystem

economicsystem

3.

政府監査 と研究開発 とのかかわ り

(1)

会計検査院の組織 と権限

会計検査院 は1

880

年 に設立 された財政監督機関である。政治 システムにお

(8)

272 第 43巻 第 3 ・4号

いては政府監査人 とみなす ことができ,内閣に対 して独立の地位を有す る。そ の基本的権限は国の収入支出の決算の検査 と確認であるが,政府関係機関,公 社,事業団等の会計を検査 しなければな らない他,出資,補助等の財政援助先 の会計について も必要に応 じて検査することができる。新憲法下では従来に比 して組織,権限が拡大 されたが特筆すべ きは,違法,不当事項の指摘を通 じて 財政を監督す る機能に加え,検査の結果を速やかに行政に反映できるように会 計経理,法令,制度または行政運営に改善を要す ると判断 した場合には意見を 表示 し,または改善の処置を要求す ることができるようになったことである。

したが って,検査報告に記載 される事項 も違法,不当事項のはか意見表示,改 善要求事項その他事項 とな っている。参考 として,最近

(1990

年度)の決算 検査報告記載内容を事項別 に示す と下表のようになる。

事項別一覧

(3)

事項区分 件数 金額 ( 万円)

違法 ・不当事項

240 844,026

意見表示 ・処置要求事項

9 74,583

処置済事項

14 189,844

263 1,036,265

(2)

事後評価 としての会計検査

我が国会計検査院は先のアカウンタビリティ ・モデルにおいて政府,議会か ら独立 した立場にあり,常時検査対象の会計経理を検査するものである。 した がって,予算循環モデルで しば しば使用 され る

plan‑do‑see

see

の機能 を果たす と位置づけることは,やや正格性を欠 くといえ る。会計検査 は前記投 入 ・産出モデルのイ ンプ ットか らエ ヴァリュエイションの全過程を検査監督す るものであるか らである。カナダ等の政府監査機関が評価 システム自体の レ

3)特定検査事項 (会計検査院が,検査業務の うち特にその検査の状況を報告する必要 があると認めた事項) は除かれている。

(9)

政府部門における研究開発 と監査

273

ビューを実施 しているの もこの観点か ら理解で きよう

ただ,後述す るように, 政府監査機関の外部性,独立性の程度 によ りその監査範囲に制約が生 じること

に留意 してお く必要がある。

このように,会計検査の対象 としては究めて広範,包括的に権限が付与 され ているが,研究開発の評価で問題になる成果,効果 といった局面,すなわち, 投入 ・産出モデルのアウ トプ ッ ト及 びアウ トカム 「 有効性」の観点 ( 事業が所 期の効果を達成 し効果を挙げているか)か ら本格的に検査す るよ うになったの は戦後 であ る。戦前 に諸外国に先行 して業績監査を実施 していた背景が ある が,従来の経済性 ・効率性検査 ( インプ ッ ト,オペ レイシ ョン,アウ トプ ッ ト の経済性,効率性)か ら有効性検査‑の拡張 は,租税負担率の増加等にともな い国民,議会 に政策の効果への関心が高まった ことによると思われ る。 この こ とは,検査報告の内容を振 り返 る時明確 に示 され る。戟後 の1

950→60

年代 の 違法 ・不当中心か ら

1970

年代 にな り改善処置要求 ・意見表示 の積極 的活用,

1970

年代半ばか らの 「 特記事項」 一特 に検査報告 に掲記 して問題 を提起す る もの 一による高度 の政策領域への検査範囲拡大,そ して,

1980

年代 か らの有 効性検査 の拡大,1

990

年代 には 「 特定検査事項」 一特 に検査 の状況を報告す る必要があると認めた もの‑の登場である。前記のハイブ リッ ド・モデルに照 らして整理す ると,伝統的なアカウンタビリティ ・モデルに基づ く会計責任の 検証か ら投入 ・産出モデルにおける外部か らのフィー ドバ ック機能発現及 び投 入 ・産出モデルのアウ トプ ッ ト,アウ トカム検査指向,さ らに情報提供機能発 現によ りアカウンタ ビリティ ・モデル と投入 ・産出モデル との連結への移行 と 解釈可能である。研究開発の成果評価 に関連す る有効性検査 について も

,1980

年代以降は監査 に特有な法令等拘束性が強い規範 との合致により検証す るタイ プの他,計画 目標等の事前評価の規準を判断規範に用いるタイプが現れている のが注 目され る。事前統制 と事後統制が リンクす るか らである。参考 までに近 年

(1979‑1990)年度決算報告(

4 )の有効性検査 を判断規範 によ り分類す ると

4) 『 会計検査のあらまし この1

0

年のあゆみ』が1

979‑198

B年度決算報告をとりま

とめているため

,1979

年度から最新の

1990

年度までを分析対象とした。

(10)

274

下表の通 りである。

第43巻 第 3 ・4

判断規範

‑件

比率 ( %) 投入 .産出過程の代理評価 *

26 55.3

内訳 事業遅延

(20) ̲(42.5) 遊休化 (6) (12.8)

画 (目標) 8 17.0

合規性

8 17.0

適格性 5 10.6

47 100.0

* :このタイプはアウ トプットがゼロまたは低水準であるか ら従 来の効率性検査の概念で も整理できるものである

(3)

検査対象 としての研究開発

政府部門における研究開発 はその実施主体が政府,企業を問わず会計検査の 対象になる。それゆえ,形式的には会計検査が有効性の検証 にまで及ぶ とす る と,研究開発の事後評価機関 とみなす こともで きる。 しか しなが ら,会計検査 院は検査対象,範囲に包括性を有す るものの米国の

OTA

のように研究開発評 価 に特化 した専門機関でないか ら,評価を実施す る人的資源 に質的,量的制約 がある。政府部門の研究開発 は, リスク,期間及び投資額がいずれ も大 きい こ

とか ら企業が実施 しない ( 出来 ない)基礎,応用研究の比重が高い ( 但 し特殊 法人は開発研究が中心。下表参照)のが特色であ り,いきおいその成果の評価 には高度の科学技術に関す る知識を必要 とす る。 しか も,基礎研究には予見不 可能性の問題 も内在す る。 したが って,検査の焦点 は目的が比較的明確で不確 実性が少ない開発研究に向け られることにな り,基礎,応用研究で設備 ・装置 投資が大 きいメガサイエ ンスに重点がおかれることになる。 もっとも, この選 択 はアカウンタ ビリティ ・モデルで考え ると,研究開発に向け られた資源ので きるだけ多 くを実質的検査対象

(

5 )にす ることにな り,会計検査 自体 のアカウ ンタビリティと費用対効果の点で合理的 といえ る ( 下表参照) 。

5

)書面検査としては悉皆検査である。

(11)

政府部門における研究開発 と監査 1.研究開発部門別の性格別構成

(1989

年度,単位 :

%)

基礎研究 応用研究 開発研究 国立研究所

27.1 30.8 42.0

特 殊 法 人

5.1 3.9 91.0

, 大 学

53.2 38.1 8.7

企 業

6.4 21.5 72.2

2.

研究開発の分類 と監査の重点 との関係

275

タイプ リスク

投資額 例

A

核融合

*

B

核物理実験

*

C 遺伝子解析 *

D

実用化研究

*

E

学術研究

F

数学

G

学術調査

H

改良研究

注 :*は監査の重点対象になることを意味する

4.

研究開発 に対する会計検査

(1)

研究開発評価 と業績検査 との異同点

会計検査 は政府部門の研究開発の全分野 に及ぶ ことは確かであるが,一般の

研究開発評価 とは異 なる側面 も多い。たとえば,評価対象領域では前節で述べ

たよ うに投資額が大 きい研究開発領域 を重点的になされ,定常的で少額な研究

開発 は 2次的にな る。 この よ うに会計検査 と評価 とはその対象が同 じ場合で

あって も制度的背景か ら微妙 に違 って くることに留意 しなければな らない。我

が国で は研究開発の評価の重要性が第二次臨時行政調査会,科学技術会議等で

唱え られ,「 研究評価の指針」

(1986.9)

が公表 されて も,実質的な評価,特に

(12)

276 43 3 ・4

外部者 による評価 は理化学研 究所等一部

(

6 ) で 実施 されているだけで,多 くは 内部の 自己評価 に とどま りその評価結果が一般 に公表 され ることは少ない。 し たが って,外部評価 としての会計検査 は国民 に開示 され る情報 として究めて重 要 な意義を有す る。 もちろん,会計検査 には制約 もあ るが,業績検査の一環 と

して行われ る研究開発の事後評価が どこまでその範囲,内容を深化 させ,外部 評価の代替機能を発揮 し得 るかを検討す ることは,我が国の実状を勘案す ると 理論的,実務的に価値あ ることである。特 に,上記指針で もその必要性が述べ

られている評価者 と研究者 とのス リ合わせ は,評価 に伴 う統制強化 によ り自由 で創造的な環境が失われ るので はない か という研究者の危懐 に対処す る効果が あると考え られ ることか ら,一種の外部統制機関である会計検査院の会計検査 がかか る負 のイ ンパ ク トに対 して どのよ うに対処 してい るかを考察す ることは 重要 である。

業績検査の うち研究開発 の評価局面 と一致す る有効性 の観点か らの検査 と研 究開発評価を種 々の角度か ら比較す ると下表のよ うにな る。

表 業績検査と研究開発評価 との比較

業績検査 研究開発評価

目的 の検証 アカウンタビリティ 情報提供

焦点 冒. 的の達成度合い 配分効率,因果関係

対象 エ ンティティ 政策,プログラム ,

ロジエク 卜 評価方法 規準 一 ( 計画 .目標) 研究水準の変化

と結果の対照 得 られた知見 と課題 実用化への進捗状況 投資効率

アプローチ : 過程評価 アウ トプッ ト, .アウ トカム評価,悼 モノに着目 報に着目

作業過程 欠陥,問題点の同定 研究開発の状況の把握

6

)理化学研究所では各研究室毎に,外部の専門家,有識者により定期的に総合的なレ

ビューを行う制度がある。

(13)

政府部 門 にお ける研 究開発 と監 査 277

上表をみれば明 らかなよ うに両者の最大の差異 は,業績検査がアカウ ンタ ビリティを基本 にす るのに対 し,研究開発評価 は成果指 向であ るこ とである。

他の項 目もこの点か ら導かれ るのにす ぎない。 したが って,政府監査で業績 検査へ の拡大 と しての研 究評価 は研究開発 の成果 にまで及ぶ ものの,エ ン テ ィテ ィが所期の 目的を果 た したかに着 目 して行われ るものであ り,研究開 発評価 のよ うに研究のアウ トプ ッ トが良好であ った理 由を調査 した り,他 の エ ンテ ィテ ィを含 めた政府部門における研究開発資源の配分決定 に用い られ るもので はない。エ ンテ ィテ ィが会計額 の基礎概念 にな っている もの もアカ ウンタ ビリティか ら理解 され るものであ る

前記 ‑イブ リッ ド・モデル との 関連で は,業績検査 はアカウンタ ビT Jティ ・モデルか ら投入 ・産 出モデルへ の拡大 として,また,研究開発評価 は最終的には研究者の業績評価 に結 びっ く( 7 )ことか ら投入 ・産 出モデルか らアカウ ンタ ビリティ ・モデルへの拡大 と して位置づ けることがで きる。そ うであれば,投入 ・産 出モデルの要素 も組 み入れっっあ る政府監査 において は,研究開発 に内在す る不確実性 ( 生産関 数の クジ化) と会計検査の客観性,中立性 をバ ランスさせ る配慮が なされて

いると考え られ る。

( 2) 研究開発 にかか る検査報告の分析

不確実性 は主 として投入 ・産出モデルにおけるアウ トプ ッ ト及びアウ トカム の局面で発生す るものであるか ら,アカウンタビリティの検証か らこれ らアウ トプ ッ ト,アウ トカムを検査の対象か ら除外す ることは有効性の検査の断念 に つなが る。 このため, これ らの局面を検査す るが同時に客観性を保持す るため に直接的な検査対象 とせずに代理評価を行 うことが想定 され る。有効性の観点 の検査の多 くが この代理評価であることは既述 したが,研究開発の検査で もこ の特性 は同様 と考え られ る

実際

,1979

年度以降の検査報告 を分析す ると, 以下に示すように この推論は肯定 され る。

7)科学技術会議 (1987)は 「能力 ・業績 に応 じた処遇 を行 うに当た って は,適切 な 評価が前提 になるため,研究評価の結果を参考 にす る」 と述べている。

(14)

27 8

43巻 3 ・4号 1.研究開発関連の指摘状況

指摘件数(A) 研究開発関連(B)B/A(%) C(%)

1979 181 1 0.55 2.98 ・実験施設使用材料 の仕様・委託研究の物 品管理・プロジェク トの進捗状況・開発 プラ ン トの燃料仕様・受託研究の経理・研究施設 の構造設計 80 208 0 0 3.03

81 214 2 0.93 2.99

82

83 211823 03 01.41 22.91.89

84 180 0 0 2.92

85 146 0 0 2.91

86 156 0 0 2.97

87 209 1 0.48 3.07 ・実験用材料の管理 88 202 1 0.49 3.03 ・研究施設 の調達価額 89 220 1 0.45 3.01 ・研究廃棄物の処理契約

90 263 0 0 2.90

C‑科学技術関係予算/二股会計予算

2

.指摘 内容 (

9件)の分類

1)報告 区分

不当事項

3

処置要求 ・

5

処置済事項

2)観点 区分

合規性

経済性 ・効率性 有効性

3 4 2

意見表示事項

0

特記事項 1

3

)投入 ・産出モデル

4)

アカウンタビリティ ・モデル イ ンプ ッ ト

3

プロセス

5

アウ トプ ッ ト 1 アウ トカム

0

タイプ( 9 2 タイプ( 診 2 タイプ( 卦

5

タイプ④ 1

注 :タイプ( 彰と( 卦とに重複す るものが 1件 ある

上表の分析か ら明 らかになることは,

(15)

政府 部 門 にお け る研 究 開発 と監 査 279

ア.

研究開発 にかか る指摘率が政府予算に占める科学技術関係予算の比率 に比 して低いこと ( 約

1/10)

ィ.研究開発の成果 自体を検査対象 とす る有効性の観点か らの検査が少ないこ と

り.有効性の検査で もアウ トカムを直接の評価対象 としているものはな く,投 入 ・産出モデルによる代理評価であること

工.検査の対象 とて着 目され るエ ンティテ ィは,アカウンタビリティ ・モデル における主務大臣に対す る研究開発部局,政府 に対す る研究開発 ( 特殊) 法人であること,

である

こうした現状 にな っている理由は,アについては,研究開発評価おける専門 的知識の制約及び予見不可能性, リスクの勘案によるもの と思われ る。ただ, 専門的知識 に関 しては,我が国会計検査院は一時 「 工事検査院」 と称 されたの に現れているようにかな りの技術的専門性を有 してお り,最近で も医療費検査 分野で レセプ ト審査官 と同程度の審査能力を発揮 しているか ら,研究のアウ ト

プ ッ ト,アウ トカム評価 はともか く,少な くともオペ レイションにかか る評価

までは制約にはなっていないと考え られ る。イ及びりについては,上記理 由に

よるはか,会計検査の客観性を維持す るため,不確実性の要素が大 きいアウ ト

カムの直接評価を避 けているか らと思われ る。最後の工については,我が国会

計検査院の法的位置づ けか ら解釈で きる。すなわち,政府,議会か ら独立 した

外部監査人 として政府監査を行いその結果を議会に報告す るとい うことは,読

会で決定 された法令,予算を基本的な準拠枠 として政府活動を検証す ることに

な り, 議会 に対す る大臣, 大臣に対す る実施部局, 大 臣を含む主務官庁 ( 政府)

に対す る研究開発法人,政府 に対す る委託 ・契約業者 とい うアカウンタビリテ

ィの連鎖を検査す ることになる。 したが って,①か ら④の タイプの検査が有 り

得 るわけであるが,前記 した通 り法令,予算の規程 は抽象的,一般的な ことが

多いため,それを検査の判断規範 に用いることは制約 され① にかか るタイプは

限定 されることになる。一方,実施部門に近づ くに したがい規定,基準,手順

(16)

280 43巻 3 ・4号

は具体的になるか ら,検査の規範上の問題 は少な くなる。特に①のタイプは検 査の客観性の保持 という制約の他,議会に対す るアカウンタビリティに固有な 問題を有す る。議会で決定 されたとおり実施 して会計責任上問題が無い場合で もそのアウ トプ ッ ト,アウ トカムが満足できる水準でないこともあるか らであ る。 この場合には,エ ンティティ自体のアカウンタビリティ確保 とい うより投 入 ・産出モデルでの改善,修正行動をとるよう議会に対 して報告す ることにな り,議会の判断 した政策的価値の評価に及ぶ ことが有 り得 る。 しか し, この こ とは最高意思決定機関の議会の権力を侵害す ることになる危険性があり,我が 国等多 くの政府監査機関に とって一定の制約を受 けざるを得ない(

8)。

この点 で( 丑及び③のタイプでかつ有効性の観点か らの検査で もある原子力船 「むつ」

の研究開発 に対す る事例 は,政府部門の研究開発 における監査 と評価の関係を 検討する適切な ものといえ る。

5

.原子力船 「 むつ」の研究開発と会計検査

(1)

「むっ」の開発経緯

原子力船 は,在来船では困難 と見込まれる船舶の大出力化,高速化,長期連 続航行等を実現できる特徴を有 しているところか ら,海運,貿易立国の我が国 として原子力船の実用化 に備える必要があるとして,原子力船開発事業団によ り

1963

年か ら研究開発が開始 され,1

992

1

月に最後の実験航海を終えた。

30

年の研究開発期間は,大 きく①計画か ら建造契約まで,②契約か ら出力上 昇試験まで,③出力上昇試験時の放射線漏れか ら改修 ・点検整備まで,④出力 上昇試験再開か ら実験航海終了までの

4

期間に分 けられ る。 この経緯を当初計 画 と実績 とを対比 して示 しと下図のようになる。

この

4

期間の うち,計画 と実績が大 きく異なっているのは,第

1

期の契約ま での期間と第

3

期の改修 ・点検の期間である。第

1

期の遅延は当初予算36 億 と

8)た とえば,英国NAOのvalueformoneyauditは,政策価値の評価 には及 ばな

い皆が国家監査法 (NationalAuditAct1983)に明記 されている。

(17)

政府部門にお ける研究開発 と監査

(当初計画 (1963.7決定)〉 く実 績)

281

1963年度 基本設計 64

建造契約

65 詳細設計 66 進水 67 臨界

68

原子炉引渡

69

出力上昇試験

70 実験航海 71 実験航海

1

963年度 基本設計

6

4

65 66

67

建造契約

68 詳細設計

69 進水

70 71

72

原子炉引渡

73 臨界

74

出力上昇試験,放射線漏れ

総点検 ・改修 ・維持管理

90

出力上昇件再開

91 実験航海

92 解役

競争入札結果 ( 約

60

億)が大 きく隔た り,随意契約 に移行 して も不調 にな り, 国産炉が輸入炉かの比較を含 めた計画の見直 しを行 った ことによる部分が大 き い。 しか し,最大の遅延 は,1974 年

9

月の出力上昇試験時の放射線漏れ によ る第

3

期の ものである。放射線漏れの結果 は船体の遮蔽改修を必要 とした他, 定係港 ( 大湊)の漁民 らに原子力船の再受 け入れを拒否 され,新たに定係港を 建設す ることになったか らである。そ して,原子力船 「むつ」の研究開発 に関 して この第

3

期 に

2

度検査報告 に記載 されてい るので ある。すなわ ち,1976 年1

2

月 と1

983

年1

2

月 にいず も特記事項 と して掲記 されている。特 に,1983 年

は政府 自民党内部で 「むつ」廃船論が主張 されるようになったさなかの ことで

あ り,メガサイエ ンスの一種 とみなされ る原子力研究開発 に対す る政府監査を

分析す ることは,研究評価の観点のみでな く,アカウンタ ビリティの観点か ら

(18)

282 第 43巻 第 3 ・4

も意義が大 きい。 また,第

2

節で提示 した‑イブ リッ ド・モデルの有効性を検 証で きるメ リッ トもある

そ こで,

1983

年の 「むつ」廃船論議か ら検査報告,そ して最終的に存続決 定 に至 る政治的な動 きをまず追 ってみることにす る。最初に自民党内で廃船の 議論が現れたの は,

1983

7

月に中山太郎 ( 後 に外務大 臣)参議院議員を会 長 にす る 「 原子力船を考える会」が参加を呼びかけたのに始まる。翌月 には初 会合を開 き,

1)

原子力船の実用化には経済性等か らまだ時間がかか ること,

2

)船舶用原子炉の研究開発 は陸上で も可能, との理 由か ら原子力船の研究開 発予算を他の科学技術振興 に振 り向けるべ きとした。その後 も,継続的に考え る会 は会合を開 き同年

1

1 月 には科学技術庁長官 に対 し,定係港の大湊港での出 力上昇試験及び実験再開,再母港化を申 しいれた。 この動 きに対 し,政府側 は 原子力船懇談会を開 き,研究開発推進の立場か ら,

1)

原子力船の研究開発 は 貿易 ・造船国 日本 にとって必要,

2)「むっ」の運航 によって貴重なデータ,

経験がえ られる,

3)

廃船 にす るにも受 け入れ港が必要,

4)

再母港化 は地元 関係者 との協定 ( 実験 は大湊港で は しない)か ら困難, との報告を得 た。

そ して,総選挙をへた翌年

1

17

日, 自民党科学技術部会 は 「むつ」廃港, 研究中断を決定す る

その理 由は,

1)

既 に投入 した金額が約

600

億 に上 って いて さ らに今後

1000

億程度が必要 とされ,投資に見合 った研究成果が挙が る か疑問である,

2)

実用化 は

21

世紀以降に遠のいている,

3)

財政悪化の折, 限 られた科学技術予算を効率的に配分す る必要がある, というものであった。

この うち

3

)については,原子力平和利用予算 に占める原子力船開発予算の比 率が,放射線漏れを起 こした翌年の

1975

年度以降,開発が進展 していないの に急激 に伸 び,

1975

年度が

1.57%

に対 して

1983

年度 には

6.69%

,全体 の伸 び

2

倍 に対 し

8.5

倍 とな っていた背景がある

これを受 けて

1

月20 日の予算の大 蔵原案で は,概算要求

128

億 に対 して維持管理経費の

32

3

千万を認め られた に留 まり,大湊港 に代わ る新定係関根浜港建設 についてはゼ ロ査定 となった。

もっともi推進側 の巻 き返 しもあ り,

1

月24 日の政府最終原案で は,

1)「

つ」の在 り方 は与党 自民党に検討委員会を設けて,

8

30

日を目途 に検討す る,

(19)

政府部 門 にお け る研究 開発 と監 査 283 2

)廃船の場合で も関根浜新港 は建設 し,新港で廃船する

, 3)新港全体計画

の具体案を科学技術庁で検討 させ る,

4)1984

年度予算では一般港 として必 要な最小限の工事費45 億円を計上する, ことで政治的合意がなされた。 この結 果,舞台は検討委員会に移 ったが,同年 8 月 6日に最終報告書が自民党総務会 に提出され,規模を縮小 して継続することが決定 された。新港は当初一般船舶 の利用 も可能になっていたが 「むつ」のみの利用に変更 され,また,実験航海 も2 年か ら

1

年に短縮 された。 この結果,追加経費 として想定 されていた1

000

億は600 億程度に圧縮 されることになったのである。

以上のよ うな結果,契約の1

967

年度か ら実験航海を終えた1

991

年度 までの 総開発額 は約11

00

億円とな り,契約時点の計画額億

108

億円の約1

0

倍 ( 実質で も約

4

倍) ,期間は研究開発開始の19

63

年度か ら起算す ると約30 年間で当初汁 画

(1963‑1971)の約3

倍強 とな ったのである。 これ ら実績の計画 ( 予定) 超過 は,GAO (

1982,1984)及 びNAO (1986)において も,政府資金 によ

る大規模研究開発プロジェク トに関 して しば しば指摘 されているが,その中で も超過率が高い部類に入 る。

(2)

特記事項の概要

ア.1

975

年度決算検査報告

特記事項 として掲記 された内容 は,

1975

年度 までに投入 された資金 と研 究開発の進捗状況が中心であ り,投入 ・産出モデルに したがえばイ ンプッ ト 及びオペ レイションに着 目したものであり,また,アカウンタビリティ ・モ デルに したがえば,事業団の政府に対する関係及び政府の議会に対する関係 を対象 に した ものである。具体的な記述内容は,研究開発が開始 された1

96 3

年度か ら

1975

年度 までの投資額の財源別内訳 ( 政府出資,民間出資,寄付, 国庫補助)及び項 目別内訳

(

「むっ」本体,定係港施設,一般管理費等) と

いう基礎的な財務情報のほか,特記事項の情報提供機能の性格か ら放射線漏 れ後の措置について記述 している。

すなわち,政府,青森県漁業共同組合連合会長,青森県知事及びむつ市長

4

者協定

(1974.10)に基づ く定係港 (

大湊)撤去等の合意内容の実施状

(20)

284

43

3 ・4

況について,新定係港が末だ決定 されていないこと,漁業振興対策費及び地 元むっ市 の振興対策費の金額を記載 している

一方,放射線遮蔽改修,安全 総点検については,修理港が決定 していないため全 く実施 されず,大湊港に 係留 されたままとなっているとしている。そ して, このよ うな状態が 「この まま推移す るとすれば,開発の成果が確認 されないまま更に相当額 の国庫負 担を要す ることとなると認め られ る」 と結んでいる。特記事項 は情報提供 に

より問題提起をす ることを目的に していることか ら,記述内容 も従来の 「 指 摘

パ ター ンと異なるが,政府監査の特性か ら評価方法は原子力第 1船開発 計画 と結果の対照であ り,

1975

年度 まで にすべての開発業務 を終了す ると

い う改訂計画 に準拠 して,全ての判断が為 されてい ることが理解で きる。

1975

年度 の決算検査報告 に記載 された こと1

975

年度 までの投 資額を対象 と しているの も決算の検査 とい う枠組み ( アカウンタ ビリティ ・モデル)を反 映 している

ィ.1

982

年度決算検査報告

記述 内容 については,1

975

年度報告以降の原子力船 の研究開発状況を分 析 した ものであ り,基本的にオペ レイションに焦点を当てた もの となってい る

特 に,1

982

年度 の特色 は当該年度が計画等 で基準 となる時点でないの に1

983

年 の検査 と して検討 され た点 で あ る

情報提供 とい うス タ ンスを とって いるものの,そ の内容を

1975

年度 と比較す ると微妙 な差異が認め ら れ る。すなわち

,「

多額の事業費を要 した」理 由を分析 し,放射線漏れ後1

975

年度か ら

1982

年度 までの開発経費約291 億 円の うち修理港 とな った佐世保 港 における遮蔽改修等 にかか る経費が約

124

億 円と約

4

割 に も達 しているこ

とを示 してい る

そ して,遮蔽改修の 「 適否をか し担保期 間内

(1984.6)

に確認 し,開発成果をあげるためにも格段の努力を要す ると考え られる」 と

した上で 「いまだ開発の成果を確認」せず に 「当初の予想を大 きく上回 る多

額の国費を投ず る結果 となっている」 としている。 ここには,投入 ・産出モ

デルによる分析 とい うよりもプロジェク トの管理について間接的に批判 し,

実験再開にむ けての事態打開を求 め る色彩が読 み取れ る

。1975

年度報告が

(21)

政府部門における研究開発 と監査 285

「 開発の成果が確認 されない」事態のみを客観的に述べていたの と若干異な り,会計検査院側の考え も述べ られてお り,情報提供機能に本来的なアカウン タビリティの改善に関する勧告的要素が間接的に含まれているのが注 目される。

(3)

会計検査の特性 と限界

検査報告に現れた記述内容を第 1節で整理 した‑イブ リッ ト・モデルに照 ら す と,正にアカウンタビリティ ・モデル として解釈で きる。焦点 は原子力船開 発事業団法に記載 されている所期の目的 ( 実験データの取得)の達成度であり, 評価対象はエ ンティティである原子力船開発事業団,評価方法 は事業計画に比

して事業の進捗が遅れているとい う意味で計画 と結果 との対照である。 これに 対 して,考え る会の焦点 は,原子力船の開発を科学技術予算全体のなかに位置 づけ,資源配分の効率を扱 っている。議会を構成す る ( 与党)議員であるゆえ に資源配分に関す る意思決定 に踏み込めるのであ り,議会,行政か ら独立 した 政府監査人 は議会に対す る情報提供 に留 まるの と対照的である。 したが って, 評価対象 もエ ンティティの事業団その ものでな く原子力船の開発事業 とい う

つのプロジェク トであ り,アウ トカムにかか る費用対効果 に も及んでお り,秤 価方法 は投資効率である。一方,政府内部の原子力委員会,科学技術庁の焦点 は,国の原子力行政の正当化であ り,廃船に して もほぼ同額の経費を要す ると する埋没原価の立場か らのアウ トプ ッ ト,アウ トカムの評価にある。それゆえ, 評価対象は考え る会 と同 じく原子力船開発事業であ り,評価方法 は投資効率及 び政治的影響度である。放射線漏れに伴 う地元青森県等 との協定,改修時の佐 世保入港における長崎県等 との折衝等で事業団でな く政府,科学技術庁が前面 にでたの も事業団組織の維持でな く事業の存続を図 る必要性か らなのである。

このよ うに,考える会及び原子力委員会 はいずれ も投入 ・産出モデルによる 評価パ ター ンとして位置づけ可能であるが,考える会の着 目す るアカウンタ ビ リティが国民 ( 正確には自民党支持者)に対す る与党の関係 く

1)

であるのに

対 し,科学技術庁の着 目す るアカウンタ ビリティは主務大臣が定め,また,国

会の議会をへた原子力船開発 は是 とした上で研究開発部局が主務大臣に対す る

関係②及 び政党が青森県等に対 して負 う関係 く

2

である点が異なる。 この差

(22)

286

43 3・4

異 は,前 出図 を参 照 すれ ば,政府監 査人 の アカ ウ ンタ ビ リテ ィの検証が せ いぜ い① に とどま り, 「むっ 」 の会計 検査 にお いて は議 会が決定す る目的 ・計 画 の 妥 当性 には及 ばなか った,す なわ ち,事業 団法 の規定 で は実験 デ ータの取得 が 一 次 的 な 目的で あ るため,実験 デ ー タが将 来 の実 用化 にいか な る価値 を有す る かの評価 に踏 み込 まなか った ことや,考 え る会 が 目的の妥 当性 を なぜ 問題 に し 得 たか を理 解 で き 実 際,会計 検査 で着 冒され た アカ ウ ンタ ビリデ イ は,事 業 団が主務 大 臣及 び科学技 術庁 に対 して負 う原子 力第

1

船 開発計 画 の実施 に関 す る③ の局面 と事業 団法 に よ り政 府 が議 会 に対 して負 う原子 力船 の開発 に関す る(丑の局面 で あ る。 評価 のパ ター ンを会計 検査 院,考 え る会及 び原子 力委 員会 3着 につ いて前節 の表 に したが って,整理 す ると下表 の よ うにな る。

会計検査院 原子力船を考え る会 原子力委員会 モデル Aモデル I.0モデル Ⅰ.0モデル

目 的 「むつ」の研究開発 「むつ」の在 り方の 「むつ」の活 用の検討 支 出の効率性,有効

性 の検証 再検討

所期の 目的 予算配分 の効率性 原子力政策への影響 (実験 データの取得)

の達成度 費用対効果 アウ トプ ッ ト二の価値

原子力船事業団(現原子力研究所) かでの)原子力船 開(科学技術政策のな のなかでの)原子力船(原子 力平和利用政策

発事業 開発事業

計画 と事業進捗度 の 目的の妥 当性 廃船時 と断続時の費用 比較

本体業務以外 に係 る

経費割合 投資効率 対効果

㌻アロ‑チ Jプロセス評価 アウ トプ ッ ト評価 アウ トカム評価

コス ト分析 実用化可能性調査追加重用見積 現行計画の修正̲

(23)

政府部 門 にお け る研 究開発 と監査 287

ただ,会計検査院の検査が 目的を所与 として 目的の達成度合いを検証す るの にとどまることについては,マスコ ミ等において政策の中身 も吟味すべ Lとい う立場か ら 「 歯がゆい」 とす る意見 もある

確かに,

GAO (1986)

において は本件 と似たウラン濃縮 プラ ン ト開発事業 につ き事業 その ものの必要性,経済 性を問題 に している事例がある

すなわち,世界的 にウラン濃縮に対す る需要 が減少 していることか ら, レーザー法 に比 して効率が低いガス遠心分離方式の 濃縮 プロジェク トの開発意義が薄 らいでお り,その見直 しをエネルギー省 に勧 告 した ところ,同省はプロジェク トを中止 した ものがある。 プロジェク ト認可 時のウラン需要の逼迫状況が逆転す るとい うエ ンティティにとっての環境変化 は,投入 ・産出モデルか ら示 されるよ うにアウ トプ ッ トの価値を変化 させ るこ とにな る。ア ウ トプ ッ ト,アウ トカムに着 目す る立場か らは

GAO

の評価 は 当然 とい うことになるが,アカウンタビリティ ・モデルによれば, この評価 は 議会で定めた内容に関す るもの となる

わが国のよ うに議会か ら独立 した政府 監査機関で は議会の判断の適否を評価で きないが,

GAO

議会の付属機関であ るがゆえに政策の適否を対象 にで きるのであ る。 この点 は,政府のみな らず議 会か らも独立 していることか らくる制約であ り,議会か らの干渉を受 けないメ

リッ トの代償 ともいえ る。 「むっ」の場合 も,計画 当時 には

1970

年代 に実用 化を迎えるとい う予測が経済性等の点で困難 にな り,実用化の必要性が低下 し ているとい う点で上記 ウラン濃縮の場合 と同 じであるが,検査報告では 「 廃船

に しろ とか,関根浜に港をっ くって早 く実験航海を しろとい うことは言わない

‑検査院はその判断に必要なデータを提供 します とい う情報提供機能 に徹す る 立場」 ( 9 )にとどめている。

このエ ンテ ィティに着 目し, 目的を所与 とす るアプローチは,事業進捗が計 画に比 してそれ ほど遅延 していない場合,あるいはアウ トプ ッ トが計画 目標を はば達成 した場合 には,アカウンタ ビリティ ・モデル,投入 ・産出モデルのい ずれによって も評価 は 「 悪い」 とな らないため,会計検査 において指摘の対象

9)辻 (1988)参照。

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