損傷の発生と細胞への影響に関する化学的視点

徳島文理大学 香川薬学部 薬科学科 分子生物学講座 森川雅行、喜納克仁 、宮澤 宏

損傷の発生と細胞への影響に関する化学的視点

はじめに

は生物の遺伝情報を担う分子であり、細胞が正常にその機能を果たすためには が正 確に複製され、また安定に保存されることが必要になる。しかし実際には、我々が日常的に浴び る太陽光や活性酸素、代謝産物によって は容易に損傷する。細胞はこうした損傷を酵素的 に修復する機能を備えているが、一部は修復機能をすり抜ける。 損傷には点突然変異を引 き起こすものがあり、 こうした点突然変異の蓄積が細胞に悪影響を与え、 またがんの発生に繋がっ てゆくと考えられている。本文では 損傷、特にグアニン酸化損傷の発生と細胞への考えら れる影響について、化学的な視点で述べる。

光照射による の構造変化とその影響

太陽の光は、 線や 線、紫外線、可視光、赤外線などの質量のないエネルギーの波（電磁波）

から構成されており、電磁波の名称と性質は波長ごとに区別されている。エネルギーの高い順に、

線、 線、紫外線、可視光となっており、これらは に直接、または間接的に影響を与える。

電磁波の波長は電磁波のもつエネルギーと反比例するため、 線・ 線は電磁波の中で最も大 きなエネルギーをもつといえる。このために 線・ 線は電離や励起作用を直接及ぼすことがで き、分子中の単結合を切断することすら可能である。遺伝情報の担い手である もこの例外 ではなく、 線・ 線の照射により は切断される。さらに 線・ 線は水分子にも作用して ヒドロキシラジカルや過酸化水素などの活性酸素をつくる。特にヒドロキシラジカルは活性酸素 の中で最も反応性が高く、 の糖部分から水素を引き抜きラジカル化することで 鎖を切 断し、また 塩基部分に作用して 塩基の酸化損傷を生成する （ ） 。なお、ヒドロキシラジ カルは、スーパーオキシドラジカルや過酸化水素と共に生体内でも生成しているので、 線・

線に照射されなくてもヒドロキシラジカルによる 損傷は生じている。ここで 線・ 線によ

香川県さぬき市志度

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キーワード 電磁波、 損傷、酸化、 点突然変異、塩基対

総 説