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結論 沖縄イメージによるリアリティの構築 (

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(1)結論. 沖縄 イメージ によるリアリティの構築. (1)3 つ のエ ピ ス テ ー メ ーと 海洋博 本論 で は こ こ ま で、 開 発・ 海 洋 博 ・観 光を 軸 に し な が ら 、復帰後 の 沖縄 に お い て、 <青 い海 >< 亜熱帯 >< 文 化> に代 表 さ れ る沖 縄 イメージ が い か に し て 形成 され 、 そ れ が沖 縄 の新 しい 現 実を い か な る形 で構 築 す る こ と に な っ た の か を、 詳細 に 明ら か に し て き た。 具 体的 には 、 第1 部は 沖 縄 振 興 開 発 計 画 と海 洋 博の 関係 、 第2 部は 海洋博 の展 示 内 容 、第 3 部は 沖縄 の 観光 リ ゾ ー ト化 と海 洋 博の 関係 を 問う 作業 であり 、3 部 を通 して 、 海 洋 博が 中 核的 な位 置 を占 め て き た。 こ の う ち第 1部 と 第3 部は 、 海 洋 博と 沖 縄 社 会と の 外的 な関 係 を問 う作 業 で あ っ た の に対 して 、 第2 部は 、 海 洋 博そ の も の を内 在 的に 検討 す る作 業で あ った 。こ れ に よ っ て 、 博 覧 会と い うイ ベ ン ト 文化 に関 し て、 文化 を め ぐ る政 治 と、 文化 の な か の政 治 と い う、 両 方の 側面 を 明ら か に し て き た。 結 論で は、 こ こ ま で の 特 に重 要な 論 点を 整理 し な お すと と も に 、こ の 外 在 的・ 内在的 と い う 両ア プ ロ ー チを 関係 づける 作業 を 行い 、全 体 の総 括と し た い 。 ま ず は、 第 1部 「沖 縄 振 興 開 発 計 画の な か の 海 洋 博」 に 焦点 を当 てよう 。復 帰 後の 沖縄 が、 日本 の <国 土 空 間 >の ナ シ ョ ナ ル な枠 組 みの 中に 包 摂さ れ て い く中 で、 沖 縄 振 興 開 発 . 計画( 以下「 沖振計 」)は大規模 な 推 進 力を 発 揮し た 。この 開発計画 という 知 は 、新全総 の <開 発> の 枠組 み の も と に 、復 帰 後の 沖縄 を 一定方向 に 変容 させ 、 その 空 間 的 リ ア リ テ ィ を新 たに 形 作る 、知 の 権力装置 として 作動 し て い っ た 。 この 事態 を と ら え る た め に 、私 は フーコー の <知 と権 力 の結 び つ き >という 視 点を 応用 し 、彼 のエ ピ ス テ ー メ ー 概念 を活 用 してきた 。 すなわち 、 開発 のエ ピ ス テ ー メ ー 、速 度と 移 動の エ ピ ス テ ー メ ー 、 観光 のエ ピ ス テ ー メ ー と い う、 3 つの エ ピ ス テ ー メ ー である 。 これらの 沖 縄へ の導 入 には 、復 帰 前の 60 年 代〜70 年 代 初 頭 、高 度 成 長 期の 日 本 列 島に お け る< 国 土> と< 国 民> の再 編 が、 歴 史 的 な前 提と な っ て い た 。 開発 ・交 通 ・観 光、 そ れぞれの 知 の潮 流が 、 復 帰 後の 沖 縄に 流れ 込 んでくる 。 すなわち 、 開発 のエ ピ ス テ ー メ ー は全 総〜 新全総 〜列 島 改 造 を う け て、 沖 縄 振 興 開 発 計 画 へ。 交通 の 次元 、速 度 と移 動の エ ピ ス テ ー メ ーは 新 幹 線〜 高 速 道 路 ・ モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン を う け て 、 海 洋 博 道 路・ 国 道 58 号線 と高 速 道 路 ・沖 縄 自 動 車 道 へ 。観 光の 次 元は 海 外 旅 行の 自 由 化 〜デ ィ ス カ バ ー ・ジ ャ パン を う け て、 <青 い 海> の亜 熱 帯リ ゾ ー ト の沖 縄イ メ ー ジ へ、 と い う よ う に で あ る。 そ し て、 これら 3つ の エ ピ ス テ ー メ ー を大 規 模に 立ち 上 げ、 短 期 間 に一 挙に 浸 透させる 起 爆 剤・ パ ラ メ ー タ ー としての 役 割を 果た し たの が、 巨 大イ ベ ン ト で あ る。 こ の潮 流も 同 じように 、 東京 オ リ ン ピ ッ ク〜 大 阪 万 博か ら 、最 大の 復 帰 記 念イ ベ ン ト ・沖 縄 海 洋 博へ と 受け 継が れ る形 で、 沖 縄に 流れ 込 んできた の で あ っ た 。 ところで 、 こ れ ら3 つ のエ ピ ス テ ー メ ーと 巨 大イ ベ ン ト の う ち、 最 も基底的 な 位置 にあ ったのは 、 開発 のエ ピ ス テ ー メ ー で あ る。60 年 代 〜70 年代初頭 の 日本本土 で 進め ら れ た .. . .. . . . .. .. .. .. . のは 、全 総 ・新全総 による <国 土 >の 開 発 主 義 的 統 合 と 、高 度 経 済 成 長 に よ る <国 民> の .. .. . .. 経 済 主 義 的 統 合 で あ っ た。 そ し て 前者 に お い て 62 年の 全総 以来 、 <国 土> の 空間 を対 象 化し て全 体 的な コ ン ト ロ ー ルを 加 えていく 、 開発 のエ ピ ス テ ー メ ー が立 ち上 がった ので あ る。 交通 に お け る速 度 と移 動の エ ピ ス テ ー メ ーと 観光 の エ ピ ス テ ー メ ー は、 あ く ま で こ う 178.

(2) .. . .. .. . した <国 土 開 発 >の 枠 組み に基 づいて 立ち 上 げられた 。 だが 、そ の 際に 非 日 常 的な 仕掛 け .. と し て媒 介 の役 割を 果 たし た の が 、東 京オ リ ン ピ ッ ク と 大阪万博 という 二 大 国 際イ ベ ン ト であった 。 国際 イ ベ ン トの 祝 祭 性 を契 機に し てイ ン フ ラ 整備 の公 共 事 業 を集 中 させ 、大 規 模な 経 済 効 果を 挙げ る と い う お 祭 り型 地 域 開 発の 手法 が 、こ の 時期 に確 立 さ れ たの で あ る 。 た だ し、 東 京オ リ ン ピ ッ ク と大 阪 万 博 に お い て集 約さ れ た< 開発 > は、 単な る 経済効果 には 還元 さ れず 、よ り 多 面 的な 様 相を おび ていた こ と に 注意 し よ う (→1 章 2 節「 東京 オ .. リ ン ピ ッ ク と大 阪 万 博 における < 開発 >の 諸 相 」)。大 阪 万 博 の推 進 者・ 堺 屋 太 一は 、万 博 によって 単 なる 経 済 効 果だ け で な く、 社会 ・ 文 化 的な 効 果が 大き い こ と を強 調 した 。実 際 彼は 万博 を 通じ て、 フ ァ ー ス ト フ ー ド やカ ジ ュ ア ル ウ ェ アな どを 新 たに 普及 させた 。こ れ は日 本に お け る 新た な 産業 ・文 化 ・社 会の < 開発 >で あ り、 脱 工 業 化・ 消 費 社 会の リ ア リ ティ が、 日 本 社 会に 浸 透し て い く プロセス で あっ た。 彼 は万 博を 契 機に <開 発 >概 念そ の も の を組 みかえ 、経 済 から 文化 ・ 社会全体 へ とそ の領 域 を拡 充さ せ た。 そ し て こ う し た 彼 の発 想は 、 海 洋 博と 沖 縄の 観 光 開 発を 直接 推 進す る こ と に も つ な が っていく の で あった 。 一方 、東 京 オ リ ン ピ ッ クと 大 阪 万 博を 契機 に 、こ の二 大 都 市 を つ な ぐ形 で、 新幹線 と高 .. . .. .. 速 道 路が 開 通し た。 それは 当時 の 日本 に お い て、 か つ て な い レ ベ ル での <速 度 >の 開発 で あっ た 。そ し てこ れが 、 ( 開発 の エ ピ ス テ ー メ ー に依 拠 した )速度 と 移動 のエ ピ ス テ ー メ ー の導 入で あ っ た 。さ ら に同時期 の 観光 のエ ピ ス テ ー メ ー の浸 透も 、 オ リ ン ピ ッ ク・ 万博 と 密接 に関 わ っ て い た 。 これらの 国 際イ ベ ン ト を通 して 、 世界 を< 見 る> 欲望 が 、日本人 の .. 身体感覚 の 中に 開発 さ れてくる 。また 国鉄 の「デ ィ ス カ バ ー・ジャパン 」キ ャ ン ペ ー ンは 、 ポ ス ト万 博 対 策 と し て 開始 さ れ た も の で あ っ た。 こ の よ う に 、オ リ ン ピ ッ ク ・ 万博 を通 し ての <開 発 >と は、 経済面 だ け で な く 、よ り 多 面 的な 効 果を も た ら す も の で あ っ た 。 と こ ろ で 、「 デ ィ ス カ バ ー ・ジ ャ パ ン 」に お い て 観光 の エ ピ ス テ ー メ ー は、 美 的 ・ 視覚 的な 次元 で 、< 国土 > の風 景を イ メ ー ジ消 費 の対 象と し て再 編し て い っ た( < 青い 海> の 亜 熱 帯リ ゾ ー ト と し て の沖 縄イ メ ー ジ に最 も 直接 的に つ な が る の は 、こ の流 れ で あ る )。そ の前 提 条 件 と し ては やはり 、< 国 土 開 発> の 再 帰 的な ま な ざ し や 、 航空 ・鉄 道 ・道 路な ど の交 通の 著 しい 発達 がある 。特 に 交通 に関 しては 、速 度 と移動性 の 増大 に よ っ て、 旅行 の 利 便 性・ 快適性 が高 まった 要素 に 加え て、 移動中 の車 内 から パ ノ ラ マ的 に風 景 を ま な ざ す 視覚 の構 図 が浸 透し て いく 要素 も 、同 時に 重 要である 。 こちらは 、 国土空間 が <速 度> の 介入 に よ っ て、 美的 な ま な ざ し の 対象 と な っ て い く側 面 で あ る。 こ う し た利 便 性と 視 覚 性 の両 方の 面 で、 速度 と 移動 のエ ピ ス テ ー メ ー と観 光の エ ピ ス テ ー メ ーは 、や は り密 接に か らま り合 っ て い た。 以上 から 明 ら か なよ う に、 3つ の エ ピ ス テ ー メ ー 、さ ら に巨 大イ ベ ン ト と い う 4つ の次 元は 、互 い に密 接に 関 係し 合い な が ら 、高 度 成 長 期か ら の日 本 列 島 のリ ア リ テ ィを 再 編 制 し て いっ た の で ある 。 そ れ ら の つ な が り方 は 実際 には よ り複線的 だ が、 あ え て 4次 元の 関 係・ 流れ を 図 式 化し て 示すなら 、 次の よ う に な る 。 開発 のエ ピ ス テ ー メ ー →巨 大イ ベ ン ト →速 度 と移 動の エ ピ ス テ ー メ ー └→. └ → 観光 のエ ピ ス テ ー メ ー. 全総 〜新 全 総という 開 発の エ ピ ス テ ー メ ー が 、東 京オ リ ン ピ ッ ク ・ 大阪万博 という 巨大 イベント の 媒介 に よ っ て効果的 に 集約 され 、 新 幹 線・ 高 速 道 路に 代 表される 速 度と 移動 の エ ピ ス テ ー メ ー と、 < 世界 >や < 国土 >を イ メ ー ジ化 し 、美 的・ 視覚的 な対 象 と化 す観 光 179.

(3) のエ ピ ス テ ー メ ーが 大規模 に立 ち 上げられ 、 短 期 間で 一 挙に 浸透 し て い っ た 。 そして 、 こ う し た 4 次 元 の関 係 ・ 流 れの 体 系 は 、(規 模 を 縮 小し な が ら で あ れ ) ほぼそ のままの 形 で、 復 帰 後 の沖 縄 社 会 に持 ち込 まれた 。こ れ こ そ 、当 時 盛ん に言 われた 「本 土 化」 「 国民的 標 準 」を 、現実 化・具 体 化し よ う と す る 様 相の 一つ で あ っ た と 言え よ う 。沖 振 計はその 包括的・全 域 的な 体 系を 現実 に 実施 し て い く際 に 、総合的 な 開発 の起 爆 剤として 、 巨大 イ ベ ン ト・ 海 洋 博 を活 用し た 。イ ン フ ラ を中 心に 、1,800 億円 にも 及ぶ 海 洋 博関連 の 公共事業 が 、沖振計 の 一環 と し て 実施 さ れ た の で あ る 。 そのうち 約 4割 を占 め た の が道 路 整備 であ り 、他 にも 空 港と 港湾 が 巨額 を占 め た。 ま さ に 沖 振 計は 海洋博 の媒 介 によって 、 速度 と移 動 のエ ピ ス テ ー メ ーを 沖 縄に 立ち 上 げた の で あ っ た 。 ま た、 こ う し た交 通 イ ン フ ラ の 導 入 に よ っ て 、 観光 の 道 も ひ ら か れ た の は 当 然 である 。 . . .. .. . .. そ れ は や は り移 動の 利便性 だ け で な く 、美 的 ・視覚的 な 次元 の効 果 において も そう で あ っ た。 <速 度 >の 導入 に よ っ て、 移動中 の車 内 から 風景 を パノラマ 的 にまなざ し て い く視 覚 の 構図 が 、 沖縄 の 空 間を 確 実 に と ら え て い っ た 。 西 海 岸 を 縦断 す る 海 洋 博 道 路・ 国 道 58 号線 の整 備 は、 こ う し た新 たな 視 覚の 構図 を 、明 確に 意 識し て進 め ら れ た。 こ れ こ そ、 観 光の エ ピ ス テ ー メ ー の 作用 で あ る 。道路沿 いには 多数 の 亜 熱 帯 植 物 が植 え込 ま れ、 西 海 岸 の海 とセ ッ トに なっ て 、道 路そ の も の が< 亜熱帯 >と < 海> のテ ー マ パ ー ク へ と化 す。 こ のロ ー ド パ ー ク は、 海洋博 会 場 内 の海 浜 公 園 の演 出と も 重なって 、 会場 の内 部 と外 部が と もに 、< 沖 縄らしさ > のデ ィ ス プ レ イ 装置 として 機能 し てい った のであ る。 そ し て こ れ は、 イ メ ー ジ消 費の 対 象と し て の <国 土空 間 >の 再編 の 一環 で も あ った 。す . .. .. . .. .. な わ ち、 美 的・ 視 覚 的 な次 元で 、 沖縄 が均 質 的・ 抽 象 的 な< 国 土 空 間> の中 に 組み 込ま れ て い くプ ロ セ ス であ る 。そ れ自 体 が あ く ま で 新 全 総の 開 発の エ ピ ス テ ー メ ー の も と で、 第 8ブ ロ ッ ク の「 沖縄 ブ ロ ッ ク」として 、 「日 本 の中 でも 独特 の 個性 を も つ 地域 」と し て枠 づ け ら れ て い くプ ロ セ ス を な し て い た の で あ る 。< 海> と <亜熱帯 > に代 表さ れ る沖 縄イ メ ージ は、 こ う し た中 か ら立 ち上 げられ 、沖 縄 のマ テ リ ア ルな 空間 に 根を 張っ て い く 。し か もそ の営 み は、 海 洋 博 会 場 の内 部 と外 部で 、 同 時 並 行 的 に進 め ら れ つ つ あ っ た 。 こ の よ う に 沖 縄で も 、 3 つの エ ピ ス テ ー メ ー と 巨大 イ ベ ン トは 密 接 に か ら ま り 合 って 、 沖縄 の新 し い現 実を 産 み出 し て い っ た 。沖 振 計という 開 発の エ ピ ス テ ー メ ー を 最た る基 盤 と し て、 か つ海洋博 という 巨大 イ ベ ン トの 媒 介に よ っ て 、速 度と 移 動の エ ピ ス テ ー メ ー と 観光 のエ ピ ス テ ー メ ー が大規模 に 立ち 上げ ら れ、 ( 会期 に間 に 合う よ う に )短 期 間で 一挙 に 浸透 し て い くという 、 高度 成 長 期 の本 土と 同型的 な構 造 が、 小さ な 島 空 間に おいて 劇的 に 展開 さ れ て い っ た。 そ の結 果、 沖 縄の 観光 リ ゾ ー ト化 が 確実 に方 向 づけられ 、 <海 >< 亜 熱帯 >の 沖 縄イ メ ー ジ が根 を張 ってい った 。 し た が っ て 3つ のエ ピ ス テ ー メ ー は、 海 洋 博 を契 機に し て、 復 帰 後 の沖 縄の 現 実を 強力 に 方向 づ け て い く 、知 の 権力装置 として 作動 し たの で あ っ た。 なお こ こ か ら は 、一 見 価 値 中 立 的 で純 粋に 技術的 な も の に思 える イ ン フ ラ整 備 が、 復帰 後の 沖 縄 開 発の 主流 を 占め たこ と の政治的 な 機能 が、あ ら た め て 理 解できる 。交通・水道 ・ エ ネ ル ギ ー ・学 校・ 病 院・ 福 祉 施 設な ど、 イ ン フ ラ( = 生活 ・産 業 の基 盤) という 基 礎 的 で包括的 な 環境 に包 ま れ て い く な か で 、沖 縄 県民 は暗 黙 かつ 自 明 性 のもとに 、 こうした 新 しい 空 間 的 リ ア リ テ ィ への 参与 を 、ほ ぼ無 条 件に 強い ら れ て い く の で あ っ た 。 ところで 、 海 洋 博は こ う し た沖 縄 の空 間 変 容 に対 して 、 単に 関 連 公 共 事 業の 面 で、 間接 180.

(4) 的に 影 響 力 をもった だ けで は な い 。会場外 の こうした 大規模 な関 連 事 業 と並 行 して 、そ の 博 覧 会 空 間 が展 示し 、 体現 した < 海> のイ メ ー ジ 世界 そ の も の が 、 沖縄 の空 間 開 発 の< 未 来> を方 向 づ け る、 縮図的 なモ デ ルとして 機 能し て い た 側面 を、 忘 れ て は な ら な い 。だ か らこ そ第 2 部で は、 海洋博 の内 在 的 分 析を 詳 細に 行っ て き た の で あ っ た 。 第 4 章 5 節「中 間 考 察 : 監 視と ス ペ ク タ ク ル」 で指 摘し た よ う に、 海 洋 博 協 会 の会場計 画委員会 は 、会 場の 空 間 構 成の あ り方 が、 以 後の 沖縄 の 都市開発 ・ リゾート 開 発の モ デ ル と な る べ き こ と を明 言 していた 。 その 委 員 会 の基 本 方 針 が表 明し て い た のは 、 本部半島 の 美し い< 海 =自 然> を 最 大 限に 活 用し て、 そこに <人 間 >を 調和 させる よ う な 形で 、合 理 的に 空間 を コ ン ト ロ ー ルし て い こ う と す る 思 想で あ っ た 。そ の際 に 、造 園・ 交 通・ 建築 ・ 照明 など 、 最新 の環 境 創 出 型テ ク ノ ロ ジ ー を 動員 して 、 <自 然ら し さ> <沖 縄 ら し さ> < 亜 熱 帯ら し さ> を、 視覚的 に演 出 して いく 。 こ れ に よ っ て彼 らは 、 <自 然− 人 間− テ ク ノ ロ ジ ー− 空 間− 未来 > の包括的 な 管理 を実 現 しようと し て い た。 こ の た め に 、 会場 のス ペ クタクル の 空間 には 、 同時 に徹 底 した 監視 の ま な ざ し が 貫か れて い た。 そ し て こ う し た 理 念は 、会 期 中の 会 場 内 で完 結す る よ り は む し ろ、 <海 > と< 亜 熱 帯 >の リ ゾ ー トと し て の 沖縄 そのも の の <未 来 >を 、先 取 り的 に博 覧 会 空 間に 具現化 し て い た の であ っ た。 こうした < 自然 ら し さ >< 沖縄 らしさ >< 亜熱帯 ら し さ >が 、あ く ま で 人 工 的 に創 り出 され たイ メ ー ジ で あ る こ と は、 言 う ま で も な い。 だ が こ のイ メ ー ジ は、 造園 や 建築 な ど の 環 境 創 出 型 テ ク ノ ロ ジ ーに よ っ て 物 質 的な 形 態を 与え ら れ、 現実 の 沖縄 の空 間 にも 根を 張 っていく の で あ っ た 。海や 亜 熱 帯 の< 自然 > は、いまや 完全 に <人 工> と の脱‑ 分化 を と げ よ う と し て い た 。こ う し て 、海 洋 リゾート と し て の方 向 づ け を与 え ら れ た沖 縄 の空 間そ の も の が、 海洋博 の理 念 空 間 をモ デ ルと す る よ う な 形で 、 <海 >と < 亜 熱 帯> の テ ー マ パ ー クへ とつ く り か え ら れ て い く。 しかも 、こ う し た 風景 の ス ペ ク タ ク ル化 は、 沖 縄イ メ ー ジ と環 境 創 出 型テ ク ノ ロ ジ ー によ っ て、 視覚 的 ・美 的な 次 元で 、沖 縄 の空 間 管 理 を一 定 方 向 へと 進め て い く 営み で も あ る の だ っ た 。 「 観光沖縄 」を め ぐ っ て 、ス ペ ク タ ク ル と監 視と い う、 二つ の ま な ざ し の 形態 が一 体 となって 、 沖縄 の空 間 に浸 透し て い く 。 こうした ま な ざ しの 内在化 によ っ て、 <沖 縄 >は 明ら か に、 一定 の 特徴 づ け や 方向 づけ を与 え ら れ た。 その 点 で重 要な 一契機 と な っ た の が、 復 帰 直 前、 琉 球 政 府の 長 期 経 済 開 発 計画 にお け る、 公 式 的 な形 での < 沖縄 >の 自 己 定 義で あ っ た 。こ れ は、 以後 の 沖縄 イ メ ー ジの 基礎 に も な る。 長 期 経 済 開 発 計 画 は、 地 理・ 自然 ・ 人材 ・労 働 力・ 国 際 性 ・文 化・ 台 風・ 離島 と い っ た沖 縄 の諸特性 を 、あ く ま で 「開 発 資 源 」や 「開 発 必 要 性」 の 観点 から 、 再 帰 的に と ら え て い っ た。 こ れ を 基礎 にし て 復 帰 後、 新全総 の中 に 沖縄 ブ ロ ッ クが 新た に 創設 され 、 <日 本の 最南端 >< 広 大な 海域 > <亜熱帯 > など 、「日 本の 中 でも 独特 な 地域 」 としての 差異化 ・個 性 化が 図ら れ たの で あ っ た。 た だ し実 際 には 、長 期 経 済 開 発 計 画の 自 己 定 義じ た い が す で に、 本 土 政 府に よ る新全総 の< 国 土 開 発> の ま な ざ し を内 部 に取 り込 み 、そ の影 響 下で <沖 縄 >の 自 己 像 を作 り上 げ て い た の で あ っ た。 それは 決し て 純粋 な「 県 民」 の ま な ざ し で は あ り え なか っ たが 、そ れ が「 県民 」 の「 主 体 性 」を 表明 し て い た時 点 で、 ナ シ ョ ナ ル な枠 組 み へ の包 摂 はすでに 進 行し て い た 。地 理 的 位 置や 気 候、 「 県 民 気 質 」と い っ た 一見「 も と か ら あ る 」自 明 な領 域が 、 <資 源> として 活用 さ れ、 新 全 総 の< 開発 > のフ レ ー ム に は め込 ま れ て いく 。 <海 >< 亜 熱帯 >< 文 化> に代 表 さ れ る沖 縄 イメージ は 、こ う し た 開発 のエ ピ ス テ ー メ ー に基 礎づ け 181.

(5) ら れ な が ら 、復帰後 の 沖縄 の新 し い現 実を 形 づ く っ て い く の で あ っ た。 (2)観 光 リゾート 化 と沖 縄イ メ ー ジ さて 今度 は 、第 7章 で 扱っ た、70 年 代沖 縄 の観 光リ ゾ ー ト 化の プ ロ セ スに 再 び焦 点を 当 て、 こ れ を 第2 部の 海洋博 の内 在 的 分 析と 重 ね合 わせ て み よ う。 こ の作 業に よ っ て 、会 場 内の スペ ク タ ク ルと 、 会 場 外・ 沖 縄の 観光 リ ゾ ー ト化 を 関係 づ け て 理解 し、 復帰後 の観 光 リゾート 化 と沖 縄イ メ ー ジ の誕 生 のプ ロ セ ス をあ ら た め て整 理す る こ と が で き る。 第7章の冒頭にグラフで示した入域旅客数と観光収入の推移を見れば、沖縄は順調に 「観 光 立 県」の 道を 進ん で き た よ う に 思え る。し か し、そ の内 実は 決 して 一 筋 縄 ではなく 、 様々 なア ク タ ー た ち の 複雑 な利 害 や思 惑、 し が ら み が 介 在し た た め 、観 光 開 発 の道 す じ は 紆余曲折 を 重ね てき た のであっ た 。 そ の な か で、 こ の時 期の 観 光 開 発に 全体的 な方 向 づ け を与 え て い たパ ラ メ ー タ ー は、 や はり 海 洋 博 であった 。 海 洋 博を 契 機にして 、 諸々 のア ク タ ー が沖 縄 の観 光・ レ ジ ャ ーに ま なざしを 向 け始 め る と と も に、 < 海> <亜 熱 帯> <文 化 >と い っ た 沖縄 イ メ ー ジも 、人 為 的・ 体 系 的 に構 築さ れ て い くの で あ っ た。 もっとも 、こ う し た 沖縄 イ メ ー ジは 、す で に海 洋 博 誘 致の 前か ら 積 極 的に 求 め ら れ、 そ の萌 芽が 構 想さ れて も いた 。復 帰 前の 60 年 代の 時点 で 、沖 縄は すでに 、ゆ る や か か つ 確 実な 観光 ブーム を迎 え て い た。 当 時沖 縄観 光 の主 流を 占 め て い た の は、 沖 縄 戦 の遺 族を 中 心とする 戦 跡 参 拝と 、 舶 来 品シ ョ ッ ピ ン グ で あ っ た。 こ れ ら は、 沖縄戦 お よ び 米 軍 統 治 下 のド ル経 済 圏という 、 コ ロ ニ ア ル で外生的 な 要因 から 発 する 、「 自 然 発 生 的 」 な も の で あ った 。沖 縄 の観 光 関 係 者たちは 、 これらと 自 然の 海の 美 し さ だ け で はいずれ 観光客 を引 き つ け ら れ な く な る と 考 え、 脱・ 自 然 発 生 的 観 光を 図り 、 より 能 動 的 ・人工的 に 観光開発 を 進め て い く 意志 を強 め ていった の で あ る。 こうした 観 光 開 発へ の 再 帰 性の 高 ま り は、 沖縄 イ メ ー ジに 対す る 再 帰 性の 高 ま り で も あ る。 以後 の 沖縄 イ メ ー ジの 萌芽 が 芽生 え る の は、 この 文 脈からで あった 。彼 ら は「 日本 の ハ ワ イ」 と い っ た明 る いイ メ ー ジ を売 り出 す こ と に よ っ て、 「戦 争 の悲 惨さ 」 と い う沖 縄 に根 強く 貼 り付 いた イ メ ー ジを 切 り替 え よ う と し て い た 。これは 、 <戦 争の 沖 縄> と い う 側面 を相 対 化し 、新 た に< 沖縄 > の自 己 定 義 を行 う作 業 で も あ っ た 。そ し て こ の自 己 定 義 は、 そ う し た美 的な イ メ ー ジの 活 用に よ っ て 、沖 縄の 新 しい 現実 を 構築 し て い こ う と す る 営み で も あ っ た 。 「日 本の ハワイ 」という 自 己 定 義は 、「 日 本の な か の 沖縄 」と い うナ シ ョ ナ ルな 枠組 み と、 「太 平 洋に 開か れ た沖 縄」 という 国 際 性 のイ メ ー ジ を、 節合 さ せ て い る 。 この 方向 づ けは 、第 1 部で 見た 新全総 〜沖 振 計の 視点 や 、第 2部 の 海 洋 博に お け る 政 府 出 展・ 海 洋 文 化館 の視 点 と も ち ょ う ど重 なっ て 、い っ そ う 強化 さ れ て い く 。こ こ か ら 、「 日 本の 中で も 独特 な南 の 亜 熱 帯 地 域 」として 、 <亜熱帯 > イメージ が 強調 さ れ て く る 。< 亜熱帯 >イ メ ージ は、 < 海> のイ メ ー ジ と結 び つき な が ら 、沖 縄の 空間的 リ ア リ テ ィ を形 作 っていく 。 また 観 光 関 係 者 た ち は、 ハワイ をモ デ ルと し な が ら、 沖縄観光 に 欠落 し、 開 発すべき も のを 列挙 してい った 。 土 産 品・ 料 理・ 植樹 ・ 舞踊 ・県 産 服・ 人情 な ど で あ る 。 これらは 今 日の 沖 縄 観 光で は確 立 さ れ てい る も の ば か り だ が 、60 年代末 の時 点 では まだ < 観光資源 > と し て充 分 に開 発さ れ て は お ら ず 、「 自 然 発 生 的 」な ま ま に と ど ま っ て い た 。 だが 、こ こ 182.

(6) から 彼ら が 観光 の ま な ざ し を向 けてい く こ と に よ っ て 、 これらは 決定的 な象 徴 的 変 容を と げていく 。 特に 、伝 統 工 芸 や琉 舞 ・エ イ サ ー 、沖 縄 料 理 など 、沖 縄 固 有 の文 化 が< 観 光 資 源> と し て 再 帰 的に と ら え ら れ る と き 、こ れ ら< 文化 > は、 観光 沖 縄の イ メ ー ジの 一領 域 と し て確 立 し て い く の で あ っ た 。 また 、平 和 公 園 建 設 に よ っ て< 平 和> も、 観 光 客 向け に テ ー マ化 さ れ、 沖縄 イ メ ー ジの 一 端を な し て い く の で あ っ た 。 こうして 69 年ご ろ に出 て き た <海 >< 亜熱帯 >< 文 化> <平 和 >と い っ た 一連 のテ ー マは 、60 年代 の 自 然 発 生 的 観 光 に は な か っ た明 確な コ ン セ プ ト であり 、実際 に 以後 の沖 縄 の観 光 開 発 を方 向づ け る、 重要 な 機能 を担 っ て い く。 そ の意 味で は 、海 洋 博 誘 致の 前に 、 す で に沖 縄 イメージ の 下地 は形 成 され つ つ あ っ た と言 えよう 。 とはいえ 、こ う し た 沖縄 イ メ ー ジが 公式的 ・体系的 に 具 現 化さ れ る の は、 やはり 海 洋 博 や そ の関 連 開 発 を通 し てで あ っ た 。国 際海 洋 博という グ ロ ー バ ル / ナ シ ョ ナ ル な祝 祭の 場 で表 出/ 上 演さ れ、 不 特 定 多 数 の 観客 を視 覚 的に 魅了 す るこ とを 通 して 、< 海 >< 亜 熱 帯 >< 文化 > の沖 縄イ メ ー ジ は正 当 性を 付与 さ れ、 現 実 的 な効 力を お び て いく の で あった 。 また 、県 内 関 係 者たちが 観 光 開 発を 進 めていく 際 に最 大の 障 壁と な っ て い た の は 、莫 大 な資 金の 問 題で あ っ た 。これも 、 海 洋 博を 契 機とした 政 府の 公 共 事 業と 本 土 企 業の 進出 に よ っ て、 一 定の 形で クリア さ れ て いく 。し か し そ れ は 同 時に 、沖 縄 の観 光 開 発 の方 向づ け において 、 政府 と本 土 企 業 が海 洋 博を 通し て 、主導権 を 握っ て い く プロセス で も あった 。 こうして 70 年以 後 、沖 縄を め ぐ る 観光 の エ ピ ス テ ー メ ー は大 き く変 容し て 、海洋博 の 枠組 みの 中 へと 包摂 さ れ て い く 。 こ こ で重 要 なの は、 ① 海 洋 博の 会 場 内 部の ス ペ ク タ ク ル の世 界と 、 ②会 場 外 部 の沖 縄の 観 光リ ゾ ー ト 化が 、パ ラ レ ル な形 で 進行 しな が ら、 互い に 連動 し合 っ て い たこ と で あ る。 ①に つ い て は、 第2 部「 沖 縄海洋博 の 内 在 的 分 析」 で 詳細 に検 討 してきた 。 会 場 地に 選 定された 本 部 半 島の 海 と島 々は 、 自然 の風 景 がそ の ま ま 国際 博 覧 会 の展 示の 一 部として 活 用された こ と に よ っ て 、< 青い 海 >の 美的 な イメージ と 化し 、展 示 的 価 値を 高 め ら れ る と いう 、決 定 的な 象 徴 的 変 容 を と げ た。 そ し て 実は 、本 部 半 島 のこ の 変容 、こ の 観光 の ま な ざ し の浸 透 は、 ②沖 縄 全域 の観 光 リゾート 化 の、 第 一 段 階を な す も の で あ っ た 。ま さ に こ の会 場 空 間 を基 点と し て、 こ こ か ら本 部 半 島 全域 へ、 本 島 北 部へ 、 そ し てさ ら に離 島を 含 む沖 縄 全 域 へと 、リ ゾ ー ト ゾ ー ン は拡 散し て い く 。沖 縄 の< 海> が ビ ジ ュ ア ル な資 源と し て活 用さ れ 、イ メ ー ジ 化さ れ て い くプ ロ セ ス で あ る。 第 3 章 1 節で 万 国 博 覧 会 の歴 史 を振 り返 っ た際 に述 べ た よ う に 、万博 は最 新 のテ ク ノ ロ ジー の活 用 によって 視覚的 なス ペ ク タ ク ル の 空間 を演 出 し、 <未 来 >イ メ ー ジ を空間的 に 体現 して き た。 海 洋 博 の場 合は 、 本部 の海 や 伊 江 島の 風 景そ の も の が、 <海 > のス ペ ク タ クル の演 出 装 置 と し て 機能 し、 < 海> のリ ゾ ー ト と し て の沖 縄の < 未来 >を 空間的 ・視 覚 的に 具 現 化 し、 沖 縄 全 体の 縮 図 的 なモデル として 役割 を 果た す こ と に な っ た わ け である 。 と こ ろ で 、 本 部 半 島 を 会場地 に 導 き、 リ ゾ ー ト開 発 の 拠 点と し て 位 置づ け た 立役者 は 、 海 洋 博の マ ス タ ー プ ラ ンを 作成 し た三 井 物 産 であった 。 三井 を は じ め、 総 合 商 社を 中心 と する 巨 大 企 業グ ル ー プ は、 海 洋 博 を契 機に 、 海洋 レ ジ ャ ーによる 沖 縄 進 出を 図 っていた 。 各グ ル ー プ のパ ビ リ オ ンは 、最 新 の映 像 技 術 を駆 使し て <海 >の イ メ ー ジ世 界 を演 出し 、 観客 にリ ア ルな 空間 体 験を 提供 し て い た 。これは 、政 府 出 展の ア ク ア ポ リ スも 同 様で ある 。 これらも 本 部の 海と 同 様、 <海 > の沖 縄イ メ ー ジ や海 洋 レジャー の <未 来> を 、パ ビ リ オ 183.

(7) ン展 示に お い て 先取 り 的か つ祝 祭 的に 具 現 化 し て い た の で あ っ た 。 また 、こ う し た ス ペ ク タ ク ルを 通 して 本 土 企 業や 政府 は 、自 らの 海 洋 開 発・ 海 洋レ ジ ャ ー 開発 の< 未 来> を、 正 当化 し よ う と も し て い た の で あ る 。 以上 の① 会 場 内 部の ス ペ ク タ ク ル と並 行し て、 ② 会場外部 の 周辺地域 で は、 本部半島 リ ゾ ー ト ゾ ー ン計 画が 、 官民合同 の 第3 セ ク タ ー方 式で 立 ち上 げ ら れ よ う と し て い た 。海 洋 博は 三井 の プ ラ ンを 通 して 、沖 縄 本 島 北 部 の 長 期 的な リ ゾ ー トゾ ー ンの 開発 と 連動 さ せ ら れ よ う と し て い た の で あ る 。こ の 第3 セ ク タ ーは 、日 本 政 府 の全 体 的 統 括の も と に 、沖 縄 県と 地元市 町 村 が中 心 に開 発 公 社 を設 立し 、そ こ に 民間企業 が 出資協力 す る方 式で あ っ た 。 つ ま り企 業 グループ は、 海洋博 の会 場 内 部 と外 部 の両 方で 、海 洋 リゾート と し て の沖 縄 の方 向づ け に深 く関 わ っ て い た 。 彼ら は、 誘 致 段 階か ら 海 洋 博に 深 く関 わり 込 むことを 通 して 、「 公共性 」を 味 方につけ て い っ たの で あ る 。そ の 結実 と し て の会 場パ ビ リ オ ンは 、 「公共性 」を身 に ま と っ た 、企業 の巨 大 な広告塔 で も あ っ た 。一方 、日本政府 と 沖 縄 県は 、 こうした 企 業グ ル ー プ の資金力 や ノウハウ を 期待 して 、第3 セ ク タ ーに 取 り込 ん で いった 。 政府 、県 、 民間企業 グ ル ー プ。 第 3セ ク タ ー を構 成す る こ れ ら の ア ク タ ーは い み じくも 、 海 洋 博に お け る パ ビ リ オ ン 出展 の 主体 で も あ り、 会 場 内 外で 同 型 的 な関 係の 構 図が 成立 し て い る。 彼 らは 会 場 内 でも 会 場 外 でも 、復 帰 後の 沖 縄 社 会の 現実 を 、一 定の 方 向に 進ま せ よ う と し て い た 。彼 ら は互 いに 権 力を 分散 さ せ な が ら 連 関し 合っ て 、沖 縄の 空 間と 経済 を 海洋 リ ゾ ー ト化 の方 向 へコ ン ト ロ ー ル し て い く、 多 元 的 ヘ ゲ モ ニ ー を確 立し よ う と し て い たの で あ る 。し か も こ う し たア ク タ ー た ち の 活動 は、 海洋博 に お け る圧倒的 な ス ペ ク タ ク ルに よ っ て 、不 特 定 多 数の 観客 を 視 覚 的に 楽 しませる こ とを 通じ て 、暗 黙の う ち に 正 当 性 を獲 得し て い く 仕組 み に な っ て い た の だ っ た 。 こ の よ う に、 ① 会場内部 の ス ペ ク タ ク ルと ②会 場 周辺 のリ ゾ ー ト 開発 は、 そ れ ぞ れパ ラ レル に進 行 し な が ら も 、密 接に 連 動し 合っ て い た 。そ し て実 際、 リ ゾ ー ト ゾ ー ン計 画を 具 体的 に練 り 上げ た余 暇 開 発 セ ン タ ーの 思想 は 、ビーチ や 地形 な ど の <自 然> を 人 工 的に 造 りかえて 、 自 己 準 拠 的 な< 海> の テ ー マ パ ー クを 創出 す る志向性 を も っ て い た 。これは 、 自 己 完 結 的 なイ メ ー ジ に準 拠し た 海 洋 博の 会 場 世 界と 似 て い る。 < 海> のテ ー マ パ ー ク 、 あるいは < 海> の博 覧 会 空 間は 、 会 場 内で 完 結す る の で な く 、本 部 半 島 全 域 にまで 広げ ら れようとしていたのである 。 し か し当 然 な が ら、 会 場 外 の博 覧 会 空 間の 方が 、現 実 には 実 現 困 難であり 、 会 場 内の 自 己完結的 な ス ペ ク タ ク ルの 世界 と は同 じ よ う に い か な い 。リ ゾー ト ゾ ー ン計 画 の第 3セ ク ター 方式 は 、県 の 革新与党 に 反対 さ れ て 頓挫 した 。73 年 、海洋博 や 本土企業 の 土 地 買い 占 めに 対す る 県内 の批 判 世 論 は、 最高潮 に達 し て い た。 第 3セ ク タ ー 方式 のリ ゾ ー ト 開発 に も飛 び火 す る の は、 必然的 で あ っ た。 海 洋 博を 通 して 、本 土 政 府 や本 土 企 業 が沖 縄 開 発 の主導権 を 握っ て い く 中で 、県 内で は 海 洋 博・ 政 府・ 本 土 企 業へ の不 信 が著 しく 高 ま っ て い っ た。 そ れ は 直 接 的に は 、公 共 事 業 に よ る環 境 破 壊 や、 本 土 企 業に よ る土地買 い 占め が、 深 刻な 社 会 問 題と し て と ら え ら れ て い っ た か ら で あ る。 こ の状 況に 対 して 、「 県 」や 「県 民 」が <主 体 性> <主 導 権> を発 揮 すべきだ 、 と い う意 識 が高 ま っ て く る 。そ し てこれは 、 沖縄 イ メ ー ジに と っ て のも う一 つ の 重要 な 契 機と な る 。 この 意 識 は具 体 的 に、「 沖 縄 の 文化 と 自 然を 守 る 十 人 委 員 会」 (→6 章 2 節(4) )の活 動な ど に表 れてくる 。他 方、海洋博 の会 場 出 展 に お い て も こ う し た意 識は 、 184.

(8) 沖 縄 県 出 展 の沖縄館 へ と結 実す る の で あ っ た 。 .. . .. .. . . こ の よ う に、会 場 内 外で 並行 し て 、県・県 民 の< 主 体 性 >へ の意 志 が立 ち上 が る中 から 、 沖縄固有 の <文 化> が 、コ ミ ッ ト す べ き テ ー マと し て明 確に 意 識さ れ て く る。< 文化 >は 、 政府 や本 土 企 業 が海 洋 博に お い て 表出 した < 海> や< 亜熱帯 >の イ メ ー ジに 、 沖縄 が還 元 さ れ て し ま う こ と へ の 違 和 感か ら 、そ れ ら に 対抗 する 形 で立 ち上 がって きた の で あ り、 そ れは オ ー セ ン テ ィ ッ ク な< 沖縄 > を志 向す る 点で 、県 民 のア イ デ ン テ ィ テ ィ の 感覚 と密 接 に関 わって い た 。そ う して <沖 縄 文化 >は 、 沖 縄 館に お い て 、か つ て な い規 模 で体系化 ・ 言 説 化・ 視覚化 され ていっ た。 し た が っ て、 < 海> <亜 熱 帯> <文 化 >に 代表 される 沖縄 イ メ ー ジは 、こ う し た 特定 の 歴 史 的コ ン テ ク ス ト と 、諸 々の ア ク タ ー間 の 相互作用 の な か か ら 、 形成 さ れ て き た の で あ った 。そ し て繰 り返 し に な る が 、 その 決 定 的 なパ ラ メ ー タ ー と な っ て い た の は 、やはり 海 洋博 で あ っ た。 ところで 沖縄館 は、 沖縄 の <歴 史> < 文化 >を 新 たに 構築 し、 さ ら に は< 沖 縄> の自 己 像・ 自 己 定 義を 新た に 構築 して 、 公 式 的に 表 出す る側 面 を も っ て い た。 博 覧 会 における 公 表の 効果 は 、「 沖縄 の 人」 の機 転 ・た く ま し さ・ 国 際 性 ・オ プ テ ィ ミ ズ ムと い っ た 「沖 縄 的 性 格」 や 、シ ー サ ー ・三 線な ど のシ ン ボ ル に、 沖縄 イ メ ー ジと し て の 正 当 性 を新 たに 付 与し た こ と であった 。 そしてこ れらは 、全 国 ・海 外か ら の不 特 定 多 数の 観客 に 向け て< 沖 縄> を発 信 する 体裁 を と っ て い る が、 む し ろ 県民 自身 に 対し て、 自 己イ メ ー ジ と し ての 現 実的 な影 響 力を も っ て は た ら き か け て く る も の で も あ っ た。 そ し て、 沖縄 イ メ ー ジが 県 民 自 身に 対 して は た ら き か け る 作 用は 、ポスト 海洋博 と し て の沖 縄キ ャ ン ペ ー ン に も受 け継 が れ て い っ た 。沖 縄キ ャ ン ペ ー ン は 単に 、県 外 の観光客 に 向け て行 わ れ る だ け で は な く、 実 は同 時に 、 県民 に対 し て も は た ら き か けて く るも の で あ った 。 だが 、沖縄館 か ら沖 縄キ ャ ン ペ ー ン へ 移行 する 際 には 、沖 縄イ メ ー ジ を め ぐ る重 要な 変 容も 生じ て い た 。そ れ は、 海 洋 博 の会 期 直 後 の反 動 不 況 を経 て、 挙 県 一 致 的 な 「沖 縄を 売 る」 キ ャ ン ペ ー ン的 リ ア リ テ ィ が 浸透 し て い く中 で生 じ て い た変 化 で あ る。 そ こ で は、 観 光 振 興に 適合的 な明 る い< 沖縄 > イメージ が 、現 実の < 県民 >を 構 築し て い く よ う な、 現 実・歴 史準 拠か ら イメージ 準 拠へ の移 行 が、より い っ そ う進 行 して いた の で あ る 。77 年か らの 本 格 的 な航 空 会 社 の沖 縄キ ャ ン ペ ー ン は 、これを 強 力に 推進 し て い っ た 。 こ の な か で <文 化> も 、沖縄館 に は含 ま れ て い た 批判 意 識の 側面 を は ぎ と ら れ 、< 海> < 亜 熱 帯> を 補足 するよ う な 予 定 調 和 的 な沖 縄 イメージ として 、観 光 客に 向け て 積 極 的に ア ピ ー ルさ れ るようになっていく のであった 。 海 洋 博か ら 沖縄 キ ャ ン ペ ー ンへ と 連な る沖 縄 の観 光リ ゾ ー ト 化の プ ロ セ スは 、< 海> < 亜 熱 帯> < 文化 >に 代 表される 沖 縄イ メ ー ジ を、 完全 に 確立 さ せ た 。イ メ ー ジ 準拠 のリ ア リ テ ィは 、 沖縄 の産 業 連 関 全 体 の な か で も 広 がり 始め 、 美的 な沖 縄 イメージ を 活用 した 商 品や サ ー ビ スが 、次 々に 登 場し て い く 。いまや 沖 縄イ メ ー ジは 、観光立県・沖 縄 の経済的 ・ 文 化 的な リ ア リ テ ィ を 構築 する 、 現 実 的な 効 力を も つ に 至っ た の で あ る 。 (3)今 後 の展 望 本論 は、 主に 70 年 代の 沖縄 に 焦点 を当 て 、復 帰 直 後 の観 光リ ゾ ー ト 化と 沖 縄イ メ ー ジ 185.

(9) の誕 生の プ ロ セ スを 明 ら か に し て き た 。80 年代以降 の 動向・変容 に つ い て は 、本論 で得 ら れた 知見 を 動員 し な が ら、 さ ら な る検 討を 続 けていく 必 要がある 。 また 、沖 縄 の中 でも 、 より 細か く 地域 ご と に 見ていく 作 業も 重要 となる だ ろ う 。特 に、 宮 古・ 八重 山 を は じ め と する 離 島 地 域の リ ア リ テ ィ は、 本 島と は か な り異 質で あ る た め、 そ れら の復 帰 後の 変容 プ ロ セ スを 見 て い く こ と に よ っ て も 、ま た新 た な様 相を 見 出す こ と が で き る だ ろ う。 また 本論 は、 全 く新 しい 視 点からの 沖 縄 研 究・ 沖縄 イ メ ー ジ研 究 の試 み で あ り、 多く の 沖 縄 研 究 者 に本 論の 知 見を 少し で も活 用し て も ら え れ ば 、誠 に幸 い で あ る。 沖 縄を め ぐ る 多様 な研 究 領 域 の さ ら な る 前進 に 、本 論が 少 し で も貢 献 で き る こ と を願 う。 同時 に、 こ こ ま で読 み進 め て こ ら れ た 方に は す で に お わ か り と思 うが 、本 論 は単 なる 地 域社会論 と し て の沖 縄 研 究 の枠 内 に収 まる も の で は な く 、開 発・ 博覧会 ・観 光 を3 つの 軸 に し て、 < 沖縄 >を イ メ ー ジと 空 間の 観点 か ら と ら え て き た 。本 論 で得 ら れ た 視座 と知 見 は今 後、 博 覧 会 研 究 ・ 開発 論・ 観 光論 は も ち ろ ん の こ と 、メ デ ィ ア 論や カ ル チ ュ ラ ル・ ス タ デ ィ ー ズ 、空間論 ・ 都 市 論・ 交通論 ・テ ー マ パ ー ク ・ シ ョ ッ ピ ン グ モ ー ル ・ カ フ ェ・ ス ポ ー ツ イ ベ ン ト ・地 域 イメージ ・ 地域 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、さ ら に は よ り 一 般 的 な社 会 理 論 に至 る ま で 、様 々な 研 究へ の展 開 が可 能な は ず で あ る 。 さ し あ た り 一つ の具 体 例を 示し て お く な ら 、2005 年に は愛 知 万 博 の開 催が 予 定さ れて お り、 こ れ と セ ッ トで 、 中 部 国 際 空 港の 建設 が 進め ら れ て い る 。こ こ に も 開発 の エ ピ ス テ ー メー ・速 度 と移 動の エ ピ ス テ ー メ ー・ 観光 の エ ピ ス テ ー メ ー 、そ し て巨 大 国 際 イベント と いう 、本 論 と同型的 な 構図 が あ る 。こ の愛 知 万 博 が、 現 在の 日本 の リ ア リ テ ィ に い か な る 方向 づ け を 与え よ う と し て い る の か、その 社 会 学 的研 究は 急 を要 す る だ ろ う 。ま た 、1970 年の 大 阪 万 博以 降、75 年の 沖 縄 海 洋 博、81 年 の神 戸ポ ー ト ピ ア博、85 年 の つ く ば科学博 、 90 年の 大 阪 花 博、そ し て 2005 年の 愛 知 万 博に 至る ま で の 博 覧 会 の時 系 列 的 な変 遷を 、70 年代以降 の 日本 のリ ア リ テ ィ変 容 と関 連づ け な が ら分 析 していく 作 業も 、非 常 に興味深 い . . .. .. . . .. . .. .. . 仕事 と な る だ ろ う。 こ れ に よ っ て ま た 、文 化 のなかの 政 治 と 文化 を め ぐ る政 治 の両 方を 、 互い に関 連 づ け な が ら 浮き 彫り に し て い く こ と が で き る は ず で あ る 。. 186.

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参照

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