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山   田   泰 彦

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(1)結語. 山. 田. 会社による相続株主の権利行使の容認. 相続株主による監督是正権の行使. 判例の展開. はじめに. 株式の共同相続と相続株主の株主権. はじめに. 株式の共同相続と相続株主の株主権. 泰彦. 一七七. 場合には︑株主権の行使につき︑権利行使者を指定し︑かつこれを会社に通知しなければならない︒このような株. より株式を共有するにいたった場合につき︑その権利行使方法を定めたものである.これによると︑株式の共有の. 来︑この問題について学説上も注目すべき見解が出るにいたっている︒商法二〇三条二項は︑株式の共同引受等に. 最高裁第三小法廷が株式の共同相続における商法二〇三条二項の適用範囲につき新たな判決を相次いで出して以. 一. 五 四 三 二 一.

(2) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一七八. 主権行使の手続的規制の趣旨は︑会社の関知しない共有者内部における共有持分に基づく個別的な権利行使を認め. ると︑株式を基準とした会社・株主間の法律関係の画一的かつ合理的な処理に煩雑さと混乱とが生じるため︑これ. を回避するためである︒しかしながらこの規定は︑株式の共同引受けにおいてのみ問題となるものではない︒株式. の共同相続により︑これまで一人の株主に帰属していた株式が︑複数の者に帰属する場合にも同様に適用されるの. である︒株式を共同で引受ける場合とは異なり︑相続を契機として株式を共有するにいたった場合︑それは最終的. な遺産分割までの過渡的な共有であり︑共同引受のような事前の合意に根ざした共有とは明らかに異質である︒し. かも︑相続株式が会社支配を左右するほどのものであるときには︑会社の支配をめぐり相続人間で︑すみやかな遺. 産分割もできず︑他方︑権利行使者の指定自体も紛糾して︑困難をきわめる場合がありうる︒このような事態は︑. 相続人にとっては相続財産たる株式に結びついた株主権を擁護するための権利行使を困難にさせると同時に︑他方︑. 会社にとっても総会の開催を場合により不可能とさせ︑会社運営上の重要な総会決議の成立に困難をきたすという. 問題が生じる︒そして︑このような問題は︑わが国の株式会社の圧倒的多数が資本金規模の小さい閉鎖的会社によ. って占められており︑しかも平成二年度の商法改正により一人会社の設立も認められたことから︑今後とも︑重要. 判例の展開. な意義を有するものと思われる︒. 二. 株式の共同相続. 1.

(3) ︵1︶. 判例は︑株式が共同相続された場合につき︑共同相続人間における法定相続分に応じた当然分割を否定し︑遺産. 分割終了時までの共有を認めてきた︒この場合︑相続人は︑相続財産たる株式につき︑各相続人の相続持分に応じ. た共有持分を取得する︒このような共有は︑遺産分割までの過渡的状態であるにもかかわらず︑遺産分割につき相. 続人間で争いが生じたときは︑このような過渡的共有状態が相当の期間継続することになる︒この場合︑共同相続. 人は︑株式につきいかなる権利を有するかが問題となると同時に︑相続財産が株式であることから︑ことは相続人. 内部の権利関係だけでは処理できない側面もまた生じることになる︒近時の最高裁判例は︑共同相続された株式の ︵2︶. 対会社関係における法律関係につき商法二〇三条二項の射程距離を画するものである︒. @ 最三判平成二年一二月四日 ︿事実関係﹀. Y会社の唯一の株主の死亡により七千株の株式につき相続が開始し︑その後その相続人の一人であった被相続人. の配偶者の死亡により︑さらにその相続持分につき相続が生じた︒遺産分割の協議が整わないうちに︑Y社の株主. 総会が開催され︑共同相続人の一人が取締役に︑一人が監査役に選任され登記も行なわれたため︑共同相続人のX. からかかる総会は存在しないとして決議不存在確認の訴えが提起された︒Y社は︑Xらが相続した株式につき遺産. 分割もなされていないことから共有状態にあるところ︑権利行使者を定めて会社に通知しなければならず︑これが. なされていないのでXには株主としての権利行使ができず︑したがって訴えの提起につき原告適格がないと主張︒ ︿判旨V. 一七九. 最高裁は︑株式の共同相続により株式を準共有するにいたった場合には︑会社に対する権利行使者の指定・通知 株式の共同 相 続 と 相 続 株 主 の 株 主 権.

(4) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一八○. をしなければ︑当該株式の株主権を行使できず︑これは決議不存在確認の訴えについてもあてはまるとしつつ︑次 のように判示した︒. ﹁株式が会社の発行済株式の全部に相当し︑共同相続人のうちの一人を取締役に選任する旨の株主総会決議がなさ. れたとしてその旨登記されている本件のようなときは︑⁝特段の事情が存在し︑他の共同相続人は︑右決議の不存 在確認の訴えにつき原告適格を有するというべきである︒﹂. そして︑さらに最高裁は︑商法二〇三条二項の趣旨が﹁会社と株主との関係において会社の事務処理の便宜を考. 慮した﹂ものであるとしたうえで︑会社は共同相続された株式につき権利行使者の指定とその通知が会社に対して. なされたことを前提に株主総会が適法に開催され︑決議が成立したことを主張・立証しなければならないところ︑. 他方で︑かかる権利行使者の指定・通知の手続きが履践されていないことを主張して︑Xの原告適格を否定するの. は︑商法二〇三条二項の趣旨を同一訴訟内で恣意的に使い分けるものであって︑訴訟上の防御権の濫用であり著し. 最三判平成三年二月一九日. く信義則に反して許されないとした︒ ︵3︶. ㈲. ︿事実関係﹀. Y社はA社を吸収合併し合併登記を終了したところ︑Y社の発行済株式総数一万株のうち四〇〇〇株︑A社の発. 行済株式総数八OOO株のうち五〇四〇株を有する株主の共同相続人の一人であるXからYA両社の株主総会で合. 併契約書の承認決議も︑Y社の総会における合併に関する事項の報告もなされていないとして︑Y社を相手方に合. 併無効の訴えが提起された︒Xらの相続した株式については︑遺産分割につき対立が生じて︑未だ分割未了であり︑.

(5) しかも相続株式につき権利行使者の指定とその通知もなされていなかった︒Y社は︑かかる手続きが履践されてい ないことを理由に︑Xの原告適格を否定した︒ ︿判旨﹀. 最高裁は︑共同相続された株式につき権利行使者の指定とその通知が会社に対してなされていないと合併無効の. 訴えにつき原告適格を原則として相続人は有しないとしつつ︑特段の事情による例外を認めた︒. ﹁共同相続人の準共有に係る株式が双方または一方の会社の発行済株式総数の過半数を占めているのに合併契約. 書の承認決議がされたことを前提として合併の登記がされている本件のようなときは︑前述の特段の事情が存在し︑. 共同相続人は︑右決議の不存在を原因とする合併無効の訴えにつき原告適格を有するものというべきである︒﹂. そして︑⑥と同様︑Y社のXの原告適格を否定する抗弁を訴訟上の防御権を濫用し︑著しく信義則に反するもの. 判例の射程距離と問題点. として却けた︒. 2. 判例の射程距離. ︑既に明らかなように︑最高裁は︑これら一連の判例によって︑株式が共同相続された株. O. 式共有であるとしつつ︑それにもかかわらず同条二項が適用されない﹁特段の事情﹂を肯定して︑その例外を許容. した︒そこで問題は︑商法二〇三条二項の適用が除外される例外としての﹁特段の事情﹂の許容範囲である︒資本. 規模の小さい会社にあって︑支配株主の地位が複数の相続人に相続され︑会社の支配をめぐり争いが生じて︑権利. 一八一. 行使者の選任とその会社に対する通知もできず︑いわんや遺産の速やかな分割も困難をきたしているときに︑商法 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(6) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一八二. ︵4︶ 二〇三条二項を厳格に適用することはかえって紛争の適切な解決を妨げることにもなりかねない︒その意味で︑最. 高裁の一連の判例の射程距離は大きな意味を持つ︒それでは︑その射程距離はどこまで及ぶのか︒. この点については既に学説によりいくつかの見解が示されてい為が︑いずれも最高裁の許容する﹁特段の事情﹂ ︵5︶ が相当に狭いものであるとの結論でほぼ一致している︒. なぜなら︑いずれの判例においても︑﹁特段の事情﹂を支える事実関係は︑共同相続された株式が発行済株式の全. 部であり︑︵⑥判例︶︑または過半数を占めていた︵㈲判例︶からである︒しかも︑こうした事実に加え︑これらの相. 続株式を無視しては︑総会の開催が不可能となっていたため︑総会の有効な開催と商法二〇三条二項の手続きがと. られていない旨の会社側の主張とはいわば論理的に矛盾する関係となっていたことに注目すべきである︒換言すれ. ば︑発行済株式総数に占める相続株式の割合から︑かかる株式につき株主権の行使を認めることが当該総会の有効. な開催を左右したのであり︑このことが会社側による商法二〇三条二項の援用を訴訟上の防御権の濫用とする判例. の判断に根拠を与えたのである︒したがって︑かかる事情は自ずと相当に限定されたものになる︒このことは︑逆. に︑相続株式の過半数が共同相続されて商法二〇三条二項の手続きが取られていない間に︑他の株主が出席した上. でたとえば取締役の選任決議がなされても︑かかる総会の開催自体は有効となる可能性を有し︵たとえば定款で総会 ︵6V の定足数を出席株主の出席をもって足りると規定していた場合を想定せよ︶︑決議に蝦疵があっても共同相続人の側はこ. れを争うことができないことを意味する︒仮にかかる訴えが共同相続人たる株主の側から提起されても︑会社側は. 商法二〇三条二項を援用して︑かかる共同相続人の株主権を否定することに障害がないからである︒しかし︑これ. でよいか否かは改めて問題となる︒しかも︑商法二〇三条二項の例外となるべき株主たる権利は︑判例で問題とな.

(7) 派生する問 題 点. ︵7︶. ところで︑今回の一連の判例において問題となったよ︑フに︑共同相続された株式を抜き. ったのが決議取消・合併無効訴権であったが︑これらに限られるのか否かも問題である︒. 口 ︵8︶. にしては総会の開催が困難をきたす場合︑商法二〇三条二項を持ち出してもかかる総会開催に道を開くための解決. にはならない︒なぜなら︑共同相続人間における株式の管理または遺産分割につき生じた紛争が共同相続人間の内. 部的な間題にとどまらず︑会社自体もかかる紛争につき利害関係を有するにいたっているからである︒この場合︑. 未だ権利行使者の通知を受けていない会社側から︑共同相続人の株主権の行使を認めることができるか否か︑これ. を肯定してもその場合の権利行使方法をどのように構成するかが検討されなければならない︒. ︵1︶最一小判昭和四五年一月一三日民集二四巻一号一頁︑量二小判昭和五二年二月八日民集三一巻六号八四七頁︒もっとも︑株式. 判タ七六一号一五四頁︑判時一三八九号一四〇頁︒. 民集四四巻九号一一八O頁︒. は所有権ではないので︑株式の共有とはいっても︑厳密には︑準共有である.米津照子﹁株式の共有﹂新版注釈会社法⑥五〇頁︒ ︵3﹀. ︵2︶. ︵5︶. 吉本健一﹁判批﹂判評三九七号五八頁︵判時一四〇六号一八八頁︶︑大野正通﹁時の判例﹂法学教室一三一号一〇七頁︑加藤修. ︵4︶山田掻子﹁株式の共同相続﹂判タ七八九号九頁︒. ﹁重要判例解説﹂ジュリスト・平成三年度重要判例解説九四頁︑山田・前註︵4︶七頁.中島弘雅﹁判批﹂民商法雑誌﹃〇六巻三号. 三七四頁は︑相続株式が会社支配権の変動を伴うほど発行済株式に対して多数であり︑かつ実際に総会が開催されていないのに︑開. 催されたかのように商業登記がなされているような場合に︑この﹁特段事情﹂の存在を肯定するのが今回の一連の判例であると解さ れている︒. 一八三. てはならないことから︵二五六条ノニ︶︑相続株式が発行済株式の三分の二を超えている場合には︑やはりそのための総会開催に困. ︵6︶ もっとも︑取締役・監査役の選任決議は︑普通決議であるが︑そのための総会の定足数が発行済株式総数の三分の一未満であっ. 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(8) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一八四. この点については︑たとえば田中誠二・再全訂会社法詳論上巻二九二頁以下が問題提起していたが︑主として決議取消訴権につ. 難をきたすことになる︒. 相続株主による監督是正権の行使. いてであった︒この点をさらに検討するものとして︑永井和之﹁株式の共同相続と商法二〇三条二項﹂金融法務事情二二〇七号七頁. ︵7︶. 以下がある︒. 三. 1 商法二〇三条二項の適用範囲. 商法二〇三条二項が規定する共有株式の場合の権利行使者によって行使しなければならない﹁株主の権利﹂とは︑ ︵1︶. 議決権や利益配当請求権のようなもののみならず︑およそすべての株主権が含まれると解するのが通説・判例とな. っていた︒もっとも︑近時の最高裁は︑この商法二〇三条二項につき︑すでにみたような例外を肯定しているが︑ その射程距離は相当に狭いものである︒ ︵2︶. ところで︑共有株式の議決権につきその共同行使を認める場合には︑たしかに会社側の事務処理上の煩雑さが生. じるし︑持分または相続分に応じた個別的な議決権行使を認める場合にも持分または相続分の割合は株主名簿に明. らかにされておらず︑またこれを記載することも名簿の必要事項とはなっていないことから︑この点の確認を行な. うことにより︑同様に事務処理上の煩雑さが生じるものと思われる︒したがって︑とりわけ株主数が多数人にのぼ. る会社にあっては︑このような事務処理上の煩雑さを防止し︑画一的かつ迅速な事務処理を行なうべき必要性と合.

(9) 理性とがあり︑商法二〇三条二項は︑まさにかかる要請に応えるものといえる︒しかし︑決議取消の訴えをはじめ. とする会社法上の監督是正権︵二四七条︑二五二条︑二六七条︑二七二条︑二八O条ノ一〇︑二八O条ノ一五︑三八O条︑. 四一五条︶については︑このような事務処理上の煩雑さが必ずしも問題にならない︒このような場合にまで︑商法二 ︵3︶. 〇三条二項を適用するのは︑むしろ同条の不当な拡大というべきではないか︒この点︑学説も︑商法二〇三条二項. の立法趣旨から︑同様の例外を認める説が提唱されている︒また︑共同相続の結果︑一株以上の持分を有する相続. ︵4︶. 人であれば︑会社法上の訴訟について原告適格を認めてもよいとする説がかねてから主張されていたところでも. ある.監督是正権についてまでも︑商法二〇三条二項が適用されるとすると︑相続人間に紛争があり︑権利行使者. の選任もできないような場合には︑問題のある総会決議・業務執行行為につき最低限の対抗手段も否定されること. になりかねず︑この点で︑商法二〇三条二項の適用に例外を認める結論は︑説得力があるものというべきである︒. そして︑この場合の二〇三条二項の適用範囲は︑最高裁のような厳格な例外を間題にするべきではなく︑すくなく. とも商法二〇三条二項の趣旨から︑監督是正権については及ばないとすべきである︒当然のことながら︑この場合 ︵5︶. の権利行使の前提として︑①共同相続による相続持分が一株以上に相当していることと︑②共同相続による共有の. 保存行為としての監督是正権. 名義書換が行なわれていることが必要である︒. 2. 会社訴権のような監督是正権が商法二〇三条二項の﹁株主の権利﹂から除かれるとしても︑そのことから直ちに. 一八五. 共同相続人が単独で︑これらの権利を行使できるというわけではない︒この点については︑相続法固有の問題があ 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(10) ︵6︶. 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一八六. るとの指摘がなされているが︑正当である︒そこで行使される監督是正権が共同相続した株式の保存行為か管理行. 為かによって︑相続株主が単独でまたは相続分の過半数決議を要することになるからである︒. そこで︑たとえば︑最判平成二年の事案では︑会社理事者の選任により相続人の一部が会社の管理権を握った点. に︑相続株式の違法な処分があったとして︑会社理事者の選任に関する総会決議取消の訴え提起を保存行為と解し︑. さらに最判平成三年の事案については︑合併無効の訴えの提起を︑相続株式に加えられる影響を排除するという意 ︵7︶ 味で保存行為として捉える分析がなされている︒. いずれの事案も相続株式を抜きにしては︑総会の有効な決議の成立自体が不可能な場合であり︑本来会社側が商. 法二〇三条二項の利益を放棄せざるを得ない場合であった︒したがって︑上述のような分析もこのような事案を前. 提とする限りでは肯定できるが︑仮に︑総会の開催とその有効な決議の成立にとって相続株式が決定的な影響を与. えないような場合にも同様のことがいえるか疑問である︒たしかに︑最判平成三年のように合併決議が成立したよ. うな場合には︑相続株式自体が変更を余儀なくされるので︑かかる合併の無効を訴えることは︑相続した株式の現. 状維持という意味で︑保存行為になるものと思われる︒同様のことは︑この他︑会社の解散︑株式の譲渡制限に関. する定款変更にも妥当しよう︒さらには︑取締役の業務執行の違法行為差止請求権︑株主代表訴訟︑新株発行の差. 止請求権は︑いずれも︑共同相続した株式に財産上の損害を与える可能性を有することから︑共同相続人の一人で ︵8︶ ある株主も同様に保存行為として単独で権利を行使できてしかるべきことになる︒. しかし︑取締役選任決議等の場合には︑取締役の選任自体は株式の内容を変更するものではない.しかもこのこ. とは︑相続株式の発行済み株式に占める割合が決定的なものでなかった場合には︑当該株式は会社の支配にも直接.

(11) 影響を持たないのであるから︑一層妥当することになる.むしろ︑決議取消・無効の訴えについては︑これが認め. られることで︑共有株主にも商法二〇三条二項の手続きを履践し︑あらためて権利行使の機会を確保し得る可能性. があることから︑その意味で︑株式の有する権利の現状を確保する行為として保存行為となるのではなかろうか︒. 条二項の﹁株主の権利﹂に該当すると判示したのは︑最三小判昭和五一年一一月八日民集三一巻六号八四七頁︒前注二︵1︶の最高. ︵1︶大隅健一郎H今井宏・会社法論上巻︵第三版︶三三四頁︑米津・前注二︵1︶五一頁︒株式併合の異議請求について︑これが同. ︵4︶. ︵3︶. ︵2V. この点については︑名義書換の有無を問題にすべきではないと解するのが吉本・前注二︵5︶五七頁︒前注二︵2︶判例では︑. 田中・前注二︵7︶二九二頁︒. 永井・前注二︵7︶八頁︒. この点については︑後述四4において触れる︒. 裁判例も︑﹁株主の権利﹂にはすべての権利が含まれていると解している︒. ︵5︶. 総会決議不存在確認の訴えの原告適格が間題となっていた︒商法二五二条によれば︑原告適格は︑株主に限られず︑要は訴えの利益. しかし︑吉本助教授によれば︑原告が有する利益は︑実質的には会社の株主であるという利益であり︑これが会社との関係でも権利. があればよい︒この事案における原告は︑事実認定によると名義書換未了であり︑しかも二〇三条二項の権利行使者でもなかった︒. 行使者でなければならないとする理由はないとし︑直接に株式の準共有者としての資格において原告適格を認めるべき︑とする︒ま. た前注二︵3︶判例についても︑合併無効を招来する事由を主張してその違法を是正し︑自己の利益を擁護する必要について︑株主. として有する利益につき名義の書換の有無によって相違はないとする︒吉本助教授の見解は︑会社訴訟において株主資格が問題とな. る一般的場合について主張されているというよりも︑そこで取り上げられている最高裁の事案に則してのものであろう︒合併により. 被吸収会社または消滅会社の株主は︑合併登記の日までに名義の書換をしておかなければ名義書換ができなくなる︒このような場合. に︑名義の書換の有無を問題にしないことも一定の合理性があるものと思われるし︑決議不存在・無効確認の訴えの原告適格が株主. 一八七. に限定されていないことから︑訴えの利益の有無の判断において実質的な株主であることは︑これを認める理由になるものと思われ. 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(12) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一八八. る︒したがって︑そこではたしかに名義の書換の有無は決定的な問題にならないとも考えられる︒しかし︑会社法上の訴えにつき︑. 原告適格が株主に限定されているような場合には︑やはり名義の有無は決定的な問題となるのではなかろうか︒なぜなら︑名義の書. 地位前提にすることに他ならないからである.通説も︑会社法上の訴えにつき︑株主資格が規定されているときは︑名義の有無を間. 換により株主たる地位を会社に対抗できるのであり︑会社法上の訴えを提起することは︑会社との関係においてまさにこの株主たる. 山田・前注二︵4︶七頁︒. 題にする︒. ︵6︶. ︵7︶ 山田・前注二︵4︶八ー九頁︒. ︵8︶ 設立無効の訴えは︑決議取消の訴えと同様に提訴権者に限定がある︵商法四二八条二項︶︒しかし︑設立無効の訴えに勝訴する. と︑会社の清算・消滅を招来することから︑相続株式そのものに変更を生じる可能性がある︒この点で︑設立無効の訴えについては︑. 相続株主の全員の一致が必要と解すべきかと思われる︒. 四 会社による相続株主の権利行使の容認. 1 問題の所在. ︵1︶. 会社側が商法二〇三条二項の手続きを履践してない共有株主の権利行使を認めることができることは︑商法二〇. 三条二項が︑あくまでも会社の事務処理上の便宜を考慮した規定であることから︑肯定されている︒このことは︑. 相続により株式を共有するにいたった場合にもあてはまる︒問題は︑かかる結論を導く上で︑共同相続により共有. されるにいたった株式につき︑①その旨の名義書換がなされていることが必要か否か︑また②名義書換に際して会. 社は商法二〇五条二項の免責的効力を享受できるか否かである︒そして︑共有株主全員に権利行使を認めるとして.

(13) も︑その場合の権利行使の方法は︑③各自の持分に応じた株主権の行使なのか︑ 各自の持分を基礎に共有株式全体 につき株主権の行使を決定するのか問題となろう︒. 2 名義書換の要否. 会社・株主間の集団的な法律関係を画一的に処理するため︑株主名簿の名義を書換えなければ︑あらたに株主と. なっても︑会社に対して株主権を主張できない︵商法二〇六条一項︶︒株主は︑名義の書換えをしておけば︑株券の呈. 示を会社に要することなく株主権行使の機会を保障されると同時に︑権利行使も可能となるが︑これは株主名簿が. 制度化されたことに伴う派生的効果である.株主名簿の名義書換えは︑あくまでも会社の事務処理上の便宜のため ︵2︶. の制度であるから︑このことを強調すれば︑名義書換未了の株主を会社側から株主として処遇することも認められ. ている︒したがって︑かかる見解によれば︑株主名簿に共同相続による名義書換えをしていなくとも︑会社は︑か. かる共同相続人を株主として処遇し︑その権利行使を認めることも肯定されよう︒もっとも︑名義書換未了株主を. 会社側から株主として処遇することについては︑株主平等原則からの批判がある︒これによると︑かかる扱いは株 ︵3︶ 主平等原則の範囲内でのみ認められることになる︒この見解は︑すべての名義書換未了株主を株主として処遇しな. ければ常に株主平等原則に違反すると解するが︑必ずしもこのように解する必要はないと思われる︒名簿上の株主. を株主として扱うことの意味は︑免責的効力の享受にある︒会社が名簿上にない者を株主として扱うことは︑会社. の危険においてこの免責的効力の享受を放棄することを意味する︒したがって︑会社側が未だ関知しない名義書換. 一八九. 未了株主を株主として扱わないからといって︑そのこと自体ただちに株主平等原則の違反が間題となるのではない︒ 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(14) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一九〇. 名義書換未了株主をあえて会社が株主として扱うことは︑名簿上の株主を株主として扱えば免責されるところ︑こ. れを放棄した結果であり︑それ以外の未了株主を株主として扱わないことは︑この免責的効力を享受するにすぎな. い︒株主平等原則に違反するという外形は︑このような免責的効力の放棄の結果であって︑免責的効力の享受の有. 無自体は︑株主平等の原則と抵触するものではないと思われる︒換言すれば︑本来︑株主名簿の名義書換をしてお. かなければ︑この未了株主は︑会社との関係で株主としての地位を対抗できないのであり︑したがって株主平等の 原則の前提を欠いているのである︒. しかし︑いずれの説によっても︑相続株主を無視しては総会の開催自体が不可能または困難となっているような. 名義書換に際しての免責的効力の可否. 会社の場合には︑会社側において株主の把握が容易なことが多いであろうから︑相続による名義書換が未了の場合 ︵4︶ の相続株主を株主として処遇することは︑肯定されよう︒. 3. 問題の所在. 共同相続を理由とする名義書換が行なわれない場合︑会社が共同相続人を株主として処遇す. e. ることを認めても︑会社は株主名簿上の株主を株主として扱うことによる免責的効力を享受できない︒したがって︑. 株主権の行使を認めた共同相続人たる株主が相続人たる資格を欠いていた場合︑または共同相続人の一部にしか株. 主権の行使を認めていなかった場合︑これら株主権の行使は不適法なものとなる︒会社側としても商法二〇三条二. 項の権利行使者の手続きが履践されていなくとも︑すくなくとも共同相続を理由とする名義書換がなされていれば︑. これら共同相続人たる株主を進んで株主として処遇する上で障害が少ないともいえる︒そこで︑被相続人から相続.

(15) 人への名義書換請求がなされる場合︑①会社が相続の事実を知らずに相続人の一人が株券の呈示をして行なった名. 義書換の場合と︑②会社が相続の事実を知っていたにもかかわらず︑相続人の一人によりなされた株券の呈示によ ︵5︶ る名義書換の場合の効力が問題となる︒. 口学説 ①の場合には相続人が相続の事実を告げず︑会社が善意でかつ重大な過失もなく名義書換に応じた ︵6︶ 場合には︑株券の呈示による資格授与的効力により︑会社は免責されることに問題はない︒②の場合には共同相続. 人の一人による株券の呈示に基づく書換請求に商法二〇五条二項の適用があるか問題となっている︒第一説は︑二. 〇五条二項の資格推定力が同条一項の株式譲渡を受けたものと解釈して︑相続・合併のような包括承継による株式 ︵7︶ 取得の場合に︑株券の所持による資格推定力の適用はないとする︒会社がこの場合に名義書換に応じるためには︑. 相続の有無・内容につき調査義務があり︑したがって名義書換請求者は︑相続の事実を証明しなければならないこ. とになる.第二説は︑この場合にも商法二〇五条二項の適用を認める.取得原因いかんにより︑株券の所持による ︵8︶ 資格推定力が左右されるのは︑株券の流通を害し︑会社の保護の面でも問題が生じることを根拠とする.第三説は︑. 二〇五条二項の適用を認めつつ︑会社は株券所持人に権利者たることの証明を要求できるが︑調査義務はなく︑書. 株券の所持による資格授与的効力とは︑株券流通のために認められたものであるから︑直接的には︑. 換に応じても手形法四〇条三項の類推により免責されると解する︒これによると︑名義書換請求者が単独相続の事 ︵9︶ 実︑または共同相続の場合には他の相続人の承諾書を提出しないかぎり︑書換に応じる義務はないことになる︒ の 小括. ︵10︶. 株式譲渡の場面において作用することを前提にしている︒したがって︑第一説が二〇五条一項を前提に︑二〇五条. 一九一. 二項の適用範囲を導くのは︑そのかぎりで正当というべきである︒しかし︑会社に対する名義書換請求の場面は︑ 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(16) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一九二. 権利流通とは区別すべき場面である.ここでは︑株券に化体した株主権を実現する前提としてのいわば権利者資格. の確定が問題となっている︒当然のことながら︑この場合であっても株券の呈示をもって書換請求し︑そのかぎり. で株券の所持による資格授与的効力が問題となってくるが︑そこで問題となっているのは明らかに場面を異にして. いるのである︒この点︑手形法では︑権利流通の問題については手形法一六条一項において裏書きの連続による資. 格授与的効力を認めつつ︑その一六条二項において善意取得を規定し︑他方︑権利実現の問題については同法四〇. 条三項において善意支払いの免責を規定している︒そして︑善意支払免責の基本も善意取得と同様に︑その根拠が ︵11︶. 資格授与的効力に求められつつ︑必ずしもこれにとどまらない同一性の錯誤等についても︑資格授与的効力を拡張. して解するのが一般である︒そして︑その理由は︑債務者が支払いを強制される立場にあること︑さらに四〇条三 ︵12︶. 項はたんなる形式的資格の作用に基づく免責のみを規定しているのではなく︑迅速な決済を促進させることを目的. としていることが挙げられている︒株券の場合には︑手形とは異なり一回性の権利ではなく継続的権利を表章する. ものではあるが︑すみやかな権利実現の要請は同様に妥当しよう︒さらに名義書換請求を受ける会社は︑株主権行. 使の対象となる立場にあるのであって︑かかる地位に就くことが自己の自由な選択に委ねられている立場にないこ. とも手形債務者と同様である︒しかし︑会社法では︑これらの問題が立法上区別されずに︑株券の占有による資格. 授与的効力のみ規定されていることから︑問題が生じているといえる︒そこで︑基本的には︑手形法四〇条三項を ︵13︶. 類推する第三説が妥当であると思われるが︑共同相続人の一人による名義書換請求につき︑共同相続人全員の承諾 ︵14︶. 書を必要とする点は︑疑間である︒共同相続の場合︑相続による共有登記が相続財産の保存行為を理由に相続人の. 単独行為として認められているのと同様に︑単独で相続による共有への名義書換請求ができると解すべきである︒.

(17) したがって︑この場合︑会社は共同相続の内容につき調査義務はなく︑書換請求者に権利者たることの証明を要求. できるのであるが︑書換請求者は︑戸籍謄本等により︑共同相続の事実を証明すれば足りるのであって︑これに加 えて名義書換請求することについての他の共同相続人の承諾書までは要しない︒. なお︑この場合︑名義書換請求権も株主権であるとすれば︑会社側が商法二〇三条二項の権利行使者の指定と通. 知の欠けていることを理由に︑かかる名義書換請求を拒絶する可能性もある︒しかし︑名義の書換請求自体︑会社. に特別の事務手続上の不利益を招くものでもない︒さらに︑このような請求につき︑手形四〇条三項を類推して免 ︵15︶. 責的効力を会社に認めれば︑一層そうである︒したがって︑かかる請求につき︑会社側は︑商法二〇三条二項を楯. 共有株主の権利行使方法. にしてこれを拒絶できないと解すべきである︒. 4. O 問題の所在 相続を理由とする名義書換が共同相続人の単独でこれを行なうことができたとしても︑権利 ︵給︶ 行使者の選定は︑共同相続人全員の一致を要するとする説が有力であり︑いずれにせよ︑これは単独ではできない︒. それでは︑会社が商法二〇三条二項の利益を放棄して︑共同相続人に株主権の行使を認めるとしても︑この場合の. 権利行使はどのようになされるべきか︒商法二〇三条二項が共有者全員による株主権の共同行使を会社が甘受する. ことによる事務処理上の煩雑さを防止する点にあるとすれば︑共同相続人の全員による共同行使がまず考えられる︒. そして︑この場合の共同行使とは︑﹁共同﹂行使という文言からも︑株主権行使の内容について共有者の全員の一致. 一九三. により︑相続株式全体についての統一した株主権行使を意味することになる︒しかし︑このように解する理由は何 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(18) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一九四. か︑そしてこのような解釈に問題はないのであろうか︒さらに共同行使の方法以外の方法︑たとえば共同相続人の. 一部のみが総会に出席し︑相続持分に応じた議決権の単独行使は認められないのであろうか︒当然のことながら︑. 株式共有の名義書換が行なわれていれば︑共有株主は︑会社に対す. この問題は︑共同相続による株式共有への名義書換がなされていないにもかかわらず︑会社が相続人に権利行使を. 相続株式の共同行使の根拠と間題点. 認める場合にも妥当する︒. 口. る関係においても自己の持分に基づき株主たる地位を主張しえるはずであるから︑本来︑この者も総会に出席し︑. 議決権を行使できる地位にあるはずである︒しかし︑そこで行使されるべき議決権は︑株式の共有に由来するので ︵17︶ あるから︑原則として︑共有物としての一体性をもったところの議決権であると考えられる︒さらに︑議決権の行. 使とは︑共有物である株式が内包する権利を具体化する行為であると考えれば︑これは処分行為に準じるものとし. て捉えることもできる︒そして︑このことが共同相続による株式共有の場合にもあてはまるとすれば︑共同相続人 ︵18︶. の全員の出席のもとに︑一体としての議決権行使が必要となる︒当然のことながら︑議決権行使の内容については︑ 全貝の一致がなければならない︒. しかしながら︑以上のように解すると︑全員の出席および全員の一致の二点において︑困難な問題が生じる可能. 性がある︒なぜなら︑共同相続人間で︑紛争が生じている場合には︑全員の総会出席も︑また議決権行使について. の全員の一致も期待しがたいからである︒まず︑全員の出席による共同行使にこだわると︑自己の意思を貰徹でき. ない相続株主は︑総会への出席を拒絶することで︑これに対処する可能性もありうる︒また︑議決権行使につき全. 員の一致にこだわると︑一人の相続人の反対によって︑相続株式全体の権利行使に空白が生じる場合がありうるこ.

(19) とになる︒議決権はその典型である︒換言すればこの場合︑多数の相続分を有する株主の意思を総会の意思決定に. 反映する道が閉ざされてしまいかねない︒ひいては︑相続株式を抜きにしては︑総会の開催が困難となっている会. 仮に︑相続株式が共同相続人の法定相続分にしたがって︑当然に分割相続されると. 社にとっても総会の開催を断念せざるをえないことになる︒. 相続株式の分割相続. ︵19︶. 口. 解すれば︑すでにみたような問題は生じない︒この説は︑﹁各共同相続人は︑その相続分に応じて被相続人の権利義 ︵20︶. ︵21︶. 務を承継する﹂との民法八九九条に従い︑株式も金銭債権その他の可分債権と同様に相続分に応じた当然の分割相. 続を肯定する︒なぜなら︑単位たる株式は不可分であっても︑相続株式が複数の場合の相続株式は可分だからである︒. この点につき通説は︑株式が社員たる地位を表章するものであって︑金銭債権のような単なる可分債権ではないこ ︵22︶. と︑また可分債権の扱いをしても︑整除できない端数の株式が生じることを理由に株式を可分債権と同様に扱うこ. とを否定する︒しかしこの説は︑株式の共同相続が準共有となると解する判例・通説の論拠を吟味批判して︑株式. が債権でないという株式の性質論から︑株式が共同相続人の準共有になるとすることとは論理的に結びつかず︑端 ︵23︶. 数が生じるからといって︑同様の結果は可分債権たる金銭債権についても生じることから︑決定的な否定の論拠に. ならないことを指摘する︒いずれも説得力に富み︑しかも示唆するところが大きいが︑疑間が残る︒当然の分割相. 続を肯定すると︑各相続人は︑相続分に応じた議決権を行使するのに何らの障害もなくなる︒しかし︑相続により. 取得した相続財産もいわば遺産分割の終了までは︑過渡的な状態にあることも確かである︒金銭債権のような場合. には︑それがまさに金銭価値の化体であるだけに︑後日の遺産分割において︑分割帰属の扱いを埋め合わせること. 一九五. は十分に可能であっても︑株式の場合には︑株式の帰属をめぐり会社の支配そのものが争われているような場合に 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(20) 早法六九巻四号︵一九九四︶ ︵24︶. 一九六. は︑問題が生じるのではなかろうか︒たしかに︑複数株式の場合の可分性は︑肯定できても︑そこから直ちに相続. したがって︑株式の共同相続の場合にも︑遺産分割終了時までの間の. 株式の当然分割を認め︑完全な議決権の行使を可能とすることは︑相続の開始から遺産の分割までの過渡的財産状. 一定の範囲での議決権の個別行使. 態の枠を超えるものと思われる︒. 四. 過渡的財産状態を承認するならば︑すくなくとも相続株式の内容を変更するような行為は︑これを全員の承諾によ. ってのみ可能とする枠を設けることが望ましい︒そのためには︑共同相続した株式については︑共同相続人による. 準共有を肯定すべきである︒しかし︑その場合でも︑会社側が商法二〇三条二項の利益を放棄し︑共同相続人に権. 利行使を容認する前提として︑全員の出席と全員一致の議決権行使を原則とすると︑既に指摘したような問題が生. じるところである︒その理由として︑議決権行使が相続株式の処分行為に準じるとの理解があった︒しかし︑議決. 権の行使が直ちに株式そのものの内容を変更しまたはこれを処分するものではなく︑会社意思の形成に参加するに. すぎないと考えれば︑議決権行使をそのまま準処分行為とすべきかは疑問が残る︒一株一議決権原則により︑持分 ︵25︶. に応じた議決権の数量的算定が容易であることを前提に︑共有とは個々の所有権が集合したものであるとの理解を. 踏まえれば︑持分に相当する株式部分の議決権を共有者はそれぞれ分別して有するとも考えられるのではなかろう. か︵持分によって割り切れない部分の議決について後述する︶︒もちろん︑議決権行使が株式の内容を変更する場合もあ 6︶. ︵2 り得るのであって︑この場合には︑処分行為として捉えるべきである︒たとえば︑相続株式が発行済株式総数に占. める割合にもよるが︑合併・営業譲渡・会社の解散は︑株式の内容を根本的に変更する可能性を有し︑さらに株式. の譲渡制限に関する定款変更なども︑これに該当しよう︒しかし︑それ以外の議案に関する議決権行使については︑.

(21) むしろ相続分に応じた議決権が個別的に帰属しているのではなかろうか.. もっとも︑この点については︑共同相続における相続人の持分が相続財産全体についてのものであって︑個々の ︵27︶ 財産自体についてのものではないことから︑相続持分による個別的な議決権行使に否定的な見解もある.しかし︑. 相続株式につき共同相続人が一定の権利を有することは確かであり︑しかも議決権の行使が株式それ自体の処分・. 変更にかかわらないような場合には︑相続分に応じた個別的な議決権の行使も肯定されてしかるべきものと思われ. る︒このように解することで︑自らの意思を総会の意思決定に反映させたい相続株主の株主権を保障することにも. なり︑他方で︑これに消極的な相続株主の影響を過大なものとする不合理を排除できるのであり︑ひいては総会の. 円滑な開催に道を開くことで会社運営上の不都合をある程度克服することが可能となるのである︒その意味で︑議 ︵28︶. 決権の基となる株式が当然に分割されて共同相続人に相続されることは否定しても︑株式が有する議決権自体は相. 端数をめ ぐ る 処 理. 相続株式を一体として議決権行使する場合にはともかく︑相続人の持分に基づく議決. 続分に応じて可分であるとはいえないであろうか︒. ㈲. 権の直接的行使を認めた場合︑当然のことながら相続株式を相続人の持分で除してもなお余るという端数を生じる. 可能性がある︒この部分に相当する株式については︑相続人内部で持分に基づく多数決により議決権行使の内容を. 決定すると考えるべきである︒もっともこの点については︑共有者たる相続人全貝の共同行使ということも考えら. ︵29︶. れるが︑端数に相当する株式が僅少となることから︑この部分の議決権が決議に与える影響も決定的なものとはい. えず︑そうであるなら一層この場合の決定が処分行為に該当すると考えるまでもないものと思われる.しかしなが. 一九七. ら︑僅かな部分につき議決権の行使を決定することから︑あえてこの部分につき相続分による多数決が行なわれな 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(22) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 一九八. いこともありうるかもしれない︒この場合︑かかる決定が相続人間でなされなかったとしても︑当該部分に相当す. る株式については︑権利行使が結果的にできなくなるにすぎないというべきである︒そして︑これはいわば権利放. 商法二〇三条二項が会社の事務処理上の便宜のために設けられた規定であることは︑一般的に承認されている︒米津・前注二. 棄になるのであるから︑この点については会社は関知しないことは当然である︒ ︵1︶ 前注三︵1︶三三四頁Q. ︵1︶五一頁︑倉沢康一郎﹁株式の共有﹂注解会社法上巻二三四頁︑鈴木竹雄口竹内昭夫・会社法︹新版︺九二頁注︵三︶︑大隅H. 竹内・前注︵1︶一五九頁︑木内宜彦・. 河本一郎・現代会社法︹新訂第五版︺一六八頁は︑基本的に︑会社側による名義書換未了株主を株主として扱うことを肯定する. の点の一般的な議論には立ち入らない︒. 主の会社における地位﹂商法の争点1︵総則・会社︶九二頁に要点を押さえてまとめられている︒本稿では︑肯定説の立場から︑こ. 〇頁︑田中・前注二︵7︶三八二頁︑服部栄三・会社法通論︹第四版︺八O頁︒なおこの点については︑保住昭一﹁名義書換未了株. 画一的処理の要請が強いものとして︑これに反対する︒大隅ー今井・前注三︵1︶四八三頁︑加美和照・新訂会社法︹第三版︺一四. 会社法二六四頁︑竹内昭夫・﹁株式の名義書換﹂会社法の理論−一八七頁︒否定説は︑株主名簿上の株主たる資格を会社・株主間の. 石井照久H鴻常夫・会社法︹上︺二五八頁︑北沢正啓・会社法︹第三版︺一一一二四頁︑鈴木. 号一六五七頁は︑株主名簿が会社の便宜のための規定であることを理由に︑肯定している︒学説上もこれを肯定するのが通説である︒. ︵2︶ もっとも︑この問題はかねてから学説上も対立してきた問題である︒この点につき︑最判昭和三〇年一〇月二〇日民集九巻一一. 今井・. 商法の争点1 ︵総則・会社︶九一頁︒. 田中・前注二︵7︶三七七頁︑石井H鴻・前注︵2︶一一五三頁︑北沢・前注︵2︶一一二五頁︑吉井博﹁株式の相続と名義書換﹂. 本間・前注︵5︶一〇七頁︒. 本間輝雄﹁社員権﹂新版注釈民法︵27︶相続︵2︶一〇七頁︒. 河本・前注︵2の立場からは︑すべての書換未了株主を株主として扱うことが前提となるが︒. 株主平等原則からの制約を指摘する︒. 7654 3 ____が_.

(23) ︵8︶ 上柳克郎﹁株式の相続と名義書換﹂会社法・手形法論集一五四頁以下︑永井和之﹁株式の譲渡方法﹂注解会社法上巻二五〇頁︑. 手形の裏書の連続における資格授与的効力が︑一方では善意取得に他方では善意支払いにどのようにかかわるかについては︑善. 本間・前注︵5﹀一〇八頁は︑商法二〇五条の改正の沿革からすれば︑第一説が妥当と思われるとする︒. 河本・前注︵3︶二一二頁︑鈴木緋竹内・前注︵1︶一六一−二頁注︵三︶も同旨︒. 松岡誠之助・新版注釈会社法㈹﹃六三頁︑大隅H今井・前注三︵1︶三八五−六頁︑三九二頁︑竹内・前注︵2︶一九四頁︒ ︵10︶. ︵9︶ ︵11︶. 全国株懇連合会の株式取扱規程第五条三項によれば︑実務上は︑名義書換の請求権者に相続の事実を証明する書面︑すなわち戸. 大隅H河本・前注︵11︶三一九頁︑田辺光政・最新手形法小切手法一九二頁︒. 見解にあっても︑善意支払いの成立範囲は︑これとは別に︑広く肯定する.大隅健一郎H河本一郎・注釈手形法小切手塗三九頁︒. 意取得の成立範囲とも絡んで議論があるところである︒善意取得の成立範囲を裏書連続による資格授与的効力と一致させる通説的 2︶. ︵1. 籍謄本︑相続人全員の同意書または遺産分割協議書の提出を求め︑それによって処理しているようである.しかし︑必ずしもこのよ. ︵13︶. 石田喜久男﹁相続と登記﹂新版注釈民法︵27︶相続︵2︶七四九頁︒この場合の相続登記の申請は︑相続不動産の保存行為として. 式懇談会作成の株式取扱規則一七条但書が挙げられている︒. うな書面の提出を求めない場合もあり︑そのようなものとして︑本間・前注︵5︶一〇八頁によれば︑昭和五七年八月一八日大阪株 ︵14︶. 権利行使者の指定は︑株式の共有状態に本質的変更を生じさせるとして︑共有者全員の一致が必要であると解するのが一般であ. 田中・前注二︵7︶二九二頁︒立法論としてこれを評価するものとして︑青竹正一﹁商事判例研究﹂ジュリスト六三六号一四八. 全員のためになすことができる︒. 頁︒. ︵15︶ ︵16︶. 四頁︑田中・前注二︵7︶二六五頁︑大野正通﹁株式・持分の相続共有と権利行使者の法的地位﹂鴻還暦記念二六五頁︑青木英夫﹁金. る︒西島梅治﹁判批﹂判例評論一五二号三九頁︑久留島隆﹁会社持分の共同相続と権利行使者の選任・解任﹂法学研究四七巻三号六. 民商法雑誌八O巻一号二七頁︑榎本恭博・法曹時報三三巻三号八八六頁︒判例は︑下級審ではあるが︑両説に別れている︒全員一. 融商事判例研究﹂金融・商事判例八八三号四四頁︒これに対し︑持分の価格による過半数決議で足りるとするものに︑龍田節﹁判批﹂. 致説として︑徳島地判昭和四六年一月一九日下民集一一二巻丁一一号一八頁︑過半数決議でよいとするものに︑最高裁昭和五三年四月. 一九九. ︼四日の原審判決・民集三二巻三号六〇一頁︵前記徳島地裁の控訴審判決︶︑東京地判昭和六〇年六月四日判例時報二六〇号︸四. 株式の共同相続と相続株主の株主権.

(24) 早法六九巻四号︵一九九四︶. 二〇〇. 五頁︒いずれにせよ︑全員一致を要するとすると共有者全員が︑過半数で足りるとすると少数持分権者が︑遺産分割を済むまで株主. 権の行使ができないことを甘受せざるを得ないという点で︑問題が残ると指摘するものに︑出口正義﹁株式の共同相続と商法二〇三. 社員たる地位を株式の数に関係なく一個しか認めない持分単一主義によれば︑このことは一層妥当することになる︒もっとも︑. 条二項の適用に関する一考察﹂株主権の法理三三五頁︒. 持分複数主義を採用する通説にあっても︑株式が共有者に分割して帰属していない以上︑共有物全体についての単一の意思の表れと. ︵17︶. しての議決権行使を肯定することになるのではなかろうか︒. る︒. ︵18︶ 徳島地判・前注︵16︶は︑有限会社の持分の共同相続ではあるが︑共有者全員の同時同一行使を当然の前提とした上で判示してい. 出口・前注︵16︶三四一ー二頁︒. 出口・前注︵鐙︶三四一頁以下︒. いる.そして︑この場合の議決権の行使とは︑共有者全員による共同行使であると解するのが一般である︒前注︵1︶参照︒. ︵19︶ 会社が商法二〇三条二項の利益を放棄して︑共有株主に議決権の行使を認めることができることは︑学説においても承認されて. ︵21︶. ︵20︶. 摘する︒これに対し︑この判例の評釈である青竹・前注︵15︶一四八頁は︑このことからは直ちに株式の共同相続による準共有を導. ︵22︶ 東京高判昭和四八年九月一七日高民集二六巻三号二八八頁は︑相続分にしたがっても整除できない端数部分が生じることを指. けないとして︑株式が会社に対する株主たる地位を表章する点に金銭的価値を表章するにすぎない金銭債権とは区別されることに︑. ︵23︶. 大野・前注︵16︶二三三頁以下は︑株式の共同相続の場合における準共有者間の対立が会社の支配争奪をめぐる紛争であること. 出口・前注︵16︶三四六−三四八頁︒. 根拠を求めている︒. ︵24︶. を指摘し︑この観点からの検討の必要性を指摘している︒当然の分割相続を認めることは︑このような支配争奪をめぐる争いにも影. 川井健﹁共有物の変更﹂注釈民法︵3︶三二二頁は︑共有物の変更に関する民法起草者の一人である富井博士のこのような考え. 響を与えることになる︒. 山田・前注二︵4︶八頁︒. を引用・紹介し て い る ︒. ︵25︶. ︵26︶.

(25) ︵27︶青木・前注︵16︶四六頁︒青木教授は︑相続によらないいわゆる株式の共有の場合には︑共有者の持分に応じた格別の議決権行. なお︑出口・前注︵16︶三五六頁︒. 田中啓一﹁判批﹂ジュリスト五五四号一〇九頁は︑相続分に応じた議決権行使を主張されているが︑議案による場合分けはされ. 使の可能性を肯 定 さ れ て い る ︒. ︵28︶. ︵29︶. 五 結 口口. なかった権利行使者の選定に関する問題も含めて︑再度の検討は︑別稿に譲りたい︒. 株式の共同相続と相続株主の株主権. 二〇一. 的な間題については︑さらに詰められるべき点もあるものと思われる︒また本稿では︑必ずしも正面から取り上げ. のありかたとして︑一定範囲における相続分に応じた議決権の個別行使の可能性を検討した︒そこで検討した個別. であることを踏まえつつ︑その範囲内で会社の運営に支障をきたさず︑かつ︑相続株主の株主権が保障されるため. 法二〇三条二項がどのようにかかわるのかを検討した︒そして︑相続株式の共有状態が遺産分割までの過渡的状態. 共有株主の権利行使に関する商法二〇三条二項に関する近時の最高裁判決の意義がどのようなものであるのか︑商. 支障が生ずるにいたれば︑相続株主・会社のそれぞれに問題が波及する︒本稿では︑こうした事態の解決にとって︑. 場合︑かかる相続株主の株主権の保護が問題となると同時に︑総会開催に困難をきたすことで︑会社の運営自体に. 共同相続により株式を共有するにいたった相続人間に︑遺産分割ひいては会社の支配をめぐり紛争が生じている. 圭五. ていない。.

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