A.T. Kearney Agenda Vol.1
今、
なぜ「調達戦略」が必要なのか
A.T.
カーニー最強シリーズの最新刊『最強の調達戦略』が
2014
年
2
月に発刊された。このリポートでは、本書の中からそのエッセ
要約
書籍『最強の調達戦略』(東洋経済新報社)のエッセンスを紹 介する。企業の総コストの6~7割程度は 外部からの調達でありながら、調達活動の重要性は見落とされてきた。しかし、A.T. カーニーのグローバ ル調達ベストプラクティス調査(AEP)によれば、グローバル先進企業は既にその重要性に気がつき、調 達組織に戦略的な責任と権限を与えつつある。 一方、平均的な日本企業には、グローバル先進企業との間にギャップが存在する。関与する領域が限 定的で、大きな経営インパクトを生み出せずにいるのである。 この状況を打開するためにはグローバル調達の高度化や間接材への取組みを通して経営貢献を高める ことが必要となるが、そのための有効なツールとして「調達戦略のチェスボード」を紹介し、調達改革の大 工程を示す。今「調達戦略」が求められる理由
一般に調達コストは企業の総コストの内の6~7 割を占める。調達活動が与える影響範囲の大きさが 分かるだろう。しかしながら、企業活動のバリューチェーンにおける位置づけは、研究開発、設計、マーケテ ィング、営業、生産などが上流に位置するのに対して、調達業務は物流業務と同様、下流に位置付け られている。経営や事業の戦略を考える上で、調達活動が焦点となることは稀である。例えば、IR資料 において、調達に関する説明は営業に関するものの10分の1程度ではないだろうか。 しかし、企業に対する利益貢献として考えると、調達は営業と同等かそれ以上のインパクトを創出し える。例えば、営業活動により売上を5%増やせたとしても、利益貢献は売上の増分5%の何分の一 となってしまう。一方、調達活動により調達コストを5%減らすことができたとすると、調達コストの減 少分5%が 利益貢献そのものとなる。特に、成熟市場にあっては、営業活動による売り上げ 拡大の 難易度は高いと考えられるので、調達活動の重要性が高まることになる。 従って、調達活動に着目する意義は大きい。しかし、実際に変革に取り組もうとすると様々な課題に直 面する。調達活動がバリューチェーンの下流に位置していることから、調達活動が満たすべき要件が、 調達部門の管理の及ばない他の部門で決定してしまうことが多い。このため、調達部門にて調達活 動が開始される時点では、調達部門に多くの裁量が残されていないのである。これを乗り越えて、全 社最適な調達を実現するためには、上流工程を担う他部門の協力が欠かせない。また、グローバル 化する企業活動も調達にとっての課題となる。生産活動がグローバル化するにつれ、世界の様々な 地域で調達活動が行われている。調達機能の中でも地域間の連携は欠かすことができない。 このように、調達活動を最適化しようとすると、部門間や地域間の連携が必須となり、調達の位置づ けが変わる必要がある。経営戦略の柱として調達戦略を据えるのならば、調達の位置づけの変革の ための戦 略も策定する必要がある。グローバル調達ベンチマーク調査を通して、日本企業にとっての 調達戦略とその実現ための調達変革の戦略への示唆を考えることにする。調達リーダー企業の趨勢と日本企業への示唆
A.T. カーニーは1992年より、グローバルスケールで企業における調達のベストプラクティス調査(As-sessment of excellence in procurement, AEP)を数年おきに実施してきた。毎回数百社の企業 に参加いただいており、調達リーダー企業を選定し、リーダー企業の趨勢と、これらリーダー企業がその他のフォロワー企業とどのように違うのかなどの分析を行っている。現在実施中のAEP2014は8回
AEPでは調達の枠組み(House of purchasing and supply, 「調達の家」)(図1)を用いる。調達の家は8 つの部屋から構成されるが、大きく分けると上層階の戦略や組織、中層階の価値を生み出す調達のプロセス、下 層階のインフラの3つの視点がある。前回の調査であるAEP2011からは以下のような傾向が分かっている。 戦略と組織 調達の戦略的な位置づけは過去最高値となり、相応の責任と権限が付与されている。例えば、リーダー 企業では調達部門が関与する調達コストが9割を超えている。一方、フォロワー企業も年々、関与する調達 コストのカバー率を上げてきているものの7 割程度であり、フォロワー企業との一定のギャップが存在する。 また、組織形態については、調達部門にすべての調達活動が集約される集中型、事業部門にて調達活 動が行われつつも、調達部門が最終的な承認権限を有する半集中型が8 割以上を占めている。この 傾向はリーダー企業、フォロワー企業ともに共通であり、調達品目の特徴により集中型と半集中型を 組み合わせて活用している。 更には、調達部門が連携をする社内の他部門の数や関係性について傾向を見てみると、年々多様化 するとともに深化している。特に、リーダー企業ほどバリューチェーンの上流工程に位置する部門との連 携を密 接にしている。 価値を生み出す調達のプロセス 調達業務の中でも最も戦略的な要素が高いものが、調達カテゴリー戦略である。調達品目の特徴を 踏まえて、調達カテゴリー戦略を練り上げる必要があり、傾向としては、より多面的な視点での戦略策 定が行われつつある。例えば、これまでの既存サプライヤーとの単なる価格改定交渉だけでなく、新たな サプライヤーを開拓したり、自社の複雑化する仕様を見直したり、戦略的に重要なサプライヤーには経 営レベルでの提案を持ちかけるなどである。このように多面的な視点で策定されるカテゴリー戦 略であ るが、リーダー企業ほど策定に際して活用している検討視点が多様であり、また、標準化されている。
また、サプライヤーとの関係性管理(Supplier Relationship Management, SRM)も戦略的に重要な
プロセスであるが、その重要度は高まり、目的も変化しつつある。かつてのSRMの目的は、サプライヤーに 図1 , 「調達の家」 出所:A.T.カーニー分析 ナレッジ/情報管理 業績管理 人材管理 調達組織と他部門との連携 業務プロセス 管理 調達を支えるインフラ 付加価値創造プロセス 戦略的な方向性 カテゴリー 戦略と 戦略的ソーシング サプライヤー管理 (SRM) 調達戦略
対してコスト削減に関する提案を募ることであったが、現在では、自社の商品力の向上につながる提案を サプライヤーと協働策定することにシフトしつつある。調達部門がオープンイノベーションの窓口になり つつあるようにも見える。 インフラ 幾つかの要素があるが、多くの企業で調達部門の業績を可視化するための取り組みが行われている。業績指 標として、結果に関わる指標だけでなく、活動プロセスに関わる指標も含めて多様な指標が把握されている。 また、これら業績指標を共有する対象が調達部門だけでなく、社内他部門へと広がりを見せている。これは、調 達部門と他部門との連携を促進するため、調達部門が自身の活動を可視化し、他部門の調達部門の活動 への理解度の向上に努めているためである。中でも、調達部門の業績に対して最大の関心を持つのはCFO
であろう。CFOが調達の経営貢献を理解するための指標としてA.T. カーニーはROSMA(Return on Supply Management Asset, 調達の費用対効果指標)(図2)を提唱し、デファクトスタンダードとなりつつある。リー ダー企業のROSMAの平均は7.3であり、フォロワー企業のROSMAの平均4.6を大きく上回る。 人材管理についても特徴的な傾向がある。調達要員に対するスキル要件が多様化している。これまで は、調達に関する技術的なスキル(分析手法や交渉手法)が中心であったが、最近ではリーダーシップス キルが特に強く求められる傾向にある。これはリーダー企業において特に顕著であり、リーダー企業に て調達要員向けに実施している研修にはリーダーシップ関連の科目が多く含まれている。
日本企業への示唆
AEPから見えてきた日本企業の課題はグローバル調達と間接材への取り組みの二つである。グローバ ル調達を推進していくためには、多数の部門や地域との協働が必要であるが、日本企業の多くはカテ ゴリー戦 略を個々のバイヤーが属人的に策定しており、グローバル連携の障害となっている。また、日本 企業の調達部門の調達コストのカバー率は6~7割程度となっており、リーダー企業の9 割に水準に遠 く及ばない。この差分は主に間接材コストと想定される。日本企業の調達部門は伝統的に直接材へ の取り組みを中心に据えており、その他の間接材コストは自らの対象領域と考えていないようである。 㽹㽙
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䟽 䟽 図2
ROSMA©による調達活動の費用対効果評価 出所:A.T.カーニー分析 サプライマネジメント 資産への投下費用 調達活動によってもたらされた 財務的なインパクト 調達部門の活動により生み出された効果と調達部門の運営に関わる費用や投資を比較し、費用対効果の観点から効率性を評価する 構造変革 のための投資 期間費用 追加的効果 ルールの遵守率 調達活動による 成果 調達見直し 活動のスピード 支出カバー率 ●調達機能の基盤整 備や能力向上のた めの投資 ●調達部門の人件費 や外部委託費用な どの期間費用 ●削減成果以外の成 果(ライフタイムコ ストの低減、売上 拡大への貢献) ●新たに獲得され た調達条件への 遵守率 ●調達部門が関与し ている外部支出に 対して調達見直し 活動を行った結果 として得られた削 減果として得られ た削減成果 ●調達部門が関与し ている外部支出に 対する調達見直し 活動の頻度 ●外部支出額の総額 に対して調達部門 が関与している外 部支出の比率次項では、調達のグローバル連携を進める上で、調達カテゴリー戦略の策定のための共通プラットフォ ームとして活用できる「調達戦略のチェスボード」と、間接材コストへの取り組みについて紹介する。
調達戦略のチェスボード
調達戦略のチェスボードは調達カテゴリー戦略を、売り手と買い手の力関係に基づき、体系的に組み立 てるためのA.T. カーニーが提唱する枠組みである。多くの日本企業において、調達カテゴリー戦略はバイヤ ー毎に属人的な手法で策定されてきたが、このような体系的な手法を持ち込むことで、視点の多様化と組織 連携の容易化が可能になる。図3に「調達戦略のチェスボード」を示す。横軸が買い手側の交渉力、縦軸が 売り手側の交渉力で、それぞれ8つに刻んであり、合計で8×8=64通りの調達戦略のアプローチがある。 Figure 1The Chessboard constitutes 64 stand-alone methods
Source: A.T. Kearney analysis
Invention on demand Leverage innovation network Core cost Analyslis Bottleneck management Demand reduction Bundling across product lines Master data management Supplier market intelligence Price benchmark Product benchmark Visible proces organiza-tion Supplier develop-ment Intelligent deal structure Buying consortia Closed loop spend management Bundling across generations Best
shoring Factor costanalysis
Process benchmark Virtual inventory management Collabrative cost reduction Function-ality assessment Specificat-ion assessment Revenue
sharing Strategicalliance
Design
for sourcing teardownProduct
Design for manufac-ture Supplier tiering Sustainab-ility management Project based partnership Value based sourcing Vertical integration Standardi-zation Unbundled prices Valuechain reconfigur-ation Profit sharing Composite benchmark Collaborative capacity management Total life cycle concept Political framework manage-ment Mega supplier strategy Spend transpar-ency Reverse auctions Complexity reduction Vendor managed Inventory Supplier fitness program Cost data
mining RFI/RFPprocess
Total costof ownership Expressive bidding Leverage market imbalances Sourcing community Global Sourcing Cost based price modeling Complia-nce management Supplier consolida-tion Make or buy Cost regression analysis Contract manag-ement Bundling across sites LCC sourcing Linear performance pricing 8 High Low Low High 7 6 5 4 3 2 1 A B C D E F G H Supply power Demand power Procurement outsourcing 図3 調達戦略のチェスボード 出所:A.T.カーニー分析 サ プ ラ イ ヤ ー 交 渉 力 調達側交渉力 高 低 低 高 戦略的提携 付加価値に 基づく サプライヤー 選定 共同コスト削減 取組み 市場不均衡の 活用 アンバンドリング (価格分解) 物価水準分析 線形価格分析 特殊仕様の 見直し 開発購買 (製造効率化) 製造プロセス ベンチマーク (原価推計) 複雑性の低減 (標準化・共通化) 仕様の標準化 支出の 見える化 将来にわたる 調達集約 拠点横断の 集約調達 レベニューシェア 共同在庫管理 (統合SCM) ベンダー 在庫管理 条件提案型入札 (VA活用) リバース オークション ベスト ショアリング (オフショア・ ニアショア) LCC調達 ( Low Cost Country) オープン イノベーション 開発購買 (調達) 契約条件 (取引条件) 最適化 規制・監督官庁 対応 調達 コンソーシアム (プロジェクト ベース) 統合アカウント 取引 (品目横断の ボリューム統合) 包括的 支出管理 取引条件の 可視化・共通化 プロジェクト ベース提携 ライフサイクル 協業 新規 サプライヤー 開拓 TCO最適化 価格 ベンチマーキング コスト 回帰分析 原価積算 製品機能の 見直し 製品分解 調査 他社製品 ベンチマーク コストデータ 分析 マスターデータ 管理 サプライヤー 集約 製品横断の 集約調達 バリューチェーン 再構築 (戦略的内外製 見直) サプライヤー 階層別管理 キャパシティ 共同管理 プロセス 可視化型組織 見積プロセス 整備 サプライヤー 調査 内外製見直し グローバル 調 達 代替技術 の活用・開発 コアコスト分析 (ゼロベース製品 仕様見直し) 垂直統合 ボトルネック 管理 共同調達 コミュニティ 調達 アウトソーシング 調達ルール 整備・徹底 需要抑制 (サプライヤー間) 複合コスト分析 サスティナビリティ マネジメント プロフィットシェア 主要サプライヤー 改善取組み
詳細は拙著をご参照頂くとして、大きく4つの領域における方 向性を解説する。右下が買い手側の交 渉力が強い領域で、競争環境を中心に活用するもの、左上が売り手側の交渉力が強い領域で、売り 手側の交渉力を回避するために買い手側が仕様改善やサプライヤー開拓などを行うもの、右上が買 い手と売り手双方の交渉力が拮抗する領域で、経営レベルの提携などにより両社win-winの関係 を目指すもの、左下は買い手も売り手も交渉力がない領域であり、主として予算枠管理などで対応 されるものである。これらの4つの領域にはより具体的な打ち手レベルで 16のアプローチがある。 調達戦略のチェスボードの意味合いとして、多面的なアプローチを検討する共通プラットフォームとして 活用できることは前述の通りだが、調達部門が調達カテゴリー戦 略においてこれまで取り組んできた 領域と、今後、取り組んでいくべき方 向性も明らかになる。図4に調達戦略のチェスボードにおけるこ Figure 1
The Chessboard constitutes 64 stand-alone methods
Source: A.T. Kearney analysis
Invention on demand Leverage innovation network Core cost Analyslis Bottleneck management Demand reduction Bundling across product lines Master data management Supplier market intelligence Price benchmark Product benchmark Visible proces organiza-tion Supplier develop-ment Intelligent deal structure Buying consortia Closed loop spend management Bundling across generations Best
shoring Factor costanalysis
Process benchmark Virtual inventory management Collabrative cost reduction Function-ality assessment Specificat-ion assessment Revenue
sharing Strategicalliance
Design
for sourcing teardownProduct
Design for manufac-ture Supplier tiering Sustainab-ility management Project based partnership Value based sourcing Vertical integration Standardi-zation Unbundled prices Valuechain reconfigur-ation Profit sharing Composite benchmark Collaborative capacity management Total life cycle concept Political framework manage-ment Mega supplier strategy Spend transpar-ency Reverse auctions Complexity reduction Vendor managed Inventory Supplier fitness program Cost data
mining RFI/RFPprocess
Total costof ownership Expressive bidding Leverage market imbalances Sourcing community Global Sourcing Cost based price modeling Complia-nce management Supplier consolida-tion Make or buy Cost regression analysis Contract manag-ement Bundling across sites LCC sourcing Linear performance pricing 8 High Low Low High 7 6 5 4 3 2 1 A B C D E F G H Supply power Demand power Procurement outsourcing Figure 1
The Chessboard constitutes 64 stand-alone methods
Source: A.T. Kearney analysis
Invention on demand Leverage innovation network Core cost Analyslis Bottleneck management Demand reduction Bundling across product lines Master data management Supplier market intelligence Price benchmark Product benchmark Visible proces organiza-tion Supplier develop-ment Intelligent deal structure Buying consortia Closed loop spend management Bundling across generations Best
shoring Factor costanalysis
Process benchmark Virtual inventory management Collabrative cost reduction Function-ality assessment Specificat-ion assessment Revenue
sharing Strategicalliance
Design
for sourcing teardownProduct
Design for manufac-ture Supplier tiering Sustainab-ility management Project based partnership Value based sourcing Vertical integration Standardi-zation Unbundled prices Valuechain reconfigur-ation Profit sharing Composite benchmark Collaborative capacity management Total life cycle concept Political framework manage-ment Mega supplier strategy Spend transpar-ency Reverse auctions Complexity reduction Vendor managed Inventory Supplier fitness program Cost data
mining RFI/RFPprocess
Total costof ownership Expressive bidding Leverage market imbalances Sourcing community Global Sourcing Cost based price modeling Complia-nce management Supplier consolida-tion Make or buy Cost regression analysis Contract manag-ement Bundling across sites LCC sourcing Linear performance pricing 8 High Low Low High 7 6 5 4 3 2 1 A B C D E F G H Supply power Demand power Procurement outsourcing 図4 調達戦略のチェスボードによる調達活動領域の拡張 出所:A.T.カーニー分析 サ プ ラ イ ヤ ー 交 渉 力 調達側交渉力 高 低 低 高
れまでの取り組み領域と今後の方向性を示す。多くの企業にて調達部門は64あるアプローチの中 の一部である右下の領域を中心に取り組んできたと言える。これからは右上や左上、左下などへ活動 領域を拡大していくことが望まれる。また、買い手の交渉力を更に徹底的に活用する右下への方向 性があることにも留意すべきである。 このように調達戦略のチェスボードは調達戦略を策 定する上で必要となる地域間や部門間の連携を 支える共通プラットフォームとして活用可能であり、また、調達部門の付加価値創造の領域を拡張する ための世界地図としても利用できる。
間接材への取り組み
AEPの調査結果から見えてきた日本企業への二つ目の示唆は間接材コストへの取り組みである。多く の日本企業において調達部門は間接材コストを自らの管理対象と見なしていない。その結果、間接材 コストには大きな改善余地が潜むことになる。 では、間接材コストとは具体的にはどのようなものであるのだろうか。まずは、財務諸表のPLにおけ る販管費のうちの人件費以外のコストが相当する。事務系の消耗品、通信費、旅費、販促関連費、研 究開発経費、IT費用、各種業務委託など多様である。多様であるが故、ユーザーとなる各部門で処理 され、厳格な調達管理が行われにくい。また、販管費以外にも売上原価の中にも間接材コストが含ま れている。製造系の消耗品、各種設備・施設の保守費、物流関連費用、各種業務委託、製造所内常駐 委託先などである。これらの間接材コストをまとめると、一般に総コストの2割程度になる。 間接材への取り組みは、成果までのスピードという点でも注目すべきである。多様な費用が多様な部 門に分散して発 生しているという点で可視化するのにはパワーを要するが、一度、可視化されてしまえ ば、短期間でコスト削減の実現が見込めるものが多い。直接材では品質への要求水準が高く、サプラ イヤーの切り替えなどにも時間を要するが、間接材では汎用的なものを調達している場合が多く、競争 環境を醸成しやすいためである。 既成概念の中で調達部門の管理対象を捉えていると大きな可能性を見逃してしまう。調達部門の関 与の可能性を全ての調達コストにまで広げて考えてみるべきである。調達の変革へ向けて
大いなる潜在力を秘めた調達であるが、その潜在力を活用するためには、調達部門のみの努力だけで は不十分である。冒頭で述べたとおり、バリューチェーンの下流に位置している調達部門が上流に位置 する社内の他部門と連携し、時には牽制を行える環境を整えることが必要である。このためには、経営 陣や経営企画部門のトップダウンでのリーダーシップが必要になる。 但し、トップダウンだけでは企業は変革されない。ボトムアップでの成果の積み上げも必要である。調達部 門の活動や成果の可視化、社内他部門との共有があって、初めて他部門の共感が得られるのである。 このような調達の潜在力に着目した先見的なトップダウンでのリーダーシップと、成果の具体化に徹底 的に拘るボトムアップでの活動の推進が両輪となって調達改革が実現することになる。 グローバル調達と間接材への取り組みの二つが日本企業への示唆であると申し上げたが、これらの 実現のためには経営における調達部門の地位向上が前提となる。これらを踏まえ、調達部門の変革の 大工程の一例を描くとすると、以下のようになる。①まずは、間接材への関与を徐々に広げながら、短 期的な成果を実現、②次に、間接材への関与を更に拡大するとともに、調達部門による経営貢献に 対する社内認知を向上、③そして、調達部門の活動領域拡大に対して経営トップからのサポートや他部門の理解を獲得、④グローバル調達や調達品目の仕様面に対する関与など更なる高度な取り組 みへ着手する。徐々に成功事例を作りながら、大きな変革を目指すものである。
Author Profile
Takeshi Noda 野田 武 (A.T. カーニー パートナー) [email protected] 戦略オペレーションプラクティスで企業変革に取り組む。中長期戦略、組織変 革、事業戦略、マーケティング・営業戦略、サプライチェーン改革、調達改革、 業務改革、グループ経営改革などを支援する。別添:
関連書籍のご案内
『最強の調達戦略~成熟市場の企業収益力を向上させる経営手法~』 野田 武編著/東洋経済新報社刊(定価:2,400円+税)/2014年2月14日発行 本書は、企業活動における調達の重要性を日本企業のグローバル化の 視点を交えて考察した上で、調達戦略の考え方・アプローチを説明した実 践書です。企業の調達部門の方々にとどまらず、サプライチェーン全体 に関わる方、経営企画部門・経営幹部の方までを対象としています。 企業は総コストの内6~7 割程度を外部から調達しており、調達活動は 企業のコスト競争力、収益創出力を考える上で、極めて重要な意味を持 ちます。特に日本においては、少子高齢化に伴い市場が縮小していく 中、従来のように売上成長に重きを置いた戦 略ではなく、コスト側をコ ントロールすることがますます重要になっています。にもかかわらず、 売上確保のための営業活動と比べ、調達活動を戦略的に位置づけて いる企業はまだ少ないのが実情です。本書では、調達業務に関わる費用対効果を評 価する指標「ROSMA(Return on Supply Manage-ment Asset)」や、調達戦略を策定するための支援ツール「調達戦略のチェスボード」など、企業の調達活 動を高度化させるための枠組みを紹介するとともに、具体的な活用方法を説明しています。また、特に 日本企業が 取り組むべき課題であるグローバル調達、間接材コストへの取り組みについても、事例を 交えながら、効果的なアプローチを紹介しています。
別添:
グローバル調達ベンチマーク調査
AEP2014
への参加のご案内
本調査「Assessment of Excellence in Procurement:AEP」は、A.T. カーニーが 20年以上にわた り、グローバルで実施している調達ベンチマーク調査です。 企業の調達活動を2つの枠組みで分析評価し、先進企業の動向とともに、更なる変革に向けた各社の 方向性を提示するもので、今回が8回目です。前回は全世界で700社以上にご参加頂きました。 AEP2014ご参加のメリット ● カスタマイズされたベンチマーク調査結果 業界内、地域内、企業規模、そしてグローバル全体など の様々な視点で御社の調達部門がどのような位置づけにあるのか、一貫した客観的なベンチマーク とともに、調達のエクセレンスを高めるための取り組みへの示唆を提供いたします。 ● CFOのための調達の価値を理解する革新的なツール 調達の費用対効果を把握する指標ROSMA
(Return on Supply Management Assets )はCFOやその他の経営陣に対して調達部門がもたら す経済的な貢献を可視化するものです。
● 競争力の更なる強化 AEP2014の調査結果により、人材や業績管理、先進的な分析手法、リスク回 避、サプライヤーを巻き込んだイノベーションなど調達における新たな潮流を捉えることができます。 ● ネットワークや情報交換の機会提供 世界各地で開催予定のAEPラウンドテーブルにご出席頂けれ ば、AEP2014の結果を踏まえた調達部門の高度化への取り組みについて議論を深めることができま す(日本ではラウンドテーブルではなく、参加企業様への個別フィードバックとさせて頂く予定です)。 ご参加方法 [email protected]までご連絡頂けましたら、日本語版の調査票をPDFファイルで送付致しま す。ご回答をご記入の上、弊社までご返送ください。 なお、ご参加企業に関する情報は機密情報として厳重に扱われます。一般に公開される調査結果は匿名 化の上、統計処理を行うため、参加企業の固有名称が特定されるような記述はございません。
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