居住支援とケアの実情からみたデンマークの高齢者 福祉 : デンマークのコミューン統計分析・その2
著者 趙 西秦, 桜井 康宏│
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 49
号 2
ページ 191‑201
発行年 2001‑09
URL http://hdl.handle.net/10098/3288
Mem. Fac. Eng. Fukui Univ., Vo .l49, No. 2 (September 2001) 191
居住支援とケアの実情からみたデンマークの高齢者福祉
ー デ ン マ ー ク の コ ミ ュ ー ン 統 計 分 析 ・ そ の
2 ‑
越 西 秦 * 桜井康宏**
Actual Conditions of Social Services for the Elderly from the Viewpoint of Housing Support and Home Help Care Conditions in Denmark
‑ Analysis of Municipal Statistics in Denmark ・Part2一
Xiqin ZHAO* and Yasuhiro SAKURAI料C
(Received August 10,2001)
The first pu中oseof this paper is to clear actual conditions of housing suppo口forthe elderly in each commune, and the second purpose is to clear actual conditions of home help care schemes for the elderly in each commune, and the third pu中oseis to grasp the regional structure by analysing municipal statistics. So we analysed following indexes and examined mutual relations in those indexes; population, percentage of 67+year‑olds, owner‑occupied housing(per cent), social tenant housing(per cent), housing subsidy expenditure for the elderly per pensioner, recipients of housing subsidy for the elderly per 100 households, total provision of housing for the elderly per 67+
year‑olds, accommodations in nursing or rest homes per 67+ year‑olds, other housing provided with care per 67+ year‑olds, total personel for services for the elderly per 67+ year‑olds, recipients (67+) of home help per 67+ year‑olds, allocated hours per resipient per week.
Key Words : Oenmark, Statistical Analysis, Housing Support, Home Help Care, Regional Structure
1 .研究の目的と方法
本研究は、福祉先進国デンマークの実情を現地で 入 手 し た 全 国 統 計
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INDENRIGSMINISTERIEfS KOMMUNALE NOGREfAL 1996J (Publikationen k組kobes hos STATENS INFORMATION)によって解明し ようとする一連の研究である。前稿「その 11) Jで はデンマークの地方分権の仕組を主として税財政制 度の側面から概略し、その最大の特徴である f均衡 化制度」の存在を統計的に確認した上で、財政的側 面からみた高齢者福祉の実態を
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(在宅ケアと施設 ケアの区別そのものを無くす)統合ケアj化の視点 から解明し、そこにみられる地域構造上の特性(マ クロには首都圏内と首都圏外の違い)等を明らかに*大学院工学研究科システム設計工学専攻
**工学部建築建設工学科
*
Dept. of System Deshign Engineering.*
*Dept. of Architecture and Civil Engineeringした。これを受けて本稿では、デンマークの高齢者 福祉の実情をさらに具体的に解明すべく、一般的な 人口・世帯・住宅事情の概要を把握した上で、高齢 者に対する「居住支援(住宅援助および住宅提供)j
と「ケア(ホームヘルプサービス)Jの2つの視点 から全国コミューンの実態とその地域的特性を明ら かにすることを日的とするものである。
なお、前稿と同様に、税財政事情の基本的な違い から「首都圏内 (50コミューン)Jと「首都圏外 (225 コミューン)J (以下、本文中ではそれぞれ「圏内J
「圏外jとする)に分けて分析することを基本とし、
さらに前稿で設定した「均衡化後財政タイプjおよ び「高齢者福祉出費規模タイプJ
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高齢者福祉出費内容タイプJ等の指標別にみた分析を行うこととす るが、これらのタイプの設定方法については前稿を 参照いただきたい2)。また、本稿でいう「高齢者J とは「年金受給対象である67才以上Jを指し、 1明話
年時点におけるデンマーク通貨の lkr(クローネ)
=約 19円である。
2.人口・世帯・住宅事情の概要
2.1 人口・世帯の概要
コミューンの人口規模別に人口密度・都市人口率 引・高齢者割合・世帯人員・片親児童率的の実態を 示したものが図 lである。人口密度・都市人口率と もに圏内外の違いは極めて大きく、圏内では人口密 度4∞ 人/kni以上および、都市人口率 1∞%が過半数 (最大人口密度はコペンハーゲン市域内ブレデリク スバーグの 10124人/凶)であるのに対して、圏外 では人口密度1∞ 人/kni未満および、都市人LJ率70%
未満が過半数(最大人口密度はオーデンセの603人 /kni、最大都市人口率はドイツ国境部サンダーパー グの 97%) となっている。ただし、いずれも人口 規模の増加にともなって高くなる傾向は圏内外に共 通である。
高齢者割合については、圏内平均 11%(最小4%
最大22%)、圏外平均 14%(最小7%"‑'最大25%) で圏外の方が高いが、人口規模別にみた傾向は異な っており、高齢者割合がとりわけ高いのは圏外の最 小規模コミューンに続いて圏内の最大規模コミュー ンとなっている(逆に圏内小中規模コミューンでは 圏外にはほとんどみられない 10%未満のコミュー ンが目立ち、とくに中規模コミューンで顕著となっ ている)。
世帯人員については、圏内平均 2.4人(最小1.8 人 最大2.7人)、圏外平均 2.4人(最小2.0人 最 大2.7人)であるが、人口規模別にみた傾向はやは り異なっており、圏内では小規模コミューンほど世 帯人員が多いのに対して、圏外では中規模コミュー ンで相対的に多くて人[1両極コミューンでの世帯人 員が少なくなっている。
片親児童率については、圏内平均 15%(最小7%
最大27%)、圏外平均 11%(最小4 %"‑'最大 19%) で圏内の方が高いが、いずれも大規模コミューンで
とくに高くなっている。
続いて、独居老人率引を人[1規模別および高齢者 割合別に示したものが図2である。圏内平均 47%
(最小38%"‑'最大65%)、圏外平均48%(最小40%
最大 56%)であるが、圏外においては、最大規 模コミューンで r50"‑'55%未満」が大半を占めて高 い点を除けば、小中規模コミューンの大半が
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45"‑'50%未満」で安定しているのに対して、圏内におい ては r45%未満」から r55%以上Jまで幅広く存在 し、小中規模コミューンでは r45%未満」、厳大規 模コミューンでは r55%以上jの存在が相対的に目 立っている。なお、高齢者割合の増加にともなって 独居老人率が高まる傾向は圏内外に共通であるが、
その変化は圏内でより顕著に現れている。
2.2 住宅事情と一般住宅援助の概要 ( 1 ) 住宅事情の概要
デンマークにおける所有関係別住宅種類は、持家
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自2独居老人率の概要
いる(圏内の人口 1万5α防人以上および高齢者割 合 14%以上のコミューンでの公益組合住宅率がと くに高い)が、ただし、圏外においては高齢者割合 の増加に応じて公益組合住宅率もやや減少しているo
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のコミューンがとりわけ高い)。
続いて、これらの住宅種類と独居老人率との関係 を示したものが図4である。持家率や賃貸住宅率と の聞にはやや強い相関性(前者は負、後者は正の相 関性)がみられるが、公益組合住宅率との相関性は ほとんどみられない。
6)、公益組合住宅7)、賃貸住宅8)に大別されている。
それらの割合を人口規模別および高齢者割合別に示 したものが図3である。
持家率は圏内平均63%(最小29%‑‑最大90%)、 圏外平均 73%(最小41%‑‑最大87%)で圏外の方 が高いが、圏内外ともに人口 1万5(削人を境界と して大きく異なり(小規模コミューンの持家率が高 い)、その変化が大きい圏内の小規模コミューンの 持家率が最も高くなっている。高齢者割合別には、
圏外においては高齢者割合の増加に応じて持家率が やや低下する程度であるが、圏内においては高齢者 割合 14%を境界として大きく異なり、 14%以上の コミューンでの持家率がとりわけ低くなっている。
公益組合住宅率は圏内平均22% (最小0%‑‑最大 70%)、圏外平均 10%(最小0%'"'""最大36%)で圏 内の方が高く、概ね持家率と対照的な特性をみせて
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係ではタイプA2、B2といった歳出需要の大きいコ ミューンで高いこと(逆にいえば住宅援助の大きさ が歳出需要全体の大きさに反映していること)、高 齢者福祉出費規模タイプとの関係では「高齢者一人 あたり出費Jの小さいタイプ
( c )
、(d)で高い傾向にあ る(とくに圏内で顕著)こと、高齢者福祉出費内容 タイプとの関係では圏内の在宅型と施設型(つまり は非統合型)でとくに高いことが読み取れる。なお、この傾向は援助金額そのものでみてもほぼ同様であ るが、ただし、高齢者福祉出費規模タイプとの関係 では「住民一人あたり出費」の大きいタイプ(a)、(c) での金額が大きくなっている点が異なっている。
( 2 )住宅援助受給者数
年金受給者1∞世帯に対する上記住宅援助受給者
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(2 )一般住宅援助の概要
前稿の費目別歳出構成の分析において、歳出全体 に占める「一般住宅援助(一般住宅手当9) ) Jの割 合が全国平均で 4.1%であること、および、歳出需 要全体の増加は主として「社会保障雇用Jと「一般 住宅援助Jの出費割合の増加に反映されることを指 摘した。ここでは、この点を住宅事情との関係で検 証する。
住 民 一 人 当 た り 一 般 住 宅 援 助 額 は 、 圏 内 平 均 1351kr (最小398kr"‑'最大2760kr)、圏外平均 1138kr
(最小 441kr‑‑‑最大 2615kr)で圏内の方が高いが、
歳出全体に占める出費割合でみると、圏内平均4.2%
(最小1.7%"‑'最大7.6%)、圏外平均4.0%(最大1.8%
最小7.1%)で圏内外の差はみられない。これを 住宅事情との関係で示したものが図5であり、持家 率との間には強い負の相関性がみられる点は圏内外 に共通しているが、圏外では公益組合住宅率および 賃貸住宅率との聞にもやや強い正の相関性がみられ るのに対して、圏内では公益組合住宅率との相関性 が極めて強くて賃貸住宅率との相関性がみられない 点が異なっている。この違いは、賃貸住宅の性格が 圏内外で異なることを示すものと考えられる 10)。
前稿では、高齢者福祉出費について「住民一人あ たり」と「高齢者一人あたり」の相互関係からみた 出費額と、出費の大半を占める「ケアJの性格(施 設型・在宅型・統合型のバランス)を把握した。こ こでは、高齢者福祉のもう一つの側面である「居住 支援jの実態について、経済的支援である「住宅援 助(住宅手当)Jと物的支援である「住宅提供(プ ライヱムを含む広い意味での居住の場の提供)Jの 2つの側面から検討する。
高齢者居住支援の実態 3.
国6 高齢者住宅援助費の出費割合
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国7高齢者住宅援助の受給者数
3 ̲ 1 高齢者住宅援助{住宅手当)
( 1 )年金受給者住宅援助額および出費割合 年金受給者一人あたりの住宅援助額ll)は、圏内 平均 6475kr(最小 2309kr "‑'最大 12061kr)、圏外平 均 必82kr(最小 1873kr"‑'最大 8736kr)であり、こ れを高齢者出費全体に占める割合でみると、圏内平 均 17.1% (最小5.7%"‑'最大32.9%)、圏外平均 12.7%
(最小 4.7%"‑'最大 28.5%)となり、金額・出費割 合ともに圏内における援助水準の高さ(負担の大き さ)が伺われる。このうち出費割合について各指標 別に示したものが図6であるが、圏内外ともに大規 模コミューンほど高いこと、圏内の高齢者割合の高 いコミューンでとくに高いこと、財政タイプとの関
数 12)は、圏内平均 11.8人(最小4.2人 最大20.7 人)、圏外平均 11.3人(最小5.0人 最大29.6人) であり、平均的には圏内外の差はみられない(従っ て、前述した援助額の圏内外の差は受給者一人あた り金額の差を示すことになる)が、図7に示すよう に、同一人口帯ではいずれも圏外>圏内、同一高齢 者割合帯ではいずれも圏内>圏外となっている(圏 内外における人口構成の違いと各人口帯における高 齢者割合の違いによる)点が特徴的である。なお、
同じく図7に示すように、圏外においても高齢者割 合が高くなるほど受給者数が増加している点を除け ば、他指標別にみた受給者数は図6の出費割合とほ ぼ同様の傾向をみせている。
一方、これらの高齢者住宅援助の実態を住宅種類 との関係でみると、前述の一般住宅援助と全く同様 に、圏内外ともに持家率との問に負の相関性、公益 組合住宅率との聞に正の相関性がみられ、圏外では 賃貸住宅率との間にも正の相関性がみられるが、圏 内の賃貸住宅率との間に相関性はみられない。
3.2 高 齢 者 へ の 住 宅 提 供 (1)住 宅 提 供 総 戸 数
高齢者 100人に対する住宅提供総戸数(プライ エム、ケア付き住宅およびその他の一般住宅提供を 含 む 13)) は、圏内平均 14.0戸(最小 5.0戸 最大
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61.2戸 14))、圏外平均 12.5戸(最小4.5戸 最大 31.7戸)であるが、これを各指標別に示したもの が図8である。高齢者割合が低いほど多いこと、「高 齢者一人あたり出費jの大きいタイプ(a)、(b)で多い こと、施設型註統合型>在宅型の順に多いことが圏 内外にほぼ共通しているが、人口規模別の変化はい ずれも小さく(圏内最小規模コミューンでやや少な く、圏外最大規模コミューンでやや多い程度)、財 政タイプ別には、圏外では歳出需要が相対的に小さ いタイプA L 81で多いのに対して、圏内では財政 力が相対的に小さいタイプ 81、8 2で多くなって いる。これを前述の住宅援助と対比すると、圏外で は財政タイプと出費規模タイプにおいて対照的特性 を示している(住宅援助は歳出需要が大きく高齢者 一人あたり出費が小さいコミューンで目立つのに対 して、住宅提供は歳出需要が小さく高齢者一人あた り出費が大きいコミューンに目立つ)ことが読み取 れる。また、圏内でも出費規模タイプにおいては同 様の対照的特性がみられる。
(2)プ ラ イ エ ム 定 員
高齢者 1∞人に対するプライエム定員は、圏内平 均4.1人(最小0人 最大7.8人)、圏外平均5.1人 (最小 O人 最大 11.3人)で圏外の方がやや多い が、これを各指標別に示したものが図9である。圏 外については、人口規模が小さいほど多い(ただし