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9章.TR プロセスを用いたリン回収方法の実証

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(1)

9章. TR プロセスを用いたリン回収方法の実証

9-1.緒言

TRプロセスについて、処理量20m3·d-1のパイロット実験装置を下水処理場(waste water treatment plant;WWTP)に設置し実証試験を行った。また、実証試験に先駆けて、TRプロセスのモデル化や、

MAPの抜出方法、安価な薬品の活用などの検討を行った。MAPの抜出方法として、一般的にリア クタ底部に設置されたバルブを開閉することで水位差を生じさせて抜き出す方法がある。ところが、

MAPの堆積によってバルブの開閉が困難な場合や、抜出流量の調整が困難である場合が多かっ た。そこで、抜出方法にエアリフトポンプを適用し、詳細な検討を行った。また、MAPを生成させる には、少なくともリンと当量のマグネシウムが必要で、マグネシウム塩の薬品コストが無視できない。

薬品コストの低減は必須であり、今回安価な水酸化マグネシウムの活用について検討した。

9-2.TRプロセスのモデル化 9-2-1.モデルの概要

TRプロセスは、流動層リアクタの1日当たりのMAP回収量とシーダーの1日当たりの種晶生成 量の比によって、回収するMAPの粒径が決まる。ところで1日当たりのMAP回収量と種晶生成量 は、ぞれぞれのリアクタの原水供給量にほぼ比例する。そこで、所望粒径の MAP を回収するため に、TRプロセスのモデル化を行い、流動層リアクタとシーダーの原水供給量の比(以下、原水分注 比という)と回収MAP粒径の関係を求めた。

9-2-2.TRプロセスのモデル化

TR プロセスにおいて、高いリン回収率を得るためには微細 MAP を発生させることなく、種晶の 表面で新たなMAPを析出させることが重要となる。流動層リアクタで生成されるMAPの概ね90%

以上が種晶の表面で析出し、10%未満が微細MAPとなったベンチスケールの実験結果をもとに、

リアクタ内のMAP晶析現象をモデル化した。

TRプロセスのモデルをFigure 9-1に示す。このモデルを以下に説明する。

(2)

(1) 流動層リアクタの原水供給量をQm、シーダーの原水供給量をQsとする。

(2) 流動層リアクタで微量な微細MAPが析出し、リアクタ上部で滞留している。微細MAPの粒径 はr3mmとする。

(3) 微細MAPはシーダーに移送し成長させた後、流動層リアクタに種晶として供給する。種晶粒 径はr2mmとする。

(4) 回収MAPは、種晶表面で晶析したMAPとする。回収MAP粒径はr1mmとする。

(5) 微細MAPの一日当りの発生個数、種晶の一日当りの移送個数、回収MAPの一日当りの回収 個数はA個·d-1で同一とする。

(6) 流動層リアクタのリン回収率はRm(%)、シーダーのリン回収率はRs(%)として、RmとRsは同一と する。なお、ベンチスケールの実験結果では、RsはRmに比べ約 10 ポイント低いことが確認さ れたが、モデルの簡略の点からRmとRsは同一とする。

Fluidized bed reactor Seeder

Fine MAP

Seed MAP

Raw water Qm3/d Ckg-P/d

Recovered MAP Particle size , r1 mm Number of recovered , A/d Recovery rate, W1 kg/d

W1=4/3・π・(r13-r23)・ρ・A =Qm・Cm・Rm・MMAP/MP

Rate of supply to the fluidized bed reactor, Qm m3/d recovery ratio , Rm%

recovery ratio , Rs%

Treated water Treated water

Seed MAP Particle size , r2 mm Number of transferred , A/d Transfer rate, W2 kg/d

W2=4/3・π・(r23-r33)・ρ・A =Qs・Cs・Rs・MMAP/MP Fine MAP

Particle size , r3 mm Number of transferred , A/d Transfer rate, W3 kg/d

Rate of supply to a seeder reactor , Qs m3/d

Figure 9-1 A model of the fluidized-bed reactor provided with a seeder

(3)

流動層リアクタの物質収支をとると、液中のリン除去量とMAPの成長量は比例関係となる。リン除 去量は、MAP 重量に換算して Eq.(9-1)の左辺で表すことができる。また、MAP の成長量は Eq.(9-1)の右辺で表すことができる。両者は等しくなるので、流動層リアクタの収支は Eq.(9-1)とな る。

Qm×C×Rm×(245/31) = 4/3×π×(r13-r23)×ρ×A (9-1) 同様にシーダーの物質収支をとると、Eq.(9-2)となる。

Qs×C×Rs×(245/31) = 4/3×π×(r23-r33)×ρ×A (9-2) Eq.(9-1)とEq.(9-2)を整理するとEq.(9-3)となる。

Qm/Qs = (r13-r23)/(r23-r33) (9-3) ここで、r3<<r2<r1であり、r3を無視すると、Eq.(9-3)はEq.(9-4)となる。

Qm/Qs = (r1/r2)3―1 (9-4) Eq.(9-4)を図に表すとFigure 9-2となる。Figure 9-2より、回収MAPと種晶の粒径比(r1/r2)の増加に 伴い、Qm/Qsが大きくなる。

ここで、パイロットプラントの原水分注比を求める。Figure 8-3より、微細MAP結晶をサブリアクター で3日間晶析反応を行うと、およそ 0.3mm(=r2)程度まで成長することが分かっている。回収する

MAP粒径は、メインリアクター内の反応表面積、流動状態等を考慮して、0.6mm(=r1)とする。

Eq.(9-4)にこの条件を代入すると、Qm/Qs=7となる。

この結果に基づき、パイロットプラントの原水分注比は流動層リアクタ:シーダー=7:1とした。

Figure 9-2 Relation between Qm/Qs and r1/r2

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

0 5 10 15 20

Qm/Qs , -

r1/r2 , -

Qm:Rate of supply to the fluidized bed reactor Qs:Rate of supply to a seeder

r1:Recovered MAP particle size , mm

r2:Seed crystal size , mm

(4)

9-3.エアリフトポンプによる結晶の抜き出し方法 9-3-1.結晶の抜き出し方法

リアクタから結晶を抜き出す方法として、一般的にリアクタ底部に設置されたバルブを開閉するこ とで水位差を生じさせて抜き出す方法がある。ところが、MAPの堆積によってバルブの開閉が困難 な場合や、抜出流量の調整が困難である場合が多かった。そこで、抜出方法にエアリフトポンプを 適用し、詳細な検討を行った。

9-3-2.エアリフトポンプの原理

エアリフトポンプは、Figure 9-3 に示すような簡単な装置 で行うことができる。エアリフトポンプの原理は、下部が開 放されているエアリフト管の下部から圧縮空気を吹き込む と、エアリフト管内の気泡混合液の見掛け比重が、エアリフ ト管外の液の比重よりも小さくなるため、エアリフト管内の 液は内外の液の比重差に相当する分だけ押し上げる。

エアリフトポンプのメリットは、可動部分が少なく故障が起 こりにくい、空気量の調整で自由に揚水量を変えることが できる点にある。デメリットとしては、動力効率は通常の遠 心ポンプに比べ低い。また、エアリフト管内外の液の比重 差を利用するため、タンク内の液を全量揚水することは難 しい。揚水量と空気量の関係は、Eq.(9-5)の理論式が成り立つ。

air

air-lift pipe

Figure 9-3 The principle of air-lift pump

H ) ( log

hl H Q

Q

e s a

10

10 +10

= + …(9-5)

ここで、 Qa :必要空気量[m3] Q :揚水量 [m3] H :揚程 [m]

hl :全損失水頭 [m]

9-3-3.実験方法

エアリフト実験で用いた実験装置をFigure 9-4に示す。カラムはφ300mm×2.2mの透明なPVC で作成したものを使用した。循環水はカラム底部から上向流で通水し、カラム上部からオーバーフ ローして循環水槽に流入する。循環水槽内の循環水は再度カラムに通水させる。カラム内には予

(5)

め所定粒径のMAPが所定量充填され、循環水が上向流で流れることで流動している。この状態で、

カラムに設置された底部が開放系のエアリフト管内にエアを供給する。エアリフト管内ではエアが 上昇すると共に、管内が負圧となることでカラム内の循環水の一部がエアリフト管底部から上向流 で流れる。更に、循環水がMAPの沈降速度以上の上昇流速でエアリフト管内を流れることでMAP を同伴し、循環水と共にMAPが系外へ排出される。なお、循環水は市水を用いた。

air

MAP recovery airlift pipe

circulating water circulating

water tank

2200mm X

Y

φ300mm

Figure 9-4 Experimental equipment 9-3-4.実験条件

実験条件をTable 9-1に示す。Run AおよびRun Bはエアリフト管径を40mmとして、揚程をそれ ぞれ0.6m、0.9mとした。各実験は空気量を20、30、50 L/minとして、MAP排出量を比較した。Run CおよびRun D はエアリフト管径を65mmとして、揚程をそれぞれ0.6m、0.9mとした。各実験は空 気量を55、60、70 L/minとして、同様にMAP排出量を比較した。Run A~Run Dのいずれも実験 も、浸水深さは2.0m、MAP平均粒径は0.6mmとした。

Table 9-1 Experimental conditions

Run A Run B Run C Run D

airlift pipe [mm] 40 40 65 65

pump head , X [m] 0.6 0.9 0.6 0.9

depth of air supply point, Y [m] 2.0 2.0 2.0 2.0

MAP crystal size [mm] 0.6 0.6 0.6 0.6

air supply rate [L/min] 20~50 20~50 55~70 55~70

(6)

9-3-5.測定方法

MAP排出量は以下の手順で測定した。

1.エアリフトポンプを作動。

2.所定時間(t[min])、排出されるMAPを土嚢袋で捕捉する。

3.エアリフトポンプを停止。

4.約3min水切りを行った後、重量測定(W[kg])。

5.時間当たりのMAP排出量を算出。MAP排出量[kg·min-1]]=W/t

9-3-6.実験結果

空気の供給量(Qair;L·min-1)とMAP排出速度(QMAP;kg·min-1)の関係について、Run AとRun Bの 実験結果をFigure 9-5に、Run CとRun D の実験結果をFigure 9-6に示す。

Figure 9-5より、いずれの揚程の場合でも、空気量の増加とともにMAP排出速度は増加する傾向

が見られた。揚程0.6mの場合、空気量20 L·min-1のときMAP排出速度は9 kg·min-1、30 L·min-1の とき15kg·min-1、50 L·min-1のとき24 kg·min-1であった。揚程0.9mの場合は、揚程0.6mの場合に比 べ、いずれの空気量の場合でも、5~7 kg·min-1低かった。Figure 9-6も同様に、いずれの揚程の場 合でも、空気量の増加とともにMAP排出速度は増加する傾向が見られた。揚程0.6mの場合、空気 量55 L·min-1のときMAP排出速度は7 kg·min-1、60 L·min-1のとき12 kg·min-1、70 L·min-1のとき18 kg·min-1であった。揚程 0.9mの場合は、揚程 0.6mの場合に比べ、いずれの空気量の場合でも、6

~12 kg·min-1低かった。

Figure 9-6 The effect of pump head. Airlift pipe; 65mm.

0 5 10 15 20 25 30

40 50 60 70 80

Qair [L·min-1] QMAP [kg·min-1 ]

pump head 0.6m pump head 0.9m

Figure 9-5 The effect of pump head. Airlift pipe;40mm.

0 5 10 15 20 25 30

10 20 30 40 50 60

Qair [L·min-1] QMAP [kg·min-1 ]

pump head 0.6m pump head 0.9m

(7)

Figure 9-7 とFigure 9-8 は、同じ揚程で、空気の供給量(Q’air; m3·m-2·min-1)とMAP排出速度 (Q’MAP; kg·m-2·min-1)の関係について、エアリフト管径の影響を調べた結果である。Figure 9-7が揚 程0.6m、Figure 9-8が揚程0.9mの結果である。

Figure 9-7(揚程0.6m)より、空気量20 m3·m-2·min-1でMAPの排出速度は、エアリフト管径40mmの 場合10000 kg·m-2·min-1、同様に65mの場合5000 kg·m-2·min-1であった。Figure 9-8(揚程0.9m)の 結果では、空気量20 m3·m-2·min-1でMAPの排出速度は、エアリフト管径40mmの場合6000 kg·m-2· min-1、同様に65mの場合2000 kg·m-2·min-1であった。

いずれも場合においても、管径40mの場合は、管径65mmの場合に比べMAP排出速度が速く、

およそ2倍以上であった。この理由としては、気泡による粒子の押し上げ効果、壁効果等が推測さ れる。

Figure 9-7 The effect of the airlift pipe. Pump head;0.6m.

0 5000 10000 15000 20000 25000

0 20 40 60

Q'air[m3·m-2·min-1] Q'MAP[kg·m-2 ·min-1 ]

airlift pipe 40mm airlift pipe 65mm

Figure 9-8 The effect of the airlift pipe. Pump head;0.9m.

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000

0 20 40 6

Q'air[m3·m-2·min-1] Q'MAP[kg·m-2 ·min-1 ]

airlift pipe 40mm airlift pipe 65mm

0

(8)

9-4.水酸化マグネシウムの活用 9-4-1.実験方法

添加するマグネシウム塩として、塩化マグネシウムや水酸化マグネシウムがある。水酸化マグネ シウムは取り扱いにくい反面、安価である。ここでは、水酸化マグネシウムの活用を図るため、リン 濃度が300 mg·L-1、アンモニア性窒素濃度が1000 mg·L-1の高濃度廃水を対象として、水酸化マグ ネシウム単独で使用した場合とpH調整用の硫酸を併用した場合の2方法で処理性能を比較した。

実験装置の概略図をFigure 9-9に示す。リアクターに予め生成した粒径約0.4mmの種晶を充填 した。原水及び循環水はリアクタ底部から上向流で通水し、種晶を流動させると共に、種晶表面で 新たな MAP を生成させた。水酸化マグネシウム単独の場合では、水酸化マグネシウムスラリーを 循環水に添加した。水酸化マグネシウムと硫酸を併用した場合では、水酸化マグネシウムと硫酸を 循環水に添加した。

Raw water

Treated water

pH

Figure 9-9 Experimental apparatus 1.Mg(OH)

2

2.Mg(OH)

2

+H

2

SO

4

9-4-2.実験条件

実験条件をTable 9-2に示す。水酸化マグネシウム単独の場合をRun E、硫酸を併用した場合を Run Fとした。いずれの実験も、リン容積負荷は約20 kg·m-3·d-1で一定とした。また、リアクター底部 の過飽和度が高くなりすぎないように、原水と循環水が混合した直後のPO4-Pが概ね 50mg·L-1とな るように循環比を決めた。液の上昇流速は、アレンの式より求めたMAP粒子の沈降速度の概ね 1/10 の速度とした。原水は、下水処理場の嫌気性消化した脱水ろ液であり、T-Pは約 300mg·L-1で あった。Run Fの反応pHは、原水NH4-Nが約 1000mg·L-1と高いことから過飽和度が高くならないよ うに8.1 とした。なお、両実験共に粒径の影響がでないように、粒径が1mmとなった時点で実験終

(9)

了とした。

Table 9-2 Experimental conditions

Run No. Run E Run F

source of magnesium

source of pH adjustment H2SO4

<Raw water properties and reaction conditions>

Raw water T-P [mg·L-1] 281 276

Raw water PO4-P [mg·L-1] 259 243

Raw water NH4-N [mg·L-1] 1030 1040

Raw water SS [mg·L-1] 260 173

Reaction pH [-] 8.8 8.1

Mg/P by weight [-] 1.0 1.3

P volumetric loading [kg-P·m-3·d-1] 23 20

Flow rate Raw water [m3·d-1] 2.8 2.5

Circulated water [m3·d-1] 12.4 12.5

MAP particle size [mm] 0.41.0 0.41.0

Height of MAP particle layer [m] 2.0 2.0

Mg(OH)2

9-4-3.実験結果

処理水質変化をFigure 9-10に示す。Run Eでは、原水のpH8.2に対し、処理水のpH(リアクター 内のpHとほぼ同一)は8.8まで上昇した。原水T-Pは281 mg·L-1、原水PO4-Pは259 mg·L-1で、処理 水のT-Pは50~130 mg·L-1、処理水PO4-Pは6 mg·L-1以下であった。Run Fでは、原水pH 8.2に対 し、処理水pHは8.1であった。原水T-Pは約276mg·L-1、原水PO4-Pは243 mg·L-1で、処理水のT-P は20 mg·L-1以下まで低下した。処理水PO4-PはRun Eと変わらず6 mg·L-1以下であった。

Figure 9-11にリン回収率の比較を示す。リン回収率は、Run Eの場合で 73%、硫酸を併用した Run Fの場合で95%であり、後者が22ポイント高かった。

ここで、原水流入部の過飽和度比を算出すると、Run Eが7.6、Run Fが4.9であり、前者は後者 にくらべ1.6倍高かった。Run Eは反応pHが8.8と高いことで過飽和度比が高くなり、微細なMAP が多数析出して、処理水と共に流出したためにリン回収率が低かったと考えられる。これに対し

Run Fでは、硫酸によってpH上昇を抑えることで、高過飽和度になることなく、微細なMAPの析出

を抑えることができたため、リン回収率が上昇したと考えられる。

難溶解性であるが安価な水酸化マグネシウムを、リン濃度が 300 mg·L-1と高濃度の廃水に適用 する場合は、硫酸を併用することでリン回収率を低下させることなく利用できることが分かった。

(10)

7.5 8.0 8.5 9.0 9.5

pH [-] Raw water

Treated water

Run E Run F

0 30 60 90 120 150

0 50 100 150 200 250

Elapsed time (hr) P in treated water [mg·L-1 ]

T-P PO4-P

Figure9-10 Treatment results of Run E and Run F 200

250 300 350

P in raw water [mg·L-1 ] T-P

PO4-P

Figure 9-11 Comparison of P recovery ratio 95

73

5055 6065 7075 8085 9095 100

Run E Run F

P recovery ratio [%]

(11)

9-5.実証試験 9-5-1.実験方法

TR プロセスを実証するために、パイロットプラントを設計し、実際の下水処理場に設置した。TR プロセスの主な特徴は、流動層リアクタ内のMAP粒径をコントロールするために、シーダーを併設 したことである。Figure 9-12 にパイロットプラントの処理フローを示す。流動層リアクタは、内径 350mmの反応部を有し、高さは約5mとした。シーダーの反応部は250mmであり、高さは約4mで ある。原水は、M下水処理場の嫌気消化汚泥を遠心脱水した脱水ろ液を用いた。原水と循環水は 連続的に、流動層リアクタとシーダーの流入部に供給した。処理水は流出部から越流させて、処理 水槽に自然流下で流出させた。処理水の一部は混合槽を経て、流動層リアクタとシーダーの流入 部に循環水として供給した。マグネシウム源は混合槽に連続添加した。各リアクタは MAP 粒子の 流動を促進するためにエアを供給した。

流動層リアクタ上部の内筒内で浮遊している微細 MAP をシーダーに移送することで、シーダー における種晶の核とした。シーダーでは微細MAPを3日で約0.3mmまで成長させて流動層リアク タの種晶とした。種晶は3日に1度全量を流動層リアクタに移送した。移送方法はシーダーに併設 したエアリフトポンプを用いた。エアリフトポンプを作動させると、種晶が移送されると共に、流動層リ アクタの内筒内の微細 MAP がシーダーに流入する構造とした。流動層リアクタ内に移送された種

晶は、約 0.5mm まで成長させて回収した。回収方法は流動層リアクタに併設したエアリフトポンプ

を用いて、1日1度回収を行った。回収量は流動層リアクタ内のMAPの約10%とし、リアクタ内の 充填高さを概ね一定に保った。なお、エアリフトポンプで MAP を回収する際に、リアクタ内のエア 供給を停止し、30分間分級することで、比較的粒径の大きなMAPを選択的に回収した。

(12)

1.MgCl

2

2.Mg(OH)

2

+H

2

SO

4

air air air

air

1.NaOH

1.NaOH

Treated water MAP recovery

Crystallization tower

Seeder

Treated water tank Raw water Circulating water

Mixing tank Air lift pump

Fine MAP

Seed MAP Producted MAP

Figure 9-12 Pilot plant experimental equpment

(13)

9-5-2.実験条件

Table 9-3に処理条件を示す。実験は薬品を変えて2種類行った。Run 1はマグネシウム源に塩

化マグネシウム溶液を、pH調整剤として25%水酸化ナトリウム溶液を用いた。Run 2はマグネシウ ム源に水酸化マグネシウムスラリーを、pH調整剤として75%硫酸を用いた。

Table 9-3 Experimental conditions

Run 1 Run 2

source of magnesium MgCl2 Mg(OH)2

source of pH adjustment NaOH H2SO4

<Raw water properties and reaction conditions>

Raw water T-P [mg·L-1] 270 260

Raw water PO4-P [mg·L-1] 236 230

Raw water NH4-N [mg·L-1] 971 999

Raw water SS [mg·L-1] 248 217

Reaction pH [-] 8.1 8.1

Mg/P by weight [-] 1.0 1.0

<Fluidized bed reactor>

P volumetric loading [kg-P·m-3·d-1] 18 17

Flow rate Raw water [m3·hr-1] 0.5~0.8 0.5~0.8

Circulated water [m3·hr-1] 1.0~1.6 1.0~1.6

Height of MAP particle layer [m] 2.2 2.3

<Seeder>

Flow rate Raw water [m3·hr-1] 0.06 0.07

Circulated water [m3·hr-1] 0.12 0.14

9-5-3.実証試験結果 9-5-3-1.処理性能

処理結果をFigure 9-13に、平均の水質をTable 9-4に示す。Figure 9-13より、Run 1とRun 2の 原水pHは7.8~8.2であり、処理水のpHは、Run 1 の場合が7.8~8.3、Run 2が8.0~8.2であった。

原水のT-Pは250~300 mg·L-1、PO4-Pは200~250 mg·L-1であった。両Runにおいて、処理水T-Pは 10~25 mg·L-1、処理水PO4-Pは3~10 mg·L-1であった。約80日間連続運転しても、処理水リン濃 度の変動はほとんど見られず、安定して処理することができ、TRプロセスの実用性を実証できた。

Table 9-4より、リン回収率はRun 1で94%、Run 2で93%であり、両Runともに高回収率を維持 することができた。また、水酸化マグネシウムを用いた場合でも硫酸と併用することで、塩化マグネ シウムを用いた場合と同等のリン回収率を得ることが可能であることが実証された。

流動層リアクタ内のMAP粒径ををみると、Figure 9-13より、Run 1及びRun 2でMAP平均粒径

(14)

は概ね0.4mmであり安定していた。Figure 7-5に見られるように、流動層リアクタのみでは、通水開 始3週間で約 2mm 粒径が増加した。今回シーダーを併設して種晶を生成し、種晶を流動層リアク タに3日に1回供給したこと、MAP回収時に分級工程を設け、比較的粒径の大きなMAPを1日 1回抜き出したことで、流動層リアクタ内の粒径が平準化し、高回収率を維持できた。

また、90%以上の高回収率を達成できたのは、前章までに述べた以下の検討結果を反映したた めと考えられる。

・流動層リアクタ内のMAP充填高さを 2.2mに維持することで、リン容積負荷を 18kg·m-3·d-1 以下に保ったこと(Figure 6-7の結果)

・流動層リアクタ内の粒径を約0.4mmに維持したこと(Figure 6-8の結果)

・微細なMAPの生成を抑える為に、流入部の過飽和度比を4.4としたこと(Figure 6-9の結 果)

・同様に反応pHを適切な値に設定したこと(Figure 6-10の結果)

(15)

7.5 8.0 8.5

0 10 20 30 40 50 60 70 80

pH [-]

Raw water Treacted water

Run 1 Run 2

150 200 250 300 350

0 10 20 30 40 50 60 70 80

P in raw water [mL-1 ]

T-P POPO4-P4-P

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40 50 60 70 80

P in treated water [mL-1 ]

T-P PO4-PPO4-P

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8

0 10 20 30 40 50 60 70 80

Elapsed time (d) Particle size [mm]

Figure 9-13 Changes in waterquality along the elapse of time: Reaction pH ,8.1 : S , 4.4 , P volmetric loading , 18 kg・m-3・d-1.

80 85 90 95 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80

Rp [%]

(16)

Table 9-4 Treated water quality of pilot plant

Run 1 Run 2

pH Raw water (-) 8.0 8.1

Treated water (-) 8.1 8.1

total alkalinity Raw water [mg·L-1] 3230 3330 Treated water [mg·L-1] 2790 2890

SS Raw water [mg·L-1] 248 217

Treated water [mg·L-1] 217 158

T-P Raw water [mg·L-1] 270 260

Treated water [mg·L-1] 15.7 17.1

PO4-P Raw water [mg·L-1] 236 230

Treated water [mg·L-1] 6.4 6.9

NH4-N Raw water [mg·L-1] 971 999

Treated water [mg·L-1] 848 862

P recovey ratio (%) 94 93

9-5-3-2.薬品コスト比較

薬品使用量をTable 9-5に示す。原水PO4-Pは 250mg·L-1、Mg/P重量比は1とした。薬品使用量 は、塩化マグネシウムの場合で、塩化マグネシウムの使用量が0.25kg-Mg·m-3、水酸化ナトリウムの

使用量が 0.28kg-NaOH·m-3であった。水酸化マグネシウムの場合は、水酸化マグネシウムの使用

量が0.25kg-Mg·m-3、硫酸の使用量が0.88kg-H2SO4·m-3であった。Figure 9-14に両者のコスト比較 を示した。脱水ろ液1m3を処理するコストは、塩化マグネシウムの場合で164円·m-3、水酸化マグネ シウムの場合で約63円·m-3であった。後者は前者に比べ、約4割の薬品コストで処理できることが 分かった。

Table 9-5 Amount of chimical

Run 1 Run 2

MgCl2* (kg-Mg·m-3) 0.25 -

NaOH (kg-NaOH·m-3) 0.28 -

Mg(OH)2* (kg-Mg·m-3) - 0.25

H2SO4 (kg-H2SO4·m-3) - 0.88

* Raw water PO4-P;250mg·L-1, Mg/P by weight;1.0

(17)

Figure 9-14  Comparison of chemical cost 148

16

42 21 0

50 100 150 200

Run 1 Run 2 Chemical cost (円·m-3 )

H2SO4 Mg(OH)2 NaOH MgCl2 PO4-P;250mg·L-1

H2SO4

Mg(OH)2 NaOH

MgCl2 164

63 Unit price of chemical

M gCl2:592円/kg-Mg NaOH:56円/kg-NaOH M g(OH)2:166円/kg-Mg H2SO4:24円/kg-H2SO4

H2SO4

Mg(OH)2

NaOH MgCl2

9-5-3-3.回収物の性状

塩化マグネシウムで生成した MAP と水酸化マグネシウムで生成した MAP の写真をそれぞれ Photo 9-1とPhoto 9-2に示す。

Run 1で回収したMAPの主な組成と重金属含有量を測定した結果をTable 9-6に示す。回収した

MAPの組成は、Mg:N:P=10.1wt%、5.8wt%、12.8wt%であった。化学量論比であるMg:N: P=9.9wt%、5.7wt%、12.6wt%と概ね一致した。また、重金属の測定結果は、As、Cd、Hgが 1mg·

kg-1以下、Ni、Cr、Pbが 10mg·kg-1以下であり、いずれも分析下限値以下であった。MAPを構成す る成分はいずれも栄養素であり、重金属等の有害物質を含んでいないことから、肥料としての価値 は十分あると考えられる。

(18)

Table 9-6 The composition of recovered MAP

P wt% 12.5

Mg wt% 9.9

N wt% 5.5

K wt% 0.026

Cu mg·Kg-1 <10

Zn mg·Kg-1 <10

As mg·Kg-1 <1

Cd mg·Kg-1 <1

Hg mg·Kg-1 <1

Ni mg·Kg-1 <10

Cr mg·Kg-1 <10

Pb mg·Kg-1 <10

Photo 9-1 MAP using magnesium chloride

Photo 9-2 MAP using magnesium hydroxide

(19)

9-6.結言

TRプロセスについて、処理量20m3·d-1のパイロット実験装置を下水処理場に設置し、嫌気性消化

汚泥を脱水した脱水ろ液を対象に実証試験を行った。実証試験結果より、以下のことが明らかとな った。

1. 1 塔型の流動層リアクタは時間の経過と共にリン回収率が低下する傾向にあるのに対し、TR プ ロセスはリン回収率が低下することなく安定した処理を行うことができた。また、TR プロセスは、

粒径が平準化して高回収率を維持することができた。

2. 水酸化マグネシウムが適用可能なシステムを考案したところ、硫酸を併用することで、原水リン濃 度 300mg·L-1の高濃度廃水においても回収率を低下させることなく利用可能であった。

3. 原水T-Pが250~300mg/Lであるのに対し、リン回収率は、塩化マグネシウムと水酸化ナトリウム を用いた場合、水酸化マグネシウムと硫酸を用いた場合のいずれにおいても90%以上であった。

処理水質は大きく変動することもなく安定した処理を行うことができ、TR プロセスの良好な処理 性能を実証することができた。これにより、TRプロセスの実用化に目途をつけた。

4. 塩化マグネシウムと水酸化ナトリウムを用いた場合、水酸化マグネシウムと硫酸を用いた場合で 薬品コストを比較したところ、後者は前者に比べ、約 4 割の薬品コストで処理できることが分かっ た。

近年、エネルギー回収及び汚泥減量化という観点から、嫌気性消化法が見直されている。今後、

嫌気性消化法の効率化が進むと、より高濃度のリン及びアンモニア性窒素を含む廃水が生じ、高 度のリン・アンモニア性窒素の回収技術が要望される。本MAP法は、効率的にリンを回収すること を目標としたものであり、この要望に十分にこたえ得る技術であると考えられる。

Nomenclature

A =Number of MAP [-]

Cp =P crystallization ratio [%]

M =molecular weight or atiomic weight [mol·L-1] PO4-P =PO4-P concentration [mg·L-1] Q =Raw water flow rate [m3·d-1] r =Crystal radius [mm]

Rp =P recovery ratio [%]

S =supersaturation ratio [-]

T-P =T-P concentratio in raw water [mg·L-1]

(20)

W =Weight of MAP [kg·d-1] ρ =Density of seed [g·cm-3] <subscript>

m =Fluidized bed reactor S =Seeder

参照

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