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尿酸輸送機構における NPT homologue 及び NPT3 の発現と機能に関する研究

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博士論文

尿酸輸送機構における NPT homologue 及び NPT3 の発現と機能に関する研究

平成28年 3月

外川 奈津子

岡山大学大学院

医歯薬学総合研究科

博士後期課程薬科学専攻

(2)

参考論文

Natsuko Togawa, Takaaki Miyaji, Sho Izawa, Hiroshi Omote, and Yoshinori Moriyama

A Na+-phosphate cotransporter homologue (SLC17A4 protein) is an intestinal organic anion exporter.

Am J Physiol Cell Physiol 302: C1652-C1660, 2012

Natsuko Togawa, Narinobu Juge, Takaaki Miyaji, Miki Hiasa, Hiroshi Omote, and Yoshinori Moriyama

Wide expression of type 1 Na+-phosphate cotransporter 3 (NPT3/SLC17A2), a membrane potential-driven organic anion transporter.

Am J Physiol Cell Physiol 309: C71-C80, 2015

(3)

目次

略語表 1

第一章 序論 4

第二章 実験方法 10

第三章 結果(NPT homologue) 26

第四章 結果(NPT3) 36

第五章 考察 49

第六章 総括及び展望 55

引用文献 58

謝辞 67

(4)

【略語】

ABC ATP-binding cassette AMP adenosine monophosphate ATP adenosine triphosphate

BCRP breast cancer resistance protein transporter

bp base pair

BSA bovine serum albumin CBB coomassie brilliant blue cDNA complementary DNA

Da Dalton

DAB 3,3’-diaminobenzidine tetrahydrochloride DDW distilled water

dNTP deoxynucleotide 5’-triphosphate DNA deoxyribonucleic acid

DTT dithiothreitol

DTM N-decyl-β-D-thiomaltopyranoside

ECL enhanced chemiluminescence amplification EDTA ethylenediamine-N,N,N’,N’-tetraacetic acid FBS fatal bovine serum

GFAP glial fibrillary acidic protein GLUT glucose transporter

GST glutathione S-transferase GWAS genome-wide association study

G3PDH glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase HBSS Hanks’ balanced salt solution

HRP horseradish peroxidase IgG immunoglobulin G

IPTG isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside LB Luria-Bertani broth

MOPS 3-(N-morpholino) propanesulfonic acid mRNA messenger RNA

(5)

Ni-NTA nickel-nitrilotriacetic acid NPT Na+ -phosphate cotransporter

NSAIDs non-steroidal anti-inflammatory drugs OAT organic anion transporter

OCT organic cation transporter O.D. optical density

OG n-Octyl-β-D-glucoside

PAGE polyacrylamide gel electrophoresis PAH p-aminohippuric acid

PBS phosphate buffered saline PCR polymerase chain reaction PEG polyethylene glycol

PMSF phenylmethylsulfonyl fluoride

RI radioisotope

RNA ribonucleic acid

RT reverse transcription SDS sodium dodecyl sulfate

SDS-PAGE sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis SLC solute carrier

SNP single nucleotide polymorphism TB terrific broth

TETRAN Tetracycline transporter-like protein TCA trichloroacetic acid

Tris tris (hydroxymethyl) aminomethane URAT urate transporter

URATv1 voltage-driven urate transporter 1 VAChT vesicular acetylcholine transporter

VEAT vesicular excitatory amino acid transporter VGLUT vesicular glutamate transporter

VMAT vesicular monoamine transporter VNUT vesicular nucleotide transporter

(6)

【アミノ酸】

G glycine Q glutamine A alanine H histidine V valine K lysine L leucine R arginine I isoleucine C cysteine S serine M methionine T threonine F phenylalanine D aspartic acid Y tyrosine

N asparagine W tryptophan E glutamic acid P proline

【塩基】

A adenine G guanine T thymine C cytosine

(7)

第一章

序論

(8)

尿酸はヒトにおけるプリン化合物の最終代謝産物である。プリン化合物は、

分子構造にプリン骨格を持つDNAやATPなどがあげられる。体内で不要にな ったプリン化合物や食べ物から摂取したプリン化合物はキサンチンへと代謝さ れた後、主に肝臓や小腸粘膜に存在するキサンチンオキシダーゼの酸化作用に より尿酸となる(図1、2)。尿酸は、他の哺乳類や下等動物ではさらに代謝され るが、ヒトにおいては尿酸オキシダーゼが欠損しているため、それ以上体内で は代謝されない(図 1)。血中の抗酸化物質のおよそ6割を占める尿酸は、体内 において強力な抗酸化物質として、発生したヒドロキシラジカルなどの活性酸 素を除去し、神経変性を防ぐ作用がある(24, 42)。ヒト(霊長類)の血中尿酸 値は、尿酸の溶解度の最大値付近(4〜6 mg/dl)にある。これは他のほ乳類よ りも遥かに高濃度であり、ヒトの寿命が他の動物よりも長い理由の一つである ともいわれている(36)。一方で、尿酸は水に溶けにくく、低体温箇所や酸性下 で結晶化しやすい性質がある。血中尿酸値が上昇し高尿酸血症になると、血液 の流れが弱く冷えやすい関節などで結晶化しやすくなる。この状態が長く続く と、尿酸の結晶が徐々に沈着し、痛風や尿路結石、腎障害などが引き起こされ る(図 2)(42)。また、最近では、高尿酸血症が様々な生活習慣病の要因とな ることが指摘されている。従って、体内において尿酸値が常に一定に保たれて いることは生体の恒常性維持に重要である。

尿酸値に異常があるヒトの8割以上は排泄過程に異常があることから、体内 における尿酸値の維持において、排泄機構は特に重要である。尿酸は3分の2 が腎臓から尿中へ、残りの3分の1が小腸から糞便中に排泄されている(図 2)

(43, 44)。これらの器官では、上皮細胞におけるトランスポーターを介した尿

酸の経細胞輸送による再吸収と分泌により、血中の尿酸濃度が調節されている

(図 3)。腎臓においては、URAT1(SLC22A12)が尿細管細胞のアピカル膜、

URATv1(GLUT9、SLC2A9)が基底膜側に発現し、尿酸の再吸収を行ってい

る(1, 10, 15)。一方、腎臓及び小腸における血中の尿酸は、まず基底膜側に発

現している OAT1(SLC22A6)、OAT3(SLC22A8)によって尿細管細胞ある いは小腸上皮細胞内に取り込まれる(2, 22)。上皮細胞に取り込まれた尿酸は、

ATP の加水分解エネルギーを利用して物質を輸送する ATP-binding cassette

(ABC)型トランスポーターと、膜電位を駆動力とした solute carrier(SLC) 型という駆動力の異なる尿酸排泄トランスポーターによって管腔側に排泄され る(30)。これまで、ABC型トランスポーターは腎臓においてはBCRP(ABCG2)

(9)

と MRP4(ABCC2)、小腸においては BCRP が同定されていたが、と SLC 型 トランスポーターの関与は不明であった(図3)(6, 16, 47, 51)。

SLC17ファミリーは、9つのメンバーによって構成されるトランスポーター

ファミリーである(図 4)。当研究室の宮地ら、樹下ら、澤田らは、精製再構成 系を用いてVEAT(SLC17A5)、VGLUTs(SLC17A6-8)、VNUT(SLC17A9) が共通して膜電位と塩素イオンに依存して、それぞれ特定の有機アニオン性基 質を輸送する小胞型の有機アニオントランスポーターであることを明らかにし た(19, 32, 39)。この他にSLC17ファミリーには、Na+-phosphate cotransporter 1(NPT1, SLC17A1)、NPT3(SLC17A2)、NPT4(SLC17A3)、NPT homologue

(SLC17A4)で構成される細胞膜型のNPTサブファミリーがある。SLC17フ ァミリーのうち最初に発見された NPT1 は、腎臓及び肝臓におけるナトリウム 依存性リン酸トランスポーターであると言われていたが、NPT1 のリン酸に対 する親和性は非常に低いことに加え、親和性の高い別のトランスポーターが見 つかっていたことから、NPT1には他の輸送基質が予想されていた(25, 37)。 その後の動物細胞発現系での解析から、NPT1 は膜電位依存的な有機アニオン トランスポーターであることが示された(5, 21, 45, 52)。しかしながら、これ らの研究においては動物細胞にトランスポーターを発現させており、夾雑物の 影響や発現量が一定でないなど、目的のトランスポーター自身の輸送機能を正 確に測定することができていなかった。2010年に当研究室の居原田らは、精製 した NPT1 をリポソームに再構成して輸送機能を解析したところ、膜電位及び 塩素イオン依存的に尿酸や親水性NSAIDsなどの有機アニオンを輸送するトラ ンスポーターであることを明らかにした(17)。この方法は、夾雑物の影響を受 けずに、適切な駆動力をかけて輸送活性を測定することができる。NPT1 には 高尿酸血症や痛風に関わる SNP 変異が知られている(23)。居原田らはその変 異NPT1(T269I)を精製し解析した結果、尿酸輸送活性は野生型に対して32%

低下していることを見いだした(17)。さらに、この変異を持つ人は痛風の発症 リスクが上昇することが知られている(7)。NPT4も NPT1と同様、腎臓に発 現し、同様の輸送機能を持つことを本実験系でも確かめている(図 3)(20)。

このように、尿酸排泄の3分の2を担う腎臓においては、SLC 型尿酸排泄トラ ンスポーターとして、NPT1と NPT4 が同定された。しかしながら、尿酸排泄 の残りの3分の1を担う小腸においては、SLC 型尿酸排泄トランスポーターは 不明なままであった。さらに最近、尿酸トランスポーターは尿酸排泄部位以外

(10)

における働きも注目されており、胎盤関門の母体血液側、血液脳関門の血管内 皮細胞血液側においてBCRPの発現が報告されていたが、いずれの臓器におい てもSLC型の関与については不明であった(28, 31)。

そこで私は、発現と機能が明らかにされていない NPT homologue と NPT3 に注目した(図 4)。これまで、NPT homologue は遺伝子レベルで主に膵臓、

肝臓、大腸、小腸に、NPT3 は心臓、筋肉、脳、胎盤、肺、肝臓、腎臓、膵臓 に発現していることが報告されていたが、タンパクレベルでの発現や輸送機能 については解析されていなかった(38, 41)。本研究において、NPT homologue 及び NPT3 の局在と機能を解明し、尿酸輸送の新たな側面を拓くことを目指し た。

(11)
(12)
(13)

第二章

実験方法

(14)

以下、human NPT homologueはhNPT homologue、mouse NPT homologue はmNPT homologue、mouse NPT3はmNPT3として表記する。

RT-PCR及びリアルタイム PCR

各臓器のヒト及びマウスtotal RNAは、Clontech及びUNITECHより購入 した。また、マウスアストロサイトのtotal RNAは、初代培養したアストロサ イトをセルスクレイパーではがし、1.5 mlチューブに回収した後、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)のプロトコールに従ってRNAを抽出して得た。各total RNA 1 µgを、Reverse Transcriptase Kit(Toyobo)を用いてcDNAに逆転写した。

このcDNAに、400 nM の各特異的プライマーと5 U/µl SYBR Premix Ex Taq

(TaKaRa)を添加し、hNPT homologueは95℃ 15秒(変性)、60℃ 30秒(ア ニーリング、伸長)を、mNPT3 は 95℃ 5 秒(変性)、60℃ 30 秒(アニーリ ング、伸長)を35サイクル繰り返した。hNPT homologueの発現量は、各臓器 のG3PDHのmRNA量に対する相対的な量を示した。また、PCR産物を10%

アクリルアミドゲルに電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色し、hNPT homologue(141 bp)とhG3PDH(138 bp)、mNPT3(148 bp)とmG3PDH

(150 bp)のバンドを検出した。

〔hNPT homologue〕

Sence primer 5’-ctccactgactcccagggct-3’

Antisence primer 5’-ctggggattggagccaagaatgag-3’

〔hG3PDH〕

Sence primer 5’-ggtgaaggtcggagtcaacgg-3’

Antisence primer 5’-gttgaggtcaatgaaggggtc-3’

〔mNPT3〕

Sence primer 5’-tgggaccagcaatttgtgtga-3’

Antisence primer 5’-actgataaggaatccggtggta-3’

〔mG3PDH〕

Sence primer 5’-tgtgtccgtcgtggatctga-3

(15)

抗血清の作製

hNPT homologueウサギ抗血清、mNPT homologueウサギ抗血清、mNPT3 ウサギ抗血清をいずれも同様の手順で作製した。以下、hNPT homologueの場 合を中心に述べる。

1)抗原ペプチド発現ベクターの作製

hNPT homologue由来の配列に制限酵素サイトを付けた以下のプライマーを 用い、PCRによりM1からK30のcDNA領域を増幅した。PCR反応は0.1 µg hNPT homologueにEx Taq Buffer(Takara)、0.3125 mM dNTP mix、0.3125 µM primer、1 U Ex Taq(Takara)を加えて、total volume 16 µlにし、94℃ 2 分後、94℃ 45 秒、54℃ 45 秒、72℃ 30 秒を 35 サイクル繰り返し、72℃ 2 分保温した後4℃で保存した。

抗原ペプチドのアミノ酸配列

MSTGPDVKATVGDISSDGNLNVAQEECSRK ( M1-K30 ) —hNPT homologue

MSTGADLKAREGDIPSDNMTQEQSFKKGFC ( M1-C30 ) —mNPT homologue

MDEKPTTRKGSGFCSLRYALALIMHFSNFTMITQRVSLSIAIIAMVNSTQ HQD (M1-D53)—mNPT3

制限酵素サイトを付加したプライマー

〔hNPT homologue〕

Sence primer 5’- ggatccccaggaattcccatgtctaccggaccagatgt-3’

EcoRⅠ site

Antisence primer 5’- gatgcggccgctcgagtcatttcctggagcattcctcttg-3’

XhoⅠ site

〔mNPT homologue〕

Sence primer 5’-ggatccccaggaattcccatgtctactggagcagacct-3’

EcoRⅠ site

Antisence primer 5’-gatgcggccgctcgagtcagcagaagcctttcttgaagg-3’

XhoⅠ site

〔mNPT3〕

(16)

EcoRⅠ site

Antisence primer 5’- gatgcggccgctcgagtctactgggtctctgtgctcc-3’

XhoⅠ site

PCR産物及び pGEX4T-2を H×Buffer 中で、制限酵素EcoRⅠ(Takara)と XhoⅠ(Takara)で制限酵素処理した後、Takara Ligation Kit Ver.2.1(Takara) でライゲーションし、pGEX4T-2-hNPT homologueを得た。

2)大腸菌C43への形質転換

1 ng pGEX4T-2-hNPT homologueに大腸菌C43 50 µlを加え、30分氷上に 放置した後、42℃ 45秒加温した。その後、SOC培地 300 µLを加え、37℃ 1 時間インキュベーションした後、50 µg/mL アンピシリン添加 LB 寒天培地で 37℃、16時間培養し、形質転換したC43大腸菌を得た。

3)抗原ペプチドの発現と精製

形質転換した大腸菌C43を50 µg/mL アンピシリン添加LB培地1L中で、

37℃で OD600が 0.6〜0.8 になるまで培養し、終濃度が 1 mM になるように、

IPTGを加え、さらに37℃ 3時間培養し、ペプチドを発現させた。4℃、4,000

×g、15分間遠心して集菌し、沈殿をSonication Buffer[50 mM Tris-HCl pH 8.0、50 mM NaCl、1mM EDTA、10 µg/mL pepstatin A、10 µg/mL leupeptin] 20 mLに懸濁し、ソニケーション(TOMY ultrasonic disruptorにてOutput 4、 30秒×8回)により破菌した。終濃度が1%になるようにTriton X-100を加え、

可溶化した。4℃、40,000×g、30分間遠心し、その上清をGlutathione Sepharose 4Bレジン(Amersham Bioscience)1 mLの入ったカラムに移し、4℃で一晩撹 拌させながら吸着させた。その後、PBST[140 mM NaCl、2.7mM KCl、0.5% Triton X-100]50 mLで3回洗い、20 mMグルタチオンを5 mL加えて溶出し た。

4)ウサギ抗血清の作製

抗原ペプチド1mgとFreund’s complete adjuvnt(GIBCO)を23 G注射針を 付けたシリンジで混ぜて乳化させ、2〜2.5 kg日本白ウサギ(メス)に皮下投与 した。2 週間後にも同様に皮下投与した。2 週間後耳の静脈から採血し、37℃、

(17)

1時間保温した後、4℃で一晩静置した。その後、4℃、7,500×g、10分間遠心 して上清を回収し、抗血清を得た。

ウェスタンブロット法

調製したサンプルに SDS sample buffer[1% SDS、10% 2-mercaptoethanol、 50% glycerol、0.3% EDTA、6% Tris-HCl、1.0 mg/ml BPB]を加え、10%

SDS-PAGEで電気泳動した。泳動後のタンパク質をニトロセルロースメンブレ

ンフィルター(pore size 0.45 µm、ADVANTEC)に0.3 A、2時間で転写した。

その後、メンブレンをBlocking Buffer[25 mM Tris-HCl pH 7.4、1mM EDTA、 140 mM NaCl、0.5% BSA]中で3時間振とうした。次にBlocking Bufferに 1000倍希釈したウサギ抗血清と2時間反応させた。反応後、Wash Buffer[25 mM Tris-HCl pH7.4、1 mM EDTA、140 mM NaCl、0.1% Tween 20]を用い て、15分×2回洗浄し、Wash Bufferで2,000倍希釈したペルオキシダーゼ標 識抗ウサギIgG抗体(コスモ・バイオ)と30分反応させた。反応後、Wash Buffer で随時液を交換しながら、2〜3時間洗浄した。最後に、ECL kit(Amersham Bioscience)を用い抗体のシグナルを検出した。

CBB 染色法

SDS sample bufferを添加したサンプルを、10% SDS-PAGEで電気泳動し た。泳動後のゲルをCBB染色液[5% 酢酸、50% メタノール、0.25% CBB] で30分間振とうし、固定液[10% 酢酸、20% メタノール]で30分間振とう した。その後、脱色液[7% 酢酸、5% メタノール]で随時液を交換しながら 脱色した。

免疫組織化学 1)マウス灌流固定

7週齢のC57BL/6マウスをジエチルエーテルで麻酔し、腹部・胸部を切開し

て肝臓・心臓を露出した。左心室に21 G翼付針を挿入して右心房に切り込みを 入れてから、HBSS[10×HBSS(GIBCO)を希釈し、1.26 mM CaCl2, 0.49 mM MgCl2, 0.83 mM MgSO4, 0.35 g/mL NaHCO3, フェノールレッドを添加して1

×溶液を作製]を灌流し、肝臓が灰褐色になるまで脱血した。脱血後、固定液

[4% パラホルムアルデヒド(ナカライテスク), 0.2% ピクリン酸(和光純薬)

(18)

を含む0.1 M ナトリウムリン酸緩衝液 (pH 7.4)]を10分間灌流して固定した。

マウスから組織を採取し、固定液に30分間漬けて追加固定した後、PBS で10 分間×3回洗浄した。10%, 15%, 20%ショ糖を含むPBSに4時間×2回ずつ浸 漬して脱水した後、O.T.C.compound(SAKURA)に包埋して液体窒素で凍結 し、Cryostat 2800 Frigocut-E(Leica)により厚さ6 µmの凍結切片を作製し た。切片はシランコートスライドガラス(DAKO)に採り、30分間風乾してか ら染色に使用した。

2)HRP法によるヒト組織切片の免疫染色

ヒトの組織パラフィン切片は Biochain より購入した(小腸:健常男性、30 歳、B409041、肝臓:健常男性、71 歳、B312027、膵臓:健常男性、62 歳、

A612124、腎臓:健常女性、49歳、B401314)。切片をxylenに10分×3回入 れた後、100% EtOH、90% EtOH、80% EtOH、70% EtOHに通し、脱パラフ ィン処理を行った。続いて0.3% H2O2-MeOHで室温、30分間処理して内因性 のペルオキシダーゼを除いた後、PBST[8.1 mM Na2HPO4, 1.5 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 0.05% Tween 20]で5分間洗浄した。その後、1.5%

ヤギ血清(GIBCO)を含むPBS で室温、30分間ブロッキングした。一次抗体 は0.1% BSAを含むPBSTで希釈した。一次抗体 100 µlを室温で1時間反応さ せた後、PBSTで5分間×4回洗浄して一次抗体を除いた。二次抗体は1.5%ヤ ギ血清を含むPBSで希釈した。その後、二次抗体 100 µlを室温で 1時間反応 させ、PBSTで5分間×4 回洗浄して二次抗体を除いた。VECTASTAIN ABC reagent(Vector)を切片に滴下し、30分間反応させ、PBSTで5分間×4回洗 浄した。DAB溶液[0.2% DAB, 0.005% H2O2, 50 mM Tris-HCl pH 7.6]を1

〜2分間反応させ、蒸留水を大量にかけることで反応を止めた。ヘマトキシリン を滴下し、5 分間反応させて核を染色し、蒸留水で洗浄した。Perma Flour Aqueous Mountant(IMMUNON)で切片を封入した後、蛍光顕微鏡OLYMPUS BX60(OLYMPUS)で観察した。

3)間接蛍光抗体法による組織切片の免疫染色

切片を0.1% TritonX-100を含むPBS[8.1 mM Na2HPO4, 1.5 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl]で室温、30分間処理して脂質膜を可溶化した。

続いて2%ヤギ血清 (GIBCO), 0.5% BSA(SIGMA)を含むPBSで室温、30

(19)

分間ブロッキングした。抗体は 0.5% BSA を含む PBS で希釈した。一次抗体 100 µlを室温で1時間反応させた後、PBSで5分間×4回洗浄して一次抗体を 除いた。その後、二次抗体100 µlを室温で1時間反応させ、PBSで5分間×7 回洗浄して二次抗体を除いた。Perma Flour Aqueous Mountant(IMMUNON) で切片を封入した後、共焦点レーザー顕微鏡 OLYMPUS FV300(OLYMPUS) で観察した。

4)HRP法によるマウス脳切片の免疫染色(浮遊)

灌流固定したマウスより全脳を取り出し、ショ糖により脱水した後、-20℃に て凍結させ、Cryostat 2800 Frigocut-E(Leica)により厚さ30 µmの凍結切片 を作製した。切片は、25% グリセロール、25% エチレングリコールを含むPBS に入れ、使用まで-20℃にて保存した。カルチャーインサートの中に切片を入れ、

PBSで10分間×3回洗浄した。0.3% H2O2を含むPBSTに30分間入れて内因 性ペルオキシダーゼを除き、PBS で 10 分間×3 回洗浄した。3% ヤギ血清

(GIBCO)を含むPBSTで2.5時間ブロッキングした。PBSTで希釈した一次 抗体を4℃で16時間反応させた後、PBS で10 分間×6回洗浄して一次抗体を 除いた。その後、二次抗体を室温で1時間反応させ、PBSで10分間×6回洗浄 して二次抗体を除いた。VECTASTAIN ABC kit(Vector)で室温、2.5時間反 応させた後、PBSで10分間×3回洗浄し、Immpact DAB(Vector)にてDAB 反応を10分間行った。その後、PBS で10 分間×6回洗浄してDAB を洗浄し た。MASコートスライド(DAKO)に切片を並べ、16時間乾燥させた。30%、 50%、70%、95%、100%のEtOHに各3分間、100% EtOHに10分間入れて 脱水し、Xylenに30分間入れた。Mount Quick(DAKO)で切片を封入した後、

蛍光顕微鏡Olympus BX60(OLYMPUS)で観察した。

・使用した抗体

<1次抗体>

hNPT homologueウサギ抗血清 200倍希釈 mNPT homologueウサギ抗血清 200倍希釈 mNPT3ウサギ抗血清 200倍希釈(脳HRP法では50,000倍希釈)

抗GFAPマウスモノクローナル抗体(Thermo Fisher Scientific) 0.2 µg/ml 抗CD31ラットモノクローナル抗体(Abcam) 10 µg/ml

(20)

抗P-glycoprotein マウスモノクローナル抗体(Gene Tex) 7.2 µg/ml

<2次抗体>

Alexa Fluor 488標識抗ウサギIgG抗体(Molecular Probes) 2 µg/ml Alexa Fluor 568標識抗マウスIgG抗体(Molecular Probes) 1 µg/ml Biotinylated anti-rabbit IgG抗体(フナコシ) 500倍希釈 Cy3標識抗ラットIgG抗体(Amersham) 0.5 µg/ml

マウス小腸膜画分の調製

7週齢のC57BL/6マウスをジエチルエーテルで麻酔し、小腸を単離した。SME bufferで洗浄した後、小腸全体をはさみで細かくし、SME buffer中でホモジナ イズして破壊した。その後、12,000×g、10分、4℃にて遠心し、破壊されてい ない組織をおとし、上清を回収した。上清をさらに150,000×g、1時間、4℃に て超遠心した。ペレットにSME bufferを加えて懸濁し、小腸全体の膜画分とし た。また、小腸管腔側をメスでそぎとり、同じく SME buffer にて洗浄し、同

buffer 中でホモジナイズして破壊した。その後上記の手順と同様に遠心し、小

腸管腔側表面の膜画分とした。

マウス肝臓ミクロソーム画分の調製

7週齢のC57BL/6マウスをジエチルエーテルで麻酔し、肝臓を単離した。SME buffer[300 mM Sucrose、10 mM MOPS-Tris pH 7.0、5 mM EDTA、10 µg/ml pepstatin A、10 µg/ml leupeptin]で洗浄した後、SME buffer中でホモジナイ ズして破壊した。1,000×g、7 分、4℃にて遠心し、上清をさらに 5,900×g、7 分、4℃にて遠心した。上清を17,000×g、18分、4℃にて遠心した後、さらに 上清を 150,000×g、1 時間、4℃にて超遠心した。得られたペレットに SME

bufferを加えて懸濁し、肝臓ミクロソーム画分とした。

マウス腎臓尿細管刷子縁膜画分の調製

7週齢のC57BL/6マウスをジエチルエーテルで麻酔し、腎臓を単離した。腎

臓 1 g あたり 30 ml のホモジナイズ溶液[30 mM マンニトール、10 mM Hepes/Tris pH 7.4、10 mM CaCl2、10 µg/ml pepstatin A、10 µg/ml leupeptin] を加え、ホモジナイズで破壊した。その後、15分氷上に静置し、1,100×g、15

(21)

分、4℃にて遠心し、上清を回収した。上清をさらに150,000×g、1時間、4℃ にて超遠心した。ペレットにSME bufferを加えて懸濁し、腎臓尿細管刷子縁膜 画分とした。

マウス脳、胎盤、心臓、肺、甲状腺膜画分の調製

7週齢のC57BL/6マウスをジエチルエーテルで麻酔し、各臓器を単離した。

SME bufferで洗浄した後、SME buffer中でホモジナイズして破壊した。1,000

×g、10分、4℃にて遠心し、上清を回収した。その後、さらに150,000×g、1 時間、4℃にて超遠心した。ペレットにSME bufferを加えて懸濁し、各臓器の 膜画分とした。

熱処理とグリコシレーション

腎臓尿細管刷子縁膜画分40 µgを0.5% SDSと40 mM DTTを含む溶液30 µl に入れ、75℃、15 min熱処理した。その後、室温に戻し、1% NP-40、N-glycosidase F(3,000 U、New England Biolaboratories)あるいは、O-glycosidase(480,000 U、New England Biolaboratories)とNeuraminidase(300 U、New England Biolaboratories)を加え、37℃で 1 時間インキュベートした。その後、サンプ ルをSDS sample bufferに溶かし、SDS-PAGE後、ウェスタンブロットを行っ た。

海馬アストロサイト初代培養法

妊娠C57BL/6マウス(E16-17、清水実験材料)より子宮ごと胎児を取り出し、

氷冷したHBSS溶液 [10×HBSS(GIBCO)を希釈し、1.26 mM CaCl2, 0.49 mM MgCl2, 0.83 mM MgSO4, 0.35 g/mL NaHCO3] に浸して海馬を採取した。

採取した海馬を2.5 %トリプシン(Invitrogen)と0.01% DNase I(ロシュ・ダ イアグノスティックス)を加えた HBSS溶液にて 37℃、15 分間振とうした。

10% FBS(Funakoshi)を含む D-MEM 培地 [Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Invitrogen)に55 mg/ml sodium pyruvate(SIGMA-A)、3.7 mg/ml NaHCO3、0.1 mg/ml streptomycin(SIGMA-A)、100 U/ml penicillin G

(SIGMA-A)、0.25 mg/ml fungizon(Invitrogen)を添加]に0.01% DNase I を加えた培地で3 回洗浄した。10% FBS を含むD-MEM 培地を加え、37℃、

5% CO2 存在下で培養した。途中で一度継代し、アストロサイトを得た。

(22)

トランスポーターの精製

hNPT homologue(accession no. NM005495)、mNPT3(accession no.

NM_144836)のcDNAをそれぞれ大腸菌発現用ベクターに組換え、タンパクを

発現させ、精製した。いずれも同様の手順で行った。以下、hNPT homologue の場合を中心に述べる。

1)大腸菌精製系のためのhNPT homologueプラスミド作製

1 ng hNPT homolog cDNA、Ex Taq Buffer(Takara)、0.3125 mM dNTP mix、 0.3125 µM primer、1U Ex Taq(Takara)を加えて、total volume 16 µlにし、

94℃ 2分後、94℃ 45秒、53℃ 4分、72℃ 2.5分を10サイクル後、94℃ 45 秒、53℃ 45秒、72℃ 3分を35サイクル繰り返し、72℃ 3分保温した後4℃ で保存した。得られた1st PCR産物を鋳型として、Sence primerとAntisence primerを用いて2nd PCRをした。PCR反応は1st PCR産物を各2 µl、Ex Taq Buffer(Takara)、0.3125 mM dNTP mix、0.3125 µM primer、1U Ex Taq

(Takara)を加えて、total volume 16 µlにし、94℃ 2分後、94℃ 45秒、50℃ 45秒、72℃ 2分を35サイクル繰り返し、72℃ 3分保温した後4℃で保存した。

〔hNPT homologue〕

Sence primer 5’- cgggggatccgaattcatgtctaccggaccag-3’

Antisence primer 5’- ccttgttcatctcgaggaggtgggtgaatgtc-3’

〔mNPT3〕

Sence primer 5’-cgggggatccgaattcatggatgagaagcctaccac-3’

Antisence primer 5’-ccttgttcatctcgaggaggcgggtgagagtccttt -3’

増幅したPCR産物とβ-pET28a(+)-β(Novagen)をH×Buffer中で、EcoR

Ⅰ(Takara)、XhoⅠ(Takara)により制限酵素処理した後、Takara Ligation Kit Ver.2.1(Takara) で ラ イ ゲ ー シ ョ ン し 、 β-pET28a(+)-β に hNPT homologueを組み込んだ。hNPT homologueのN末端とC末端の両端に、機 能未知のバクテリアのαヘリックスタンパク質であるYbeL(β)タグを付加す ることで、大腸菌における哺乳類の膜タンパク質を発現しやすくした(26)。 2)大腸菌C43株への形質転換

(23)

1 ng hNPT homologueプラスミドに大腸菌C43 50 µlを加え、30分氷上に放 置した後、42℃ 45秒加温した。その後、SOC培地 300 µLを加え、37℃ 1時 間インキュベーションした後、30 µg/mL カナマイシン添加LB寒天培地で37℃、

16時間培養し、形質転換したC43大腸菌を得た。

3)タンパク質発現の誘導

形質転換したC43大腸菌を30 µg/mL カナマイシン添加TB培地1L中で、

37℃で OD600が 0.6〜0.8 になるまで培養し、終濃度が 1 mM になるように、

IPTGを加え、さらに18℃、16時間培養した。

4)大腸菌の回収と膜画分の可溶化

培養液を 2,800×g、15 分間遠心して上清を取り除いた。これを Sonication Buffer[20 mM MOPS-Tris pH 7.0、300 mM スクロース、2 mM PMSF]20 mL 中に懸濁し、超音波処理(SONIX社のVCX500にて、出力25%、30秒×8回)

後、5,900×g、10 分間遠心して上清を回収し、150,000×g、1 時間、4℃で超 遠心して、得られた沈殿を膜画分とした。この分画をタンパク濃度 10 mg/mL になるように、Solubilization Buffer[20 mM Tris-HCl pH8.0、100 mM NaCl、 10 mM KCl、15% グリセロール]で懸濁し、終濃度が 1.5%になるように、

Fos-choline-14(Affymetrix)を加えて、20分間氷上で放置後、150,000×g、1 時間、4℃で超遠心して、その上清を可溶性画分とした。

5)アフィニティーカラムを用いたhNPT homologueの精製

Ni-NTA super flowレジン(QIAGEN)2 mLをエコノカラムに充填し、蒸留 水で洗浄した後、Buffer A[20 mM Tris-HCl pH8.0、100 mM NaCl、10 mM KCl、 15% グリセロール、0.05% Fos-choline-14]で平衡化した。ここにBuffer Aで 2倍希釈した上記の可溶性画分を入れ、4℃、3時間撹拌しながら、吸着させた。

これをWash Buffer 1[20 mM Tris-HCl pH8.0、100 mM NaCl、10 mM KCl、 20% グリセロール、 20 mM イミダゾール、0.02% Fos-choline-14)20 mL、 Wash Buffer 2[20 mM Tris-HCl pH8.0、100 mM NaCl、10 mM KCl、20% グ リセロール、5 mM イミダゾール、1% OG(Dojindo)〈mNPT3では0.1% DTM

(Affymetrix)〉]20 mLの順で洗浄し、Elution Buffer [20 mM Tris-HCl pH8.0、 100 mM NaCl、10 mM KCl、20% グリセロール、300 mM イミダゾール、1%

(24)

OG 〈mNPT3では0.1% DTM〉]を用いて、精製hNPT homologueを溶出し た。溶出した精製hNPT homologueは分注し、-80℃で保存した。

FoF1-ATPase の精製(35)

1)FoF1-ATPaseの発現及び菌体の回収

FoF1-ATPaseをコードするunc オペロンを欠損した大腸菌DK8株を用いた。

DK8 株に unc オペロンを持つプラスミド pBWU13 を形質転換することで FoF1-ATPase を高発現させた。10% グリセロール、50 µg/mL アスパラギン、

50 µg/mL チミン、50 µg/mL イソロイシン、50 µg/mL バリン、2 µg/mL チア ミンを添加したTanaka培地[64 mM リン酸水素カリウム、34 mM リン酸二 水素ナトリウム、20 mM 硫酸アンモニウム、0.3 mM 硫酸マグネシウム、10 µM 塩化カリウム、1 µM 硫酸鉄、10 µM 塩化亜鉛)で、菌体を37℃で培養した。

OD600が 1.0 になるまで培養したら、100,000×g、15 分間遠心して菌体を集め た。これを50 mM Tris-塩化水素 pH8.0、1 mM 塩化マグネシウム、1 mM DTT、 10%グリセロール、1 mM PMSF、0.2 mM EDTA-水酸化ナトリウム pH7.0、1 µg/mL pepstatin A、1 µg/mL leupeptinにて懸濁し、同様の遠心操作で沈殿さ せた。

2)DK8内膜の調製

上記で沈殿させた菌体を50 mM Tris-HCl pH8.0、 1 mM 塩化マグネシウム、

1 mM DTT、10%グリセロール、1 mM PMSF、0.2 mM EDTA pH 7.0、1 µg/mL pepstatin A、1 µg/mL leupeptinで懸濁後、French Pressを2回行い、菌体を 破壊した。これを15,000×gで遠心し、上清を取り、100,000×gで膜画分を沈 殿させ、50 mM Tris-HCl pH8.0、1 mM 塩化マグネシウム、1 mM DTT、10% グリセロール、1 mM PMSF、0.2 mM EDTA pH 7.0、1 µg/mL pepstatin A、1 µg/mL leupeptinで懸濁した。

3)FoF1-ATPaseの精製

上記のDK8内膜に20 mM MOPS-Tris pH 7.0、0.8% OGを加え、100,000

×gで30分間遠心し、ペレットを20 mM MOPS-Tris pH 7.0、2% OGで懸濁 し、100,000×gで1時間遠心し、上清を回収した。20 mM MOPS-Tris pH 7.0、 2 mM 塩化マグネシウム、1 mM DTT、1 mM PMSFの入った10〜30%グリセ

(25)

ロール密度勾配のある遠心チューブを作り、この上に先ほどの上清をのせた。

このチューブをスイングローターにて100,000×gで5時間遠心した。遠心後の チューブを取り出し、そこから注射針で穴をあけ目的の画分を採取し、300 µL ごとに分注し、使用するまで-80℃に保存した。

リポソームの調製

大豆ホスファチジルコリン(Sigma type Ⅱ S)を10 mg/mLになるように 緩衝液[20 mM MOPS-NaOH pH 7.0、0.5 mM DTT]に懸濁し、バスタイプ 超音波装置で透明になるまで超音波調製した。調製したリポソームは分注し、

-80℃で保存した。

リポソームへの再構成

1) hNPT homologueとFoF1-ATPaseのリポソームへの再構成(アニオン性 基質輸送活性測定用)

精製hNPT homolog 30 µgとF0F1-ATPase 90 µgをリポソーム500 µgに混 合し、-80℃で 15 分間静置し、凍結した。ただちにこれを取り出し、迅速に解 凍し、Dilution Buffer[20 mM MOPS-Tris pH 7.0、100 mM 酢酸カリウム、

5 mM 酢酸マグネシウム、0.5 mM DTT]にて20倍に希釈し、540,000×g、4℃ で30分間遠心した。沈殿にDilution Buffer 400 µLを添加しホモジナイザーを 用いて懸濁して再構成プロテオリポソームを得た。

2) hNPT homologue(あるいはmNPT3)のリポソームへの再構成(アニオ ン性基質輸送活性測定用)

精製hNPT homologue (あるいはmNPT3)30 µgをリポソーム500 µgに混 合し、-80℃で 15 分間静置し、凍結した。ただちにこれを取り出し、迅速に解 凍し、Dilution buffer[20 mM MOPS-Tris pH 7.0、150 mM 酢酸ナトリウム、

5 mM 酢酸マグネシウム、0.5 mM DTT]にて20倍に希釈し、540,000×g、4℃ で30分間遠心した。沈澱にDilution buffer 200 µLを添加し、ホモジナイザー を用いて懸濁して再構成プロテオリポソームを得た。

3) hNPT homologue(あるいはmNPT3)のリポソームへの再構成(リン酸 輸送活性測定用)

(26)

精製 hNPT homologue(あるいはmNPT3)30 µgをリポソーム500 µgに混 合し、-80℃で 15 分間静置し、凍結した。ただちにこれを取り出し、迅速に解 凍し、Dilution buffer[20 mM MOPS-Tris pH 7.0、150 mM 酢酸カリウム、5 mM 酢酸マグネシウム、0.5 mM DTT]にて20倍に希釈し、540,000×g、4℃ で30分間遠心した。沈澱にDilution buffer 200 µLを添加し、ホモジナイザー を用いて懸濁して再構成プロテオリポソームを得た。

輸送活性測定

1) hNPT homologueとFoF1-ATPaseの再構成プロテオリポソームにおける アニオン性基質輸送活性測定

反応液[20 mM MOPS-Tris pH 7.0、100 mM 酢酸カリウム、5 mM 酢酸マ グネシウム、4 mM 塩化カリウム]に、1/20倍量(1.5 µg total protein/assay) の再構成プロテオリポソームを加えて、27℃、3分間インキュベーションした。

その後、終濃度2 mMになるようにATPを加えて、27℃、2分間でインキュベ ーションした後、終濃度100 µMとなるように[3H] -PAH(0.6 MBq/µmol)を 加え、反応開始とした。130 µLずつサンプル液を取り、Sephadex G-50 fine ス ピンカラムにアプライし、760×g、2分間、4℃で遠心した。その溶出液をクリ アゾル(nacalai tesque)3 mLに混ぜ、中に含まれる放射能(リポソーム内に 取 り 込 ま れ た PAH に 相 当 す る ) を 液 体 シ ン チ レ ー シ ョ ン カ ウ ン タ ー

(PerkinElmer)により計測した。

2) hNPT homologue(あるいはmNPT3)の再構成プロテオリポソームにお けるアニオン性基質輸送活性測定

反応液[20 mM MOPS-Tris pH 7.0、150 mM酢酸カリウム, 5 mM 酢酸マグ ネシウム、4 mM 塩化カリウム(mNPT3では10 mM)]を27℃でインキュベ ーションし、終濃度100 µMとなるように[3H] -PAH(0.6 MBq/µmol)、[14C]- 尿酸(0.05 MBq/µmol)あるいは[14C] -サリチル酸(0.05 MBq/µmol)を加え た。ここに終濃度2 µMとなるようにバリノマイシンを加え、1/20倍量(1.5 µg total protein/assay)の再構成プロテオリポソームを加えて反応開始とした。130 µLずつサンプル液を取り、Sephadex G-50 fineスピンカラムにアプライし、760

× g、2分間、4℃で遠心した。その溶出液をクリアゾル3 mLに混ぜ、中に含 まれる放射能(リポソーム内に取り込まれたPAH、尿酸あるいはサリチル酸に

(27)

相当する)を液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer)により計測し た。

3) hNPT homologue(あるいはmNPT3)の再構成プロテオリポソームにお けるリン酸輸送活性測定

ナトリウム存在下での反応は、反応液[20 mM MOPS-Tris pH7.0、100 mM 酢酸ナトリウム、5 mM 酢酸マグネシウム、4 mM 塩化カリウム]を27℃でイ ンキュベーションし、終濃度100 µMとなるように[32P]-リン酸水素二ナトリウ

ム(3.7 MBq/µmol)を加えた。一方、ナトリウム非存在下での反応は、反応液

[20 mM MOPS-Tris pH7.0、100 mM酢酸カリウム、5 mM 酢酸マグネシウ ム、4 mM 塩化カリウム]を27℃でインキュベーションし、終濃度100 µMと なるように[32P]-リン酸水素二カリウム(3.7 MBq/µmol)を加えた。2分後1/20 倍量(1.5 µg total protein/assay)の再構成プロテオリポソームを加えて反応開 始とした。130 µLずつサンプル液を取り、Sephadex G-50 fineスピンカラムに アプライし、760 × g、2分間、4℃で遠心した。その溶出液をクリアゾル3 mL に混ぜ、中に含まれる放射能(リポソーム内に取り込まれたリン酸に相当する)

を液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer)により計測した。

タンパク質定量(Scaffner & Weissmann 法)(40)

サンプルをtotal volume 300 µLになるように蒸留水に加えた。ここにSDS Buffer[1 M Tris-HCl pH 8.0、1%SDS]30 µL加え、懸濁後、50% TCA 100 µL加えて懸濁し、20分間室温放置した。ニトロセルロースメンブレンフィルタ ー(pore size 0.45 µm、ADVANTEC)に吸引濾過し、5% TCAで洗浄した。

メンブレンをStaining solution[0.25% Amido scwartz 10B、メタノール:酢 酸:水=9 : 2 : 9]で5分間染色した。Destaining solution[メタノール:水:

酢酸=90 : 8 : 2]でバックグラウンドが白くなるまで脱色し、Elution solution

[50%(v/v)エタノール、25 mM NaOH、50 µM EDTA]3 mLで溶出した。数 回ボルテックスし、完全に溶出したら、O.D.630吸光度測定した。

データ解析

測定値は、平均±標準誤差で示した。有意差は、二群間の比較ではStudent’s t test、多重検定はone-way ANOVAにより検定した。後者のpostテストとし

(28)

てDunnett’s testを用いた。統計解析ソフトは、GraphPad Prism 6(MDF) を用いた。*P < 0.05、**P < 0.01、***P < 0.001で示した。

(29)

第三章

結果( NPT homologue )

(30)

NPT homologue の局在解析

遺伝子レベルにおけるhNPT homologueの発現

まず、hNPT homologueの遺伝子レベルの発現をリアルタイムPCRによって 解析した。シグナルはシングルバンドかつ、単一の融解温度であったことから、

hNPT homologue 遺伝子のみを検出していることを確認した(図 5B、C)。過 去の報告と同様に、hNPT homologue遺伝子は膵臓、肝臓、大腸、小腸に発現 が多く、腎臓には少なかった(図5A)(41)。一方、副腎、脳、胎盤、心臓、精 巣、骨格筋、肺には発現していないか、検出限界以下であった(図5A、B)。

(31)

ヒトにおけるNPT homologueの発現

hNPT homologueの発現と局在を明らかにするために、hNPT homologueの N末端30 アミノ酸残基を精製し、家兎に注射し、hNPT homologue 抗血清を 得た。抗血清の特異性を検証するために、hNPT homologueを大腸菌に大量発 現させ、可溶化し、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製し た。精製度は、SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動と CBB 染色により確認 した。精製したhNPT homologueは、N末端と C末端に120アミノ酸残基の YbeLを結合したhNPT homologueの分子量として予想される72 kDa付近に バンドを示した(図6A左)。SLC17ファミリーの他のメンバーも同様に精製し、

hNPT homologue抗血清の特異性を検証した。その結果、この抗血清はhNPT homologueを認識するが、NPT1、NPT3、NPT4、VEAT、VNUTは認識しな かった(図6A 右)。VGLUT に対しては、わずかに認識したが、そのシグナル 強度はNPT homologueと比較して10%以下だった。NPT3、NPT4、VEATの

画分に約68 kDaのシグナルが検出されたが、このシグナルはこれらのトランス

ポーターを発現させた大腸菌膜由来であると考えられる。これらのことから、

作成したhNPT homologue抗血清は、hNPT homologueを特異的に認識すると 判断した。

次に、免疫組織化学法により、hNPT homologueの局在を調べた。HRP法及 び間接蛍光抗体法により、hNPT homologue抗血清は小腸絨毛上皮細胞にシグ ナルを検出した(図6B)。一方、肝臓、膵臓においてはmRNAレベルで多くの 発現が見られたが、免疫染色ではこれらの臓器や腎臓にはhNPT homologueの シグナルは検出されなかった(図 6C)。これは、これらの臓器に hNPT

homologue は発現していないか、本実験系では検出限界以下であったと考えら

れる。

(32)
(33)

マウス小腸におけるNPT homologueの発現

また、NPT homologue の発現をマウス小腸において検証した。mNPT

homologue 抗血清を用いて、小腸のウェスタンブロットを行った。その結果、

小腸全体の膜画分ではバンドを検出しなかったのに対して、小腸管腔側表面の 膜画分ではおよそ70、54、50 kDaにバンドを検出した(図7A)。また、間接 蛍光抗体法によりマウス小腸における NPT homologue の局在を解析したとこ ろ、ヒトにおけるNPT homologueの結果と同様に、小腸絨毛上皮細胞の刷子縁 膜に発現していた(図7B)。ヒト及びマウスの結果から、NPT homologueは小 腸絨毛の刷子縁膜に発現していると結論した。

(34)

hNPT homologueの機能解析

hNPT homologueのPAH輸送活性

hNPT homologueの輸送特性を調べるために、精製したhNPT homologueを アゾレクチンリポソームに F-ATPase と共に、凍結融解希釈法によって再構成 した。この輸送活性測定法は、再構成リポソームに ATP を添加し、F-ATPase を駆動させてH+を膜の内側に取り込ませることで、電気化学的勾配を形成させ、

形成された電気化学的ポテンシャル差を駆動力とした基質の輸送をみる。実際、

ATPを添加すると、hNPT homologueは放射性標識したPAHを輸送した(図 8A)。ATP を添加しないときには、PAH 輸送は受動輸送レベルまで低下し、

hNPT homologueを再構成していないリポソームはバックグラウンドレベルの

輸送しか見られなかった(図 8A)。また、カリウムイオノフォアであるバリノ マイシンを添加し、リポソーム内のK+を流出させpH勾配を保持したまま膜電 位を消失させると、PAH 輸送活性は低下した(図 8B)。一方、K+/H+交換輸送 体であるナイジェリシンを添加し、膜電位を保持したままpH勾配を消失させて も、PAH輸送活性に影響はなかった(図8B)。さらに、精製したhNPT homologue のみをリポソームに再構成し、バリノマイシンによって膜電位を作り出す測定 法によって、膜電位が PAH 輸送の直接的な駆動力であることを確かめた。K+ を含む反応液にバリノマイシンを添加すると、リポソーム内外でK+の濃度勾配 が形成され(内側が正の約−90 mV の膜電位)、PAH 輸送活性が見られた(図 8C)(17)。しかし、バリノマイシンを添加していない時には、PAH輸送活性は バックグラウンドレベルにまで低下した(図 8C)。また、ナイジェリシンを添 加し、膜電位ではなく、外側が酸性のpH勾配が形成されてもPAH輸送活性は みられなかった(図8C)。これらの結果から、PAH輸送はpH勾配ではなく膜 電位を駆動力としているといえる。

PAH濃度依存的な輸送活性を測定し、ミカエリス-メンテン式に当てはめて計 算した結果、Km = 0.7 mM、Vmax = 74.6 nmol/mg/minであった(図8D)。ま た、hNPT homologueは、塩素イオン非存在下では PAH 輸送活性はみられな かったが、塩素イオン存在下ではPAH輸送活性がみられた(図 8E)。つまり、

NPT homologueもまたSLC17ファミリーに特徴的な性質である塩素イオン依 存性をもつといえる(17, 18, 34, 39)。さらに、PAH輸送はSLC17ファミリー の共通の阻害剤であるDIDSとEvans blueによって阻害された(図8F)。

(35)
(36)

hNPT homologueのリン酸輸送活性

SLC17ファミリーは共通して、ナトリウム勾配によりリン酸を輸送する(17,

19, 34, 37)。そこで、hNPT homologueもまたナトリウム依存的なリン酸輸送 活性を保存しているか解析した。その結果、予想通りhNPT homologueはナト リウム依存的にリン酸を輸送した(図9)。ナトリウム勾配が存在しない時には、

リン酸輸送活性はバックグラウウドレベルまで低下した(図 9)。また、このナ トリウム依存性リン酸輸送は、DIDSとEvans blueによって阻害されず、膜電 位および塩素イオン依存性はない(データは示していない)。これらの輸送特性 は、NPT1及びVGLUT2によるリン酸輸送特性と一致する(17, 19)。

(37)

hNPT homologueの基質特異性

次に、hNPT homologueの基質特異性を調べるために、有機アニオン性物質 によるPAH 輸送の競合阻害実験を行った。表1で示すように、PAH 輸送は尿 酸、高脂血症治療薬であるプラバスタチンを過剰量添加した際に阻害された。

つまり、hNPT homologueはこれらの物質を輸送基質として認識することが強

く示唆された。しかしながら、hNPT homologueは疎水性NSAIDsであるジク ロフェナクやメフェナム酸、有機カチオントランスポーターの一般的な輸送基 質であるTEAは認識しなかった(14)。一方、親水性NSAIDsであるアスピリ ン、サリチル酸、イブプロフェンは、疎水性NSAIDsやTEAよりもPAH輸送 を阻害する傾向を示し、hNPT homologueの輸送基質である可能性が高い。

(38)

hNPT homologueの尿酸輸送活性

表1から、hNPT homologueは尿酸を認識することが示唆された。そこで、

hNPT homologueが実際に尿酸を輸送するかどうか検証した。その結果、hNPT homologueは、膜電位依存的に尿酸を輸送した(図10A)。膜電位が形成されて いない場合、尿酸輸送活性は低下した。hNPT homologueを再構成していない リポソームのみの場合、バックグラウンドレベルの輸送しか見られなかった。

尿酸濃度依存的な輸送活性を測定し、ミカエリス-メンテン式に当てはめて計算 した結果、Km = 0.3 mM、Vmax = 19.1 nmol/mg/minであった(図10B)。膜 電位依存的な尿酸輸送活性は、塩素イオンを必要とし、DIDSによって阻害され た(図10CとD)。以上のことから、これらの輸送特性はPAH輸送特性と類似 しており、hNPT homologueは尿酸トランスポーターであると結論した。

(39)

第四章

結果( NPT3 )

(40)

NPT3 の局在解析

遺伝子レベルにおけるmNPT3の発現

各臓器におけるmNPT3の遺伝子レベルの発現を調べるためにRT-PCRを行 った。その結果、mNPT3は遺伝子レベルにおいて、肝臓、腎臓、小腸、膵臓、

脳、胎盤、心臓、骨格筋、肺、甲状腺に発現が見られた(図11)。この結果は、

ノザンブロット法による以前の報告と一致した(38)。ネガティブコントロール としてRT反応を行わないtotal RNAをテンプレートとしてPCR反応を行った が、バンドは検出されなかった(図11)。

(41)

mNPT3抗血清の特異性と各臓器におけるmNPT3の発現

タンパク質レベルにおけるmNPT3の発現を調べるために、mNPT3のN末 端53アミノ酸残基を精製し、家兎に注射し、mNPT3抗血清を得た。まず、得 られた抗血清の特異性をSLC17ファミリーの精製タンパク質を用いて検証した。

その結果、mNPT3抗血清はmNPT3のみを認識し、SLC17ファミリーの他の メンバーを認識しないことがわかった(図 12A)。この結果から、調製した

mNPT3抗血清は、mNPT3を特異的に認識することがわかった。mNPT3抗血

清は、約 66 kDa と 130 kDa の位置にバンドを検出したが、これは精製した

mNPT3が二量体を形成しているためであると考えられる。

次に、各臓器における mNPT3 の発現を調べるために、それぞれの臓器の膜 画分においてmNPT3抗血清を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、

肝臓、腎臓、胎盤、肺、甲状腺の膜画分において、約68 kDaの位置にバンドを 検出した(図12B上)。検出されたバンドの位置は、予想されるバンドの位置(52 kDa)よりも高かった。しかしながらこのバンドは、あらかじめ mNPT3 抗原 ペプチドと反応させた mNPT3 抗血清を用いた場合には、検出されないか、あ るいはシグナル強度の減少が見られた(図12B下)。このことから、約68 kDa の位置に検出されているバンドはmNPT3であると判断した。また、小腸、脳、

心臓においてはシグナルが検出されなかった。NPT3 はこれらの臓器に発現し ていないか、発現していてもごくわずかであるために検出限界以下であるか、

あるいはプロテアーゼによって分解されたことが考えられる。

検出された分子量が予想される分子量よりも大きい理由としては、mNPT3 への糖鎖付加、脂質や他のタンパク質との複合体の形成などが考えられる。腎 臓の膜画分に、熱処理、N-glycosidase FあるいはO-glycosidase処理を行った が、ウェスタンブロットにおけるmNPT3のバンドの位置は変化しなかった(図 12C)。このことから、mNPT3 は膜において糖鎖付加はされておらず、何らか の物質と複合体を形成していることが考えられるが、特定はできていない。

(42)
(43)

各臓器におけるmNPT3の局在

次に、各臓器における mNPT3 の局在を明らかにするために、mNPT3 抗血 清を用いて間接蛍光抗体法を行った。まず、尿酸や薬物排泄で重要な腎臓と肝 臓の局在を調べた。その結果、腎臓においては、近位尿細管及び遠位尿細管の アピカル側に、肝臓においては、胆管の管腔側に発現していた(図13AとB)。 また、NPT3 は胎盤関門である合胞体栄養細胞の母体血液側(刷子縁膜)に発 現がみられた(図14A)。血管内皮細胞のマーカーであり、胎児血管を示すCD31 とは共局在しなかった(図14A)。さらにmNPT3は、これまで薬物や尿酸排泄 においてあまり注目されていなかった甲状腺濾胞細胞の濾胞側(アピカル側)

や肺の気管上皮に発現が見られた(図14BとC)。一方、小腸と心臓には発現は 見られなかった(データは示していない)。

また、脳における mNPT3 の局在を調べた。ウェスタンブロット法では、シ グナルがほとんど検出されていないが、RT-PCR において遺伝子レベルの発現 が見られることから、発現していることが予測された(図11、12B)。マウス脳 の冠状面において腹側から背側にかけて切片を作製し、HRP 法を行った結果、

mNPT3は海馬周辺(主にCA1領域)の血管の周囲に発現していることがわか

った(図15A)。また、間接蛍光抗体法により二重染色をすると、アストロサイ トのマーカーである GFAP と共局在したが、血管内皮細胞のマーカーである P-glycoproteinや CD31 とは共局在しなかった(図 15B)。これらの結果から、

mNPT3は血管の周りのアストロサイトに発現していることがわかった。アスト

ロサイトにおけるさらに詳細な発現部位を明らかするために、胎児マウスの海 馬アストロサイトを初代培養し、解析した。RT-PCR を行った結果、mNPT3 は遺伝子レベルにおいて発現していることを確認した(図16A)。また、初代培 養アストロサイトの膜画分を調製し、ウェスタンブロットを行った結果、約68 kDa の位置にシグナルを検出した(図 16B)。さらに、免疫染色をした結果、

mNPT3 はおよそ8割の初代培養アストロサイトの細胞膜に局在していること

がわかった(図16C)。

(44)
(45)
(46)
(47)

NPT3 の機能解析

mNPT3のPAH輸送活性

mNPT3 の輸送特性を調べるために、mNPT3 を大腸菌に大量発現させ、

Ni-NTA アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製した。得られ

た mNPT3 が高純度で精製されていることを CBB 染色法により確認した(図

17A)。精製したmNPT3は約66 kDaであり、この分子量はmNPT3にN末端 とC末端両端に120アミノ酸残基のYbeLタンパク質を付加した時に予想され る分子量サイズと一致した。

精製した mNPT3 を凍結融解希釈法によりリポソームに再構成した。内側を Na+で充填した再構成リポソームを、150 mM K+を含む反応液に入れ、バリノ マイシンを添加し、内側が正の膜電位差を形成させた。この条件下で、mNPT3 を再構成したリポソームは時間依存的にPAHを輸送した(図17B)。輸送活性 が 2 分以降で低下したのは、膜電位が平衡状態に達して駆動力が消失した後、

濃度勾配に従ってPAHが流出したためであると考えられる。しかし、バリノマ イシンを添加せず膜電位が形成されていないときには、PAHの輸送活性は見ら れなかった(図17B)。また、mNPT3を再構成していないリポソームにおいて は、バックグラウンドレベルの輸送しか見られなかった(図17B)。一方、ナイ ジェリシンを添加し、膜電位ではなく、外側が酸性の pH 勾配が形成されても PAHの輸送活性は見られなかった(図 17C)。これらのことからmNPT3 は、

膜電位を駆動力として有機アニオンを輸送するといえる。

PAH濃度依存的な輸送活性を測定し、ミカエリス-メンテン式に当てはめて計 算した結果、Km = 0.4 mM、Vmax = 96.0 nmol/mg/minであった(図17D)。

mNPT3もまた、塩素イオン非存在下では PAHを輸送しないが、10 mMの塩

素イオン存在下ではPAHを輸送し、さらに過剰量の塩素イオン存在下でも同程 度の輸送が見られた(図 17E)。つまり、mNPT3もまた、他の SLC17 ファミ リーのメンバーと同様に、塩素イオン依存性があることがわかった(17, 18, 34, 39)。また、mNPT3のPAH輸送は、DIDSとEvans blueによって阻害された

(図17F)。

(48)
(49)

mNPT3のリン酸輸送活性

hNPT homologueと同様、mNPT3もナトリウム依存性リン酸輸送活性を保 存しているか解析した。その結果、mNPT3はナトリウム勾配があるときにはリ ン酸を輸送した(図18A)。しかし、ナトリウム勾配がないときにはリン酸輸送 はバックグラウンドレベルまで著しく低下した(図18A)。つまり、mNPT3も ナトリウム依存性リン酸輸送活性を保存していることがわかった。また、PAH 輸送とは異なり、膜電位が形成されてもリン酸は輸送されなかった(図 18B)。

さらに、リン酸輸送活性は、過剰量のPAHによって阻害されなかった(図18C)。 これらのことから、リン酸輸送はナトリウム勾配を駆動力としている一方で、

PAH輸送は膜電位を駆動力としており、両者の輸送メカニズムは異なると考え られる。

(50)

mNPT3の基質特異性

次に、mNPT3の基質特異性を調べるために、PAH輸送の競合阻害実験を行 った。その結果、尿酸、親水性NSAIDsであるアスピリン、サリチル酸、イブ プロフェンを過剰量添加した際にPAH輸送は阻害された(図19A)。つまり、

mNPT3はこれらを輸送基質として認識する可能性があることがわかった。一方、

疎水性 NSAIDs であるジクロフェナクやメフェナム酸は、尿酸や親水性

NSAIDsよりも、PAH輸送を阻害しない傾向にあった(図 19A)。また、TEA 及びリン酸は、PAH輸送をほぼ阻害しなかった(図19A)。

PAH輸送に対する阻害効果があった基質を実際に輸送するかどうか検証する ために、RI 標識したサリチル酸の輸送活性を測定したところ、mNPT3 は膜電 位依存的にサリチル酸を輸送した(図19B)。

(51)

mNPT3の尿酸輸送活性

mNPT3もまた尿酸を輸送するかどうか、RI 標識した尿酸を用いて輸送活性

を測定した。その結果、予想通りmNPT3は膜電位依存的に尿酸を輸送した(図 20A)。また、バリノマイシンを添加せず膜電位が形成されないときには、尿酸 輸送活性はバックグラウンドレベルまで低下した(図20A)。尿酸濃度依存的な 輸送活性を測定し、ミカエリス-メンテン式に当てはめて計算した結果、Km = 0.5 mM、Vmax = 43.7 nmol/mg/minであった(図20B)。さらにmNPT3の膜 電位依存的な尿酸輸送は、塩素イオンを必要とし、DIDSとEvans blueによっ て阻害された(図20CとD)。このようなmNPT3の尿酸輸送特性は、他のNPT のPAH輸送や尿酸輸送と類似していることがわかった(17)。

(52)

第五章

考察

(53)

本研究において、NPT homologueとNPT3の輸送機能及び局在を解析した。

精製したhNPT homologueあるいはmNPT3をリポソームに再構成して、輸 送活性を測定した。その結果、NPT homologue及びNPT3は、NPT1及びNPT4 と同様に、膜電位及び塩素イオン依存的に、尿酸、PAH、親水性NSAIDsを輸 送した。実験に用いた駆動力の膜電位(−90 mV)は、実際の細胞の膜電位(−

90 〜 −60 mV)と同程度であるため、細胞膜に発現しているNPT homologue 及び NPT3 は生理的な条件下で尿酸などの有機アニオンを細胞外に排出するこ とが可能である(18)。

また、この輸送はSLC17ファミリーの他のメンバーと同様、塩素イオン依存 性が保存されていた。2010年に樹下らは、VGLUTのグルタミン酸輸送は、塩 素イオンが2 mM以上になると急激に活性化し始め、5〜10 mMで最大活性を 示してプラトーに達することを明らかにした(18)。その一方で、飢餓状態にな ると大量に合成されるケトン体(特にアセト酢酸)存在下では、その活性は阻 害された。つまり、塩素イオンのVGLUTへの結合が輸送活性のスイッチをON にし、アセト酢酸の結合がスイッチをOFFにする。この特性はNPT1をはじめ SLC17 ファミリーに共通して見られる性質である(17, 18, 34, 39)。NPT

homologueとNPT3にも塩素イオン依存性があることから、両者にも塩素イオ

ンによる輸送活性を ON、OFF にするしくみがあると考えられる。また、実際 の細胞内塩素イオン濃度は通常およそ4 mMであることから、細胞膜に発現し ているこれらのトランスポーターは活性化状態になっていると考えられる。

さらに、NPT homologue及びNPT3は、SLC17ファミリーの共通の阻害剤 であるDIDSとEvans blueによって阻害された。また、反応速度論的解析から、

NPT homologue及びNPT3は、NPT1及びNPT4とほぼ同程度の基質親和性 であった(17)(表2)。基質特異性を調べると、NPT homologueは、プラバス タチンを認識するとともに、親水性NSAIDsであるアスピリン、サリチル酸、

イブプロフェンを認識する傾向にあった。NPT3もまた、親水性NSAIDsを認 識し、実際にサリチル酸を輸送した。これらのことから、NPT homologue及び NPT3 においても、NPT1 と同様に、これらは輸送基質となることが示唆され た(17)。

また、NPT homologue及びNPT3の有機アニオン輸送は、SLC17ファミリ ーの他のメンバーと同様に、有機アニオン輸送の他にリン酸輸送活性を保存し ていることがわかった(17, 19, 34, 37)。有機アニオン輸送は膜電位を駆動力と

(54)

する一方で、リン酸輸送はナトリウム勾配を駆動力としており、両者の輸送メ カニズムは異なっていた。つまり、一つのトランスポーターの中に二つの異な る輸送メカニズムが存在する多機能性を持つことがわかった。しかしながら、

生体内においては、リン酸に対する親和性がより高いNPT2やPiTが、リン酸 輸送を主に担っていると考えられている(25, 33, 37)。したがって、NPT

homologue及びNPT3においても、両者の主な機能は有機アニオン輸送である

と考えられる。

このように、NPT homologueとNPT3は他のNPTのメンバーと同様の輸送 特性を示し、尿酸やアニオン性薬物を輸送する有機アニオントランスポーター であることが明らかとなった。

ヒト及びマウスの NPT homologue は小腸絨毛上皮細胞の刷子縁膜に発現し ていた。したがって、NPT homologueがこれまで明らかにされていなかった小 腸におけるSLC型の尿酸排泄トランスポーターとして機能していることが強く 示唆された。NPT homologueはABC型尿酸トランスポーターであるBCRPと 同じ場所に発現していたことから、腎臓と同様に小腸においても、ABC 型と SLC 型両方の尿酸トランスポーターが協調的に尿酸や有機アニオン性薬物を排 泄している可能性を示した(図21)。食事や運動直後などに産生された大量の尿 酸を排出する際には、尿酸輸送に対する親和性が低いBCRPが主に働き(Km : 8.24 mM)、生理的条件下では親和性の高いNPT homologue(Km : 0.3 mM) が主に働いているのではないかと考えられる(30)。

TETRANとNPT1は腎臓におけるNSAIDs排出トランスポーターである(17,

46)。TETRAN は、インドメタシン、エトドラク、メフェナム酸といった疎水

性NSAIDsを認識する一方で、NPT1はアスピリンやサリチル酸といった親水

性NSAIDsを認識する(17, 46)。TETRANは小腸にも発現していることから

(46)、小腸においてTETRANとNPT homologueは共同してNSAIDsを排出 していることが考えられる。また、8割以上が糞中排泄といわれているプラバ スタチンは、小腸に発現しているNPT homologueが排出を担っていることが示 唆された。NPT homologueの輸送機能が低下した場合、親水性 NSAIDs やプ ラバスタチンの排泄量が低下し、体内におけるこれらの濃度が上昇することが 予測されるため、投与量の慎重な検討が必要である。

hNPT homologue の mRNA の発現量は肝臓と膵臓に多かったが、hNPT

homologue は免疫染色においてタンパクレベルでは検出されなかった。このこ

参照

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