32 熱帯医学 第14巷 第1号 32‑40頁, 1叩2年5月
長崎市内における犬糸状虫の浸淫状況と伝搬蚊に関する研究
2.長崎産普通蚊4種の犬フイラリア幼虫に対する感受性について
末永斂
長崎大学熱帯医学研究所衛生動物学研究室
(Received for Publication February 10, 1972)
Studies on the Filarial Prevalence among Dogs and the Mosquito
Vectors in Nagasaki City, Western Japan
2. On the susceptibility of four common mosquitoes to the larvae of Dirofilaria immitis in Nagasaki City.
Osamu SUENAGA
Department of Medicalぞoology, Institute for Tropical Medicine, Nagasaki University
Abstract
To determine the susceptibility of the females of four common mosquito species to the larvae of Dirofilaria immitis, laboratory experiments were mede in Nagasaki City.
The number of microfilariae taken at the initial infective blood meal considerably differ by individual in all of the four species examined. In Aedes togoi the rate of filariae discharged in droppings of mosquitoes is the lowest and the experimental infection rate
is the highest, and accordingly, this mosquito is probably the most susceptible species to the larvae of canine filaria among the four species examined. Culex pipiens pallens dis‑
charge filariae at the highest percentage, so that the experimental infection rate is not so high. In Culex tritaeniorhynchus summorosus the percentage dischage is high and the ex‑
perimental infection rate is rather low. In Armigeres subalbatus the percentage discharge of filariae is rather low. However, the larvae entering the Malpighian tubes of the mosquito were all killed soon, therefore this mosqutio must be said to have no relation to the transmission of the disease.
は じ め に
長崎市が犬糸状虫〔Dirofilaria immitis〕の濃厚浸窪 地であることは既に報告した〔末永ら, 1971〕・この糸
状虫の中間宿主となり得る本邦産の蚊経として井上
〔1936, 19吉7〕はAedes togoi, Ae. aloQpictus, Culex
串長崎大学熱帯医学研究所業積 第64B号
長崎産普通蚊4柾の犬フィラl)ア感Il仕 55
pipiens pβliens,及びC. triiacniorhynchnsの4程をあ
げ,その中Ac. tりgoiが最も優れていると述べている・
その後Keegan ら(ユg67〕も暗同位の結媒を報告した・
著者ほ昆崎市内で犬糸状虫を媒介している蚊柱を明 らかにするため,この地方で普通に採集される蚊柱に ついての感染実験並びに野外採集蚊の自然嘘染状況の 調査等を行なっているので,木報では4種の蚊の犬フ
ィラリア幼虫に対する感受性について掴べた結果につ いて報告する.
稿を進める前に,この研究の指導をしていたゞいた 缶大学医学部医動物学教室の大森南三郎名誉教授並 びに軸助言をいたゞいた和田義人教授に厚くお礼申し 上げる,
実験村料及び方法 v‑L‑>旗に供した蚊朽はトウゴウヤプカ〔Aedest‑
jgoi),
アカイエカ(Culfxpipletニspallensつ,コガタアカイエカ しC.trifaenicrhynchussummorosus、,及びオオJ}ロヤプカ
〔Armiseres周balbctus〕の4柁で,これらほ何れも当地 方で採集し25‑CcD恒frm室内で累代飼育中のものを使用 した.吸血の方法としては約2m立方の25⊂Cに調節さ れた恒温毎に4・5畳周の蚊帳を吊り,その中央に設置 したコンク])‑‑トブロックに感染犬を鎖を短かくつな ぎ,口輪をほめてから,この蚊帳州こ供試蚊を放し, 室内の鼎明を消して暗黒下で所定時間吸血させた.吸 血した蚊はとり出して飼育篭に移し,室拡1L約25⊂C,関
尉昆度約'Q#,一日o7)照明暗闇16H古間の恒虻去で,約 1 %の砂糖水を升ませた脱脂絹を篭のLI]央に吊己o下げ て与え,所定」ET澗飼育した捜殺して剖検し,発百中放 こ†発育完了後のフィラリア幼虫による蚊の感染率を調 べた・ ∈、i与(],一部の吸血蚊ほ直後に殺して剖検し,摂取 している仔虫数を調べた.更に別の若干の吸血蚊はス ライドグラス上に,3、せたガラス製の小キヤn/プ内で3
%砂糖水を水油としてFi・えてm肯し,所定時間転にキ ャップの位置を移助させてガラス面に糞と共に排推さ れる仔虫または幼虫の有無をmべた・また,この実験 に先立ち,好適Lf]間宿:‑Kとされているトウゴウヤプカ
2400
2000
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6001200
800
400
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Roomモemper‑:25oC atu「e 冒aily h。t。‑16hrs period pelbus盂号ive.
dity 70V。
Mean Max・
Mean Min.
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NOV. I DEC・ JAN・ FEB. MAR・
(1967) 柑68 )
Fig.1Changeofmicrofilarialcountinperipheralbloodofaninfecteddogwith Dircfilc.riaimm'
.tisinwinterseasonwhenexpcsedto25':C.
54 末
に感染犬から吸血させ, 25‑C室内におけるこの蚊の体 内でのフィラリア幼虫の発育状況を卸ヾた・尚,剖検 を必要とする蚊ほすべて殺した直後管瓶に入れてコル ク栓をし,これを小ビニー;u袋に入れて密封し ‑20〇 Gのフ))‑ザ‑中に保存しておき,後で少しずつ取り 出して剖検した.吸血の際にはその前後に大の耳突か
ら夫々6口mがの血液を採ってその中の仔虫数を数え, 吸血前後の平均数を吸血時の犬の保有仔虫数とした.
また,供試蚊は吸血前後に夫々30‑50個体について炭 酸ガスで麻酔して自動天秤で体重を測定し,吸血前後 の平均体重の差をもってその蚊群の吸血壷とみなした・
実験は1962年2‑5月に実施したが,多くの研究者 によって確認されているように, D・ immttisの場合に ほ感染大の末梢血液中の仔虫散が季節によって著しく 異なり,冬期には夏期に比べて甚だしく減少するの で,仔虫数が少ない冬期に蚊への感染実験を行う場合
にほ何れかの方法によって末梢血液中に出てくる仔虫 数を増加させる必要がある.著者はその方法の一つと
53 冒頭
して1 ‑2月の一年中で最も仔虫数が少ない時期に感 染犬を25‑Cの恒温室へ移して飼ってみた・その結果, 第1図にみられるように犬を25⊂C室に移すと数日後か
らその犬の仔虫数が増加し始め,途中犬を屋外の自然 温度下に戻すとその犬の仔虫数も減少するが,犬を再 び25oCに移すと仔虫数も再び増加をつゞけ,最初25‑C に移してから約1カ月後にほこの犬の夏の最多仔虫数 と略同数に達するることがわかった・その後も犬を自 然温度下に戻すと犬の仔虫数は急減するが25‑Cに移す と再び急増する現象がみられたことほ図に示す通りで ある・しかし, 4月に入ってからほ犬を自然温度下に 置いても犬の仔虫数は自然に増加し始める傾向がみら れる・このように冬期,感染犬を25cCの恒温茎へ移す
ことによって増加した仔虫は吸[faによって蚊に摂取さ れると,夏期に摂取された仔虫と同様,正常に発育す ることが予備実験によってわかったので, 4種の蚊に ついての感染実験はすべてこの方法によって仔虫数を 増加させた犬を用いて実施した.
実験成績並びに考察
I.犬フィラリア幼虫のトウゴウヤプカ体内におけ る発育.
感恐犬からの吸巾によ「て血液と共にトウゴウヤプ カの胃に入った仔虫は25cCにおいてほ吸血後凡そ12時 間以内にマルピギ‑民背に移行して発育を開始する.
マルピギ一環管内におけるフィラリア幼虫の発育状況 は第l蓑及び第2図に示した.これらの図表からわか るようにマルピギー民管にf・盂‑入した仔虫即ちIa期の 幼虫は次第に短縮肥大して4日後には最短期のIc期 に達し,その後は吹常に仲島[IF大して8日後に第1回 の脱皮を行ないⅠIa期に達する.その後も現品をつゞ けd4日間でIlia偶に, 15日目にはnib期(成熟幼虫〕
となり,マルピギ‑氏管を破って脱出し頭書即こ移行す る.たゞし,この発育速度には蚊の個体により,ある いほ『‑蚊体内であっても個々の幼虫によってかなり の差があり,早いものでは「引∃目に既にIllb期に達す るものもあるが, ]6日目でも尚Ⅷ期にとどまっている
ものもある.また,各期幼虫の大きさも個体によって かなり異なることほ帯1真に示す通りである.
2・長崎産普通蚊4種のD. immltis幼虫に対する感 受性・
1 )蚊が摂取する仔虫数
午後7時から翌朝午前6暗までの11時間に吸血した
ものを直後に殺して剖検し,蚊が摂取した仔虫数を調 べた結果は第2真に示す通りである.この塞からわか るように,蚊が摂取した仔虫数はどの種類でも蚊の個 体によって著しく異なるが,各種類毎の平均摂取数を 夫々の種類の吸向量を考慮した予想摂取数と比較して みると,コガタアカイエカでほ予想数の約2・1倍で最 も多く,アカイエカでほ1・6倍でこれに次ぎ,トウゴ ウヤプカとオオタロヤプカでほ約D.9倍で予想数より やゝ少なかった.しかし,犬の末梢血液中の仔虫数ほ 吸血時間中にもかなり変化すると思われるし,また同
じ時刻であっても分布が一様ではないと思われるので, 蚊の種類によって摂取仔虫数に差があるかどうかを知 るためにほ更に実験をくり返す必要があろう・マルピ ギー氏管に侵入する率ほ11時間以内でほオオタロヤプ カが最高で33.;を占め,トウゴウヤプカが12・5宥で これに次ぎ,アカイエカとコガタアカイエカでほ夫々 0.6#及びD・5%と極めて低か「た.このように,蚊の 種類によってマルピギー氏管‑侵入する仔虫の率には かなりの差があるが,何かの理由によってマルピギ‑
氏管への侵入ができなかった仔虫は生きたまゝ,ある いは早晩死l%して糞と共に排mされるものと思われ る・
長崎産普通蚊4種の犬フィラ)]ア感受性 55
Table l Larval development of Dirofilaria immitis in Aedes togoi at 25‑C・
Days∃
after infection
l
Body length‑Cμ〕*
Mean Range
307・ 280‑330 220・ 210‑250 193. 5 巨15‑200 147.5 135‑170 112.5 100‑125 141.5 120‑150 190. 0 180‑2〔〕0]
243・ 230‑3C〕0 319.0 25C〕‑35(〕
0 1 0 3 4 5
6 7 ,s
9 10 ll 12 13
巨
E
∃
F l
l l
ら
Body width〔μ〕* ど
Mean Range
6.5 6‑ 7 10・1 10‑ll
1(〕・7 10二12
14.0 13‑20
22.3 15二3〔)
27・ 20‑3C 29.3 26‑31 31.9 コ‑35 35・ 32‑38
322.0 250二40〔〕
ヰ48.(〕 330‑550 563.0 斗(〕O〕 ‑650 608. 0 55(〕‑呂CO :52.(〕 710‑90(〕
14
%=
33.3 30‑35 34.0 32‑40 37.0 35‑40 35.0 33‑38
30.0 30二30
1030.0 10〔)0‑I 100
115(〕.0 1100‑120こ〕
i
20・0 2〔〕二20
20.0 〕‑20
l
≡
1
†‑
Tail
A tail is not distin‑
guishable from the body・
A tail of about 30μ is clearly distingui‑
shable
A tail is seen, but not so clearlv・
̲I
ISjo tailis seen.
*ユIean for 10 larvae in each day. ヰ* After Omori, N. (1957〕・
Develop‑
mental stage*
Tn
‡Ib
‡Ic
卜d
チ
†
ⅠIa
IIb
IIc
]
[
i l
Ilia lllb
2)蚊の糞と共に排mされる仔虫敏
感染犬からの吸血によって蚊の胃に入った行虫の
#,マルピギ‑氏管に侵入したものについては後述す るが,ここではマルピギー氏背に侵入できず胃に残っ た仔虫について述べる.蚊は吸血挽かなり堀繋に糞を 排他するが,吸nl直後に排他された糞塊にはしばしば 鮮加が湿っている,しかし,その後に排伸される糞は KniiiのJ瑚犬を【!1:するょうに'<>."〕,更にモ¥口捌こ太汁j f‑,'
化のまま胃中に残されていたとFJlわれる粘度の高い血 糞を排淋した後は液状の糞を排滑するようになる.こ れら一連の糞塊に生理r'l勺食塩水をfl鉤加し,これを除々 にとかしながら精査すると,吸血直後の血液の混った 糞や,数日後に排他された枯血糞Lt]に仔虫が発見され る.この中,吸血直後の糞中に発見される仔虫はギム ザ液でよく染まり,排滑時にはまだ生きていたかある いほ死直後であったと]iiわれるが,数日後の枯血糞中 に発見されるものは全く染色されず,辛うじて仔虫の 形を保っているものが多いので,恐らく死後かなりの 日時を経過したものとJ[iしわれる,第吉表は各種類缶
に,吸血後如H排押した糞塊巾のフィラリア付虫また は幼虫の数を示したもので,トウゴウヤプカの9E]及 でエロ日日の夫々1胴体がⅠIa期であった他はすべてIa 湖(仔虫〕のままであ「た. 11日目以後に排世された 糞塊中にはフィラリア幼虫ほ全く発見できなかった, 第4去は吸巾憎7日間個別飼育をしてその間に排伸さ れた糞塊巾のイ子虫数を調べた後,個々の蚊を剖検して マルピギ‑氏管Lt]に残‑lている幼虫数をも凋べた結児 を示したもので,この表から,排廻される仔虫の割合 が蚊の種類によって著しく異なり,アカイエカでほ実 に98.9#を,コガタアカイエカでも86.5ワ右を排伸する が,オオクロヤプカでほ55.ら%を,トウゴウヤプカで は僅かにら.996を緋鯉するにすぎT?いことがわかる・
アカイエカやコガタアカイエカの場合には1 ♀で5D望 以上の仔虫を排胆しながら,マルピギー氏ft中には全
く幼虫を残していない個体もしばしば認められた・
3 ) 1,]E期幼虫による蚊の感染率
7ルピギ‑氏管に侵入したフィラリア仔虫のその後
の発育状況ほ蚊の柿類によ「て若しく異なる・即ち,
3ら 末 永 故
1200
000
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■■■■■■
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I
l 3
削
i
Days 0 l且 3 4 5 6 7 8 9 1里1112131与15
stagesla lb lc ld lla lib ⅠIc王 nib Fig. 2 Schematic representation of the development of DirofUaria immitis larvae in
Aedes toroi with the lapse of days after infection at 25‑C, based on Table 1.
Table? Mean number and distribution o王microfilariae or larvae of Diroj盲Iaria immitis
in four common mosquitoes 王ed durir唱11 hours on a dog which had about 26 microfilariae per mm呂blood.
Mosquito species
No. of mosqs.
exam‑
ined
Expected No of micro‑
filariae taken up by
a female
No.of filanae examined per
mosquito
distribution of filariae in mosq. in 1 to ll hours
a王ter feeding
MeanRangeStomachMalpighian tubes
Aedts to?ol
Culex pipiens pattens
(7. tritaeniorhynchus surr‑n orot乙」s
Arm呈geres subalbatus
i E
1 1
34
106
50
50
64.8
52.9 43.1
101・1
58.8
82・4
l
『
1‑184 4‑260 9.2 ‑305 95.9
i
ll‑358
87.7 99.4 99.5 66.8
i i
mm
0.6
0.5
33.2
良崎産普通蚊4梓の犬フィラリア感受性 57
Tab旦 3. Number of Dirofilaria immitis micro王ilariae or larvae dischaged in droppings of mosquitoes during ten days after feeding on an infected dog at 25oC・
JD∂vs after王ceding on an infected dog
‑‑ ‑‑ ‑ ‑ ・‑
10 Mosquito
species
No. of mosqs.
examined
ll
Total No. of
filariae dischargedAe. togo王 11
1
c・ p. pailens 24 902 c. t. summorosus 16 283 A?‑, subalbatus
8 371
6
77
1 2
56 5
1 1
248 532 119
1自 62
3 3 2 1 1
Table 4. Number and percentage of Dirofilaria immitis microfilariae or larvae discharged in
droppings of mosquitoes during 7 days 壬ter壬ceding on an infected dog at 25cC.
JMosquito species
Ⅳo・ of mosqs.
examined
l
Ⅳo・ of 壬11∂riae
Total │ discharged
Ae. 1ogo且 101
C. p, pallens C. t. summorosus Ar. subalbatus
L
∃ 24
19
10仙=1「
l
∃
% o王filanae
remained discharged
∃
remained
94 6.9 93.1
39三7I
7i2…三i三o.室98.
86.・;
1.1 13.5
69 37 32 垂 53.6 46・4
‑ ‑一 ‑ 【
Table 5. Experimental infection rate with the second and third stage larvae o壬Dirofilaria immitis in mosquitoes kept 25⊂C after in壬ective feeding for more than ll days.
・・Mosquito species
l Ae.togci邑 cc:言'.palle .summ:s r。sus∃
Ar.subalbatus
l
l
No. msqs.
examined
3/
540
71
75
Ⅳo・ mosqs・
infected
28
116 16
0
・Jo infection
、7r>. 7
21.5
22.5
0.0
No. of lar、Tae per infected mosquito Mean Range
10.0 1‑39 3.し 1‑3C〕
2・呂 1‑66
トウゴウヤプカの場合にほ侵入した仔虫は揃って発育 を開始し,発育途中で死亡するものも多少はあるが, 大部分のものが感染幼虫に達する・しかし,幼虫数が
あまり多すぎるとそれらの幼虫の発育途中で蚊そのも のが死亡する現象がみられる.これほ恐らく発百中の
幼虫によってマルピギ‑氏管が破壊され機能障害を起
すことによるとmわれる.アカイエカとコガタアカイ
エカではマルピギ‑氏管に侵入した仔虫ほ揃って発育
を開始するが,発育途中で死亡するものがトウゴウヤ
プカの場合よりやや多く,最初に侵入する個体数が少
古8 末 永 敦
ないことと相侯って発育を完了する幼虫数はかなり少なくなる傾向がみられる・しかしⅠIb期にまで達し た幼虫はそのほとんどが発育を完了するものと思われ る・オオタロヤプカの場合にはかなり多数の仔虫がマ ルピギー氏管に侵入するにもかかわらず,それらの仔 虫は全く発育できず,数日中に死滅することが確認さ れた・第5表は感染後1ユ日目以後に剖検した蚊のⅠIb 期以上の高令幼虫による感染率を示したもので,上述 のことがその率となってあらわれている.即ち,感染 率はトウゴウヤプカが75.ワ%で最も高く,コガタアカ イエカとアカイエカは夫々22・5%及び21・5%とかなり 低く,オオタロヤプカではD%であった.感染蚊1個 体当りの平均保有仔虫数はトウゴウヤプカが1ロ.0隻 で最も多く,アカイエカとコガタアカイエカでは夫々 5.0隻及び2.8隻と著しく少なかった・
4)普通蚊4桂のD・ immitis幼虫に対する感受 性・
以上の実験成績からわかるように,今回供試した4 種の蚊の中,トウゴウヤプカは吸血によって摂取した 仔虫をごくわずかしか排滑せず,その大部分をマルピ ギ‑氏菅に侵入させ,そのはとんどを感染幼虫にまで 発育させるので実験的感染率は最も高く,従って4種
の中でほ最も感受性む高い種類であるといえる.しか しその反面,多数の仔虫を保有している犬から吸血し た場合,即ち多数の仔虫を摂取した場合には,マルピ ギー氏管の機能障害を起して幼虫の発育が完了する以 前に蚊そのものが死亡すると思われる.アカイエカは 摂取した仔虫の大部分を糞と共に排滑し,マルピギー 氏管に侵入させた仔虫も発育の途中でその二部を死亡 させて高令幼虫による感染率をかなり低下させている.
従ってこの蚊の感受性はか一なり低いと考えられる.し かしこの蚊は,多数の仔虫を摂取してもその大部分を 排滑するので,発育中の幼虫による機能障害を起すこ とはほとんどなく,仔虫数の多い犬から吸血した場合 にはかえって有利であるように思われる・コガタアカ イエカは排胆数がアカイエカに次いで多く,発育中の 幼虫の死亡もかなりあって高令幼虫による感染率は アカイエカとほぼ同様である・従って本種の感受性も アカイエカとほぼ同程度とみなされる・オオタロヤプ カは摂取した仔虫功約半数をマルピギ‑氏菅に侵入さ せるが,これらの仔虫を同管内で数日中にことごとく 死亡させるので,高令幼虫によるこの蚊の感染率は零
であり,感受性は全くないと思われる・
ま と め
長崎地方に普通の蚊4種,即ちトウゴウヤプカ,ア カイエカ,コガタアカイエカ,及びオオタロヤプカの D, immitis幼虫に対する感受性を明らかにするために, 当地方で採集し累代飼育中の蚊に,冬期25‑C恒温室に 移して末梢血液中に出る仔虫数を増加させた感染犬か ら吸血させ,蚊の摂取する仔虫数,糞と共に排胆する 作虫またほ幼虫数,マルピギー氏管内での幼虫の発育状 況,高令幼虫による感染率等を調べた.
冬期,感染犬を25‑C恒温室に移すと数日後から末梢 血液中の仔虫数が増加し始め,約1カ月後には夏期の 最多仔虫数とほぼ同数に達する.このようにして増加 させた仔虫は夏期に自然に増加した仔虫と同様,蚊に 取摂されると正常に発育する.
トウゴウヤプカに摂取された仔虫は25‑Cにおいては 約半日以内にマルピギ‑氏管に侵入して発育を開始し, 約15日間で感染幼虫となり,菅を破って脱出し蚊の頭 部に移行する.
蚊が摂取する仔虫数は供試した4種のどの蚊でも個 体によって著しく異なる.摂取された仔虫のマルピギ ー氏管に侵入する率はオオタロヤプカが最高でトウゴ ウヤプカがこれに次ぎ,アカイエカとコガタアカイエ カでは極めて低かった.蚊に摂取された仔虫は吸血致 約1週間以内にその蚊の糞と共に排他されるが,その 割合ほ蚊種によって大きく異なり,アカイエカとコガ アタカイエカでは特に高く,オオタロヤプカがこれに 次ぎ,トウゴウヤプカでは極値率である・高令幼虫に よる実験的感染率ほトウゴウヤプカで最も高く,アカ イエカとコガタアカイエカではかなり低く,オオタロ ヤプカでは零である.
以上のことから,供試した4種の蚊の中ではトウゴ
ウヤプカの感受性が最も高く,アカイエカとコガタア
カイエカではかなり低く,オオタロヤプカでは全く感
受性がないことがわかった・
昆崎産普通蚊4柱の犬フィラリア感真性 59
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