日本医真菌学会標準化委員会報告
日常微生物検査における標準的真菌検査マニュアル(2013)
小 栗 豊 子
阿 部 美知子
池 田 玲 子
宇 野
潤
渋 谷 和 俊
西 山 彌 生
前 崎 繁 文
毛 利
忍
安 部
茂(委員長)
亀田総合病院臨床検査部 北里大学医療衛生学部 明治薬科大学感染制御学教室 千葉大学真菌医学研究センター 東邦大学医学部病院病理学講座 帝京大学医真菌研究センター 埼玉医科大学感染症科・感染制御科 横浜市立市民病院皮膚科はじめに
近年,わが国では国民生活の向上や衛生環境の整備に
より強毒菌による伝染病は激減したが,その半面で,易
感染患者に続発する,いわゆる日和見感染症の増加が大
きな問題になっている.なかでも真菌感染症は,細菌感
染症に比べると発生頻度は低いものの,診断や治療にお
いて難渋する場合が多く
1, 2),さらに病原菌種の多様化
も顕著であり
3−5),国際間の人的物的交流がますます盛
んになっていることを考慮すると,通常,その原因菌を
検査室で扱うのが危険とされている輸入真菌症の増加
も,当然予想される状況にある
6, 7).
一方,わが国の臨床微生物検査のうち,真菌検査は細
菌検査に比較すると検査法に施設間差があり,その標準
化が強く望まれる.真菌検査は多くの場合,細菌検査と
並行して行われているが,施設によって使用培地やその
形状,培養温度,培養日数などが異なっており,必ずし
も適切な方法で実施されているとは限らない
8).そのた
め,真菌の検出率や真菌症の診断率における施設間差が
大きいことが懸念される.
そこで,当委員会は真菌検査法の標準化が急務と考え,
現段階で適切とされる直接鏡検や分離培養などの微生物
学的検査を主体とした標準的真菌検査マニュアル(2013)
を提示することとした.このマニュアルは,わが国の標
準化された真菌検査マニュアルの作成に向けての第一歩
であり,さらに関係諸氏の協力を得て,より完成度の高
い標準法を確立することを目指している.
ઃ.臨床真菌検査法マニュアルの概要
本マニュアルの概略を Fig 1 に示した.
わが国の微生物検査室は,実験室レベル 3(P3)の設
備を備えた施設もあるが,多くはレベル 2(P2)の実験
室である.真菌検査においても安全キャビネット(タイ
プⅡ)を備えたレベル 2 以上の設備のもとで行う必要が
ある.真菌の微生物学的検査は,多くの場合,細菌検査
と並行して,またそれらと同様に以下の手順で進められ
る
9).すなわち,①臨床材料の採取・輸送・保存,②臨床
材料の前処理,③直接鏡検,④分離培養,⑤同定検査,
さらに必要に応じて,⑥抗真菌薬感受性検査が順次行わ
れる.また,微生物学的検査のほかに深在性真菌症の補
助的診断法として,⑦免疫学的検査があり,迅速・精密
検査として遺伝子検査も検討されている.以下,これら
の各段階の検査のうち,とくに直接鏡検や分離培養など
の微生物学的検査について,ポイントとなる事項を表
1∼9 に示し若干の解説を加えた.なお,これらの検査の
うち,同定検査については内容が膨大であることから,
一般的な検査手技のみを記載した.詳細については末尾
にあげた「真菌検査の参考書」を参照されたい.また,
危険度の高い輸入真菌症については「3.危険度の高い
輸入真菌症の扱い」に記載したので参照されたい.
ISSN 2185 − 6486 別冊請求先:小栗 豊子 〒 296-8602 千葉県鴨川市東町 929 番地 亀田総合病院臨床検査部 E-mail:[email protected].真菌検査法
)臨床材料の採取・輸送・保存
Table 1 に臨床材料の採取法と輸送・保存法を示した.
微生物学的検査に供する材料の採取は,病原体の含まれ
る可能性の高い材料を,周囲の雑菌を混入させないよう
に,注意深く行わなければならない.また,採取した材
料は適切な条件下で輸送され,検査の直前まで適切な環
境で保存されなければならない.材料の採取・輸送・保
存の工程で不適切な部分があると,目的菌が検出できな
いばかりか,常在菌や汚染菌を原因菌と誤って判定する
ことにもなりかねない.検体の一般的な採取の注意点は
厳守されなければならない.これらの基本は文献を参照
されたい
11−13).
いずれの材料も,採取後速やかに検査に供すべきであ
る.とくに眼科系材料は乾燥しやすいので直ちに検査す
る
14).外部委託によって検査が実施される場合は,依頼
までは材料を冷蔵保存し,24 時間以内に検査に供するこ
とが望ましい.
)各種臨床材料と検査対象とすべきおもな真菌
真菌検査に限らず微生物検査においては,それぞれの
材料から検出される可能性の高い菌種についてあらかじ
め知っておき,検査材料別の至適検査法を選択すべきで
ある.各種臨床材料とこれらから分離されるおもな真菌
について Table 2 に示した
11, 15).検査に際しては,患者
情報や検査材料など,得られた情報から直接鏡検法と分
離培地の選択や,培養日数の的確な調整などを行うこと
によって真菌の検出率をより向上させることができる.
最近,Cryptococcus gattii 感染症が話題となってい
る
16).本症は海外で感染するものと考えられていたが,
最近では渡航歴のない患者や免疫の正常な患者にも発症
し,肺病変を形成する頻度が高く,死亡率も高い.本症
は従来の日和見感染型のクリプトコックス症とは異なる
ので,今後,クリプトコックス症の検査や診断に際して
は本菌種の存在にも注意する必要がある.
危険度の高い輸入真菌症の問題があるが,これらにつ
いては現在のところ,自施設では検査をせず,専門施設
に依頼することが最善策と考えられる(「3.危険度の高
い輸入真菌症の扱い」を参照).
)臨床材料の検査前処理および直接鏡検
Table 3 に臨床材料別の前処理法および作製すべき直
接鏡検標本の種類を例示した.
皮膚科材料のうち,爪は培養陽性率をあげるためにメ
スや小ハサミを用いてできるだけ小薄片にした材料を用
いる
10, 17).検査室においても必要に応じてハサミなどを
用いて小片にする.髄液や穿刺液などの液体材料は遠心
して,その沈渣を検査する.皮膚科以外の臨床材料の前
処理法は細菌検査とほぼ同様である.
喀 痰 や 気 管 支 肺 胞 洗 浄 液(BALF)中 の 糸 状 菌 や
Cryptococcus spp.は菌数が少ないために,検出できな
い場合がある.検出率をあげる目的で,喀痰溶解剤など
で溶解後,遠心して沈渣を検査すると検出率が向上する
との報告もある
18).また,尿は膀胱炎や腎盂腎炎の検査
ではそのままを定量白金耳などで定量培養するが,
Cryptococcus spp.など特定の真菌を目的とする場合
には遠心して沈渣を検査する.
血管カテーテルについては,無菌的に細断し,滅菌生
理食塩液を少量加えて,十分混和した液の一部を染色す
る方法が用いられている
9).
)分離培養
真菌培養に用いられるおもな培地を Table 4 に,臨床
Fig. 1.標準的真菌検査マニュアル(2013)の概略検査材料 ・滅菌試験管に採取した骨髄は,4℃に 保存する.なお,一般細菌検査も必要 な場合は室温保存とする. ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. ・検査までに時間を要する場合および 一般細菌検査も同時に実施する場合は 室温で,真菌のみでよい場合は冷蔵で, 各々輸送する(接合菌などは凍結に弱 いので,凍結での輸送および保存は避 ける). 穿刺部をアルコールとヨード剤で消毒する.局所麻酔後,ヘパリ ンを添加した注射器に 0.5ml 程度の骨髄を吸引採取し,直ちにベッ ドサイドで培地に接種し、残りはサブロー液体培地などの液体培 地に接種する.同時に直接鏡検標本も作製する.Isolater 10®(試 験管内で溶血させ,遠心分離後,沈渣を接種する検査キット.現 在,国内市販品はない)システムは Histoplasma capsulatum や 他の糸状菌の検出に有用とされる.標準血液培養ボトル(好気用, 嫌気用,小児用)への接種は推奨されない.直ちに培地に接種で きない場合は,滅菌試験管に採取する. 4. 骨髄11) ・髄液:髄膜炎菌の感染も考慮し,35℃ に保存する. ・他の穿刺液:真菌(冷蔵保存) ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. ・検査までに時間を要し,真菌のみの 検査の場合は,輸送・保存とも冷蔵で 行う(接合菌などは凍結に弱いので, 凍結での輸送および保存は避ける). 髄液:腰椎穿刺または脳室穿刺により採取する.採取部位の皮膚 消毒は,アルコールとヨード剤で厳重に行い,穿刺後に自然流出 する髄液を,可能であれば 2ml 以上採取する. その他の穿刺液:採取部位の皮膚をアルコールとヨード剤で消毒 後,必要に応じ,局所麻酔を行う.穿刺後の自然流出液または吸 引によって得られる液を 2ml 以上採取する. 5.髄液, その他の穿刺液 (胸水,腹水など) 輸送・保存法注) (可能な限り短時間に抑える) ・表皮,爪,毛髪および癜風患者の鱗 屑を採取したテープは,いずれも滅菌 シャーレなどに入れ室温に保存. ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. 検査まで時間を要する場合は室温で保 存・輸送する. いずれも,患部をアルコールで消毒する. 表皮:鱗屑,痂皮,丘疹および水疱蓋などは滅菌した眼科用小ハサ ミ,ピンセットなどを用いて採取するか,歯が鈍くなった円刃メ スで出血させないよう注意して軽く削り取り,滅菌容器に入れる. 癜風患者の鱗屑:細かいので,透明粘着テープを病変部に押しあ て粘着面上に鱗屑を採取する(スコッチテープ法). 爪:爪先端を爪切りで切って除き,爪甲下層の角質を眼科用小ハ サミ,円刃メスなどで,できるだけ小片に削り取り,滅菌用器に入 れる. 毛髪:毛抜きやピンセットを用いて,容易に抜去できる毛髪(患 毛)を,毛根部を含めて採取し,滅菌用器に入れる. 1.表皮,爪,毛髪10, 17) 採取法 Table 1.臨床材料の採取法および輸送・保存法 生検皮膚組織:採取部位をヨード剤で消毒・局所麻酔後,滅菌メス を用いて採取する.材料が少量であるため乾燥し易いので,滅菌 容器に入れて湿らせた滅菌ガーゼの上などに載せて置く. 針生検組織:ヨード剤で消毒・局所麻酔後,外筒針を穿刺し内筒針 で組織をからめ採る.経気管支肺生検では,内視鏡下に検体を採 取する.開胸肺生検では,全身麻酔下で病変部近辺を開胸して検 体を採取し,滅菌容器に入れる.材料は少量なため乾燥しやすい ので,少量の滅菌生理食塩液などを加えて湿潤させる. 手術組織:手術中に採取された組織は,生検皮膚組織などと同様 に,滅菌容器に入れて湿らせた滅菌ガーゼの上などに載せて置く. 剖検組織:採取部位の表面をアルコール消毒後,さらに灼熱した スパーテルをあてて滅菌し,滅菌メスで病巣部を切り出し,滅菌 容器内の湿らせた滅菌ガーゼの上などに載せて置く. 2.組織(生検,手術,剖検) ・血液を接種したボトルは直ちに自動 検出機器にセットする. ・静置培養の場合は,血液を接種した ボトルを孵卵器に入れて培養する(採 取後,2 時間以内). ・直ちに培養できない場合は室温で保 存する(許容時間はメーカーの添付文 書に従う). ・冷蔵保存は厳禁である. 採血部位は,異なる 2ヵ所(例えば左右の肘静脈)とし,穿刺部位 を最初にアルコール,次いでヨード剤で消毒する.1ヵ所から 20ml 採血し,直ちに血液培養ボトル 2 本に 10ml ずつ接種する(1 セット).他の 1ヵ所も同様に行い,2 セット採取とする.(抗酸菌 / 真菌用ボトル(BD)を使用する場合は 5ml を接種する.)なお, 死体心血は,胸腔を開検して心嚢を切開後,直ちに右心房(右心 耳)より無菌的に採取する. 3. 血液(2 セット採取) ・冷蔵保存. ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. 検査まで時間を要する場合は冷蔵保存 し・輸送する.この際,必要に応じて, 輸送培地を用いる.
材料別の分離培養法を Table 5 に示した.
皮膚科材料の分離培養は長期間を要するので,培地が
乾燥しにくい斜面培地を用い,培養陽性率を上げるため
に,できれば 1 検体当たり 2,3 本使用する.なお,斜面
培地が準備できないなどの理由で平板培地を使用する場
合は,乾燥を防ぐためにシャーレ全周囲をビニールテー
プ(セロテープではなく)で封じ,空気の流通を確保す
るため所々に穴をあけるか,あるいは一部に封をしない
部分を残すなどの処置をする.
喀痰や BALF については,Table 3 の塗抹標本作製法
に示したように,遠心沈渣を用いることも検出率の向上
に役立つ
18).喀痰では集菌法を行わない場合には,検出
率を上げるため,分離培地に検体をできるだけ多く(ほ
ぼ小豆大)接種することが大切である.
血管カテーテルの検査には,Maki の方法
19)や Creri
の方法
20)が用いられたこともあったが,現在では(3)臨
床材料の検査前処理および直接鏡検の項に示したよう
に,カテーテルを無菌的に細断して,その洗浄液を分離
培養する方法や液体培地に接種する増菌培養法がもっぱ
ら用いられている
9).
・室温または冷蔵保存. ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. ・検査まで時間を要する場合は冷蔵で 輸送する. 耳鏡を挿入し,滅菌耳用鉗子などで外耳道の膜様物質(耳垢)をつ まみ取る.あるいは小さい滅菌綿棒や滅菌ガーゼを用いて採取す る. 11.耳垢 ・直ちに検査できない場合は,冷蔵保 存する. ・院内の検査室で実施する場合は,採 取後,速やかに検査室に届ける.検査 まで時間を要する場合は冷蔵で輸送す る. 中間尿:男性は亀頭を露出させ,消毒綿で清拭する.出初めの尿 は捨て,中間尿を滅菌コップに採取する. 女性は,外尿道口∼外陰部を消毒綿で清拭する(尿道から陰唇部へ と外側に向けて清拭).片方の手で陰唇部を開いた状態を保ち,排 尿する.出初めの尿は捨て,中間尿を滅菌コップに採取する. 留置カテーテル尿:留置してあるカテーテルの,尿道に近い部分 の表面をアルコール消毒し,そこに注射器をつけた注射針を穿刺 して,カテーテル内の尿を吸引採取する. 12.尿 ・いずれも冷蔵保存. ・院内の検査室で実施する場合は,採 取後,速やかに検査室に届ける.検査 まで時間を要する場合は,冷蔵で輸送 する. 舌および口腔分泌物:うがい後,舌圧子などを使用し,口腔内ある いは舌の白苔を滅菌綿棒に採取する. 鼻腔粘液:鼻鏡を挿入して鼻腔を広げ,滅菌綿棒や滅菌ガーゼで 分泌物を採取する. 膣分泌物:膣鏡を挿入して膣腔を広げ,滅菌綿棒で分泌物を採取 する. 8.舌および口腔,鼻腔, 膣分泌物 Table 1 の続き 注)材料の保存はできるだけ避ける.保存時間は目的菌や検体の種類にもよるが 24 時間を超えないようにする. ・いずれも冷蔵保存 ・検体の輸送法は,喀痰などに準ずる. 採取部位をアルコール消毒する.膿汁を圧出して滅菌綿棒に採 取,または注射器で膿汁や膿腫内容を吸引する. 9.膿汁,膿腫 ・いずれも直ちに検査する. ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. ・検査まで時間を要する場合は冷蔵で 輸送する. 角膜:麻酔薬を点眼後,滅菌した綿棒を用い,角膜の病巣辺縁部を 十分に擦過する.乾燥し易い材料なので,その場で培地への接種 および鏡検標本作製を行うのが望ましい. 硝子体:毛様体扁平部から穿刺あるいは硝子体手術時に採取する. 乾燥しやすい材料なので、その場で培地への接種および鏡検標本 作製を行うのが望ましい。 10.角膜,硝子体14) カテーテル刺入部の皮膚をアルコールで消毒後,カテーテルを抜 去する.抜去したカテーテルの先端 5∼7cm を無菌的に滅菌容器 に採取し,乾燥を防ぐため滅菌生理食塩液 2∼3ml を加える. Maki19)の方法(半定量培養)を行う場合は,滅菌生理食塩液を添 加せず直ちに培養する. 6.血管内留置カテーテル ・いずれも冷蔵保存,長時間の室温放 置は厳禁. ・院内の検査室で実施する場合は,採 取後,速やかに検査室に届ける.検査 まで時間を要する場合は冷蔵で輸送す る. 喀痰:早朝起床時の痰が望ましい.歯磨きやうがいをして口腔内 を清潔にし,大きく咳をして下気道(気管や気管支)の分泌物を喀 出させる.また,ネブライザーで高張食塩液を吸入させ,痰の喀 出を誘発させる方法も有用である. BALF:気管支鏡下に,滅菌生 理食塩液で肺胞を 洗浄し,回収した洗浄液を検査材料とする. 7.喀痰,気管支肺胞洗浄液 (BALF) ・冷蔵保存. ・院内の検査室で検査を実施する場合 は,採取後,速やかに検査室に届ける. ・検査まで時間を要する場合は冷蔵で, 保存・輸送する.眼科系材料はごく少量であるので,全量接種した方が
よい.角膜病巣をこすり取った綿棒は,寒天平板に接種
した後,滅菌ハサミで綿が巻かれていた部分をカットし,
そのまま平板培地において一緒に培養してもよい.
Malassezia spp.(Malassezia pachydermatis を除
く)は好脂性酵母であり,通常の培地には発育せず特殊
な培地を必要とする
21).本菌属を分離する際に,通常の
真菌用培地に臨床材料を接種し,オリーブ油を重層して
分離する方法が行われていた.しかし,この方法では,
本菌属のすべての菌種を発育させることはできないとさ
れており,市販のマラセチア用鑑別分離培地のほうがよ
り多くの菌種の発育を可能にする.ただし,Malasse-zia globosa などは良好に発育しないこともある.
)同定検査
真菌の同定については,おもな鑑別点(酵母),形態観
察(糸状菌)のポイントなどの解説にとどめた.
臨床材料から分離されるおもな酵母の性状を Table 6
に示した.子嚢菌系酵母と担子菌系酵母の鑑別にはウレ
アーゼ産生試験が簡便である.Candida albicans およ
び Candida dubliniensis とその他の Candida spp.と
の 鑑 別 に は,発 芽 管 形 成 試 験 が 有 用 で あ る.ま た,
Cryptococcus neoformans と C. gattii を そ の 他 の
Cryptococcus spp.から鑑別するにはフェノールオキ
シダーゼ試験が有用である.さらに C. neoformans と
C. gattii の鑑別には,フェノールオキシダーゼ試験陽性
を確認した後,L-Canavanine Glycine Bromthymol
blue(CGB)培地で青色を示す場合には,C. gattii と簡
易的に同定できるとされている
22, 23)(他の菌属や他の
Cryptococcus spp.も CGB 培地で青色を示すことがあ
るため,フェノールオキシダーゼ試験は必須である).
その他の病原性酵母の菌種同定は,必要に応じて Table
7 に示す酵母同定用キットあるいは微生物検査自動機器
の酵母同定用カードやパネルを使用して行う.しかしな
がら,これらの同定用検査キットもすべての菌種を完璧
に同定できるものではないことを念頭に検査する必要が
ある.
1)主要菌種のみを示した.易感染性患者に併発する真菌症においては,起因菌種が限定されず多様であることを念頭に検査する必要がある. 2)Fonsecaea spp., Exophiala spp., Phialophora spp. Cladophialophora spp.など.3)Trichophyton spp., Microsporum spp., Epidermophyton floccosum.
4)Mucor spp., Rhizopus spp., Lichtheimia(Absidia) spp., Rhizomucor spp.など.
5)二形性真菌に記載した 7 菌種のうち,S. schenckii を除く 6 菌種は輸入真菌症としてみられるもので,バイオセーフティレベル(BSL)3 に属し,危険度の高い真菌である. 鱗屑, 爪,毛髪 起因真菌1) ● ● Malassezia spp. 血管内 カテーテル ● ● ● Candida spp. 酵 母 Paecilomyces spp. Cryptococus neoformans Cryptococcus gattii 脳・ 髄液 Table 2.臨床材料から検出されるおもな真菌 ● ● ● 皮膚組織 ● ● ● 血液 ● ● 骨・ 骨髄 ● ● Dermatophytes(皮膚糸状菌)3) ● ● Fusarium spp. ● ● ● ● Trichosporon spp. ● ● Aspergillus spp. 糸 状 菌 ●d ●d ●d,e 尿d,膣e ● ● Dematiaceous fungi(黒色菌)2) ● ●a,b ●a,b ●a,b,c ●a,c ●a,b,c 鼻a, 上顎洞b, 耳c ● 口腔 ● ● ● ● ● ● 角膜, 硝子体 ● ● ● ● ● 呼吸器系 材料 ● Zygomycotic fungi(接合菌類)4) ●a,b ● ● ● ● Scedosporium spp. Schizophyllum commune ●a,b ● ● ● ● ● ● ● Blastomyces dermatitidis 二 形 性 真 菌 ●a,b ● ● ● ● ● ● Coccidioides immitis Coccidioides paosadasii Paracoccidioides brasiliensis ●d ● ● ● ● ● Histoplasma capsulatum ●d ● ● Penicillium marneffei ●a,b ● ● ● ● ● ● ● Sporothrix schenckii ● ● ● ● ● Pneumocystis jirovecii そ の 他 ●
検査材料 グラム染色 いずれの検体も不要. 膿汁,膿腫 一般的には行われない 不要 グラム染色 角膜,硝子体:不要. 硝子体還流液:2,000 × g, 10∼15 分間遠心し,その沈渣を検査に 供する. 角膜,硝子体,硝子体還流液 血液 直接鏡検標本 1)20%KOH 2)DMSO 加 20%KOH 3)インクa)加 20%KOH 4)アニリン青液b)またはアマン液な ど ※表皮および毛髪は 1)を用い,前者 は必要に応じて標本の下を軽く加温す る.後者は加温しない. ※爪は 2)を用いる,または 1)を用い た標本を下から軽く加温する. 表皮:不要. 癜風患者の鱗屑を採取したテープは,テープごと一部を鏡検,一 部を培養検査に供する. 爪:材料が大きい場合は,滅菌した小ハサミとピンセットなどで 小片とする. 毛髪:長い毛髪の場合は,1cm 程度に切断し,その複数個を検査に 供する. 表皮,爪,毛髪10, 17) 前処理法 Table 3.臨床材料の検査前処理法および直接鏡検標本作製法 1)グラム染色 2)アニリン青液またはアマン液(後者 は,黒色菌が疑われる場合,菌体の褐 色調を観察するため使用される) 3)墨汁標本(Cryptococcus spp.が 疑われる場合) ※ Sporothrix schenckii の直接鏡検 陽性率は一般的に低い. 滅菌容器(シャーレなど)の中で,滅菌メスを用いてできるだけ細 かく切り,その複数個を検査に供する. 組 織(生 検,手 術,剖 検 材 料)10, 17) 喀痰は膿性部分(これがない場合は粘液性の濃い部分)から直接, 塗抹標本を作製する.併せて,喀痰溶解剤で液化後,2,000 × g, 10∼15 分間遠心し,その沈渣を検査に供する方法も検討されてい る18). BALF:粘稠性が強い場合は喀痰溶解剤などで液化後,漿液性の場 合はそのまま,2,000 × g, 10∼15 分間遠心して,その沈渣を検査 に供する. 喀痰, 気管支肺胞洗浄液(BALF) グラム染色 いずれの検体も不要. 舌および口腔, 鼻腔,膣分泌物 不要 骨髄 1)グラム染色 2)墨汁標本(Cryptococcus spp.が 疑われる場合) 3)ギムザ染色(Histoplasma spp.が 疑われる場合) 髄液:2,000 × g, 10∼15 分間遠心した沈渣を検査する.遠心上清 は,必要に応じて抗原検査などに供する. その他の穿刺液:粘稠性の強い材料は喀痰溶解剤などで液化,漿 液性材料はそのまま 2,000 × g, 10∼15 分間遠心し,その沈渣を検 査に供する. 髄液, その他の穿刺液 (胸水,腹水 など) 1)グラム染色 2)墨汁標本(Cryptococcus spp.が 疑われる場合) 3)グロコット染色(真菌一般,Pneu-mocystis jirovecii の嚢子の観察) 4)トルイジンブルー 0(オー)染色 (P. jirovecii の嚢子の観察) 5)ギムザ染色 (P. jirovecii の栄養型の観察) 6)ディフ・クイック (P. jirovecii の栄養型の観察) グラム染色 ①滅菌した小ハサミとピンセットで 5mm 程度の長さに切り,少量 の滅菌生理食塩液に入れてバイオフィルムなどのカテーテル内容 物を洗い出す.その液を塗抹標本作製および培養に供する.ある いは,その液を 2,000 × g, 10∼15 分間遠心し,その沈渣を検査に 供する. ② Maki 方法19),Cleri らの法20)については表 5「血管内留置カ テーテル」の項を参照のこと. 血管内留置カテーテル9) 1)グラム染色 2)ギムザ染色(Histoplasma spp.が 疑われる場合)
耳垢 Table 3 の続き グラム染色 1)グラム染色 2)墨汁標本(Cryptococcus spp.が 疑われる場合) 尿の一定量(例:10 μ l)を 10 円硬貨程度の大きさにそのまま塗 抹 す る.Cryptococcus spp. な ど を 疑 う 場 合 は,2, 000 × g, 10∼15 分間遠心した沈渣を直接鏡検に供する. 尿 大きい剝離物は滅菌メス等で小片にし,その複数個を検査に供す る.
a)使用するインクは,Parker 社製 super Quink permanent black がよい(現在市販されている Parker 社製 super Quink permanent blue-black は,不適とされている).
b)発売中止になった,コットン青の代替染色液である.
備考:真菌はグラム陽性であるが viability の程度や菌種によって染色性が弱い場合や,糸状菌の菌糸はグラム陰性に染色される場合がある.
Cryptococcus neoformans お よ び C. gattii と Crypto-coccus spp. の 鑑 別 が 可 能.(C. neoformans お よ び C. gattii:褐色集落形成) BD 生平板培地 バードシード寒天培地 培地名 目 的 集落色による Malassezia 属菌種および Candida 属菌種の 鑑別が可能. オリーブ油の重層は不要. Ka 添加されている選択剤(シクロヘキシミド,クロラムフェニ コール)の雑菌抑制効果が高く,汚染の強い検体に適してい る.ただし,シクロヘキシミドは皮膚糸状菌以外の多くの病 原真菌に対して発育抑制を示す. E BD マイコセル寒天培地 備 考 Malassezia spp.を除く真菌全般に汎用される. E, K, N, BD, OX E, K, BD BD サブローデキストロース寒天 (SDA)培地a) 真 菌 全 般 クロモアガー・マラセチア/カン ジダTM ポテトデキストロース 寒天(PDA)培地a) おもな発売元b) Table 4.おもな真菌分離用培地 Malassezia spp.を除く真菌全般に汎用される. E, K, BD, OX E, K, BD 一般的な真菌用培地組成に,Tween40 やグリセリンが添加 された寒天培地. なし なし ディクソン培地(自製) クロラムフェニコールを添加した真菌用一般培地(SDA 培 地,PDA 培地など)に検体を接種後,オリーブ油を重層して Malassezia spp.を分離する.ただし,オリーブ油層には Malassezia spp.以外の微生物も発育するので,形態や脂質 要求性を確認し鑑別する.集落による菌種鑑別は不能.ま た本法で発育しない Malassezia spp.もある. E, K, N, BD, OX SDA や PDA などを使用 オリーブ油重層法(Malassezia spp.分離培養用) 生平板培地 粉末培地 生斜面培地 粉末培地 生平板培地 粉末培地 生平板培地 生斜面培地 市販品の形状 E 生平板培地 ポアメディア・Vi カンジダTM 集落色による Candida 属菌種の鑑別が可能. K 生平板培地 バイタルメディア・カラーカンジ ダTM E, K, BD, OX BD 粉末培地 生平板培地 ブレイン・ハートイン フュージョン(BHI)寒天培地 Malassezia spp.を除く真菌全般の増菌培地として用いられ る. BD 液体培地 サブロー液体培地 (増菌用) 集落色による Candida 属菌種の鑑別が可能. 集落色による Candida 属菌種の鑑別が可能. Ka,BD Ka,BD 粉末培地 生平板培地 クロモアガー・カンジダTM 酵 母 の 鑑 別 分 離 お よ び マ ラ セ チ ア 分 離 栄養要求性の高い真菌,二形性真菌,Histoplasma spp.など の分離に使用される.
a)クロラムフェニコール(CP)を添加する.培地 1ml あたり 50-100 μ g の CP を秤量して小試験管にいれ,少量のエタノールで溶解した 後,培地に加えて高圧蒸気滅菌する. b)E;栄研化学株式会社,K;極東製薬工業株式会社,N;日水製薬株式会社,Ka;関東化学株式会社,BD;Becton Dickinson, OX;Oxoid,SB;シスメックス・ビオメリュー,KB;コージンバイオ. Versa Trek:全自動血液培養装置.微生物の発育による CO2などのガス圧変化を検知する.ボトル内培地に竜巻状 の流れ(マグネチック・スターラー入り)が生じ,酸素要求 性の高い微生物の発育が速い. KB Versa Trek:好気性細菌用ボトル Table 4 の続き BACTECTM:全自動血液培養装置.微生物の発育による CO2増加と消費される O2を検出する.好気性細菌用ボト ルが多用されるが,真菌用ボトルも発売されている. BD BACTECTM:92F ボトルなど(好 気性細菌用),Myco F ボトル(抗 酸菌・真菌用),Mycosis IC/F ボ トル(真菌用) 血 液 培 養 BacT/Alert:SA ボトルなど(好 気性細菌用) BacT/Alert:全自動血液培養装置.微生物の発育により産 生された CO2を検出する.通常,真菌には好気性細菌用ボ トルを使用するが,真菌用ボトルも市販されている. SB 液体培地 液体培地 液体培地 SB 液体培地+ 平板培地(カ スタネダ型: 液 体 培 地 の 入ったボトル 内の一部に寒 天培地が貼付 けてある) ヘモリンパフォーマンス・ ディ ファジック 静置培養を行う血液培養ボトルで,カスタネダ型のため,集 落観察もあわせて行える.好気性細菌用ボトルを使用する. 使用培地の形状 検査材料 1 週 間(た だ し Histoplasma spp. は 4∼6 週 間) 35℃ (通常,細菌感染症を考 慮して 35℃で培養するが, 真菌感染症の疑いが濃厚 な場合は 25℃∼30℃また は室温培養が望ましい 血液培養ボトル 血液 おもな分離菌の 培養期間a) ・3∼4 週間 ・Malassezia spp. 分 離 の 場 合 は,2∼3 週間 25∼30℃または室温培養 (Malassezia spp. は, 32℃が望ましい) 斜面培地または平 板 培 地(Malas-sezia spp.を対象 と す る 場 合 は, Malassezia 用鑑 別平板培地または Dixon 平 板 培 地 などを使用) 表皮,爪, 毛髪 斜面培地(皮膚組 織の場合)または 平板培地(その他 の組織の場合) 培養温度 Table 5.臨床材料の分離培養法(前処理法については表 3 参照) ・皮 膚 糸 状 菌, Sporothorix schenckii および 黒色菌:3∼4 週間 ・ Histoplasma spp.:4∼6 週間 ・その他の真菌: 1∼2 週間 25∼30℃または室温培養 (Candida spp.,Asper-gillus spp.,および接合 菌については第 1 日目に 35℃で培養すると集落形 成が早まる) 組織 (生検,手術, 剖検) ・1 症例あたり 2 セット使用する. ・Malassezia spp.の分離には専用の培地を用いる. ・糸状菌(Fusarium spp., Histoplasma spp.など) の分離には真菌専用のボトル(MYCO/F, BacT/ ALERT MB ボトルなど)を用いるのがよい. ・細切した皮膚組織は,斜面培地の 3∼4ヵ所に材料 の一部を埋め込むように点状に接種する.培地は 2∼3 本使用する. ・他の組織は,細切した数片を同様に培地に埋め込 むようにして接種するか,または病巣面を平板培地 上に塗布した後に,白金耳で画線分離する. ・綿棒で採取された材料は綿棒を培地の一部に塗り 付けた後,白金耳で画線分離する. ・鱗屑や細切した材料の数片を,斜面培地の 3∼4ヵ 所に,材料の一部を培地に埋め込むように点状に接 種する.培地は 2∼3 本使用する. ・Malassezia spp.を検査対象とする場合は,鱗屑 の一部を培地に埋め込むように点状に接種する.鱗 屑を採取したテープが試料の場合は,テープの粘着 面を培地に接触させ,貼りつけたまま培養する. 接種法 25∼30℃または室温培養 平板培地に画線分離する. 平板培地 骨髄 1∼2 週 間(た だ し, Histoplas-ma spp. は 4∼6 週間
平板培地 膿汁,膿腫 1∼2 週間 綿棒で採取された材料は,綿棒を培地の一部に塗り 付けた後,画線分離する. 平板培地 Table 5 の続き 舌 お よ び 口 腔,鼻 腔,膣 分泌物 1∼2 週間 25∼30℃または室温培養 (Candida spp.,Asper-gillus spp.,および接合 菌については第 1 日目に 35℃で培養すると集落形 成が早まる) ・喀痰をそのまま培養する場合は大量(小豆大程度) を白金耳で培地に画線分離する.または喀痰を喀痰 溶解剤で均質化し,遠心した沈渣を 1 滴(30∼50μl) 平板培地に接種し,画線分離する. ・BALF は表 3 に示したように遠心して沈渣を 1 滴 (30∼50μl)平板培地に接種し,画線分離する. 平板培地 喀痰,気管支 肺胞洗浄液 平板培地 尿 1∼2 週間 ・25∼30℃または室温培 養(Candida spp.,As-pergillus spp.,および接 合菌については第 1 日目 に 35℃で培養すると集落 形成が早まる) ・Malassezia spp.が対象 の 場 合 は 32℃ が 望 ま し い. ・細切した耳垢を,平板培地の 3∼4ヵ所に,材料の 一部を培地に埋め込むように点状接種,あるいは画 線分離する. ・大量の Aspergillus spp.が存在する材料は,点状 接種の方がよい場合がある. ・綿棒で採取された材料は,綿棒を培地の一部に塗 り付けた後,画線分離する. ・Malassezia spp.を疑う材料は,表皮に準じて接 種する. 平板培地 耳垢,耳道 1∼2 週間 ・可能であれば,ベッドサイドで平板培地に全量接 種する. ・検査室で接種する場合は,可及的速やかに平板培 地に接種し,画線分離する. ・綿棒で提出された検体は,画線分離後,さらに無菌 的に綿棒をカットし,綿棒も平板培地において培養 するのもよい. 平板培地 角膜,硝子体 1∼2 週間 液性材料はそのまま,綿棒で採取された材料は,綿 棒を培地の一部に塗り付けた後,画線分離する. a)ここに記載されていない材料でも Histoplasma spp.が疑われる場合は,4∼6 週間の培養が必要とされる. 1∼2 週間 25∼30℃または室温培養 (Candida spp.,Asper-gillus spp.,および接合 菌については第 1 日目に 35℃で培養すると集落形 成が早まる) ・採取された尿を遠心せずに定量培養し,あわせて 1 白金耳量を画線分離する. ・Cryptococcus spp.などが目的の場合は,遠心沈 渣(表 3 参照)1 白金耳量を,平板培地に接種し,画 線分離する. 1∼2 週間 25∼30℃または室温培養 (Candida spp.,Asper-gillus spp.,および接合 菌については第 1 日目に 35℃で培養すると集落形 成が早まる) ・液体培地に液性材料の遠心沈渣を接種し増菌培養 する. ・平板培地には遠心沈渣を接種し,画線分離する. 液体培地および平 板培地 髄液,その他 の穿刺液(胸 水,腹水など) 1∼2 週 間(た だ し, Malassezia spp. は,2∼3 週 間 ・25∼30℃または室温培 養(Candida spp.,As-pergillus spp.,および接 合菌については第 1 日目 に 35℃で培養すると集落 形成が早まる) ・Malassezia spp.が対象 の 場 合 は 32℃ が 望 ま し い. ・液体培地にカテーテル洗浄液の沈渣を接種し増菌 培養すると同時に,平板培地にはカテーテル洗浄液 の沈渣を接種し画線分離する. ・洗浄液を遠心せず,そのまま 0.1ml 接種し定量培 養する方法もある(Cleri らの法)21). ・Maki の方法20)(半定量培養)では平板培地上でカ テーテルを 5 回転がし,画線分離する. ・Malassezia spp.を疑う材料は,専用平板培地上 でカテーテルを転がすか,または洗浄液の遠心沈渣 を接種し画線分離する. 液体培地および平 板培地 血管内留置カ テーテル
細 胞 形 態 亜球形∼球形 亜球形∼球形 集 落 性 状 菌 属 ま た は 菌 種 + − Malassezia spp. (M. pachydermatis 以外) − − *:SDA 培地における性状,S;スムース集落,R;ラフ集落,M;ムコイド集落. 1)小試験管に滅菌仔牛血清またはヒト血清を 0.5ml 入れ,白金線で被検菌体を少量(McFarland 濁度 No.0.5 程度)加えて混和し,35℃で 2 時間放置する.その後,試験管を軽く混和し,一滴をスライドガラスに採取してカバーガラスを被せ鏡検する. 2)Malassezia 属以外の酵母は,クリステンゼンの尿素培地などで検査可能. 3)下記組成のカフェイン酸培地を作製,あるいはバードシード寒天培地を使用する.被検菌を培地に画線し,25∼30℃(または室温)で, 5∼7 日間培養する.フェノールオキシダーゼ陽性菌は褐色集落を形成する. 培地組成:カフェイン酸(Caffeic acid)0.03g,コーンミール寒天粉末培地(またはブドウ糖を含まない培地)を培地 100ml 分秤量,精 製水 100ml.
4)C. albicans,C. dubliniensis, C. tropicalis,C. guilliermondii,C. kefyr,C. famata(一部の菌株)は 1%シクロヘキシミド耐性.C. krusei,C. lusitaniae,C. rugosa,C. glabrata はシクロヘキシミド感受性である.
亜球形∼球形 白∼クリーム色, S C. glabrata4) ウ レ ア ー ゼ 2) − + 亜球形∼球形 白∼クリーム色, S*/R* Candida albicans / C. dubliniensis4) クリーム色,S/R 白∼クリーム色, S/R 発 芽 管 形 成 1) Table 6.おもな病原性酵母の主要性状 − − non-albicans Candida4) (C. glabrata を除く) 出芽 出芽と仮性菌糸 出芽と仮性菌糸 ︵ 無 性 ︶ 増 殖 法 − − − − 莢 膜 形 成 − − − + 厚 膜 胞 子 − − − 出芽 亜球形∼球形 サ ー モ ン ピ ン ク 色, S Rhodotorula spp. + − − − 出芽 亜球形∼球形 クリーム色,S/R Malassezia pachydermatis 出芽 − − + 出芽 球形∼亜球形 白∼クリーム色, M*/S Cryptococcus neoformans / C. gattii + − − + 出芽 球形∼亜球形 白∼クリーム色, M*/S Cryptococcus spp. (C. neoformans /C. gattii 以外) + − − − − − 脂 質 要 求 性 + − − − 出芽,真正菌糸 とその分節,分 節胞子 亜球形∼円筒形 灰 白 ∼ ク リ ー ム 色,R Trichosporon spp. + − − − − − + − − − フ ェ ノ ー ル オ キ シ ダ ー ゼ 3) + − − − 同定可能菌種数 (検査内容) 酵母 33 菌種(糖利用能など) 酵母 52 菌種(糖,アミノ酸利用能など) 酵母 41 菌種(糖,アミノ酸利用能など) 検査キット名, 自動機器名/使用カード またはパネル 同定キットまたは 自動機器 同定用自動機器 1)バイテック 1 / YBC カード 2)バイテック 2 / YST カード 3)WalkAway Plus / RYID パネル
Table 7.酵母のおもな同定用検査キットおよび同定用自動機器 発売元 シスメックス・ビオメリュー シスメックス・ビオメリュー 酵母 47 菌種(糖利用能など) 酵母 69 菌種(糖,有機酸利用能など) 1)アピ C オクサノグラム 2)ID 32C アピ 同定用検査キット シスメックス・ビオメリュー シスメックス・ビオメリュー シーメンス・ヘルスケアダイ アグノスティクス
最近,多くの検査室において Table 4 に示した市販の
カンジダ属菌種の鑑別分離培地を用いて,分離と同時に
集落の色調から同定も兼ねて行う傾向がある
8).これら
の鑑別分離培地は,臨床材料から高頻度に検出される C.
albicans および Candida tropicalis は,ほぼ指定通り
の集落色調を示し,それだけでほぼ推定同定が可能であ
るが,その他の菌種では,前述した検査キットなどの使
用が必要となることが多い.
糸状菌同定の要点を Table 8-1 に,同定のための顕微
鏡標本の作製法を Table 8-2 に,それぞれ示した.糸状
菌は菌種によって発育速度が大きく異なり,さらには同
一菌種でも菌株によって発育速度が異なることがある.
同定に際しては,成書掲載の図を参照することが多いが,
これらは成熟した菌体における集落や顕微鏡下の形態で
あることに留意する必要がある.未成熟の状態で集落を
観察すると所定の集落色調を呈する前の状態を観察する
形態観察項目 備 考 集落形態は用いた培地によっ て多少異なることもあるので 注意する(カンジダ用鑑別分 離培地上では,集落の色が変 化するものもあるので糸状菌 集落の観察には不適である). 巨大集落を形成し観察するのが最もよいが,分離培地が SDA 培地 などであれば,分離培地上の集落を観察してもよい.また,集落は 十分に発育したものを観察する. 1)表面のみならず裏面の色調も観察し,成書の記載と照合する 2)絨毛状,綿毛状,粉末状,ビロード状,密,疎などきめの細かさ 3)巨大培養集落を用いて集落直径を計測し,成書の記載と比較する. 直径 x cm/ 培養 x 日間 / 培養温度x℃などと表記する.集落形成 の培養所要日数などからも,大凡の発育速度が表現される.3∼5 日 程度=早い,6∼10 日程度=中等度,10 日以上=遅い マクロ所見(集落の性状) 1)集落の色調(表面,裏面) 2)集落表面の外観 3)集落の発育速度 観察ポイント Table 8-1.糸状菌同定のための形態観察ポイント 顕微鏡標本作製法を表 8-2 に 示した 十分に発育・成熟した部分を観察する. 1)菌体が暗褐色を帯びているか否か(黒色菌 / 明色菌)を観察する. 2)分生子形成器官を観察し,分生子形成様式による大まかな群別を 行う(出芽型,ポロ型など). 3)①無隔菌糸と有隔菌糸の区別,②菌糸幅,③菌糸壁の性状(厚さ, 滑面か粗面か)と色調,④分生子の形,サイズ,色調,隔壁の有無, ⑤分生子壁の性状(厚さ,滑面か粗面か),などを観察する. 4)ラセン器官,厚膜胞子,分生子柄束,子嚢果など,通常の菌糸や 分生子以外の同定上重要な構造体の有無とそれらの形態を観察す る. ミクロ所見(顕微鏡下の形態) 1)菌体(菌糸/分生子)の着色 の有無 2)分生子形成器官(形成様式) の観察 3)菌糸,分生子の形態学的特徴 4)特殊器官や生殖器官の有無 とその形状 顕微鏡標本の種類 一般的な方法は成書を参照さ れたい. 輸 入 真 菌 症 が 疑 わ れ る 場 合 は,実施してはならない. 滅菌したシャーレや U 字型ガラス管などを用意して行う36)が,以 下の簡易法37,38)も用いられる. 通常の寒天平板培地を用意し,平板中央の 1cm 四方の培地を切り残 す.切り取った培地のうち,シャーレ辺縁は湿度保持のために残し, 他は捨てる.中央の 1cm 四方の寒天培地辺縁に被検菌を接種し,火 炎滅菌して冷却させたカバーガラスを被せる.7∼10 日程培養して カバーガラスに菌糸が十分付着後,カバーガラスをはがし,別に用 意したスライドガラス上の包埋液に浸して標本とする. スライドカルチャー標本 備 考 左記の方法は輸入真菌症が疑 われる場合は,実施してはな らない. 直径 1mm 程のニクロム線でカギ型白金耳を作製しておく.分離培 地上の集落の一部をカギ型白金耳の先端を培地に刺し込み,培地を 引っ掻くようにして菌体を採取し、スライドガラス上に滴下した包 埋液(アニリン青液など)の中で菌体をほぐし,カバーガラスを被せ 釣菌標本とする. 釣菌標本 標本作製法 Table 8-2.糸状菌同定のための顕微鏡標本作製法35) バイオセイフティレベルの低 い菌種について簡易的方法と して用いられる. 輸 入 真 菌 症 が 疑 わ れ る 場 合 は,実施してはならない. 透明なセロファンテープをほぼスライドガラスの長さに切りとる. テープの中央に近い部分片端の一部を,粘着面を内側にして貼り合 わせ,つまむ部分を作る.その部分をピンセットでつまみ,粘着面 を真菌集落に軽く押しつけて菌体を採取し,採取面を,別に用意し たスライドガラス上の包埋液(アニリン青液など)に浸し,テープの 上から観察する. 粘着テープ標本ことになり,同定の手がかりを失ってしまう.顕微鏡下
の形態観察に際しても特徴的な諸器官を観察するために
十分に発育・成熟した菌体を観察するよう心がける.
各種糸状菌の集落および顕微鏡下の形態については,
千葉大学真菌医学研究センターの「真菌・放線菌ギャラ
リー」
24)を,また真菌および真菌症ならびに遺伝子検査
法などの概要については帝京大学医真菌研究センターの
「真菌症関連情報」
25)を,それぞれ参照されたい.
なお,真菌同定法については,末尾に真菌検査の参考
書をあげたので,併せて参照されたい.
)抗真菌薬感受性検査
抗真菌薬感受性検査は,起因菌と決定ないし推定され
た真菌に対し,必要に応じて実施される.
抗真菌薬感受性検査マニュアルは,Clinical
Labora-tory Standards Institute(CLSI)
26, 27),本学会
28, 29)およ
び European Committee on Antimicrobial
Suscepti-bility Testing(EUCAST)
30, 31)の 3 団体がそれぞれ酵母
用ならびに糸状菌用感受性検査マニュアルを発行してい
る.CLSI 法が最も早く作成され,改訂回数も多い.本
学会の酵母用感受性検査法および EUCAST の酵母なら
びに糸状菌用感受性検査法は CLSI 法を一部改変したも
のである.判定法は,本学会の糸状菌用検査法は酸化・
還元指示薬による色の変化を,他はすべて濁度を判定す
る.なお,本学会の酵母用感受性測定法のうち,アゾー
ル系薬の終末点については CLSI 法に準ずる方法に修正
された
32).日常の検査は,微量液体希釈法(栄研化学,
極東製薬),E テスト法(シスメックス・ビオメリュー),
自動機器(VITEK:シスメックス・ビオメリュー)など
の検査キットが使用されている.詳細は市販試薬の添付
文書を参照されたい.
)免疫学的検査および遺伝子検査
Table 9-1 および Table 9-2 に,真菌症のおもな病型
における血清学的検査および遺伝子検査の有用性につい
て,それぞれ概要を示した.なかでも汎用されている(1
→ 3)-β-D-グルカンの測定はおもにアスペルギルス症,
カンジダ症に適用され,クリプトコックス症や接合菌
(Rhizopus spp., Rhizomucor spp.など)症では適用さ
れない.また,透析中,レンチナン投与,免疫賦活薬,
漢方薬などの投与で高値を示す点にも注意しなければな
らない
33).これらは,検査法や検査キット間で検出感度
や特異性に差がある点や,病型や病期によっても有用性
が異なる点に留意して使用すべきである.なお,アスペ
ルギルスのガラクトマンナン検出系(ELISA 法)の陽性
カットオフ値は基礎疾患によって異なる
33).
અ.危険度の高い輸入真菌症の扱い
近年,さまざまな輸入真菌症が増加する傾向にあり,
その疑いがある場合は,バイオハザード対策上,未経験
者が自施設で検査することはきわめて危険である
6, 34).
これらの原因菌種はバイオセイフティレベル 3 であり,
臨床検査室で日常行われているような寒天平板培地を用
いた検査法では感染リスクが高いので,決して行っては
ならない.例えば,Coccidioides spp.(C. immitis, C.
posadasii)はわが国での輸入真菌症として比較的多く
みられ,取扱い上,業室感染を起こしやすい最も危険な
菌種とされている.Coccidioides spp.の分節型分生子
は特に飛散しやすく,寒天平板培地のフタを不用意に開
けたりすると,分生子が飛散して環境を汚染させ,検査
室内の就業者などに感染が及ぶ危険性が高い.輸入真菌
症原因菌を安全に取扱うためには,平板培地に培養して
しまった場合はフタを開けずに集落を観察する必要があ
る(本来,発育した集落はフタを開けずに,この時点で
専門の検査施設へ同定を依頼すべきである).また,や
むを得ず培養する場合には,斜面培地を用いなければな
らない.さらに鏡検による形態観察の必要が生じた場合
は,生菌を用いた標本作製は厳禁で,ホルマリンなどで
あらかじめ殺菌しておく必要がある.当然ながらスライ
ドカルチャーも厳禁である.いずれにせよ,輸入真菌症
が疑われる場合は自施設での検査は原則として行うべき
ではなく,専門の研究施設に検査を依頼すべきである
6).
輸入真菌症の疑いがある場合,その対応を相談できる施
設を本項の末尾に記載した.
臨床的に輸入真菌症を疑うきっかけとなるのは,患者
が外国人であることや,流行地での長期滞在者であるこ
と,輸入真菌症を否定できない臨床症状を呈しているこ
となどがあげられている.これらの患者情報から輸入真
菌症の疑いが濃厚である場合は,臨床医および検査室と
もに可及的速やかに専門施設と連絡を取り,塗抹・培養
用の検体採取や血清診断の依頼について相談するのが望
ましい.その為にはこれらの患者情報が検査担当者に知
らされることが必須となる.輸入真菌症について臨床
医,臨床検査技師ともにあらかじめ知っておくべき事項
を Table 10,Table 11 に示した.こうした症例に遭遇
した場合に迅速に対応できるよう,日頃から心がけてお
く必要がある.臨床医は,検査をオーダーする医師から
検査室に提供される患者情報が,原因菌検出にとってき
わめて重要であることを,是非とも認識しておかなけれ
ばならない.一方,検査室においては,これらの患者情
報が記載漏れにならないよう,検査依頼票あるいは検査
システムのオーダー画面の工夫をしておく必要がある.
また,検査室では輸入真菌症原因菌を偶然に検出する場
合もあり得るので,このような危険度の高い真菌につい
ては,あらかじめ,発育日数,集落性状,形態学的性状
の特徴,患者背景などについて十分な知識を備えておく
ことが肝要である.
各 血 清 学 的 検 査 の 反 応 性a) 1)ファンギテッ ク G テスト MK Ⅱ「ニッスイ」 2)βグルカンテ スト ワコー 播種性クリプトコックス症 検査項目 ⑤ ①, ②, ③, ④ ①, ②, ③, ④ おもな検査受託会社b)および 検査依頼可能施設c) ヒ ス ト プ ラ ス マ抗体 ア ス ペ ル ギ ル ス抗体 (1 → 3)-β-D-グ ルカン 中枢神経系クリプトコック ス症 ◎ Table 9-1.真菌症の主要病型における血清学的検査の反応性 検査キット ①, ②, ③, ④ 1)ユニメディカ ンジダ 2)カンジテック カンジダ抗原 ◎ ①, ② セロダイレクト クリプトテスト クリプトコック ス抗原 ①, ②, ③, ④ プラテリア アスペルギルス AgEIA アスペルギルス 抗原 ⃝ アレルギー性気管支肺アス ペルギルス症 ◎ 肺クリプトコックス症 ⃝ ◎ カンジダ血流感染症 病 型 ◎ ⃝ 慢性肺アスペルギルス症 ⑤ コクシジ オイデス 抗体 ◎ ◎ 侵襲性肺アスペルギルス症 侵襲性フサリウム症 ○d) ◎ トリコスポロン血流感染症 ◎ ニューモシスティス肺炎 ◎ ◎ コクシジオイデス症 ◎ ◎ ヒストプラスマ症 a:反応陽性率)◎;高い,⃝;やや高い. b)①;SRL,②;BML,③;三菱 BCL,④;大塚アッセイ研究所 c)⑤;千葉大学真菌医学研究センター d)クリプトコックスと部分的共通抗原を有するための交差反応で,参考程度に用いる. ◎ パラコクシジオイデス症 ◎ 検査項目 ◎ ⃝ ◎ カンジダ血流感染症 慢性肺アスペルギルス症 侵襲性肺アスペルギルス症 ニューモシスチス肺炎 病 型 ニューモシスチス 遺伝子診断c) Geni-Q アスペルギルスb) Table 9-2.真菌症の主要病型における遺伝子検査の有用性 ①, ③, ④ ④ おもな検査受託会社d) ◎ ④ Geni-Q カンジダb) 各遺伝子検査の有用性a) a)◎:有用,⃝;やや有用 必ずしもすべてが抗原検出系に比し検出感度が高い訳ではなく,血清学的検査と同様に偽陽性および偽陰性も存在する. b)real time PCR.
c)PCR,real time PCR,LAMP.
病原菌種 真菌症 Histoplasma capsulatum var. duboisiic) おもな感染経路 経気道感染 分生子で汚染された 土壌 Coccidioides spp.a) コクシジオイデス症 Histoplasma capsulatum var. capsulatumb) おもな感染源 Table 10.輸入真菌症のおもな流行地(原因菌の生息地)と感染獲得様式 (文献 34 の表 1 を,許可を得て一部改変して引用) 分生子を含むコウモ リやトリの糞,また はそれで汚染された 土壌 ヒストプラスマ症 中央アフリカ:ナイジェリア,チヤド,ザ イール,コンゴ,カメルーンなど 北米:米国のミシシッピー川流域(オハイ オ渓谷,ミシシッピー渓谷など) 中南米:メキシコ,グアテマラ,ブラジル, ベネズエラ,アルゼンチンなど ヨーロッパ:地中海沿岸(イタリア,トルコ など) 東南アジア・オセアニア:タイ,中国,台 湾,フィリピン,シンガポール,インドネシ ア,マレーシア,バングラディッシュ,イン ド,オーストラリアなど 北米:米国西南部諸州(アリゾナ,カリフォ ルニア,テキサス,ニューメキシコ,ユタ, ネバダなど) 中南米:メキシコ,ベネズエラ,アルゼンチ ン,ブラジル おもな流行地 分生子で汚染された 土壌または感染動物 北米:米国東北部(特に五大湖からミシシッ ピー流域,ウイスコンシン州) アフリカほぼ全土,中近東(サウジアラビ ア,イスラエル),インド Blastomyces dermatitidis ブラストミセス症(北 アメリカ分芽菌症)
a)以前は C. immitis が唯一の病原菌種であったが,最近,C. posadasii が加えられた. b)カプスラーツム型ヒストプラスマ症の原因菌.
c)ズボアジイ型(アフリカ型)ヒストプラスマ症の原因菌.
d)H. capsulatum var. farciminosum とも呼ばれ,ファルシミノーズム型ヒストプラスマ症の原因菌. 分生子で汚染された 土壌(?) 東欧,中近東(エジプト、スーダン),イン ド,日本(?) Histoplasma farciminosumd) 経気道感染,または 汚染植物による刺創 を介しての皮膚,粘 膜への感染 分生子で汚染された 土壌・植物 中南米諸国,特にブラジル,コロンビア,ベ ネズエラ Paracoccidioides brasiliensis パラコクシジオイデ ス症(南アメリカ分芽 菌症) 経気道感染,または 感染動物との接触に よる皮膚・粘膜への 感染 経気道感染(?) 分生子で汚染された タケなどの植物(?) 中国南部(特にベトナム国境地帯),ベトナ ム(特に北部山岳地帯),タイ,マレーシア, インド東部,ミヤンマー,シンガポール, フィリピン Penicillium marneffei マルネッフェイ型ペ ニシリウム症 経皮感染(?) 患者情報 ・流行地由来の原綿を取り扱って感染した事例がある(コクシジオイデス症) 流行地から輸入された原材料との接触歴 備 考 ・流行地での数時間滞在で感染した事例がある(コクシジオイデス症) ・患者は流行地の長期(数年∼数十年)居住者に限られる(パラコクシジオイデス症) 流行地への旅行歴と居住歴 Table 11.あらかじめ臨床医が臨床検査室へ伝えておくべき輸入真菌症関連の患者情報 (文献 34 の表 3 を,許可を得て転載) ・流行地での野外生活,土木・発掘作業などで感染しやすい(コクシジオイデス症) ・コウモリの住む洞穴内での感染例が多い(ヒストプラスマ症) 流行地での生活・行動 臨床症状・画像所見 ・重い免疫不全を伴うような基礎疾患(AIDS, 血液悪性腫瘍,臓器移植,長期ステロイド療 法など)を持つ患者では,既存感染の活性化や再燃が起こりやすい(すべての輸入真菌症) 基礎疾患 ・呼吸器症状や胸部 X 線異常所見および(または)皮膚・粘膜の病変を呈することがある (すべての輸入真菌症)
【輸入真菌症について相談できる施設】
輸入真菌症に関する相談は下記の窓口に電話または
メールで問い合わせの上,お願いすること.
①千葉大学真菌医学研究センター臨床感染症分野
亀井克彦(TEL:043-226-2491,E-mail:k.kamei@
faculty.chiba-u.jp)および
②千葉大学真菌医学研究センターバイオリソース管理室
矢口貴志(TEL:043-226-2790,E-mail:t-yaguchi@
faculty.chiba-u.jp)
③国立感染症研究所生物活性物質部〔http://www.nih.
go.jp/niid/ja/from-bioact.html〕)
宮崎義継(TEL:03-4582-2720,E-mail:ym46@nih.
go.jp)
おわりに
以上,真菌検査法の概略について記述した.真菌の検
査法については,国内外を問わずすでに多くの手引書が
出版されている.しかし,これらが日常検査に十分反映
されていないところに問題がある.本マニュアルでは真
菌症の診断に欠かせない患者検体からの病原真菌の検出
に重点を置き,患者検体の顕微鏡検査と分離培養につい
て解説した.病原真菌の検出漏れを防ぐための方策を検
討し,検査,臨床の両領域にこれらの情報を提供し,理
解を深めてゆくことが今回のマニュアル作成の目的であ
り,今後,内容の一層の充実を図り,我が国の日常検査
に広く受け入れられるものとしたい.
謝
辞
本マニュアル作成にあたり下記の先生方のご校閲を受
け,また,本学会のホームページで公開した際,一部の
方々から貴重なご意見をいただきました.各先生方のご
意見を参考にさせていただき改定いたしましたが,すべ
てのご意見をいれることはできませんでした.ここに深
甚なる感謝を申し上げるとともに,おわび申し上げる次
第です.
(五十音順) 亀井克彦(千葉大学真菌医学研究センター) 川上小夜子(帝京大学医学部附属病院 感染制御部) 菊池 賢(順天堂大学医学部 感染制御学) 木下承晧(神戸大学医学部附属病院 医療技術部) 久米 光(北里大学医学部 病理学) 幸福 知己(兵庫県立西宮病院 検査・放射線部) 永沢善三(佐賀大学医学部附属病院 検査部) 西村和子(千葉大学名誉教授,独協医科大学特任教授) 槇村浩一(帝京大学医真菌研究センター) 矢越美智子(日本大学医学部附属板橋病院 臨床検査部) 山口英世(帝京大学医真菌研究センター) 文 献 1)池本秀雄:内科真菌症 50 年の回顧−治療に関連する問題 を 中 心 に −.日 本 医 真 菌 学 会 50 周 年 記 念 誌,pp. 125-128, 日本医真菌学会, 2006.2)Kume H, Yamazaki T, Togano T, Abe M, Tanuma H, Kawana S, & Okudaira M: Epidemiology of visceral mycosis in autopsy cases in Japan. Comparison of the data from 1989, 1993, 1997, 2001, 2005 and 2007 in annual of pathological autopsy cases in Japan. Med Mycol J 52: 117-127, 2011. 3)鐘野勝洋:造血幹細胞移植と Fusarium solani 感染症. 真菌誌 44: 187-191, 2003. 4)木村由美子,斎藤若菜,川上健司,松尾秀徳,西本勝太 郎:肺膿瘍,多発性脳膿瘍をきたした Scedosporium apiospermum 感染症の 1 例.日本臨床微生物学雑誌 14: 9-13, 2004. 5)増永愛子,森本耕三,安藤常浩,生島壮一郎,武村民子, 折津 愈:スエヒロタケによるアレルギー性気管支肺真 菌症の 3 症例.日本呼吸器学会雑誌 48: 912-917, 2010. 6)亀井克彦:教育シリーズ;Deep seated mycosis 輸入真
菌症とその問題点.真菌誌 53: 103-108, 2012. 7)佐野文子:[話題の感染症]ヒストプラズマ症の最新の知 見−家庭内飼育動物が罹患したら−.モダンメディア 55: 36-45, 2009. 8)阿部美知子,黒崎祥史,小川善資,久米 光:臨床真菌検 査に関するアンケート調査成績− 1994 年,2002 年およ び 2010 年の調査成績の比較−.日本臨床微生物学雑誌 22: 135-145, 2012. 9)小栗豊子:Ⅳ.検査材料別検査法と検出菌.臨床微生物 検査ハンドブック第 4 版(小栗豊子編),pp.45-95, 三輪 書店, 東京, 2011. 10)丸山隆児:教育委員会真菌学講座 6:皮膚科領域 皮膚真 菌症の診断法.真菌誌 49: 329-334, 2008.
11)McGowan KL: Specimen collection, transport, and processing: mycology. In Manual of Clinical Micro-biology, 10th ed(Versalovic J et al. ed), vol. 2, pp.
1756-1766, ASM Press, Washington DC, 2011. 12)小栗豊子:Ⅲ.微生物検査材料の採取と保存.臨床微生 物検査ハンドブック第 4 版(小栗豊子編),pp.35-43, 三 輪書店, 東京, 2011. 13)相 原 雅 典:Ⅱ.真 菌 検 査 の 進 め 方,1)材 料 採 取 法. Medical Technology 23(増刊号):543. 551, 1995. 14)亀井裕子,石橋康久:XXIV.検体採取法,1.微生物検 査.眼科検査法ハンドブック(丸尾敏夫ほか編),pp. 394-396,医学書院, 東京, 1999.
15)Shea Yvonne: General approaches for direct detec-tion of fungi. In Manual of Clinical Microbiology, 10th
ed(Versalovic J et al. ed),vol. 2, pp.1776-1792, ASM Press, Washington DC, 2011. 16)宮崎義継,金子幸弘,梅山 隆,田辺公一,大野秀明: Cryptococcus gattii 感染症.感染症 42: 172-175, 2012. 17)山口英世,内田勝久,久米 光,篠田孝子,渡辺一功,楠 俊雄,比留間政太郎,石崎 宏:日本医真菌学会標準化 委員会報告(1992∼1994 年),指針 皮膚糸状菌の検査 法 Ⅰ.直接鏡検法.真菌誌 36: 79-81, 1995. 18)阿部美知子,小川善資,田沼弘之,久米 光:真菌症の微 生物学的検査法の基礎的検討−検体処理と分離培養−. 真菌誌 50: 235-242, 2009.