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3.力学特性発現機構の解明を 目指した計算固体力学によ る研究動向

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Academic year: 2021

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次世代高強度マグネシウム(Mg)合金の特性発現因子 シンクロ型長周期積層(LPSO)構造に関する研究動向

1.はじめに

 マグネシウム(以下 Mg)は構造用 金属材料として最も軽量であることか ら,軽量化材料として輸送機器への応 用に関する技術開発が盛んに行われて いる.しかしながら,既存の Mg 合金 の力学特性はアルミニウム合金と比べ て劣るため,その使用範囲は強度を必 要としない部材に限られている.

 金属材料の特性は,純金属に異なる 元素を添加する合金化により著しく変 化する.Mg においてもさまざまな元 素が添加された合金が多数開発されて おり,力学特性,耐食性,発火性等の 改善が試みられている.

 そうした中,2001 年に開発された長 周期積層(LPSO:Long Period Stack- ing Order)型 Mg 合金(1)は,降伏強 度が従来の Mg 合金を遥かに凌駕する ものであり,Mg 合金の適用範囲を大 幅に拡大する新材料として大きな期待 を集めている.

2.シンクロ型 LPSO 構造

 LPSO 型 Mg 合金は,シンクロ型長 周期積層(LPSO)構造と呼ばれる原 子構造を持つ強化相を含むことが,他 のマグネシウム合金と大きく異なる特 長である.シンクロ型 LPSO 構造とは,

原子配列の構造変調と濃度変調が長周 期的に同期(シンクロ)したものであ り,純 Mg の結晶構造である最密六方

(HCP)構造とは全く異なる.図 1は 透過型電子顕微鏡により観察されたシ ンクロ型 LPSO 構造の原子像である.

このシンクロ型 LPSO 構造のさまざ まな特性を把握することが,LPSO 型 Mg 合金の優れた特性発現機構の解明 に繋がると考えられる.そのため,

2012 年から文部科学省科学研究費補 助金・新学術領域研究「シンクロ型 LPSO 構造の材料科学」がスタートし,

シンクロ型 LPSO 構造の①精密原子 構造の解明,②形成機構の解明および

③強化機構の解明に向けて精力的な研

究が実施されている.本プロジェクト では材料科学系,物理系および機械工 学系の研究者が,最先端の実験・解析 技術を駆使して基礎研究が行われてい る.

3.力学特性発現機構の解明を 目指した計算固体力学によ る研究動向

 シンクロ型 LPSO 構造の力学特性 に関する現象として,塑性変形に伴い 結晶内に著しい粒内方位差が導入され るキンク帯の形成が注目されている.

LPSO 相では従来の Mg 合金では容易 に活動する {10-12} 双晶がほとんど観 察されないことから,塑性変形を補う 付加的な変形モードとしてキンク帯が 頻繁に形成される.図 2は圧縮負荷 を受けた LPSO 単相多結晶材に形成 されたキンク帯を示している.LPSO 構造におけるキンク帯の形成機構とそ の力学特性への寄与はいまだに不明な 点が多いため,実験観察とともに計算 力学的手法を用いた研究が行われてい る.異なる空間スケールを対象として さまざまな手法が用いられており,分 子動力学法によるアプローチ(2),結晶 塑性有限要素法によるアプローチ(3)(4), さらに転位よりも高次の結晶欠陥であ る回位を導入した新しい理論を用いた 研究(5)(6)も行われている.

4.おわりに-実用化に向けて

 本稿では,LPSO 型 Mg 合金の強化 相であるシンクロ型 LPSO 構造に関 する学術研究動向のとくに力学挙動に 関するものについて紹介したが,実用 化に向けた取り組みも盛んに行われて いる.LPSO 型 Mg 合金は 2001 年に 開発された当初は急速凝固粉末冶金法 により作製されていたが,2003 年に は通常の鋳造法においても高強度な展 伸材が開発され,さらに半連続鋳造法 による高品質な大型鋳造材の製造技術 も確立している.現在は,素材メーカ との量産化技術開発やさまざまな応用

製品への適用に向けた共同研究が行わ れている.

(原稿受付 2014 年 9 月 19 日)

〔 河 村 能 人, 山 崎 倫 昭, 眞 山  剛  熊本大学〕

●文 献

( 1 )Kawamura, Y., Hayashi, K., Inoue, A. and Masumoto, T., Rapidly Solidified Powder Metallurgy Mg97Zn1Y2 Alloys with Excellent Tensile Yield Strength above 600MPa, Mater. Trans., 42(2001), 1172-1176.

( 2 )Matsumoto, R., Uranagase, M. and Miyazaki,N., Molecular Dynamics Analyses of Deformation Behavior of Long-period- stacking-ordered Structures, Mater. Trans., 54(2013), 686-692.

( 3 )大橋鉄也,キンク帯形成の結晶塑性解析,

日 本 金 属 学 会 2014 年 春 期 講 演 大 会,

(2014-3).

( 4 )Mayama, T., Crystal Plasticity Analysis of Development of Intragranular Misorienta- tions in Hcp Metals, IUMRS-ICYRAM 2014,(2014-10).

( 5 )田尻聡太郎・志澤一之,キンク変形を表現 する回位密度を考慮した Cosserat モデルの 結晶塑性論的定式化,第 57 回日本学術会議 材料工学連合講演会,(2013-11).

( 6 )Nakatani, A., Disclination Modeling for Mi- croscopic Structure of Kink Deformation Band, APCOM & ISCM 2013,(2013-12), 1737.

図 2 キンク帯の SEM 観察像 図 1 シンクロ型 LPSO 構造の原子像 (a)濃度変調    (b)構造変調

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日本機械学会誌 2014. 11 Vol. 117 No.1152 758

参照

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