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しもざらめ雪の形成および雪面の昇華蒸発に伴 う

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(1)

北海 道の雪氷

 No 20(2001)

しもざらめ雪の形成および雪面の昇華蒸発に伴 う

安定 同位体組成 の変化

人 久保 晶 弘

1・

鎌 田慈 2.佐

藤 篤 司 3.橋

本 重 将 4.中 尾 正 義

5

(11北

見工業大学  2:産 業技術総合研究所  3:防 災科学技術研究所

4名 古屋大学大学院理学研究科  5:総 合地球環境学研究所

)

1.は じめに

積雪はそれ 自身が広大な面積の氷表面を持 ち、氷 と水蒸気 との間で莫大な量の水分子を 交換 し合つている。すなわち、気象学で用い られる積雪のマクロな昇華量は、 ミクロな視 点か ら見れば氷表面における莫大な昇華蒸発 量と昇華凝結量 との間の僅かな差に過ぎない。

またその際、水素・酸素の安定同位体で構成 されるHD

0や

H2

0な

どの「重たい水」の 存在比 (それぞれδ

Dお

よびδ180)が 、相変化 に伴 う分別によって僅かに変化す る。降雪の 安定同位体比は水蒸気の凝結温度や水蒸気輸 送過程などに依存 しているため、積雪は安定 同位体比について層構造を形成 しているが、

雪面や積雪中での活発な昇華によってこの安 定同位体比のプロファイルがどのように変化 していくのか、が本研究の興味の対象である。

雪面を含む積雪表層近傍では大きな温度勾 配がかか りやす く、マクロな水蒸気移動が見 られるので、安定同位体比プロファイルは容 易に変化す る。例えば、Sato■ and Watanabe (1985)は氷板入 りの積雪試料に温度勾配 をか けた実験を行ない、氷板の有無によつて酸素 同位体比プロファイルが どのように変化する かを考察 した。また、Sommerfeld(1991)は 同 様の実験からδD・

0の

変化を求め、積雪内 の水蒸気輸送距離は少な くとも粒子サイズ以 上であると結論づけた。加 えて、Sonllnerfeld (1991)は積雪試料の上方をオープンに して雪 面における昇率の影響を調べる実験 も行なつ てお り、表層のδ

Dお

よびδ180が lヶ月でそれ ぞれ50‰、12‰ほど増加するとい う結果を得 ている。

一方、Hachikubo´′″(1997)は野外において

放射冷却 した雪面への水蒸気輸送の集中につ いて調べ、積雪表層の♂

80の

変動を求めた結 果、雪面が昇率蒸発するとが

80が

数‰増加 し、

昇率凝結す ると逆に減少す る傾向が得 られた。

また、Hachikubo θ′aF(2000)は低温室で しもざ らめ雪を入工的に作成 し、δD・ δ

BOプ

ロファ

イルが温度勾配方向に定量的にどの程度変化 す るかを調べた。その結果、積雪試料のδ値は 高温側で増加・低温側で減少 したこと、そ し て積雪内の対流の効果や動的同位体効果によ る安定同位体分別の昇華速度依存性の存在が 示唆 された。 これ らの成果については、人久

保 ほか(201111)に よつてさらに解析 された結果

が報告 されている。

本研究では、以上の成果について さらに精 密な環境 コン トロールを行ない、安定同位体 分別の温度・積雪密度依存性 を明 らかにする ことを目的 としている。すでに鎌 田ほか(1999) は、精密な温度 コン トロールが可能でかつ大 きな温度勾配をかけられ る実験装置を用いて、

しもざらめ雪結晶の粒度解析か ら求めた成長 速度 と温度・温度勾配・水蒸気フラックスを 求めている。今回、この実験装置を改良 した

ものを用いて以下の実験が行なわれた。

2.実

験装置お よび実験方法

防災科学技術研究所新庄雪氷防災研究支所 の低温室にて、積雪に大きな温度勾配をかけ て しもざらめ雪を短時間で作成する実験 1、

および積雪試料の上面を昇華蒸発 させ る実験

2の 2種

類が行なわれた。

2.1実

1

実験装置の概要図を図

1に

示す。まず、約

‑59‑

(2)

北海道の雪氷

 No.20(2001)

‑10℃の低温室内に木製 の恒温箱 (0.6m× 0.7m

×

1.2m)を

設置 し、 ヒー タ とファンか ら構成 され る温度調節装置 に よって恒温箱 内の温度 を‐10±1℃に保 つた。恒温箱 内に設置 された実 験装置本体 は、Cold Pl江

c(上

下に1個ずつ、

外部の循環型恒温槽 に接続)・ 断熱壁 。10個 のパ ンで構成 され る。パ ンは図の よ うな内径 0.25m× 0.25m×

0.02mの

木枠 にポ リエ ステル 製ネ ッ ト (製品名 :プランク トンネ ッ ト

)が

張 られ た もので、水蒸気 を透過 させ ることが できる。 これ に こ しま り雪 をふ るい入れ、重 箱状 に重ねた後 に断熱壁 で囲んで

2個

の Cold plateで挟 んだ。 なお、 こ しま り雪 には新庄雪 氷防災研 究支所 の雪氷防災実験棟 で人工的に 作 られ た新雪 を保管 して作 られ た ものを、ふ るいで よ くほ ぐして用 いた。 したが つて、本 研究では初期状態 の積 雪試料の安定同位 体組 成 は一様 である と仮 定 して解析 を行 な う。

Isothellllal box

O.6m× 0.7m×

1.2m 0.25m 0.02m

各パ ンの積 雪試料 の密度 はふ るいに よつて 418±2(kg m‐3)に設 定 された。Cold plateの設定 温度 については、

A:上

‑5℃・下側‑55℃

B:

上側¨55℃ 。下側‐5℃

2種

類 の実験 が行 なわ れ、温度勾配 は約 2.5℃m・ だった。 いずれ も 実験時間は

88時

(4日

)で

あ る。実験終 了後 、重ねたパ ンを注意深 く切 り離 し、実験 前後 の各パ ンの重量 を測定 した。 また、実験 中の試料 内の温度分布 を確認す るために、各 パ ンの中央の温度 を熱電対で測定 した。安定 同位 体測定用の試料 については、各パ ンの中 央部で約 100g分がそれぞれ採取 され た。これ に加 えて、各パ ンの位 置 にお け る積雪粒 子の 成長速度 を もとめるために、積 雪粒子 の接写 写真撮影 も合 わせ て行 なわれ た。 なお、 この 積雪粒子の粒径 。平均成長速度お よびダ

80に

ついては現在解析 中である。

2.2実

験2

内径 が縦

207mm(底

部分 は

19mm)、

300mm(底

部分は

280mm)、

高 さ

48mmの

プ ラスチ ック製バ ッ トを複数用 いた。 これ らの バ ッ トに実験 1と 同様の こしま り雪をふ るい 入れ、

3種

類 の環境温度 (‑4℃、‐10℃、‐18℃)、

風の有無 、

2種

類 の実験 時間

(96時

間、191 時間

)で

環境条件 を変 えて行 なわれ た。積雪 密度 は447±H(kg m 3)に 設 定 され た。ただ し、

温度条件 については特別 な恒温 システ ムを用 いなかったため、環境温度 のば らつ きは比較 的大 きい。 実験 終 了後 は、雪面 か ら

5mm〜

10mmお

きにス ライ ス し、安定同位体測定用 の試料 を採取 した。

3.実

験 結 果 お よび 考 察 3.1実 験1

10個 のパ ンによつて区切 られ た積雪試料各 層のδ

Dプ

ロファイル を図

2に

示す。試料作成 時のδ

Dは

、試料下側 を冷却 した実験A、 試料 上側 を冷 却 した 実 験

B共

に それ ぞ れ ‐28.5

±0.4‰である。図

2よ

り、明 らかに有意 なδ

D

プ ロファイルの変化 が認 め られ る。 特徴 的な のは、6〜

8cm程

度 の周期 で「重 たい」層 と「軽 い」層 が現 われ てい る点である。 この周期現 象については後述す る。

ポ リエステル製ネット

実験装置 の概 略 図 (実1)。

‑60‑

(3)

また、実験

Bの

最下層 は温度が最 も高い(約

5℃

)部

分 で あ り、昇華蒸発 が卓越 してかな り重 くなってい る一方 、温度 が最 も低 い (約

55℃

)最

上層 では昇華凝結 が卓越 して若干 で はあるが軽 くなつてい ることが分か る。 この 傾 向は Hachikubo α 滅 (2000)お よび八久保 ほ か(2000)で報告 されてい るが、実験

Aの

結果 については この よ うな傾 向は認 め られ ない。

その理 由については推測 の域 を出ないが、対 流が起 きる と考 え られ る実験

Bに

対 して、実

Aで

は水蒸気輸送量が 自己拡散 のみで小 さ くなるため、上述 の傾 向は誤差 の範 囲に とど まった と考 えるのが妥 当であろ う。

300      ‑290       ‐280       ‐270       ‐260 各層の ∂D{勧

実験 1終了後 の各層 のδ

Dプ

ロ フ ァイ ル 。

各層 の δD(釉

290      280      270      260

3実

験 1終 了後の各層の質量変化 とδD(実験A)。

次に、実験

Aに

関す る各層 の質量変化 とδ

D

プ ロファイル を図

3に

表 わ した。質量変化 に ついて も同様 の周期模様 がみ られ 、中間層 で も明 らかな重量 の増減 が認 め られ る。 この こ とは、ただ単純 に高温側 で昇華蒸発 して重量

北海道の雪氷

 No.20(2001)

が軽 くな り、低温側 で昇華凝結 して重 くなる だけではない こ とを示 してい る。 また、重量 の増加 したあ る中間層 が昇華凝結 の卓越 した 部分である とすれば、その層 のδ

Dは

軽 い水蒸 気 の集 中に よって相対的 に減少す る と考 え ら れ るが、図

3で

は必ず しもその よ うに対応 し ていない。

なお、実験

Bの

各層 の質量変化 については、

各層 間の癒着 が強力 で切 り離 しが困難 だつた ため、今 回は残念 なが ら信頼 で きるデー タが 求 め られ なか った。

3.2実 験2

実験 2の 実験条件。

日料番号

 

ヨ壼 )口 A●●日(h)昇 睾榔 mO)●面低下量(mm)

1  

95■13な

  96    

25       07 2  

95■13な

 191    

32      18 3  

96■19あ

  96    

133      37 4  

96■19あ

 191    

l14      63 5 

176±12あ

  96    

66      17 6  

4帷18な

  96    

55       15

実験

2で

使用 した積雪試料

6つ

に関す る実 験条件などを表

1に

ま とめた。いずれ も温度 変化の標準偏差は 2℃以内であつた。 また、

表中の風については低温室の冷凍機の送風 口 の前に設置 したものとそ うでないものとの差 であ り、風速の測定は行なわれていない。昇 華潜熱は3〜 13 Wm‐2の範囲内にあ り、実験終 了までの雪面低下量は最大で

6nlm近

くに達 したため、雪面のごく表層部分は完全 に昇華 蒸発 して失われたもの と考えられ る。

15E 205 25 o

実験2終了後 のδ

Dプ

ロ フ ァイ ル 。

卜.

卜.

︵ E

¨

・5

60 40 20 00 80 60 40

︵ E

‑61‑

‑1     0

各層の 質■変化の割合(る)

δD[口 〕

   

初期1285%

̲」

・55℃

10■¨ 鳳なし

96mm L l̲i

i- - -x--18t

la9

e6rEl

(4)

北海道の雪氷

 No20(2001)

4は

実験

2終

了後の積雪試料

6つ

に関す るδ

Dの

鉛直方向プロファイルである。ただ し、

図中の縦軸は初期状態の雪面か らの深 さを表 わ している。図

4か

ら、δ

Dプ

ロファイルの変 化量はどの試料 も深 さ方向に指数関数的に減 少 してお り、雪面か ら少なくとも2‐

3om程

度 の深 さまでは安定同位体プロファイルが十分 変化 していることが分かる。また、同 じ温度 条件では風のある方 もしくは実験時間の長い 方がδ

Dプ

ロファイルの変化量は大きく、より 深 くまで影響が見 られる。実験時間が同 じで 風のない状態では温度の高い方が若千、δ

Dプ

ロファイルの変化量が大きい。

実験

2の

結果で注 目すべき点は、雪面か ら 以上のような昇華蒸発があつたにも関わらず、

雪面近傍のδ

Dが

減少 していることである。氷 表面が昇華蒸発す るとき、軽い水分子か ら選 択的に飛び出 してい くとすれば、残 された氷 表面には相対的に重い水分子が多 く取 り残 さ れるだろ う。例えば、Hachkubo´ ′●7(1997) は、野外 において雪面が昇華蒸発す る際 に ぴ

0が

数‰増加 したと報告 してお り、一見す

るとこの説明は正 しいように見える。

しか しなが ら、冒頭でも述べたように、氷 表面 と周囲の水蒸気 との間では水分子のや り

とりが活発に行なわれている。つま り、この 水蒸気の安定同位体組成が不明なままでは、

氷表面の安定同位体組成 を記述す ることは本 来不可能である。本実験の場合は、低温室内 の水蒸気のδ

Dが

極 めて小 さい値であった と 推定される。そ して、雪面付近で莫大な量の 水分子のや りとりをす る うちに、重い水分子 も昇華蒸発 して出ていき、氷表面を構成す る 水分子が次第に軽い水分子に置き換わつた結 果、δ

Dが

減少 した と考えられる。

4。ま とめ と今後 の展望

Sokratov and Maeno(1998,2000)は 、温度勾 配をかけた積雪試料の温度分布・密度分布が 波状構造を持つことを精密な室内実験によつ て明 らかに し、これを準定常状態であると説 明 した。本実験ではこの積雪密度の波状分布 を追試・確認 したことになる。 もし、試料内 の質量分布がこのように不均―になるとすれ

ば、安定同位体プロファイル も同様に波状分 布になると予想 され る。しか しなが ら、δ

Dに

関 して同様の周期模様が確認 されたにもかか わ らず、質量変化 との対応は見 られなかつた。

この理由については不明であるが、いずれに しても、実験 1に 関 しては試料

2個

分 しか実 験が行なわれてお らず、データ不足の感は否 めない。 さらに温度・温度勾配・積雪密度な どを変化 させた実験を行な う必要があろ う。

一方、実験

2に

ついてもさらに不明な点が 多い。特に、昇華によつてバル クの試料の安 定同位体組成を変化 させ るほどの水分子の交 換が固相〜気相間でいかに して行なわれ るの か、これは今後の重要な研究課題であろ う。

5.謝

積雪試料のδ

D測

定の際には、東工大総合理 工学研究科の吉田尚弘教授 にお世話にな りま

した。 ここに感謝の意を表 します。

6.参

考文献

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Aki●ya(1997)Fluctua● on of δ180 。F surfacc snow with surfacc hoar and dcpth hoar fonnation

Prac̀θ″″

gsゲ

″ο

 NIPR勁

"S'

Pο M″σο″ο′。″ C″cわy,No ll,94‐102

八 久 保

 

晶 弘・ 橋 本

 

重 将 。中尾

 

正 義・本 山

 

明・ 鈴木

 

啓 助・ 西村

 

浩 一 (2000)霜結 晶 に よ る 積 雪 表 層 の 安 定 同位 体 分 別 過 程,雪,62巻

,3号

,

265‐277

Hach血

bo,A,S Hashhoto,M Nakawo and K

Nishmura 120KXl)ISOtOpic mass Gはctlonation oF snow due to depth hoar fomation′ο7ar Ma″ ο

"′ο″ "′

C7acわ′οy,14,1‐7

鎌 田

 

慈 ・ セ ル ゲ イ

Aソ

ク ラ トフ・ 佐 藤

 

篤 司

(1999)極低 温 下 に お け る し も ざ ら め 雪 の 成 長 15回寒 地 技術 シ ンポ ジ ウム講 演論 文集,7‐12 Sokratov,S A and N Macno(1998)Wavy temperamc and denslty dismbu10ns fomed ul snow  И″″αお グ

C′ασわあg咋Vo126,73‐76

Sokratov,S A and N Macno(2000)EfFcct市e water vapor dirusiOn cOefEcient ofsnow undcr a tcmperatllrc 騨adicnt  財ocr R ο κ´

sR

ο″昴,Vo1 36,No5,

1269‐1276

‑62‑

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