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東京都健康安全研究センター 研究年報59号

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東京都健康安全研究センター研究年報 第59号 別刷 2008

輸入食品のコンテナ輸送におけるアフラトキシン産生の可能性

田 端 節 子, 飯 田 憲 司, 千 葉 隆 司, 和 宇 慶 朝 昭, 岩 崎 由 美 子, 水 取 敦 子, 薩 埵 真 二, 田 﨑 達 明, 服 部 大, 井 部 明 広

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* 東京都健康安全研究センター食品化学部食品成分研究科 169-0073 東京都新宿区百人町 3-24-1 ** 東京都健康安全研究センター微生物部食品微生物研究科 *** 東京都健康安全研究センター広域監視部食品監視指導課 **** 東京都西多摩保健所生活環境安全課

輸入食品のコンテナ輸送におけるアフラトキシン産生の可能性

田 端 節 子*,飯 田 憲 司*,千 葉 隆 司**,和 宇 慶 朝 昭**,岩 崎 由 美 子* 水 取 敦 子***,薩 埵 真 二***,田 﨑 達 明***,服 部 大****,井 部 明 広* 強い発ガン性を有するカビ毒であるアフラトキシン(AF)が輸入食品からしばしば検出される.そのほとんどは原 産国で汚染が起きていると考えられているが,原産国から日本への輸送中に汚染される可能性も否定出来ない。 そこで,これらの輸入食品の輸送に多用されているドライコンテナを用いた船での輸送中に汚染が起きる可能性 があるかについて検討を行った.世界各地から日本へ12のルートで輸送された食品を搭載したドライコンテナ中 の温度と湿度を測定し,その温度条件をモデル化した.滅菌した食品に水を加えて3段階の水分活性の食品を調製 した.これらにAF産生菌を接種しモデル化した輸送温度条件下で保存して,AF産生が起きるかについて検討した. その結果,水分活性0.83まではAFは産生されなかったが,水濡れ事故に相当する水分活性0.99では高濃度のAFの 産生が認められた. キーワード:アフラトキシン,海上輸送,コンテナ,温度,相対湿度,水分活性,輸入食品,産生,Aspergillus は じ め に

アフラトキシン(AF)は,Aspergillus flavusやA. parasiticus により産生されるカビ毒である.AFには,10種類以上の同 族体等が知られているが,食品からの検出例が多いのは,

AFB1,AFB2,AFG1およびAFG2の4種である1).AFは,主

に肝臓に障害を与え,非常に強い発ガン性を有しているた め,世界各国で規制値が設定されている2).日本では,全 食品中のAFB1に対して,10 ppbの基準値が設定されている. 著者らは,これまで継続して食品中のAF汚染調査を行い, ピスタチオナッツ等のナッツ類,トウモロコシ、ハト麦等 の穀類,ナツメグ,唐辛子等の香辛料からAFが検出され たことを報告してきた3-5).中には,基準値である10 ppbを 超えるAFB1が検出されたものもあった.これら,AFが検 出された食品のほとんどは輸入品である.一般に,AF汚 染は,収穫後に原産地で起きると考えられているが,温度 や湿度によっては,輸送中に汚染が起きる可能性も否定で きない. 輸入食品の多くは船便のコンテナ輸送により行われて いる.船便に使用されるコンテナには,空調機を装備して いるため温度調整が可能なリーファーコンテナ(RC)と温 度調整能力のないドライコンテナ(DC)の2種類がある.DC は安価であるため,常温流通食品の多くはDCで輸送され ている.DCによる輸送では,ルートや季節によっては輸 送中に高温多湿になることも予想されるが,その実態は明 らかではない。 そこで、DCを使用した輸入食品の輸送時の温度と湿度 の推移を調査し、AFの産生の可能性について検討を行っ た.数社の食品輸入業者の協力を得て,世界各地から日本 への海上輸送経路において,食品を搭載したDCが現地工 場を出てから日本の港に入港し倉庫に搬入されるまでの 期間の温度と相対湿度の推移を測定した.そのデータを基 に,AF産生菌の接種試験を行い,輸入食品がコンテナ内 での輸送中にAFに汚染される可能性があるかについて検 討を行った. 実 験 方 法 1. 試薬 1) AF標準品および標準溶液 AFB1,AFB2,AFG1およびAFG2は,SIGMA社製のものを 使用し,クロロホルムで適宜希釈したものを標準溶液とし た. 2) その他の試薬 液体クロマトグラフィー(HPLC)に使用する有機溶媒は HPLC用を使用し,その他の試薬は市販特級品を用いた. 2. 合成培地 PDA培地およびSL培地は,衛生試験法・注解6)に従って 調製した. 3. 供試食品 あらかじめAFが検出されないことを確認したコーング リッツを放射線照射(11.6~12.0kGy;日本照射サービス(株) に依頼)により滅菌して使用した.

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Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 59, 2008 156 中国ルート アメリカ東海岸 アリューシャンルート アメリカ東海岸 ルート アメリカ西海岸ルート ニュージーランド ルート ドイツ ルート 図1. 各種輸送ルート 4. 供試菌株

AF産生能のあるAspergillus section flavi.を使用した.当セ ンターで各種食品から分離したAF-4とAF-32および東京家 政大学の一戸教授から分与されたP-1-8とP-2-9の合計4種 類である.なお,AF-4は中国産黒ゴマから,P-1-8は南アフ リカ産落花生から,P-2-9は中国産落花生から,AF-32はア メリカ産コーングリッツから分離されたものである. 5. 装置 1) コンテナ内温度湿度測定記録装置 データロガーDL-8829((株)カスタム社製)を使用した. 2) 水分活性測定器 AQUA LAB(マイルストーンゼネラル社製)を用いた. 3) インキュベーター インキュベーター(CR-41C;(株)日立製作所製)を用いた. 4) 高速液体クロマトグラフ GULLIVER1500シリーズ(日本分光(株)製)を使用した. 6. コンテナ内の温度および湿度の測定 12の輸送ルートについて,各種食品を搭載したDC内に データロガーを装着し,現地工場を出てから日本の港に入 港し倉庫に搬入されるまでの期間,1時間毎に温度と相対 湿度を測定し記録した.主な輸送ルートを図1に示した.な お,測定は,平成17~18年度に行った. 7. 接種試験 1) モデル食品の作製 供試食品20 gに対して滅菌精製水を1および10 mL添加し, 結露および水濡れを想定したモデル食品とした. 2) 接種菌液の調製 供試菌株をPDA培地で1週間培養し,その胞子の一部を とって滅菌精製水に懸濁させ,接種菌液とした.また,接 種と同時に菌数測定を行った. 3) 接種試験 供試食品,モデル食品とSL培地(10 mL)に,接種菌液 (106CFU/mL)を0.1 mL接種し,塩化アンモニウム飽和液によ り湿度調整(30°Cで79%)を行ったインキュベーターに入れ, モデル化したDC内温度条件下で9日間培養した. 8. AFの測定 食品衛生検査指針理化学編フロリジルカラム法7)に準じ た.すなわち,試料20 gに水10 mLを加えた後,クロロホル ム100 mLを加え,15分間振とうして抽出した.抽出液50 mL を脱水後,フロリジルカラムに負荷し,クロロホルム・メ タノール(9:1) 20 mLで洗浄した後,アセトン・水(99:1)40 mL で溶出した.溶出液を減圧留去し,クロロホルム200 µLを 加えて溶解した.その各20 µLを取り,薄層クロマトグラフ ィー(TLC),または,トリフルオロ酢酸あるいはフォトケ No.   出航地 日数 温度(°C) 相対湿度(%) 日数 温度(°C) 相対湿度(%) 日数 温度(°C) 相対湿度(%) 1 中国 茶葉 1 14 -0.3-17.1 53-90 3 0.6-6.4 62-76 6 3.6-7.5 68-77 2 中国 茶葉 8 6 28.3-32.3 54-64 5 28.6-32.2 53-56 2 28.0-30.9 55-57 3 マレーシア 香辛料 8 2 23.9-49.3 28-80 15 24.8-41.2 44-90 15 22.6-48.4 33-92 4 インド 香辛料 9-10 13 23.7-48.3 35-81 27 17.5-51.7 31-85 9 16.2-43.8 27-93 5 ドイツ ハーブ 11-12 4 - - 30 12.3-29.9 51-66 6 2.9-15.8 62-75 6 ドイツ ハーブ 8-9 8 15.7-35.2 43-58 28 21.5-38.6 49-55 7 23.2-38.7 51-60 7 米国(東海岸) ハーブソ ルト 12-1 13 3.2-27.7 35-55 42 8.3-28.4 40-48 6 3.3-13.5 40-49 8 米国(東海岸) ハーブソ ルト 7-8 5 24.1-36.3 40-64 35 12.8-31.4 53-65 12 20.7-39.2 36-74 9 米国(東海岸) ナッツ類 7-8 6 22.5-44.9 23-58 23 14.9-37.4 34-79 5 20.7-49.2 19-85 10 米国(西海岸) ハーブ 11 2 13.4-26.4 47-61 9 14.9-18.5 59-63 3 10.1-22.1 57-69 11 ニュージーランド 乾燥食肉 製品 12 5 16.3-26.5 57-71 10 25.4-38.9 63-69 2 19.5-36.5 49-71 12 ニュージーランド 瓶詰め 12-1 6 14.5-21.0 60-63 29 14.3-34.0 56-69 - - - - :不明 時期 (月) 表1. 各種輸送ルートにおけるコンテナ内の温度と湿度 原産地 航海中 日本 輸送食品 ルート

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100 7/20 7/30 8/9 8/19 8/29 9/8 80 60 40 20 0 相対湿度 ( % ) 60 40 20 0 10 30 50 8/17 8/27 9/6 9/16 9/26 10/6 10/16 温度 ( ℃ ) A B D 温度, 相対湿度 図2. ドライコンテナ内の温度と湿度の変化(1) ルートNo.4 ルートNo.6 A:原産地,B:航海, C

:

途中寄港,D’:日本,D:日本倉庫 D’ A B B B C C D’ D ミカルリアクターによる誘導体化後,蛍光検出器付き HPLCによりAFの定量及び確認を行った. 結 果 及 び 考 察 1. 各輸送ルートにおけるDC内の温度と湿度 食品が世界各地から日本にDCで輸送された12のケース について温度と相対湿度を測定した結果をまとめ,表1に示 した.また,代表的な温度湿度の変化の例を図2に示した. ルートNo.6は,ドイツを出航後,船の乗り継ぎをするこ となく日本の港に到着した.現地工場を出てから航海まで の間と,日本の港に到着後倉庫に入るまでの間は,1日の中 で温度と湿度が大きく上下している.これは,DCが野外に 置かれ,日光の直射と外気に直接さらされていたためと考 えられる.航海中は,DCは船の船倉内にあったため,温度, 湿度共に1日サイクルの激しい変動はなく,航海中の海水温 の変化によりDC内の温度が変化した.温度の変化に伴って 相対湿度が変化しており,このDCは,機密性が良く,内部 の水分量がほぼ一定であったものと考えられた. ルートNo.4では,インドから日本に到着するまでに2回寄 港し,船の乗り継ぎが行われた.寄港中は,1日サイクルの 温湿度の激しい変化が見られた.このルートでは,出航後 も1日サイクルの温湿度変化が見られた.これは,コンテナ が甲板下の船倉内ではなく,甲板上に乗せられていたため と考えられる. AFの産生には,温度が12~42°C,水分活性が0.85以上 であることが必要であると報告されている8).今回調査を 行った輸送ルートには,すべてAFの産生が可能な温度範囲 が含まれていた(表1).しかし,十分乾燥された食品の場合 は,水分活性が低いため,産生可能な温度範囲でもAFが産 生されることはないと考えられた. コンテナ内の食品の水分活性は,長時間経過すると周囲 の相対湿度に近づくと考えられる.従って,相対湿度が85% 以上の状態が長時間継続するとDC中の食品の水分活性が 0.85を超える可能性がある.今回調査した輸送ルートで 85%以上の相対湿度が観測されたのは,ルートNo.1,3,4 および9であった(表1). ルートNo.1(中国)で相対湿度85%以上が観測された時の 温度は全て10°C以下であったため,AF産生の心配はないと 考えられた.また,ルートNo.9では,相対湿度が85%以上 となったのは1時間だけであり,その前後の相対湿度は低か ったことから,AF産生は起きないと考えられた. ルートNo.3(マレーシア)で温度が12°C以上かつ相対湿度 85%以上が観測されたのは,原産地で3回,途中寄港中に1 回,日本到着後に8回であった(図3).その状態の継続期間 は,1から11時間で,1日以上継続することはなかった. 100 7/26 7/31 8/5 8/10 80 60 40 20 0 相対湿 度 ( % ) 60 40 20 0 10 30 50 温度 ( ℃ ) A B C 温度, 相対湿度 A:原産地,B:航海, C:途中寄港,D:日本倉庫 D’:日本 図3. ドライコンテナ内の温度と湿度の変化(2) ルートNo.3 8/15 8/20 8/25 8/30 B D D’

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Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 59, 2008 158 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 培養日数 (日) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 1 2 3 図4. 各ルートのモデル化温度条件

ルートNo.1 ルートNo.10 ルートNo.11

培養温度 ( ℃ ) ルートNo.4(インド)では,温度が12°C以上かつ相対湿度 が85%以上が観測されたのは,途中寄港中で1回,日本到着 後に1回であり,継続時間はそれぞれ1および3時間であった (図2). ルートNo.3および4は,湿度が比較的高い状態が長期間継 続しており,DC内の食品の水分活性の上昇が懸念される. この経路では,少量の水分の混入によって食品の水分活性 が0.85以上になる可能性があり,AF産生菌が存在した場合, AF産生が起きないとは言い切れないと考えられる. 2. モデル化航海温度におけるAF産生の予備試験 実際に航海中に食品のAF汚染が起きる可能性を調査す るため,予備試験として合成培地を用い,各ルートの測定 温度データを簡略化した条件下でAF産生菌の接種試験を 行った.航海中の温度が10°C以下のルートNo.1,10~20°C のルートNo.10および20°C以上のルートNo.11について航 海中の温度変化を実験室で再現するため,測定した温度を 基にモデル化し,図4に示した. AF-4,P-1-8およびP-2-9の3種のAF産生菌をSL培地に接種 し,各モデル化温度条件で培養後,AFの測定を行った結果 を表2に示した.使用した3種類のカビのいずれも,ルート No.1では,AFは検出されなかったが,ルートNo.10および 11では,AFの産生が認められた.ルートNo.1は,中国から のルートであるが冬期であり,温度が0.7-5.7°Cと低く,ま た,期間も3日間と短いため,AFの産生が起きなかったも のと考えられる.培養温度が15°C以上のルートNo.10およ びルートNo.11では,高濃度のAF産生が認められた.この 結果から,SL培地のように水分活性が非常に高い場合は, 輸送中の温度が15°C以上でAF産生の可能性があることが 示唆された. 3. 水分活性の異なる食品へのモデル化温度条件での接 種試験 SL培地は,水分活性がAw0.99以上と非常に高く,通常の 食品よりもAFが産生されやすいため,SL培地での結果が直 ちに食品のAF産生の可能性を示すものではない.一方,乾 燥した食品では,AF産生の可能性は低いが,輸送中に水濡 れ事故や,温度変化による結露が発生した場合,輸送中の 食品に水分活性の高い部分が生じ,その部分で,AFが産生 される可能性がある.

AFB1 AFB2 AFG1 AFG2

AF-4 ND ND ND ND P-1-8 ND ND ND ND P-2-9 ND ND ND ND AF-4 15.4±2.6 2.5±0.7 10.0±1.6 2.0±1.3 P-1-8 7.0±5.2 1.0±0.8 12.2±12.2 2.9±3.3 P-2-9 2.7±1.7 0.1±0.1 5.5±4.1 0.3±0.3 AF-4 3.6±2.3 0.6±0.3 2.5±1.2 0.1±0.0 P-1-8 1.3±0.3 0.5±0.0 0.5±0.2 0.1±0.0 P-2-9 15.7±0.8 0.9±0.5 6.5±1.1 0.4±0.1 AF-4 83.5±6.5 30.5±8.0 77.6±18.1 26.9±5.8 P-1-8 0.6±0.0 0.1±0.0 1.4±0.0 0.4±0.0 P-2-9 2.4±0.3 0.1±0.0 15.4±1.2 0.8±0.1 *衛生試験法によるAF産生能試験の条件 ** n=3,平均値±標準偏差 ND:< 0.1µg/kg 対照* 25.0 8 No.10 15.1-18.3 9 No.11 25.6-37.0 10 表2. 各輸送ルートの温度条件下のSL培地でのAF産生 培養期間 (日) AF産生量** (mg/kg) No. 1 0.7-5.7 3 ルート 菌 培養温度 (℃)

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AFB1 AFB2 AFG1 AFG2 標準 0 0.62 0 ND ND ND ND 標準 0 0.62 9 ND ND ND ND 結露 1 0.83 9 ND ND ND ND 水濡れ 10 0.99 9 2730±1050 83.0±32.5 ND ND *n=3,平均値±標準偏差 ND: < 0.1µg/kg 食品モデル 表3. 米国西海岸からの輸送ルートモデルにおける各種水分活性のコーングリッツでのAF産生 培養期間 (日) AF産生量* (µ g/kg) 水添加量 (mL) 水分活性 そこで,次に食品に水を加えて水分活性の異なる試料を 調製し,接種試験を行った.放射線照射により滅菌したコ ーングリッツ20 gに水を1および10 mL添加して,それぞれ を結露モデル,水濡れモデルとし,3段階の水分活性での AF産生の調査を行った.温度条件は,米国西海岸からの輸 送ルートであるルートNo.10の温度条件をモデル化して用 い,接種菌は,米国産コーングリッツから分離したAF-32 を使用した.なお,菌の接種に0.1 mLの菌浮遊液を使用し た. 各試料の水分活性と培養後のAF産生測定結果を表3に示 した.各種食品モデルの水分活性は,菌液のみの添加試料 (標準)ではAw0.62,結露モデル(水1 mL添加)試料はAw 0.83, 水濡れモデル(水10 mL添加)試料はAw 0.99以上であった. 培養後,AFの測定を行ったところ,水を加えない食品(標 準;Aw0.62)と結露モデル食品(Aw0.83)では,AFの産生は なかったが,水濡れモデル(Aw0.99)では,高濃度のAF産生 が認められた.今回の結果は,Aw0.85以下ではAFは産生さ れないという報告8)と一致していた.また,粟飯原らは, 輸入落花生の日本国内の保管倉庫内でのAFの産生につい て検討を行い,温度が25? 30°C,相対湿度79%以下ではAF の産生も菌の生育も認められなかったと報告している9). 使用した食品は異なるが,本研究と同様の結果であった. この結果から,この輸送ルートの温度条件では,小規模 の結露や少量の水がかかった程度ではAF汚染の心配はな いが,水濡れ事故等により多量の水がかかり,食品の水分 活性が非常に高くなった場合には,AF産生菌の存在により AF汚染が起きる可能性があることが分かった. ま ま とと めめ 世界各地から日本への海上輸送経路について,食品を搭 載したDC中の温度と湿度の推移を測定し,そのデータを 基に,輸入食品がDC内での輸送中にAFに汚染される可能 性があるかについて検討を行った結果,以下のことが分か った. DCが原産国の工場を出てから日本の港に入港し倉庫に 搬入されるまでの期間のうち,航海中は船倉内のDCは海 水温の影響を受けるため温度と湿度の変化は比較的穏や かであったが,港等でDCが野外に置かれた状態では1日サ イクルの激しい温度と湿度の変化が見られた. 今回調査した経路での温度は,AF産生が可能な範囲が 多かったが,ほとんどの輸送ルートで相対湿度が85%以上 になることはほとんど無かったため,食品が十分乾燥さ れており,事故等がなければ,輸送中にAFの産生は起き る可能性は低いと考えられた.しかし,水濡れ事故や大 規模な結露等により食品の水分活性が高くなった場合に は,AF産生菌の存在によりAFが産生される可能性がある. このような事故を起こさないこと,もし起きた場合は, 適切な処置を行うことが重要と考えられた. 謝 謝 辞辞 DC内の温度と湿度の測定にご協力頂いた食品輸入業者 の関係各位およびAF産生菌を分与して頂いた東京家政大 学一戸正勝教授に深謝致します. 文 文 献献 1) 田端節子:アフラトキシン,細貝祐太郎,松本昌雄編, 食品の安全性セミナー5,マイコトキシン,73-99,2002, 中央法規出版,東京

2) FAO:"FAO FOOD AND NUTRITION PAPER 81, Worldwide regulations for mycotoxins in food and feed in 2003", 2004, FAO, Roma,

3) 田端節子,上村尚,田村行弘,他:食衛誌,28, 395-401, 1987

4) Tabata, S., Kamimura, H., Ibe, A., et al.: J. A.O.A.C. Int., 76, 32-35, 1993

5) Tabata, S., Ibe. A., Ozawa H., et al.: J. Food Hyg. Soc. Jpn., 39, 444-447, 1998

6) 衛生試験法・注解2005,108-109,2005,金原出版(株) 東京.

7) 食品衛生検査指針・理化学編2005,562-564,2005, 日本食品衛生協会,東京

8) Samson R.A., Hoestkra E.S., Frisvad J.C., et al. (ed.): Introduction to food-borne Fungi, 4th. ed., 246-249, 1995, Centraalbureau voor Schimmelcultures, Baarn, Delft the Netherlands

9) 粟飯原景昭,一戸正勝,前田協一,他:食衛誌,26, 234-242,1985.

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Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 59, 2008 160

*

Tokyo Metropolitan Institute of Public Health, 3-24-1, Hyakunin-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 169-0073 Japan **

Nishitama Health Center, 5-19-6,Higashiohme, Ohme-shi, Tokyo, Japan

Possibility of Aflatoxin Production during Container Shipping of Food Imports

Setsuko TABATA*, Kenji IIDA*, Takashi CHIBA*, Tomoaki WAUKE*, Yumiko IWASAKI*, Atsuko MONDORI*, Shinji SATTA*, Tatsuaki TASAKI*, Hiroshi HATTORI** and Akihiro IBE*

Aflatoxin (AF), a strong carcinogenic mycotoxin, is often detected in food imports. Generally, it is considered that AF contamination occurs in the country of origin. However, the possibility of the occurrence of AF during transportation to Japan from the countries of origin shipping containers is incontrovertible. Therefore, the possibility of AF occurring during the transportation of food imports in shipping containers was examined. Data on the temperature and humidity in dry containers on 12 of transportation routes from foreign countries to Japan were collected, and the change in temperature was simplified. Foods with 3 levels of water activity were prepared by adding water to sterilized food. The foods were incubated under the simplified transportation temperature conditions after inoculation with AF-producing fungi. AF was not produced in food with water activity (Aw) up to 0.83 but a high level of AF production was found in the food with Aw 0.99.

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