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(1)

保育者養成校におけるドラマ教育を生かした授業で 学習する内容の検討−教育実習担当教員との連携を 通して−

著者 山本 直樹, 渡邉 望, 下川 涼子

雑誌名 こども学研究

巻 3

ページ 55‑80

発行年 2021‑03

URL http://id.nii.ac.jp/1118/00001352/

(2)

要旨:

 本研究の目的は、保育者養成校においてドラマ教育を生かした授業の学習内容を 振り返り、保育者養成授業として不足する点及び十分でない点を複数の教員で協議 し、対象授業の改善点を明らかにすることである。

 保育者養成校における演劇表現を学習する授業として、対象授業である「ドラマ 表現演習」に不足すると考えられる内容は、他の表現媒体の要素が含まれる活動で あることがわかった。また、十分でない点があるため改善すべきと考えられるのは、

「劇遊び」のワークシートに関する内容、「劇遊び」において学生が模擬指導をす る内容、演劇創作に関する内容であることがわかった。これらの点を改善すること で、次年度以降の授業がより保育者養成において有意なものになると考えられる。

キーワード:演劇表現、学習内容、保育者養成校

Keywords:Theater and Drama express Learning contents Childcare training school

1 長野県立大学 健康発達学部 こども学科 准教授 Naoki Yamamoto   The University of Nagano Faculty of Health and Human Development   Department of Child Development and Education Associate Professor

2 長野県立大学 健康発達学部 こども学科 准教授 Nozomu Watanabe   The University of Nagano Faculty of Health and Human Development   Department of Child Development and Education Associate Professor

3 特定非営利活動法人 アートインライフ 講師 Ryoko Shimokawa   ART IN LIFE Specified Nonprofit Corporation Lecturer

保育者養成校において演劇表現を学習する授業内容の検討

-教育実習担当教員との連携を通して-

A study on learning contents in drama education class in childcare training school.

: Analysis through collaboration with teachers in charge of practical training

1

山本 直樹、

2

渡邉 望、

3

下川 涼子

Naoki YAMAMOTO Nozomu WATANABE Ryoko SHIMOKAWA

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1 研究の背景

 本研究の課題設定理由は3点ある。1点目は、保育者養成校における演劇表現に 関する学習は未整理な点が多い点。2点目は、その中でも特に内容に関しては課題 が多いと考えられる点。3点目は、演劇表現授業をより保育者養成としての価値を 高めるためには保育専門教員との連携を試みるなどの工夫が必要と考えられる点で ある。以下、順に説明する。

 演劇表現に関する授業の開講義務は保育者養成校にない。しかし、学生による演 劇表現活動は積極的に行われている。その理由として、まず、保育現場において保 育者養成校が参考にするような演劇表現活動が行われていることが挙げられる。次 に、保育の基準である「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」などの中で、領域

「表現」において「自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだ りするなどの楽しさを味わう」1 2 活動として演劇は、位置づけられていることが挙 げられる。そして、OECD教育研究革新センターが「演劇の訓練をすることは、読 解力や物語の理解といった幅広い言語能力を高めるという、明確な因果関係を示す エビデンスがある」3 とその汎用的価値を強く指摘するように、演劇表現活動を通 して保育者養成校学生の言語的・社会的コミュニケーション能力の向上などに期待 が寄せられていることが挙げられる。

 飯塚(1960)4 によれば、演劇に不可欠な要素とは、行動する主体の「俳優」、そ の行動の根拠が定められた「戯曲」、そして、俳優の働きかけの対象としての「観客」

である。保育者養成校でもそのような演劇を前提とした上演発表活動が学習内容の 中心である。子どものための演劇発表会の企画から準備、責任ある裏方仕事、後片 付けも含めて学生の手で行うことで、観客との一体感、発表後の達成感、振り返る 中での自己肯定感の高まりに効果があるという報告は後を絶たない5 6。もちろん、

演劇をこれまで未体験とする学生もいるため、その機会を設けることには意味があ ろう。しかしながら、上演活動を用いることに対する批判もある。それは、上演発 表があることで、創作過程の中で充実した表現を行うことよりも、観客を意識して 良い評価が得られることだけを目指し、「はれがましい場所で、人に見られ、ほめ そやされるという習慣から、個人的虚栄心のとりこになって、だらくし、つまらな い人間になってしまう」7 という批判である。表現が「オモテニアラワス」8 ことで あれば、形として見える・聞こえる結果としての「オモテ」が表れる前に、目に見 えず、測ることもできない「ウチ」的要素である、欲求や感情と結びつくイメージ が潜在するはずである。観客への表現という前提によって、「ウチ」のない形骸化

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された「オモテ」が表現されることになりやすいという課題があるのである。

 そのような批判から「ドラマ」は生まれた9。既存の演劇形式にはとらわれず、

その核である観客への舞台発表をなくし、台本も使用しない即興演技に活路が見い だされた。教育に限定することで、その結果よりも、演技の体験及び演者間の交流 という過程の要素が大事にされたのである10

 しかし、日本における公教育のカリキュラムの中に演劇教育や「ドラマ教育」は 位置づけられていない。また、祖である欧米においても年代によってそれらの目的 や教育上の位置づけは変わり続けている11。すなわち、演劇は教育にどのような可 能性をもたらすかという問いに対して、欧米においても、日本においてもいまだ結 論は出ていない。演劇活動を通して体験者に何をどう習得させるのが望ましいか、

未確定のままなのである。しかしながら、そのような状況でも保育者養成校で演劇 を生かす学習活動はこれまで展開されてきた。学生はそれを通して何を獲得すれば 良いか、保育者養成校ではどのような内容をどう指導するのが良いか、すべて未整 理のままである。そのため、継続的にこれらの検討を重ねる必要があると考える。

これが題目設定の第1の理由である。

 保育者養成校において演劇表現の学習内容を検討するための糸口としては、保育 現場との対応を考えることであろう。例えば、ごっこ遊びのように「演じて遊ぶ」

楽しさを学生が感じる体験や、「演じて遊んだ」結果が詰まったものを作品として まとめ、学生同士で見せ合う体験などの設定である。そして、学生が保育者の立場 で子どもの演劇表現を支援・指導する体験の設定も挙げることができる。2017年の 11月には、翌年4月の「幼稚園教育要領」などの全面実施に伴い「教職課程コアカ リキュラム」が提示された。保育者養成校における指導法的授業の目標として「幼 児の発達や学びの過程を理解し、具体的な指導場面を想定した保育を構想する方法 を身に付ける」12 という基準が示された。保育者を目指す学生ということを念頭に 置けば、「劇的な表現という活動が、子どもの年齢に即してどういう育ち方をする のか、あるいは、経験をどういうように積み上げていくことが大事なのか」13 とい う大場(2000)が投げかける問いを考える活動は意味があろう。これらをふまえ、

仮説的ではあるが、3つの体験(学生が演じて遊ぶ体験、演じて遊んだ成果を発表 する体験、子どもに演じて遊ぶことを模擬的に展開する体験)を演劇表現授業の中 で内容として設定し、事後にその成果を検討する必要を考えた。これが、題目設定 の第2の理由である。

 これまで、山本・下川(2014)14 は、学生が保育者の立場で子どもの演劇表現を

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模擬的に支援・指導する活動を最終課題としてきた。もちろん、職業演劇人や芸術 家としての資質・能力を伸ばすことを目指す内容ではないが、その研究考察の中で

「学生に状況と役割を理解させ、自身で状況に合わない演技をしているということ に気づかせる機会をつくることが重要であろう」15 と整理していた。反省として、

演劇表現を専門とする教員だけでは、保育者養成の中の演劇表現ではなく、芸術に 近づく演劇表現を主としてしまうことが挙げられる。そこで、幼稚園教育実習の事 前事後指導を担当し現場経験もある実務家教員に協力を依頼し、演劇表現の活動を 授業内で展開してもらうことにした。そして、事後に授業内容を協議する機会を設 定し、それぞれの活動に対する気づきや課題点を交換し、対象授業を保育者養成校 における授業としての価値を高めるための検討が必要と考えた。これが題目設定の 第3の理由である。

 以上の3点から、研究課題を「保育者養成校において演劇表現を学習する授業内 容の検討-教育実習担当教員との連携を通して-」として、研究を構想した。

2 研究の目的

 本研究の目的は、保育者養成校においてドラマ教育を生かした授業の学習内容を 振り返り、保育者養成授業として不足する点及び十分でない点を複数の教員で協議 し、対象授業の改善点を明らかにすることである。

3 研究の意義

 本研究の意義は、以下の3つである。

 1点目は、本研究は、これまで行われてきた上演発表中心の演劇活動の教育的課 題を改善しようとする立場にある。これは、高尾(2002)16、渡部(2010)17、花 家(2016)18、渡辺(2020)19らと同じく、「ドラマ」の教育的可能性を見いだそう とするものである。ただし、本研究は、1つの事例を扱った、その範囲も学習内容 に限定したものにすぎないが、保育者養成校における演劇表現の在り方を検討する 上での材料になるものと考えられる。

 2点目は、本研究は、保育者養成における「ドラマ」の活用を検討しようとする 立場にある。それは、小林(2009)20、花輪(2010)21、直井(2017)22らと同じく、

「ドラマ」の学習を通じて保育専門職の養成を推進しようとする立場である。中で も本研究の特色は、保育者養成校において演劇を扱う時間が多くはない現状をふま え、保育現場を念頭においた効率的な授業展開を検討しようとすることにある。

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 3点目は、本研究は、演劇表現の専門家だけで行う研究ではなく、保育専門の教 員との分野を超えた教員間の連携により行われる研究である。また、研究の目的は、

授業内容の構成やその指導の在り方を改めようとするものであり、研究を通して授 業をより豊かにすることを目指す自主的なFD活動としての意義も見いだせる。

4 研究の方法

 本研究で対象とする保育者養成校におけるドラマ教育を生かした授業として、

2019年度にN大学で実施した「ドラマ表現演習」を選択する。

 本研究は、2つの方法で行う。1つは、その2019年度の内容を整理してまとめ、

協議のための材料を作ることである。もう1つは、3名の教員が授業内容に関する 気づきや疑問点を協議し、その発言内容を整理することで、次年度以降に向けた改 善点を考察するための材料とすることである。

 研究倫理に関して、本研究は授業内容を扱うものであるが、学生に研究の詳細を 口頭で説明して協力の同意を得ている。また、学生は特別な配慮を要する研究対象 者であることをふまえ、成果公表に当たって所属大学の倫理委員会の承認(承認番 号 E19-9)を得て、改めて学生に公表の旨を説明し、研究協力の同意書に署名し提 出してもらっている。

 本研究で対象とする「ドラマ表現演習」の授業は、N大学のこども学科2年生を 対象とした選択必修科目である。2019年度は、第3学期(9月から11月)に集中で 全14回の授業が開講された。実施場所はプレイルームという子育て支援事業も行わ れるフリースペースである。受講学生は、全40名(すべて女性)であった。主たる 担当講師1名の他に、3名のゲスト講師が招かれた。1名は本研究に関わる表現教 育の専門家、1名は本研究にも関わる実習担当の教員、もう1名は本研究には関わ らないが、領域表現に関する内容を教授いただいた杉原真晃准教授(聖心女子大学)

である。

 カリキュラム上の位置づけは「教科に関する科目」の「これら科目に含まれる内 容を合わせた内容に係る科目その他これら科目に準ずる内容の科目」である。シラ バスに記載された目標は「自分の経験をもとに、感じたことや考えたことを、自分 のやり方で、楽しく、全身で表現するドラマの基本を理解する。そして、個人やグ ループで創意工夫をしながら自己表現をすることを楽しみ、自分が子どもの頃に遊 んだ時の感覚である「遊び心」を再経験すること」である。その方法は、ワークショッ プ形式での演習活動を中心とした。

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5 対象授業の概要

 本研究で対象とする2019年度の「ドラマ表現演習」は、連続する4日間に集中し て行われた。授業内容をまとめるに先だって、そのねらい、内容、指導方針を概要 として下記に記す。

5.1 授業のねらい

 2019年度の対象授業のねらいとして、2つ設定した。

 1つは演劇表現における同化的な資質・能力の獲得である。それは、子どもの

「演じて遊ぶ」世界を共有できる想像力や、子どものように無我夢中に「演じて遊 び」、子どもと共感・共振する感覚を抱くことを指す。子どもは、想像的な時間・

空間感覚によって、現実の状況を変化させて捉えることができる。たとえ、目の前 にない物でも存在すると信じ、自分事として実感することができるのである。これ は、ロシアの演出家、スタニスラフスキーの「もしもの魔法」23 と共通する感覚で ある。

 もう1つは、演劇表現における異化的な資質・能力の獲得である。それは、保育 者のように冷静に現実的な観点で子どもの「演じて遊ぶ」状況を判断し、より発展 できる実行力の基礎を指す。例えば、子どもが主体的に子ども自身の表現活動とな るような環境設定の必要を理解することや、子どものつぶやき・ささやきを聞き取 り、反応することの必要を理解すること、そして、意識的に目線、表情、声のトー ンや強弱、間の取り方、ジェスチャーなどノンバーバルな要素を活用したやりとり に挑戦することなどが挙げられる。

 保育者は「演じて遊ぶ」世界の中で子どもの前に立ちはだかり、悪役のように妨 害・対立してストーリーを成立・発展させる役割を果たすことがある。一方で、不 安がる子どもを励まし、挑戦への背中を押す支援者の役割も果たす。つまり、子ど もにとっての最愛のサポーター兼最大の妨害者の役割を保育者1人で果たすには、

演劇表現における同化及び異化の資質・能力をバランスよく保持する必要があるの である。

5.2 授業の内容

 授業のねらいを達成するための内容として、学生が演じて遊ぶ体験、子どもに演 じて遊ぶことを模擬的に展開する体験、演じて遊んだ成果を発表する体験の3つを 設定した。

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5.2.1 ウォーミングアップ

 内容の1点目は、学生が演じて遊ぶ体験である。それは、「シアター・ゲーム」

や「表現遊び」と呼ばれる、子どものごっこ遊びのように即興的に「演じて遊ぶ」

活動であり、模擬指導や演劇創作に意欲的な参加を促すための準備にも当たるプロ グラムである24 25。使うのは自らの声と身体であり、誰でもできる特別な技能や経 験が必要のない活動である。その分類としては、自らの内にある表現欲求や衝動を 発露させるエネルギーの活用方法によって3つに分けられる。

 1点目は、自らの表現エネルギーを放出して、開放を主とする活動である。心や 身体の緊張をほぐしリラックスすることで、学生の授業に対する参加促進、自分ら しさの他者への発信意欲の向上、作品化に対する挑戦心の喚起などにつながる。

 2点目は、自らの表現エネルギーを凝縮し、落ち着いて冷静に集中することを主 とする活動である。意識の集中や、鋭敏な五感を土台に周辺環境を深く感じ取るこ とで、自らの身体や言葉への意識を高めたり、イメージの世界への出入りが意識的 にできたりするようになる。

 3点目は、自らの表現エネルギーを他者のために提供したり、両者のエネルギー を一体化して共に使ったりする活動である。他者に手を差し伸べたり、他者から助 力を受けたり、意見が異なっても妥協点を見つけて折り合ったりすることで、信頼 関係の構築や他者理解、そして、他者を鏡とした自己理解などにつながる。3点目 の活動は、演劇が1人では成立しないことに関係がある。それは演劇が舞台上の想 像世界をチームの仲間や観客と共有し、共通化することを前提とする活動だからで ある。ただし、個人の興味や関心は異なる。たとえ、同じ物を見てもそれに対する 見方や感じ方は同一でないため、それをそろえるのは簡単でない。つまり、お互い に個性を認め合いながらイメージを共有するためには、異質なものを受容する感覚 や、自分とは異なる他者と接することに喜びを抱く必要があるのである。

5.2.2 模擬指導「劇遊び」

 内容の2点目は、子どもに演じて遊ぶことを模擬的に展開する体験である。最初 に、子どもの立場で即興的要素が含まれる参加型の演劇表現プログラムを体験する。

そして、その内容を理解した上で、次に保育者の立場で、活動の流れの構築、指導 役割の分担、教材準備、指導案の作成、子ども役に対する模擬的展開、事後の振り 返りなどを行う一連の活動である。

 先行研究としては、卒業ゼミの一環として学生が保育園の子どもと演劇表現活動

(9)

を通して交流する実践(花輪、2006など)26 や、授業の最終課題として附属幼稚園 の子どもと演劇表現活動を通して交流する実践(佐藤、2011)27 がある。そして、

そこで活用されたのは、「劇遊び」というドラマ的要素の強い活動である。「劇遊び」

とは、ごっこ遊びのように即興的要素があって参加者の個性を生かしやすく自由度 も高いが、大人が関わることで秩序が保たれ、劇的なストーリー展開も誇張してで きることに特徴がある活動である。「劇遊び」という用語は、これまで「幼稚園教 育要領」などの公的なガイドラインの中にも度々登場しているが28、その定義は明 確でない。子ども達が行う簡単な劇活動の総称と思う人もいるであろうが、本研究 では、「一般的にストーリー性をもった変身をともなう幼児が主体となって行う活 動」29 と考える。

 保育者養成校で行う価値として考えられるのは2つある。1点目は、子ども役と しても活動に参加するため、担当講師や他の学生が設定した環境や、指導する際の 動きや言葉を冷静かつ俯瞰的に分析する余裕がもてること。2点目は、保育者役と して子ども役の学生に対して実際に言葉かけや活動展開を模擬的ながらも行うた め、その面白さの実感や、うまくいかずに失敗しても原因を振り返る機会の創出が できることである。もちろん、2年生を対象とする活動のため、少々難しいと考え たが、渡邉の助言もあり、今回は可能と判断した。

5.2.3 演劇創作「朗読劇(リーダーズシアター)」

 内容の3点目は、演じて遊んだ成果を発表する体験である。この活動に至るまで には、自由にのびのびと自己表現を楽しむウォーミングアップと、劇遊びの模擬指 導体験をすることになる。最後にそれらの成果を確かめる機会を設定した。その理 由は、自分たちの中だけで通じる自己満足的な表現にとどまらず、保育者として子 どもが鑑賞するに値する作品とはどのようなものかを判断するためには、自分たち で形をつくり、評価する体験も合わせて必要と考えたためである。ただし、あくま でもドラマの範囲に収めるため、大人数ではなく少人数のチームで、文字数は短い 台本の活用という短期間での創作活動とした。そして、見られる緊張や評価が伴う 難易度の高い伝達活動とならないよう、参加者同士が授業内でその成果を見せ合う、

共有を主とする発表会を設定した。

 その創作様式は、「朗読劇(リーダーズシアター)」を選択した。それは、童話や 民話、絵本などの文学作品を題材に、台本の解釈を言葉に込めて朗読し「文学を目 に見えるように、耳にきこえるように観客に伝えること」30 を目標とする様式であ

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る。基本的に朗読が中心であり、衣装は質素に、照明や装置も基本的には用いられ ない。小道具は落語のように見立ての範囲内の物を活用し、後はふり(無対象)演 技で補われる。これは、アメリカの福祉分野で開発され、岡田陽によって紹介され たものである。保育者養成校におけるその活用の先行実践としては、佐藤(2011)31 や花輪(2015)32がある。

 この様式を選択した理由は、多々挙げることができる。それは、台本を持っても 発表できため、台本の暗記や言い間違えの不安から学生を解き放ち、かつ短い準備 時間でも創作が可能となる点。様式の決まり事やルールを明確に提示できるため、

学生が理解すれば、自立的に正解や不正解、適切や不適切などの価値判断ができ、

講師の顔色を伺わずとも創作ができる点。動作よりも語り中心の演技が求められる 様式のため、表情や身振り手振り、視線などの非言語的要素を駆使する必要が生じ、

多様な表現技法を活用する機会が生み出せる点。舞台を彩る効果をほとんど使用し ない様式のため、演技に特化した学習が可能となる点である。

5.3 指導の方針

 授業は、ワークショップ・スタイルの演習形式であるが、その内容は講師によっ て選定され、その指導も講師が行うものである。そのようなやり方では講師側から の一方的な教授となり、学生が主体的に「演じて遊ぶ」状況は生み出しづらい。そ うならないための工夫として、守るべきルールを最低限に留めて、自分たちで決め る余地を意識的に残すように心掛けた。

 評価に関しては、授業の最初に上手や下手などの基準で表現を捉えないことを明 確に伝えた。また、具体的な基準として「自己表現、想像力/リアリティ、創造性

/工夫、課題解決力、観客への意識、教材研究、他者との協働」33 の項目を紹介した。

学生には、最初のガイダンスと最後の振り返りレポートを記載する際に、その項目 に対する自己評価を促し、授業を通した自らの変容を意識させるようにした。

 一方、学生の主体性に任せては授業が成立しづらい側面もある。例えば、授業に 対する学生の参加態度を前向きにすることや、イメージづくりに集中できるよう学 生の気持ちを落ち着かせることなどである。うまくいかなくても皆から笑われず、

自分を安心して出せる場の雰囲気づくりも講師による環境構成が必要となる。逆に、

居心地が良過ぎてそれぞれがワガママ放題に振る舞うようになっても困る。集団で 行う演劇表現活動は場の秩序が保たれていることが必要条件である。中でも、講師 による支援が最も必要と考えるのは、体験を振り返る機会の設定である。単に体験

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して終わりでなく、その体験を通して何を感じたのか、他者は何を思ったのかとい うことに気づき、お互いに共有する機会は、自分たちだけではなかなか生み出され ない。集中授業で行った2019年度の工夫として、一日の最初の授業の際に、昨日の 全授業の様子をスライドショウで映写して受講生に自らの体験を客観的に振り返る 機会をつくった。

6 結果①2019年度の授業

 本研究の対象である2019年度に実施された「ドラマ表現演習」の実際の内容を下 記にまとめる。そのやり方は、児童表現活動研究会(代表:小林美実)が行った「平 成5年度伊藤忠記念財団委託研究」の報告書(1995)34を参考にした。なお、学生 に対して第1回の授業で提示した授業内容の一覧表に日程を加えたものを掲載する

表1)。

表1 学生に提示した2019年度の「ドラマ表現演習」授業計画表

テーマ 予定活動

1日目 第1回 ドラマへの準備① 身体と場(他者)意識

ガイダンス(授業概要、授業のルール、領域「表現」

との関連性)、じゃんけんレパートリー、スペーシ ング、グルーピング(似たもの探し、色探し)身 体で動く物の即興表現、映像視聴

第2回 ドラマへの準備② 非言語と場(他者)意識

がっちゃん、鏡、アクション伝言ゲーム 劇遊びの映像視聴、振り返り

2日目 第3回 ドラマであそぶ① 劇遊びの体験

思い出し(1日目の記録写真の視聴)、スペーシン グ等、「ひよこ」の劇遊びの体験 特別講師:下川 涼子さん(NPO法人アートインライフ)

第4回 ドラマであそぶ② 劇遊びの指導体験

「ひよこ」の劇遊びの模擬指導の展開、中間課題 の説明、振り返り

第5回 ドラマへの準備③ 身体と五感

スイッチアンドムーブ、主人と従者、彫刻家と粘土、

写真で昔話 第6回 ドラマであそぶ③

劇遊びの指導準備

劇遊びの模擬指導の展開

特別講師:渡邉望准教授(長野県立大学)

3日目 第7回 ドラマと領域「表現」 思い出し(2日目の記録写真の視聴)

特別講師:杉原真晃准教授(聖心女子大学)

第8回 ドラマをつくる① ふり(無対称)と見立て

愛のプロポーズ、スペーシング、手裏剣合戦、傘 の見立て、傘の見立てを活かした即興作品創作

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第9回 ドラマをつくる② 言葉と動き

スペーシング、瞬間メモリー、実体験をナレーティ ブ・パントマイムで再現、NPを活かした即興作品 創作、NPを活かした「おおきなかぶ」の劇遊び 第10回 ドラマであそぶ④

成果発表(授業内)

グループごとに課題の発表 振り返り

4日目 第11回 ドラマをえんじる① 朗読劇の体験

思い出し(3日目の記録写真の視聴)、じゃんけん、

スペーシング、エイトカウント、縄の無い縄跳び、

台本読み、台本「めっきらもっきらどおんどん」

の紹介、創作 第12回 ドラマをえんじる②

朗読劇の創作

創作

第13回 ドラマをえんじる③ 成果発表(授業内)

グループごとに課題の発表 振り返り

第14回 ドラマを振り返る 本講義のまとめと確認

6.1 第1回 ドラマへの準備①身体と場(他者)意識 <講師:山本(以下、記 載が無い回はすべて山本)>

ねらい:身体と場(他者)の意識を高める

内 容:講義(シラバスを用いた概要、領域表現のねらいと内容、授業のルール)、

演習 演習詳細:

①じゃんけんレパートリー35:30秒の間に多くの人とじゃんけんし、5回勝つこと を目指す。素早くするという目標があれば誰とでも臆することなく関わりやすいこ とに気づく。口でじゃんけん。相手が出したマークを先に言った人が勝つじゃんけ ん。身体でじゃんけん。決めた身体のポーズでじゃんけん。じゃんけんには勝ち負 け以外の要素がたくさんあることを知る。

②ストップ・アンド・ゴー36:指導者の指示に応じて、部屋の空間を意識しながら、

他者との距離を適度に空けて歩く活動。例えば、指導者が1つ叩いたら歩き、2つ 叩いたら止まり、3つ叩いたらスキップなどの指示に瞬時に対応する。活動を行う 上で重要な参加者同士の関係の構築、他者と場(空間)に対する意識の向上、指導 者の指示への反応、身体の制御の練習などの意味がある。

③仲間集め37:指導者の指示に応じて、仲間を探す活動。例えば、指定された人数 や同じ誕生日の人、同じような靴下を身につけている人など。

④即興グループ身体表現:5人程度のグループとなり、身体を使ってグループで1

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つのものをつくる。動くものという制限によって、身体表現へと発展できる。例え ば、車、飛行機、花など。1分程度の短い創作時間の中で全体像や役割などを相談 し即興的に進める。終了後にグループで気づいたことを振り返る。

⑤ディロール:授業の最後に想像的な演劇表現の場から現実の日常に戻ったという 意識の切り替えのために、ディロールde-roleという簡単なおまじないを行った。基 本的に毎回行う。

準 備:学生配布用の授業資料「学びの履歴」

メ モ:活動の最初に、1分程度の準備体操を各自で行った。2回目以降の記載は 省略。

6.2 第2回 ドラマへの準備②非言語と場(他者)意識 ねらい:非言語的な活動を楽しむ

内 容:演習、「劇遊び」の実践映像の視聴38 演習詳細:

①ねことねずみ39:2人組で行う変則的なおにごっこ。全ペアのうち、1ペアはね こ(追う役)とねずみ(追われる役)に分かれる。残りは2人組のまま、1ペアの おにごっこを見守る。ただし、ねずみは他のペアのところに逃げ込むことができる。

それによって3人組となったら、1人が代わりにねずみとなり、追われる立場にな る。周りの状況をよく見ること、冷静に動くことが求められる。

②鏡40:2人組となり、向かい合う。鏡役と人間役にわかれ、先に動く人間役とそ れに合わせる鏡役が同調して動くことを目指す。

③アクション伝言バトル41:8人程度のチームで行う伝言ゲームの対抗戦。一般的 な言葉の伝言に始まり、背中の指文字、顔の表情、そして動物やスポーツなどのア クションを伝えていく。他者に伝えるためには、表情を意識したり、動作を大げさ にしたりしないと伝わりづらいことに気づく。終了後にグループで気づいたことを 振り返る。

④ディロール

メ モ:映像は、絵本『三びきのやぎのがらがらどん』42を題材にした幼稚園で行 われた「劇遊び」の実践映像である。2011年6月に下川・山本らが展開した際の映 像である。当初①は、異なる活動を予定していたが、学生が少し疲れ気味の様子だっ たために変更した。②は、2人組から4人組、8人組と徐々に数を増やし、次の活 動につなげた。

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6.3 第3回 ドラマであそぶ①劇遊びの体験 <講師:下川>

ねらい:劇遊びを知る

内 容:初日の授業風景のスライドショウによる振り返り、演習 演習詳細:

①じゃんけん:第1回の30秒じゃんけんと同様

②ストップ・アンド・ゴー:第1回と同様

③ボディプレイ43:指定された図形や立体物(傘、コップ、ケーキなど)を身体で 表現する。1人で行った後、2人組となり、協力してそれらの形を作る。

④バンダナを用いた造形的活動:1人でバンダナを用いて形や数字を作る。その発 展としてペアやグループで動物や食べ物などをバンダナで作り、見せ合う。そして、

「ファッションショー」のようにグループの1人をバンダナで飾り、お互いに発表 しあう。

⑤講師による劇遊び「ひよこ」の実演:講師による「劇遊び」の実演は、『ころこ ろたまご』の手遊び歌、絵本『ひよこ』44の読み聞かせから始まった。学生はひよ ことして、ぴよぴよと歩いたり、会話を楽しんだりした後、母を捜すための旅に出 る。お花畑や、高い草が生い茂る草原、水たまりのある広場などを通過した後、講 師が扮する眠る猫と遭遇する。ひよこ(学生)は、今にも目が覚めそうな老猫の横 を落ち葉のマント(1人ずつに渡されたバンダナ)に隠れたりしながら、慎重かつ 素早く通過する。そして、無事に母との再会を果たす、というものであった。

⑥学生による「劇遊び」の創作と発表:グループで『ひよこ』を生かした劇遊びを 行う。ただし、ひよこと母との再会を妨げる障害を講師が提案した猫以外で設定す る。保育者としてその活動を導く練習を行い、発表する。

メ モ:⑥は、時間が足りなくなり、1グループのみの発表となった。

6.4 第4回 ドラマであそぶ②劇遊びの指導体験 ねらい:劇遊びの指導体験をする

内 容:講義(指導案の作成法)、演習(個人課題としてワークシート方式の指導 案の記入、学生による『ひよこ』を生かした「劇遊び」の発表)

メ モ:次回以降、グループで『ひよこ』以外の絵本を題材とした劇遊びを考案し、

指導役として模擬的展開を課題とすることが伝えられた。

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6.5 第5回 ドラマへの準備③身体と五感 ねらい:五感を研ぎ澄ます

内 容:演習 演習詳細:

①主人と従者45:2人組となる。主人役と従者役に分かれる。主人役は従者役の顔 の前に手をかざしながら移動する。従者役は主人役の手と自分の顔との距離を一定 に保つように調整し続ける。

②彫刻家と粘土46:2人組となる。彫刻家役と粘土役に分かれる。彫刻家役は、言 葉による指示ではなく直接的に粘土役の身体を動かし、最終的にポーズさせて彫刻 にする。交代後は、全ペアで共通の題(スポーツ選手らしいポーズ、働く人らしい ポーズなど)に取り組む。同じ題でも異なる作品になることを知る。

③静止画の技法を使ったドラマづくり47:6人程度のグループとなる。なじみのあ る昔話・絵本・童話の中から自分たちで1つ選ぶ。そして、そのストーリーの中で 外せない場面を、起承転結を意識して4つ選択する。それらの場面をグループのメ ンバーの身体を使って、ポーズで表現し、作品化する。グループごとに見せ合う。

終了後にグループで気づいたことを振り返る。

④ディロール

6.6 第6回 ドラマであそぶ③ 劇遊びの指導準備 <講師:渡邉>

ねらい:劇遊びの計画を練る

内 容:講師による劇遊び「忍者ごっこ」の実演、グループワーク 詳 細:

①講師による、実際の保育現場で実践されたものを学生用にアレンジした「忍者ごっ こ」の「劇遊び」の実演が行われた。まず、学生は忍者として返事の練習などを行 う。そして、忍者修行として、忍び足、隠れ身、仲間探しなどの課題に取り組む活 動が行われた。

②その後、グループで行う「劇遊び」の絵本の選択や展開の話し合い、動きの確認 などが行われた。

6.7 第7回 ドラマと領域「表現」 <講師:杉原真晃氏(聖心女子大学)>

ねらい:演劇と領域「表現」の関係を考える

内 容:前日の授業風景のスライドショウによる振り返り、杉原氏による講義

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テーマ:「演劇表現の魅力とは何か」「保育者は子どもの演劇表現にどう関わるか」

「もしもこの世から演劇表現がなくなったらどうなるか」などが中心であった。

6.8 第8回 ドラマをつくる①ふり(無対称)と見立て ねらい:ふり(無対称)と見立ての活用を工夫する 内 容:演習活動

演習詳細:

①じゃんけん:第1回の30秒じゃんけんと同様

②ストップ・アンド・ゴー:第1回と同様

③愛のプロポーズ48:2人組となる。告白する人と告白される人に分かれる。2人 で向き合う。告白する人が後ろを向いている間に、告白される人は静かに身体の向 きを左右のどちらかに90度回転させる。告白する人は、目をつぶったまま、「好き です」の言葉とそれを示すアクションとともに、左右のどちらかの方向に向く。も しも両者が同じ方向を向いていれば、告白は成功。違っていたら残念となる。

④手裏剣合戦49:2人組となる。ポケットに入っている見えない手裏剣を各自で取 り出し、投げるふり(無対称)行動をする。2人で向き合い、キャッチボールのよ うに見えない手裏剣を1人が投げて、それをもう1人が受け取ることを繰り返す。

投げるときも受け取るときも、大きなかけ声をしたり、大きな動作をしたりして見 ている人を楽しませることを意識して行う。

⑤傘の見立て50:全員が車座に座る。傘が差し出され、「もしも傘でないとしたら」

という問いに各自が見立て動作で答えていく。他の人に正解を当ててもらえたら交 代する。順番に回していく。

⑥ふりと見立ての技法を生かしたドラマづくり:5名程度のグループとなる。ふり 行動と傘の見立てを生かせる短いストーリーをグループで創作する。全員が何らか の形で登場する短い即興劇を作る。グループごとに発表し見せ合う。終了後にグルー プで気づいたことを振り返る。

⑦ディロール

メ モ:杉原氏も学生の中に混じって参加いただいた。

6.9 第9回 ドラマをつくる②言葉と動き ねらい:言葉と動きの活用を工夫する 内 容:演習活動

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演習詳細:

①ストップ・アンド・ゴー:第1回と同様

②ナレーティブ・パントマイムの技法の体験:①と同じく、他と距離を保って歩く。

その際に今朝起きてから学校まで、自分がどのように過ごしたかを思い出しながら 歩く。次に、指導者が述べる家から学校までの架空の登校ストーリーに従って各自 で自分なりに対応した動作に挑戦する。

③瞬間メモリー51:2人組となる。語り手と聞き手に分かれる。語り手は、お菓子 のキャッチコピーなどを読み、聞き手はそれを記憶する。次にまた同じ文章が読ま れることになるが、今度はそのうちのどこかの2カ所が「ほにゃほにゃ」という別 の言葉に変えられる。聞き手は、その箇所が何だったかを当てる。相手に伝えよう という気持ちで語ること、それを注意深く聞こうと集中することにつながる。

④ナレーティブ・パントマイムの技法で再現:2人組となる。語り手と動き手に分 かれる。語り手は②で思い出した今朝から登校までの実際の流れを90秒の時間に短 縮させて相手に語る。動き手はその説明を聞きながら、できる限り同時に対応して 動く。語り手は、対象である相手を見ながら、意識して伝える。動き手は、今起こっ ていることを受け入れ、臨場感を感じながら興味をもって動く。語り手がよどみな く語れるのは、自らが経験したことであるために気づく。これは「彫刻家と粘土」

の発展的活動である。

⑤ナレーティブ・パントマイムの技法でドラマづくり52:6人程度のグループにな る。指定された3つの行動(例えば忍び足、笑う、気絶するなど)の内容と順番を 生かして、それ以外の要素を含む短いストーリーを考える。ナレーターと演じ手に 分かれ、即興的に作品を創作する。グループごとに発表し見せ合う。終了後にグルー プで気づいたことを振り返る。

⑥講師によるナレーティブ・パントマイムの技法で「おおきなかぶ」の実演:その グループのまま、「おおきなかぶ」に登場する人物やかぶの役割を決める。講師の

「おおきなかぶ」の絵本に基づくナレーションに合わせてナレーティブ・パントマ イムの技法で「劇遊び」を体験する。

6.10 第10回 ドラマであそぶ④成果発表(授業内)

ねらい:考案した工夫が通じるかを確かめる

内 容:「劇遊び」の模擬的展開のグループごとの発表

メ モ:発表後、見学していた複数名のこども学科教員からの助言、グループでの

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振り返り、授業担当者からの助言がなされた。

6.11 第11回 ドラマをえんじる①朗読劇の体験 ねらい:朗読劇の技法を知る

内 容:前日の授業風景のスライドショウによる振り返り、演習活動、朗読劇の技 法の理解、グループごとに創作活動

演習詳細:

①じゃんけん:第1回の30秒じゃんけんと同様

②ストップ・アンド・ゴー:第1回と同様

③エイトカウント53:②のように各自が空間の中に散らばり、数えられる1~8の 数に合わせて、リズムよくスキップする。加えて8の瞬間に誰かとタイミングよく 手のひらを合わせたり、集まった人で一緒に円運動をしたりするなどの活動へと発 展する。

④縄のない縄跳び54:ペアとなる。「手裏剣合戦」のように足下から見えない縄跳 びのロープを拾う。1人で見えないロープを使った縄跳びのふり行動を行う。次に 2人組で向かい合って縄跳びをしたり、1つの縄を2人で跳んだりする。6人程度 のグループになる。段取りの相談せずに、講師が「止め」と言うまで、グループで いろいろなやり方で大縄を飛び続ける。観客の前での演技と同じく、自分たちの都 合で止めたりせず、観客を常に意識して演じ続けようとする練習となる。

⑤台本の黙読:全グループで同じ台本を課題として取り組むことが伝えられ、全員 に『めっきらもっきら どおんどん』55 の台本が配布される。縄跳びのグループで 作品創作が行われることが確認され、配布された台本を1人で黙読することから始 まった。創作の手掛かりとなる台本を読んだ初見の印象をグループで共有する。

⑥朗読劇の実演の鑑賞:朗読劇という形式を理解するため、学内サークル有志の協 力によってその実演が行われた。鑑賞後、その形式の説明及び留意点として、小道 具や大道具は使わずに回転椅子の工夫などを心がけること。おおげさな身体表現は 行わずにシンプルな動作とすること。そのため、身体表現だけでなく、授業の中で これまで扱った、言葉による言語表現や、表情・身振り手振り・視線等の非言語的 表現、見立て表現とふり(無対称)表現を意識し、工夫を凝らすことが伝えられた。

⑦グループごとに創作活動:創作に入る前の説明として、「朗読劇」という形式の ため、本番でも台本を持って良いこと、演技の上手い下手は評価の基準には含まな いこと、全グループで同作品を扱うことになるので、グループメンバーの個性や強

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み(得意分野や身体的特徴など)を生かし自分たちなりの色を出すこと、これまで 習った技法の活用を推奨することが伝えられた。グループごとに台本の読み合わせ が開始され、役割の設定や動きのアイディアの共有などが行われた。

6.12 第12回 ドラマをえんじる②朗読劇の創作 ねらい:朗読劇の創作を体験する

内 容:創作活動の継続

メ モ:机間巡視の際の助言として「劇遊び」の授業の際にも伝えたことを再度伝 達した。例えば、登場人物の目的やねらい、その望みは何か、作者は作品にどのよ うな願いやテーマを込めたか、ストーリーの起承転結をどう整理するかなどである。

6.13 第13回 ドラマをえんじる③成果発表(授業内)

ねらい:考案した工夫が通じるかを確かめる

内 容:評価の観点の確認後、グループごとで朗読劇作品のクラス内発表

メ モ:発表後、見学していたこども学科教員からの助言、自グループでの振り返 り、授業担当者からの助言がなされた。

6.14 第14回 ドラマを振り返る ねらい:授業全体の振り返り

内 容:「学びの履歴」に授業の振り返り記述の記載

メ モ: 振り返りの内容は、自己評価に関する内容(「自分を表現することに意欲 をもち、前向きに取り組めたか」「それぞれの活動に対して、積極的に取り組めたか」

「演劇の原理(劇の構成、演出的配慮、観客への発信等)を意識して取り組めたか」

「グループ活動の際に、リーダーシップを発揮して活動に取り組めたか」など)、

自チームの取り組みに関する内容(「チームの仲間は、チームで活動する際のルー ル・役割を理解し、実行していたか」「チームの仲間は、メンバー全員の意見を取 り入れようとしていたか」「計画を立てた上で、その計画に沿った課題の遂行がな されていたか」「活動で達成したことや課題点を振り返り、次に活かせるよう検討 していたか」など)、授業内での体験に関する内容(「保育者を目指すあなたにとっ て、劇遊びの学びはどういう意義をもつか」「この授業の中で、一番役に立った内 容(や方法)はなにか」「領域「表現」に対する理解が深まったか」「この授業を通 して、自らにどのような変化が生じたか」など)である。

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7 結果②担当講師による授業後の事後協議

 授業後に担当者3名で事後協議する機会が設けられた。日時は2019年12月14日の 13時から15時までの間で、場所は都内某所であった。そこでは実際の活動記録が記 された資料に基づき、3つの活動を中心に各自で指導した上での感想や反省、活動 を観察して気づいたことなどが協議された。以下に記す。

7.1 ウォーミングアップ

山本:造形的な要素を授業に含めるため、第3回で下川先生にバンダナを使う活動 をお願いした。その意味はあったと思ったが、別の観点として、その活動が授業内 の全活動の中で学生たちが1番楽しそうに意欲的に取り組んだように感じた。

渡邉:私が見た第5回の「彫刻家と粘土」の活動もバンダナの活動と同じく学生は 意欲的と感じた。保育実習の指導の際に心がけていることは、保育指導案には記載 されない、目線、表情、声のトーンや強弱、間の取り方、ジェスチャーなどノンバー バルな部分を学生に意識させることである。全体的にこの授業は、言葉の要素を非 言語も含めて多く含むと感じた。

下川:バンダナの活動については、私も同様に感じた。ただし、1つ気になったの が、エネルギーの上昇がゆっくりで、バンダナの活動にたどり着くまでの時間が想 定よりも遅かったことである。私の進め方に問題があったのかもしれないが、自分 の表現が他者と同じかどうかを気にしていたように感じた。

山本:それは下川先生や学生の問題というよりも、授業内容の順序や配列の問題だ と思う。今回は日程の関係で下川先生の活動が早い段階になってしまったが、「劇 遊び」の前にウォーミングアップをかなり重ねる必要があると思う。

下川:保育における表現であれば、造形だけではなく音楽や言葉(文字)などの要 素を合わせて、総合的な活動を展開しても良いのではないか。

渡邉:そのような工夫を取り入れる必要はあると思う。ただし、同時にすべてが含 まれなくても、演劇と音楽、演劇と文字のような複合的な活動の設定で良いのでは ないか。学生がそのような観点で表現を捉えることができれば良いと思う。

7.2 模擬指導「劇遊び」

渡邉:学生たちは忍者役の子どもになりきって活動に参加してくれたと思う。

山本:2人の先生の実演指導があったおかげで、2年生でもその活動案を考え、模 擬的ながらも指導する体験ができたと思う。特に学生たちは、活動の説明や子ども

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役の学生との受け答えをしっかりやっていると思った。

渡邉:個人ではなくてチームで行う部分的な演習活動であったが、実習指導の観点 から見ても、保育における表現活動の計画と展開を学ぶ体験として有益であると感 じた。

下川:今回は指導力の不足を感じることも多かった。例えば、学生が考えた設定の 中で、「目の前の敵に触れないように進む」ことが設定されていても、もしも触れ たら何が起きるかというところまで、学生は考えていないことが多かった。もう少 し先を読み指導すべきであったと思う。

山本:その逆に「なぜその敵は子ども役の歩みを妨害するのか」と自問し、答えを 出すこともドラマとしては重要な学習だと思う。今回の活動の中でそのような意識 をもたらすには至らなかったかもしれない。

渡邉:私は意図的に解説せずに、本当の子どもに行うように模擬授業を進めたが、

保育者を目指す学生ということを考えれば、事後にもう少し活動に対する解説をし た方がよかったかもしれない。

下川:指導案作成のワークシート記入作業に入ると、学生は集中して取り組んでい たと感じた。ただ、私のつたない説明によって、時間が足りなくなり、質疑応答の 時間もつくれなかった。

山本:それは、下川先生の説明の問題というよりもワークシートの問題かもしれな い。学生の様子を見ていると、こちらが望む箇所ではないところを書く学生もいた。

その形式を本学の実習日誌とも対応させながら、書きやすいものに改める必要があ ろう。

渡邉:このような模擬指導を含む活動は、こちらの実習指導にも通じるところがあ る。形式を合わせてもらえることで、こちらの実習指導の際にも利点がある。

7.3 演劇創作「朗読劇(リーダーズシアター)」

山本:学生の様子を見て好感を抱いたのは、ウォーミングアップの中で紹介した演 劇表現の技法を、次のその活動やまとめとしての演劇創作の際に積極的に活用する 姿勢が全体的に見られたことである。もちろん、それを目標として推奨していたが、

実行できることは素晴らしく思った。

渡邉:朗読劇という形式は、役と同化することが基本的態度なので、子どもにとっ ても適するものだと思う。しかし、保育者養成における演劇表現ということを考え ると、実際に保育現場で展開されるオペレッタなどを扱うという選択もあるのでは

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ないか。

山本:今回の「朗読劇」という様式は、演技に特化するものである。それについて 深く考える機会をもたらすことが期待できるため、演劇表現学習の入り口として適 すると考えた。もちろん、もっと時間があれば、保育現場で行われているのに近い 演劇表現活動も必要なテーマだと思う。しかし、短い授業時間の中でどちらを優先 させるかを考え、今回は「朗読劇」という選択になった。

下川:もしそうであるならば、その経緯について説明をしたり、映像として実際の 保育現場での演劇表現活動を見せたりするなどの工夫が必要なのではないか。

山本:創作指導の際に2つ困ったことが生じた。1つは、メッセージ性に関するも のである。保育者養成における演劇表現ならば、取り扱う台本にそれを付随させた 方が良いのかもしれないと思った。メッセージ性とは、例えば、「食べたら、歯を 磨こう」や「好き嫌いなく何でも食べよう」などである。実際、ウォーミングアッ プの活動中でメッセージ性を意識した取り組みをするチームもあった。

渡邉:個人的な見解だが、そのようなメッセージ性を付随させることが悪いとは思 わない。しかし、無理に関連付けなくても良いと思う。作品をどう受け止めるか、

どのような観点で鑑賞するかを決めるのは我々ではなく子ども自身だからである。

演劇表現を推進する山本先生、下川先生としては、子どもが純粋に物語を楽しめる ことを優先して考えた方が良いのではないか。

山本:もう1つは、作品の解釈に関する問題である。基本的には学生たちが自由に 解釈し、作品創作に取り組むことを重視した。しかし、「劇遊び」の際の話題にもあっ たように、ドラマ的に見て登場人物の行動理由があやふやで、筋の起承転結が整っ ていないと感じる解釈もあった。そのことを学生に伝えても、かえって混乱を引き 起こした様子であった。学生の自由を保障することは、その主体性を保つためには 重要である。しかし、演劇表現の学習としての価値を維持するためには指導的関与 もある程度は必要になると思う。ただし、その境界線をどのように引いたら良いの か、まだよくわからない。

渡邉:あまり初めから細かいところを指摘せずに、多少うまくいかなくても保育者 養成校での学習ならば良いのではないか。ただ、他チームと成果を共有し、自チー ムの振り返りの中などで、自分たち自身でそれらの点に気づけるようにする工夫は 考える必要がある。

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