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レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック 改訂2版

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本書を発行するにあたって、内容に誤りのないようできる限りの注意を払いましたが、本書の内容を適用した 結果生じたこと、また、適用できなかった結果について、著者、出版社とも一切の責任を負いませんのでご了承 ください。 本書に掲載されている会社名・製品名は一般に各社の登録商標または商標です。 本書は、「著作権法」によって、著作権等の権利が保護されている著作物です。本書の複製権・翻訳権・上映 権・譲渡権・公衆送信権(送信可能化権を含む)は著作権者が保有しています。本書の全部または一部につき、 無断で転載、複写複製、電子的装置への入力等をされると、著作権等の侵害となる場合がありますので、ご注意 ください。 本書の無断複写は、著作権法上の制限事項を除き、禁じられています。本書の複写複製を希望される場合は、 そのつど事前に下記へ連絡して許諾を得てください。 • オーム社開発部「レジデント初期研修用資料 内科診療ヒントブック 改訂2版」係宛、E-mail( [email protected])または書状、FAX(03-3293-2825)にて

(3)

頭が痛いp.13 意識がおかしいp.22 けいれん発作p.27 めまいp.31 不穏p.36 ゼーゼーするp.44 息が苦しいp.50 胸水貯留p.72 ショック状態p.88 胸が苦しいp.95 失神したp.102 脈が速いp.110 浮腫があるp.123 吐血したp.138 上腹部痛 p.142 下腹部痛 p.150 腰背部痛 p.155 下血したp.160 腹水貯留p.163 下痢を生じたp.170 便秘p.168 嘔吐p.175 尿量が少ないp.182 腎機能異常p.188 高血糖p.198 肝機能異常p.208 血ガスが悪いp.219 高K血症p.224 低K血症p.226 高Na血症p.229 低Na血症p.231 貧血p.239 血小板減少p.253 手足の麻痺p.270 力が入らないp.276 不明熱p.294 薬物中毒p.320 静注用強心薬p.90 静注用降圧薬p.131 インスリンp.199 ヘパリンp.260 ワーファリンp.263 抗不整脈薬p.111 静脈麻酔薬p.63

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(5)

iii

凡例と注意

薬について

薬品名は一般名を原則としていますが、代表的なものについては商品名を記 載しました(

.

R

.

を付記してあります)。 一部薬剤に関して、保険適用を超える容量となっている部分もありますが、 教科書に書かれていたことを優先しています。 薬の用法・用量・注意事項等は、本書の刊行後に変更される場合がありま す。特に使い慣れない薬の使用に際しては、読者自身で情報の収集・確認な どを行い、十分な対策と注意をしてください。

連絡先について

本書の内容に関する質問は巻末を参照ください。また、著者の

Twitter

アカ ウント(

http://twitter.com/medtoolz

)があるので、

Twitter

経由で

@medtoolz

として直接コメントしていただくこともできます。 本 書 の 補 足 情 報 な ど に つ い て は 、著 者 の ホ ー ム ペ ー ジ(

http:

//medt00lz.s59.xrea.com/wp

)も参照してください。

注意

本書は正しいと保証された方法を提供するものではありません。「と思う」 という言葉を多用し、医学的な正しさよりも、体験に基づいた独りよがりな意 見を優先しています。 内容が正確であるよう、著者なりに努力をしていますが、薬の用法・用量・ 注意事項等は時に変更されることがあります。特に使い慣れない薬の使用に際 しては、読者ご自身で十分に注意を払われることを要望します。 著者並びに出版社は、本書の情報を用いた結果生じたいかなる不都合に対 しても、その責を負いかねますのでご了承ください。 iii

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(7)

v

目次

凡例と注意

iii

薬について. . . iii 連絡先について. . . iii 注意. . . iii 第1章 はじめに

1

1.1 本書のねらい. . . 2 1.2 本書の使いかた. . . 4 診断チャート. . . 4 検査について. . . 5 第2章 頭頸部の問題

7

2.1 のどが痛い. . . 8 化膿性扁桃腺炎. . . 8 扁桃周囲膿瘍. . . 9 急性喉頭蓋炎. . . 10 インフルエンザ. . . 11 亜急性甲状腺炎. . . 11 2.2 頭が痛い. . . 13 片頭痛/筋緊張性頭痛 . . . 14 群発頭痛. . . 15 脳出血/くも膜下出血 . . . 16 髄膜炎. . . 17 副鼻腔炎. . . 18 側頭動脈炎. . . 19 緑内障. . . 20 脳静脈血栓症. . . 20 2.3 意識がおかしい. . . 22 急性散在性脳脊髄炎. . . 24 辺縁系脳炎. . . 25 高血圧脳症. . . 26 可逆性後部白質脳症症候群. . . 26 v

(8)

vi 目次 2.4 けいれんしている. . . 27 症候性てんかん. . . 29 2.5 めまい/ふらつき. . . 31 パーキンソン病. . . 32 良性頭位性めまい. . . 33 脳幹梗塞/小脳梗塞. . . 33 椎骨動脈解離. . . 34 顔面神経麻痺/ Ramsay-Hunt症候群. . . 35 2.6 不穏. . . 36 不穏の対処. . . 37 ヘルペス脳炎/ウィルス脳炎. . . 37 2.7 認知症/性格変化. . . 39 ウェルニッケ脳症. . . 40 硬膜下血腫. . . 41 第3章 呼吸器系の問題

43

3.1 ゼーゼーする. . . 44 気管支喘息. . . 45 Churg-Strauss症候群. . . 47 アレルギー性肺アスペルギルス症. . . 48 3.2 息が苦しい. . . 50 COPD. . . 52 気胸. . . 54 肺塞栓. . . 54 心原性肺水腫. . . 56 肺高血圧症. . . 59 3.3 SpO2が低い. . . 61 挿管困難への対処. . . 62 挿管中の鎮静. . . 63 投与酸素濃度について. . . 64 間質性肺炎. . . 64 ARDS. . . 65 3.4 咳が出る. . . 67 肺炎. . . 68 治りにくい肺炎について. . . 69

(9)

vii 特発性器質化肺炎. . . 69 過敏性肺臓炎. . . 69 気管支拡張症. . . 70 3.5 胸水貯留. . . 72 膿胸/肺炎随伴性胸水 . . . 73 結核性胸水. . . 74 リウマチ随伴性胸水. . . 74 胸膜中皮腫. . . 75 胸膜癒着術. . . 75 3.6 血痰が出た. . . 76 肺アスペルギローマ. . . 77 肺動静脈瘻. . . 78 血管炎による肺胞出血. . . 78 3.7 肺野のびまん性間質影. . . 80 ニューモシスチス肺炎. . . 81 サルコイドーシス. . . 82 Wegener肉芽腫. . . 83 全身性強皮症. . . 84 癌性リンパ管症. . . 85 第4章 循環器系の問題

87

4.1 ショック状態. . . 88 昇圧薬の使いかた. . . 90 心嚢水/心タンポナーデ. . . 91 敗血症性ショック. . . 92 アナフィラキシーショック. . . 93 4.2 胸が苦しい. . . 95 急性心筋梗塞/不安定狭心症. . . 96 解離性大動脈瘤. . . 98 心膜炎. . . 100 異型狭心症. . . 101 4.3 失神した. . . 102 迷走神経反射性失神. . . 104 大動脈弁狭窄症. . . 105 僧帽弁狭窄症. . . 105 肥大型心筋症. . . 106

(10)

viii 目次 洞不全症候群. . . 107 房室ブロック. . . 108 QT延長症候群. . . 108 Brugada症候群. . . 109 4.4 脈が速い. . . 110 抗不整脈薬の使いかた. . . 111 上室性期外収縮. . . 114 洞性頻拍. . . 114 心房粗動. . . 115 心房細動. . . 115 上室性頻拍症. . . 117 WPW症候群. . . 118 期外収縮. . . 119 危険な心室性期外収縮. . . 119 心室頻拍. . . 120 4.5 浮腫がある. . . 123 収縮性心膜炎. . . 124 深部静脈血栓症. . . 125 拘束型心筋症. . . 126 アミロイドーシス. . . 127 血管性浮腫. . . 127 リンパ浮腫. . . 129 4.6 血圧が高い. . . 130 静注用降圧薬の使いかた. . . 131 高血圧性緊急症. . . 131 本態性高血圧. . . 132 腎血管性高血圧. . . 132 褐色細胞腫. . . 133 原発性アルドステロン症. . . 134 クッシング症候群. . . 135 妊娠高血圧症. . . 135

(11)

ix 第5章 消化器系の問題

137

5.1 吐血した. . . 138 Mallory-Weiss症候群. . . 138 消化管潰瘍. . . 139 食道静脈瘤破裂. . . 140 逆流性食道炎. . . 140 5.2 上腹部の痛み. . . 142 上腸間膜動脈閉塞症. . . 143 胆石/胆のう炎/胆管炎. . . 144 急性膵炎. . . 145 特発性食道破裂. . . 147 アニサキス症. . . 147 消化管潰瘍穿孔. . . 148 Fitz-Hugh-Curtis症候群. . . 148 5.3 下腹部の痛み. . . 150 卵巣茎捻転. . . 151 虫垂炎. . . 152 骨盤子宮内膜炎. . . 153 急性尿閉. . . 153 子宮外妊娠. . . 154 5.4 腰背部痛. . . 155 尿路結石症. . . 156 大動脈瘤破裂. . . 157 腎梗塞. . . 157 化膿性脊椎炎/腸腰筋膿瘍. . . 158 5.5 下血した. . . 160 虚血性腸炎. . . 160 炎症性腸疾患. . . 161 大腸憩室出血. . . 162 5.6 腹水貯留. . . 163 アルコール性肝障害. . . 164 アルコール離脱. . . 165 肝硬変. . . 165 特発性細菌性腹膜炎. . . 166 5.7 便秘している. . . 168

(12)

x 目次 閉塞性腸炎. . . 169 5.8 下痢. . . 170 腸炎. . . 171 偽膜性腸炎. . . 172 腸結核. . . 173 薬剤起因性下痢症. . . 174 過敏性腸症候群. . . 174 5.9 嘔吐した. . . 175 腸閉塞. . . 176 5.10 栄養治療. . . 178 カロリー必要量と組成. . . 178 TPNの組成を自分で決める. . . 178 高血糖の予防. . . 179 第6章 検査データの異常

181

6.1 尿量が少ない. . . 182 急速進行性糸球体腎炎. . . 183 慢性腎不全. . . 184 急性尿細管壊死. . . 185 薬剤性腎症. . . 186 多尿を生じる疾患. . . 187 6.2 血尿/蛋白尿/腎機能障害. . . 188 溶連菌感染後糸球体腎炎. . . 189 IgA腎症. . . 190 クリオグロブリン血症. . . 191 アレルギー性紫斑病. . . 191 膜性増殖性腎炎. . . 192 間質性腎炎. . . 192 6.3 ネフローゼ症候群. . . 194 微小変化群. . . 195 巣状糸球体硬化症. . . 196 膜性腎症. . . 196 6.4 血糖値の異常. . . 198 入院患者さんはインスリンを使用する. . . 198 手術中のインスリン補充. . . 199

(13)

xi 糖尿病性ケトアシドーシス. . . 200 高浸透圧性昏睡. . . 202 低血糖. . . 203 6.5 CPK上昇. . . 205 横紋筋融解症. . . 205 熱中症. . . 206 悪性症候群. . . 207 6.6 肝機能異常. . . 208 GOT/GPTの増加. . . 208 LDH/GOT優位の肝逸脱酵素上昇. . . 208 ALPの増加. . . 209 黄疸. . . 210 劇症肝炎. . . 211 A型肝炎. . . 212 B型肝炎. . . 213 C型肝炎. . . 215 PBC. . . 215 PSC. . . 216 自己免疫性肝炎. . . 216 薬剤性胆汁うっ滞. . . 217 肝障害を生じる薬剤. . . 218 NASH. . . 218 6.7 血液ガスの異常. . . 219 呼吸性アシドーシス. . . 219 神経筋疾患に伴う呼吸不全. . . 219 代謝性アシドーシス. . . 220 乳酸アシドーシス. . . 221 尿細管性アシドーシス. . . 222 アルコール性ケトアシドーシス. . . 222 代謝性アルカローシス. . . 223 6.8 高K血症. . . 224 血行動態が安定している場合. . . 225 血行動態が不安定な場合. . . 225 6.9 低K血症. . . 226 低K血症の治療. . . 227 バーター症候群. . . 227

(14)

xii 目次 6.10 高Na血症. . . 229 高Na血症の治療. . . 230 尿崩症. . . 230 6.11 低Na血症. . . 231 SIADH. . . 232 6.12 高Ca血症. . . 234 高Ca血症の治療. . . 235 副甲状腺機能亢進症. . . 235 6.13 低Ca血症. . . 236 6.14 Mg濃度の異常. . . 237 高Mg血症. . . 237 低Mg血症. . . 237 6.15 P濃度の異常. . . 238 高P血症. . . 238 低P血症. . . 238 6.16 貧血. . . 239 小球性貧血. . . 241 鉄欠乏性貧血. . . 241 慢性消耗性疾患に伴う貧血. . . 241 鉄芽球性貧血. . . 242 大球性貧血. . . 242 ビタミンB12欠乏. . . 242 葉酸欠乏症. . . 243 正球性貧血. . . 244 自己免疫性溶血性貧血. . . 244 発作性夜間血色素尿症. . . 245 6.17 汎血球減少. . . 246 多発性骨髄腫. . . 246 好中球減少を生じる疾患. . . 247 6.18 輸血の原則. . . 248 血液型不適合の対処. . . 248 6.19 好酸球増多症. . . 250 好酸球増多症候群. . . 251 急性好酸球性肺炎. . . 251

(15)

xiii 6.20 血小板減少. . . 253 ITP. . . 254 HUS/TTP. . . 255 6.21 凝固異常. . . 257 DIC. . . 257 抗リン脂質抗体症候群. . . 258 後天性血友病. . . 259 6.22 ヘパリンの使いかた. . . 260 ACTとAPTT. . . 260 ヘパリンノモグラム. . . 260 プロタミン硫酸塩の使いかた. . . 261 ヘパリン起因性血小板減少(HIT). . . 261 6.23 ワーファリンの使いかた. . . 263 ワーファリン過剰の対処. . . 264 外科処置前の抗凝固薬/抗血小板薬の中止. . . 264 6.24 抗核抗体陽性を見た場合. . . 266 抗核抗体の染色パターン. . . 266 疾患ごとに提出すべき検査. . . 266 免疫抑制剤の使いかた. . . 267 第7章 四肢の問題

269

7.1 手足の麻痺. . . 270 多発性硬化症. . . 271 脳梗塞/一過性脳虚血発作. . . 272 周期性四肢麻痺. . . 274 脊髄の圧迫. . . 274 7.2 力が入らない. . . 276 多発性筋炎/皮膚筋炎 . . . 277 筋萎縮性側索硬化症. . . 278 重症筋無力症. . . 279 ステロイドミオパチー. . . 280 7.3 手足のしびれ. . . 281 ギランバレー症候群. . . 282 CIDP. . . 284 閉塞性動脈硬化症. . . 284

(16)

xiv 目次 7.4 関節痛. . . 285 痛風. . . 285 偽痛風. . . 286 感染性関節炎. . . 287 関節リウマチ. . . 288 SLE. . . 289 リウマチ性多発筋痛症. . . 290 リウマチ熱. . . 290 第8章 全身の問題

293

8.1 不明熱. . . 294 免疫不全に伴う発熱. . . 296 皮疹を伴う発熱. . . 296 Stevens-Johnson症候群と中毒性表皮壊死症. . . 296 薬剤性過敏症症候群. . . 297 麻疹. . . 298 風疹. . . 299 ツツガムシ病と日本紅斑熱. . . 299 水痘. . . 300 伝染性単核球症. . . 301 結核. . . 302 粟粒結核. . . 305 感染性心内膜炎. . . 305 血管炎. . . 307 結節性多発動脈炎. . . 307 顕微鏡的多発血管炎. . . 308 Behçet病. . . 308 成人Still病. . . 309 悪性リンパ腫. . . 310 8.2 倦怠感. . . 312 副腎不全. . . 313 左房粘液腫. . . 314 甲状腺機能亢進症. . . 314 甲状腺機能低下症. . . 316 慢性甲状腺炎. . . 318 8.3 薬物中毒. . . 320 催吐と胃洗浄. . . 320

(17)

xv 活性炭の内服. . . 320 下剤. . . 320 尿のアルカリ化. . . 320 透析の効果が期待できる薬剤. . . 321 高インスリン正常血糖療法. . . 321 脂肪乳剤静注. . . 321 一酸化炭素中毒. . . 322 アセトアミノフェン中毒. . . 322 メタノール中毒. . . 323 エチレングリコール中毒. . . 323 砒素中毒. . . 324 ベンゾジアゼピン. . . 324 三環系抗うつ薬. . . 324 β遮断薬. . . 325 Ca拮抗薬. . . 326 有機リン中毒. . . 326 8.4 妊婦さんに投与可能な薬. . . 328 症状に対する薬. . . 328 絶対禁忌薬. . . 329 あとがき

331

参考文献

333

索引

339

(18)
(19)

第1章 はじめに 1

1

はじめに

(20)

2 第1章 はじめに

1.1

本書のねらい

■この本の目的 「確実に保証された情報しか書いていない本」は有用です。 しかしながら、実際の現場の仕事をこなしていく上では、「確実に保証するこ とはできなくても有用な情報」がたくさんあります。「確実に保証された情報」 だけを載せようとした本には、そんな「確実な保証をすることが困難だが有用 な情報」が欠落しており、たくさんの有用な情報やノウハウが、医療従事者の 間で十分共有されないという不幸があると思います。 この本を通じて、そんな「確実な保証が困難だが有用な情報」を、一部でも 提供できたらいいな、と考えています。 ■「分からない」がヒントになる 「分かる患者さん」をより正しく治すやり かたは、多くの教科書に記載されています。ところが患者さんが「分かる」状 況から外れた場合、たとえばある症状に対して検査を行い、その結果を読んで も原因が突き止められなかったとき、次にどうすればいいのか、教科書にはし ばしば、それが書かれていません。 「分からない」というのは、それでも大切な手がかりです。 それは「肝機能障害スクリーニングセット」であったり、「採血一発で診断 する不明熱セット」であったり、専門各科の先生方は、患者さんが「分からな い」状況に陥ったときには、それまでのスマートなやりかたから、教科書的で ないやりかたへと、対処を変更します。 「馬鹿だって病気を治せる」なんていわれるそんなやりかたは、ところが知 識がないと、「馬鹿」なやりかたが再現できません。 本書は「分からない」状況に陥った研修医に、患者さんを「分かる」に導く ために必要な、「こうすれば何とかなる」というやりかたを提案しています。 ■先入観を持とう 研修医だった頃には「先入観を持ってはいけない」と教わ りました。データに対して先入観を持ってしまうと、すべての異常を見いだす ことができないからと。 この本は「健全な先入観を持ってデータと対峙しよう」という立場を取って います。 使う目的があいまいだと、どれだけ莫大な検査データがあったところで、そ れは単なる「量」に過ぎません。ところが正しい先入観を持ってデータに当た ると、量は質に転化します。 ある症状が患者さんにあって、その症状から致命的な経過をたどる疾患は、 いくつかに限定されます。まずはそれを見つけるために、目的を限定してから

(21)

1.1 本書のねらい 3 検査データに向きあえば、データは人間に足りない知識や経験を補ってくれる はずです。 本書では、莫大な検査データに、先入観で積極的な絞り込みをかけることで、 名人でなくては使えない知識や判断力といったものを、臨床の現場から減らし たいと考えています。 「名医」なら「くだらない知識」と一蹴するであろう、そんな知識が、本書に はたくさん詰まっています。

(22)

4 第1章 はじめに

1.2

本書の使いかた

この本は「診断チャート」とその解説、そこから導かれた各疾患に関する簡 単な解説とから成り立ちます。

~

診断チャート

腹膜炎   .p.148. 腹水穿刺 ネフローゼ   .p.194. 検尿沈渣 血液生化学検査/CPK/AMY 甲状腺機能低下症   .p.316. TSH/FT4 肝硬変   .p.165. PT/APTT 急性膵炎   .p.145. 胸腹CTスキャン 門脈塞栓/腫瘍/内膜症 結核   .p.302. 赤血球沈降速度 収縮性心膜炎   .p.124. BNP 心不全   .p.56. 心エコー アミロイドーシス   .p.127. 蛋白分画

.

.

3

J

.

1

.

J

.

.

2

N 1.1 診断チャートの見方(腹水の例) このチャートは、ある症状から考えなくてはならない、致命的な経過をたど る可能性がある疾患のリストと、その疾患で異常値をとりうる検査とをまとめ たものです。それぞれの検査は、確定診断に必須のものではなく、病歴や身体 所見のとりかたに自信のある医師なら、こうした検査はしばしば行われません が、日常臨床の現場では、逆に「とりあえず検査はしたけれど疾患名が分から ない」という状況は決して珍しくありません。 チャートは通常、右から左に、検査から疾患名の方向に用いることになり ます。 検査はいくつかのブロックに分かれています。大きなブロックを持つ検査は たくさんの疾患を検索できる代わり、それだけで診断を確定することは困難で す。ブロックが小さかったり、あるいは疾患名リストに近い場所にあるブロッ クを持つ検査は、検索できる疾患は少ないものの、特定の疾患を確定する役に 立ちます。 たとえば腹水を生じた患者さんが来院した場合、話を聞いたその時点で診断 がつかないときには、診断チャート中で大きなブロックを持つ検査、たとえば 「血液生化学検査」を選択することになります。そのときの状況によって、「心 エコー」や「

CT

スキャン」が選択されてもかまいません。

(23)

1.2 本書の使いかた 5 とりあえず血液生化学検査が選択されたとして、このデータがすべて正常で あったならば、腹膜炎、ネフローゼ、甲状腺機能低下症、肝硬変、膵炎といっ た疾患が除外できることになります。 ブロックを一つ消したところで、

.

3

.

の方向への移動、この患者さんにたとえ ば

PT/APTT

を追加しても、この検査から得られるものは少ないだろうとい う見当がつきます。血液生化学検査の近隣で他に大きなブロックを探すと、次 に行うべきは

.

2

.

の方向、心エコーか

CT

スキャンであることが分かります。 最初に行った血液生化学検査で何らかの異常所見があった場合には、チャー トの下側に記載されている血液生化学検査の解説に従い、検査データを細か く読んでいくことになります。疑われる疾患が、たとえば肝硬変であったなら ば、

PT/APTT

を提出することで重症度の評価が可能になります。 一方で、血液生化学検査、心エコー検査ともに正常であった場合でも、腹水 の原因としてまだ「結核」のような疾患が残存しており、それを疑うためには、 こんどは赤沈の提出が必要となります。 チャートの下部には、チェックリスト(



X

)が用意されている場合がありま す。チェックリストには、ある症状を訴える患者さんに対して必ず行うべき検 査や処置、あるいは見逃してはいけない疾患などを記載しました。 いよいよ診断がつかない状況に陥ったときに備えて、別途「分からなかった ら」というパラグラフを用意しました。日常臨床であまり見ないような疾患ま で含めた、検索範囲を広く取った検査リストをここに記載しています。

~

検査について

■血液生化学検査 いわゆる「生化スクリーニング」検査です。

AST

GOT

)、

ALT

GPT

)、

LDH

ALP

γ

-GTP

、総ビリルビン、間接ビリ ルビン、

TP

ALB

BUN

CRE

Na

K

Cl

CRP

、血算を想定しています。

■胸部画像 「胸部画像

/CT

」という表記をしているケースのほとんどで、胸 部単純

CT

を想定しています。 胸水、気胸、大動脈拡大、心嚢水、右室の拡大が評価できれば、たいていの 場合間に合うはずです。別途「読影」を必要とする疾患については、疾患ごと に特徴的な画像所見を記載しています。大動脈解離と肺塞栓とを確定診断しな くてはならない状況で、「造影剤が必要」と記載しています。 ■腹部

CT

腹部単純

CT

を想定しています。腸間膜動脈閉塞症を疑った際な ど、造影剤が必要な場合には、そう記載しました。

(24)

6 第1章 はじめに

■単純写真と腹部エコーについて 単純写真やエコー検査は、そこから情報を 取り出すためには熟練が必要な検査であり、研修医諸氏がそれを学び、日常臨 床の判断に援用するのは困難です。だから本書では、これらの検査については 言及を行っていません。

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