昭 和 59 年 3 月 発 行
方富島す審宗 1 : t 157N037
RADIATION CHEMISTRY
日 本 放 射 線 化 学 会 JAPANESE SOCIETY OF RADIATION CHEMISTRY
. :J健
〈・咽・・〉
'寸槍会考...・H・...…・H・H・...・H・...・H・‑・・志岡 忠 正 …
1
〈展望〉
回 体 中 に お け る
H.D.T
原子の挙動・H・H・..寓崎信郎…2
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・ 高分子掃の鎗散律速反応・・ p
H・
H・ . . . ・
H・‑・・・咽江 一 之 …
14 路 R隼 代 測 定 に お け る自 然 紘 射 線 健 闘
. 1 .
量得舗法…・・・池谷 元 伺 …26<~U.,
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ピヨ秒レーザーによる割露骨量.液体
の 光 イ オ ン 化 と 多 光 子 助 組 … … 又 貿 易 …37
高 分 子 守 ト リ タ ス 中 に お け る
正電荷移動反応…....・H・‑青島 爽・・・38 有織鎗合材事専の中佳子照射効果…....・H・‑江草 茂111)...40
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26回総射線化学前積金をふりかえって...・H・...・H・.43t
資事時》篠鶴岡敏射線化学討槍会プログラム…....・H・...45 京 大 原 子 炉 実 検 所 規 則 研 究 会 .It射・化学における正負イオンの挙動…...・H・.47 日 本 化 学 会 修48秋象年金シンポジウム報告…...・H・...48
. 5
回 太 陽 エ ネ ル ギ ー 化 学 変 換 貯 蔵国 際 会 帽 の お 知 ら せ ・H・H・....・H・...・H・...・H・.49 歓 射 線 化 学 若 手 の 会
58年 度
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夏 の 学 校J報告・H・H・...・H・...・H・...49.7 困 ICRR
に出席して・H・H・...・H・...…・・…...・H・...51二 つ の
ANLワ ー タ シ ・ ッ プ に つ い て ・
H・
H・ . . . . . ・
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<...員名鴛〉・
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 9
〔巻頭言〕
討 論 会 考
日本化学会の欧文誌の編集に携ったりした経験から日本 人が英語の穿索をすることの空しさについては重々承知 のつもりであるがここでは敢えてわれわれの討論会の英訳
〆h
を試み,ぞれをきっかけにして考えを巡らすことにする 。 海外からの問合せなどに対しては私自身は本会の討論会 のことを J a p a n e s e Symposium on R a d i a t i o n C h e m i s t r y と か何とか応えてお茶をにごしているが辞書によると Sym‑
p o s i u m とは皆で一杯やるということに源を発するそうであ る。討論会には懇親会がつきものであるから上の訳はその 点では誤りは無さそうである。 一方で漢語の討論を直接,
英語と結びつけようとすると,少くとも私自身の小容量の メモリーには, d i s c u s s i o n とか d e b a t e とかいった中学で 習った単語しかない .そこで改めてこの 2 つの言葉を当っ て見ると前者はパラパラに解体してつぶさに調べること,
後者は相手とけんかをしてでもその正体をばらすこと,と どちらにしろあまり穏便な言葉ではないようである。
つまらない語源穿索はほどほどにして短万直入に意見を 述べたい.そのための導入:われわれは小固なりとも 一国 を宣言 した学会を構成し,その主な活動として年一 回の討 論全と年二回の会誌発行を行っている。そしてそれがほぼ すべてである。ところで討論会に問題は無いか?.会誌に 問題はないか?無関心な大衆に街頭アンケートをとる愚か さ,自分自身という霧の中で自分を見つけようとする愚か さのいずれでもない試みをと考えて私が心を許す,放射線 化学を生業としない私の友人にこの問題をぷっつけて見た.
‑京都大学理学部化学教室 放射線化学研究室
志 田 忠 正 *
即座に返ってきた返事は「放射線化学討論会は固定化して いて面白くない.だけど放射線化学会誌は結構有用である.
むしろ関心をもっ周辺の素人にも馴じめる教科書が欲しい ぐらいである…」と.この挑戦状,いやいや有難い忠告に 全員諸氏の極然たる反発があるや無しや。
私自身の意見はこうである:討論会は皆で一杯やるだけ の会では,勿論,ない.やっぱり本来,緊張をはらむ集会 であろう。そのためにはけんかするに値する内容と,けん かのための努力と,整然としたけんかのルール(日本人は v e r b a l にけんかすることが下手というのが当っているのか どうか?)と,けんかの後の爽やかさと,そしてそれらが すべて揃った後に生れる創造があって初めて学会を呼称す る集団の活動と 言 える筈だということである.そしてこれ らのことは私自身に向けて最も強く a d d r e s s されるべきこ とと思っている.
ただ, しかし農耕民族の子孫としてのわれわれにとって 西欧型の討論が窮極のお手本であるかどうかということに ついては私にも自信はない。特に西欧と違ってポストドク トラル制の無い我が国において,離陸前の院生などが討論 壇上に立つことも必然である現状において,討論会が一種 の教育の場であることも認め無いわけにはいかない。それ については先導するものが科学者としての役割を全うする 他に,思慮深<,温い思いやりを具えることが要求される ものと思う。この点についても実は私自身に対して最も強 く a d d r e s s されるべきことと思っている.
‑ 1 ‑
〔展望〕
団体中における H , D , T 原子の挙動
1 . 序 論
団体中における水素の挙動に関する問題は,多くの分野 と関連を持っている .ま ず放射線化学としては,炭化水素 などの有機物の放射線分解において H
2や H の抜けたラジカ ルの生成は主反応であり,これらの生成に H 原子の挙動が どのように関与しているかは重要な研究課題である 1)また 高分子有機材料の放射線損傷を考える際には,固体中での H 原子の挙動とラジカル生成について理解しておく 必要が ある.
国相での水素原子の挙動は固相化学反応論的にも未開拓 な分野である .H 原子の反応,特に H ( D ) と H 2 (D 2 ) との反応は 最も簡単な 二分子反応であり,これまで化学反応の解明の ため非常に多くの理論的および実験的研究がされて来た
2)例えば過剰エネルギーを持つホット H原子のエネルギー損 失と反応性の問題や化学反応における量子力学的トンネル 効果の寄与の問題等が研究されている. しかし,これらは すべて室温以上の高温気相での研究であり,低温固相が気 相の場合とどのような類似性や相違性があるのか全く不明 である.
核融合炉の実現が今世紀中には可能となり,さらに来世 紀には核融合の実用化についての検討が始まると思われる.
核融合の燃料となるトリチウム( 三重水素)は気体になり 易い放射性同位元素であり,これの完全な透過対策技術を 確立出来るか否かは,核融合の実用化のカギであると 言わ れている .材料中のトリチウムの透過 ・ 拡散 ・ 反応の問題 は非常に複雑であり,不明な点が多い.実用 化されていな い現段階において,団体中でのトリチウムの挙動に関する 基本的性質を解明しておく事は重要であると思われる.
特に核融合の第一壁では,高エネルギー水素と材料表面
B e h a v i o r o f H , D , a n d T Atoms i n t h e S o l i d P h a s e . . T e t s u o MIY AZAKI
名古屋大学工学部合成化学科助教授,理博.
宮 崎 哲 郎 本
(すなわち固体表面)との相互作用の問題や強放射線場に おけるトリチウムの挙動の問題がある.前者は従来研究さ れていなかった領域であり固相化学反応論としても興味あ る.また後者は放射線損傷とトリチウムとの相互作用であ
り放射線化学とは深い関連がある.
金属材料中での H原子の挙動は金属の水素脆性や水素の 貯蔵や核融合材料の面等で,古くから多くの研究がされて いる
3,4)この分野の成果は固相での H 原子の挙動を考える 際に大変参考になる.セラミックス材料中での H原子の挙 動は核融合第一壁としてのセラミックスすなわち低原子番 号材料中のトリチウム拡散の問題の他に,石英などの光学 材料中の O‑H 結合の問題とも関連し,新しい研究課題に なりつつある.
以上のような固体中での H,D,T原子の挙動は,固相化 学反応における同住体効果として反応論的に興味がある拭 さらに同じ同位元素とも考えられるミュオニウムの挙動と の関連は今後の興味ある課題と言える .
このように国体中での H原子の挙動は多様な側面を持っ ている.放射線照射による水素原子の研究は r 線照射に より極限状態を含む様々な条件下の固体中に容易に水素原 子を作る事が出来るといっ特色を持っている .本解説では この方法による筆者等の最近の研究を中心にして固体中 d
の水素原子の挙動に関する紹介を行う.
2 . 国体中でのホット H 原子のエネルギー損失と 反応および捕捉
団体の放射線分解で生成する H原子は初期的にはすべて 過剰な運動エネルギーを持つホット H原子である.ここで は数 eV のホット H 原子が固体中でどのようにエネルギー を失い,これが反応や捕捉とどのように関係しているか考
(経歴)昭和 4 2 年東京工業大学大学院博士課程
11萎了,昭和 5 4 年名古屋大学工学部講師,昭和 5 8 年より現職. (専門)放射線 化学 . (連絡先) 干 4 6 4 名古屋市千種区不老町 名古屋大学工学部合成化学科. (趣味)野球観戦.
‑ 2 ‑
える.
実験ではマトリックスとして CH. , H 2 ' Ar を用い,これ らは液体ヘリウム温度 ( 4 K ) で固体になる.これに少量の H I(又は HB r)を添加し,単色光 ( 1 8 5 , 2 2 9 , 2 5 4 , 3 1 3 n r n ) を照射する.ハロゲン化水素 (HX) は光分解により H 原子 を生成する.光のエネルギーと HX の結合エネルギーとの 差がH 原子の初期的な運動エネルギー (X が励起状態にな る時は,その分少くなる)である.単色光を用いると初期 エネルギーを指定したホット H 原子を作ることが出来る.
光分解を 4K で行った後 4K で ESR 測定をすると生成した H 原子をそのまま同定することが出来る.
2 . 1 固体 CH. 中のホット H 原子
5)4K 固体メタン中で H I(又は HBr) の光分解を行うと次 の反応が起る. HX の光分解によって生じたホット H 原子 ( H * ) は CH. と反応して CH
3を生成するか或いはエネルギ ーを失って捕捉 H 原子 (H
t)となる.
HX 主と ‑ + H ・+ X ( 1 )
H* + CH. アー.. H2 + CH
3( 2 )
事
H
t
( 3 )
CH
3と Ht の量を測定することにより,引抜き反応(反応 ( 2 ) ) とエネルギー損失過程(反応 ( 3 ) ) との比が直接求まる.
H* の初期エネルギーを変化させて,全ホット H 原子中引抜 き反応をする割合を図 1 に示す .3eV の H* の場合,この割 合は 0 . 0 3 となり,気相での値
6)の約 1 / 5 であり,固相でのエ ネルギー損失が気相より効率良い.図 1 で興味ある事は,
c i‑ .~
, . . 司 、
s 手∞4~ I ̲ 1 i a2 j
4
砂 +
E 1 1 C 0 2 0 1 g a
U3T 1 3
O O L h b 1 2 3 4 O I n i t i a l energy o f H atom I eV
図 1 4K 固体メタン中て忌の水素引抜き反応と H 原子のエ ネルギーとの関係 (0 ),ム,気相エタンの場合.
引抜き反応、のしきい値 ( E a b )0.52eV を超えても引抜き反 応が急には起らず, 3eV から初めて立上ることである. 一 方,気相での C
2H
6‑ D ・系の値
7}では Eab 以上では引抜き 反応の効率が急に上昇する(図1).したがって固体 CH.
中では気相 C
2H
6系とは異なり,エネルギーが 1‑ 3eV の 領域において捕捉 H
t原子を生成し易い特別な過程が存在 するのではなかろうか.
2 . 2 固体 O
2中のホット H 原 子 "
固体中でのホット H 原子の挙動をより詳しく解析するた め,引抜き反応、の微分反応、断面積 ( σ (E))が明らかになっ ている水素系においてホット H 原子反応を調べた。 4K 固 体 D
2中で HX の光分解を行うと次の反応、が起る.
HX~H・ +X 守 (1) H ・+ D2 一一→ HD + D t ( 4 )
¥¥、
H
t( 5 )
HX の光分解で生じたホット H 原子は D2 と反応して D t を生 成するか,或いはエネルギーを失って Ht となる . Ht• D t 共に 4KD
2中では安定なので,それぞれの収量の比が反応
(4)と
(5)の反応速度の比を直接表わす.この値から 全ホット H 原子中,引抜き反応、をする割合すな : h ちホットアトム反 応収率 ( p ) が求まり .H ・の初期エネルギーの関数として 図 2 に示す (0印).不思議なことに H* のエネルギーが 2eV 迄はエネルギーの増加と共にこの割合は増加するが, 3eV 付近では,むしろ減少してしまう。 一方気相におけるホッ
トアトム反応収率(ム印
)9)は H* のエネルギーと共に単調 に増加するだけである.
H* のエネルギーは D
2との衝突によって失われると仮定す ると次の 二つの場合が考えられる.第一のモデルは,ホッ ト H 原子が多数の衝突を行ってエネルギーを失う場合であ る,ホットアトム反応収率 ( p ) は下記の式で表わされる
10)1 rE2σ ( E )
p = 1 ‑ exp~ 一一--dE~ ( 6 )
‑l β
JE . E
ここで E
2・ E
1は H* の初期エネルギーおよび反応のしきい 値 (‑O . 4 eV> である . σ (E)は理論計算から得られている
11)(6)
式より計算した P を図
2に示す(曲線ー・‑・一).第二のモ デルとして H ・原子は D
2と一回の衝突でエネルギーを失う場 合である.この時,pは σ(E) に等し L 、(曲線一一一一一) . モデル IとI I の場合共に, p はエネルギーの増加と共に単 調に増加する.実際の場合はモデル IとI I の中問状態と考 えられるが,国体 D
2中の実験値を説明することは出来ない.
1 是って固体 D
2中でのホット H 原子のエネルギー損失過程に は衝突脱活性以外の固相特有の損失過程があり,国体 D
2‑H* 系では 3eV 付近にこの過程が効率良く起ると考えられ
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l n i t i a l e n e r g y o f H atom I e V
図 2 D
2中における H原子のホ ットアトム反応収率 ( p) と H 原子の初期エネルギー. 0 , 4K 固体 D
2中の
H 反応における P ( [ D t J / ( [ D t J + [ H t J ) ) ; ム,気相 における実験値 (P) ;̲ . ̲.̲‑,ホット H 原子が多 数回衝突でエネルギーを失う場合の計算値 (P) ; 一 一 一・ ー,ホット H原子が一回の衝突でエネルギー を失う場合の計算値( P).
る.その結果捕捉 H
tの収量が増加し,引抜き反応の割合が 高エネルギー領域で減少したものと思われる.
2 . 3 固体アルゴン中のホット H 原子
12)ホット H原子の固相特有のエネルギー損失過程すなわち 高エネルギー H* 原子の捕捉の過程を,さらに明確にする必 要がある.異なるサイトに捕捉されたH原子を容易に区別 出来る系として固体アルゴンを取り上げた.固体Arは面 心立方構造をしており, H 原子は格子点に A r 原子の代り に入る場合(置換型サイト, H
s)と格子点の A r 原子聞の 空き間に入る場合(侵入型サイト, H
1)とがある H
sの ESR 吸収スペクトルの分離定数は5 0 7 . 6G であり, H( のそ れは 5 1 5 . 7G であり, H
sとH(とのESR 吸収スペクトルは明 確に区別することが出来る
13)4 K 固体 A r 中で H I の光分解 を行うと,まずホット H原子が生成し異なるサイトに捕捉 された H 原子, H
sと H ( が生ずる.
HI 主~H・ +1 ( 7 )
H * + A r :
一 一 参H
s ~¥¥..,. H ( ( 9 )
もしホット H原子がエネルギーを失い,サーマノレ H原子と なった後でサイトを見付けて捕捉され H
sと H ( を生成する ならば, H
sと H ( の生成比は H* の初期エネルギーには無 関係であろう.図 3 に全捕捉 H 原子中の H ( の割合を H * の
0 . 4
0 . 3
( { f
rO.2
f /
/
0 1 .
o 0 2 3 4
l n i t i a l e n e r g y o f H atom . eV
図 3 4K 固体 A r 中の H I の光分解における捕捉水素 ( H (
と H s) の生成と H * の初期エネルギーとの関係.
初期エネルギーの関数として示す.この割合はH ・のエネ ルギーが増加すると共に増加する.すなわちホット H 原子 のエネルギーが低い時は置換型サイトに捕捉され,エネル ギーが高くなると侵入型サイトに捕捉されることがわかる.
このことは,ホット H原子は衝突によってエネルギーを完 全に失ってから捕捉されるのではなく,高エネルギー H 原 子が直接侵入型サイトに捕捉されてしまうことを意味して いる.すなわち団体 A r 中ではホット H 原子は衝突脱活性 型のエネルギー損失だけでなく,直接捕捉の機構でエネル ギーを失う.このような直接捕捉の機構が団体メタンでは 1 ‑ 2eV 付近て¥国体水素では 3eV 付近て包っていると仮 定すれば,これらのエネルギー領域で引抜き反応が押えら れる事実が説明出来る.
3 . 固体水素中における H(D) 原子の反応・拡散 に対する量子力学的トンネル効果
低温回相における量子力学的トンネル効果による化学反 応の研究は Williams等による研究以後ケ}幾つかの反応系 で報告されている?これらの研究はすべて有機化合物系で あり,系が複雑なため実験値と理論値を比較することが難 しい.これまで化学反応の研究には,最も簡単な系でポテ ンシャルエネルギー曲面が解析出来る反応として H(D)+
H
2( D
2)反応が取り上げられ,非常に多くの研究がなされて 来た
2)‑ ,この反応の理論的研究は,まず正確なポテンシャル エネルギー曲面を求め,分子動力学によって反応速度を求
‑ 4 ‑
) ? L 。ー o
4 4K , D
2‑H
2混合系の放射線分解における D 原子の 相対収量 ( 0) の D2 濃度依存性.ム, D2 ‑H2 ( 5 m o l
%)‑HI(0.05mol%) を u v 照射した時の D 原子の 相対収量.
める.これまでの分子動力学は古典力学を基本にしていた が,最近では量子論的研究も行われ.両者の比較がなされ 始めている?両者の違いの大きな特色のーっとして,反応 に対する量子力学的トンネル効果の寄与が理論的に指摘さ れている. 一方実験面から考えると,この反応はこれまで 熱,放電,分子線等によって研究されて来た. しかしこれ らの方法では反応を起させるため室温以上の高温気相で実 験しなければならない.その結果,熱エネルギーによる古 典的反応とトンネル効果による反応とを区別することが難 しい.例えば H2+D → H+HD 反応と D2+H → D+HD 反 応の速度定数の比(すなわち同住体効果)は, 370K で 6 . 3 となり, トンネル効果が若干関与しているのではないかと いう報告がある
17)最近 M i y a z a k i は極低温の T 線分解法は,
熱的過程を完全に抑制し,量子力学的トンネル効果による 過程だけを観測することが出来ることに着目した.その結 果 , 4K 国体水素中での H(D) 原子の反応や拡散に著しい 同位体効果を発見したので以下に述べる.
3 . 1 4 K H
2・ O
2混合系の放射線分解による H , 0 生成 に対する著しい同位体効果
18)水素は 4K では国体であり r 線照射により生成した水 素原子は ESR 吸収により容易に観測することが出来る.図 4 に H2 ‑ D2 混合系の T 線分解における捕捉 D t 原子の生成
を示す. D2 中に少量の H2 を添加すると D t 量は著しく減 少し,代りに Ht 量が増加する . H2 の高濃度では Ht だけ が生成する.放射線分解におけるこのような溶質からの
選択的ラジカル生成の現象は既に neo‑C
SH
12ーアルカン混 合系などで見出されており,水素原子の選択的な反応によ る事が明らかにされている?今回の結果を水素原子の反応 によるとすれば反応機構は次のようになる.
D2
Mト →2Dt ( 1 0 ) H2 伽→ 2Ht ( 1 1 ) D2 + D t 一一~ D t + D2 ( 1 2 ) H2 + D t ー → Ht+HD ( 1 3 ) H2 + Ht ー → Ht+H2 ( 1 心 D2 + Ht 一 一 → D t + HD 1 ( 5 ) これらの反応の活性化エネルギーは約 1 0 k c a l / mol であり,
古典的にはこれらの反応は 4K のような極低温では起り得 ない. しかし反応にトンネル効果が関与すれば極低温でも 起り得る.反応(1 2 ) と(I心は反応系と生成系が閉じであるから 図 4の同位体効果は反応(13 ) と(15)との速度の差によって生じ たものである.実験結果より k H . + o / ko
けH 比を求めると 3 0 , 0 0 0 以上となる. 370K での値 ( 6 . 3 ) と比較すると驚くべ
き値の同位体効果である.このような大きな同位体効果は 子力学的トンネル効果によってのみ説明出来る.
3 . 2 4 K 固体 H
2中の H 原子のトンネル効果による拡散問 図 5 に 4K 固体 H
2又は D
2中における H や D 原子の減衰挙 動を示す.国体 H
2を T 線照射後 4K に保つと H 原子の量は 徐々に減少する. しかし D
2中の D の減衰は極めて遅い.ま た D2 ‑ H2 ( 1 mol %)系での H 原子の減衰はほとんどみられ ない.このように減衰挙動についても同位体効果がみられ ることは,減衰が熱拡散によるよりも, トンネル効果によ る拡散が寄与しているものと思われる.前節の結果から考 えると H
2中での H 原子は反応(14)を繰り返しながら団体中を 拡散し最終的には H 原子同志の再結合皮応によって減衰す
ると思われる.
H + H 一一一~ H2 ( 1 6 )
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T i m e a f t e r Y ‑ i r r a d i a t i o n I min 図 5 4K r 線照射した固体水素中の水素原子の減衰挙動
口 , H2 中の H: ム , D 2 中の D:O , D2 ‑H2 ( l mol%) 中の H.
‑ 5 ‑
褒 4K トンネル効果による水素引抜き反応の速度定数 の計算値
反 応
H2 + D ー → H + H D 1 ( 3 ) H2 + H 一一→ H + H2 ( 1 4 ) D2 + D 一 一 → D + D2 ( 1 2 ) D2 + H 一一→ D + H D 1 ( 5 )
k . s e c ‑
13 . 0 x 1 0 . 3 . 0
X1 03 2 . 1
X1 0 ‑
31 . 6
X10-
5•このように極低温固体 H
2中で .H 原子は粒子性よりも波動 性の性質により拡散するものと思われる.
3 . 3 4 K トンネル効果による水素引抜き反応の速度定 教の計算
18)H ( D ) + H 2 (0 2 ) 系の反応についてのトンネル効果の理論 計算はこれまでなされて来た?川
0)しかしこれらは,すべて 室温以上の高温における値の計算である. 4 K での値を次 のような簡単な方法で計算した. トンネル効果を含む反応 速度定数 ( k ) は次式で表わされる.
A r
ook 一一 I G(W)exp(‑W / RT)dW ( 1 力 RT
.10G(W)は粒子がWのエネルギーを持つ時,反応障壁をトン ネル効果により透過する割合を表わす.ポテンシャル曲面 を &kart ポテンシャルで近似すると G(W) が計算出来る.
この反応系ではポテンシャルの幅や高きは理論的に求まっ ており
21)これらの値宏用いると ( 1 司式より k が求まる.計算 結果を表 lに示す. k H 2 + 0 / k o
けH の比は非常に大きな値とな
り,実験値(>3
X1 0
4)を説明出来る. kH
けH > k0 2+0 ・
ko
けH であることは. H2 中でHは減衰するが. D 2 中でD やH
b
却 伺 50 60 70 80却 l
∞
110 TIKI図 6 Nb‑O‑H ( D . T) 系 に お け る 内 部 摩 擦 の 大 き さ ( Q ‑ 1 ) の温度依存性.
T / K
ヌ刀 250 2 2 0 200 1 8 0
2 . 0
図 7
の減衰が起り難いことと一致する.すなわちH2 中でHは反 応(1心を繰り返しながら拡散する.これらの反応が古典的な 熱反応だけで起るとし,その速度定数を k
c1a制耐とすると,
k/k
c1asはalの比は1 0 3 0 0 ‑ . 0 0 となる.従って極低温 ( 4 K) では,トンネル効果による反応の方が古典的な熱反応より,
はるかに速いことがわかる.
3 . 4 金属中における水素原子のトンネル効果による拡散 金属中の水素原子の拡散については多くの研究がある.
事 ι 量子力学的トンネル効果の可能性について検討が加 えられ始めているので,それについて簡単に紹介する.
Hanada はニオブ (Nb)に少量の酸素 (0.56atm%) を含 む系に H. D 又は T を添加し低温で内部摩擦の大きさ (Q ‑ 1 ) を測定した?水素原子はNb 中の酸素と対を形成して存在 し,温度が上り水素原子が動くと Q‑ 1 が大きくなる.図6に
dQ‑1 の温度依存性を示す. H. D およびT 原子は5 0 . 7 0 およ び80K で動き始め. d e t r a p p i n gに質量効果がみられる .こ の理由として, トラップ状態 (O‑H. O‑D. O‑T) の振 動レベルの差および脱トラップの際のトンネル効果の可能 性が挙げられている.
F u j i t a . Yamakawaはニッケル (N i)中のHと D の拡散 係数の比 ( D H / Do) の温度依存性を測定した2 3 ) 図 7 に示す ように高温では拡散係数の比はj2に近い.古典的な調和振 動を考慮したモデルでは,この比は J 瓦石 J となり,高温で の実験値を説明出来る。しかし250K 以下の低温になると,
この比は増加し, トンネル効果の関与を示唆する. トンネ ル効果を考慮した理論曲線は低温での実験値と一致する.
‑ 6 ‑
4 . 固体中の T 原子の反応
トリチウム ( T ) は水素の放射性同位元素であるが天然 には存在しない. これは原子炉で
6Liに中性子を照射する と核反応(18)により生成する.
6 L i + n一一→ T ( 2 . 7 MeV) +α ( 1 8 ) T が放射性物質であり,かつ実験には原子炉を使用するこ
とから T原子の研究は H, D原子に比べ実験的困難が伴う.
従来のトリチウム反応の研究は気相における研究が主であ り固相での研究は極めて少ない. 一方トリチウムは核融合 の燃料であるから,材料中のトリチウムの挙動の研究は重 要である.材料中のトリチウムの拡散は, トリチウムの材 料への入射 ・ 吸着;材料中での捕捉 ・ d e t r a p p i n g ・ 材料およ び不純物との化学反応・材料からの脱着などの微視的過程 から成り立っている .これらの諸過程を解明するため,実際 の材料を使うと系が複雑過ぎることや材料中のトリチウム を分析するため材料を加熱したり溶媒に溶かすとそこで化 学反応をしてしまうこと等のため,徴視的過程の研究は難 しい.そこで Tachikaw a , Miyazaki 等は材料のモデル物質 として低分子固体を使う方法を考えた.この方法では, T
原子反応を低温で行った後,室温に戻すだけで, トリチウ ム反応の全生成物が分析出来る.さらに反応系としては,
H , D 原子の反応が充分に解明された系を選んだ.その結 果 , H, D原子との比較から T原子に関する情報が得られ る. この H, D, Tの比較は固相反応における同位体効果 としても意味があり,反応論的に未解決の課題である.
トリチウム生成物の分析はアイトソープ実験室で行い,
ガスクロマトグラフィーの検出部に比例計数管を取り付け,
その中にトリチウムを直接導入して測定した.
4 . 1 固体アルカン混合系における反跳 T 原子の反応
24)ネオペンタン中に少量の他のアルカン(例えば i ・ C
4H
9D )
を含む系や重水素化テ ・ カン中に少量の軽水素化テ'カンを含 む系を 77K で T 線照射すると溶媒の放射線分解で生じた H ( D ) 原子は選択的に溶質アルカンから水素引抜き反応をす る ト
19,
2Sこの系に
6LiF を添加し原子炉で中性子照射すると,
6
Liの核反応により反跳 T 原子が生成する(反応(18)) .これ はアルカンと置換反応や水素引抜き反応を行う.後者の反 応は次式で表わされる .
k (
溶媒)
T + neo‑CsH12一一→ H T+ neo‑C
SH1 1 1 ( 9 ) (n‑C1 oD2 2) (DT + C1 oD2 1)
k (
溶 質)
T + i‑C.H
9D 一一→ DT+ t‑C.H
9( 2 0 ) (n‑C
lOH 2 2 ) (HT + C1 oH2 1)
表 2 アルカン混合系における選択的水素引抜き反応の速 度定数比 ( k(溶質) / k(溶媒)).反跳T原子と放射線 分解による H(D)原子との比較
neo‑Cs H
12‑ i ‑C.HgD n‑C
lODz2 ‑ n ‑ C
lOH 2 2 温度, K ( 2 mol
%)r
線 分 解 「( l Omol
%) 戸 線 分 解 に2 0 ( 4) 7 7 1 9 5 3 0 0
反跳 T よる H"""~ 反跳 T 1 る D
0 . 3 9 1 . 1 0 . 2 5 0 . 3 9
< 1 3 8
<1
1 . 9 4 . 3 2 . 3 2 7 , 3 0 , 3 4 2 . 3 8 . 8 2 . 2 6 . 5
k は見掛けの速度定数である .H T , DT の生成比から k ( 溶 質 ) /k ( 溶媒)の比が求まる(表 2 ) .参考のため放射線分解 で作った H(D) 原子の場合も示してある:札2 6 , 2 7 , 2 8 ) γ線分解 の H(D) 原子の場合77K で値が大きく選択的水素引抜き反 応が起っている. しかし反跳 T 原子の場合は77K でも選択 性はほとんど見られない . この理由として次の二つが考え られる .反跳 T 原子の初期エネルギーは2 . 7MeV であるの に対し,放射線分解で生成する H(D) 原子は数eV のエネル ギーしか持たない.この初期エネルギーの差が選択的反応、
に影響を及ぼしたと考えられる(エネルギー効果).第二 の 理由として,高エネルギ一反跳 T 原子は固体中でエネルギ ーを失い数10eV になって初めて化学反応を起す.閉じエネ ルギーの H(D) と T 原子でも,両者の質量差が選択的水素 引抜き反応に影響を及ぼしたと考えられる(質量効果).次 にこれらのこつの効果について検討を加える.
4 . 2 77K , Xe‑C 2 H
o‑C 2 D
o系における反跳 T 原子反 応 .エネルギー効果制
反 跳 T 原子の重水素アルカン・軽水素アルカンからの水 素引抜き反応と T 原子のエネルギーとの関係を調べるため,
Xe‑C2H6 ‑C2 D6 系で反跳 T 原子反応を調べた.
6 L i + n ー 一 一 今 T* +α ( 1 8 ) T* + Xe 一一→ T + Xe* 。 1 )
T* + C2 H6 一一→ C2 Hs T + H 自 由 (C2 D6 ) 包 E 与 (CzDsT + D)
T* ( T ) + C
ZD6
"'‑2U6, DT + C 2 Ds ( 2 3 ) T* ( T ) + C
ZH6 k C 2 H 6 , H T + C2Hs 心 。
反跳反応、で生成したホット T原子 (T* で表わす)は, Xe と 衝突してエネルギーを失いサーマル T 原子(ここでは T で 表わす)となる. T* 原子は置換反応によりトリチウム化エ タンを生成したり(反応 ω) 或いは引抜き反応により,水 素を生成する.またサーマル T は77K でトンネル効果が寄
‑ 7 ‑
~ 4~ ←\ /' ‑ ‑ ‑ i
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O 01 .
n u
nu
n u
1.0 10 EthaA. mol ・/.
図 8 77K Xe‑C
2H
6‑C
2D
6系における反跳T原子反応のエ タン濃度依存性.
0 , 水 素 引 抜 き 反 応 に お け る 同 位 体 効 果 (k c 山/
kc 山);マ,全 T 化生成物中の T 化エタンの割合.
与すれば引抜き反応により水素を生成す. HT と DT との生 成比から kc 山/kc 山が求まる .図 8 に水素引抜き反応の 同住体効果 ( k C 2 H . /k c 2 均)お よび T 化エタンの生成量の割 合をXe 中のエタン濃度に対して示す.エタンが高濃度の時 はT 化エタン量は多く,引抜き反応、の同位体効果は1. 4 と小 さい.この値は気相中でのホット T* 原子の反応の際の同位 体効果(1 . 3 ) 叫に近い.しかしエタン量が 1 % 以下になると T 化エタンの生成は少くなり.相補的に同位体効果が増加 し4‑6 迄になる.エタン濃度が減少すると T ・原子のエネ ルギー損失が効率良く起り,その結果置換反応のような高 エネルギ一反応(反応のしきい値は約35kca l / mo l)は抑え られる。 一方低エネルギー T の量が増加し,引抜き反応、に おけるトンネル効果の寄与が大きくなると同位体効果が増 大する.この同位体効果については,反応系を 三体系とみ なし,三体系の換算質量を用いて,理論的計算を行った.
トリチウム反応でも, トンネル効果が関与すると同位体効
1.0. /
S │ 〆
o
<> 10 15作
c , 0 H 2 2
I mol・/.図 9 77K n‑C1 oD2 2 (T)
ーn‑C1 oH2 2 系の放射線分解におけ る水素生成の n‑C1 oH
22濃度依存性. 0 , HT / DT;
ム , HD / D2 ・
果が大きくなるという結果を得,実験値を定性的に説明す ることが出来た.このように低温固相トリチウム反応にお いても , H , D原子反応と同様にトンネル効果の寄与を考 慮する必要があるといえ,また同位体効果は T 原子のエネ ルギーに依存することが明らかになった.
4 . 3 77K トリチウム化デカンの放射線分解における D , T 原子の反応.質量効果
31)T 原子と D 原子の反応における質量効果を調べるには同 じエネルギーの T と D 原子を同じ条件下で作り反応させる 必要がある.そのためトリチウム化デカン ( n ‑ C
lOD 2 1 T ) を n‑C1 oD2 2 と反跳 T 原子反応を利用して合成した. n‑C1 oD2 2 中の n ‑ C l o D 2 1 T ( n ‑ C
lOD
22( T ) で表わす)の量は約 4 0 μ C i jg である.これに n‑C1 o H
22を添加し 77K r 線分解を行い生成 する水素 (HT , DT , H 2 ' HD , D 2 ) を分離定量した.図 9 に生成水素の比を示す. HT および DT は下記の反応で生 成する.同様な機構 2 5 ) で HD および D 2 が生成する.
T T T T D D H + + + + D D D H
cccc
⁝ ¥ い 一 回
T D D H
c c c
n n n + + T T
同 砂 州 切 明 り 品 切 向M w h M W
師HW師MV
従って HT/DT 比と HD/D2 比はそれぞれ T 原子と D 原子の デカンとの反応の際の同位体効果を示す.放射線分解では 同じエネルギーの T と D が生成するが,図 9 より両者の反 応性には大きな違いがあることがわかる.分子的脱離反応、
(側式)は n‑C1 oD2 1T と n‑C1 oD2 2 で同じであると仮定する と同位体効果の値が求まり,表 3 に示す. r 線分解で作 っ
表 3 77K デカン系における水素引抜き反応の同位 体効果.反応原子の質量効果
T線 分 解
による T r
線 分 解による D 反跳 T
k
C1・
H nk C ' O D ζ 4.5‑6.3 27‑34 2 . 3
た T 原子は D 原子に比べ同位体効果は小さく.むしろ反跳 T 原子の値に近い.これは閉じエネルギーでもデカン中の 水素引抜き反応について質量効果が見られることを意味し ている.この質量効果の原因は, トンネル効果の理論から は説明出来ず, T と D との聞の団体中の拡散速度の違い等 が現在考えられているが,今後の検討課題と言える.
5 . Si0
2中の H(D) 原子の拡散・減衰挙動
32)低分子固体でH原子を観測するためには,一般には 4 K 付近にする必要がある. 77K では特殊な系を除いては拡散
‑ 8
ーや反応、が起り観測出来ない.そのため H 原子の拡散・減衰 挙動を詳細に解析するには極低温付近で正確な昇温実験が 必要である.また低分子団体では昇温により団体自身の構 造変化を起し易い.国体自身の構造変化が起らず,温度調 節の容易な 77K 付近で安定に H 原子を捕捉する系として溶 融石英(シリカ, Si0
2)を取り上げた.シリカは O‑H 結合
を含んでおり放射線照射により H 原子を生成する.
石英は光ファイパ一等の光学材料としても使用され,不 純物としての O‑H 結合の存在は応用的に重要な問題である.
またセラミックスは核融合材料(第一壁材料, トリチウム 透過防止剤, L i
20 等の燃料)としても注目されている .Si0
2は酸化物材料の典型例として考える事が出来る.
Si0
2 を放射線照射すると H 原子の他にEl~ E
2'センター,
過酸化物ラジカル等が生成する.これらの放射線損傷の研 究は最近再ぴ復活した感がする?捕捉 H 原子の捕捉サイト については, ESR により研究
34)がなされて来たが,それの 減衰挙動についてはほとんど研究されていない.またシリ カ中に D
2又は D
20 を高温で拡散させると O‑H 結合は容易に O‑D に置換される?今回, 一部分重水素化したシリカを 7 7 K r 線照射し, H と D 原子を生成し昇温による減衰挙動を ESR により観測した.
シリカを 77Kr 線照射し,次に 90K に放置した時の H 原 子の減衰曲線を図1 0 に示す.減衰機構に二次反応を仮定し た場合は,データを全く説明出来ない.一次反応、減表の場 合 , H 原子の初濃度に依存しないはずなので,照射線量を 変化させて,すなわち初濃度を変えて一次反応プロットを 行った(図1 0 ),ここで H の初期濃度を C o , t 時間後の濃度 を C とする.減衰速度は照射線量に依存せず,一次反応的 であるが,時間に対して直線関係は成立しない。従って減
o c
04 ¥ l │ ¥
O
¥コ 一 ‑ 6
3000 6000 .sec
図 1 0 90K r 線照射したシリカ中の H 原子の一次減衰フ。 ロ ット .0 ,照射線量1. 7
X1 0
5r a d ;ム,照射線量 5 . 1 X 1 0
5r a d .
衰は複合一次反応によると言える.減衰の反応機構を書く と次のようになる.
S i l i c a
NV'→H ( 29 ) H + R
ーーー→p
~mO‑H 結合の切断によって生じた H 原子はスパー内のラジカ ル ( R ) 又は特別なサイトに捕捉された他の H 原子と再結合
したりして減衰すると思われる.
複合一次反応になる原因として,第ーのモデルは BaO‑
B
20
3‑ A 1
20
3t / ラス ( A l u m i n o b o r a t eG l a s s ) 中の H 原子 の減嚢挙動について報告されているように相異なる深さの サイトに捕捉された H 原子が異なる速度で一次減嚢し,そ れらの合成されたものが複合一次反応であるとみなす.こ の場合,速く減衰する成分と遅い成分とは異なる活性化エ ネルギーを持つ.シリカ中の H の減衰について初期値の 8 0 , 6 0 , 40% に減衰する時聞から求めた減衰の速度定数を ks o' k
仰k . o とし,それぞれについて活性化エネルギーを求め
ると 3 . 6 , 3 . 8 , 3.7kca l / mol となり,ほぽ同じ値になる.
このことはシリカ中の H 原子の複合一次反応はトラップの 深さの異なる H 原子の一次減衰が合成されたものではない
と思われる.
次に複合一次反応の別のモデルとして捕捉 H 原子が或る サイトから別のサイトに移る時の距離に分布があり,その 結果 h o p p i n gtime に分布が生じ,これを繰り返しながら H 原子は拡散し再結合すると考える. この場合には Con‑
tinuos‑time‑random‑walk model 37lが適用出来る.このモ デルによればH原子の減衰の速度定数 ( k ( t ) )は時間に依 存する式で表わされる.
k ( t ) = B t
a‑l( 3 1 ) ここで α(0 壬 α 孟1)と B は定数である .H 原子の減衰を一 次反応とすれば
‑dC / d t = k ( t ) C = B t
トl C ( 3 2 ) 積分して変形すると
l n ( I n(Co / C)) = ln(B / α) +αxlnt 側 図 1 1 に 90K の H 原子の減衰について l n ( I n ( C o / C ) )を l n t に対してプロットする.良い直線関係、が見られ,実験値は l n ( I n ( C o / C ) ) = ‑2.6+0.371nt で表わされる.このこと よりシリカ中の H 原子の減衰挙動は jumpd i s t a n c e に分布 を考えた C o n t i n u o u s ‑ t i m e ‑random‑walk model で説明 l される.
D 原子の減衰速度は H 原子の場合とほぼ同様で,減衰速 度に同位体効果はみられなかった.減衰挙動も複合一次反 応となり側式で表わされた(図 1 1 参照).
‑ 9 ‑
0.2 ト
d /
J J
f
O ト
‑0 . 2 ト . . . 園 、 、 . . . . 旬 、
円 ︒
ハ v
u
︒υ
C
C ‑ 1 . 0
‑1.4 ト
ー 1 . 8 L ょ
2 4 6 8 1 n t
図 1 1 100K 一 部 重 水 素 化 し た シ リ カ を r 線照射した際 の水素原子の減衰挙動. l n ( I n(C o/C))とl n tとの関 係 . 0 , H 原子;ム, D 原子.
6 . 材料表面と高エネルギー水素原子
核融合炉の第一壁と関連して材料表面に高エネルギー水 素イオンを照射した時の問題が提起され,近年活発な研究 が展開きれている.これは固体表面の放射線化学としてだ けでなく,固体表面と高エネルギー水素の反応としても新 しい分野であり,魅力あるテーマが多い.団体表面でのホ
p ' Q s i t i v e l o n B e f o r e I m p l a n t a t i o n
~
JJ
! ! ! ! ! !1~ ~;(M/e)
Ne 伊 t i v eI o n A f t e r
l m p l a n t a t i o n B e f o r e l m p l a n t a t i o n
図 1 2 重イオン照射したグラファ イトおよび未照射試料の 二次イオン質量,スペクトル.
ッ トアトム反応が固体内部での反応とどのような関係があ るか今後の研究課題であろう.
興味ある例として,グラファイトに 5keV の重水素イ オンを照射した時の Watanabe 等の研究結果を紹介する
38)図 1 2 に重水素イオンを照射したグラファイトと未照射のも のとの 二 次イオン質量スペクトル ( S I M S ) を示す.負イ オンとして重水素イオン照射後の試料では CD ‑ , CD2 ‑ 等 の他に C
2D ー のピークがみられる.イオン照射した試料に ついてさらに軟 X線光電子分光スペクトルを測定し, Cls
ピークの化学シフトを観測した.これらの結果からグラフ ァイト表面に打込まれた重水素イオンは C‑D 結合だけでな く
, 二つの炭素原子にまたがった C
2‑ D 結合も形成すると 推定している. C
2ー D 結合の生成は表面反応の特殊性を表
畠わしていると思われる , .
7 . 固相炭化水素の放射線分解と H 原子の関与
最 近 Radia t . Phys. Chem.誌に固体アルカンの放射線分 解における H 原子の生成について, 二 つ の 見 解 が 出 さ れ た
39・
40)しかし残念なことに,両者共1968‑1977 年に発表さ れた研究について 言及しなかった.このため,固体アルカ ンの放射線分解における H 原子やラジカルの生成に関して Willard 等と Miyazaki等が既に論争したことを,単に蒸 し返したに過ぎないと思われる点が多々ある.従って以前 の研究結果も含めて簡単にこの問題について紹介する.
7 . 1 面相炭化水素の放射線分解におけるラジカル生成と H原子
固相炭化水素を放射線照射すると, H
2と H の抜けたラ ジカルが主に生成する .これ らの生成機構を研究するため a に は 炭 化 水 素 自 身 を 使 っ た 研 究 が 重 要 に な る . 1 9 6 8 年 司' Willardは 3 ‑ メチルペンタン (3MP) の77K r 線 分 解 を 行 い溶媒ラジカルの生成に対する電子捕捉剤の添加効果や捕 捉電子の影響を調べた
41)溶媒ラジカル生成はハロゲン化ア ルキル(電子捕捉剤)の添加や捕捉電子のブリーチおよび 減衰によって影響を受けない.このことより中和反応はラ ジカル生成に重要でないと考えた .さらに 4K では CH
4以 外のアルカン (3MP 等)では捕捉 H 原子が観測されない 事を報告した
42)特に重水素化 3MP をマトリックスにした場 合 , DI の光分解では D 原子が観測出来るのに,重水素化 3MPの
T線分解では D原子が見られない.これらの事よ りアルカン ( R H ) の放射線分解では H 原子は生成せず,
下記の反応 ( 3 4 ) , ( 3 日でアルキルラジカル (R) が生成すると考 えた.
‑ 1 0
ーRHN ト→ RH + + e ‑ 心 。 RH + + RH 一 一 一 参 RH/+ R ( 3 5 ) RH2 + + e ‑ 一一→ RH+ H又は R+H2 ( 3 6 ) しかし,中和反応、(3 6 ) は実験結果と 一致しない.
一方 Miyazaki等は1 9 6 9 年国相イソブタンの77K r 線 分 解において溶媒ラジカル生成は SF
6や N
20 添 加 で は 影 響 を受けないが C C 1 4 の添加によって減少することを見出し た
.3)さらに H2生成に関しても CCl.は抑制効果が著しい ことを報告したア}これより,放射線分解では C‑H 結合が 切断して H原子とラジカルが生成し,その前駆体 (RH') で ある励起分子やイオン対を CCl. が脱活性すると考えた.
RHN ト→ RH ' ( 3 司 RH' 一一→ R + H
RH' + CCl. 一一→ RH+ C C l . '
( 3 8 ) ( 3 9 ) H + H 一一→ H2 ( 4 0 ) H + RH 一 一 → H2+ R 仰) H原子の存在を,さらに明らかにする実験事実は 77K ,ネ オペンタン ーア ル カ ン 混 合 系 の 放 射 線 分 解 で 得 ら れ た . 1 9 7 3 年 Miyazaki 等は neo‑C S H1 2 に 少 量 の 他 の ア ル カ ン (RH) を添加し77K で T 線分解を行うと極めて選択的に溶 質 (RH) からのアルキルラジカルが生成することを見出し たー) 1 9 7 5 年,この選択的なラジカル生成は . H 原子の反 応によることを次の理由から結論付けた:・州S ) ( l )77K neo‑
CS HI 2‑RH 系に HIを添加し HI の光分解により H原子を 作ると,これは溶質 (RH) から選択的水素引抜き反応を起 し. Rラジカルを生成する. ( 2 ) neo‑CS HI 2‑RH にオレフィ ンを添加して r 線照射すると, R ラジカルの生成が抑制さ れ代りにオレフィンに Hが付加したラジカルが生成する.
( 3 ) ホール捕捉剤としてテトラメチルエチレン (TME)を添 加しても溶質アルキルラジカルの生成は影響きれない. ( 4 ) 重水素化物を使用して生成水素の同位体分布を調べると,
その分布は H 原子反応を仮定した反応機構によって説明出 来る.
(5)溶媒アルカンと溶質アルカンのエネルギーレベル を比較すると . i 容質の第一励起状態レベルやイオン化電位 が溶媒のそれらよりも高い場合がある.これらの結果から,
反応機構として. neo‑CS H1 2 の放射線分解により,まずH 原子が生成し,これが77K という低温でも溶質アルカンか
ら選択的に水素を引抜き,溶質ラジカルを生成する.
neo‑CS H1 2 一一→ neo‑CSHll+ H ( 4 2 ) H + RH 一一→ R + H2 側 この反応は他のアルカン(デカン等 8 種類)を溶媒とした 時にも見出されることを報告した.この反応で重要な点は アルカンの放射線分解で H 原子が生成すること,およびこ のH原子は77KI こおいて水素引抜き反応を行うことである.
これらの報告以後, Lundや Tilquin の 研 究 に お い て
も戸
b.46)さらに国内で neo‑CSH1 2 のテーマを取り上げるグ
ループが生じそこでも
27)H原子機構が採用された.
その後 Willard 等刊は77K3MP の放射線分解において 溶媒ラジカル生成はビフェニル添加により約20% だけ減少 することやラジカル生成に対する同位体効果を調べ,反応
。 4 ) ‑ 側を含めた反応機構の可能性を論じている.
その後, Xe 等のマトリックス中にアルカンを添加し,
H原子の生成やサーマノレ H原子の反応、やホット H原子のエ ネルギー損失と捕捉等の研究はなされたが,炭化水素それ 自身の放射線分解におけるラジカルやH原子の生成に関す る研究は少ない.
7 . 2 面相炭化水素の放射線分解における ESR法と最終 生成物分析法との比較州
従来,固相の放射線化学 は反応中間体を観測する目的が 強かった. しかし材料の放射線損傷とめ関連でみると,低 分子固体は,実際の高分子材料よりも単純でかつ精密な解 析が可能であることから材料のモデル系として考える事が 出来る.従って固相炭化水素それ自身の放射線分解が興味 ある対象となる.固相での反応中間体の研究は,中問状態 を確実に捉えることは出来るが,放射線損傷全体との関係 が不明である. 一方最終生成物測定は,損傷全体を捉える ことは出来るが,どのような反応過程を経ているのか不明 である.
表 4 国体 neo‑Cs HI 2‑cyclo‑Cs H1 0 ( l mol %) の放射線分 解における相対的ラジカル生成量
77K 4 K 生分成析 物 ESR 生分成析 物 ESR neo‑CS H1 1 1 . 0 0 1 . 0 0 1 . 0 0 1 . 0 0 cyclo‑CsH
g0 . 3 3 0 . 3 5 0 . 0 3 <0 . 0 5
表 5 団体 neo‑CS H1 2 の放射線分解における C‑C 結合切 断と C‑H 結合切断の比
~C4/ ~CS8 G(CH.) I G(H
2)8 ~C4/~Cs とは G(2C