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厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)

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厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)

総括研究報告書

シックハウス症候群の発生予防・症状軽減のための室内環境の実態調査と 改善対策に関する研究

研究代表者  欅田 尚樹  国立保健医療科学院

研究要旨

1980 年代ごろより、欧米ではシックビルディング症候群の発症が問題となったが、

国内においては、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づき、一定レ ベルの換気が確保されたことなどから同症候群の発症は大きく問題視されなかった。

一方で一般住宅においてシックハウス症候群として問題となり、その後、厚生労働省 による室内濃度指針値(ガイドライン)の設定、建築基準法の改正等、幅広く産官学連携 で種々の対応がとられ屋内空気質はずいぶんと改善してきている。しかし、指針値に定 められなかった、その他の化学物質の濃度がむしろ増加しているとの報告もある。

厚生労働省においても平成24年9月28日に、「改めて、当該指針値の超過実態を把 握し、化学物質の発生源と室内濃度との関係に係る科学的知見を踏まえた必要な室内濃 度指針値の設定のあり方、あり方を踏まえた見直しの方針等について検討する」として シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会を再開した。

本研究では、昨年度から3カ年での計画で、快適な住環境の供給・維持管理・改善対 策を提言することを目的とし、1.室内空気質の実態調査、2.化学物質に高感受性を 示す人の分布の経年変化の評価、3.化学物質に高感受性を示す集団の宿主感受性要因 の検討などを主とした検討を行った。

1.に関連し、2‑ハイドロキシピリジン(HP)と、イオン液体であるテトラブチルホス ホニウムブロミド(TBPB)を混合し,これを脱離溶媒としたヘッドスペース法による新 たな室内空気中 VOC の分析法を開発した。現行法である二硫化炭素を溶媒とする溶媒脱 離法との比較を行った結果、より高感度での検出が可能となることを明らかした。 

オゾンおよびカルボニル類、揮発性有機化合物、酸性ガス、塩基性ガス測定用の4種 の拡散サンプラーを用いた空気質のモニタリング調査を実施し、全国で 602 軒におい て、同一家屋において夏季と冬季、それぞれ室内・外各1カ所ずつ24時間の捕集を行 い分析した。これらの結果の詳細は、3 年間の総合研究報告書に記した。一部の地域で は個人住宅とともに公共建築物での濃度比較、および滞在時間を考慮した個人への曝露 源の寄与を検討した。その結果、公共建築物の室内空気中化学物質の総和は個人住宅よ りも低い傾向を示した。曝露源としても自宅の室内空気質の影響が大きく認められた。 

全国調査で得られた室内濃度の統計値(中央値、95及び99パーセンタイル値、最大

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研究分担者  所属施設名 内山茂久 国立保健医療科学院 稲葉洋平 国立保健医療科学院 大澤元毅 国立保健医療科学院 緒方裕光 国立保健医療科学院

加藤貴彦 熊本大学大学院生命科学研究部 嵐谷奎一 産業医科大学・産業保健学部 内山巌雄 財団法人ルイ・パストゥール医学

研究センター 東 賢一 近畿大学医学部 中込秀樹 千葉大学工学部

研究協力者  所属施設名 山田智美 国立保健医療科学院

田中礼子 横浜市衛生研究所,国立保健医療 科学院

富澤卓弥 東京薬科大学大学院 青木麻奈美 東京薬科大学 所 翌萌 千葉大学大学院 伊豆里奈 千葉大学大 菱木麻祐 麻布大学

崔 笑怡 熊本大学大学院生命科学研究部 盧 渓   熊本大学大学院生命科学研究部 日浦瑞枝 熊本大学大学院生命科学研究部 小田政子 熊本大学大学院生命科学研究部 宮崎  航 熊本大学大学院生命科学研究部 久田  文  熊本大学大学院生命科学研究部 谷川  真理  財団法人ルイ・パストゥール

医学研究センター

値)に対して、各物質の非発がんリスク評価値(RfC)または発がんのユニットリスク

(UR)を用い、非発がん評価では曝露余裕度(MOE)、発がん評価ではがん過剰発生 率を算出し検討した。その結果、ベンゼン、二酸化窒素、ギ酸、塩化水素は、年間を通 じてハイリスク傾向を示し、特にベンゼン、二酸化窒素は冬季にリスクが高く、生活習 慣や燃焼型暖房器具が関与している可能性が推定された。パラジクロロベンゼンは室内 濃度指針値策定物質であるが、いまだにハイリスク傾向であった。さらに、ベンゼン、

二酸化窒素、ギ酸、塩化水素、酢酸エチルなど、室内濃度指針値が策定されていないハ イリスクと推定される物質を見いだした。

2.日本で化学物質に高感受性を示す人の比率を把握するために、Millerらが開発し

たQEESI調査票を用いWEB調査を実施し化学物質に高感受性を示す人の割合の経年

変化を検討した。その結果、化学物質への感受性増悪は、臭いや刺激への曝露がリスク 要因となっていること、心理面では、自己の感情の自覚や認知の困難さ、不安や否定的 感情の増加が感受性の増悪でみられること、日常生活の出来事が感受性増悪に関わって いることが明らかとなった。

さらに個人の感受性要因を検討するためにQEESI評価と薬物代謝酵素の遺伝子多型 について比較検討した。日本人に適応した北條らの設定したカットオフ値に基づき 、 調査対象者 (324 人) を  ケース群と対照群にわけ検討した結果、抗酸化酵素である SOD2, Superoxide dismutase 2 の関与が見いだされた。

(3)

A. 研究目的 

1980年代ごろより、欧米ではシックビル ディング症候群の発症が問題となったが、

国内においては、「建築物における衛生的環 境の確保に関する法律」に基づき、一定レ ベルの換気が確保されたことなどから同症 候群の発症は大きく問題視されなかった。

一方で一般住宅においてシックハウス症候 群として大きく問題となり、その後、厚生 労働省による濃度指針(ガイドライン)の提 示、建築基準法の改正等、幅広く産官学連 携で種々の対応がとられ屋内空気質はずい ぶんと改善してきている。しかし、ガイド ラインに定められなかった、その他の化学 物質の濃度がむしろ増加しているとの報告 もある。

本研究では、医学のみならず、分析化学、

建築衛生、疫学、リスク科学の専門家が一 団となって、3年間の研究期間にわたって、

快適な住環境の供給・維持管理・改善対策 を提言することを目的とし、以下の内容を 検討してきた。

1.各種拡散サンプラーを用いた空気質の モニタリング

一次汚染物質に加え、オゾン等により酸 化され生成される二次汚染物質を含めた、

幅広い種類の有害化学物質を調査し、動態 を含めた環境実態を解明し、発生源の対策 とともに、汚染の軽減に資する資料とする。

この中で今年度は、揮発性有機化合物の高 感度分析法も新たに開発した。

2.化学物質に高感受性を示す人の分布の 経年変化の評価

  分担研究者の内山らは、Miller らによっ て 開 発 さ れ た 「Quick Environmental Exposure and Sensitivity Inventory (以下 QEESI)」を用いて、国内の化学物質に高感 受 性 を 示 す 集 団 比 率 の 検 討 を 行 っ た 。

QEESI調査票を、スクリーニングに使うの

には問題もあるが、一定の指標で高感受性 者の比率の経年変化を知ることは重要であ

る。以前の調査と10年後の今回の結果を分 析し、今後の対策の基礎資料とする。

3.化学物質に高感受性を示す集団の宿主 感受性要因の検討

  労働者集団およびシックハウス外来の患 者の参加協力を得て、QEESI調査とともに、

遺伝子的個体差(遺伝子多型)にもとづく 感受性リスクの評価を行う。

B. 研究方法 

B.1 各種拡散サンプラーを用いた空気質 のモニタリング

B.1.1 イオン液体を脱離溶媒とするヘッ

ドスペース法による室内空気中揮発性有機 化合物の高感度分析法の開発:

ヘッドスペースサンプラーを用いた空気 中揮発性有機化合物の高感度分析法を開発 した。本研究では幅広い温度範囲で液体状 態として存在するイオン液体に注目し、脱 離溶媒としての適用を検討した。活性炭を 充填したパッシブサンプラーを用いて空気 中のVOCを捕集し、その後、2-ハイドロキ シピリジン(HP)とイオン液体との混合溶 媒と活性炭を共にバイアルに入れ混合し密 封する。これを所定の条件下で加熱を行う ことによって、活性炭中のVOCを脱離させ、

生じた気相部をGC/MSに導入することで 分析を行った。

B.1.2 公共建築物と個人住宅における室

内環境中化学物質の実態調査比較

4種の拡散サンプラーを用いて、一般住宅 の室内外の空気質調査を実施してきた。3 年目の本年度研究でも対象数を増やし、最 終的に同一家屋を各々冬季、夏季、全国で 602軒に調査した。その結果の詳細は3年分 の総合研究報告書で記載する。

ここでは、2012年度の冬季(2012年12月

〜2013年3月)に横浜市内の公共建築物 18 施設および横浜市周辺区域の個人住宅 77 戸における屋内・屋外での環境中化学物質

(4)

濃度の実態調査のためのサンプリングを行 ったその後の解析について報告する。

B.2 室内空気汚染物質の健康リスク評価 室内空気質調査結果より、54物質の室内 濃度に対して、健康リスク評価を実施した。

全国調査で得られた室内濃度の統計値(中

央値、95及び99パーセンタイル値、最大値)

に対して、各物質の非発がんリスク評価値

(RfC)または発がんのユニットリスク

(UR)を用い、非発がん評価では曝露余裕 度(MOE)、発がん評価ではがん過剰発生 率を算出した。非発がんリスク評価値は、

国際機関及び各国の関係省庁等が公表して いる評価文書をもとに、最も信頼性のある と思われる亜急性毒性、慢性毒性または生 殖発生毒性の無毒性量または最小毒性量を 判断し、断続曝露から連続曝露への換算、

デフォルトで用いられる曝露期間、最小毒 性量、種差及び個体差に関する不確実係数 から導出した。ユニットリスクは、国際が ん研究機関の発がん性分類でグループ1か つ発がんリスク評価が必要と判断される物 質について、国際機関及び各国の関係省庁 が公表しているユニットリスクを用いた。

MOEが1未満またはがん過剰発生率が 10-5以上であればリスクA(ハイリスク)、 MOEが1以上10未満、がん過剰発生率が 10-6以上10-5未満であればリスクB(調査等 要検討)、MOEが10以上、がん過剰発生率 が10-6未満であればリスクC(静観)と判 定した。なお、非発がんリスク評価値につい ては、データ不足を追加で考慮した不確実係 数の大きさに基づき評価値の確からしさを 3段階(1000未満をH 、1000以上5000

未満をM、5000以上をL)で評価した。L

は不確実係数が大きく評価値の信頼性はか なり低いと判断される。

B.3 化学物質に対する感受性変化の要因 B3.1 調査対象

日本で化学物質に高感受性を示す人の比 率を把握するために、Miller らが開発した Quick Environmental Exposure AND Sensitivity Inventory, QEESI を 用 い て 2012年1月(初年度)に質問紙調査を実施し た。全国約107万人のモニターを有するイ ンターネット調査会社に委託し、モニター の中から 20 歳以上の全国の男女を対象と して日本の人口統計に基づいた層化多段無 作為抽出を行い、インターネットを通じた 質問紙調査を行った。そして 7,245 名から 回答を得た。今年度の調査では、この中か ら、前年度(2年目)の調査で対象とした735 名の高感受性群と、それ以外の 1,750 名の 対照群のうち、今年度も引き続きモニター 登録を行っている709名の高感受性群と、

1,677 名の対照群に対して前年度と同様に

インターネットによる質問調査を実施した。

B3.2 調査方法

本調査では、前述の高感受性群709名と

対照群 1,677 名に対して、インターネット

調査会社を通じて調査依頼を行い、3 週間 の回答期間を設け、その間に 2回の催促を メールで行った。調査は2014年1月10日 から同1月30日の間に実施した。

B3.3 調査票

前年度に使用した調査票に対して、過去 1年間の生活や職業の変化に関する質問項 目と、過去1 ヶ月の室内空気質に関する質 問項目を追加した。室内空気質に関する質 問項目は、米国環境保護庁や米国国立労働 安全衛生研究所が使用しているシックビル ディング症候群の調査票の質問項目を使用 した。

B.4 化学物質に高感受性を示す集団の宿 主感受性要因の検討:室内環境中微量化学 物質による人の健康影響に関する分子疫学 研究

化学物質過敏症患者の診断・治療のために 開発されたQEESI調査票を用いて、化学物

(5)

質に対し感受性の高い人々を 化学物質過 敏性集団 (Chemical Sensitive Popula-

tion: 以下CSPと略)を定義し、その遺伝的

感受性要因について検討した。また財団法 人ルイ・パストゥール医学研究センターに おいて化学物質過敏症と診断されたケース 9人と対照者9人の血漿を用いてメタボロー ム解析を行った。

遺伝的感受性要因の検討においては、北條 らの基準を用いた。解析対象となった候補 遺伝子としては、ホルムアルデヒド、アセ トアルデヒド、トルエンに代謝に関与し、

かつ機能との関連性が明らかな遺伝子とし て、Glutathione S-transferase (GST) M1 null、GSTT1 null、GSTP1 Ile105Val、

Aldehyde dehydrogenase (ALDH) 2 rs671、

Cytochrome P4502E1 (CYP2E1) Rsa I、芳 香 族 化 合 物 の 代 謝 酵 素 で あ る N-acetyltransferase 2 (NAT2) の3タイプ

(Rapid, intermediate, slow)と、抗酸化 酵 素 で あ る Superoxide dismutase 2 (SOD2) (rs4880) を候補遺伝子とし、それ ぞれの代表的遺伝子多型の頻度を比較検討 した。 

メタボローム解析は、ヒューマン・メタボ ローム・テクノロジーズ(株)に取集され た18人の血漿検体の解析を依頼した。

統計解析にはロジスティック回帰分析を 行い、解析にはSPSS ver 19 を用いた。

(倫理面での配慮) 

本研究・調査の実施にあたっては、厚生 労働省・文部科学省の「疫学研究の倫理指 針」にもとづき、国立保健医療科学院にお ける倫理委員会に申請・承認ののちに行う とともに、各々の研究機関においても倫理 審査委員会に申請し、審査承認を得た上で 実施した。 

また、代謝酵素の遺伝子多型に関する調 査においては、「ヒトゲノム・遺伝子解析研 究に関する倫理指針」にもとづき、分担研

究者の所属機関において倫理審査委員会に 申請し、審査承認を得た上で実施した。

C. 研究結果 

C.1 各種拡散サンプラーを用いた空気質の モニタリング

C.1.1 イオン液体を脱離溶媒とするヘッ

ドスペース法による室内空気中揮発性有機 化合物の高感度分析法の開発:

様々な分析条件を検討した結果、脱離溶媒 はHPとテトラブチルホスホニウムブロミ ド(TBPB)の混合物、ヘッドスペースサ ンプラーの加熱温度は175℃、加熱時間は 40分、HP/TBPB混合物の添加量は300 mg が適当であることが分かった。二硫化炭素 を用いた従来の溶媒脱離法との比較では、

20~40倍の感度の向上が認められた。検出 感度が高いため、スキャンモードでGC/MS 分析を行うことが可能となった。また、蒸 気圧が極めて低いイオン液体を脱離溶媒と して用いることで、脱離溶媒がGC/MSに導 入されず、溶媒ピークの干渉を受けずに分 析することができることが明らかになった。

C.1.2 公共建築物と個人住宅における室

内環境中化学物質の実態調査比較

公共建築物18施設においては屋内,屋外 とも本研究で調査対象とした化学物質のう ち,厚労省が策定した室内濃度指針値およ び暫定目標値を超過した物質はなかった。

しかし,環境省が環境基準値を策定した物 質のうち、ベンゼンの超過が18施設中3施設 で認められ,超過率は17%であった。3施設 のうち1施設については屋内,屋外とも環境 基準値を超過しており、屋内が3.8 μg/m3、 屋外が3.3 μg/m3であった。

そのほか個別の化学物質の中で最大濃度 であった物質はヘキサン(屋内:100 μg/m3) で、2番目は酢酸(屋内:96 μg/m3)だった。

また、平均値、中央値については、屋内で 数値が最も高かった物質は酢酸であり、平

(6)

均値が45 μg/m3,中央値が40 μg/m3だった。

一方個人の住宅の調査では、77戸のうち,

屋内において何らかの物質の濃度が指針値 等を超過した住宅は24戸あり、指針値等を 超過した住宅の割合は31%となった。なか には複数の物質が指針値等を超過した個人 住宅もあった。

今回調査を行った公共建築物と個人住宅 との室内空気質の相違について調べた。測 定対象とした 55 物質の室内濃度の合計値

(総和)を比較すると、個人住宅 77 戸の平

均値は 490 μg/m3 だったが、公共建築物 18施設の平均値は210 μg/m3であった。公 共建築物の室内空気中化学物質の総和は個

人住宅の43%であり、個人住宅よりも低い

傾向を示した。また、個人住宅の中から公 共建築物 18 施設の勤務者自宅 24 戸を抽 出し、職場および自宅の室内空気質と在室 時間を併せて検証することにより、個人の 一日曝露量の評価を試みた。今回の調査で はパラジクロロベンゼン,α-ピネン,d-リ モネン,二酸化窒素,ギ酸などのように、

個人住宅の方が公共建築物よりも室内濃度 が高かった物質が多かったため、在室設定 時間が加味された結果、自宅の室内空気質 の影響がより大きくなっているケースが多 かった。

C.2 室内空気汚染物質の健康リスク評価 全国調査を行った54物質のうち、非発が んリスク評価値やユニットリスクが得られ ずリスク評価ができなかった7物質を除く

47物質に対してMOEまたはがん過剰発生

率を算出した。

冬季でリスク判定Aであった物質は、ベン ゼンと二酸化窒素の中央値以上、アセトア ルデヒド、ギ酸、塩化水素の95パーセンタ イル以上、パラジクロロベンゼンの99パー センタイル以上、キシレン、1,2,4-トリメチ ルベンゼン、二酸化硫黄、アンモニア、ト ルエン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、

エチルベンゼン、酢酸エチルの最大値であ った。夏季でリスク判定Aであった物質は、

ベンゼン、ギ酸、塩化水素、パラジクロロ ベンゼンの95パーセンタイル以上、二酸化

窒素、1,2-ジクロロエタン、アセトアルデヒ

ド、酢酸エチルの99パーセンタイル以上、

ホルムアルデヒド、アンモニア、トルエン、

1,2,4-トリメチルベンゼン、n-ヘキサン、ヘ

キサナールであった。

C.3 化学物質に対する感受性変化の要因 調査の結果、高感受性群489名(回答率 69.0%)、対照群1,131名(67.4%)から回答 を得た。全体での回答率は67.9%であった。

回 答 者の 平均 年 齢は 高感 受 性群55.4歳

(23〜84歳)、対照群55.9歳(22〜83歳)、

男性の比率は高感受性群33.9%、対照群 34.0%であった。

2年間の追跡調査で実施した3回のアンケ ート全てに回答した1,429名の感受性変化 の推移から、1年間で感受性の増悪や改善が 高感受性群及び対照群いずれにもみられ、

化学物質感受性は日常生活の影響を大きく 受けていることが推察される。過去1年間に おける感受性変化は、高感受性群のうち、

この1年間で感受性の改善がみられたもの は48.0%、対照群のうち、この1年間で感受 性の増悪がみられたものは8.5%であった。

この1年間の生活環境変化等による影響

では、臭いや刺激の強いものに触れる機会 があるものほど対照群で感受性が増悪した ものが有意に増えた。この結果は前年度と 同じであり、前年度の結果が再現された。

心理面に関する影響として、自己の感情の 自覚や認知の困難さ、不安や否定的感情の 増加が感受性の増悪で有意にみられ、社会 活動の低下も有意であり、これらの項目の スコアーは、高感受性群で感受性の改善が みられた場合には減少した。項目によって は若干の差があるものの、総じて平成24年 度の結果が再現された。

(7)

C.4 化学物質に対する感受性変化の要因 C.4.1 QEESI調査結果と遺伝子多型の分 析結果

北條らの設定したカットオフ値に基づき 、 調査対象者 (324人) を  ①症状 ≧ 20、② 化学物質曝露による反応 ≧ 40 ③日常生 活の障害の程度   ≧ 10 を超えた項目数 に応じて3つのケース群 (ケース1群: 1項目、

ケース2群: 2項目、ケース3群: 3項目) を定 義し、それ以外を対照群と定義した。ケー ス1群の50歳以上の割合が対照群と比較し 有意に高かったが、喫煙状態や飲酒状態に 有意な差は認められなかった。

GSTM1, GSTT1, GSTP1, CYP2E1, ALDH2, NAT2, SOD2 の遺伝子多型頻度 を比較検討した結果、カットオフ値 3項目 を超えたケース3群において、SOD2のAla

allele 保有者の割合が有意に増加し、その

オッズ比は4.3 (95%信頼区間:1.23–15.03) であった。

C.4.2. メタボローム解析

ケース群と対照群9人ずつの予備的な メタボローム解析を実施した。その結果、

ケース群のアミノ酸の減少と短鎖脂肪酸の 増加が認められた。

D.結論 

ヘッドスペースサンプラーを用いた空気 中揮発性有機化合物の高感度分析法を新た に開発した。2‑ハイドロキシピリジン(HP) と、イオン液体であるテトラブチルホスホ ニウムブロミド(TBPB)を混合し,これを 脱離溶媒としたヘッドスペース法による室 内空気中 VOC の分析法を検討した。現行法 である二硫化炭素を溶媒とする溶媒脱離法 との比較を行った結果、TBPB / HP を脱離溶 媒とする固体捕集‑ヘッドスペース法は、吸 着剤に捕集された VOC を脱離させることが 可能であり、溶媒脱離法よりも高感度での 検出が可能となることが明らかとなった。 

また全国調査に加えて、一部の地域で個

人住宅と公共建築物での濃度比較、および 滞在時間を考慮した個人への曝露源の寄与 を検討した。その結果、公共建築物と個人 住宅との室内空気質の相違について調べた ところ、公共建築物の室内空気中化学物質 の総和は個人住宅よりも低い傾向を示した。

曝露源としても自宅の室内空気質の影響が 大きくなっているケースが多かった。 

一般住宅の全国調査の結果から、リスク 評価を行った結果、ベンゼン、二酸化窒素、

ギ酸、塩化水素、酢酸エチルなど、室内濃 度指針値が策定されていない物質の中に、

ハイリスクと推定される化学物質を見いだ した。

QEESI 調査票を用いて化学物質に対して 高感受性を示す人の分布の経年変化を調べ た。その結果、化学物質への感受性増悪は、

臭いや刺激への曝露がリスク要因となって いること、心理面では、自己の感情の自覚 や認知の困難さ、不安や否定的感情の増加 が感受性の増悪でみられること、日常生活 の出来事が感受性増悪に関わっていること が明らかとなった。 

また、環境要因だけでなく、化学物質の 代謝にかかわる薬物代謝酵素の遺伝子多型 による個人の感受性要因の検討も重要な検 討課題であるが、本研究で調査した遺伝子 群においては、抗酸化酵素である SOD2, Superoxide dismutase 2 の関与が見いだされ た。

E.健康危険情報  該当なし 

F.研究発表   1.  論文発表

(1) Win-Shwe TT, Fujimaki H, Arashidani K, Kunugita N, Indoor volatile organic compounds and chemical sensitivity reactions, Clinical and Developmental Immunology 2013; 2013: 623812.

(8)

(2) Cui X, Lu X, Hiura M, Miyazaki W, Oda M, Katoh T. Prevalence and interannual changes in multiple chemical sensitivity in Japanese workers Environ Health Prev Med. (Accepted)

(3) Uchiyama, S.; Tomizawa, T.; Inaba, Y.;

Kunugita, N. Simultaneous determination of volatile organic compounds and carbonyls in mainstream cigarette smoke using a sorbent cartridge followed by two-step elution. Journal of Chromatography A, 2013, 314: 31-37.

(4) Uchiyama, S.; Ohta, K.; Inaba, Y.;

Kunugita, Determination of carbonyl compounds generated from the E-cigarette using coupled silica cartridges impregnated

with hydroquinone and

2,4-dinitrophenylhydrazine followed by high performance liquid chromatography.

Analytical Sciences, 2013,29:1219-1222.

(5) Matsumoto, M. Inaba, Y. Yamaguchi, I.

Endo, O. Hammond, D. Uchiyama, S.

Suzuki, G. Smoking topography and biomarkers of exposure among Japanese smokers: associations with cigarette emissions obtained using machine smoking protocols. Environmental health and preventive medicine 2013, 18, 95-103.

(6) Hlaing, Z.Z.; Wajima, T.; Uchiyama, S.;

Nakagome, H. Reduction of Bromine

Compounds in Oil Produced from Brominated Flame Retardant Plastics via Pyrolysis Using a Reflux Condenser.

International Journal of Environmental Science and Development 2013, in press.

(7) Cui X, Lu X, Hiura M, Miyazaki W, Oda M, Katoh T. Evaluation of genetic polymorphisms in patients with multiple chemical sensitivity. Plos One. 8, e73708.

doi: 10.1371, 2013.

(8) 山田智美; 内山茂久; 稲葉洋平; 瀬戸博;

欅田尚樹 空気中化学物質測定用拡 散サンプラーの安定性評価および実試 料測定への応用 分析化学  2013, 62(7), 603-609.

(9) 杉田和俊; 松本真理子; 稲葉洋平; 遠藤 治; 内山茂久; 欅田尚樹 GC/MS によ るニコチン分析の検討と公定法との比 較 分析化学  2013, 62, 253-257.

(10) 東  賢一,内山巌雄. 化学物質過敏症の

実態について−全国規模の調査と臨床 の現場から−. AROMA RESEARCH, No.

54, pp.107−110, 2013.

2.  学会発表

各分担報告書に記載    

G.知的財産権の出願・登録状況  なし 

 

参照

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