奈良教育大学学術リポジトリNEAR
最近の家庭生活の問題と中学校家庭科のあり方
著者 反保 すゑ
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 8
ページ 59‑73
発行年 1972‑03‑15
その他のタイトル Some Relationships between Recent Home Life and Junior High School Homemaking.
URL http://hdl.handle.net/10105/6257
最近の家庭生活の問題と 中学校家庭科のあり方*
反 保 す ゑ榊
(保 育 教 室)
は じ め 1こ
筆者は1966年教育研究所紀要第2号に家庭生活と家庭科教育というテーマで私見を述べたが,そ の後杜会情勢の変化とともに家庭生活の内容も変化して来た。また指導要領も改訂され1972年より 実施される。昭和22年新学制の成立によワ家庭科に家族関係という新しい科目が置かれた時,旧来 の家庭科の教師達はとまどった。古い家族制度からの解放と新しい平等の精神による家庭生活の研究 のために先っ改正民法の勉強に余念のない状態は,家族関係とは法律学であるとの誤解を招いたワし た。その後,幾変遷を経て現在では家庭科の中に家族関係の姿はむしろ薄れつつある。しかし家族 家庭の研究は日を追って盛んになワ,マスコミで持てはやされ,家族研究はフームの如き感がある。
事実,世界有数の生産国として,文化国としての発展は、その蔭に,家族や家庭生活に大きな波紋を及 ぼしたからである。政府も, 「母性と家庭の問題」や「住宅対策」を考えるに至り,これに呼応して
マスコミも大きく働いた。家庭生活や家族に関する論文や著書も多くなりここ数年間の家庭生活に対 する考え方や,内容は大きく変化しつつある。特に着い世代に於い㌔
こうした時に改訂された中学校指導要領の中で家庭科は果して時代の変化に伴った教育内容を示し ているであろうか。
筆者は家庭科教育の変化の度と家庭生活の変化の度を比べ前者の遅々とした歩みをみた。こうした ことが家庭科教育に危機をもたらしているように考えられる。家庭科の授業は興味がない。いや楽し い,しかしその楽しさは息抜きが出来るから。等,香しからぬ生徒の評価を聞く。また家政科を専攻 している学生も家政科を選んだ理由の多くは,結婚してから少しでも役にたつだろうから。ほかに優 れた才能もないから。親にすすめられたから。好きだから一しかしこの好きの内容の殆んどは手先 の器用なものが手芸や裁縫にあこがれて一ということである。将来家庭科の教師こなることに喜び を持っているか,という問いに対しては,家庭科の教師になりたくない。あまワなワたくない。等で その理由は,技術面が多くてやる自信がない。家庭科を真面目にやる生徒が少ないのでやり甲斐がな い。等一これが筆者の関知するかぎワの現状である。しかし学生達は家庭生活の意義や,家族関係の 問題になると熱心に意見の交換をする・
ホ Some Re1a t i onshi ps between Recent Home Li fe and J mi or High S choo1
Homemaking.
洲Sue Tanpo (Department of Home Economi cs,Nara Univers i ty o f Educat i on, Nara)
一59一
家庭科が家族関係の問題ばかりで存在するわけではないが,技術本位の家庭科では、もはや新しい 世代の人達には無意味なものに感じられるのであろう。家庭科は今,大きな家庭生活の変化を考え.
よワ広い視野で見直さねばならないと思う。こうした理由から筆者はここ数年間の社会情勢に伴う家 庭生活に関する意識の変化を辿ワ、昨年調査した家事労働の実態の一部よワ家庭科が,今,何を焦点
として考えるべきかを述べてみたい。
I 社会情勢の変化1こ伴った最近の家庭生活の諸問題と家庭意識の変貌
昭和30年代は国民の生活上の歪みを再生産した時代だと言われる。39年の婦人週間のテーマは、
「現代社会に於ける家庭の役割一産業化と家庭の問題」であった。松原治郎は,「昭和30年代は 国民の生活の体系をつくワ上げている諸要素がパラパラに切離された。……耐久消費財を買えるだけ 買ったが,住宅が無かったし,レジャーの準備に生きるための最低限度である食生活をきりっめてい たりした。夫も妻もかせぐことに夢中になって,子どもの成長上の問題につきあたったり,家族の心 理的和合にとワかえしのつかないピピがはいっていたワした。また家庭生活をとりまく地域社会も経 済投資や開発で地域が豊かになったと思って居れば,生活環境や教育文化の条件が全くおろそかにな っていたワ,公害や交通問題など生命をおびやかす圧力が加わり,さらに物価の上昇がそれに追いう ちをかけていた」と述べている。(1)こうした経済開発と家庭生活のアンバランスに政府も気がっき40 年にはこの対策に乗ワ出した。12月には「住宅 公害対策急げ」という社会開発懇談会の報告案が まとまった。39年の国民生活白書では,生活水準の外国との比較で,まだカロリーの摂取量が低い こと。住宅の遅れが目立っていることを告げて居る。40年6月3日首相の諮間機関として家庭生活 間題審議会が発足し,ヵギッ子対策として厚生省は初めての,全国ヵギッ手調査をなしている。奥本 志朗は「カギッ子対策の方向」と題し,「急務は家庭崩壊への処方である」と述べている。(2)また生 産の向上は消費の仕方として「捨てる」ことを教えた。狭い住宅では三面鏡も,ミシンも,ステレオ も捨てたがよいなどと,狭さからの脱出法ででもあろうが,往時には考えられなかった高価家具への 思いきワのよさを現した論も聞かれた。少し肩焼けがしたから,型が古くなったからと,のみの理由 で捨てられる洋服。新型車,新型電機器機等に取ワかえるために捨てられる大型廃棄物。その他生活 のすみずみに至るまで,使い捨てが盛んになり、その頃からゴミの始末に困ワ始めた。消費の増大は 収入の増加を必要とレ ここに夫婦共働きは一層増加した。共働きの増加と夫婦中心の小家族形態は
カギッ子の存知を余儀なくしたが,遂に家庭生活の再検討がなされはじめた。
民法改正による男女の平等思想は,徐々に女性の間に濠透したが,さらに社会的情勢は女性の職場 進典収入能力の自覚は女性の地位向上を促した。これを過大視した人達はその現象を喜ばなかった。
会田雄次の「男性的家庭論」白川渥の「新賢妻論」(3)などが出た。しかし共働きは増加するばかり、
その主婦は, 「家事労働は女性だけが受持っべきものか」という疑問を持つに至った。
42年7月11日よワ朝日新聞に「共働夫婦料理学」が連載され,共働きの考え方が、文化的耐久消 費財購入のための収入源として,また男女同権の思想,即ち職業を持つことによる女性の地位の向上 を計ろうとすることに変って来た。しかし家事を手伝わぬ夫と,職業と家事の労働に疲れる妻との争 いの出現を述べ共働きには夫の革命的精神の必要なこと,夫の権威意識を放棄するべきこと,が述
べられておワ,家事労働に対する考え方を新しく飛躍させた。筆者の家族関係の授業時間に於いても 学生が共働きに非常な関心を持ち討論した。それ以前にも.女性の職業と結婚の両立についてよく討 論したものであるが,女性が職業と結婚を両立させる方法は,家事労働の合理化一労働の機械化や 既製品の利用法(食昆 衣料品等の),住居の機能的な使い方など一によって解決すべきもの,即 ちどこまでも女性のなすべき労働としての観点よワ論じあっていた。またそこに家事労働技術の必要 性と,家庭科の拠りどころを見出していた。42年に至り初めて, 「家事労働は,共働き生濡に於い ては女性だけが負うべきものではない」という意見が学生の間に出て,家庭科は,男女共に履習すべ きであるとの結論となった。こうした風潮の高まりの中にあって,男性的家族論を述べた 会田雄次 は,「男性を中心とした男性的家族こそ本当の民主々義にふさわしいこれからの家庭のあワ方だと思
う」と講演している。(4)この頃「核家族」といラ表現法が一般化して来た。松原治郎は「家庭論への 反省」と題して核家族の意味を述べ最後に,「日本家族の現代化の動向を直視レ現代の社会におけ るその存在条件や意義を探究する姿勢にたってそこでの問題や悩みを考えていきたい」と述べている。(5〕
43年には保育問題の具体的考慮がなされた。厚生夫臣の私的諮間機関である「児童手当嘱談会.1 は児童手当制魔に関十る報告を提出した。厚生省は45年度以降の問題として検討する方針をきめて いる。また中央児童福祉審議会は,11月20目,乳幼児対策や.母子保健対策について厚生大臣に意 見具申した。その主な内容は,ゼロ才児保育の推進心身障害児の早期治療と訓練母体の健康を守 るため妊産婦の保健管理の徹底等であった。また厚生省は我国初の,全国要保育児童実態調査をなし,
保育所に入る必要のある乳幼児は148万4千人で乳幼児全体のI4.5%。39年に行った行政調査では 120万人で12.5%であったのに比べ3年間に30万人近く増したことになる。これは既婚婦人で働い ている人が年2〜30万人ずつふえて居ワ、特に人口の集中している都市部での増加が著しいためで ある。ところが認可された保育所は公私立合せて1万2千で定員は97万,したがって要保育児童の
うち51万人は保育所からはみ出していることになる。このうち約10万人は2200箇所の無認可保 育所で保育を受けていると推定されている。また要保育児をもつ家庭の年間所得は,その85%まで が100万円以下,共働きで高収入の家庭の子どもは少いことがわかった。要保育児童を年令別でみる
と,5才児 21.8%,4才児 20,3% と4才5才児が多いが,O才児 6.5%で,96500人。
ところが厚生省はこれまで0才児保育に消極的だったため正規の保育を受けている0才児はわずか 1700人で保育所からはみ出した子どもの中で赤ちゃんが特に多い。教員,看護婦など専門的技術 的職業についている母親の場合8時間以上σ)保育時間を必要とする希望者は46%にも達している。
44年7月16目東京地裁は,交通事故で死んだ64才の主婦の損害賠償の支払い請求に対レ 61 才以上の主婦労働は,タダ と年令に一線を引いた判決で請求を却下し,反響を呼んだ。佐藤隆夫は,
「主婦の家事労働はタダか」をテーマとして次のように述べている。「家庭が社会的性格を持ってい る以上,夫の収入を前提としてこれを分担している主婦の家事労働そのものが当然法律的に金銭上で も評価されねばならない。法律にいう婚姻費用分担とはまさにこの意味である。実際の家事労働の評 1
価額は夫の得るであろう収入の一が基準と考えられる。夫婦共同体の家庭を社会的にも評価するこ 2
とこそ根本的問題であって,この考え方は法律家だけでなく国民一人一人の家庭に対する自覚が一層 必要とされるのである」と。(6L主婦の死よワ家事労働の金銭的価値を論ぜられるようになった。ま
一61一
た女性の就職と結婚について,竹内義彰は,「就職と結婚とを,職場が,家庭か,といった二者択一 的立場でとらえようとする姿勢でたく,職業生活と結婚生活とをそれらの密接なつながワの中でどう とらえていくかということこそが今日の女性,また男性に投げかけられた緊急な問いである。しかし 実際上の問題として共働き夫婦の家庭生活が社会保障制の不備,職場の偏見その他の条件のため女 性の方にとかく過重な負担をかける結果になっている。こうした問題をどうして解決していくかとい
うことカ…女性の地位の向上 つまり婦人の解放なのである。そのためには男性,企業 社会 政治 がこうした問題に対する適切な認識と解決策の樹立に努力せねばならぬ」と言っている。(7)このよう な,家事労働の価値や結婚と職業両立の可能性が認められる清勢は家庭の主婦に自覚を強めウーマン パワーの運動となり,東京に於いて,ウーマンパワーの全国大会が行われれ
45年にはウーマンリブが我が国にも賑やかになり,11月14日東京で日本で初めてのウーマンリ ブ大会が開かれ.「生む性をもったまま自分が自分でありたい」と語られた。厚生省人口問題研究所 が全国の夫婦6532組を対象にアンケート調査をした(6月2日)その結果「生きがい」はマイホーム 型が大半を占めた。仕事中心型がマイホーム型よワ多くなるのは社長,重役,支店長 部課長までで,
いわゆる上層部の人達であった。こうした反面マイホームから取り残された老人の実体が明るみに出 た。人口の過疎と過密の差が大きくなり,職を求めて核家族は都市に集る反面過疎地の農山村では孤 独な老人がふえた。新潟県安塚警察署(人口42000余の東頸城郡全域の6町村)の1−5月の60 才以上の老人自殺者数4名。交通事散発生件数6,うち死者1名。けが人無。の報告が出ているが交 通事故の犠牲者を上回る。同地域の44年は9人(病苦5,孤独感2,家莚不和1)43年は12人の 老人が自殺したという。安塚農業改良普及所の調べでは,44年に自殺した老人のうち7人は同所で は中級,2人はトップ級の農家の老入であった。山間地の農家には洗たく機,冷蔵庫の普及はめざま
しく,いろワは電気ごたつや石油ストーブに変ワ,井戸は簡易水道になっている。しかしその中で,
働ける男は出稼ぎなどで殆んど出て行く。やがてそれは離村につながワ先祖の地を離れがたい老人だ けが残る。43年4月この6町村の一人住まいの老人は66人。老人だけの世帯 63世帯140人。
45年の6月には92人。老人だけの世帯,94世帯197人と激増している。(8)全国的には老人の一 人暮しは約58万人(・・年調べ)で老人t吐帯の5・%である。(9)松原治郎は.r教科書を見ても老人 問題は社会福祉や.社会保障の項でわずかに出てくるだけ。家族関係については親子のことしか出て いない。なぜ老人をいたわり尊敬しなければたらないかを教えねばならぬ」と言っている。σΦ一カ親 子の緊張感も強くなったと見られる事件も多い。幼稚園に入るまでに自分の名前が書けないという理
由での,堺市の幼児殺し(9月8日)プロレスごっこをやめ欣いからという水戸市の子殺し(11月 10日)など核家族の中の主婦の精神状態,家族関係の喪失など取沙汰された。
46年に至りウーマンリブの火は各地にちらばり小さいながらも各地に集団が生れた。 「どうして 女性だけが家事をするのか」「共働きの主婦に負担がかかりすぎる」などの問いかけが女性の側から 出された。こうした問いかけに.家政学はどう対応してゆけばよいのか。広原盛明は,「あすの家政 学」と題して「家政学とは,①国民が直面しているさまざまな生活困難(物価値上ヴ公害,有害食 品など)に対して有効な解決方向を示す学問である。②共働きに伴うさまざまな悩みに答える科学で ある」と言っている。ω要するに家政学1とは社会からの影響をどう処理するかの学問。ということで
あり,現在の家政学ま社会から受ける困難な家庭生活の問題の解決共働きによる家庭生活の問題処 理を研究することに目標を置くぺきものであると解される。最近はまた一つ大きた問題として「ゴミ 処理」がある。消費生活の上昇は多くの廃棄物と,残津を造る。貝原益軒の「家遺訓」の勤倹節約 の思想は,江戸時代 明海犬正とつ響き,そして昭和の30年代で消えることになったが,新しい 時代の豊かな生活は,新しい問題をもたらした。修理することの少くたった消費の仕方を家庭生活の 中から今一度考える必要があると思う。
以上.昭和40年より急激に変化しつづけている家庭生活上の諸問題,女性の自覚と家庭への意識 について,新聞紙上に現れたニュースのスクラップの一部などから述べたが,昭和45年,卒論学生 の指導をしつつ農村,住宅地,団担商店街の主婦の家事労働の状況と.その価値について調べたの で,その結果の一部よワ現時の家庭生活を眺めてみる。
皿 調査による家事労働の実状 価値について
調査場所 期 間 戸数
奈良県高市郡明日香村 昭和45年5月24日(依頼日)6月 7日(回収日) 70戸 奈良市紀寺町 団地 同年 6月 2日(同 上)6月17目(同 上) 76戸 奈良市法運町 住宅地 同年 6月14日(同 上)6.目26日(同 上) 44戸 奈良市三条町 商店街 同年 7月13日(同 上)7月20日(同 上) 29戸 計 219戸
調査場所を上の如く選んだのは,農村 団地,住宅街 商店街という環境の相違を知るため。
調査方法
次の如きアンケート紙を,戸別訪間によワ配布し,戸別訪問によワ回収。戸別訪問の目的は事情を をよく了解してもらい解答の正確を期すためであった。なお,本稿はこの調査の一部を用いたもので
ある。
調査月白1 昭和 年 月 目
年 令 才
学 歴 (小・高小・旧高女・新中・新高・大学 その他)
佳 所 奈良県 市 町
郡 村
家族構成 (家族数 名)
続 柄 年令 職 業 最終学歴 年 蚊
! ㌧一」
・63一
あなたは次の呵れに属されますか
主婦専業である I家業に従事している(商業・農業 漁業)
・社会に出て働いている ・家庭で内職をしている
・何らかの社会活動に参加している(婦人団体・奉仕活動など)
あなたは余暇をどのように過していられますか 具体的に書いて下さい。
(例) 読書 映画 スポーツI会合・社交.テレビ・ラジオ・ショッピング 住 居 持家, 借家 文化住宅 公団住宅, 公営住宅
社宅, マソン目ソ, その他のアパート, その他( ) 次の例の如くにあなたの生活時間を書き入れて下さい。 (別紙使用)
平日(月曜〜金曜の何れの目でも結構です1日)と土曜,日曜の計3目 但し特別な行事の目は除いて下さい。
(調査月日) 昭和45年 月 目
1g分 20分 30分 40分 50分 60分 1午前4時
7
10 11
÷
備 朝 食 世 話 見 送 ワ
〕 洗 面 身じたく.
夫 見 送 ワ
朝食準 子どもの
ア レ ヒ
テ レ τ■■
掃 除 来 客 応 待
十
掃 除 買 物 買 物
結 果
1) 主婦の労働種別
明目香村農村地帯,紀寺町田堆 法蓮町住宅地帯三条町南唐街,計219戸の主婦の労働状態は,
家事専一の者 89名,家事と内職をするもの 41名,家事と社会に出て働く者 14各家事と農 業に従事する者 35名,家事と農業以外の家業に従事する者 40名,であった。
2) 各地域の別よワみた主婦の年齢構成・労働の種類・労働時間 地域の主婦の平均年輪労働の種類は第1表の如くである。
この表を解すると,団地生活の主婦では平均年綿が低く子供が小さいために社会に出て就職する者 が少く内職する者が多い。法種住宅地に生活する者は平均年齢は高くこれは夫の年齢を推測して生活 に余裕があワ家事専一者が多い。しかし時問的余裕のある者は家庭外に就職出来るのでその率が高く なっている。商店街では総ての主婦が家業につき,農村では半数は農業に従事している。また内職 農外以外の家業につく者も多く家事専一者は少い。全体よりみて家事専一者は40%で半数に満たな
かったが,しかし家事労働をしない者はなかった。そこで各地域の家事労働の状態をみる。
第1表 地域による主婦の労働別比較
各地域の主婦の平均年齢
家事と社会
紀寺団地 34,4才 法蓮住宅 43.5才」
繭 店 41.9才
家 事 専 一 家事と内職
→家事と
家業
家事と家業 ウ家事と 家 事 専 一 家事と内職 農業家事と
杜 会
家 事 と 家 業
r家事と社会
明日香
p家事と社会 全 体
第2表 主婦の家事労働時間 (地域別)
平均値及び家事労働別従事者実数
紀寺団地@76 法蓮住宅@44人 商 店@29人
明日香村農村
@ 70人
平均値
i分)
従事者
タ数i人)
平均値
i分)
従事者
タ数i人)
平均値
i分)
従事者
タ数i人)
平均値
i分)
従事者
タ 数
i人)
48 72 50 44 42 26 52 66
炊事 朝昼夕
44 50 39 26 44 17 45 55
90 73 98 43 74 24 77 68
計 182 187 160 174
裁 縫 I27 31 121 21 40 3 29 8
家 事
洗たく 62 71 66 40 53 23 55 64
掃 除 61 70 71 44 44 2I 48 61
買 物 62 62 49 4I 35 18 37 33
小修理衣服整理 50 8 39 8 O O 57 10
他雑事 59 46 63 39 37 21 風呂284.9 4513
育児 子供の教育 q供の世話
79 35 92 15 52 6 44 9
107 38 88 17 83 7 72 15
一65
3) 家事労働時間の分析
地域別の家事労働時間の平均値は, 紀寺団地一7時間25分 法蓮町住宅地一7時間57 分 三条町商店街一4時間33分 明目香村一5時間35分 であった。家事専一者の多い 地域は家事労働の時間は多くなっている。
各地域の主婦がどのような仕事にどれだけ時間をかけているかを第2表に示す。
これによると炊事 洗たく.掃除 買物I雑事は各地域の主婦の半数以上は従事して層ワ,その時 間数もあまワ差がない。 (但し,農村地帯の買物については半数を下回る)裁縫をなす主婦は,団地 で 41%,住宅で 48%,と家事専一の多い地域に多くなワ,その労働時間も多い。農村に於い ては一11%と少くなっているが,その時間は,129分と多くなっている。商店街では裁縫をなす者 が少く修理程度ではないかと思われる。その現れとして,小修理は,0となっている。育児について は,団地で52%の主婦が子供の世話に多くの時間を賞していることがわかる。この時間の表からみ て,家事労働の時間に強く影響をもたらすのは裁縫と育児であろう。中でも裁縫は,時間に余裕のあ る者カミ遊んでいてももったいない,縫うことによって衣服を廉く仕上げよう,という考えや,退屈 だから,楽しいから,などであることが戸別訪問での対話の中からわかった。職業に就けば,裁縫に 時間をとる余裕もなし,また裁縫をしなくとも生活が出来る社会環境である。しかし育児の問題とな ると現在ではまだ保育所の実状からしてもこの仕事を軽減することは出来ない。保育所の必腰性が盛 んに論ぜられる所以である。
主婦の労働状態を分類して,家事専一,家事と内職家事と社会。家事と農業家事と家菜の5 種類にしたが以後この分類によるときは,労働別とい㌔
労働別の家事労働時間は,第3表の如くである。これよワは次のようなことが解される。
第3表 主婦の家事労働時間(労働別)A
家事労働別従事者数とそれによる平均値_
家事専一 家事と内職 家事と社会 家事と農業 家事と家業 89人 41人 14人 35人 40人
平均値従事老平均値従事者平均値従事者平均値従事者平均値従事者 実数 実数
(分) (分) (分)
(人) (人)
実数 実数 実数 (分) (分)
(人) (人) (人)
炊事1808616540144141563413337
家裁 縫13251※29738
流 た く 70 85
i掃 除 74 85
55 40 49 40
買物587ポ4731
事 小修理衣服整理 60 16
雑 事 64 64 育 子供の教育 86 39 児 子供の世話 118 42
30 4 55 32 65 10 62 15
70 2 41 12
40 12
45 8 30 1 41 9 68 6
73 3 53 31 44 29 44 13 37 3 48 30 30 3
40 …一I一
49 30 40 30
34 23 60 2
44 29
51
63 4149 7.83
乙、
※内職の裁縫を含んだ数である。
第3表の中で「家事と内職」の裁縫は家事労働というよワ職業として取扱うべきであったが.その 区別が明確でなかったので一応ここにあげたが,考察からは,はずす。
家事専一者の57%は裁縫をして居ワその時間数も多い。小修理 整理の仕事は時間数・従事者数 ともに一般に少い。特に従事者数が非常に少い。使い捨ての傾向がこんなところにも現れている。育 児については,38名が子供の世話をしている紀寺団地(第2表)が従事者数の殆んどを占めている ので紀寺団地の平均値に近いものと見てよへ
第3表は,家事労動別の従事者数と,それによる家事労働時間の平均値を示したのであるが,家事 労働別の平均値を示したものが,第4表である。これによワ家事労働の現状を次のようにまとめた。
①家庭に於て,炊事には一
策4表 主婦の家事労働時間(労働別)B
番多くの時間カミかかっている 一一労働項目別にみた平均時間一 こと。
単位分
家事 家事と 家事と 家事と 家事と 専一 内職 社会 農業 家業 89人 41人 14人 35人 40人 炊 事 180 161 144 152 130
家 裁 縫 78 数275 10 6 3
u I
洗たく 69 54 35 47 39
掃 除 73 48 34 37 32
買 物 53 35 26 16 21
事 小修理衣雛理 11 3 2 3 3
雑 事 64 43 26 41 33
育 子供の教育 39 16 29 3 9
児 子供の世話 58 23 18 10 20
②「家事と内職」の裁縫は 家事労働というより職業として 取扱うべきであったがその区別 が明確でなかったので一応ここ にあげたが考察からは,はずす。
「奉事専一」を除き,裁縫の時 間は非常に少い。
③r家事と農業に買物が少 いのは自家生産の食品が多く,
また地域約にみて商店が少いた めであろう。
④小修理 衣服整理の時間が非常に少い。使い捨ての現象がみられる。
⑤育児は家事専一者に多いが,家事専一者の多い法蓮住宅地の年齢層が高く育児従事者が多く率い からその平均値として意外に少くなった。即ち育児の時間は若い年齢層の家庭に特に多いということで
ある。
⑥洗たく,掃除雑事はあまり差がない。何れの家庭でも必須の家事労働時間であろう。
4) 主婦の労働価値
「主婦の労働価値はタダか」という家事労働価値の疑問を明確にするために,価値づけをしてみた。
その方法として,家事労働の項目毎にそれとほぽ同じ職業に就いている職業人の賃金(時間給)をあ てはめ,その総計を主婦労働の価値とした。これについては,職業人は一応その道のプロであワ,結 果の質や,能率のちがいもあろう。また大かかワに機械化された職場での出来高もちがうであろう、
そこで
1) 特殊な技術者の賃金でなくなるぺくその醐こあづては,雑役に近い職にある者の賃金を当て た。例一食堂では,コック,板前でなく,板前の手伝い人
2) 高度に機械化されていない,中 小企業を選んだ 一6τ一
第5表 職 業 人 賃 銀 表
一一 條ヤ平均値一 単 位(円)
業 種 対 象 賃銀
炊事婦
会蓑生食芸:1:二1:1平均・食堂(アルバイト)」
173
D服飾専門学院 ㌔
(裏二ζげ仕立代を所要時間で}
仕立職人 E呉服店 5357 286
(正絹袷 同上) ノ 1■ 一【
e 学 園(ス 一 ツ 同上)一1洋服平均
(ワンピース同上)!…
クリーニソ
グ職 人
G クリーニング店(下働き中卒者) 1平均H クリーニング店(普通の職人)
194
雑役(女子) 奈良県平均(奈良職業安定所) ■164
保 母 I保育所(公立)保毘
J 保育所(私立)保母 1平均 152
3) 家事労働を項目 毎に考えたとき イ.炊事一時間と結 果は比例しないことがあ る。未熟な主婦は時間の 割に結果は、内容的,量 的に低いことがある。し たがって時間給では不合 理のように思われるが,
画一的な業者の料理よワ 家庭料理を慾するならば,
心理的価値も含めて,こ の時間に対し賃金をあて てもよいと思う。
口.裁縫一炊事と同 じことが言えるが裁縫の 時間はごく少いので賃金 計算に及ぼす影響が少い
.と考え時間給で扱った。
ハ。洗たく一この調査では洗たく機の有無は調査しなかったが,戸別訪間の際の実情では殆んど の家庭は電機洗たく機を使用して居り日常の衣類の洗たくとしては業者の時間給とあまワ変ワはない
と考えた。
二.掃除,買物雑事は特別な技術を要しないので時間給でよい。
ホ.「テレビを見ながら」というのは,娯楽または教養の時間と半分またはその時の事情によワ 割引いて,比較的そのもののみの時間に近づけた。
へ.子供の教育,世話は心理的なものがあワ,能率給というわけにはゆかず,時間給でよい。
以上のことを念頭においた。調査した職人賃銀は第5表の如くである。これを主婦の家事労働に当 てはめその評価額とした。それを第6表に示す。
次にこの評価額を,主婦の代ワ,または手伝いとしてその労働につく家政婦の賃銀と比較してみた。
奈良県下の賃銀は左の表の如 くである。これを30日 (1 ヵ月)に計算すれば,57000 円となる。この賃銀は.家事 専一の主婦の価値額とほぼ近 い数値となった。
ここに於て,私は家事専業 45年11月調
A看 護婦会 住込 日給(二食付)J働時間8〜10時間 2,OOO円
B家政婦会 住込 日給(三食付) 2,200
C 家政婦斡旋所 住込 日給(二食付)
J働時間9時間30分 1,500
平 均 1,900
45年11月調
の主婦の家事労働の賃鐸 57000円台は妥当なものと考え飢 1
こうしてみると妻の収入は夫の収入の一などと言われるのは,中年層の夫婦では先っ妥当なとこ 2
ろではないかと考える。
第6表 主婦の労働別賃銀評価
業種別 労 家事専一 家事と内職 家事と社会 家事と農業 家事と家業
平均時間賃銀 家 働
事 別 家事労働別平均時 家事労働別賃 平均 賃銀時間 時間平均 賃銀 平均時間 賃銀 平均時間 賃銀
(円) 労
働 間(分) 銀(円〕 (分) (円) (分) (円) (分) (円) (分) (円)
、
炊 事婦 173 一炊 事 180 519 161 464 144 415 152 438 130 375
「裁 縫 78 1O 6 3
仕立職人 286 ≡小修験腱理 11■ 424 3 14 2 57 3 43 3 29
計 89 3 12 9 6
クリーニング 194 洗た く 69 223 54 175 35 113 47 150 39 126
掃 除 73 48 34 37 32
.買 物 53 35 26 16 21
雑役(女子) 164 519 344 235
雑 事 64 43 26 41 257 33 235
計 190 126 86 94 86
子供教青 39 16 29 3 9
保 母 152 子供世話 58 246 23 99 18 I19 10 33 20 118
計 97 39 47 I3 29
合 計 625
1o時空、1931 383 1096 324 939 315 921 290 883
月 額平均賃金 57930 32880 28170 27630 26490
以上 I・1Iをまとめ家庭生活上の問題を取ワ上げてみると
1) 家庭生活が社会状勢に影響された問題点は,住宅問題共働きと保育の問題 家事労働の価 値 家事労働と共働き家庭に於ける夫婦の協力,核家族とマイホーム主義 農山村q人口過疎と老人 対策消費生活の上昇とゴミ処臨などであ糺
2) 家事労働の実態調査よワ明かになった家庭生活上の問題点 イ.現在の主婦の過半数は何らかの形で職業をもっていること。
口.家庭で衣服の製作や修理をすることが少くなっていること。
ハ.若い主婦では保育のための時間が多いこと。
二 炊事にはかたりの時間をかけていること。
1
ホ.家事労働の価値は高く評価されてよい。「夫の収入の一」というのは,単に「婚姻生活の協 2
力」という抽象的なものでなく,数字の上で明かに知り得たことである。
一69一
へ職業を持つ者は家事労働の時間が少いので,評価額の少いのは当然であるが,職業の収入と合 せるとどうなるかにっいては調査していないので不明である。しかし家事専一者の半額,或はそれ以 上の評価が現れているのでおそらくは,家事専一者の評価額よワは高額になるものと推測されたこと。
ト.何らかの形で職業を持つ者は,裁縫と子供の世話を除いては時間をきワつめながらも一応は家 事労働に携っている。この事情からして主婦の就職をさまたげるものは,裁縫であること。また世話 のかかる子供のあることは,保育の時間や,雑役の時間も多くだワ,就業をさまたげる大きな要素と なっていること。などであった。
皿 中学校家庭科のあリ方
社会状勢の変化は家庭生活にも大きな変化をもたらし種々の問題を提起しているが広原盛明氏の
「国民が直面しているさまざまな生活困難に対して有効な解決方向を示す学問」として家政学を考え てみたい。学校教育の家庭科もこの考えのもとに置かれるべきものである。
昭和44年,指導要領が改訂されるに当り,中学校の家庭科が 的存在から脱することを望む,向 きが多かったがその願いは達せられず再び技術 家庭として置かれたのである。
家庭科は,家庭生活を対象にして学習する教科で家庭経営(家族関係も含めて)を中心としたもの でなくてはならたい。技術を通して家庭生活を考えるのではなく家庭経営の一環として仕事の技術や それに附随した学習をなすべきものである。しかし家庭科は家庭生活を対象とした独立した教科であ るといっても,社会科や,傑嬢科や,道徳や,その他の教科で教育されてもよい部面もある。教科の 整理という点でそれらの教科で教育される部分を除いた残りのものは何か,ここに家庭科は教科とし て活路を見出した。それが,裁縫や調理などの家事技術であった。
しかし今や,裁縫の殆んどは社会の職場で用を達している。調理にしても給食センターや,既製食 餌で徐々にその重要性を失いはじめている。こうした現状で家庭科は何をするべきか。また家庭科は 不要なものなのであろうか。こんな不安を抱きながら家庭科は歩んでいるようである。事実,家庭科 がいつまでも≡凋理や被服製作に主力を注いでいるようでは時代の波にさらわれてしまうよう征不安が ある。私はここに新しい家庭科を提唱したい。
家庭と社会の関係は,生物学でいう細胞と組織の関係であろう。組織の生命を司る細胞を研究する 教科として置かれることにまず確信を持つべきである。次に,細胞の核ともいうべき家庭の主体は何 か。それは夫婦と血縁という特殊な問がらの人間の集ワである。これを養ってゆくもの.それは衣・
食 住であるが,まず主体が崩れては衣.食 住に意味はないということである。最後に,渦去に於 いては衣食住は家庭内でととのえようとし,またととのえて来た。しかしその給源は今や社会に移り つつある。この変化を念頭に働いて家庭科を考えるべきである。こうした理由で私は現在の家庭科の あり方を批反し,訂正してみた。
11)まず家庭科は技術科と分離するべきである。そして技術から出発している家庭科を訂正しなけ ればならない。
(2〕裁縫や調理などの技術を要寸るものは、技術科の中に入れて真剣に取ワ組むべきである。将来 職業の方向にも樽けるようにするべきではないか。技術科の「女子向き」としても,また男女自由に
選択させてもよい。
(3〕家庭科も男女必須にするべきである。家族の一員である男子に家庭科を除くというあワ方は間 違っている。家事労働も男子が負担すべき時代は来ている。また女子にも技術科を必修さすべきであ
る。
(4)家庭科の内容について
1.家庭生活の意義と,家族関係。 親子関係,夫婦関琢家族と老人等の問題を考える。社会科の
「公民的分野」の中で家族生活というのが出ているが,制度を通しての見方であり、また道徳の中に
「自己の属するそれぞれの集団の意義や目棲を理解し、協力し合って共同生活の充実に努める」とい う内容の中に「家族の一員として」というのが出ているが,老人間題や保育問題の抱える深刻な心理 的 肉体的な点は一般論的な道徳としてでは解決出来るものではない。家庭生活の問題として家庭科の中 からその世話の仕方や,家族としての扱い方を取り上げねばならない。家庭科の中では、老人食とい
う点からのみ老人に触れているが,これのみではこと足りない。
2.衣.食 住。 衣食住は生活に不可欠の条件であるが,市場から簡単に入手出来るように なった。或る物は,殆んど家庭で手をかけずに得られ,また或る物はだんだんそうたワつつある。こ のような現代に於いては造る事より選ぶこと,利用することに焦点を当てねばならぬ。
衣服について一衣服の選び方,整理(洗たく.修理を含む)を中心とする。既製品と,着用者の 関係,手の加え方などの学習が大切である。染色は時間数の少い家庭科の中に時間をとる必要がない と思う。ししゅうも時間の関係上省いてよい。ワンピースの製作よワ編物を教材にした方がよいので はないか。染色やししゅうやワンピースの製作などは.技術科の中で扱うことがよい。
食物について一指導要領ではこの内容はヰ<整理されていると思うが,栄養所要量は保健の中に あるから略してよい。授業の進行上,復習的に取扱う位でよい。幼児老人は身体的にも特徴がある が,青少年と成人を,ことさら学年別に分けて入れる必要はない。量的,質的の多少のちがいを話す だけで事足ワる。少年は幼児と一つにして,幼少年 老人として扱うのがよいのではないか。この辺
を整理してその時間を他の内容に向けるべきである。
住居について一指導要領に現れた住居は,せっかく住居として独立させておきながら,前回指導 要領のr設計,製図」の名称を変えたようなものである。住居不足の現在,不良住宅,粗製住宅等の 問題が起きているが,住宅条件に不可欠の土地条件(地盤や、灼形など)については述べられていな い。採光や換気などについては保健科で述べられているが,実際の住宅に当りどんなに工夫するべき かはやはり家庭科の問題であろう。湿度の高い我国の鉄筋住宅の実状や,急造の住宅地の排水路だと の実状もよく知り,よい住宅がどんな点に注意を払っているかを知らねばならぬ。また住宅の中で傷 み易い・部分や早期修理などの面についても扱うべきである。
3.保育。 今回改訂の保育についてはよく行き届いていると思うが,乳児の内容を加えるべ きである。幼児は乳児につづくものであワ.乳児期の状態が大きく影響する。幼児期だけをとワあげ るのは,やはワ世話という技術面を中心に考えたからであろう。保育は貌、児幼児を通して考えねば ならない。また保育は生徒の年齢から考えてその意義を安易に考える向きが多い。指導老も子どもの 経験が無い者は簡単に取ワ扱いがちである。しかし共働きにおこる保育の問題や 父と子のふれ合い
一τ1一
など問題は多い。育てることの重要性を強調したい。保育所の増設,充実に.子どもの経験の無い者 にも,保母という職業が待ち受けていることも考え.職業意識の崩芽ともなるよう保育は真剣に扱い たい。改訂指導要領の「指導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱い」の中で r保育の一部を 欠く事が出来る」とか,保育を「同等の教育的価値を有するものと認められる他の内容をもって代替 することもできる」などというのは保育を抹消する足かかワともなる。この部分は削除されねばなら
ぬ。
4.家庭経営。 家庭生活に不可欠の家計を入れるべきである。家言十は社会科の, 「公民的分野」
の経済生活の中に出ているが,家庭経営とからませつつ扱うべきである。家庭科の中にも,第3学年 の被服や食物の中で生活との関係として取扱われているが,総合的な家計については扱われていない。、
使い捨てが,「ゴミ公害.」の一部となることを考えれば消費者である家庭人も,使い捨ての考えを なおさねばならぬ時代が来ている。次に,家庭生活の中で大切な「休養」ということについては,第 2学年の被服の中で休養着を扱い、これで休養の意味を指導するという目的を立てているが,被服だ けで休養を扱ラのは無理である。保健科の中での休養は,生理学を主体とした一般論であるが、家族 関係や,衣食住(特に現在的な問題の多い住居)の内容とからませながら家庭生活の中に占める休養 の意義と具体的な方法を扱わねばならない。
以上,今回改訂された指導要領の「技術 家庭」の女子向きとして置かれた家庭師こ対する根本的 な改訂と,内容について改訂すべき部分の要点を述べた。要するに.技術の部分からのみ家庭科を捉
えようとするところに無理がある。勿論筆者は家事技術の必要性を否定する者ではない。家事労働の 価値が示す如く,それな<して家庭生活は成ワ立たない。家事労働に費されねばならぬ時間は多い。
しかし時代の変化とともに,家事労働や,家族員の生き方も変化してゆくことを確めて,現在的た問 題を捉え、必要な家庭技術を選び教科内容を組み立てねばならない。そして家族を人間性の向上へ導 き,ゆとりある家庭生活が営めるような内容をもつ家庭科でなくてはならない。
お わ リ に
改訂された指導要領はいよいよ47年4月よワ実施されるが,家庭科こ於いては実施早々から,す でにその内容が時代の進度より後れている。この指導要領が前回の如く今後10年間据え置かれると すれば家庭秋こ対する不信感はますます募るのではたいだろうか。指導する教師がこのことをよく 自覚して,時代の進行方向を確認しながら指導してゆかねばならないと考える。今回の改訂には各内 容の時間配当が明記されていない。この融通性によって教師はそのより重要とする内容を捉え,時代 に沿った家庭科教育を施すべきである。
最後に,家事労働の調査に御協力いただいた各地域の方々に厚く御礼中上げます。また調査や集計 に協力して下さった卒業生 丸山晶子さんに感謝します。
註
11)
(2〕
(3)
(4)
(5)
16)
(7)
18)
(9)
ω ω
42年3月23日 40年7月 7日 42年7月17日 42年3月 7日 42年3月23日 44年7月23日 44年6月 7日 45年6月14日
46年度1
45年9月23日 46年8月26日
朝日新聞 上 上 上 上 上 上 上
(大阪市立図書館にて講演。 テーマ 男性的家庭論)
国民生活自書
朝日新聞 (豊かな老後のための国民会議に於ける講演)
同 上 (連載 「あすの家政学」 序)
家庭教育の余編 山手
珊下 松原 那須 湯沢 小島 常見
茂
知
治郎 宗一 共著 薙彦 健司 育男 経済企画庁編
1965 1970 1970 1969 1970 1969 1967
参 考 文 不在っ子 カギっ子 現代日本の婦人問題 現代婦人問題入門 核家族時代
老人扶養の研究 日本の賃金 家庭科教育史
1965−1971 国民生活白書
誠文堂新光杜 亜紀書房
日本評論社 日本放送出版協会 垣内出版
岩波新書 光生館
一73一