• 検索結果がありません。

3 超伝導近接効果

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "3 超伝導近接効果 "

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

超伝導体の電子状態とトンネル電流

日大生産工 (非常勤) ○吉田 亘克 日大生産工 山城 昌志

1 まえがき

超伝導状態は、フェルミエネルギー近傍の マクロな数の電子が対を組み、位相を揃えて 1つの量子状態を占めることによって出現す る状態である。マクロな数の電子が関与する 現象であるが、純粋に量子力学的な状態であ ることから、1つの状態を占めているマクロ な数の電子対の集団は波動性を持ち、巨視的 波動関数によって記述される。永久電流やマ イスナー効果など超伝導物質の示す特異な電 磁気学的現象は、この巨視的波動性の表れな のである。巨視的波動性、すなわち巨視的量 子効果は単体の超伝導体だけでなく、超伝導 物質と非超伝導物質(金属、半導体、強磁性 体など)との接合においても現れる。例えば、

超伝導体と金属を接合したとき、超伝導体の 巨視的波動関数が金属側へ染み出し、接合界 面近傍の金属側も超伝導性を獲得することが 知られている。この現象は、超伝導体を担う 電子対の観点からは電子対が金属側へ染み出 したことに他ならず、超伝導近接効果と呼ば れている。

超伝導近接効果の研究の歴史は長いが、超 伝導デバイスなど応用的研究のみならず、基 礎物理としても重要な課題の1つとして国内 外で活発な研究が続けられている1)

2 状態密度とトンネル電流

絶対零度における自由電子モデルで記述さ れる金属中の多電子系の基底状態は、1粒子 のエネルギーの最も低い状態から、パウリの 原理の従って、フェルミエネルギーまで各状 態に1つずつ電子が詰まった状態である。多 くの場合、金属や超伝導体などの固体が示す 電磁気学特性はフェルミエネルギー近傍の電 子によって説明することができる。

そのため、電子状態を調べることは固体の物 性を解明する上で重要となる。固体の電子状 態は、あるエネルギーにおける電子の取りえ る状態の数、すなわち状態密度という量で表 される。図1に示されるように、金属中の自由 電子の状態密度はエネルギーの平方根に比例 している。

図1 自由電子の状態密度

金属状態の状態密度がエネルギーの連続的 な関数であるのに対して、超伝導状態ではフ ェルミエネルギー近傍にエネルギーギャップ Δが開くことになる(図2)。これは、フェルミ エネルギー近傍の電子が電子対を形成して1 つの量子状態を占めている結果である。

図2 金属の超伝導状態の状態密度

Density of States and Tunneling Current in Superconducting Junctions Nobukatsu Yoshida and Masashi Ymashiro

−日本大学生産工学部第43回学術講演会(2010-12-4)−

― 15 ― 8-8

(2)

超伝導体の状態密度は電子対の対称性を 反映しており、電子対の対称性は超伝導発現 機構と密接に関係している。この理由から、

超伝導体の電子状態すなわち電子の状態密 度を調べることは、超伝導体の基礎物理を解 明する上で重要な課題となっている。そして 超伝導状態の状態密度は、トンネル電流によ って測定することができる2)

超伝導体/非超伝導金属接合におけるト ンネル電流は、界面バリアポテンシャルの高 い極限では接合界面両側のそれぞれの状態 密度の積に比例する。例えば、電位Vが印加 された金属超伝導体/非超伝導金属接合に おけるトンネル電流I(eV)は、

と表される。ここで、 は金属超 伝導体、非超伝導金属の接合界面における状 態密度である。トンネル電流の電位差Vによ る微分は微分コンダクタンスと呼ばれ、図3 に示したように超伝導体の状態密度を反映 していることが分かる。

図3 トンネル電流と微分コンダクタンス

3 超伝導近接効果

接合の界面バリアポテンシャルが強い極 限では、金属側の状態密度は超伝導体の影響 を受けない。しかし、界面バリアポテンシャ ルが無い金属極限と呼ばれる接合やバリア ポテンシャルの低い接合では、超伝導体の電 子対が金属側に染み出す超伝導近接効果に より、界面近傍の金属側の状態密度は超伝導 体の影響を受けるようになる。この染み出し は数十μmに及ぶことから、トンネル電流も 多彩な振る舞いを示すようになる。一方、超 伝導側では、電子対の染み出しにより、界面 に近づくにつれて超伝導性が失われ、結果と して超伝導体の状態密度も変調する。

近年では、微細加工技術の発展に伴い様々 な接合系の作成が可能になり、超伝導近接効 果は単なる電子対の染み出し現象ではなく、

超伝導体に接合する物質に応じて多彩な側 面を持つことが明らかになってきている3)

4 モデルと計算方法

本研究では、不純物を含まないクリーンな非 超伝導物質(金属あるいは強磁性体)/超伝導 体接合における接合界面の電子状態とトンネ ル電流について、近接効果を考慮して調べる。

また、非超伝導体と超伝導体ともに自由電子モ デルで取り扱う。簡単化したモデルではある が、近接効果を示す巨視的波動関数の空間変化 を定量的に計算することは一般的に困難な問 題である。そこで我々は、この問題に最も適し た理論的手法として知られる準古典グリーン 関数法4)に基づき計算を行った。

5 結果

近接効果は巨視的波動関数の空間変化によ って表される。金属超伝導体/金属接合におけ る巨視的波動関数 の空間変化と金属界面の 状態密度DNを図4に示す。

図4 超伝導体・金属接合系における巨視的波 動関数の空間変化と金属界面の状態密度。

この結果から、近接効果によって界面近傍の 金属は超伝導性を獲得した結果、状態密度にギ ャップが開いていることが分かる。

本講演では、金属超伝導体だけでなく、銅酸 化物高温超伝導体や強磁性体との接合につい ても紹介する予定である。

「参考文献」

1) A.A.Golubov,M.Yu.Kupriyanov and E.I’ichev

Rev.Mod.Phys.76(2004)p.411 2) Y.Tanaka and S.Kashiwaya,

Phys.Rev.Lett.Vol.74.No.17(1995)p.3451 3) Y.Asano,Y.Tanaka and S.Kashiwaya Phys.Rev.Lett.96(2006)p.097007

4) Serene.J.W and Rainer.D

Phys.Reports 101(1983)

p.221

― 16 ―

参照

関連したドキュメント

フロートの中に電極 と水銀が納められてい る。通常時(上記イメー ジ図の上側のように垂 直に近い状態)では、水

話者の発表態度 がプレゼンテー ションの内容を 説得的にしてお り、聴衆の反応 を見ながら自信 をもって伝えて

分配関数に関する古典統計力学の近似 注: ややまどろっこしいが、基本的な考え方は、q-p 空間において、 ①エネルギー En を取る量子状態

北区で「子育てメッセ」を企画運営することが初めてで、誰も「完成

同研究グループは以前に、電位依存性カリウムチャネル Kv4.2 をコードする KCND2 遺伝子の 分断変異 10) を、側頭葉てんかんの患者から同定し報告しています

・電源投入直後の MPIO は出力状態に設定されているため全ての S/PDIF 信号を入力する前に MPSEL レジスタで MPIO を入力状態に設定する必要がある。MPSEL

検出電圧が RC フィルタを通して現れます。電流が短絡保護 のトリップレベルを超えた場合、 ローサイドの三相すべて の IGBT はオフ状態になり、フォールト信号出力 V

地震 L1 について、状態 A+α と状態 E の評価結果を比較すると、全 CDF は状態 A+α の 1.2×10 -5 /炉年から状態 E では 8.2×10 -6 /炉年まで低下し