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矩形断面容器のスロッシング対策に関する研究

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Academic year: 2021

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矩形断面容器のスロッシング対策に関する研究

Research on Sloshing Measures of Rectangular Section Container

土木工学専攻  5 号 池田 達哉                                                                  Tatsuya IKEDA 1.  はじめに 

2007 年 7 月に発生した新潟県中越沖地震(M6.8)で,

東京電力㈱柏崎刈羽原子力発電所内の使用済み核燃 料貯蔵プールにおいて溢流が確認された.その中の 1 基のプールでは, 水面と床の高さが 40cm あったが,

この高さを越える勢いでプールの水が放射線管理区 域外へ溢流したと報告されている.この原因の一つ として,地震動によりスロッシング現象が生じたの ではないかと推定されている.この現象は, 1964 年 新潟地震以来観察される現象であり, 2003 年の十勝 沖地震でも石油貯蔵タンクの浮き屋根沈没,石油タ ンクの全面火災等の被害が発生している.

一方,地震発生が近いと言われている宮城県沖地 震,東海地震,東南海地震,南海地震等の海溝型地 震,いつ起きても不思議でない直下型の活断層型地 震などこれらの地震は 2〜20 秒のやや長周期の地震 を強く励起する可能性が高いと予測されている.そ の際,大型容器の内溶液が放射性物質や汚染物質で あれば,溢流した場合は甚大な被害が生じることに なる.そのためスロッシング現象の把握ならびに,

その対策を検討する必要性が希求されている.

これを受けて本研究では,矩形断面容器における 一つのスロッシング対策案として,容器内に金網を 複数枚設置する方法

1),2)

を提案する. デジタルビデオ カメラ(以下.DVC)を用いた非接触計測から,液体の 振動特性把握を行い,スロッシング減衰対策に関し て検討を行う. さらに, 縮尺の影響を把握するため,

柏崎刈羽原子力発電所内の使用済み核燃料プールの

約 1/10,1/20 縮尺での加振実験を行い,縮尺による

影響がないことを確認して,本研究で提案する対策 案の有効性に関して検討を行うものである.

 

2.  実験概要 

2.1  矩形水槽モデル 

 実験に用いた矩形水槽モデルは,内側部 1100×

1000mm,高さ 750mm, 厚み 10mmの PVC 製であり,

溢流した使用済み核燃料貯蔵プールの約 1/10 の縮

尺である.これを振動台にボルトで固定し,水を

300mm まで満たした.写真‑ 1 に実験状況を示す.

2.2  金網による減衰機構 

 金網を設置することでのスロッシング対策案の特 徴は,簡単な構造であり,機械的制御もなく,さら に設置方法に関しても天井クレーン等を用いて枠組 みした網を設置するだけの簡単な施工が可能である.

この方法により期待できる効果は,スロッシングに より液面揺動が生じた時,液体が金網を通過する際 に抵抗力が生じて水の粘性が見掛け上大きくなるこ とである.これにより,減衰が付加され,流速を抑 制して波高を低減することを期待する.

 本実験で用いた金網は,亜鉛引織金網であり,表

‑ 1 に諸元を示す.開口率は,各々46.9, 56.0,60.8%

である.金網を L 字アングルで固定して,起振方向 に対して垂直に水槽を4 等分する形で3 枚設置する.

2.3  計測項目 

 水槽端部における応答波高を算出するために,水

槽から 120cm 離れた所に DVC を設置する. そして,

水槽端部を撮影した映像データをパソコンに取り込 み,1 コマ 1/30 秒のコマ送り機能を用いて,実単位 での応答波高を算出する.さらに全体の水面形を把 握するために,水槽から 230cm,側壁から 160cm 離 れた所にも設置する.また,実験のインターバルは 設定振動数毎に静止した状態から始める.

写真‑ 1  実験状況 表‑ 1  使用した金網の諸元

type1 type2 type3

線径(mm) 2.0 1.6 1.4

目合い(mm) 4.4 4.8 5.0

開口率(%) 46.9 56.0 60.8

(2)

2.4  固有振動数の確認 

一般に矩形水槽のスロッシング n 次の固有振動 数

f

は,水深 H と起振方向の幅 L の関係から算出 することができ,式(1)の理論式

3)

で表せられる.

) 1 1 (

tanh 2 1

2 2 ) 1

(   ・・・ 

L H n L

g Hz n

f

式(1)より, 実験で用いた容器のスロッシング 1 次,

2 次モード振動数の理論値は, 表‑ 2 に示すように,

それぞれ 0.76Hz,1.52Hz である.

表‑ 3(1)に起振条件を示す.加振実験は,矩形水 槽をボルトで固定した振動台に,変位制御の正弦 波加振で行う.式(1)より,1 次は 0.76Hz,2 次は 1.52Hz の±0.15Hz の範囲で,片振幅 2mm,波の 回数を 20 回と統一して加振する.

2.5  実験条件の設定 

 前節より実験値との確認を行った上で,対策案 である金網設置による加振実験を行い,対策無と の比較を行う.ここで表‑ 3(2)に示すように, 1 次 モード振動数は 0.73〜0.79Hz,2 次モードは 1.49

〜1.55Hz までを 0.01Hz 刻みで,波の繰り返し回 数は 20 回に統一して行う.なお,ここでは防水対 策上の問題から振幅は片振幅 3.0mm とする.

 

3.  実験結果 

3.1  スロッシング挙動の確認 

 スロッシングの 1, 2 次モード振動数(理論値)との 確認をするため,制御可能で,波高の差異が確認し やすい表‑ 3(1)に示す起振条件で正弦波加振する. そ の時の振動数と発生する最大応答波高の関係を図‑ 1 に示す.水深は 0.3m で行い,この時の理論値はそ れぞれ 0.76Hz, 1.52Hz であるのに対し,最大応答波 高が生じた固有振動数は1 次, 2次それぞれ 0.76Hz,

1.52Hz である.これより理論値と実験値が一致して

いることが確認できる.

1 次モードに関しては,入力振動数 0.76Hz では最 大応答波高は 17.6cm を示したが, 0.73Hz では 3.9cm,

0.79Hz では 5.0cm を示した.理論値である 0.76Hz とこの前後の振動数域とを比較すると,発生応答波 高が大きく異なっていることが確認できる.2 次モ ードでは,1 次モードとは異なり,最大応答波高を 示した振動数は 1.52Hz ではあるが,鋭いピークを示 すのではなく 1.52Hz を中心として±0.03Hz でほぼ

同等の応答波高を示している.さらに 2 次モード関 しては,式(1)から水深を変化させても顕著な差がな いことも踏まえて,振動数の範囲を限定するよりモ ード形状に対して対策を講じる必要性があることが 確認できる.

3.2  1 次モードにおける応答波高の比較 

 図‑ 2 に 1 次モードの理論値である 0.76Hz におけ る対策無と type1 の応答波高波形を示す.対策無,

type1 ともに起振開始から徐々に波高が増加してい

る.対策無は,起振終了後自由振動となってから 60 秒経過したにも関わらず, ±10cm 程度の波高が生じ ており,さらに一度揺動し始めると容易に減衰しな いことが確認できる.type1 では,起振開始から 8 秒程度経過した時の応答波高は 3.3cm であり,その 後上昇時の勾配が対策無と比較すると緩やかで,起 振中から波高を抑制している.さらに, 10 秒程度で 液面挙動がほぼ停止していることがわかる.

 次に図‑ 3 に 1 次モード共振域での最大応答波高を 表‑ 2  スロッシング n 次モード振動数理論値  起振方向の幅(m) 水深(m) 1次モード(Hz) 2次モード(Hz)

1.1 0.3 0.76 1.52

表‑ 3  振動装置の設定条件 

(1)  理論値との比較          (2)  対策案での入力条件  0.61〜0.91

1.37〜1.67 振幅(mm) ±2.0 繰り返し回数(回) 20

振動数(Hz) 0.73〜0.79

1.49〜1.55 振幅(mm) ±3.0 繰り返し回数(回) 20

振動数(Hz)

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

0.60 0.64 0.68 0.72 0.76 0.80 0.84 0.88 0.92

応答波高[cm]

入力振動数[Hz]

スロッシング 1 次モード共振域

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

1.36 1.40 1.44 1.48 1.52 1.56 1.60 1.64 1.68

応答波高[cm]

入力振動数[Hz]

スロッシング 2 次モード共振域

図‑ 1  最大応答波高と入力振動数の関係

(3)

示す.ここで,横軸は最大応答波高を示した入力振 動数

f0

(1 次: 0.76Hz)で各入力振動数を除して無次元 化したものを採用する.対策無の場合は,入力振動 数 0.76Hz における最大応答波高は 28.1cm であった の に 対 し て , 金 網 設 置 に よ る 最 大 応 答 波 高 は type1:3.6cm, type2:4.0cm, type3:4.4cm となった. type1 における波高低減率は 87%である.

3.3  2 次モードにおける応答波高の比較 

 図‑ 4 に 2 次モードの理論値である 1.52Hz におけ る対策無, type1 の応答波高波形を示す.対策無の場 合は,起振中に波高が徐々に増加し,自由振動とな ってからはビート状態になりながら減衰していく.

さらに,起振終了前後ではなく,起振終了後 20 秒経 過した所で最大応答波高を示す.これは,自由振動 へ移行してから回転挙動が見られ,かつ計測ポイン トを水槽側壁端部での応答波高を算出したためであ る.一方,type1 は起振終了後ビート状態ではなく,

20 秒程度で液面挙動がほぼ停止していることがわ かる.

図‑ 5 に 2 次モード共振域での最大応答波高を示す.

図‑ 3 同様に横軸は,

f0

(1.52Hz)で除して無次元化して いる.対策無の場合は理論値である 1.52Hz における 最大応答波高は 13.7cm を示した.一方,金網設置に よる最大応答波高は,type1:4.8cm,type2:5.4cm,

type3:5.7cm であり,対策無と type1 を比較すると波 高低減率は 65%である.

ここで,座間らの研究

4)

によれば,スロッシング 発生時の溢流現象は,20%程度の波高減少でも大き な効果が期待される.そのため本論で得られたこと から,十分な波高低減効果があると判断できる.さ らに共振時は開口率が小さいほど波高低減効果が顕 著に表れることがわかった.

3.4  減衰定数の比較 

 図‑ 6 に非接触計測から算出した応答波高データ から算出した各入力振動数における減衰定数を示す.

減衰定数の算出方法は,応答波高に固有振動数の

±20%でバンドパスフィルターをかけて算出した減 衰波形を用い,式(2)からシンプレックス法による非 線形最適化により算出した.

) 2 ( )

cos(

)

(t Ae 0ht qt 0

  ・・・

ただし,ω

q

は減衰各固有振動数,h は減衰定数,A は振幅,θ

0

は位相差,ω

0

は固有角振動数である.

対策無における減衰定数は,振動装置の入力振動 数,波高や振動モード形状に依存せず, 0.1〜0.4%と 一定の値を示している.この値は,従来から論じら れている自由表面でのスロッシングの減衰定数とし て妥当な値であり, 図‑ 2,図‑ 4 に示す応答波高波形 からも一度揺動すると液面挙動停止まで相当な時間

-30 -20 -10 0 10 20 30

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

応答波高[cm]

時間[s]

対策無 type1

起振時間

図‑ 2 入力振動数 0.76Hz における応答波高波形

0 5 10 15 20 25 30

0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05

最大応答波高[cm]

f/f0

対策無 type1 type2 type3

図‑ 3  1 次モード共振域における最大応答波高

-30 -20 -10 0 10 20 30

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120

応答波高[cm]

時間[s]

対策無 type1

起振時間

図‑ 4  入力振動数

1.52Hz

における応答波高波形

 

0 5 10 15 20 25 30

0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05

最大応答波高[cm]

f/f0

対策無 type1 type2 type3

図‑ 5  2 次モード共振域における最大応答波高

(4)

を要することがわかる.一方,金網設置時において は, 1 次モード共振域である入力振動数 0.76Hz の場

合, type1 のとき減衰定数は 2.86%であり,対策無の

0.26%と比較すると約 10 倍程度増加している. 次に,

2 次モード共振域である入力振動数 1.52Hz の場合は,

type1 では減衰定数が 1.75%であり,対策無の 0.4%

と比較すると 4 倍以上の増加が得られている.

これより,金網を設置することで減衰定数はどの 領域においても増加しており,かつ開口率が小さい ほど増加している.これは金網の開口率が小さいほ ど,液体が金網を通過するときの抵抗力がより大き くなるためであると考えられる.

3.5  水槽モデルの縮尺による振動特性の影響 図‑ 6 には,使用済み核燃料プールの幅方向におけ る 1/20 縮尺時でかつ振幅 3mm の減衰定数を比較の ために併せて示す.ここで,1/20 縮尺モデルで用い た金網は,表‑ 1 に示す type1 と type3 と同諸元の

46.9%,60.8%である.1 次モード共振域における

f/fo=1.0

に お け る 減 衰 定 数 は , type1 に お い て 1/10:2.86%,1/20:2.56% ,type3 では 1/10:1.45%,

1/20:1.99%である.これより,両者の減衰定数を比 較すると,減衰定数と縮尺の依存性は少ないと考え られる.これより減衰定数に大きく寄与するのは,

金網の開口率であることがわかる.さらに,実構造 物を考えた場合,この減衰定数は妥当な値である.

4.  おわりに 

本研究で提案したスロッシング現象の減衰対策方 法は,起振中から波高の増加を抑制し,かつ減衰定 数が増加することを目的としている.さらに,水槽 内に金網を 3 枚設置したことにより,1 次モードの みならず, 2 次モードにも対応させることができた.

具体的には,振動台での加振実験結果より,最大応 答波高はスロッシング 1 次モード共振域(0.76Hz)に おいて,対策無と type1 を比較すると約 87%の波高 低減が確認できた.減衰定数では,同入力振動数の 時に約 10 倍程度の増加が見られている. 共振時にお いては流体運動が大きくなり,金網を通過するとき の抵抗も大きいため,顕著な効果が確認できる.さ らに開口率が小さいほど低減効果も大きく,減衰定 数も増加したことが結果から推定することができる.

以上より,本研究で提案した対策案によって,地震

時に発生する容器内貯蔵液のスロッシングを抑制す る効果が得られ,有用な工法であると考える.

 また,柏崎刈羽原子力発電所内の核燃料貯蔵プー

ルの 1/10,1/20 縮尺モデルでの加振実験を行い,ス

ケールでの減衰定数の比較を行った. 加振実験より,

スケールを 2 倍にしても,減衰定数はほぼ等しい値 となることが確認できた.このことから,スケール の影響による減衰定数の変化は小さいと考えられる.

これは,設計を行う上で大変有効なことである.

今後の課題として,実構造物に適用するために金 網が受ける流体力を計測して適用可能か検討する必 要がある.また,コストパフォーマンスを考慮した 場合, 金網を水面から底面まで挿入するのではなく,

金網のサイズや種類についても検討する必要があり,

定量的な評価,検討を試みる必要がある.

参考文献 

1)

池田達哉 他:矩形断面容器におけるスロッシング対策 案の検討,応用力学論文集,vol.11,pp549-556,2008.8

2)

葉山眞治 他:長方形容器におけるスロッシングの非線

形応答,日本機械学会論文集,49 巻

437

号,1983.1.

3)

野路利幸 他:水のスロッシングを利用した制振装置の 研究 (その1)装置の流体力特性と制振効果の特性,

日本建築学会構造系論文報告集,No.411,1990.5.

4)

座間信作 他:石油タンクのスロッシングによる内溶液 の溢流の算定,消防研究所報告,第

101

号,pp.14-20,

2006.9.

0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 0.030 0.035 0.040

0.95  0.96  0.97  0.98  0.99  1.00  1.01  1.02  1.03  1.04  1.05 

減 衰 定 数

f/f0

対策無 type1(1/10)

type1(1/20) type2(1/10) type3(1/20) type3(1/10)

スロッシング 1 次モード共振域

0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 0.030 0.035 0.040

0.95  0.96  0.97  0.98  0.99  1.00  1.01  1.02  1.03  1.04  1.05 

減 衰 定 数

f/f0

対策無 type1(1/10)

type1(1/20) type2(1/10) type3(1/20) type3(1/10)

スロッシング 2 次モード共振域

図‑ 6 各入力振動数における減衰定数

参照

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