現代数学への流れ
浪川 幸彦 June 20, 2007
2 関数の近似
2.2 多項式による関数の近似
前回はテイラー展開として,ある1点の近くで関数を近似する方法について学んだ。しか し実用的にはある範囲の中で関数を近似することが多い。これからそのための方法を学ぼう。
2.2.1 一般論
まず一般論として多項式による一様な近似は可能である。次の定理がそれを保証する:
Theorem 2.2.1 (Weierstrassの近似定理). f(x)を a ≤ x ≤ b で連続な関数とするとき,任 意に与えられた ε > 0に対して,多項式 P(x)で,a ≤ x ≤ b であるすべての xについて
|f(x)−P(x)|< εとなるものが存在する。
Idea of proof. 適当に定数倍することにより,a = 0, b = 1,|f(x)| ≤ 1と仮定して一般性を失 わない。そこでBernsteinの多項式
n
X
p=0
n p
f(p
n)xp(1−x)n−p
が[0, 1]でf(x)に(一様)収束することを示す。
この定理は強力であるが,あまり実用的ではない。すなわちこの証明が「よい」近似多項 式を求める効果的な手段を与えていない。したがって実用的な近似多項式を求めるのには別 の考察を必要とする。また冒頭にも述べたように,関数の「近さ」をここにあるように「(一 様に)近い」という意味に取るべきかどうかは必ずしも明らかではない。
1
IM07s-11 2 2.2.2 補間法
様々の近似を考える準備として,ある関数と有限個の点で値が一致するような多項式を求 めることから話を始める。この方法は近似ではなく,「補間法」という名前で呼ばれる。
その基本は次の存在定理である:
Theorem 2.2.2. x0, x1, x2, . . . , xnを相異なるn+ 1個の点,b0, b1, b2, . . . , bnを任意のn+ 1個 の値とするとき,f(xi) = bi, i= 0,1,2, . . . , n となるn次多項式y =f(x)が一意的に存在 する。この多項式を(n次の)補間多項式と呼ぶ。
Proof. 多項式を具体的に
y=f(x) =a0xn+a1xn−1+ · · · +an−1x+an
と書こう。
ai を「未知数」として条件を書けば
xn0a0+xn−0 1a1+· · ·+x0an−1+an = b0 xn1a0+xn−11 a1+· · ·+x1an−1+an = b1
· · · · · · ...
xnna0+xn−1n a1+· · ·+xnan−1+an = bn
これは連立一次方程式である。ところでその係数行列の行列式は
xn0 xn−10 · · · x0 1 xn1 xn−11 · · · x1 1 ... ... . .. ... ...
xnn xn−1n · · · xn 1
= Y
0≤i<j≤n
(xi−xj)6= 0
(Vandermondeの行列式)
この多項式を具体的に書くこともできる:
Theorem 2.2.3 (Lagrange).
f(x) =
n
X
i=0
f(xi)Ii(x)
ただし
Ii(x) = P(x)
(x−xi)P0(xi), P(x) =
n
Y
i=0
(x−xi)
Idea of proof. Ii(x)はIi(xj) = δij(Kroneckerのδ) の条件で(一意的に)定まるn次多項 式。
Remark. この方法は,原理的に逆行列を求めて連立一次方程式を解くことと同じである:
Ax=a⇒x=A−1a.
IM07s-11 3 Example. n= 2
I0 = (x−x1)(x−x2)
(x0 −x1)(x0−x2), I1 = (x−x0)(x−x2)
(x1−x0)(x1 −x2), I2 = (x−x0)(x−x1) (x2−x0)(x2−x1).
Exercise 1. f(x) = log10x, x0 = 6, x1 = 8.x2 = 9とする。log102 = 0.3010,log103 = 0.4771 を用いて,f(x)の補間多項式を求め,log107の近似値を計算し,真の値0.8451と比較せよ。
2.2.3 Chebyshev多項式
多項式で関数を近似しようとするときの困難さは,これが有界でないという事実にある。
このために様々の「特別な」多項式が用いられる。その例としてChebyshev多項式について 簡単に学ぼう。
Proposition 2.2.4. 次数n次およびn−1次の多項式Tn(x), Un(x)で条件 cosnθ=Tn(cosθ), sinnθ=Un(cosθ) sinθ
をみたすものが存在する。
これはさらに次の漸化式をみたす:
Tn+1(x) = xTn(x) + (x2−1)Un(x) Un+1(x) = Tn(x) + xUn(x)
Definition 2.2.5. このTn(x)を第一種Chebyshev 多項式,Un(x)を第二種Chebyshev多項式 とよぶ。
Examples:
T1(x) =x, U1(x) = 1, T2(x) = 2x2−1, U2(x) = 2x, T3(x) = 4x3−3x, U3(x) = 4x2 −1.
Corollary 2.2.6. 1)T2n(x), U2n+1(x)は偶関数,T2n+1(x), U2n(x)は奇関数である。
2)最高次の係数は2n−1 であり,他の係数もすべて整数である。
Proposition 2.2.7. Tn(x)は[−1,1]の中を振動する。すなわち 1)Tn(cos2kπn ) = 1 (0≤k ≤n
2
) 2)Tn(cos(2k+1)πn ) = −1 (0≤k≤n−1
2
) 3)Tn(cos(2k+1)π2n ) = 0 (0≤k≤n−1) Remark. [−1,1]の外では急激に増大する。
IM07s-11 4 Theorem 2.2.8. n次のモニックな多項式P(x) = xn+· · · の中で,−1≤x≤1で
|P(x)| ≤ 1 2n−1 をみたすものは 1
2n−1Tn(x)に限る。
Definition 2.2.9. I = [−1, 1] = {x;−1 ≤ x≤ 1}とする。I 上の関数f, gに対し,両者間の 距離を次で定義する:
kf −gkI∞= sup
x∈I
|f(x)−g(x)|.
Remark. Iで0との距離が最も小さいモニック多項式は 1
2n−1Tn(x)である。
Exercise 2 (母関数表示). 次の等式が成り立つ:
1−tx 1−2tx+t2 =
∞
X
n=0
Tn(x)tn.
Hint. 漸化式を用いる。
おしらせ
次週は浪川が海外出張のため休講とします。
連絡先
• 研究室:理1号館506号室
• オフィスアワー:木曜日11:30〜12:30(それ以外の場合は事前にアポを)
• E-mail : [email protected]
• Tel.: (052-789-) 4746
• Website : http://www.math.nagoya-u.ac.jp/˜namikawa/
講義を欠席した人は,ここから配布プリントをダウンロードして下さい。