ー研究ノートー
S c i e n t i f i c Note
南極・昭和基地付近の地震
神沼克伊*・赤松純平**
Local Earthquakes around Syowa S t a t i o n , Antarctica
K a t s u t a d a KAMINUMA* and J u n p e i AKAMATSU**
A b s t r a c t : T h e r e w e r e no e a r t h q u a k e s l o c a t e d i n t h e A n t a r c t i c c o n t i n e n t b e f o r e t h e I n t e r n a t i o n a l G e o p h y s i c a l Year (IGY) i n 1 9 5 7 . About t e n s e i s m i c s t a t i o n s have b e e n o p e r a t e d i n t h e A n t a r c t i c c o n t i n e n t s i n c e IGY. Four e a r t h ‑ q u a k e s w e r e r e p o r t e d t o l o a c t e i n and a r oun d t h e A n t a r c t i c c o n t i n e n t s i n c e 1 9 6 8 . One o f t h e f o u r e a r t h q u a k e s w h i c h o c c u r r e d i n 1 9 8 0 was l o c a t e d i n Queen Maud L a n d , t h e e a s t A n t a r c t i c s h i e l d a r e a .
The o c c u r r e n c e o f s m a l l and m i c r o e a r t h q u a k e s aroand e a c h s e i s m i c s t a t i o n h a s b e e n r e p o r t e d . However, no e a r t h q u a k e l o c a t i o n s w e r e d e t e r m i n e d b e c a u s e t h e e a r t h q u a k e s w e r e r e c o r d e d a t o n l y one o r two s e i s m i c s t a t i o n s .
A t r i p a r t i t e s e i s m i c n e t w o r k o f r a d i o t e l e m e t r y was e s t a b l i s h e d a t Syowa S t a ‑ t i o n ( 6 9 ° S , 3 9 ° E ) i n 1 9 8 7 . Some t e c t o n i c e a r t h q u a k e s w e r e r e c o r d e d by t h e n e t ‑ w o r k . Magnitude o f t h e e r a t h q u a k e s i s l e s s t h a n 3 , and P‑S
与20s . The e a r t h ‑ q u a k e s a r e e s t i m a t e d t o b e l o c a t e d a t a b o u t 1 6 0 km n o r t h e a s t o f Syowa S t a t i o n . The a c t i v i t y o f t h e e a r t h q u a k e s i n r e l a t i o n w i t h t h e g e o l o g i c a l s t r u c t u r e i s a v e r y i m p o r t a n t i t e m i n t h e A n t a r c t i c g e o s c i e n c e .
要旨:
1 9 5 7
年に国際地球観測年が始まり, 地震観測点が設置されるまでは, 南極 に震源のある地震は観測されていない.南極での地震蜆測が継続されるにしたがい,南極大陸やその周辺海域での地震発生が報告されるようになった. 過去2
0
年間に4
個の地震の震源が南極大陸内や沿岸に確認されている. その一つは東南極盾状地に 位置している. マグニチュードはいずれも4
ぐらいで, 南極大陸内にマグニチュード5以上の地震が起こっていないのも事実である.
各観測点近傍の地震活動も, 国際地球観測年の頃は報告されている. 昭和基地で も局地的な地震活動が認められているが,
1 9 8 7
年に始めたテレメータ観測でも, 局 地的な地震が4カ月間に 1 0
個ほど記録された. これらの地震のマグニチュードは3
以下で,昭和基地でのP‑S
与2 0
秒,北東方向160km
付近に震源域があることがわ かった.この震源域の付近は地質断層の存在も推定されており, このテクトニックな局地 的地震と地質構造との関係も興味深い.
1 . ~
ま し が き1 7 7
南極大陸内の地震活動は南極の地球科学の諸課題の中でも,古くて新しいテーマである.
1 9 5 7
年 の 国 際 地 球 観 測 年 の 開 始 頃 ま で は , 南 極 に 地 震 が 起 こ ら な い と 言 わ れ て い た*国立極地研究所.
N a t i o n a l I n s t i t u t e o f P o l a r R e s e a r c h , 9 ‑ 1 0 , Kaga 1 ‑ c h o m e , I t a b a s h i ‑ k u , Tokyo 1 7 3 .
**京都大学防災研究所.
D i s a s t e r P r e v e n t i o n R e s e a r c h I n s t i t u t e , Kyoto U n i v e r s i t y , Gokasho, U j i ‑ s h i ,
Kyoto 6 1 1 .
1 7 8
神沼克伊・赤松純乎 〔南極資料(GUTENBERG and RICHTER, 1 9 5 4 ) .
地震の大きさについては,持に注意されていなかった が,当時の世界の地震観測網では,南半球には観測点も少なく,マグニチュードが6
程度より大きな地震が南極では起こっていないというのが正確な知見であった.
地震の起こらない原因として,
1 )
極に近い,2 )
寒い,3 )
大陸が氷床に覆われている,な どの理由が提唱された(たとえばHATHERTONand E v 1 s o N , 1 9 6 2 ) .
その後,世界の地震観 測網が充実するにしたがい,北極にはかなりの地震が起こっていることが明らかになり,少 なくとも原因の1 )は否定された. 2 ) , 3 )については,その後議論の進展はない.
国際地球観測年で南極大陸内にも地震観測点が設置され,データの蓄積が始まった.その 結果,大陸内にもマグニチュード
4
程度の地震が,数年に1
度ぐらいの割合で,発生してい ることが明らかになってきた・ しかし,過去30年間,マグニチュード5
以上の地震の報告は ない.活火山もある広大な面積の南極大陸で,マグニチュード5
以上の地震が,30
年以上も 長い期間起こらない理由は,まだ解明されていない.昭和基地付近でも,微小地震の活動は報告されている(神沼,
1 9 7 1 ) . 1987
年から開始し た地震のテレメータ観測では,P‑Stime
が約20
秒の地震が記録された.この新しい記録を 得たのを機会に,これまでの南極の地震活動について整理してみた・2 .
南極大陸内の地震南極大陸周辺域に震源の決まった最初の地震は,
1 9 6 7
年1 2
月4
日のデ七プション島の噴火 であることが当時のPDEcard ( U . S . Coast and Geodetic Survey
発行)に報告されてい る.大陸内に震源の決まった最初の地震は筆者の一人ら(KAMINUMAand I S H I D A , 1 9 7 1 a )
による報告である.1 9 6 8
年6
月26
日に発生した地震で, 今日よりはるかに貧弱な地震観測 網であったため,南極大陸内の5
点の観測点のデータを使って霙源決定された・この地震の報告に対し,
1 )
氷震ではないか,2 )もし自然地震ならもっと起こってもよい
はず,などの疑問が出された.この地震のマグニチュードは4 . 3
であるが,テクトニックな 地震としての波形を有していること,震瀕域には地質断層があり,地震が起こっても不思議 はないと反論した・ また,データが菩積すれば必ず,同じょうな地震の発生が確認されるだ ろうと主張した・事実,この
1 0
数年間に図l
に示すように,前記の地震を含め,4
個の地震が南極大陸内と その沿岸で記録されている.1974
年に起こった図中のB
は,データの蓄積した成果の一つ である(OKAL,1 9 8 1 ) . A
ともども,南極横断山脈の周辺で起こっており,地質構造的に見 ても第3
紀以降に隆起が起こっていると考えられる地域であり,テクトニックな地震と考えられる.
1980
年に起ったC
の地震は国際地震センター( I S C )により決定された初めての大陸沿岸
に起こった珍しい地震で,B
と同様0KAL( 1 9 8 1 )により議論されている.マグニチュード
V o l . 3 1 , No. 3 J
南極・昭和基地付近の地震Earthquakes in the Antarctic Continent
1 7 9
︒ O
゜
Nov. 4,'82
●
( 4 . 5 ) D
(0 km)90°W ; ) + Y . 9d ゜ E
500 0 500 1000
l
1 1 I I
I I """"'IKILOMETERS
1 8 0 °
図
1
南極大陸の地震.A:
神沼・石田( 1 9 7 1 ) , B: 0KAL ( 1 9 8 1 ) , C: ISC ( 1 9 8 0 ) , D:
ADAMS e t a l . ( 1 9 8 5 ) . (
)内はマグニチュードと震源の深さF i g . 1 . E a r t h q u a k e l o c a t i o n s w i t h m a g n i t u d e and d e p t h i n t h e A n t a r c t i c c o n t i n e n t . A: KAA1INUMAand I S H I D A ( 1 9 7 1 a ) , B: 0 K , 1 L ( 1 9 8 1 ) , C: !SC ( 1 9 8 0 ) and
D:ADAMS e t a l . ( 1 9 8 5 ) .
も
4 . 9
と大きく,震源決定に用いた観測点の数は6 1
点である.1 9 8 2
年のD
はISC
で地震記録をよく見ているADAMS e t a l . ( 1 9 8 5 )
らによって求められ ている.海岸から1 2 0 0km
も大陸内に入った内陸で起こっている. 東南極大陸はプレカン ブリア時代の盾状地で,テクトニックには非常に安定した大陸である.ゴンドワナ大陸を構 成していたと推定される他の大陸の盾状地でも,地震活動は極めて低い.南極大陸の内陸域,しかも盾状地で地震が起こったという貴重な記録である.この震源地付近の氷床の厚さは
3000m
に達する.震源の深さ0km
は,この地震が氷震の可能性があることを示している.しかし,この
0km
は震源計算上の仮定であって,観測された反射波の到達時刻を考慮する と,震源の深さは1 7km
で自然地震と推定される.A
の震源の深さは海面下1km
で,氷床下の基盤内で起こった地震と考えられると報告さ れていなまた,B
の深さ3 3km
ほ震源計算上の仮定された値であるが,浅い地震であることは間違いないこの二つの地震については,大きな氷震ではないかという可能性が完全 には否定できないが,前述した理由と震源付近の氷床が
1000m
よりも薄いことを考慮して,自然地震と判断してほぼ問違いないと考えている.
1 8 0
神沼克伊・赤松純平 〔南極資料1 9 8 7
年に入り南極科学委員会(SCAR)
の固体地球物理作業委員会( S o l i d E a r t h Geo‑
p h y s i c s Working Group: SEG/WG)
のメンバーヘの,ISC
のR .ADAMS
からの報告に ると,1 9 8 6
年9
月1 7
日,0 7
時1 5
分0 2 . 0
秒に南極点付近でマグニチュード3 . 0
の地震が起こ ったとのことで,各国の地震記象の詳しい読み取りを求められた.南極点基地の3
成分の記 録から震源は8 8 . s 0 s , 45°W
と推定している.この地震は昭和基地では記録されていない.マグニチュードが小さなうえ,
2 0 0 0 km
以 上も離れているので,記録されなかったのであろう.同じ理由で,他の基地でもほとんど観 測されていないと推定される.図l
でも分かるように,これまで南極点付近に地震は起こっ ていない.南極点基地での地震波形では,P
波,S
波が明瞭に記録されているようなので,テクトニックな自然地震と考えて問違いはないと思うが,氷震の可能性が皆無ではない.
3 .
昭和基地付近の地震南極の地震観測点で困ることは,自然地震と氷震をいかに判別するかである.遠方で起こ った大きな地震(少なくともマグニチュードが
5
以上)はともかく,近地地震はほとんど微 小地震であり,氷震との区別が難しい.それでもスコット基地やウィルクス基地で,1
点3
成分の地震観測結果から自然地震の発生を報告している(HATHERTON, 1 9 6 1 ; BROWNE‑
COOPER e t a l . , 1 9 6 7 ) .
昭和基地付近の地震と氷震については,筆者の一人の一連の報告・研究がある(神沼,
1 9 7 1 ; KAMINUMA and I S H I D A , 1 9 7 1 a , b ; KAMINUMA and TAKAHASHI, 1 9 7 5 ; KAMINUMA, 1 9 7 6 ;
神沼・羽田,1 9 7 9 ; KAMINUMA, 1 9 8 2 ) . 1 9 7 3
年頃にはP‑St i m e
が3 ‑ 4
秒程度の微 小地震が年数回発生したが,その後は,昭和基地の地震記象を見るかぎりでは,記録されて いない.1 9 7 3 , 1 9 7 4
年は昭和基地の東オン'グル島内で定常の地震観測に加え, 一 辺 約1 km
の3
点の観測を実施している.同じような観測は1 9 7 6 , 1 9 7 9
年にも実施しているが,この時には,
3
点観測網でも微小地震は記録されていない. このように地震が起こっていない こともあり,最近では昭和基地の地震活動の報告はない.他の地域でも,スコット基地とバンダ基地の観測から決定した震源分布
(ADAMS,1 9 6 9 )
の 報告や地震活動( E V I S O N ,1 9 6 7 )
の報告などがある.しかし,1 9 7 0
年代以後,この種の報告 は火山地域を除いては,見当たらない.局地的な地震活動を調べるには,現在の南極の地震 観測網では不十分である.4 .
昭和基地での地震テレメータ昭和基地付近の基盤岩は後期原生代のもので,人工地震で得られている地表付近のP波速 度は
6km/s
である( I K A M Ie t a l . , 1 9 8 4 ) .
このような典型的な盾状地における地震波の伝 播特性,特に散乱減衰などの研究,周辺地域で発生しているテクトニックな地震の観測を主V o l . 3 1 , No. 3
〕 南極・昭和基地付近の地震1 8 1
EAST ONGUL I.
' " " " " " ' " " " ' " " ● " " " " "
1 km
, 5
ー
図
2
昭和基地のテレメーク観測点 (TOT:とっつき岬,LAN: ラングホプデ)
F i g . 2 . L o c a t i o n of t h e t r i p a r t i t e s e i s m i c a r r a y l i n k e d t o Syowa S t a t i o n by r a d i o ‑ t e l e m e t r y .
0 7 . 3 072
LAN・・・・・・・・・・・・・・‑・・‑‑‑‑・‑・‑・‑‑‑・・・‑‑‑ ・・‑・・‑・・
一 一
.
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炉
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.
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図 3 三点のテレメータ観測点で記録した地震記象
F i g . 3 . Seismograms of t e l e s e i s m s r e c o r d e d a t t h e t h r e e s t a t i o n s of t h e t r i p a r t i t e
s e i s m i c a r r a y .
1 8 2
神沼克伊・赤松純平 〔南極資料な目的とした地震観測を,著者の一人が越冬するのを機会に昭和基地で開始した・
観測点は図
2
に示したように,昭和基地の地震計室(SYO),
とっつき岬(TOT),
ラング ホ ブ デ(LAN)
の3
点である.底辺の長さ3 0km,
他の2
辺が1 5 ,20 km
の二等辺三角形 に近い変形の三角形である.三角形の形はよくないが, これは無線テレメークを実施する上 で見通しがきくことが必要であり,与えられた条件下では最良の形で,基地周辺の地形から の制約である. この大きなt r i p a r t i t ea r r a y
に加え,東オングル島内に図2左に示した小さ なt r i p a r t i t ea r r a y
も計画されている.大
t r i p a r t i t ea r r a y
の観測網は1 9 8 7
年2
月下旬にSYO
点,5
月2 7
日にTOT
点,7
月2 9
日 にLAN
点の観測を開始した.各観測点には3
成分速度型地震計(固有周期l
秒)を設置し,PCM
テレメータで送伯してイベント・トリガ一方式でアナログ磁気記録を得ていな総合 惑度は1 ‑ 3 0Hz
で4 V/m•cm/s,
陽電池システムを利用するほか,
ダイナミックレンジは
60db
である.バッテリーも併用している.
送信機の電源は太
3
点で観測した遠地地震の記象例を図3
に示した.3
点とも上下動成分で,分かるように,
記象を見れば
06
時4 8
分 正 常 に 動 作 し て い る こ と が 確 認 さ れ な 地 震 は1 9 8 7
年9
月3
日,の発震時である.
SYO
:...ー・・一――ー・.... p . .
. : ; ; u ̲
ゃ ; i ・ . o : . : '
. . . . : . 一 ― . . . -t-~-~~-- .
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TOT ・ ・ ~----·
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言・~,~ILi'·.··' . : : . : ..
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. . . : . I
....
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.. . . ; . .
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JUN.10'87 .‑ .戸‑・・ —•
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•一・
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・・・・..
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:
: . ‑ : ‑ : • :
•••••
―—•一'.••
: : ‑‑:・・‑‑‑:‑・・・図 4 昭和基地
(SYO)ととっつき岬 (TOT)で観測した近地地震(昭和甚地北東方向
約160km
に起こったと推定されている)F i g . 4 . Seismograms of t h e l o c a l e a r t h q u a k e l o c a t e d a t 160 km n o r t h e a s t of Syowa S t a t i o n .
0GRr‑
V o l . 3 1 , No. 3
〕 南極・昭和基地付近の地震1 1 . 9
・,.9
:
. . ' .'.. ,
I
―.:C:,・::・: : '
‑・J
国l e f T 8 7 ・ ‑ r s ・ ・ = ・ 3 ・ s ‑ ― ‑‑ ‑‑ . ・ . ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
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GRRPHTECCORP
一
I
‑‑‑‑ ‑
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一 ・綸● ● ●•一...‑...•.
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一•一 ・‑・・・ ‑‑r.-++.+-1lt し~t
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』:臼口薗t t l l t
t ー!呈ul-1---f=At—D-t~加いい1rtt~~~u~図
5
近地地震の昭和基地(SYO)
での3
成分記録F i g . 5 . T h r e e component s e i s m o g r a m s of t h e l o c a l e a r t h q u a k e r e c o r d e d a t Syowa S t a t i o n .
1 8 3
LAN
点観測開始前の6
月1 0
日1 9
時3 5
分頃,図4
に示した近地地震が観測された.同じ地 震のSYO
点の3
成分の記象を図5
に示した.両図から分かるように,2
つの観測点でP
波,S
波とも明瞭に記録されている.2
点間でP
波の着震時の差が2 . 2
秒,P‑St i m e
の差が1 . 5
秒であることから,Vp/Vs=l.68
となり通常の上部地殻の値となる.TOT
点の初動が2 . 2
秒ほど早いことから,この波の到来方向は昭和基地からみて北東方向である.図5
に示したSYO
の3
成分初動方向もU,S , W
で水平2
成分の初動の大きさも, この波が北東方向か ら到来したことを示している.P‑S
与20
秒であるから,震源域は昭和基地の北東160km
の 大陸沿岸地域と推定される.昭和基地の東北東約
3 0 0km
にあるソ連のマラジョージナヤ基地からニンダービーラン ドにかけてのレイナー岩体は,昭和基地付近のリュツォ・ホルム岩体とは異なる変成作用を 受けている(広井・白石,1 9 8 6 ) .
その境界は明らかではないが, 恐らく境界付近には断層 も存在するであろう.地震の発生場所はこの付近またはその沿海と想定される.そのような 地域で,このようなテクトニックな地震が発生したことは大変興味深い.なおこの地震のマグニチュードは 2.5—3 程度と見積もっているが,詳しくは今後検討していく.
1 8 4
神沼克伊・赤松純乎 [南極資料2
月から6
月までの間に,同じような地震が1 0
個記録されている.P‑S
与1 9 ‑ 2 1
秒で,前 述の地震とほぼ同じであり,たがいの波形も似ている.5 .
あとがぎ昭和基地で
1 9 8 7
年2
月より始めた地震のテレメータ観測で, これまで報告されていなかっ たP‑S
与20
秒の地震が記録されたので,その概要とその学問的背景とをまとめて述べた.ここで報告した地震は,地質構造との関連から考えても大変興味深く,広い視野にたっての 研究の必要性を感ずる.
現在昭和基地で始められているテレメータによる地震観測では,
t r i p a r t i t e array
の形が 必ずしも震源決定に適しているとはいえないが,地質構造と地震活動の関係の解明には十分 に役立つ記録が得られている.ここで報告したP‑S
与20
秒の地震群が,昭和基地の定常観 測の記象に見いだされなかったのは,多分1
点だけの観測だったからと思われる.しかし一 方では,このような地震の発生パターンが間欠的な可能性も否定できない.少なくとも数年間,この観測を続けることにより,昭和基地付近の地震活動についての知 見は飛躍的に増大するであろう.
このテレメーク観測の開始にあたっては,国立極地研究所の地学部門,管理部,事業部の 多大の御支援を得た.京都大学理学部の伊藤潔氏には原稿を読んでいただき貴重な御指摘を 頂いた.原稿の整理,昭和基地との連絡を担当したのは周藤由美子さんである.併記し,厚
く御礼申し上げる.
R e f e r e n c e s
ADAMS, R. D. ( 1 9 6 9 ) : S m a l l e a r t h q u a k e s i n V i c t o r i a Land, A n t a r c t i c a . N a t u r e , 2 2 4 , 2 5 5 ‑ 2 5 6 . ADAMS R. D . , HUGHES, A. A. and ZHANG, B . M. ( 1 9 8 5 ) : A c o n f i r m e d e a r t h q u a k e i n c o n t i n e n t a l
A n t a r c t i c a . Geophys. J . R . A s t r o n . S o c . , 8 1 , 4 8 9 ‑ 4 9 2 .
BROWNE‑COOPER, P . J . , SMALL, G. R. and WHITWORTH, R . ( 1 9 6 7 ) : P r o b a b l e l o c a l s e i s m i c i t y a t W i l k e s , A n t a r c t i c a . N.Z. J . G e o l . G e o p h y s . , 1 0 , 4 4 3 ‑ 4 4 5 .
E v 1 s o N , F . F . ( 1 9 6 7 ) : Note on t h e s e i s m i c i t y o f A n t a r c t i c a . N.Z. J . G e o l . G e o p h y s . , 1 0 , 4 7 9 ‑ 4 8 3 . GUTENBERG, B . and R I C H T E R ,
C.F . ( 1 9 5 4 ) : S e i s m i c i t y o f t h e E a r t h , 2nd e d . P r i n c e t o n , P r i n c e t o n
U n i v . P r e s s , 2 7 3 p .
HATHERTON, T . ( 1 9 6 1 ) : A n o t e on t h e s e i s m i c i t y o f t h e Ross Sea r e g i o n . Geophys. J . R. A s t r o n . S o c . , 5 , 2 5 2 ‑ 2 5 3 .
HATHERTON, T . and E v 1 s o N , F . F . ( 1 9 6 2 ) : A s p e c i a l mechanism f o r some A n t a r c t i c e a r t h q u a k e s . N.Z. J . G e o l . G e o p h y s . , 5 , 8 6 4 ‑ 8 7 3 .
広井美邦・白石和行
( 1 9 8 6 ):
昭和基地周辺の地質と岩石.南極の科学,5 .
地学,国立極地研究所編.東京,古今書院,
4 5 ‑ 8 4 .
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V o l . 3 1 , No. 3
〕 南極・昭和基地付近の地震1 8 5 KAMINUMA, K. ( 1 9 8 2 ) : S e i s m i c i t y i n A n t a r c t i c a . A n t a r c t i c G e o s c i e n c e , e d . by
C.CRADDOCK. Mad‑
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神沼克伊・羽田敏夫