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家族と情報化社会 一現代メディア社会のなかの家族一

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Academic year: 2021

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家族と情報化社会

一現代メディア社会のなかの家族一

教科・領域教育専攻 社会系コース

霊 崎 加 奈 子

1.はじめに

「家族」とし、うと誰もが「サザエさんJのよ うな家族を思い描くのではないだろうか。しか し、現代の家族を考えてみると、家族成員がそ れぞれの生活ノミターンを持ち、かつて家族が持 っていた家族団幾といった時間は減少している のではなし、かと思われる。

従来人間関係は対面的コミュニケーションの 中で築かれていた。しかし、高度に発達した情 報化社会(=メディア社会)といわれる現代に おいては、人間関係のネットワークは、対面的 に構築されてきたものを超え、ヴ、アーチャルな 世界にまで拡大してきた。例えば、各種のネッ ト上の掲示板や出会い系サイトなどを経由して、

見ず知らずの人とメル友になってメールを交わ したり、出会ったりするような状況が発生して し、る。

家族においても家族成員は家族関係を中心と して、それ以外に近隣や職場、学校といった対 面的関係を持っていた。しかし、情報化社会の 到来により、家族のメンバーそれぞれの人間関 係が家族の外に向かつて拡散しつつある。そし てこれが、夫婦・親子といった家族の情緒的粋 まで、薄めつつあるのではないだろうか。

情報化社会におけるネットワークの拡大が、

現代家族の情緒的紳を薄れさせ、家族集団の拘 束力を弱めたのではないか。本稿では、家族の 情緒的粋を弱める要因の一つである、情報化社 会とコミュニケーションの関係について考察し

指 導 教 官 山 本 準

ていくことを目的とする白

2.近代家族

現代の家族を考察する前に、現代家族の前提 となる近代家族について検討する。

近代家族論については数多くの著作があるが、

そのうち主要であると思われる、落合恵美子、

目黒依子、上野千鶴子の三氏の説を挙げ検討す る。

まず落合の近代家族論を検討した。落合は近 代家族が明治中期に成立したとし、明治以降に 家が近代的に再編され、近代家族的な性質を備 えたとしている。

次に目黒の論説を検討した。目黒は、近代家 族は戦後に成立したとし、戦後の法律と国の発 展のための企業主義と政策がからみあった形で あったという見解である。

最後に上野の家族論を検討した。上野は、

「家Jは家父長制家族であると規定し、明治政 府による制度として近代家族はできたという見 解であるD

近代家族がいつ頃登場したかについては、そ れぞれの見解があるが、三者の近代家族論の根 本的な共通点は、「家族は情緒的な粋で結ばれ ているJというものであることを明らかにした。

3.現代家族の現状

近代家族は、封建家族を特徴付けていた親族 的拘束、地縁的拘束から比較的自由になった。

(2)

近代家族を結合させているものは、親族関係で もなく地縁関係でもない。地縁・血縁による拘 束がとかれた家族を結び付けているものは、夫 婦関係、親子関係、の聞に築かれる情緒的粋なの である。言い換えれば、情愛の粋によって結び 合わされている家族こそ近代家族といえるので ある。

現代家族も近代家族論の流れの中で理解され ているが、現在の家族が「近代家族論Jの枠の なかでは表現しえないものになっていると考察 した。家族に関わる様々な局面、結婚・離婚・

出生・家族ダイアドから、最近急激に変わりつ つある家族の現状は明らかにした。

4.現代家族とメディア社会

世帯あたりのパソコンの普及率は 50%を超 え、携帯電話・PHSも二人に一人は持っている。

一人に一台とし、う時代も、そう遠くないだろう。

パソコンや移動体電話(携帯電話・PHS)な どの様々な情報通信機器の発展は、インターネ ットによるネットワークが普及した社会を到来 させた。

最近多くの若者が手元の携帯電話を見ながら、

一心にメールを読み書きする光景を見かける。

コミュニケーションの方法は広がり、個人の人 間関係のネットワークも拡大するに至った。し かし、電子メールを中心とするヴアーチャル・

コミュニケーションは、本格的な情報交換の手 段として使われるよりも、友人間の軽い情報交 換が主であり、家族とのコミュニケーションに は向けられていない。

近代家族の根本原理である「家族の情緒的粋J を考えた時に、このようなメディア社会におけ るコミュニケーションの変化は、身近な家族と 交流し、家族問の緋を深めるという方向に向い

ていない。逆に、ヴ、アーチャル・コミュニケー ションは関係、を家族の外へ向かわせ、家族成員 の人間関係が拡散していると考えられる。

5.おわりに

家族は「情緒的紳で結ぼれている」と考える 近代家族論を基礎にすれば、現代の家族を理解 することは困難になりつつある。なぜならば、

携帯電話・PHSなどの情報通信機器、またそれ を用いた電子メールは、家族のコミュニケーシ ョンを深めるよりもむしろ、友人間のコミュニ ケーションに使われる傾向が強し、からである。

情緒的紳とは目に見えず形のないもの、そし て壊れやすいものである。メディア社会では、

家族以外でもコミュニケーションがし、くらでも とれる。家族に向いていたコミュニケーション が外に向きやすくなったことは、情緒的粋を中 心とした「家族」を崩壊しやすいものに変えた と思われる。家族の人間関係、が家族の外に拡散 し始めた現代では、「近代家族」としづ枠ではも はや家族を規定できないのである。

本稿では、ヴアーチャル・コミュニケーショ ンを拡大させてきたメディア社会が、家族問の 情緒的粋を弱体化させつつあると結論づけた。

家族とは、かけがいのないものであり、親子 や夫婦の関係の強し、結びつきなしに家族は成り 立たないという危機感さえ、私たちは抱くので ある。しかし、より大きな時間の流れのなかで、

家族が個人化し、分散化し、家族問の情緒的粋 が弱まっていくことも一つの時代の特徴で、ある のかもしれない。これは、社会が家族単位では なく、個人単位で構成されようとしているとも いえる。もはや家族は強固な社会単位ではなく なり、個人が緩やかに結合したものが家族であ ると規定されるようになるのであろうか。

参照

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