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対人衝突時の緩衝機能を有する柔軟マニピュレータの開発

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Academic year: 2021

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(1)

対人衝突時の緩衝機能を有する柔軟マニピュレータの開発

Development of a Soft Manipulator with Flexible Joints Using Smart Fluid and Pneumatic Cushions for Collision with Humans

精密工学専攻 

8

号  江口洋介

Yosuke Eguchi

1.  緒言

現在,生産現場だけでなく医療・福祉分野においても,

人間との協調活動が必要とされるロボットシステムの研究 が盛んに行われている(1).人間と作業空間を共にするこれ らのロボットには,接触や衝突といった,人間との頻繁な 干渉が想定されなければならない.このようなロボットと 人間の干渉に対して,センサや警報によって危険を感知す る方法やロボット側が人間から回避する方法(2)など,ソフ トウェアによる衝突回避策が提案されている.しかしなが ら,現在のロボットの多くはモータで駆動されるため,関 節部に減速比の高い機構を有しており,故障時や不測の事 態における接触・衝突に対して十分な安全性が確保されて いない.特に衝突時には瞬間的な対応が求められるため,

ロボットのタスクを考慮した応答の遅れを鑑みた場合,ソ フトウェアコンプライアンス等による制御系の適用にも限 界が生じる(3).したがって,フェイルセーフの観点から考 慮すると,ロボットの機構自体にメカニカルな柔軟性を付 加させる必要があると考える.

そこで本研究では,マニピュレータの関節に

ER

ブレー キ,リンクに空気圧緩衝材という

2

つのデバイスを付加す ることにより,作業時は剛性が高く高精度制御が可能であ るが,マニピュレータと人間(外部環境)とが衝突した際は,

その衝撃を緩和できるようなシステムを構築する.

2.  柔軟マニピュレータの開発   

2.1  衝撃緩和機能について

開発した柔軟マニピュレータを

Fig.1

に示す.本機は水 平方向のみに動作する

2

リンクマニピュレータとし,衝突 は第

2

リンク上で起こることを想定している.本研究が目 指す柔軟マニピュレータの衝突時の衝撃緩和挙動を

Fig.2

に示す.このように人間(あるいは外部環境)との衝突が起 きた瞬間に第

2

関節が柔軟に折れ曲がり,衝撃力を低減さ せるという動作の実現を目的として,柔軟マニピュレータ の開発を行った.

衝撃緩和を実現する機構として,本マニピュレータは第

2

関節に

ER

ブレーキ,第

2

リンクに空気圧緩衝材を装備 している.ERブレーキは,ER流体と呼ばれる機能性流体 を利用することで,与える電界に応じてトルクを瞬時に変 化させることが可能なデバイスである.マニピュレータの 作業時には高トルクを保持し,衝突した瞬間にトルクを急 激に下げて関節を柔軟にすることができる.一方,空気圧

緩衝材は第

2

リンクを覆うように取り付けられ,最大衝突 力を低減するクッションの役割を果たすとともに,内部圧 力を測定することで衝突検知センサとしての機能も持つ.

すなわち衝突が起きた際,それが空気圧緩衝材により検 知され,

ER

ブレーキが瞬間的に関節を柔軟にすることで

Fig.2

に示すような挙動が期待できる.

2.2  ER ブレーキ 

 

ER

ブレーキとは機能性流体の一種である

ER

流体を利用 したデバイスであり,本マニピュレータにおいては,関節 駆動軸とリンクとの動力伝達の

ON/OFF

を切り替えるクラ ッチのような働きをする.以下にその概要を説明する.

2.2.1  ER 流体

本研究では,ブレーキの作動流体として粒子系

ER

流体 を使用する.本流体は,電界を印加することによってその 見かけの粘性が変化する流体である.粒子系

ER

流体を関

Fig.1 The developed soft manipulator

Fig.2 Behavior of a developed manipulator when cushioning the shock

Human

 

Keep enough torque for the task

Decrease the torque  when  collision  is  detected 

(2)

0 5 10 15 20 25

0 5 10 15 20

Pushing distance  mm

F o rc e   N

0.011MPa 0.015 0.019

Fig.4 A schematic diagram of a Pneumatic cushion

External environment Fig.5 Relationship between pushing distance

and force

節部のブレーキ機能として使用した理由は以下のとおりで ある.

粘性が瞬時に変化するため,通常の電磁式ブレーキに比 べ衝突に対して迅速に対応することができる.

本ブレーキは,電極のみで構成されるため,軽量・小型 化しやすい.したがって,マニピュレータの慣性エネル ギの影響を小さく抑えることができる.

2.2.2  ER ブレーキの設計

  トルクの計算と,取り付けるマニピュレータの寸法とを

考慮し,

Fig.3

に示すような

ER

ブレーキを開発した.

2.3  空気圧緩衝材  2.3.1  空気圧緩衝材の概要

  開発した空気圧緩衝材を

Fig.4

に示す.本体はポリウレ タン製で,外径

900mm

,内径

300mm

,軸方向長さ

260mm

の中空円筒型の形状である.中空部にマニピュレータの第

2

リンクを挿入して取り付ける.また端部の空気封入口と 圧力センサをチューブで接続することで内部空気圧を測定 し,衝突を検知することが可能である.

2.3.2  特性試験 

  本節では,空気圧緩衝材単体での特性試験を行う.ここ では空気圧緩衝材の反発力特性を調べる.実験は,固定し た緩衝材に物体を押し当て,ある深さだけへこませたとき の静的な反発力と内部圧力を測定するという方法をとった.

測定は,無負荷時の緩衝材内部空気圧(以下,初期圧)を

3

通りに変えて行った.結果を

Fig.5

に示す.

  図に示すように,どの初期圧においても,反発力が押込

み距離に対しほぼ線形的に増加している.この結果から本 緩衝材は,空気の圧縮性に起因してバネのような特性を持 つと考えることができる.

   

3.  柔軟マニピュレータのモデル化 

  本章では,開発した柔軟マニピュレータのモデル化を行 い,衝突時の挙動をシミュレーションする.

3.1  空気圧緩衝材のモデル化 

  衝撃力を理論的に求めるには,衝突部位である空気圧緩 衝材のモデル化が必要である.特性試験の結果からわかる ように,本緩衝材は物体が押し込んだ距離(以下,押込み 距離)に対して反発力がほぼ線形的に増加する.

そこで,空気の粘弾性も考慮し,空気圧緩衝材の衝突部

Fig.8

に示すようなバネ

-

マス

-

ダンパ系のモデルとして考

えた(図は緩衝材断面方向を示す)

  このとき,バネ定数を

k

,空気の粘性減衰係数を

c

とす ると,押込み距離

x

のときの空気圧緩衝材の反発力

F

は次 式で表される.

(1)

3.2  マニピュレータの動力学 

  本節では柔軟マニピュレータの挙動を順動力学から求め る.まず,逆動力学方程式は次式で表される.

       

(2)

ここで,

i

iはそれぞれ第

i

関節のトルク,角度である.

0

ER

流体の基底粘性係数である.また

H

12,H22,h21 それぞれ,

Fig.3 A schematic diagram of the ER brake

Pneumatic cushion

Fig.6 A designed model of the pneumatic cushion as a spring-mass-damper system

2nd link

m

k c

2 21 2 22 1 12

2

  

0

H H h

x

c

kx

F   

(3)

(3) (4) (5)

で表わされる.ただし,

m

i

l

i

I

i

l

Giは,それぞれ第

i

ンクの質量,長さ,慣性モーメントおよび重心までの距離 とする.

  また,衝突実験では第

1

関節を一定速度で駆動するので,

式は次のように書ける.

(6)

以上より,柔軟マニピュレータの

ER

ブレーキ解放後の 挙動は次式のようになる.

(7)

ただし慣性行列

H

とその成分

H

11

H

21は次式で表される.

(8)

(9)

(10)

3.3  シミュレーション 

  柔軟マニピュレータ衝突時の挙動を理論的に検証するた

めに,

MATLAB

上でシミュレーションを行った.本シミュ

レーションプログラムは,前節で示したモデルに基づいて 衝撃力や力積,関節の挙動を出力する.衝突時,柔軟マニ ピュレータの緩衝材に外部環境(物体)が押し込まれてい る状況を,

Fig.7

のように考える.ここで

D

は次式で表さ れるリンク上の衝突部位

(x,y)

と環境

(x

e

,y

e

)

との距離,

t

pは緩 衝材の厚さである.

(11)

またプログラムのフローチャートを

Fig.8

に示す.物体 に対しマニピュレータが接近していき,距離

D

が緩衝材厚

t

pより小さくなると押込み距離

x

pが入力され,式

(1)

より 衝撃力

F

が発生する.衝撃力

F

の上昇により圧力

P

が閾値

P

limを超えると

ER

ブレーキが解放され,式

(

)

に基づき,

衝突トルク

c2rなどから第

2

リンクの回転角加速度が求ま る.ここで、圧力

P

は緩衝材の特性試験の結果より力

F

押込み距離

x

p

,

初期圧力

P

iniより次式で設定した。

(12)

シミュレーション実行結果より,緩衝材のバネ定数

K

変化させたときの衝撃力と第

2

関節角度の時間応答を

Fig.9

に示す。このバネ定数は

Fig.5

に基づいて決定された値を 用いた。全体の傾向として、衝撃力が発生し、それに伴い 緩衝材内部圧力が閾値を超えると,第

2

関節が曲がり始め ていることがわかる.また関節が折れ曲がりマニピュレー タが物体から離れる挙動により、衝撃力がピークに達した のちすぐにゼロになっている。以上から、本シミュレーシ ョンにより本研究で提案する緩衝挙動を再現できたといえ る。

またそれぞれのバネ定数における衝撃力波形を見ると、

バネ定数が増加すると衝撃力は高くなるが、ピークに達す るまでの時間および持続時間は短くなることがわかる。こ のことは第

2

関節角度の変化速度が、バネ定数の増加に伴 い高くなることからも確認できる。したがって、力積に着 目すると、バネ定数の影響は小さいと考えることができる。

以上から、衝撃力を低減するには緩衝材のバネ定数は可 能な限り低くすることが望ましい。しかし実際にはバネ定 数が低すぎると、また緩衝材に対し物体が完全に押込まれ、

内部のリンクに直接衝突する可能性が高くなる。そのため 実験では、対応可能な衝撃力の高さと緩衝機能のトレード オフによって緩衝材の内部圧力を決定する必要があると考 える。

2

2

( )

)

( x x y y

D

e

 

e

Fig.8 A program flowchart of simulation

Fig.7 The collision point of link and object

ini

p P

Fx P  0 . 006 

2 21 2 22

2

 

0

H h

) ( 2 21 0 2 1

2

  

Hh



 



22 21

12 11

H H

H H H

) cos 2

(

12 22 1 2 2

2 2 2

1 1 1

11

I m l

G

I m l l

G

l l

G

H      

) cos

(

22 1 2 2

2 2

21

I m l

G

l l

G

H   

2 2 2 2

22

I m l

G

H  

2 2 1 2 1 2

21

m l l

G

sin 

h

) cos

(

22 1 2 2

2 2

12

I m l

G

l l

G

H   

P

lim

P

Driving 1st motor at constant speed Driving 1st motor at constant speed

Yes

No

Yes

No

er0 er

 

(Pushing distance)

D t x

p

p

(Pushing distance)

D t x

p

p

p p

c x kx F   

(Collision force)

p p

c x kx F   

(Collision force)

 0 x

pp

 0 x

D t

p

1

c2 er

 

(Angular acceleration of 2

nd

joint) (Collision torque)

e c 2Fl 2

)

( 2 21

1

2 Hc her

     

Object (x e ,y e )

1

Collision point on 2 nd link (x,y) t p

l 2e F

D

(4)

0 0.5 1 1.5 2 2.5

15 20 25 30 35 40 45 50

Rotational speed  rpm

Impulse  Ns

without ER and cushion with only pneumatic cushion with only ER brake with ER and cushion 0

20 40 60 80 100

15 20 25 30 35 40 45 50

Rotational speed  rpm

Maximum collision force  N

without ER and cushion with only pneumatic cushion  with only ER brake with ER and cushion

Fig.11 Relationship between rotational speed and impulse

Fig.10 Relationship between rotational speed and maximum collision force

4.

衝突実験

本章では,柔軟マニピュレータの衝撃緩和機能を検証す るため衝突実験を行う.実験は,各緩衝要素の効果を実験 的に検討するため,以下の

4

種の条件で行う.

ER

ブレーキなし/緩衝材なし

ER

ブレーキあり/緩衝材なし

ER

ブレーキなし/緩衝材あり

ER

ブレーキあり/緩衝材あり

衝突の検知は,緩衝材なしの場合,リンク上に取り付け られたひずみゲージで,緩衝材ありの場合は圧力センサに よって行う.ここで,慣性エネルギに関する影響も検討す るため,モータの回転数を

20

25

30

35

40

45[rpm]

と変化させ実験を行った.以下に実験結果を示す.

(1)

  最大衝撃力

Fig.11

に各回転数での最大衝撃力値を示す.この図より,

緩衝要素を搭載しない場合の最大衝撃力はどの回転数にお いても最も高い値を示している.ここで,

ER

ブレーキの み搭載した場合,回転数が上がっても最大衝撃力はほぼ一 定という傾向を示した.また空気圧緩衝材のみ装着した場 合は,低回転時には比較的小さい値を示しているが,回転 数が大きくなるにつれて次第に値が上昇し,

40[rpm]

時には

ER

ブレーキのみを搭載した場合の最大衝撃力よりも高い 値を示している.一方,

ER

ブレーキと緩衝材を搭載した 場合の最大衝撃力は,上記二つの緩衝要素の特長を有して いる.すなわち,低回転数時では空気圧緩衝材と同等の緩 衝能力を備えており,比較的小さい値で推移している.ま た,その後回転数が上昇しても,

ER

ブレーキのみを搭載 したときのように,その最大衝撃力は一定の値を維持して いることが確認できる.

(2)

  力積

Fig.12

に各回転数における力積の値を示す.この図より,

ER

ブレーキを搭載した場合の力積は,比較的小さい値で 一定に推移しているものの,

ER

ブレーキと緩衝材を搭載 した場合の力積は,すべての回転数においてもっとも大き な値を示していることがわかる.これは,緩衝材のみを装

着した場合の力積が比較的大きい値を示していることから も分かるように,外部環境に対して形状が変形するため,

接触時間が長くなったことが原因であると考える.

   

5.  結言 

(1)

人間や外部環境に対する衝突安全性に着目し,フェイ ルセーフの観点から機構的に安全性を有する柔軟マニ ピュレータを提案した.その実現のため,最大衝撃力 の緩和と衝突検知機能をもつ空気圧緩衝材と,瞬時に 関節を柔軟にすることを可能とする

ER

ブレーキとい う二つの緩衝要素を開発した.

(2)

空気圧緩衝材をバネ

-

マス

-

ダンパ系のモデルとして考 え,順動力学を用いて衝突時の柔軟マニピュレータの 緩衝挙動をシミュレーションした.

(3)

柔軟マニピュレータの衝突実験を行い,上記二つの緩 衝要素を組み合わせることにより,緩衝機能の向上に 対しより効果的であることを確かめた.

参考文献 

(1) 加藤一郎,リリスボット−生活支援ロボット−の構想, 日本ロボット学会誌,11-5, 614/617 (1993) 

(2) 中村真吾,橋本周司:マニピュレータロボットによる接 近物体からの回避運動の学習,電子情報通信学会大会 講演論文集 93(2006) 

(3) 生田幸士,野方誠: 福祉ロボットの安全性に関する統 一的評価法の提案危険性の定量化による安全設計対策 の評価,日本ロボット学会誌,17-3, 363/370(1999) 

Fig.9 Collision force and angle of joints in each value of spring constant

-10.00 0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00

0.90 0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 Time  s

C o lli si o n  f o rc e   N

-90.00 -70.00 -50.00 -30.00 -10.00 10.00 30.00 50.00 70.00 90.00

R o ta ti o n al  a n gl e    de gr ee

F(K=1360)

F(K=1150)

F(K=890)

angle(K=1360)

angle(K=1150)

angle(K=890)

参照

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