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理学療法科学 23(3): ,2008 原著 地域在住高齢者における転倒恐怖感に関連する因子 Factors of Fear of Falling among the Community Dwelling Elderly 1) 村上泰子 2) 柴喜崇 3) 渡辺修一郎 大渕修一 4) 5

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(1)

地域在住高齢者における転倒恐怖感に関連する因子

Factors of Fear of Falling among the Community Dwelling Elderly

村上 泰子

1)

  柴 喜崇

2)

  渡辺修一郎

3)

 

大渕

修一

4)

  稲葉

康子

5)

 

YASUKO MURAKAMI, RPT1), YOSHITAKA SHIBA, RPT, PhD2) ,SHUICHIRO WATANABE, MD, PhD3),

SHUICHI OBUCHI, RPT, PhD4), YASUKO INABA, RPT, MS5)

1) Department of Gerontology, J. F. Oberlin University: 3758 Tokiwa-cho, Machida-shi, Tokyo 194-0294, Japan.

TEL +81 3-5304-5381

2) Department of Physical Therapy and Rehabilitation, School of Allied Health Sciences, Kitasato University

3) Department of Gerontology, Oberlin Graduate School of International Studies

4) Department for Prevention of Dependence on Long-Term Care, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology

5) Department of Rehabilitation, Graduate School of Medical Sciences, Kitasato University

Rigakuryoho Kagaku 23(3): 413–418, 2008. Submitted Oct. 19, 2007. Accepted Jan. 21, 2008.

ABSTRACT: [Purpose] In this report we measured fear of falling among forty-five people aged 65-91 years old, and

examined the related factor of fear of falling inclusively. [Methods] The measurement of fear of falling was investi-gated using the Modified Falls Efficacy Scale (MFES). We defined participants having low MFES score (< 140) as having fear of falling. Independent variables of fear of falling, such as body function, level of fall frequency in the past one year, ADL, body activity self-efficacy, and self-imposed restrictions the going out were obtained. [Results] Fear of falling was had 68.9% in the group, and showed a significant correlation with the ADL score and going out. More-over, the ADL-20 score was extracted as a factor, and it was associated with fear of falling. [Conclusion] A decrease in fear of falling might be expected, in addition to body function improvement, by intervening to improve the ADL.

Key words: Modified Falls Efficacy Scale (MFES), fall, community dwelling elderly

要旨:〔目的〕地域在住高齢者45名(65–91歳)を対象に転倒恐怖感を測定し,その関連因子を包括的に検討した。〔方 法〕転倒恐怖感の測定はModified Falls Efficacy Scale(以下,MFES)得点を用い,MFES得点139点以下を転倒恐怖感 有とした。関連因子として,身体機能,転倒経験,ADL-20,身体活動セルフ・エフィカシー,外出自粛について検 討した。〔結果〕対象者の68.9%に転倒恐怖感がみられ,MFES得点はADL-20得点,外出自粛と有意な相関を示した。 転倒恐怖感に関連する因子を多重ロジスティクモデルにて検討した結果,ADL-20得点のみが抽出された。〔結語〕転 倒恐怖感の軽減には,運動指導に加えADL向上を目指す生活指導も重要と考えられる。

キーワード:Modified Falls Efficacy Scale (MFES),転倒恐怖感,地域在住高齢者

1) 桜美林大学大学院 国際学研究科老年学専攻:東京都町田市常盤町3758 (〒194-0294) TEL 03-5304-5381 2) 北里大学 医療衛生学部 3) 桜美林大学大学院 老年学研究科老年学専攻 4) 財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 介護予防緊急対策室 5) 北里大学大学院 医療系研究科 受付日 2007年10月19日  受理日 2008年1月21日

(2)

I. はじめに 近年の転倒予防に関する研究の動向は,転倒そのも のの予防に加え,転倒に恐怖を抱くものに対する精神心 理的・身体的ケアに対する関心が高まっている1)。転倒 に対する過度の恐怖感(以下,転倒恐怖感)とは,「身 体の遂行能力が残されているにも関わらず,移動や位置 の変化を求められる活動に対してもつ永続した恐れ」と 定義されている2,3) Tinetti ら4)の地域在住高齢者を対象に転倒恐怖感と身 体機能・社会的能力との関連について調査した研究で は,43%が転倒恐怖感を有し,転倒恐怖感により外出を 控えるものは19%と報告され,Howlandら5)によると,転 倒恐怖感のために社会活動や余暇活動が制限されるこ とにより生活の質が一層低下することから,転倒恐怖感 を解消する処方が必要であることが示唆されている。さ らに,金ら6)の転倒ハイリスク高齢女性を対象とした研 究では,転倒恐怖感は転倒者,非転倒者ともに8割以上 にみられ,転倒恐怖感を解消するためには,下肢の筋力 や移動能力,バランス能力を高める処方が有効であると の知見も得られており,転倒恐怖感を解消する介入の必 要性が高まっている。 転倒恐怖感に関する研究はこれまで多数行われ1-14) 様々の関連要因が報告されている1,3-10,14)。しかし,これ らの多くは転倒恐怖感の有無や,屋内活動に特異的な尺 度Falls Efficacy Scale7)(以下,FES)を使用しているもの

が多く1,4,6-10),屋外活動も行う地域で暮らす高齢者の調査

では不十分であると考える。また,屋内・屋外活動をも 含 む 尺 度 と し てModified Falls Efficacy Scale12)(以 下,

MFES)が開発されているが,これを用いた地域在住高齢 者を対象とした報告は少ない3,12)。さらに,各報告4-7,9) は,転倒恐怖感の発生頻度は述べられているものの,身 体機能,日常生活活動(以下,ADL:Activities of Daily Living),外出状況,転倒経験等の転倒恐怖感に関連する 因子がいかに関連しているのかを検討している報告は少 ない1,4,5,7,13) そこで,本研究では地域在住高齢者を対象に,MFES を用い転倒恐怖感を測定し,これに関連する身体機能, ADL等の要因を包括的に検討することを目的とした。 II. 対 象 対象は,デイサービス利用,または介護老人保健施設 にて包括的高齢者運動トレーニング15)に参加する地域 在住高齢者45 名(男性20 名,女性25 名),平均年齢77.7 ±6.3歳(65–91歳)であり,認知機能低下が認められず, 歩行が自立もしくは杖使用にて可能であることとした。 除外条件はMental Status Questionnaire16)にて7点以上の者

とした7)。なお,対象者には本研究の趣旨を十分に説明 し,書面にて同意を得た。対象者はデイサービス利用者 21 名(46.7%),自治体主催の介護予防事業参加者 24 名 (53.3%)であり,要介護度は表の通りであった(表1)。 III. 方 法 MFES評価に加え,転倒恐怖感の関連因子として身体機 能(全5 項目),過去一年間の転倒回数,ADL,身体活動 セルフ・エフィカシー,外出の自粛の調査・測定を行った。 1. 調査項目 基本的属性として,年齢,性別,身長,体重,現病 歴,既往歴,機能障害を測定,聴取した。 転倒恐怖感の程度を測定する目的で,MFESを使用し た。この尺度はTinettiら7)が開発したFESを,さらにHill ら12)が修正したものであり,この尺度の日本語版3)を使 用した。FESは「入浴」などの基本的ADL(以下,BADL: Basic ADL)10 項目を実施する際の転倒の恐怖感を聴く 構成となっていることに対し,MFESは,BADL及び「買 い物」などの手段的ADL(以下,IADL:Instrumental ADL) の14 項目にて構成されている。転倒恐怖感の有無を直 接問うものではなく,転ぶことなく行う自信の程度(転 倒予防自己効力感)を問うものであり,各ADL,IADL 項目に関して実際に遂行可能かどうかは別とし測定を 行う。前述の様にFESと比較し,地域で生活する高齢者 本人の生活に沿った屋内・屋外活動をも含む評価尺度で ある点が特徴である。各項目に対し0-10得点で記入し, MFES得点が低いほど転倒恐怖感が強いことを意味する。 140 点満点を「転倒恐怖感なし」,139 点以下を「転倒恐 表1 対象者の要介護度 要介護度 人数 要介護3 1 名( 2.2 %) 要介護2 1 名( 2.2 %) 要介護1 10 名(22.2 %) 要支援2 5 名(11.1 %) 要支援1 4 名( 8.9 %) 非該当 24 名(53.3 %)     計45 名

(3)

怖感あり」と判断する3) 転倒歴について過去一年間の転倒回数を記入させ,1 回以上転倒している者を転倒経験者とした。転倒の定 義9)は,“本人の意思からではなく,地面またはより低 い面に身体が倒れること(階段,台,自転車からの転 落も含まれる)”とした。 ADL を評価する目的で,ADL - 2017)を使用した。本 対象は地域在住高齢者であるため,ADL 評価は病院内 などで必要となるBADL である身の回り動作のみでな く,在宅生活などで必要となる調理や財産管理,電話な どの道具を用いるIADL 能力も重要な要素となる。この 尺度は入院患者や施設入居者から在宅高齢者一般まで を対象として,全般的生活機能の障害を評価することを 目的としており,BADL,IADL,コミュニケーション ADL(以下,CADL:Communication ADL)と群分され, 全20項目から構成されている。自立度を4段階で採点し, 60点満点で評価を行うものである。 身体活動セルフ・エフィカシーを評価する目的にて, 稲葉ら18)によって開発された虚弱高齢者の身体活動セ ルフ・エフィカシー(以下、身体活動SE)尺度を用い た。この尺度は,虚弱高齢者を対象としており,「歩行」, 「階段昇り」,「重量物挙上」の3項目の活動に対し,5つ の負荷(時間・強度)の階級にて回答するため,簡易的 であり対象者への負担が軽減されるように配慮されて おり,信頼性・有用性が確認されている18) 外出の自粛について征矢野ら8)により考案された質問 項目から一部抜粋し,「転倒を防ぐために外出を控える 事がありますか」という項目に対し,「3点:しばしば控 える」「2点:時々控える」「1点:たまに控える」「0点: 全く控えない」の4段階で回答を求めた。 調査項目は自記形式にて行い,自記による回答が困 難であった項目に限り面接形式にて調査を行った。 2. 身体機能測定 身体機能評価は,下肢筋力として膝伸展筋力,バラン ス能力としてFunctional Reach Test(以下,FR),開眼片 脚立位時間,歩行能力としてTimed Up and Go test(以下, TUG),5 m最大歩行時間の5項目について測定した。 膝伸展筋力は,Hand-held dynamometer(μTas F-1,ア ニマ社製)を用い測定した。膝関節屈曲90度位における 最大努力下での等尺性膝伸展筋力を2回測定し,最大値 を採用した。 FR は,開脚立位で利き手側上肢を肩関節90 度屈曲位 で保持し,上肢を水平に最大限前方に突出させ,その移 動距離を測定した。測定は2回実施し,最大値を採用した。 開眼片脚立位時間は,視線の高さに設定された指標 点を注視しながら任意の脚を挙上し,片脚立位姿勢を保 持するようにした。挙上脚が床面に接した時,あるいは 立脚側が移動した時を終了とした。最大60 秒までの時 間をデジタル・ストップウォッチで2回測定し,最大値 を採用した。 TUGは,椅座位から立ち上がって,3 m先まで歩いて 180度方向転換して戻り,再び椅子に座るまでの動作を 出来る限り速く行い, その所要時間を記録とした。測定 は2回行い,最低値を採用した。 5 m最大歩行時間は,平坦な歩行路(歩行路の前後に 予備路3 m×2)をとりテープを貼り,「出来るだけ速く 歩いてください」との口頭指示後,肩または腰が初めの テープを越えた時から,次のテープを越えるまでの5 m 歩行時間をデジタル・ストップウォッチで2 回測定し, 最低値を採用した。 3. 統計解析 アンケート調査,身体機能測定,各測定項目に関して 基本統計量を算出した。MFES得点と身体機能各項目間 のPearsonの相関係数を,ADL(BADL得点,IADL得点, ADL-20得点),転倒回数,身体活動SE(合計得点),外 出の自粛とはSpearmanの順位相関係数を求め,転倒経験 の有無,外出自粛の有無でそれぞれ2群に分け,それぞ れのMFES得点の差をMann-Whitney検定を用いて検討し た。次に,転倒恐怖感の関連因子の検討を行うため,従 属変数を転倒恐怖感の有無(有:MFES 得点 139 点以下 /無:140 点)とし,基本的属性として性別・年齢を強 制投入した上で,MFES得点と統計学的有意な相関関係 にあり,かつ,多重共線性の問題のない独立変数で多重 ロジスティックモデル(ステップワイズ法)を行った。 統計解析はSPSS Ver15.0J for Windowsを用いた。統計学 的な有意水準は5%未満とした。 IV. 結 果 対象者の51.1%(23名/45名)が虚弱高齢者に該当し ていた。また,虚弱高齢者の定義15)は,老研式活動能力 指標上位5項目である手段的IADLに障害が1項目以上あ るか,困難に感じる場合,もしくは最大歩行速度が80 (m/min)未満である者とされていることより,本研究 では,5 m最大歩行時間が3.75(s)より大きかった者を 虚弱高齢者と設定した。 転倒恐怖感の頻度に関して,対象者の68.9%に転倒恐 怖感を認めた(表2)。

(4)

MFES得点と各項目との相関係数を求めた結果,BADL 得点(r = 0.78,p<0.01),IADL得点(r = 0.67,p<0.01), ADL-20得点(r = 0.79,p<0.01)において強い相関関 係,外出の自粛(r = –0.54,p<0.01)において中等度の 相関関係が認められた。しかし身体機能,過去1年間の 転倒回数はMEFS 得点との相関は認められなかった(p >0.05)(表3)。 またMFES得点結果は,転倒群・非転倒群の比較にお いて転倒群が115.1±32.4(点),非転倒群が124.1±21.0 (点)であり,群間に有意差はみられなかったが,外出 自粛群・非外出自粛群の比較において,外出自粛群が 103.0 ±31.8(点),非外出自粛群が132.2 ±12.2(点)で あり,群間に有意差(p<0.01)を認めた(表4)。 次いで転倒恐怖感に関連する要因を多重ロジスティッ クモデルにて検討した。従属変数を転倒恐怖感の有無 (有:MFES得点139点以下/無:140点)とし,独立変数 としては,属性である性別,年齢を強制投入した上で, 単変量解析にてMFES得点と有意な関連がみられたADL 指標及び身体活動SE の指標をステップワイズ法にてモ デルに投入した。多重共線性による問題を排除するため 独立変数間の相関を検討し,ADL の指標としては ADL -20得点,身体活動SEの指標として「歩行に対するSE」 の得点をモデルに投入した。転倒恐怖感に有意に関する 因子は,ADL-20得点のみであり,ADL-20得点が1点 上がる毎の転倒恐怖感を有する相対危険度は0.558(p = 0.006)であった(表5)。 V. 考 察 地域在住高齢者の転倒恐怖感に関する先行研究では, Tinettiら4)は43%,近藤ら9)は54.4%の高齢者に転倒恐怖 が認められたとしている。また,在宅または骨折のため 入院治療中高齢者(63 歳以上)の転倒恐怖感に関して MFES を用い調査した近藤ら3)は,MFES 得点は 128.6 ± 21.3点(25-140点)であり, MFES得点140点に満たない 者を「転倒恐怖感有り」とした場合51.9%の高齢者に転 倒恐怖感が認められたと報告している。本研究対象で は,MFES得点120.5±26.2点(36-140点)であり,68.9 %(31名/34名)が転倒恐怖感を有しており,近藤ら3) の調査よりMFES得点は低値であり転倒恐怖感の頻度は 高かった。施設利用の虚弱高齢者の転倒恐怖感を調査し た樋口ら10)は,対象の61%に転倒恐怖感がみられたと報 告しており,転倒恐怖感は虚弱高齢者において特異的に 発生する可能性があるとされている。本研究において転 倒恐怖感の頻度が比較的高率であった背景としては,対 象者の約半数(51.1%)が虚弱高齢者であったことが考 えられる。本研究結果において転倒恐怖感の頻度が68.9 %と高いことより, 先行研究5,6)にて指摘されているよう に,転倒恐怖感によるQOL の低下や廃用症候群への悪 影響を予防する目的にて,地域在住高齢者(特に,虚弱 表2 転倒恐怖感の頻度 人数 MFES 平均得点(点) 転倒恐怖感 有り 31 名(68.9%) 120.5 ± 26.2(範囲 36–140) 無し 14 名(31.1%) 140

MFES:Modified Falls Efficacy Scale 転倒恐怖感有り:MFES 得点 139 点以下 転倒恐怖感無し:MFES 得点 140 点満点 表3 各測定項目の結果およびMFES得点との相関係数 項目名 平均値±標準偏差 r 値 基本的属性  性別(男: 女)(人) 20:25 0.10  年齢(歳) 77.7 ± 6.3 0.15  身長(cm) 154.9 ± 9.2 0.41  体重(kg) 56.0 ± 10.8 0.14 過去1 年転倒経験回数(回) 0.73 ± 1.18 0.21 外出の自粛(0 - 3) 0.84 ± 1.15 –0.54** 身体機能  下肢伸展筋力(kg) 243.1 ± 112.4 0.06  FR(cm) 29.1 ± 6.0 0.23  開眼片脚立位時間(秒) 15.0 ± 18.8 0.14  TUG(秒) 9.6 ± 4.8 –0.23  5 m 最大歩行時間(秒) 4.5 ± 2.1 –0.14 ADL - 20  BADL 得点(33 点満点) 30.3 ± 2.5 0.78**  IADL 得点(21 点満点) 18.1 ± 2.8 0.67**  CADL 得点(6 点満点) 5.9 ± 0.3 0.25   合計(60 点満点) 54.3 ± 5.0 0.79** 身体活動SE(各 25 点)  歩行に対するSE 16.4 ± 6.0 0.46**  階段昇降に対するSE 13.7 ± 5.2 0.16  重量物挙上に対するSE 18.8 ± 5.7 0.27   合計(75 点満点) 48.8 ± 14.6 0.36* **: p<0.01,*: p<0.05

MFES:Modified Falls Efficacy Scale FR :Functional Reach test

TUG :Timed Up and Go test

BADL:Basic Activities of Daily Living IADL:Instrumental Activities of Daily Living CADL:Communication Activities of Daily Living SE :セルフ・エフィカシー

(5)

高齢者)に対し転倒恐怖感の軽減を目的とした介入を行 う必要性があるといえる。 本研究においてMFES得点とADL(BADL,IADL),外 出の自粛に有意な相関が認められ,地域在住高齢者を対 象とした転倒恐怖感はADL能力4,13),外出自粛5-8)と関連 している多くの先行研究を支持する結果となった。ま た,MFES 得点と身体機能,過去 1 年間の転倒回数にお いて相関は認められず,こちらも先行研究6,9,13)と類似す る結果となった。一方,MFES得点は過去一年間の転倒 経験の有無による群間比較においては有意差はみられ ず,外出自粛の有無による群間比較において有意にMFES 得点に差を生じていたことから,転倒恐怖感は転倒経験 よりも外出自粛とより関連が強いと考えられる。このこ とから,地域在住高齢者に対しては,転倒の有無に関わ らず転倒恐怖感が存在することを考慮し,また転倒恐怖 感がある高齢者に対して外出自粛を軽減させるための 配慮が必要であると考えられる。 先行研究においてMFES得点に関連する因子の検討は いくつか報告されているが3,12),転倒恐怖感と身体機能, ADL,転倒経験,外出自粛状況,身体活動 SE を合わせ て調査し検討した報告は見当たらない。本研究ではMFES 得点に影響を及ぼす因子としてADL - 20 得点のみが抽 出された。転倒自体の予防に加えて,転倒恐怖に対する 精神心理的ケア・身体機能向上を目指す身体的ケアに関 する研究が望まれており1)転倒予防を目的とした運動・ 生活指導は,身体機能を改善し転倒恐怖感の解消にも有 効であると報告されている11)。本研究結果より,転倒恐 怖感に焦点をあて介入を行う場合,生活指導の一環とし てADL 向上を目的とした介入方法が有効である可能性 が示唆された。 本研究は,施設利用者や介護予防事業参加者を対象 とした調査であり,研究対象群は地域在住高齢者を代表 した集団であるとは言いがたい。今後は自立高齢者を含 む地域在住高齢者を幅広く対象とした転倒恐怖感に関 する詳細な検討が課題である。また,本研究は横断的調 査であるためMEFSとそのほかの要因の因果関係を示す には限界がある。 本研究では地域在住高齢者を対象に,MFESを用い転 倒恐怖感を測定し,これに関連する身体機能,ADL等の 要因を包括的に検討した。その結果,対象者の68.9%が 転倒恐怖感を有しており,転倒恐怖感に影響を及ぼす因 子としてADL能力のみが抽出された。このことより,地 表4 転倒経験・外出自粛の有無の違いによるMFES得点の比較 人数(名) MFES 得点(点) 転倒経験   有り(転倒群) 18 名(40%) 115.1 ± 32.4(36–140) n.s.   無し(非転倒群) 27 名(60%) 124.1 ± 21.0(78–140) 外出自粛   有り(外出自粛群) 18 名(40%) 103.0 ± 31.8(36–140)   無し(非外出自粛群) 27 名(60%) 132.2 ± 12.2(93–140) ** **: p < 0.01,Mann-Whitney 検定 n.s. : no significant 表5 転倒恐怖感に関連する因子(多重ロジスティックモデルによる) 相対危険度 95%信頼区間 p 強制投入変数 女性/男性 1.666 0.322 – 8.609 n.s. 年齢 0.904 0.761 – 1.073 n.s. ステップワイズ法にて投入した変数 ADL - 20 得点 0.558 0.367 – 0.848 0.006 ステップワイズ法にてモデルより除外された変数:歩行に対するSE(セルフ・エフィカシー)得点 転倒恐怖感有り:MFES 得点 139 点以下 転倒恐怖感無し:MFES 得点 140 点満点 MFES:Modified Falls Efficacy Scale n.s. : no significant

(6)

域在住高齢者に対し,転倒恐怖感に焦点をあて介入を行 う場合,運動指導に加えてADL の向上を目指す介入方 法が有効である可能性が示唆された。 引用文献 1) 池添冬芽,浅川康吉,島 浩人・他:虚弱高齢者の転倒恐怖 感に関与する因子の検討.運動・物理療法,2006,17(1): 54-60.

2) Tinetti ME, Powell L: Fear of falling and low self-efficacy: A cause of dependence in elderly persons. J Gerontol, 1993, 48(9): 35-38.

3 近藤 敏,宮前珠子,石橋陽子・他:高齢者における転倒恐 怖.総合リハ,1999, 27(8): 775-780.

4) Tinetti ME, Mendes de Leon CF, Doucette JT et al.: Fear of falling and fall-related efficacy in relationship to functioning among com-munity-living elders. J Gerontol, 1994, 49(3): 140-147.

5) Howland J, Peterson EW, Levin WC, et al.: Fear of falling among the community-dwelling elderly. J Aging Health, 1993, 5(2): 229-243.

6) 金 憲経,吉田英世,鈴木隆雄・他:高齢者の転倒関連恐怖 感と身体機能─転倒外来受診者について─.日老医誌, 2001, 38(6): 805-811.

7) Tinetti ME, Richman D, Powell L: Falls efficacy as a measure of fear of falling. J Gerontol, 1990, 45(6): 239-243.

8) 征矢野あや子,岡田佳澄,横井佳代・他:生きがい型介護予 防支援事業利用者の移動能力,転倒恐怖と外出状況.身体教 医研,2005, 6: 49-55. 9) 近藤 敏,宮前珠子,堤 文生:在宅高齢者の転倒と転倒恐 怖.OTジャーナル, 1999, 33(8): 839-844. 10) 樋口由美,田中則子,淵岡 聡・他:虚弱高齢者における転

倒恐怖感と歩行・バランス能力との関連.J Rehabil Health Sci,

2003, 1: 18-22.

11) 金 憲経,吉田英世,胡 秀英・他:地域高齢者の転倒予防 を目指す介入プログラムとその効果.理療京都, 2002, 31: 26-32.

12) Hill KD, Schwart JA, Kalogeropouls AJ, et al.: Fear of Falling Revisited. Arch Phys Med Rehabil, 1996, 77(10): 1025-1029. 13) 鈴木みずえ,大山直美,山田紀代美・他:虚弱高齢者と転倒

恐怖感(Fear of Falling)とHealth-related QOLの関連性. Gerontol, 2001, 13(4): 121-128. 14) 西田裕紀子,新野直明,小笠原仁美・他:地域在住中高年者 における転倒恐怖感の要因に関する縦断的検討.日本未病シ ステム会誌, 2005, 11(1): 101-103. 15) 東京都高齢者研究・福祉振興財団(編):指導者のための介 護予防完全マニュアル 包括的なプラン作成のために.東京 都高齢者研究・福祉振興財団,東京,2004,pp123, 137. 16) 加藤伸司:質問式による認知機能障害の評価測度(3).老年 精神医学雑誌,1996,7(11): 1235-1251. 17) 江藤文夫,田中正則,千島 亮・他:老年者のADL評価法に 関する研究.日老医誌, 1992, 29(11): 841-848. 18) 稲葉康子,大渕修一,岡浩一郎・他:虚弱高齢者の身体活動 セルフ・エフィカシー尺度の開発.日老医誌,2006, 43(6): 765-768.

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