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毛−アクリルブレンド繊維の放湿特性 西沢 信・佐藤 多美子

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(1)

(資料)

毛−アクリルブレンド繊維の放湿特性

西沢 信・佐藤 多美子

Moisture Desorption of Wool‑Acryl Fiber 

by 

Makoto Nishizawa・Tamiko Sato

1.緒

  (1)

 前報で毛一アクリル混用の市販品についてその放湿特性を検討した。その結果放湿平衡に近い状 態では両者の混用割合と放湿率との間にはある程度直線関係が成立することがわかった。しかし 測定時の繊維集合状態のちがいや市販のものであるための毛の種類のちがいなどが影響すると推 察される結果も得られた。本報は毛一アクリルをそれぞれ最初から別々に細粉し、一定割合で均一 混合させたものの各種ブレンド試料を作成し、かつ人体皮膚温に近い34〜35℃近傍までの温度上 昇に対する皮膚接触時初期の放湿性即ち初期放湿速度を検討すると共に、これらから市販混用品 の両者の混用割合の推定の精度や可能性を探ることを目的としたものである。

II.試料及び実験方法

1.試料

(1)ブレンド試料

 試料は羊毛モスリンとカシミロンモスリンを使用した。これらはいずれも中尾フィルター工業       (1)

製のものである。なお、試料の精製は前報と同様の方法で処理した。

 両者をそれぞれ別々に3〜5mm以下に切断してほぐし、絶乾状態にした後、温度20±1℃、湿 度65±2%に保った恒温恒湿室中で、さらに湿度調節したデシケーター内に入れ、1昼夜放置し て吸湿平衡とした。吸湿平衡に達した2種類の試料を全体の重さが880mgになるように比率を計算 して精秤し、できるだけ均一に混合するよう混ぜ合わせて試料とした。このようにして混合した 試料を以下ブレンド試料と称す。

 各試料の混用割合は100:0、80:20、60:40、50:50、40:60、20:80、0:100である。

(2)市販試料

 一般に市販されている手芸用手編糸で毛、アクリルの混用率の異なる6種類を用いた。使用し た市販試料とそれらの諸元について第1表に示す。なお、試料の精製、細粉、吸湿平衡はブレン

ド試料と同様の方法によった。

2.放湿率及び絶乾重量の測定

新潟青陵女子短期大学研究報告 第19号 (1989)

(2)

26 西 沢 信・佐 藤 多美子

 1.で吸湿平衡とした試料を同一条件の恒温【亘湿室内で電子水分計EB−280−MOC(島津製作所 製)を用いて一定速度で加熱し、この時の放湿量の経時変化を記録計で1mgの単位までとらえ、

絶乾重量に対する放湿量から放湿率を求めた。

第1表  各試料の表示組成

混用率     ∬)表示組成

1)  (%)

試料名 wiA

A

  i100 i  O  …

B

70i30  ;

C

50i50  …

D

40i60  …

E

  …30 i 70

@ … F

oi100  …

1)各試料の表示に関する注釈

B.毛はモヘァ40%,ウール30%使用   アクリルはカシミロン使用 C,アクリルはハイコール使用 D,アクリルはカシミロン使用

E.毛はモヘア,アクリルはカシミロン使用

巫)AのWは毛,FのAはアクリル

       (1)

 電子水分計の操作は前報同様であるが、今回は試料台近傍が約34℃になるようヒーターコント ローラーを設定し、加熱時間を450秒間とした。

 また、測定回数については予備実験の結果からバラツキが小さいものと判断されたので同一試 料について2回行うこととした。

       (1)

 絶乾重量は前報での方法によって測定した。

III.結果及び考察

1.ブレンド試料と市販試料の初期放湿速度

第1図は測定器内の温度上昇の経時変化を器内に温度センサーを挿入し、記録計から読みとっ た結果を両対数(時間は秒数t、温度は℃

でC)で示したものである。短時間側の約 120秒程度までは直線的に上昇(相関係 数=0.98)していることがうかがえ、こ の時の上昇速度はおよそ1.2℃/10秒で ある。(本来恒温状態に試料を挿入する方 が適切と考えられるが昇温速度が速く、

誤差を生じやすいため、このような方法

    (2}

によった。)

 このような器内で各ブレンド試料及び 市販試料の放湿率(各時間の放湿量に対

(Q bフ

Z.O

/、0

1.0      2,0       8,0       時間(log t)

  第1図  温度上昇の経時変化

(3)

する絶乾重量の互分率として示した。)の経時変化を示したのが第2図及び第3図である。

ただし第2図においてaは毛100%、bは毛:アクリルが80:20、 cは60:40、 dは50:50、 eは40:60、

fは20:80、gはアクリル100%であることを示す。

これらの結果から、いずれの試料においても約120秒以前の放湿率増加に比べて120秒以後での

/2

/0

 3 放湿率(%)

6

4

2

o

/2

/o

放湿率(%)

4

2

0

60    1ZO

 第2図 c A

 /80   240    3ao    詔ク    420 450   時 間(秒)

ブレンド試料の放湿率の経時変化

60   /20   /80   240   yPO   %o        時 間(秒)

 第3図  市販試料の放湿率の経時変化

ヂ20 450

(4)

28 西 沢 信・佐藤多美子

増加速度は緩慢となるものの平衡には達しないことがわかる。即ち温度上昇初期では放湿は直線 的に進行することを示唆する。このことから初期放湿速度を求めてブレンド試料と市販試料との ちがいを両者の同一混用割合のもので比較することが可能と思われる。これらを明かにするため、

両者における同一混用割合の毛100%、毛とアクリル50:50、40:60及びアクリル100%について第4 図(1)〜(4)の如く放湿率と時間の両対数をとってこれらのグラフを示すと共に120秒までの直線1生 が成立すると推定される部分までの傾斜を初期放湿速度としてブレンド試料ではa、市販試料で はAなどに添字を付して各グラフ内に記し、またその時の直線性を相関係数で示した。いずれも 120秒程度までは相関係数の高いことがわかる。この事から初期放湿速度を比べるとブレンド試料

0

温 度

(り b艪

0

 ユ

(θ 毛 /oo/e

   匿 フ レンド

   ゜希販

帝販湾、・o,6?8

(相闇イ系教一.;〃、タgs ♪

フ^しンド紀戸久ク74

(2ζ召鳥ξ】イ添数 二〃、9タ5・)

/、O

  2 時間(10gt)

3

0  1

(2) 毛   50Y,

  アクグ/iレ  SO/

●/■

布夏如、・ク銘

(相関係数=o・9クリ

アレドqz・ o, 764

(相関係教二〇・・994)

  2

時間(logt)

3

温度

(9bのo【)

/,0

0  ユ

(3♪毛   40 /。

 アクグノレ  5P%

.戸

言1販ノ43二久sγ7

(Alil av系教呂ク、9タ4)

ブLンド免・o、743

(フ紹目関イ弄ミ数こ 0、999)

  2       3 時間(log t)

   第4図

/so

0

(4♪アクソル・/oo 7・

纐婦4・o,・272

(相関イ系数二〃、990 )

7・wドa4・久433

(相闇魚教・0、9クS)

       時間(log t)

ブレンド及び市販試料の初期放湿速度

(5)

と市販試料ではいずれの混用割合でもやや前者の初期放湿速度が大きく、特に毛の40%、50%混 用でのちがいが大きい傾向がうかがえる。これは両試料の最初の形状のちがいから同程度注意深

く細粉しても同一粒度とはなり得ず、また混用状態のちがいなどから測定時の試料の充唄度及び これに基づく表面積の差異なども加わり、少なくとも測定開始初期の放湿率に影響してくること を推察させるものである。この現象が通常のハサミによる試料の切断方法をとった場合絶えず生 じるのかについてはなお検討を要する問題である。また昇温速度のより一層厳格な管理も要求さ れていることになるが少なくとも本実験の精度においてはさらに第4図から初期放湿速度の大き いブレンド試料の450秒における放湿率も大きくなる傾向を見ることができる。なお、このような        (3)

放湿過程が段階的に進行することはすでに報告されているところであるがしかしまた、これらの 図より両者いずれの試料においても毛の混用割合が小さくなると初期放湿速度が減少していく点 では、同一の傾向を示し、吸湿性の少ないアクリル繊維の混用割合が増加すれば初期放湿速度は 減少することを示唆し、この関係は直線的ではなく、毛の少なくなる、ある混用割合の時点より 初期放湿速度の減少が大きくなる傾向を示すことを予測させるものである。

2.放湿率と混用率

 第1図、第2図及び第4図に見られるように450秒においても放湿率は平衡に達していないこと は明らかである。したがって各混用割合での水分率とこの時間における放湿率との関係を求めて おくことにより放湿平衡の何%時点の結果であるかを知ることができる。この関係を市販試料に っいて示したのが第5図である。

 ほぼ直線関係を示し(相関係数は0.995)いずれの混用割合でも放湿平衡の約73%時点の放湿率        となる。ブレンド試料についてもこの関係を        プロットするとほぼ同一直線上にのる。前報       (1)

       同様このような放湿率と混用割合の関係を       w450秒時点での他に30、90、240秒を加えてブ

 20       レンド試料と市販試料についてそれぞれ第6 水      図、第7図に示した。

       をそのまま用いた。両者を比較すると時間の        大きい240秒、450秒でこれらの関係が大きく        異なってくることがうかがえる。これについ   0       5−      /o

放湿率(%)

第5図  450秒における放湿率と水分率

式において標準偏差に基く適合度は、より高い結果を得る。

達していないことを示すものといえる。しかし本実験における34℃までの温度上昇による放湿率 からもある程度混用割合を推定し得ることを示唆するものである。絶乾状態から求めた水分率と 混用率のグラフ上に更に450秒におけるブレンド試料と市販試料の放湿率を加えて示したのが第

8図である。

 水分率との関係においては明らかに直線関係が成立する。(相関係数0.994)又ブレンド及び市       (1)

ては先に指摘したがいずれの場合でも前報の 高温時における結果と同様ここでも長時間側 の450秒では放湿率と混用率の関係は直線に 近づくことは明らかである。しかし実験値よ

り最小二乗法によって実験式を求めると二次     これはこの時点において放湿平衡に

(6)

30 西 沢 信・佐 藤 多美子

/00

合so

0

第6図

   放湿率(%)

 混用割合と放湿率(ブレンド試料)

/oo

2

0

2 8 ρ

4 6

日並

!2

第7図  混用割合と放湿率(市販試料)

!5

s ・・k分孕

・ナレド試料の放群

・申販就料り柵呼

       SO      !〃

    毛の混用割合(%)

第8図  水分率・放湿率と混用割合

!ク0

0 SO

市販品 毛の混用割合(%)

1va

第9図  ブレンド試料と市販試料の関係       (実験式からの結果)

販試料でも直線関係の相関係数ではそれぞれ0.991及び0.992と高いことを考慮すれば、ブレンド 試料の場合は、より水分率一混用割合の直線に近いと判断することができる。即ちブレンド試料で の場合の方が信頼性の高い結果が得られることを示唆していると解される。そこで第6図、第7 図の毛の混用率をブレンド試料及び市販試料についてそれぞれY1、Y2、対応する450秒での放湿率 をX1、 X2とするとY1=0.30Xl+6.27×1−8.89、 Y2=0.02Xl+11.21×2−18.34なる実験式が標 準偏差3.63、4、27という適合度で得られる。これら両式に同一の放湿率を代入することにより ブレンド試料と市販試料の混用率の関係を知り得る。これらから得た結果を第9図に示した。

 当然誤差はあるものの概略その関係を把握することができる。そして先の結果からブレンド試 料の場合が、より信頼性が高いものとすれば市販試料から得られる毛の混用割合は同図から実際

より低い結果を生じることになることを示唆するものである。

(7)

IV.総  括

 標準状態にある毛一アクリル混用の布地が人体皮フ温に近い温度に上昇する時、いかなる放湿過 程をとるのか、又これらの混用割合がどのように影響するかについて両者をブレンドした試料と 市販試料を細粉して放湿量を測定したモデル実験の結果から検討を加えた。

 その結果初期放湿速度は吸湿性の少ないアクリルの混用割合が増加すると小さくなるがブレン ド試料の初期放湿速度が市販試料のそれより大きくなり、ちがいが生じる結果を得た。このよう な低い温度までの上昇では最初の試料の形状等に基づく細粉程度の問題がより大きく影響すると 考えられる結果であった。また昇温開始450秒では放湿平衡に達しないもののこの時点での混用割 合と放湿率の関係は水分率との関係から見た混用割合との比較でブレンド試料の場合がより近似

している。この事を考慮してブレンド試料と市販試料の放湿率と混用割合との関係を実験式に基 づいて考察すると市販試料においては毛の混用割合が多くなる傾向を示した。

 終りに本報は本学教育課程の専門研究被服科学に所属した鈴木聡子、本田典子両学生の実験に 追加実験を行ってまとめたものであり、両氏に感謝の意を表する。

参 考 文 献

(1)山口雄三、西沢信、佐藤多美子;新潟青陵女子短期大学研究報告第17号(1987)

(2)西沢信、佐藤多美子;新潟青陵女子短期大学研究報告第16号(1986)

(3)丹羽雅子、野坂靖子;繊消誌5、247 (1964)

参照

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