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北村 哲生 論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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北村 哲生 論文内容の要旨

Risk factors of recurrent tricuspid regurgitation after valve repair with three-dimensional ring

三次元リングを使用した三尖弁形成術後の三尖弁閉鎖不全症再燃のリスク因子の 検討

著者: 北村哲生、尾長谷喜久子、中路俊、松丸一朗、三浦崇、江石清行

(ACTA MEDICA NAGASAKIENSIA・January,2022 in press)

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:江石清行 教授)

<緒 言>

中等度以上の三尖弁閉鎖不全症(TR)が予後に影響することが報告されて以降、TR に対して積極的に三尖弁形成術が行われるようになった。以前は DeVega 法を代表と する suture annuloplasty が行なわれていたが、二次元の三尖弁輪用リングが開発さ れ再手術回避率などの長期成績の優位性が証明されたため、ring annuloplasty が主 流となっている。近年はエコー技術の発展とともに三尖弁の生理的な三次元構造が詳 細になったため、その構造をもとにした三次元リング(3DR)が三尖弁形成術に使用 されることが多い。今回、長崎大学病院で行われた 3DR を使用した三尖弁形成術の長 期成績を調査し、逆流制御率や逆流再燃症例・再燃リスク因子を検討することとした。

<対象と方法>

長崎大学病院心臓血管外科で 2007 年から 2016 年の間に 178 人に対して 3DR を使用 した三尖弁形成術を行なわれている。この内 7 人は重度のテザリングを有する TR に 対して 3DR を使用した形成術と右室乳頭筋を螺旋状に吊り上げる spiral suspension technique という術式を併用しているため本研究からは除外した。そのため残りの 171 人を後ろ向きに調査した。術後 TR≧2 度を再燃と定義し長期成績の検討を行った。ま た患者を非再燃群(TR<2 度)と再燃群(TR≧2 度)の 2 群に分け、術前患者背景・TR の成因・術前エコー所見・手術内容をそれぞれ比較し再燃リスク因子を検討した。

<結 果>

術前の平均 TR grade は 3.0±0.8 度であった。観察期間中に 22 人が TR≧2 度以上と なった。術後 5 年での TR≧2 度回避率、TR≧3 度回避率、再手術回避率はそれぞれ 83.6

±3.3%、93.6±2.0%、97.9±2.1%であった。非再燃群と再燃群の 2 群間で比較し たところ、術前 TR grade(2.9±0.8 and 3.4±0.6, p=0.008)・左室駆出率 LVEF<40%

(2)

の割合(9% and 32%, p=0.003)・右室拡張期径 RVDd(32.0±6.0 mm and 39.6±13.4 mm, P=0.02)・右室収縮期径 RVDs(22.8±7.1 mm and 31.1±12.3 mm, P=0.001)で有意差 を認めた。また術前にテザリングを認めた症例は 29 人(17%)であったが、この 29 人 の中では再燃群でテザリング長とテザリング面積が大きい傾向にあった。Cox 回帰分 析 で は LVEF < 40 % の 割 合 ( hazard ratio: 12.65, 95% confidence interval:

2.66–60.18; p=0.002)と RVDs (hazard ratio: 1.08, 95% confidence interval:

1.02–1.14; p=0.02)で有意差を認めた。

<考 察>

今回の研究で 3DR を使用した三尖弁形成術の術後 5 年の TR≧3 度回避率は 93.6±

2.0%、再手術回避率は 97.9±2.1%とそれぞれ良好な長期成績を示せた。また TR≧2 度の再燃リスク因子として LVEF<40%と RVDs の拡大の二因子が挙げられた。

過去の報告では、DeVega 法で術後 5 年の TR≧3 度回避率は 76%,72%、また二次元 リングを使用した三尖弁形成術での術後 5 年の TR≧3 度回避率は 90%,83%との報告が ある。これらの結果と比較しても 3DR を使用した三尖弁形成術の長期成績の優位性が 示される。3DR を使用した三尖弁形成術については術後 10 年での TR≧2 度回避率が 92%と報告されているものもあるため、今後我々の研究もさらなる長期成績が期待さ れる。

ここで TR 再燃リスク因子について検討を行う。LVEF が低下している左室機能不全 が TR 再燃のリスク因子であることは既に報告されている。重度の LVEF 低下は左室の 容量負荷から左室の拡張と楕円形変化をしばしば引き起こす。この左室の異常形態変 化が心室中隔や肺高血圧を介して右室に影響を与えることが TR 再燃のメカニズムと してこれまで報告されている。LVEF が低下した TR に対する特有の三尖弁形成術式は ないが、拡張型心筋症で僧帽弁手術を行った後に左室のリバースリモデリングを得ら れた症例では TR の悪化は認めなかったとの報告もあるため、重度の LVEF 低下かつ左 心弁膜症疾患を有する症例では左心弁膜症を確実に制御し左室のリバースリモデリ ングを得られるかが TR 制御に繋がると考えられる。

これまで 3DR を使用した三尖弁形成術後の TR 再燃リスク因子として RVDs の拡大が 報告された文献はみられない。しかし二次元リングやフレキシブルリングを使用した 三尖弁形成術の研究で右室拡大は TR 再燃のリスク因子として報告されている。この 研究も我々の研究と同様に右室径は右室中部で測定されている。右室中部には右室乳 頭筋が存在し、RVDs 径の拡大は右室乳頭筋間の距離の拡大と同義である。右室の乳頭 筋間距離が拡大することによって三尖弁のテザリングを引き起こすため、RVDs の拡大 は三尖弁のテザリングとの関与も示唆される。これまでテザリングを伴う TR の手術 について 様々な 術 式 が報告さ れてい る。 なかでも 江石ら は spiral suspension technique を報告している。Spiral suspension technique とは右室乳頭筋群を中隔 尖弁輪に向かって螺旋状に吊り上げることで乳頭筋間距離を短縮しテザリングを改 善させる効果がある。同施設では 2015 年から 2016 年にかけて重度のテザリングを有 する TR 7 症例に対して 3DR を使用した三尖弁形成と spiral suspension technique を併用している。その内 6 症例がこれまで TR の再燃なく経過しているため、今後の 長期成績の報告が期待される。

<結 語>

3DR を使用した三尖弁形成術の長期成績は良好であった。また TR 再燃リスク因子は LVEF<40%と RVDs の拡大であった。これら二つの因子どちらかを有する場合は 3DR を 使用した三尖弁形成術のみでは TR 再燃の懸念があるため、追加手技が検討される。

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