序 文
乾燥弱毒生麻しん・おたふくかぜ・風しん混合 ワクチン(MMR ワクチン)は,1988 年予防接種 実施規則の一部改正に伴い,麻しんの定期接種の 時にこれを希望者に使ってよい旨の通知が出さ れ
1),それ以降単味の麻疹ワクチンに代わって広 く使用されるようになった.MMR ワクチン導入 の目的の一つは,小児の代表的感染症であるこれ らの感染症(麻疹,風疹,おたふくかぜ)の流行 を定期接種である麻疹ワクチンの接種と同時に行 うことにより接種率を向上させ根絶をはかること にあった.三種の疾病に対する免疫を一回の予防
接種によって得られることは,子供達にとって大 きな利点であり世界的な趨勢でもあった.しかし 残念ながら MMR ワクチンは,おたふくかぜワク チンによる無菌性髄膜炎の多発により,1993 年当 面使用を見合わせる旨の通知が出され
2),現在で は使用できない状態にある.
1994 年の予防接種法改正により,風疹ワクチン の接種年齢が変更され, 生後 12 カ月から男女を問 わず接種されるようになり,現在では DPT ワク チン 3 回接種後に麻疹ワクチン,続いて風疹ワク チンの接種を受けるのが一般的なスケジュールに なっている.DPT ワクチンは 86% 近くの接種率 であるが,麻疹ワクチン,風疹ワクチンはそれぞ れ 81%,71% と接種率が低下する傾向にある
3). 麻疹は我が国でも,未だに流行を繰り返してお
麻疹・風疹二混ワクチンの野外接種試験
川崎市立川崎病院小児科1),市立札幌病院小児科2),国立東京第二病院小児科(現 北里大学感染症学)3)
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科4),国立療養所三重病院小児科5), 北里生命科学研究所ウイルス感染制御6)
武内 可尚
1)富樫 武弘
2)砂川 慶介
3)加藤 達夫
4)神谷 齊
5)中山 哲夫
6)(平成 13 年 9 月 13 日受付)
(平成 13 年 11 月 19 日受理)
麻疹・風疹二混(HF)生ワクチンを 12〜90 カ月の小児 442 名に接種し抗体反応と副反応調査をおこ なった.368 例で接種前後のペア血清を採取し,接種前麻疹赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibi- tion;HI)抗体陰性者 363 例のうち抗体陽転例は 343 例(94.5%)であった.接種前風疹 HI 抗体陰性者 361 例のうち抗体陽転例は 349 例(96.7%)であった.副反応調査は 406 例が対象となった.37.5℃ 以上 の発熱は 102 例(25.1%),39.5℃ 以上の発熱は 2 例(0.5%)に認められた.発熱出現日の平均は 6.7 日 で,平均有熱期間は 2.2 日間であった.発疹は 87 例(21.4%)に認められ,発疹の平均出現日は接種後 7.1 日で平均 4.8 日間発疹が持続し,リンパ節腫脹は 12 例(3.0%)に認められた.麻疹・風疹二混生ワク チンは各単味ワクチン接種と同等の効果と安全性が確認され,二混生ワクチンは臨床的に有用である.
〔感染症誌 76:56〜62,2002〕
要 旨
別刷請求先:(〒108―8641)東京都港区白金 5―9―1 北里生命科学研究所ウイルス感染制御
中山 哲夫
Key words: measles, rubella, combined vaccine
Table 1 Components of measles and rubella combined vaccine
Infectivity and concentration Components
5,000 TCID50 Further attenuated measles AIK-C strain
Vaccine strain
1,000 TCID50 Further attenuated rubella Takahashi strain
5.0 W/V % Lacturose
Stabilizer and
additives L-sodium Glutamate 0.1 W/V %
0.2 W/V % Gelatin
< 50 µg/mL Erythromycine
< 50 µg/mL Kanamycine
0.001 W/V%
Phenol red
り感染症サーベイランスには毎年 2〜3 万人の患 者が報告されている.アメリカではワクチン接種 率を高め感受性者を減少させるために複数回接種 を徹底することによりほぼ撲滅に至っている.風 疹は最近流行はないものの風疹抗体を持たない妊 娠初期の妊婦が風疹に感染すると先天性風疹症候 群の子供が生まれる危険性が高く,風疹ワクチン 接種率の向上は重要な予防接種戦略の一環として 位置づけられている.ことに,風疹ワクチンの低 年齢接種化に伴う移行措置が十分徹底されず,未 接種のまま生殖年齢に達しつつある現状は極めて 憂慮される.
再度,MMR ワクチンの接種を再開する方法も あるが,MMR ワクチンの接種再開には,無菌性髄 膜炎の副反応の頻度の少ないおたふくかぜワクチ ンの開発が必須である.また,MMR 接種後の無菌 性髄膜炎の頻度が単味ワクチン接種後の頻度と比 較して高かった理由も不明であり,既存ワクチン の無菌性髄膜炎の発生頻度は約 1 万人に 1 例の割 合で認められる.仮に無菌性髄膜炎を起こし難い おたふくかぜワクチンが開発されても,臨床面で の安全性を確認するには多大の時間を必要とす る.特におたふくかぜウイルスは,馴化に伴い免 疫原性が低下しやすく,免疫能を保持し,且つ,
副反応の軽微なワクチンを開発することは技術的 に容易ではない.それに比べ,単味の風しんワク チンは臨床データから推測しても副反応は軽微で あり,現行の予防接種のスケジュールからも麻疹 ワクチンとの同時接種が効率的であると考える.
以上より,麻疹,風疹混合ワクチンは被接種者 の負担の軽減,接種費用の節約面では MMR ワク
チンの場合よりは劣るにせよ非常に効果的であ り,麻疹と同時に接種することで接種率向上にも 大いに期待されるところである.今回北里研究所 で以前製造販売していた MMR ワクチン(自社 株)からおたふくかぜワクチン成分のみを除いた 麻疹・風疹二混生ワクチン(以下 HF ワクチンと する)を試作し,健康小児を対象に臨床試験を実 施したので,その成績を報告する.
対象と方法
1.対象
接種対象は,GCP 基準に従い,全国 27 施設小児 科を受診した健康小児を対象とした.予防接種法 実施規則の麻しんワクチンに準拠し,生後 12〜90 カ月の健康小児で,麻疹,風疹ワクチン歴及び自 然感染の既往歴が無く,治験の趣意を説明し,接 種に署名同意の得られた 442 名(平均 月 齢 24.2 カ月)を対象とした.
2.ワクチン
使用した試作 HF ワクチンは,生物学的製剤基 準乾燥弱毒生麻しん,おたふくかぜ,風しん混合 ワクチンの項に準じ,この基準からおたふくかぜ ワクチンに関する事項のみを除外して製造し,各 種検定試験を行った.有効期限も MMR ワクチン に準じ自家試験判定日より 1 年間とした為,本臨 床試験に使用した HF ワクチンは製造番号 TV―
12 と 13 の 2 種類を使用した.成分については両 ロットとも同じで Table 1 に示した.
3.抗体反応
有効性の指標として, 接種前と接種後 5〜8 週目
の計 2 回の採血を実施し,麻疹,風疹赤血球凝集
抑制(hemagglutination inhibition:HI)抗体を予
Table 2 Serological responses after vaccination with HF vaccine in different groups according to the serological status before vaccination
Serological status before vaccination Serological status after vaccination
M(+)R(+)
M(+)R(−)
M(−)R(+)
M(−)R(−)
331(92.7%)
Measles HI positive and Rubella HI positive
6
(100%)
6
( 1.7%)
Measles HI positive
4
(100%)
14( 3.9%)
Rubella HI Positive
6
( 1.7%) # Measles HI negative and Rubella HI negative
1 4
6 357
Number of recipients
# ; Among six HI negatives after vaccination, all had positive NT antibodies against measles virus.
研法で測定した.麻疹,風疹 HI 抗体は 1:8 以上 を陽性と判定し,麻疹 HI 抗体非陽転例について は B95a 細胞を用いて Edmonston 株に対する中 和抗体を測定し,1:4 以上を陽性と判定した.
4.副反応調査
安全性の調査として接種直後から 35 日までの 臨床反応を観察してもらうため,保護者に対して 健康状態観察表を渡し観察,記録を依頼した.調 査項目は,発熱,発疹,接種部位の発赤,腫脹,
リンパ節腫脹,下痢,嘔吐の有無を調査した.有 害事象に関しては,接種後 4 日以内,5〜10 日,11
〜35 日に分けて解析した.
成 績
1)抗体調査
接種同意の得られた 442 例のうち,採血にも同 意が得られ,かつ接種前後の血清が確保できた被 験者は 368 例であった.接種前の抗体保有状況と 抗体反応率を Table 2 に示した.接種前の血清で,
368 例中 4 例はすでに麻疹抗体が陽性で, 6 例は風 疹抗体が陽性であった.また 1 例では麻疹・風疹 の両抗体が陽性だった.麻疹・風疹の双方に抗体 陰性であった 357 例のうち,麻疹及び風疹の両抗 体共陽転した例は 331 例(92.7%),麻疹抗体のみ 陽転した例は 6 例 (1.7%) ,風疹抗体のみ陽転した 例は 14 例(3.9%)で,両抗体とも陽転しなかった 例は 6 例(1.7%)であった.接種前麻疹抗体のみ 陰性であった 6 例,風疹抗体のみ陰性であった 4 例はワクチン接種後全例陽転した.麻疹・風疹抗 体陽転率をまとめると,接種前麻疹抗体陰性者は 363 例で HI 抗体陽転者は 343 例(94.5%)であっ
た.ワクチン接種後麻疹 HI 抗体非陽転の 20 例に ついて中和抗体を測定したところ,全例において 中和抗体は陽転していた.接種前風疹抗体陰性者 は 361 例 で 風 疹 HI 抗 体 陽 転 者 は 349 例(96.7
%)であった.
抗体血清調査をおこなった 368 例について接種 年齢別に麻疹抗体及び風疹抗体陽転率と平均抗体 価を解析し Table 3 に示した.16〜19 カ月群で麻 疹抗体陽転率は 64 ! 70(91.4%),風疹抗体では 20
〜23 カ月群で 33 ! 36(91.7%)と他の年齢群に比較 して低値であったが,各年齢群間に抗体陽転率,
陽転者の平均抗体価に有意差はなかった.接種前 すでに麻疹抗体陽性であった 5 例の平均年齢は 29.2 カ月,また,風疹抗体陽性の 7 例の平均年齢は 37.3 カ月でそれぞれの平均抗体価は,麻疹 25.9,風 疹 27.1 であった.
2)副反応
接種同意の得られた 442 例のうち,ケースカー ドが回収できなかった 24 例, ケースカードは回収 できたが記入等の不完全な 12 例を除き安全性の 解析対象になったのは 406 例であった.発熱,発 疹,その他の副反応例数を Table 4 に示した.ワク チン接種後 0〜4 日,5〜10 日,11 日以降に出現し た臨床反応について解析した.ワクチン接種後 4 日以内の 37.5℃ 以上の発熱症例は 34 例(8.4%),
発疹は 43 例(10.6%)に認められ全身の発疹は 9 例(2.2%)に認められ,接種部位の局所反応は 9 例(2.2%)に認められた.
ワクチン株が増殖する時期は接種後 5〜7 日で
あり接種後 5〜10 日の発熱,発疹はワクチン接種
Table 3 Serological response of measles and rubella HI antibodies in different age groups
Rubella HI antibodies Measles HI antibodies
Mean T Sero-Conv.^
Sero(−) Pre* Mean T
Sero-Conv.^
Sero(−) Pre* Number
Age(months)
6.8 161(97.0%)
166 5.4
158(95.2%)
166 166
12 〜 15
7.1 68(97.1%)
70 5.4
64(91.4%)
70 72
16 〜 19
6.5 33(91.7%)
36 5.2
34(97.1%)
35 36
20 〜 23
6.8 44(95.7%)
46 5.2
45(95.7%)
47 47
24 〜 35
6.6 25(100%)
25 5.5
23(92.0%)
25 27
36 〜 47
7.0 8
(100%)
8 5.6
10(100%)
10 10
48 〜 59
6.4 5
(100%)
5 4.8
4
(80.0%)
5 5
60 〜 71
6.3 5
(100%)
5 4.1
5
(100%)
5 5
72 〜 89
6.8 349(96.7%)
361 5.3
343(94.5%)
363 368
Total
Sero(−) Pre* ; Number of recipients who were sero-negative in HI antibodies before vaccination.
Sero-Conv.^ ; Number of recipients who demonstrated sero-conversion after vaccination.
Mean T ; Mean titers of HI antibodies among recipient with sero-conversion.
Table 4 Incidence of clinical adverse reaction observed after vaccination among 406 recipients
Number of affected recipients Clinical adverse reactions
From 11―35 days From 5 to 10 days
From 0 to 4 days
99(24.4%)
102(25.1%)
34( 8.4%)
Fever
53(13.0%)
70(17.2%)
28( 6.9%)
≧ 37.5℃
32( 7.9%)
30( 7.4%)
5
( 1.2%)
≧ 38.5℃
14( 3.4%)
2
( 0.5%)
1
( 1.2%)
≧ 39.5℃
6.7 days Average days of onset
2.2 days Average duration(days)
55(13.5%)
87(21.4%)
43(10.6%)
Rash
14( 3.4%)
23( 5.7%)
9
( 2.2%)
Generalized
18( 4.4%)
34( 8.4%)
12( 3.0%)
Several area
22( 5.4%)
30( 7.4%)
22( 5.4%)
Limitted area
7.1 days Average days of onset
4.8 days Average duration(days)
6
( 1.5%)
12( 3.0%)
3
( 0.7%)
Lymphoadenopathy
9
( 2.2%)
Local reaction
の副反応と想定される.37.5℃ 以上の発熱は 5〜
10 日で 102 例 (25.1%) ,このうち 38.5℃ 以上の発 熱が確認された の は 32 例(全 体 の 7.9%) ,39.5
℃以上の発熱が確認されたのは 2 例(全体の 0.5
%) であった.発熱出現日の平均は 6.7 日で,平均 有熱日数は 2.2 日であった.発疹は 87 例(21.4%)
に確認され,そのうち発疹の程度として局所の発 疹だけでなく全身に多数の発疹が確認された例は 23 例(全体の 5.7%)であった.発疹の平均出現日 は接種後 7.1 日で平均 4.8 日間発疹が認められた.
リンパ節腫脹は 12 例(3.0%)に認められた.
ワクチン接種後 11 日以降の発熱は 99 例(24.4
%) ,発疹は 55 例(13.5%)に認められた.
通常の臨床反応と考えられる程度の頻度で,そ の他重篤な副反応は確認されなかった.接種後 5
〜10 日の発熱,発疹,リンパ節腫脹例の年齢別の
出現率を比較して Table 5 に示した.4 歳以上で
は発疹,リンパ節腫脹は認められなかった.年齢
群によって発熱, 発疹の出現頻度に差はなかった.
Table 5 Clinical adverse reactions observed from day 5 to day 10 of vaccination among 406 recipients in different age groups
Lymphoadenopathy Eruption
Fever ≧ 37.5℃
Number Age(months)
3
(1.6%)
47(25.7%)
50(27.3%)
183 12 〜 15
4
(5.1%)
14(17.7%)
21(26.6%)
79 16 〜 19
1
(2.4%)
12(29.3%)
9
(22.0%)
41 20 〜 23
3
(6.1%)
10(20.4%)
5
(10.2%)
49 24 〜 35
1
(3.3%)
4(13.3%)
11(36.7%)
30 36 〜 47
0 0
2
(18.2%)
11 48 〜 59
0 0
1
(14.3%)
7 60 〜 71
0 0
3
(50.0%)
6 72 〜 89
12(3.0%)
87(21.4%)
102(25.1%)
406 Total
Table 6 Comparison of sero-conversion rate and the incidence of clinical adverse reaction in different clinical trials
Clinical adverse reactions Sero-conversion rates
Lymphadenopathy Rash
Fever Rubella HI
Measles HI
12/406(3.0%)
87/406(21.4%)
102/406(25.1%)
345/357(96.6%)
337/357(94.4%)
HF (this study)
12/893(1.3%)
91/893(10.2%)
139/893(15.6%)
890/893(99.7%)
890/893(99.7%)
MPR(Ref.10)
24/147(16.3%)
18/147(12.2%)
147/147(100%)
M (Ref.7)
9/45 (20.0%)
9/45 (20.0%)
45/45 (100%)
M (Ref.6)
1/651(0.2%)
0/651( 0%)
0/651( 0%)
643/651(98.8%)
R (Ref.12)
考 察
麻疹ワクチン AIK-C 株は 1975 年以来現在まで に 1,474 万人の子供達に接種され,その有効性と 安全性が確認されている
4)〜7).風疹ワクチン高橋 株は 1977 年以来 688 万人に接種され同様に有効 で 安 全 な ワ ク チ ン で あ る こ と が 報 告 さ れ て い る
8)9).抗体陽転率は単味接種の野外接種試験の報 告例では被験者数も少なく麻疹,風疹とも 100%
近くの抗体陽転率である.今までに報告された野 外接種試験の抗体反応・副反応調査の結果を比較 して Table 6 に示した.北里 研 究 所 で 開 発 し た MMR ワクチン独自株(MPR)の野外接種試験で は,接種前に 3 種のウイルスに対して抗体陰性の 893 例で麻疹 HI 抗体陽転率は 890 ! 893(99.7%),
風疹 HI 抗体陽転率は同様に 890 ! 893(99.7%)で あった
10).麻疹単味ワクチン接種の結果では 147 例に接種し全例抗体を 獲 得 し て い た
7).今 回 の HF ワクチン接種後では麻疹・風疹両抗体陰性者 357 例で麻疹 HI 抗体陽転例は 337 例(94.3%)で あった.今回の接種試験では HI 抗体陽転率が以
前の接種試験と比較して多少低い結果であった が,統計学的な有意はなく抗体非陽転例でも全例 中和抗体を獲得している事を確認しており臨床使 用には問題ないと思われる.風疹ワクチン研究班 の報告では高橋株の抗体陽転率は 643 ! 651(98.8
%)と報告されている
12).今回の HF 二混ワクチ ン接種後の風疹 HI 抗体陽 転 率 は 345 ! 357(96.6
%)であった.
副反応に関しては,麻疹,風疹,おたふくかぜ
ワクチン接種後 72 時間以内に出現するアナフィ
ラキシー反応を含めたアレルギー反応の報告が
1994 年頃から増加した.生ワクチンの安定剤とし
て含まれたゼラチンに対するアレルギー反応であ
ることがあきらかとなり,その原因は一部のメー
カーの DPT ワクチンに含まれていたゼラチンは
微量とはいえアジュバントとともに複数回接種を
受けることでゼラチンの感作を増強していたもの
と考えられている
13).1999 年より,すべての DPT
からゼラチンが除かれ,生ワクチンのゼラチンも
低反応性のものに変えられてからゼラチンアレル
ギーは激減した
14).今回の HF ワクチンは同様に 0.2% ゼラチンを含有しており,安全性の評価対象 となった 406 例中アナフィラキシー反応の報告は なかったが蕁麻疹を 1 例に認め,局所反応は 9 例
(2.2%) に認められた.現在,風疹ワクチンではゼ ラチンが除かれ,麻疹ワクチンの安定剤は低反応 性の加水分解豚ゼラチンに変更されている.さら にゼラチン除去のワクチンを申請中であり,HF 二混ワクチンもゼラチン除去となる.
麻疹生ワクチンウイルスの増殖に伴い発熱,発 疹が発現することは,既に知られた事実である.
麻疹ワクチン AIK-C 接種後 37.5℃ 以上の発熱の 出現頻度は 12〜20% と報告されており,特に 39
℃以上の発熱は他のワクチン株と比較して少なく 1% 以下の頻度であり,発疹の出現率は 16% 前後 と報告されている
6).風疹ワクチン接種後の発熱,
発疹出現率は極めて低いと報告されている.今回 の野外接種試験では 37.5℃ 以上の発熱は 102 ! 406
(25.1%)に認められ 39.5℃ 以上は 2 例で 0.5% で あった.発疹の出現率は 87 ! 406 (21.4%) であった.
MPR ワクチン接種後では発熱は 15.6%,発疹は 10.2% であった.野外接種試験の実施方法,評価方 法に差があるために過去の接種試験の結果を今回 の結果と比較することはできないが,麻疹・風疹 二種混合生ワクチン HF は既に報告された各単味 ワクチンワクチン,MMR ワクチン接種後の免疫 反応と同等の効果を示し,副反応出現率も 2 種混 合することで単味ワクチン接種の副反応の出現頻 度が倍増する事もなく同等のものと評価できる.
本治験を実施するにあたり,以下の諸施設の先生方に深 謝いたします.
接種協力施設(責任担当医師)
市立札幌病院(富樫武弘:小委員会メンバー),富士重工 健康保険組合総合太田病院(佐藤吉壮先生),済生会宇都宮 病院(加藤一昭先生), 佐野厚生総合病院(萩原誠一先生),
芳賀赤十字病院(三浦琢磨先生),国立霞ヶ浦病院(岩田
敏先生),社会保険埼玉中央病院(森 泰二郎先生),浦和
市立病院(辻 敦敏先生),北里研究所メディカルセンター 病院(石館武夫先生), 慶応義塾大学病院(山下直哉先生), 東京医科大学病院(武隈孝治先生),慈恵会医科大学第三病 院(久保政勝先生),国立東京第二病院(砂川慶介:小委員
会メンバー),北里研究所病院(山下亮子先生),立川共済 病院(玉田耕一先生),東京都済生会中央病院(北條秀人先 生),川崎市立川崎病院(武内可尚:治験総括),日本鋼管 病院(菅谷憲夫先生),聖マリアンナ医科大学横浜市西部病 院(加藤達夫:小委員会メンバー),慈啓会大口東総合病院
(新納憲司先生),横須賀共済病院(番場正博先生),伊勢原 共同病院(木村和弘先生), 平塚共済病院(城崎慶治先生), 名鉄病院(宮津光伸先生),国立療養所三重病院(神谷
齊:小委員会メンバー),高知医科大学病院(友田隆士先
生),九州大学(宮崎千明先生). 文 献
1)厚生省保健医療局結核・感染症対策室長通知(昭 和 63 年 12 月 19 日健医感発第 93 号).
2)厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策 室長通知(平成 5 年 4 月 27 日健医感発第 51 号). 3)磯村思无:予防接種の効果的実施と副反応に関 する総合的研究.研究報告書 平成 13 年 3 月,厚 生労働省予防接種副反応研究班,予防接種リサー チセンター,pp345―54.
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Field Trial of Combined Measles and Rubella Live Attenuated Vaccine
Yoshinao TAKEUCHI
1), Takehiro TOGASHI
2), Keisuke SUNAKAWA
3), Tatsuo KATOU
4), Hitoshi KAMIYA
5)& Tetsuo NAKAYAMA
6)1)Department of Pediatrics, Kawasaki Municipal Hospital
2)Department of Pediatrics, Sapporo Municipal Hospital
3)Department of Infectious Diseases, Kitasato University, School of Medicine
4)Department of Pediatrics, St. Marianna University, Yokohama City Seibu Hospital
5)Department of Pediatrics, National Mie Hospital
6)Laboratory Viral Infection Control, Kitasato Institute for Life Sciences