タイトルタイトル
民主主義に 未来はあるか
2018/8
新国際時代を読むための情報・解説がここに
タイトルタイトル
民主主義に 未来はあるか
新国際時代を読むための情報・解説がここに
国別好感度調査
対米感情悪化、対北交渉で失望感漂う
渡辺 公美子 時事通信社外信部記者
金委員長、異例のワーキングランチ登場
西川 恵 毎日新聞社客員編集委員 (写真はAFP=時事、EPA=時事)
池滝 和秀 中東ジャーナリスト
運転解禁で期待される女性の社会進出
脱石油の経済改革進むサウジ
Economy
真壁 昭夫 法政大学大学院教授
高まる中国経済の減速懸念
湯淺 墾道 情報セキュリティ大学院大学教授
カリフォルニア州で新たな消費者プライバシー法
Middle East
諦めた「パスポート」制度の代償
英EU離脱、欧州金融部門の正念場に
高岡 秀一郎 時事通信社外経部編集委員
GEOECONOMY
54
60
64
68
74
78
50 金正恩中国詣では国内対立が背景か
幕を開けた朝鮮半島で戦争が起きない時代
重村 智計 東京通信大学教授
42 9月ごろに米朝交渉で進展か
トランプ政権の非核化こだわりが鍵
礒﨑 敦仁 慶應義塾大学准教授 interview
interview
55
e-World Premium Vol.55 INDEX
4
in sight真夏の夕陽、ヒマワリ輝く
18 「ナイスガイ」から「ヒトラー」へ
プーチン氏の「戦術的」大転換-ロシア
名越 健郎 拓殖大学海外事情研究所教授
36 未来はデモクラシーの再生に懸けるほかない
呉 軍華 (株)日本総合研究所理事
32 習近平時代の政治運営とリスクー中国
角崎 信也 日本国際問題研究所研究員
松谷 稔 フォトグラファー
28 金正恩と朝鮮半島の民主主義
小倉 紀蔵 京都大学大学院教授
22 エルドアン体制は強権的か
新たに広範な権限握る-トルコ
間 寧 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所中東研究グループ長
8 民主主義の中で権力独占が広がる
最大の懸念はトランプ氏
藤原 帰一 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授 interview
interview
民主主義に未来はあるか 特集 I
冷戦の終結とソ連崩壊によって民主主義が勝利し、「歴史は終焉した」
ともいわれた時代から、30年近くが過ぎた。今、世界ではその民主主義 の制度の中で選ばれた指導者が政治権力を独占し、既成秩序に挑戦する 現象が表れ始めた。トランプ米大統領はその典型だ。民主主義に未来は あるのだろうか。写真は1991年8月、リトアニアの首都ビリニュスで、ク レーンにつるされ撤去される巨大なレーニン像。(AFP=時事)
cover story
非核化めぐり続く神経戦 特集 II
Cyber Intelligence
国別好感度調査
対米感情悪化、対北交渉で失望感漂う
渡辺 公美子 時事通信社外信部記者
金委員長、異例のワーキングランチ登場
西川 恵 毎日新聞社客員編集委員 (写真はAFP=時事、EPA=時事)
池滝 和秀 中東ジャーナリスト
運転解禁で期待される女性の社会進出
脱石油の経済改革進むサウジ
Economy
真壁 昭夫 法政大学大学院教授
高まる中国経済の減速懸念
湯淺 墾道 情報セキュリティ大学院大学教授
カリフォルニア州で新たな消費者プライバシー法
Middle East
諦めた「パスポート」制度の代償
英EU離脱、欧州金融部門の正念場に
高岡 秀一郎 時事通信社外経部編集委員
GEOECONOMY
54
60
64
68
74
78
50 金正恩中国詣では国内対立が背景か
幕を開けた朝鮮半島で戦争が起きない時代
重村 智計 東京通信大学教授
42 9月ごろに米朝交渉で進展か
トランプ政権の非核化こだわりが鍵
礒﨑 敦仁 慶應義塾大学准教授 interview
interview
55
e-World Premium Vol.55 INDEX
4
in sight真夏の夕陽、ヒマワリ輝く
18 「ナイスガイ」から「ヒトラー」へ
プーチン氏の「戦術的」大転換-ロシア
名越 健郎 拓殖大学海外事情研究所教授
36 未来はデモクラシーの再生に懸けるほかない
呉 軍華 (株)日本総合研究所理事
32 習近平時代の政治運営とリスクー中国
角崎 信也 日本国際問題研究所研究員
松谷 稔 フォトグラファー
28 金正恩と朝鮮半島の民主主義
小倉 紀蔵 京都大学大学院教授
22 エルドアン体制は強権的か
新たに広範な権限握る-トルコ
間 寧 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所中東研究グループ長
8 民主主義の中で権力独占が広がる
最大の懸念はトランプ氏
藤原 帰一 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授 interview
interview
民主主義に未来はあるか 特集 I
冷戦の終結とソ連崩壊によって民主主義が勝利し、「歴史は終焉した」 ともいわれた時代から、30年近くが過ぎた。今、世界ではその民主主義 の制度の中で選ばれた指導者が政治権力を独占し、既成秩序に挑戦する 現象が表れ始めた。トランプ米大統領はその典型だ。民主主義に未来は あるのだろうか。写真は1991年8月、リトアニアの首都ビリニュスで、ク レーンにつるされ撤去される巨大なレーニン像。(AFP=時事)
cover story
非核化めぐり続く神経戦 特集 II
Cyber Intelligence
真夏の夕陽、ヒ マ ワ リ輝く
田んぼや畑が川沿いに続くのどかな田園風景の中に夕陽に照らされて黄金色に輝くヒマワリ畑を見つけた。場所は横浜市青葉区恩田。数年前から休耕田にヒマワリを植えているらしい。(フォトグラファー 松谷稔)
in sight
米紙ワシントン・ポストの1面題字の下にある「民主主義は暗闇の中で死ぬ」というスローガン(時事)
民主主義に未来はあるか
米紙ワシントン・ポストの1面題字の下にある「民主主義は暗闇の中で死ぬ」というスローガン(時事)
民主主義に未来はあるか
特集 I
interview
帰一教授に見解を聞いた。(インタビューは7月
間裕貴)学の国際政治学者、藤原大統領が権力集中を進め 映像センター写真部本響を与えている。東京大主席やロシアのプーチン 委員杉山文彦、写真=法で国際情勢に重大な影めた。中国の習近平国家 聞き手=時事通信社解説統領も、独善的な政治手界に近年、異変が起き始 20日、一」を掲げるトランプ大念と思われていた現代世 て強権化し、「アメリカ第民主主義が普遍的な理
インタビューに応じる藤原帰一・東京大学教授
民主主義の中で
権力独占が広がる
最大の懸念はトランプ氏
藤原 帰一氏に聞く
特集 I 民主主義に未来はあるか
ここで出てくる問題は、民主主義の中から、特に議会を停止するわけでも何でもなく、国民に選ばれた指導者が、権力を独占する現象なんです。
なぜ民主主義と独裁という区別ではなくて、民主主義の中での権力集中と申し上げているかといえば、ここで失われているのは民主主義ではなくて、自由主義なのです。細かい言葉遣いになりますが、権力の制限とその制度、法による支配、これは自由主義の考え方であって、民主主義とは緊張関係がある。国民の選挙によって選ばれた指導者の権力が、何で制限されなくちゃいけないのか。民主主義という立場から見れば、むしろそれはおかしい。ただ、権力が独占されてはならないとい 言いながら、現在は裁判所が、行政府の決定を覆すことなど考えられないほど弱体化している。議会も全く同じです。マスメディアについて言えば、政府に反対した場合には報道が禁止される。ジャーナリストが殺される。 トルコのエルドアン大統領は、もともとかなり利益調整を行うタイプの首相として登場した人でしたが、権力の集中を行いました。先日(6月
能になっています。 限することは実際上不可 権力を裁判所や議会が制 の選挙の結果、大統領の 24日)
また、ハンガリーのオルバン政権も、ただ移民に対して強硬な立場を取るだけではなく、行政府の権力への挑戦を取り除くという動きになっている。 有権者がそれを支持する動きだろうと思います。 ─確かに選ぶ方も選ぶ方ですね。 藤原氏 この一連の流れで何よりも議論しなければいけない最大の出来事は、やはりトランプ大統領の登場です。大統領の下で裁判所による権力の規制が実質的に無視される。下院、上院の法案の議決に正面から挑戦する。マスメディアをまとめて「フェイクニュース」と言う。そんなトランプが固い支持を持っているわけです。支持率が4割を下がらない。 ロシアのプーチン大統領も支持率が非常に高い。7割を切らないんです。もちろん選挙で選ばれた指導者です。そうは ─世界各地で強権的、独裁的な指導者が増えているような最近の状況をどのように見ていますか。 藤原帰一・東京大学教授 独裁政権が世界で拡大しているというよりも、選挙で選ばれた指導者に政治権力が集中し、政治的な競合とか権力への制限を排除する方向が強まっているということではないかと思います。 中国、ベトナム、北朝鮮などストレートな独裁政権はまだ残り、サウジアラビアなど湾岸諸国にも大変古典的な専制支配があります。その意味では独裁がないとは言えませんが、現在増えているのは、むしろ選挙によって選ばれた指導者が、政治権力をこれまで考えられなかった形に拡大し、
interview
の協力を強め、アメリカだけが負担しない秩序をつくっていくことです。リーダーシップという言葉がありますが、それは支配、統制とは少し違います。相手が賛成しなくてはいけない。ブッシュ(子)政権もアフガン、イラクの混乱後はヨーロッパ諸国に協力を求めたりする方向に変わってきました。オバマ前大統領はそれに近かったと思います。それでアフガン、イラクからの撤兵を掲げた。経済的に見れば、金融危機後の復興がオバマ政権の最大の課題だった。金融秩序の再建は主要経済大国との協力なしにできない。アメリカが他の国を誘い込むことで秩序を形成していった。
そういった流れから見ると、今のトランプ政権 米軍の犠牲に弱いことです。自分たちが犠牲を払うような戦争は非常に苦しいわけですね。それはもうアフガニスタン、イラク、二つの戦争で嫌というほど思い知らされることになった。 経済について考えれば、いかにアメリカが優位に立っていても、だから他の国が従うわけではない。単独行動主義、ユニラテラリズムといわれた時代のことを中心に『デモクラシーの帝国』に書きましたが、その方向はアフガン、イラクへの介入が大きな不安定を生み出し、さらに世界金融危機への対応がアメリカ一国ではとてもできないことがはっきりして、ここで挫折することになったと思います。 二つ目の方向は、優位に立ちながらも他の国と リカの主導していた世界が、変わってきたのでしょうか。 藤原氏 アメリカの他の国に比べた軍事力、経済力の優位は、東西冷戦が終わった後、大変大きなものになりました。ここでアメリカが他の国にどう関わっていくのかを考えるときに、幾つかの方向の違いがあります。 一つは、アメリカは既に圧倒的な優位に立ったのだから、他の国の協力を求めることなく、独自に行動を取ることができる。これは力が圧倒的に強いときには可能に見えますが、難しい点がある。というのは、軍事的にアメリカが単独で戦争に勝つ力があるかと言えば、必ずしもそうではない。米軍の一番の弱みは、 うこの自由主義の考え方と、普通選挙に基づくことによって初めて国民の代表になるという民主主義の考え方が組み合わさって、現在の制度をつくっている。逆に言えば、民主政治という枠の中で権力の集中が生まれる可能性は常にあると言わなければいけない。それが今広がっているという認識です。 アメリカ主導の 世界の挫折
─先生がお書きになった『デモクラシーの帝国』(岩波新書、2002年)では、「ボスのいる世界」というものが冷戦終結後に誕生し、常にアメリカがボスになり他の国がついていく状況ということでした。そのようなアメ
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e-World premium 特集 I 民主主義に未来はあるか
立場を取る。しかし、国際協力は基本的にしない。もう今はどの国も思い知らされているのではないでしょうか。トランプ政権の誕生というのは、それくらい大きな出来事になります。
─それは世界の今までの理念から見ると、マイナスということですね。
藤原氏 プラスの要素はゼロじゃないでしょうか。国際秩序をアメリカの大統領が破壊して、その破壊の規模は多くの人の想定をはるかに上回っているという状況にまでなっていると思います。今はもう野火、山火事が広がっている最中ですから、波及効果がどんどん出てくるでしょう。ネガティブな波及効果ですね。… は正反対です。力で優位に立っている前提が、ブッシュ時代ほど明確ではない。むしろ他の国によってアメリカが犠牲にされているという認識が中心で、だから他の国との関係をアメリカに有利なものに変えていかなければいけないと。これは単独行動主義とは違います。 トランプの場合には、国際機構とか国際協定はアメリカをだしに使ったり、アメリカに犠牲を強いたりするものだから、全部見直していこうという判断になる。そこで、大変珍しい組み合わせですが、孤立主義、保護主義という立場と、力の誇示がセットになる。国際関係から全面的に引いていくという意味ではなく、力を誇示することで、相手に対して優位に立とうという